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元スレ咲「陽に照らされて花は咲く」
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淡「陽に照らされて星は輝く」
の後編になります。
原作設定を無視してオリジナル展開、オリジナル設定、独自解釈があります。
あくまでパラレルワールド的に捉えてください。
あと、前編以上にノリノリで麻雀パート書いてしまいました。すみません。
麻雀そのものは弱いです。積み棒計算は省きます。
の後編になります。
原作設定を無視してオリジナル展開、オリジナル設定、独自解釈があります。
あくまでパラレルワールド的に捉えてください。
あと、前編以上にノリノリで麻雀パート書いてしまいました。すみません。
麻雀そのものは弱いです。積み棒計算は省きます。
決勝戦前日
菫「みんなお疲れ様。今年も決勝戦までこれたな。残すところあと一試合だ。油断せず、全力でいこう」
部員一同「はい!」
菫「では解散」
部員一同「ありがとうございました!」
菫「ふう……」
菫「誠子、照と大星がどこにいるか知ってるか? 見えないんだが」
誠子「え、ああ、なんか部屋にいるらしいです。宮永先輩はちょっと疲れたからって」
菫(で、大星はその付き添いか)
菫「わかった。ありがとう」
菫(照……準決勝からずっと様子がおかしかった。普段は真面目なのに、急に大星と
勝敗を賭けたりして……あいつらしくない)
菫(……少し様子を見てくるか)
廊下
菫「あいつの部屋は私の隣だったな」
菫(本当は私と相部屋する予定だったんだが、大星が「テルと同じ部屋じゃないと
泊まらない」ってうるさかったからな)
菫「照、入るぞ」コンコン ガチャ
菫「照、大丈夫か?」
照「大丈夫」
淡「くぅー」スピー
菫「こいつは……集合かけても来ないと思えば、まさか寝てるとは……
本当に集団行動のできんやつだな。部活動だっていう意識がないのか?」
菫(ないんだろうなぁ……)ハァ
菫「それで、体調が悪いって聞いたが?」
照「それは嘘」
菫「……お前も大星に毒されてきたんじゃないだろうな?」
照「少し考え事がしたくて」
菫「そうか。――まあ、その、なんだ」
照「?」
菫「準決勝……お疲れ様。いつも通り大活躍だったな」
照「……どうしたの急に」
菫「労ってるんだ、素直に受け取れ。というか、他の部員にはさっき集合かけて
伝えたんだ。お前がこないから個人的に伝えにきたんだよ」
照「そう」
菫「……それで、どうしたんだ? お前準決勝からおかしいぞ」
照「……別におかしくなんてない」
菫「見くびるなよ。何年一緒に麻雀打ってきたと思ってる」
照「……」
菫「急に大星をけしかけるようなこと言ったり、終いには大将戦を代わってくれだなんて」
照「変更はできそうなの?」
菫「帰りに申請してきたよ。ちゃんと受理された。明日の大将はお前だ、照」
照「……そう」
菫「やっぱりなにかあるのか? あの清澄の大将と。……お前の……妹さんじゃないのか?」
照「くどい。違うと言っている」
菫「ならなんで大将を代われなんて言ったんだ。そもそもお前が大星を大将に据えたようなものだろう」
照「……」
照「別に。少し淡を買いかぶりすぎてただけ。この子になら大将が務まると思ったけど、
準決勝を見て、淡だと清澄に勝てないかもしれないと改めたの」
菫「そうか? 身内贔屓を差し引いても、十分清澄と互角以上に戦えてたと思うけどな。
まあ、大星の納得できる勝ち方ではなかっただろうがな」
照「でも、嬉しそうだったね、淡」
菫「確かにな。まあ、こいつは全国にも期待してなかったみたいだし、思わぬところで
自分と……それも同学年で互角に戦えるやつに出会えて嬉しいだろうな。連れてきてよかったよ、本当に」
照「……」
菫「? どうした」
照「菫は、どうしてそこまで淡を気遣うの?」
菫「どうしてって……後輩だからな。当然だ」
照「それだけ?」
菫「……どうなんだろうな。こいつはどこか放っておけないんだ」
照「菫はおせっかい焼き過ぎだと思う」
菫「おいおい、誰のせいだと思ってる」
照「……私のせいなの?」
菫「当たり前だ、まったく。一年の頃のお前は全く部に馴染めずにいつも一人で、
そのくせいつも寂しそうで、しょっちゅう迷子になるし、本当に世話のかかる奴だったよ」
照「……そんなことない」
菫「どの口が言う。お前は一年の頃から他の部員を圧倒してて、なんか一軍の人らも
どう接していいのか困ってたから、とにかく部で浮いてたぞ。私もそんなお前が
気になって仕方なくて、何度も話しかけたりして気を遣ってたらいつの間にか
お前の世話役を押しつけられたようなもんだ」
照「……ごめん」
菫「別に責めてるわけじゃないさ。ただ……そんなお前と大星は、驚くほど重なるんだ」
照「私と淡が?」
菫「ああ。言っただろ? 大星にはお前と同じ雰囲気を感じたって。だからだろうな、
こいつのことが気がかりで仕方ないんだよ私は」ツンツン
淡「ん……」スピー
照「……菫はさ」
菫「ん?」
照「淡が怖いって感じるときないの?」
菫「怖い? どうして」
照「実力が違いすぎる。この子と打って、次元の違いを感じたりしない?」
菫「この、ハッキリ言ってくれるじゃないか」
菫「……正直言って、次元の違いは感じる。こいつは実力までお前にそっくりだ。その差に愕然と
することはある。もしかしたらそれが怖いってことなのかもな」
菫「だが、大星から逃げ出したいなんて思ったことはない。大星と打つのはちゃんと
楽しいし、もっとこいつと打ちたいって思う。先輩が言う台詞じゃないかもしれんが、
いつかこいつに追いつきたいって思う」
照「そう……」
菫「お前もだぞ、照」
照「え?」
こいつのことが気がかりで仕方ないんだよ私は」ツンツン
淡「ん……」スピー
照「……菫はさ」
菫「ん?」
照「淡が怖いって感じるときないの?」
菫「怖い? どうして」
照「実力が違いすぎる。この子と打って、次元の違いを感じたりしない?」
菫「この、ハッキリ言ってくれるじゃないか」
菫「……正直言って、次元の違いは感じる。こいつは実力までお前にそっくりだ。その差に愕然と
することはある。もしかしたらそれが怖いってことなのかもな」
菫「だが、大星から逃げ出したいなんて思ったことはない。大星と打つのはちゃんと
楽しいし、もっとこいつと打ちたいって思う。先輩が言う台詞じゃないかもしれんが、
いつかこいつに追いつきたいって思う」
照「そう……」
菫「お前もだぞ、照」
照「え?」
菫「前にお前と打つのは楽しいと言ったが、あれは嘘なんかじゃない。
……まあ、一年の頃は確かに、お前と私じゃあまりにも差がありすぎて腰が引けてたのは
事実だ。だが私はその頃から、お前から逃げ出したいなんて思ったことはない」
菫「でも……他の部員はそうもいかないだろう。なあ照、大星から聞いたか?
お前が部を引退して白糸台を卒業したら、大星も麻雀部を辞めるんだとさ」
照「……聞いてない。けど、そんな気はしてた」
菫「他の部員が引きとめるとも思えん。その様子だとお前も引きとめないみたいだし、
もう大星はいなくなるってことだぞ、照。いいのか?」
照「それはこの子の自由」
菫「……」フゥ
照「――私は」
菫「ん?」
照「私は……この子が怖い」
菫「は? 大星のことか?」
照「うん」
菫「怖い……? 怖いもなにも、お前大星に一度も負けてないじゃないか」
照「実力は関係ない。私は……この子の才能が怖い」
菫「? ますますわからんな。私もかれこれ永いこと麻雀を打ってきたが、お前以上の
才能の持ち主には出会ったことがないぞ。『高校生最強』『一万人の頂点』『牌に愛された子』。
どれもお前に相応しい呼び名じゃないか」
照「牌に、愛された……」
照「……」
照「淡は本当に牌に愛されてる。こんなに牌に愛されてる子を見たのは、この子で二人目」
照「何もしなくても牌たちが自然と淡のところへ集まってくる。この子の星の引力は、
その力を淡がコントロールしているってことだから」
菫「だったらお前だってそうだろう。あれだけ有効牌をツモりまくれるんだ。まさに
牌に愛された子の証だろう」
照「……」
照「私は……」
菫「……どうしたんだ照。お前、やっぱりおかしいぞ」
照「……」
淡「ん」
淡「んんー……!」フワーァ
菫「ああ、大星。起きたか」
淡「あれ、菫? なんでここにいるの?」
菫「こっちの台詞だ。集合かけたのに居眠りとはどういうことだ」
淡「だってテルが体調よくないって言ってたんだもん。誰かが傍にいてあげないと」
菫「じゃあ寝るなよ」
淡「いいじゃん別に。私昔から校長の話とか聞くの嫌で朝礼とかサボってたし」
菫「まったく……。ああそれと、オーダーの変更してきたから。大星は明日先鋒だ」
淡「はーい。ちぇ、ほんとは咲ちゃんと決勝で決着つけたかったのにな。まあ
テルの頼みなら仕方ないけどさ」
照「ごめん」
淡「謝ることないよ。咲ちゃんとは個人戦で白黒はっきりつけるから」
淡「それに……」
照「ん?」
淡(咲ちゃんが言ってたテルに伝えたいこと……それはきっと、一緒に卓を囲まないと見えてこないものだ)
淡(なら、テルが大将になりたいって言ってくれて、逆によかったのかもしれない)
照「それに、なに?」
淡「ううん。やっぱ白糸台三連覇はテルが自分の手で決めないとね」
菫「そうだな……三連覇、もう目の前なんだもんな」
照「……頑張るよ」
夜
照「そろそろ寝る?」
淡「そだね。……ねえ、一緒のベッドで寝よっか」キラキラ
照「寝ない。おやすみ」カチカチ
淡「えー」
照「えーじゃない」
淡「私のベッドの位置って風水的にあんまりよくないから、そっちのベッドで一緒に寝てもいい?」
照「いいよ。私がそっちのベッド使うから」
淡「……よーし、ちょっと飲み物でも飲もっかなー」
淡「おっと手が滑った」バシャ
照「……」
淡「あちゃー、こりゃいかん。私のベッドがべちょべちょだわー」
照「……」
淡「もうこのベッドじゃ寝れないね。仕方ないからテルのベッドに入ってあげる」
照「……明日きちんとホテルの人に謝ってね」
淡「最高級のベッド弁償しとくよ。じゃ、おじゃましまーす」モゾモゾ
照「……」
淡「狭いからもっと近く寄ってよテル」
照「床で寝るといいよ」
淡「テル最初、和式部屋取ってたでしょ。信じられない」
照「淡が大反対しなかったら私はあそこでもよかった」
淡「布団とか有り得ないから。床で寝るなんて、文明人としてどうなのよ」
照「淡は布団で寝たことないの?」
淡「ないよ。うちではダブルベッドを一人で使ってるし」
照「尭深は逆にベッド嫌だって言ってたね」
淡「尭深は純日本人って感じだしね。私日本茶よりも紅茶派だから、尭深とはとことん
合わないや。テルは日本茶と紅茶どっちが好き?」
照「水」
淡「……水かー。うーん……」
淡「テルは家では布団で寝てるの?」
照「うん。うち狭いからベッド置けなくて」
淡「あ、母子家庭なんだっけ?」
照「まあ、ね。まだ離婚はしてないけど」
淡「別居中なんだ」
照「そう」
淡「前の家でも布団で寝てたの?」
照「いや、前の家ではベッドで寝てたよ。今は安いアパートに住んでるからベッド置けないだけ」
淡「へー。なんかイメージと違うなー」
淡「ベッドは二段ベッドだったの?」
照「? 違うけど」
淡「そっか。じゃあ咲ちゃんとは違う部屋だったんだね」
照「うん」
淡「ふーん?」
照「……っ」
淡「……」
照「……」
淡「……」
照「……誘導尋問とかする子だったんだね、淡って」
淡「油断したね、テル。やっぱり咲ちゃんと一緒に住んでたんじゃん」
照「……見損なった。ベッドから出てって」
淡「どうして妹はいないなんて嘘吐いたの? そんなに咲ちゃんのこと嫌い?
いい子じゃん、あの子」
照「咲は私の妹じゃない」
淡「でも一緒に住んでたんでしょ?」
照「一緒に住んでただけ。妹じゃない」
淡「苦しすぎるって。昔何があったか知らないけどさ、姉妹から嫌われるのって結構つらいよ?」
照「淡には分からない」
淡「分かるよ。私も妹いるし。麻雀がからきしだからちょっと避けられてるけどね」
照「……」
淡「……やっぱり麻雀に関することなの?」
照「人の家庭事情を詮索しないで」
淡「ふー……これは重症だね」
照「……」
淡「ねえテル。私さ、今までずっとテルは私と同じ打ち手なんだって思ってたんだ」
照「……」
淡「でも、いつも微妙に違和感があって、何かが違うってずっと引っかかってたの。
それが何なのか分からなかったんだけど」
淡「準決勝で咲ちゃんと打って、やっと分かったんだ。テルの麻雀の正体に」
照「……」
淡「まあ、ちょっと逆説的な理解なんだけどね。私の麻雀と本当に似てるのは
咲ちゃんだった。……でも、咲ちゃんとテルの麻雀は、まるで真逆。対極の麻雀だった。
だから、私とテルも違うんだって気づいたの」
照「……」
淡「……テルはさ」
照「淡。もう寝たいから喋らないで。嫌なら床で寝て」
淡「……」
淡「じゃあ、最後に一つだけ教えてよ」
照「……一つだけね」
淡「私はさ、昔すごく麻雀が好きだったんだ。毎日麻雀が打ちたくて仕方なかった。
でもどんどん孤独感を感じるようになって、麻雀が嫌いになっていったの」
淡「何度もやめようと思った。テルに出会えてなかったら実際にやめてたと思う。
それはもちろん、対等に戦える子がいなくてつまんないっていうのもあるけど、なにより、
今まで大好きだった麻雀を嫌いになっていくことに耐えられなかったの」
照「……」
淡「今まで大好きだったものをどんどん嫌いになっていくのって、すごく辛い。
そんなことに耐えられる人なんて想像もできない」
淡「だから……分からないんだ。テルのことが」
照「……」
淡「ねえ、テル。……あなたは、どうして麻雀を続けてるの?」
照「……」
淡「テル」
照「……」
淡「ねえ、テルってば」
照「……すー」
淡「うわ、ウソ寝ヘタだなー」
照「うるさい。もう寝たから」
淡「起きてるじゃん」
照「もうあと一秒で寝るから。はい寝た」
淡「もー」
淡「ねーテルー」ユサユサ
照「……」すー
淡「……寝テル」ボソ
照「……」
淡「ホントは今のちょっと面白いと思ったくせに!」ユサユサ
照「うるさいなぁ」
淡「おきテル」
照「……もう黙って。本当に寝るから」
淡「宮永……大星……あわい……あわ……うーん」
淡「あわ……あわテル。お。慌てる」
淡「……あわテル」ボソ
照「……」
淡「ちょっと面白いと思ったくせにぃ!」ユサユサ
照「うるさい」
淡「おきテル」
二時間後
淡「……」すぴー
照「……」
照「淡、起きてる?」
淡「……ん……テル……」
淡「……あぁ……やっぱテル……強いなぁ……」ムニャムニャ
照「……」
淡「んん……あぁ、テル……今、手加減……でしょ」ムニャムニャ
照「どんな夢見てるんだ。――ん?」
照「淡……泣いて、る……?」
淡「テル……ゃだよ……負けないで……私より、弱……ならないで……独り……しない、で……」グスッ
照「…………」
照「ごめんね、淡」ナデナデ
淡「……ん……」ムニャ
※>>35これ俺じゃないな。ID被りがいるのか。酉つけたほうがいいかな?
照「答えなかったんじゃないんだ。……答えられなかったんだ」
照「何故麻雀を打つのか……菫にも同じことを訊かれた。……でも、やっぱり答えられなかった」
照「分からないんだ、私にも。私もお前と同じだ、淡。もうとっくに麻雀に絶望してて、
何の喜びも感じられなくなっていた」
でも、私は麻雀を打ち続けた。一日も休むことなく、三年間打ち続けてきた。
何度も投げ出したくなったけど、それでも私は麻雀を続けた。その理由すら定まらないままに。
照「……明日だ」
明日……私は咲と戦う。そのときにきっと、全ての答えが得られる。そしてきっと
そのときに……何かが終わる。そんな予感がする。
照「――絶対勝つ」ゴッ
照「答えなかったんじゃないんだ。……答えられなかったんだ」
照「何故麻雀を打つのか……菫にも同じことを訊かれた。……でも、やっぱり答えられなかった」
照「分からないんだ、私にも。私もお前と同じだ、淡。もうとっくに麻雀に絶望してて、
何の喜びも感じられなくなっていた」
でも、私は麻雀を打ち続けた。一日も休むことなく、三年間打ち続けてきた。
何度も投げ出したくなったけど、それでも私は麻雀を続けた。その理由すら定まらないままに。
照「……明日だ」
明日……私は咲と戦う。そのときにきっと、全ての答えが得られる。そしてきっと
そのときに……何かが終わる。そんな予感がする。
照「――絶対勝つ」ゴッ
決勝戦当日
白糸台控室
恒子『――さあ今年のインターハイの決勝戦も、もう副将戦に突入しています。
白糸台は準決勝のあと突然オーダーを変更し、先鋒と大将を入れ替えてきました』
恒子『先鋒で他家を相手に大暴れした一年生、大星淡選手の活躍により大きくリード
する白糸台。この副将戦で他校はどこまで追いつけるのか――!?』
菫「……いい感じだな。このままいけば2万点くらい残して照に繋げられそうだ」
淡「そうだね。私の55000点差が2万点差になっちゃったのは残念だけど、仕方ないよね」
菫「お前はまたそういうこと言って……」
淡「別にいいよ。私も思ったより稼げなかったし。それより、そのテルはどこにいるの?」
菫「さっき外の空気を吸ってくるって行ったきり戻ってきてないな」
淡「また迷子になったんじゃない?」
菫「いや、まさか……」
菫(……有り得ないと言えないのがなんともなぁ)ハァ
菫「携帯で呼び戻すか」ピッポッパ
プルルルル、プルルルル
菫「……」
淡「……」
照の携帯「プルルルル、プルルルル」
菫・淡・尭深「……」ハァ
菫「何度言えばわかるんだろうな照は。常に携帯を持っておけとあれほど言ったのに」
淡「テルってほんと携帯持ち歩かないよね」
菫「仕方ない、探してくる」
淡「私も行くよ」
尭深「じゃあ私は残ってます」
菫「ああ、頼んだぞ」
会場の屋上
照「……」
決戦の時が迫っているのを感じる。その割にひどく心は静かだった。
咲を恐れる気持ちは全くない。もう何もかもがあの日から変わってしまったんだと痛感させられる。
あとはただ戦うだけだ。私と咲が……自身の麻雀を全てを賭けて。
照「……今日……」
何かが終わる予感がする。それがなんなのかは分からないけど、ここが一つの分岐点に
なる気がしてならない。
照「……」
あの子と打つときはいつもそうだった。あの子が麻雀を打つと、いつも何かが変わっていった。
両親の関係も、家族の仲も。……私と咲の関係も、私の麻雀も。
全てを咲の責任にするつもりはない。でも、多分あの子はそういう天命を帯びて
産まれてきたんだと思う。良くも悪くも、周囲に影響を及ぼさずにはいられない。
そう思わせるほど、あの子の力は凄まじい。淡にも退けを取らないほどの天運の持ち主だ。
照「……」
淡と咲の戦いを見届け、私は確信していた。
私の麻雀は、間違いなく咲を上回っている。
全てを計らったわけじゃない。多くの偶然の累積が、準決勝での淡と咲の激突を生んだ。
その全てを見届けた私には、もう何も恐れるものなどない。
淡は咲のプラマイゼロを止めてみせた。ならきっと……私にもできるはずだ。それは咲の麻雀の
否定。
その超絶な支配への抵抗だ。今の私にはそれができる。――もう、昔の私ではない。
私はもう、きっと咲の麻雀を超えたはずなんだ――
咲「――お姉、ちゃん」
照「!」バッ
照「……咲」
咲「あ、あの……」
照「……」
咲「私、ちょっと決勝前に気分転換しようと思って、そしたら道に迷っちゃって、ここに……」
照「……」
ツカツカツカ
咲「あ、ま、待ってお姉ちゃん!」
照「……邪魔」
咲「あの、あのね。私ね」
照「邪魔」
咲「お姉ちゃんに伝えたいことがあるの! お姉ちゃんともう一度、ちゃんと話がしたくて!」
照「――邪魔!」
咲「……!」ビクッ
照「……」
照「お前と話すことなんか何もない。未だにプラマイゼロなんて続けてるお前となんか」
咲「……」
咲「私のプラマイゼロを見てくれたら、お姉ちゃんに伝わるんじゃないかなって……思って……」
照「何が? どこまでも相手を舐めてるなとしか思えない。最低の麻雀だ」
咲「……」
照「……邪魔」
ツカツカツカ
咲「……」
咲「あの日のこと」
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