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元スレ男「仔犬? 捨て犬か……」

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――――――――――
犬「ご主人、ご飯もういらないです。」
男「どうした? 腹減ってないのか?」
犬「なんだかだるいのです。食欲もありません。」
男「無理に食えとは言わんが……食べないと元気も出ないぞ?」
犬「半分くらいは食べました。」
男「じゃあ、皿はそのままにしとけ。残りは食う気になったときに食え、な?」
犬「あい……」
犬「カッ……コハァ! おぷ、おろろろ――」
男「おい!? 大丈夫か?」
犬「ごめんなさい……床を汚してしまいました。」
男「そんな事はいい。どこか痛いとか、苦しいとかないか?」
犬「大丈夫です、もう一回食べます。すぐに綺麗にします。」
男「お前はもう休め。片付けは俺がやるから。」
犬「でも……」
男「ご主人様の言う事を聞きなさい。」
犬「あい。」
――――――――――
男「小梅? 調子はどうだ? 辛いならお医者さん連れてくぞ?」
犬「もう大丈夫です。なんともないです。」
男「ホントに大丈夫か? 我慢なんかするなよ?」
犬「お腹が空きました。昨日の残りを食べてもいいですか?」
男「ん、ああ。足りなかったら言えよ。」
犬「今日のご飯は今日のご飯でまた食べるのでいいです。」
男「そうか。小梅は偉いな。」
犬「小梅は偉い子です。だから、なでなでしてもらえるのです。」
男「ちゃっかりしてんな。」
――――――――――
そうです小梅は偉い子です
そんなに賢くないけど偉い子なんです
だからきっと神様がごほうびをくれたのですね
ご主人様はびっくりするでしょうか?
でも、ご主人はきっとその後に小梅を褒めてくれます
もうおねーさんにご主人様をとられる心配もないのです
内緒にしていた方がいいのでしょうか
やっぱり言いましょう
ご主人様に早く喜んでもらいたいですから
>>847
嘘乙
嘘乙
――――――――――
犬「ご主人様、小梅のお腹を見てください。」
男「どうしたんだ急に?」
犬「小梅のお腹はぽっかぽかですよ。」
男「そうだな……ん? お前、少し太ったか?」
犬「えへへ……ご主人様は男の子と女の子、どっちがたくさん欲しいですか?」
男「なに?」
犬「小梅は半々がいいと思っています。」
男「お前……一体どうして?」
犬「きっと、みんなご主人に似て物知りな子供達ですよ。」
男「俺の子だって言うのか?」
犬「小梅が良い子にしてたから、神様が手伝ってくれたのです。」
男「そんなバカな……」
犬「ご主人は嬉しくないのですか?」
男「いや、信じられな――」
犬「信じられないくらい感激ですか!?」
男「まいったなこりゃ……」
犬「小梅は頑張って元気な赤ちゃんを産みます。」
男「産むって、お前……」
犬「だからご主人も小梅を大切にしてくださいね。」
男「ああ……そうだな。」
――――――――――
半「やれやれ、面倒なことになっているな。」
男「俺は何もしてないぞ?」
半「はて、どうだかな?」
男「確かに俺は初恋がモーキー・フラグルってくらい生粋のケモナーだが、分別はある!」
半「冗談だ。それに人間と犬だ、コトに及んだとて結実しまい。」
男「及んでねえし!」
半「なにか、他に考えられるのは……?」
男「他って言っても、発情期間中は特にしっかり他との接触は避けていたしな。」
半「そうだな。接触は無かった。それは私も保証しよう。」
男「おかしなこともあるもんだな。まあ、他人事じゃないんだが……」
半「まさか本当に神からの賜り物だと?」
男「んなワケあるか。そもそも俺は無神論者だ。」
半「それはあまり関係が無いように思うがね。」
男「明日病院に連れていく。」
半「連れていってどうする? 処分すると言うのか?」
男「馬鹿言え! もし本当に身籠ってるなら、まとめて面倒を見てやるよ。」
半「こ奴は本当に果報者だな。こんな素晴らしいご主人様が居るのだから。」
――――――――――
医「偽妊娠ですね。」
男「じゃあ、本当に妊娠しているわけではないんですね?」
医「人間で言えば想像妊娠みたいなものです。」
男「原因って、なんなんですか?」
医「いえ、犬にはよくあることですよ。もちろん個体差もありますが。」
男「どうすればいいんでしょう?」
医「非発情期に入ってしばらく経てば自然と収まります。」
医「繰り返すようであれば、避妊手術で回避はできますが……」
男「……経過を見ようと思います。」
犬「ご主人様? さっき、お医者さんと何を話してたんですか?」
男「ん、赤ちゃんが健康かどうかを話してた。」
犬「小梅の赤ちゃん達はきっと元気ですよ。」
男「うん、そうだな。」
犬「赤ちゃんを産んで、ちゃんと育てて、小梅はもっともっと偉い子になります。」
男「これ以上偉くなったら、どう褒めていいのか分かんないぞ?」
犬「いいんです! ご主人が一緒にいてくれたら小梅は嬉しいです。」
――――――――――
犬「ご主人、おちちが張ってきました……」
男「みたいだな……痛くないか?」
犬「ちょっと痛いです。でも、なんだか嬉しいのです。」
男「辛かったら言うんだぞ?」
犬「はうー……床が冷たくて気持ちいいです。」
男「あのさ、子供のことなんだけどな……」
犬「あい! はやくおっぱい飲ませてあげたいですね!」
男「……あ、うん。」
――――――――――
半「浮かない顔だな。」
男「本当のことを言った方がいいのはわかってるんだけどな。」
半「なまじ疎通ができるが故の苦悩か。」
男「俺はどうしたらいいと思う?」
半「私は主人に意見するほど、不作法ではないつもりだ。」
男「参考にするだけだ。」
半「正直なところ、どうするのが正しいの見当もつかぬよ。」
男「落胆するのは目に見えてる。それが早いか遅いかの差だ。」
半「告げれば今すぐに、黙っていれば自ら気付いて傷付く。か?」
半「先代の飼い犬の時はどう対処したのだ?」
男「紅梅号は蓄膿やってな。子宮取っちまったからこんなことは起きなかった。」
男「それに、お前や小梅みたいに会話できてたわけでもない。」
半「飼い主の子を孕むなど厚かましいにも程がある。と、一蹴してみては?」
男「そんなことできるわけないだろう。」
半「仮にも私の主人なのだから、もっと毅然としていて欲しいものだ。」
男「情けない主人ですまんね。」
半「まあ、そちらの方が親しみが持てるのだがな。」
男「はぁ、決めあぐねてるのは黙ってるのと一緒だよな……」
半「ところでだ、乳が張って苦しいのは私も同じなわけだ。」
男「身体は共用だもんな。何か冷やすもの持って来てやろうか?」
半「もっと良い対処を思い付いたのだが……」
男「何だ?」
半「簡単な事だ。吸ってみてはくれないか?」
男「馬鹿言うんじゃねえよ。」
半「私はいたって真面目だ。」
男「情けない主人かもしれないが、分別も節度もあるぞ。」
半「よこしまな気持ちからではないよ。私も母親というものを体験してみたいのだ。」
半「まあ、それが主人の意に反することなら諦めるとしよう。」
男「…………」
――――――――――
犬「ご主人! 助けてください! 助けて!」
男「どうした? どこか痛いのか?」
犬「赤ちゃんが! 子供たちが消えてしまいます!」
男「落ち付け。」
犬「小梅のお腹、どんどんしぼんできてます!」
男「大丈夫、大丈夫だから。」
犬「ご主人様! 赤ちゃんを助けてください!」
男「おいで、抱っこしてやる。」
犬「……はい。」
男「落ち着いた?」
犬「ご主人……もう大丈夫です。」
男「今日はずっとこうしていようか。」
犬「小梅はダメな犬ですね。きっとバチが当たったんです。」
男「そんなことないよ。」
犬「ご主人を一人占めしようとして、悪い子だから神様が怒ったんです。」
男「違うよ。神様なんていないんだ。」
犬「でも……」
男「小梅はご主人様と神様、どっちを信じる?」
犬「それは……ご主人です。」
男「そのご主人様が居ないって言ってるのに、それが信じられないの?」
犬「はう……」
男「小梅。」
犬「はい?」
男「ヨシヨシ……」
犬「だめです。小梅はなでなでしてもらう資格なんてないんです。」
男「俺がしてあげたいと思ってるの! ご主人様に逆らっちゃダメ。」
犬「ふ、ふわぃ……」
男「ヨシヨシ。」
犬「はうぅ……うっ、うっ……」
――――――――――
私はもともと祭祀者が願望を叶える手助けする者
まあ、この犬はとても祭祀者とは言えないのだが……
とは言え、私がこれに憑いているのも事実
犬でもない、人でもない、生き物ですらない私だが
こんな私にも妹ができた
犬として主人に仕えることもできた
仮初めとはいえ、母の気持ちを味わうこともできた
久方ぶりにとても晴れ晴れとした気分だ
本来は祭祀者の利益のため
対価として他者に不利益をもたらすものであるのだが
困ったことに今回は該当する相手というものが居ない
まあ、不利益なら自分が被れば良いだけの話だ
飢えと恨みの煮こごりのような私の魂では
大した対価にはならないかもしれない
だが、姉として妹にはできる限りのことをしてやりたい
実体があれば涙を舐めて拭うこともしてやれただろうに
なんとも不便なものだ
私のご主人は神など居ないと言った
おそらくは全知全能のそれを指して言ったのだと思う
そういう意味では私も居ないと思っている
しかし、神と名のつくものならここに居るのだ
名が付くだけで全知全能には比ぶるべくもないが
小さな嘘をまことにすり替えるくらいはお手の物
ご主人様の驚く顔を見れぬのは残念だが
それは貸しということにしておくか
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