元スレ春香「イン・マイ・ライフ」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
1 :
私の人生の中で、忘れられない場所があります
変わってしまった場所、まだ変わらない場所
そして、もう無くなってしまった場所
この場所もその内のひとつ
あの人と出会った、思い出の公園
これは私たちが、まだ子供だったころのお話…
2 = 1 :
「カンパーイ!」
「カンパーイ!!!」
音頭を取った社長の声に、15人が唱和しました
3月も終わりに迫ったある日の765プロでは、ささやかなパーティーが催されました
雪歩と真の高校卒業、そして伊織と美希の中学卒業を祝うパーティー
雪歩は4月から私立大学に、伊織と美希は私立高校に、それぞれ進学します
真は、アイドル活動に専念する道を選びました
3 = 1 :
「大学かぁ。ちょっと羨ましいな…」
「アンタが自分で選んだ道でしょ?」
グラスを片手に、律子さんに諭されている真
中身はもちろんジュースです
はぁ…
大学かぁ…
私も受験生になっちゃうのかぁ…
大学に進むなら、の話しですけどね
5 = 1 :
「うぅ…私もついに受験生だよぉ…」
私の心の声が聞こえちゃったのかな?
伊織に愚痴をこぼしているやよい
「分かんないとこあったら教えてあげるから、頑張んなさい」
「うん…ありがとう伊織ちゃん」
私に聞いてくれてもいいんだよ?
って言いかけて止めました
「春香さんはいいです」
とか言われちゃったらショックだから…アハハ…
6 :
良いぞ
7 = 1 :
千早ちゃんとソファーで談笑しながら、目だけはプロデューサーさんを追いかけている私
癖なんですよね、これ…
ひょっとして、私ったらストーカー予備軍?
自分で否定できないのが辛いとこです…
視線の先にいるプロデューサーさんに、社長が何かを耳打ちしています
それに対して小さく頷いているプロデューサーさん
内緒話はダメですよぉ?
8 :
つづけて
9 = 1 :
「諸君、ちょっと良いかね?」
社長の声に静まる事務所内
横にはプロデューサーさんが落ち着かなげに立っています
「今日は4人の門出を祝うパーティーだ。しかし…」
しかし?
「ここにもう1人、新たな道を歩み出そうとしている男がいる」
社長に促されて、照れくさそうに頭を下げたプロデューサーさん
新た道…って、どういうことですか?
10 = 1 :
「えっと…ただいまご紹介にあずかりました…」
緊張しているのは分かりますけど、その挨拶はいかがなものでしょう?
ってみんなが思ってるはずなのに、声に出す人は誰もいませんでした
「今日は4人のためのパーティーだし、日をあらためて報告しようと思ったんだけど…社長が、"門出には違いないから"って」
あー、もう!
やきもきするなぁ!!
早く本題に入って下さい!!!
11 = 1 :
「えー、実はですね…社長のご好意により、私ですね…4月から…あー、そのー」
4月から?
4月から何ですか?
「プロデュース業及びマネージメント業を学ぶために、アメリカに留学させて頂くことになりました」
…
……
………
…………え?
12 :
ふむ
13 = 1 :
水を打ったように静まり返った事務所の中
プロデューサーさんも次の言葉を紡ぐことができずに、視線を宙に泳がせています
「聞いての通りだよ、諸君!」
事務所内に響く社長の声
聞いての通りと言われましても…
「これは1人の男の門出だ!全員で祝ってやろうじゃないか!!!」
ああいうとき、ホンットに空気読めないわよね、男って!
これはパーティーの後での律子さんの言
まったくもって同感です…
14 = 1 :
「渡米はいつになるんですか?」
私たちを代表するかのように、あずささんが声を発しました
「いまのところ、4月の第2日曜日を予定してます。いろいろ準備や手続きがあるんで」
いまから約半月…
そしたら…
プロデューサーさんがいなくなっちゃう!」
15 :
む・・・
16 = 1 :
「そんなの、や!」
予想通り…というべきなのかな?
涙混じりの美希の声が響きました
「ミキも一緒に行くの!」
当然のように、プロデューサーさんは困惑顔
だけど私には、美希を攻める気は起こりませんでした
だって、同じ気持ちだったから
それに、プロデューサーさんをじっと見つめている何人かも、きっと…
17 = 1 :
「ごめんな、美希」
「なんで謝るの?」
「連れては行けないからだよ」
「それくらい…それくらい分かってるの!」
じゃあ言わなきゃいいのに
なんて言葉は、誰の口からも出てきませんでした
そんななんとも言えない雰囲気の中、その日のパーティーは終わりました…
18 = 1 :
「すまんな」
「いえ、ボクは構いません…」
「はい。おめでたいことですから…」
「ありがとう真、雪歩」
後片付けが終わって事務所を出るとき、プロデューサーさんたちの会話が聞こえてきました
美希と伊織は、後片付けが終わると同時にそそくさと帰路に着きました
私は結局、プロデューサーに何も言えませんでした…
20 = 1 :
「おはよう、春香」
「あ…おはようございます、プロデューサーさん」
次の日の朝、笑顔で挨拶してくれたプロデューサーさんに対しても、私の口調は堅いままでした
「春香の今日の予定は…っと」
「午前中はボーカルレッスン、午後からは出版社に挨拶廻りです」
「お、ちゃんと覚えてたな。感心感心」
「…仕事ですから」
あーあ
子供ですね、私
すごく不機嫌そうな口調になっちゃいました
21 = 1 :
事務所の中に入っていくプロデューサーさんに
「美希ちゃん、今日はお休みするそうです」
って声をかけた小鳥さん
だけど、プロデューサーさんと目を合わそうとはしません
お察しします、小鳥さん…
23 = 1 :
午前のレッスンが終わり、午後からはプロデューサーさんと一緒に出版社を廻りました
「アメリカかぁ!頑張って来いよ!」
留学の報告を受けた出版社の人たちは、一様にプロデューサーさんを激励していました
はい!行ってきます!
と笑顔で応えているプロデューサーさん
なんか…
私だけ場違いな空気です…
24 :
Pに依存していた皆が少しずつ成長していき、帰って来たPに褒められて嬉しくて抱き付く展開オナシャス!
25 = 1 :
「叩かれすぎて肩痛くなってきたよ…」
挨拶廻りの帰り道、そう言いながら自分の肩を撫でているプロデューサーさん
それに対しても、何も返せない私
俯いたまま、プロデューサーさんの少し後ろをトボトボ歩きました
そんなときでした
「…春香」
立ち止まったプロデューサーがどこかを指差しています
「ちょっと座らないか?」
指の先には、夕暮れどきの公園に中で佇む、青いベンチが見えました
26 = 1 :
促されるままベンチに腰掛けた私
「飲み物買ってくるからちょっと待っててな」
自販機に走り寄っていくプロデューサーさんの背中に向かって
べー
って舌を出してやりました
いえ、自分でも何やってるのかよく分からないですけど…
ただ、なんとなく
27 :
うわキモ
書いてる側は分からないかもしれんが、つまんないよ
28 :
はるるんハッピーエンドなら④
29 = 1 :
「ほら、飲みな」
手渡された温かいカフェ・オレ
温かいのが辛い場合もあるんですね
なぜだか分からないけど、涙が出そうになっちゃいました
分からないことだらけですね、私…
プロデューサーさんが缶コーヒーに口を着けたのを確認してから、私もカフェ・オレを頂きました
はぁ…
春ですね、もう
30 = 1 :
「なぁ、春香」
「なんですか?」
「俺はな…お前のことが大事だ」
「なっ!」
なに言い出すんですかいきなり!
カフェ・オレ落としそうになったじゃないですかぁ!
31 = 1 :
「いや、違うな…何と言うべきか…」
「な、なんなんでしゅかいったい!」
うわぁ…
思いっきり噛んじゃったし
もちろんプロデューサーさんが悪いんですけどね!
「俺はな…」
「はい…」
「お前の気持ちに気付いてた」
「…え?」
32 = 1 :
「正確に言うなら、お前"ら"の気持ちだな」
「私"たち"…?」
「ああ。だけどな…気付かないフリをしてたよ。理由は相手によって違うけどな」
「例えば?」
「自分で言うのもアレだけど…俺への気持ちが仕事の活力になるヤツもいれば、失恋が悪い方向で仕事に影響しそうなヤツもいる」
誰のことを言ってるのかは…
分かっちゃいますね、だいたい
33 = 1 :
「だからあえて、気付かないフリをしてた」
「もし…告白されてた場合は?」
「そのときはちゃんと返事をして断ったさ」
ホントかなぁ?
情に流されやすそうなんですよね、この人
「今回の留学は、そのことと関係があるんですか?
「それは関係無いよ。まぁ、お前らから逃げてるように思われるかもしれないけど」
34 :
春香さんを、春香さんをぜひ
支援
35 = 1 :
私はそんなふうには思いませんけど…
だけど何人かは、そう思っちゃいそうですね
「全員と個別に話すつもりではいるんだ」
「はい…それが良いと思います」
「だけどな…えっと…」
急に焦り始めたプロデューサーさん
どうしたんですか、いきなり?
37 = 1 :
「俺はプロデューサーだ」
「はい」
「春香はアイドルだ」
「はい」
「だからだ」
「はい?」
まったく話が見えないんですけど…
38 = 1 :
「その…好きなんだ」
「…何がです?」
「…お前、鈍感だな」
あっ!ヒドいなぁ!!
プロデューサーさんに言われたくないですよぉ!!!
って、気付いてたんでしたっけ、私"たち"の気持ち
でも、何が好きなんでしょう?
ひょっとしてカフェ・オレ?
ホントはカフェ・オレ飲みたかったんですか?
39 = 34 :
いいぞいいぞ
40 = 1 :
「だから…お前のことが好きだって言ってんの!」
カラン
って音を立てて転がったカフェ・オレの空き缶
ジッと私を見据えているプロデューサーさん
濃くなっていくオレンジ色の中、時間が止まってしまいました
正確には、私の思考回路が…
41 = 36 :
ハァン・・・
42 = 1 :
「春香?おい、春香」
「…ひゃい」
噛みまくりですね、私…
だけど、この場面じゃ仕方無いですよね?
「…今度は冷たい物飲むか?」
「…ひゃい」
ベンチから立ち上がり、再び自販機へと向かったプロデューサーさん
放心状態の私は、その背中を目で追いかけることはできませんでした
43 = 6 :
わっほい!
44 = 1 :
「落ち着いたか?」
「…だいぶ」
冷たいオレンジジュースの缶を額にあてがいながら、生返事をする私
さっきのプロデューサーさんの言葉を頭の中で反芻していました
好き?
私のことが?
…え?
ええっ!?
45 :
ファッキューハルカッス
46 = 1 :
「あの…プロデューサーさん?」
「なんだ?」
「えっと…できたらで構わないんですけど…」
「なんだよ?」
「もう1回言って頂けると…」
「ふざけんな!やだよ!」
結局、もう1度言っては貰えませんでしただけど…
代わりに、手を握ってくれました
まだ栓を開けていないオレンジジュースが、ドスっていう鈍い音を立てて地面に落ちました
夕焼けと同じ色をした、オレンジジュースの缶が…
47 :
いいぞいいぞ
48 = 1 :
「ホントはな、お前のこと連れて行きたい」
「…はい」
「でも、それは無理だ。分かるよな?」
「はい」
「だから…お前は日本で輝け」
「はい?」
「アメリカからでも見えるように、ピッカピカにな!」
49 = 1 :
…ふふ
責任重大だなぁ
手を握ったままそんなこと言われちゃったら、返事なんて1つしかないじゃないですか!
「はい!」
涙の混ざった私の声が公園に響き、その声が夕焼け空に吸い込まれたとき…
2つの影と2つの唇が、同じタイミングで重なりました
私たちが初めて出会った、小さな公園の青いベンチで…
50 = 1 :
みんながどんな感情を持っていようと
プロデューサーさんがどんな感情を持っていようと
そして私がどんな思いを抱いていようと…
時間は、自分勝手に過ぎていきます
4月の第2土曜日
765プロの事務所では、プロデューサーさんの送別会が開かれました
私とプロデューサーさんのことは、まだ誰にも話していません
ちょっとズルい気もしますけどね…
みんなの評価 : ★★
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