元スレ皇帝「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
51 = 1 :
それからというもの──
皇帝「この制度は煩雑すぎる。もう少し簡略化すべきだろう」
皇帝「地方都市からの報告が滞っているな。一度自ら視察してみるか……?」
皇帝「あの地域は慢性的な水不足だ。用水路の開発を急がせろ」
皇帝「盗賊団の動きがだいぶ掴めた。軍団長に討伐隊を組織させろ」
皇帝「なにっ、隣国の王子が結婚しただと!? お、俺より年下なのに……くそっ!」
~
側近「陛下、近頃は今までにもまして政務に励んでおられますな」
皇帝「まあな」
側近「あの事件なら、もう気にすることはありませんよ」
皇帝「ああ、分かっている」
皇帝(──というか、暇をしているとあの事件を思い出してしまうからな)
皇帝(それに……仕事をバリバリやってると部下の能力が見えてくる)
皇帝(女召使をめとるにふさわしい男を、俺が見極めてやる!)
52 = 1 :
そんなある日のこと、城に物騒な報せが届く。
<帝国城>
側近「皇帝陛下、大変です!」
皇帝「どうした?」
側近「地方都市で、反乱が起こった模様です!」
皇帝「反乱……!?」
皇帝「たしかあそこには、行政官を派遣していたな」
側近「はい、行政官のいる役場を徒党を組んだ住民が襲撃したとのことです」
側近「幸い、行政官は手勢とともに逃れてきたため無事でしたが──」
皇帝「……分かった。とにかく、行政官に話を聞いてみるとしよう」
53 :
おもしろい!
さるよけ
54 = 1 :
行政官「おおっ、皇帝陛下! お久しぶりでございます!」
皇帝「反乱が起こったと聞いたが、状況を説明してもらえるか?」
行政官「ははっ!」
行政官「ヤツらは三日前の夜、役所に襲撃をかけてきたのでございます」
行政官「むろん警備もいたのですが、反乱軍の勢いに押されてしまいました」
行政官「しかし、どうにか私と手勢は脱出に成功いたしました」
行政官「現在も、ヤツらは役所にたてこもっているものと考えられます」
皇帝「うむ……」
側近「なんということだ……!」
行政官「私はいわば皇帝陛下の手足として、地方都市に派遣されたのです」
行政官「これは明らかな反逆行為でございます!」
行政官「大至急! 討伐軍の編成をお願いしたい!」
55 :
ほ
56 = 1 :
皇帝「……ところで」
皇帝「反乱軍とやらの主張は?」
行政官「え? な、なぜそんなことを──」
皇帝「反乱軍とて、まさか暇だから反乱を起こしたのではあるまい」
皇帝「なにか理由があるはずだろう」
行政官「……皇帝を倒すだの、自分たちが国を変えるだのと叫んでおりました」
皇帝「…………」
側近「おのれ……!」
皇帝「側近の意見は?」
側近「地方都市の情勢は堅調だと報告が入っております」
側近「反逆に至る要因があるとは考えにくい」
側近「まして皇帝陛下を打倒するなどと、口にするだけでも許せぬ暴挙!」
側近「私も行政官と同様、彼らを反逆者として処理すべきと考えます」
皇帝「うむ」
57 = 1 :
皇帝「では、どうすべきだと思う?」
側近「ただちに軍を派遣して討伐すべきでしょう」
側近「これを許せば、陛下の威厳は失墜し、国が乱れます」
側近「陛下の温和な気質は理解しておりますが、ここは心を鬼にするべきかと」
皇帝「…………」
皇帝「側近、軍団長に命じて討伐軍を組織させろ」
皇帝「明日中には出動させるように」
側近「はっ!」
行政官「おおっ……! ありがとうございます!」
58 = 55 :
ほ
59 = 1 :
その日のうちに、軍団長は兵士たちに反乱の件を伝えた。
軍団長「──これは陛下の温厚なる性質につけこんだ、悪質な反乱である!」
軍団長「役所にたてこもる賊どもを、我が軍の誇りにかけて叩き潰すのだ!」
ワアァァァァァ……!
~
側近「頼むぞ」
側近「陛下に落ち度があるならともかく、同情の余地などまったくない!」
行政官「側近様のおっしゃるとおりでございます」
行政官「どうか手心など加えぬよう、お願いいたします」
軍団長「無論です」
60 = 53 :
さるよけ
61 = 1 :
<皇帝の部屋>
女召使「城内は地方都市の反乱の話題で持ちきりですよ」
女召使「どうしてこんなことになっちゃったんですかねぇ……」
皇帝「心配するな」
皇帝「明日には軍が出動する。軍団長らがすぐに解決してくれるだろう」
女召使「……そうですね!」
女召使「では、失礼します。おやすみなさい!」スタスタ
皇帝「おやすみ」
皇帝「…………」
63 = 1 :
翌朝──
<帝国城>
側近(さて、昼には討伐軍を出動させねばならん)
側近(皇帝陛下からも、兵たちを鼓舞してもらわないとな)
側近「…………」キョロキョロ
側近(そういえば、今日は朝から陛下の姿が見えないな……)キョロキョロ
召使「側近様」
側近「なんだ?」
召使「側近様宛に封書が届いております」
側近「おお、ありがとう」
64 = 1 :
側近(なんだこれは、差し出し人が書いてないじゃないか)
側近(郵便を介した形跡もない)ビリッ
側近(ということは、直接城の郵便受けに手紙を入れたということか)
側近(だれだ、こんなことをするのは……)ガサガサ…
側近「どれどれ……」
『側近へ ちょっと反乱軍のところに行ってくる。 皇帝より』
側近「ふうん……」
側近「…………」プツン
側近「なにをやってやがるんだ、あの童貞はァ!!!」
66 = 1 :
その頃、皇帝は女召使を背に、馬を走らせていた。
パカラッ パカラッ
皇帝「──今頃、側近のヤツ激怒してるだろうな」
女召使「本当ですよ、まったく!」
皇帝「……で、なんでお前がついてくるんだ」
女召使「だってあたしの仕事は皇帝陛下のお世話をすることですから!」
皇帝「はぁ……」
69 = 1 :
~ 回想 ~
皇帝(反乱軍、か)
皇帝(行政官の話だけだと、どうにも腑に落ちない点が多すぎる)
皇帝(もしそれが分かれば、和解も可能かもしれん)
皇帝(側近を始めとした重臣たちはみな、激怒していたから)
皇帝(俺から和解案など出しても、“甘い”といわれてしまうだろう)
皇帝(それに──)
皇帝(地方都市では、俺の童貞は知られていない)
皇帝(反乱軍にも女はいるはず)
皇帝(正体を隠して現地に出向き、うまい具合に解決した後──正体を明かす)
皇帝(惚れられて、抱いて、童貞卒業!)
皇帝(イケる!)
皇帝(これは……ドラマチックに童貞を捨てるラストチャンスなんだ!)
70 :
この先が読める感も好きかも
支援
71 = 1 :
皇帝(よぉ~し、では側近に手紙だけ残してさっそく……)
女召使「へーいーか」
皇帝「!?」ビクッ
女召使「こんな夜遅くに、ど~こに行くんです?」
皇帝「ちょ、ちょっと地方都市までな」
女召使「ほうほう」
女召使「じゃあ、あたしも行きます」
皇帝「は!?」
女召使「あそこは遠いですし、道も険しいですよ」
女召使「絶対あたしが必要になりますって!」
皇帝「……分かった、ついてくるがいい」
女召使「ありがとうございますっ!」
73 = 1 :
~ 現代 ~
パカラッ パカラッ
皇帝「そういえば、久しく馬には乗っていなかったな」
皇帝「しっかり俺につかまっているのだぞ」
女召使「はいっ!」ギュッ
皇帝(背中に胸が……! これはいかん!)
女召使「皇帝陛下の背中、おっきいですね!」
皇帝(俺のナニもおっきくなっている……!)
パカラッ パカラッ
74 :
遅いぞ。これで落ちてしまう支援
75 = 1 :
<帝国城>
皇帝の独走が、側近を通じて重臣たちに伝えられる。
軍団長「なんですと!?」
行政官「皇帝陛下がお一人で!?」
ドヨドヨ……
側近「召使も連れてはいるだろうが……護衛にはならん。マズイことになった」
行政官(ま、マズすぎる……!)
行政官「……軍団長殿!」
軍団長「なんでしょうか」
行政官「私にも、緊急時には兵の指揮権がございます」
行政官「先行部隊として、100騎ほどお貸し下さい!」
76 = 42 :
しえーん
78 = 1 :
軍団長「いかがいたしましょう、側近殿」
側近「たしかに行政官の方が、地方都市への道は詳しい」
側近「陛下が反乱軍と接触するまでに、追いつけるかもしれん」
側近「行政官の先行を認めよう」
側近「反乱軍の討伐より、陛下の確保を優先的に頼む」
行政官「ありがとうございます!」
行政官(よし!)
79 :
ルルーシュスレかと思った
80 = 1 :
夜になった。
皇帝(しまった……!)
皇帝(時間を考えずめいっぱい飛ばしてきたから、寝る場所とメシのこと忘れていた)
皇帝(仕方あるまい、今夜はメシ抜きで寝るか……)グーキュルル…
女召使「陛下! 陛下!」タタタッ
女召使「木の実と野草とキノコを採ってきました!」
皇帝「お、おい……なんかマズそうだが食えるのか?」
女召使「大丈夫です!」
女召使「調理しますんで、ちょっと待ってて下さいね」
火をおこし、木の実を砕き、野草をちぎり、キノコを裂く。
皇帝(す、すごいな……)
82 = 1 :
皇帝「──うむ、うまい!」モグモグ
女召使「ありがとうございます!」
皇帝「……しかし、お前にこんなサバイバル能力があるとは意外だったぞ」
皇帝「連れてきて正解だった」
女召使「あたしが住んでた村は貧しかったですから」
女召使「あ、でも、先代様や陛下のおかげでだいぶ豊かになったんですよ!」
皇帝「……ありがとう」
皇帝「お前のいうとおり、この国にはまだまだ貧しい地方がある」
皇帝「地方都市もそうだが、俺が行ったことすらない土地も多い」
皇帝「こうやって馬でも飛ばさねば、通行すらままならんからな」
皇帝「今回の反乱も、きっとそういうところが起因しているはずだ」
皇帝「できれば平和的に解決したいものだが……」
女召使「陛下……」
83 = 1 :
皇帝「おやすみ」
女召使「おやすみなさい!」
皇帝(草で作った布団か……。こういうのも新鮮だな)ガサ…
女召使「すぅ……すぅ……」
皇帝(可愛い寝顔をしてるな……)
皇帝(コイツ、こんなに可愛かったのか……)
皇帝(──っていかんいかん!)
皇帝「ぐぅ……」
86 :
始皇帝「しこりてぇ」
87 = 1 :
…
……
………
先代皇帝「どうじゃ、息子は」
側近「非常に優秀で、次々に知識を吸収していきますよ」
側近「ただ……皇后様が亡くなられてから、精神的に塞いでいるようで……」
側近「特に女性には心を開かなくなってしまい……」
先代皇帝「ふむぅ……」
先代皇帝「やむをえん部分もあるが、アイツはいずれ上に立つ身」
先代皇帝「このままではいかんな」
先代皇帝「そういえば、この前城で雇われたいといってた女の子がいたと聞いたが」
側近「はい」
先代皇帝「その子に、息子の世話係になってもらうというのはどうじゃ」
88 = 1 :
皇太子「なんだ、お前は?」ジロ…
少女召使「今日から太子の召使になりました」
少女召使「よろしくお願いします!」
皇太子「ふん」
皇太子(新しい召使が来たと思ったら、俺よりも子供じゃないか)
皇太子(父上はなにを考えてるんだ)
皇太子「いいか、俺は女が嫌いだ」
皇太子「なぜなら母上より、すばらしい女などいないからだ」
皇太子「徹底的にイジメ抜いてやるから、覚悟しろよ」ギロッ
少女召使「はいっ!」
皇太子(はいっ、って……アタマ大丈夫かコイツ)
89 = 25 :
さるよけ
90 :
すばらしい。
91 = 1 :
………
……
…
皇帝「……ん」
皇帝(朝か……)
皇帝(ずいぶんと懐かしい夢を見たな)
女召使「むにゃ……」ゴロン
皇帝「オイ、起きろ。討伐軍に追いつかれてしまう」ユサユサ
女召使「は、はい!」
女召使「うわっ、よだれが! す、すみません!」ジュル…
皇帝「いや、お前はそれでいいんだ」
女召使「へ?」
皇帝「なんでもない」
93 = 44 :
さて、俺も童貞を捨てに行くかな・・・
95 = 1 :
その後も皇帝は全速力で馬を走らせ、出発から三日後──
パカラッ パカラッ
皇帝「どうどう」
皇帝「この辺は、まったく道が整備されていないな」
皇帝「城下と地方都市を行き来する人が少ないのも無理はない」
皇帝「しかしこの分なら、今日中にはたどり着けそうだ」
女召使「着いたらどうします?」
皇帝「一般人を装って、役所に向かう」
皇帝「いったい地方都市でなにが起きているのか、たしかめねばならん」
96 :
頑張りなされ。
97 = 70 :
皇帝がんばって
98 :
かっけぇ
99 = 1 :
昼になり、二人はようやく地方都市にたどり着いた。
<地方都市>
皇帝「なんだこれは……」
女召使「なんというか……静かな町ですね」
皇帝(……活気がまるでない)
皇帝(まだ日も高いというのに、どこを見ても暗く沈んでいる)
皇帝(本当にここは城下町と同じ国なのか……!?)
100 :
おもしろい
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