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元スレ魔王「お前の泣き顔が見てみたい」

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101 = 1 :

言いにくそうに側近が尋ねる。

側近「あの・・・・その父親はどうなったのですか?」

勇者「死にましたよ?」

側近「・・・」

勇者「僕が勇者になってからすぐに、僕を取り戻す為に
  王国へ一人で攻めたらしいです。まぁ返り討ちに
  あったんですけどね」

勇者「あの時ほど泣いた事はなかったなぁ・・・。あ、
  昔は僕ってすごく泣き虫だったんですよ?」

あはは、と勇者は笑う。

102 = 1 :

魔王「・・・なぜ笑ってそんなことが言える」

その声は震えている。

側近「魔王様・・・」

魔王「なぜお前は笑っていられるのだ!泣きたいのなら
  泣けばいいだろう!?」

勇者「・・・笑うしかないじゃないですか。泣けば何か
  解決するんですか?・・・誰が助けてくれるんですか」

勇者「ましてや僕は救う側ですし、助けるためには
  安心を与えなきゃいけないでしょう?こんな
  化け物でも・・・・一応僕は勇者ってことになってるんですからね」

魔王「お前が泣けば私が救ってやる」

103 = 1 :

勇者「・・・・・・っ!!」

勇者の顔がくしゃりと歪む。

魔王「試しにやってやろうか」

魔王が勇者をやさしく抱きしめる。

魔王「・・・お前は化け物なんかじゃないよ」

勇者「あはは・・・・・・・そんなくしゃ、くしゃな顔で言い、ますか、普通・・・」

魔王「・・・・うるさい奴だ。・・・・ここまでしてやっても
  お前は泣かないのだな」ギュ

勇者「・・・泣くのは死んでからって決めてますから」

104 = 1 :

側近の咆哮が雰囲気がぶち壊した。

側近「ナニ勝手に魔王様に触れとんじゃ貴様ァアアアアアアア
  アアアアア!!!!」バッキィイイイ

勇者「ふげらばっ!!」ブシャァア

勇者の体が錐揉み回転しながら見事なアーチを描く。
その軌跡を勇者の血が美しい弧円を描く。

側近「このっ!雑用のっ!分際でっ!!」ドガッガスッバキッ

勇者「な、泣いちゃう!ごふッ、違う意味で泣きそう!あと
  一発一発が重いよ?!ぐはぁッ」

魔王「・・・まぁ頑張れ」

105 = 1 :

ーーーーーーーー約1年後


魔王「・・・勇者もすっかりここに馴染んだものだな」

側近「そうですね」

「おい!勇者ちょっとこっちきてくれ!」

「あとでこっちもよろしくね!」

「おいおい!まだか勇者!」

勇者「は、はい!今すぐ!」ダダダダダ

魔王「なんだかもう別の意味で大変そうだな・・・」

側近「もう城の中では勇者=雑用みたいな意味になってますね・・・」

魔王「代わりに私が暇なのだが・・・」

側近「仕事してください」

106 = 1 :

勇者「や、やっと今日は大体の仕事終わったかな・・・」

鳥族1「よっ」

勇者「ど、どうも鳥族1さん・・・」

鳥族1「今日も忙しそうだな」

勇者「ええ、お陰様で・・・」

鳥族1「あぁ、そうだ。狼族部隊の連中がな、また
  組み手しようってよ」

勇者「あぁ・・・・、ほんとですかぁ・・・・」ニコ

泣きそうな顔で笑った。

107 = 1 :

鳥族1「あとお前に伝えときたい事があってよ」

勇者「はい、なんです?」

鳥族1「遠征に行ってた兵がよ、お前の事見たって
  言ってたんだよ。流石にそんなの・・・」

勇者が目を逸らした

鳥族1「・・・・・ってあんのか?なんだお前話聞くときは相手の
   目を見るって礼儀も知らねぇのか、おい」ガシッ

勇者「な、なにもしりもふぁん」

108 = 1 :

鳥族1「・・・何か知ってんだな?」パッ

勇者「うぅ・・・、鳥族1さん以外ならごまかせたのに・・・」

鳥族1「何を知ってる?話せ、おい」ギロッ

勇者「・・・魔法ですよぉ、魔法」

鳥族1「ま、さか・・・・分身ってやつか?はは・・・とうとう
  ありえねぇぞ、おいおい・・・・」

勇者「・・・別に信じてくれなくてもいいんですけどね」

鳥族1「そんな事・・・可能なのか・・・?」

勇者「できますよ~、でもまぁけっこう魔力食うし、
  あの魔法って魔力を使うっていうか分けるって感覚で発動させますからね」

鳥族1「そりゃ・・・・すげぇな」

勇者「でも魔方陣の構築も構成も死ぬほど面倒くさいから
  一気に何体もってわけにはいかないんですけど」

鳥族1「それでお前はその分身を使って何をするつもりなんだ?」

勇者「・・・・やっぱり鋭いですね」

勇者「いずれわかりますよ。安心してください。絶対に悪い事にはなりませんから」

109 :

どんどん続けて

110 = 1 :

あの人間がこの城に来て約1年半。
今のところはまだ何も起きていない。
でもきっとあの人間は尻尾を出す筈・・・・。
城の者達が、・・・たとえ魔王様があの人間を信用してい
ても、私だけはあの人間を疑い続けなければいけない。
私は魔王の側近、魔王様を、あの子を守らなくてはいけないのだから。

ーーーーーーーーーーーーー8年前

「今の魔王様ももう長くはないだろう。・・・・長年勇者共に与えられてきた傷は深い」

側近「・・・・はい」

「そこでお前には次期魔王の世話をしてほしいのだ」

側近「私が・・・・世話係ですか?」

「そうだ。次期魔王に姿が似ているのはお前ぐらいなものだからな。それに同じ女だ」

側近「私と同じ・・・・人型。相当な魔力をお持ちなのですね」

魔物で人の姿に似ている者は珍しい。
当然人に似ている為に、その肉体は並の魔物に劣るのだ。

「・・・お前と同様にな」

「すでにその者は城に到着しているようだ、会ってみるがいい」

111 = 1 :

その小さな魔王は側近に満面の笑みを向けている。
絹糸のように艶やかな金色の髪をなびかせてこちらに
走ってきた。

魔王「お姉さんが私のお世話をしてくれるの?これから
   よろしくお願いします!って言ったほうがいいのかな?」

・・・・こんな小さい子が、魔王だなんて。

側近「・・・・はい、こちらこそ宜しくお願い致します」

112 = 1 :

側近「・・・・一体どういう事ですか!?」ダンッ

「・・・何がだ?」

側近「・・・・あんな小さい子が次期魔王だなんて聞いていません」

その声が震えている。

「はは、魔王に同情するつもりか?・・・そんなものは無駄
にしかならん。魔王がいなければ我らは滅ぶ、必要な犠牲
なのだ。お前が一番良くわかっているのではないのか?」

側近「・・・・ッ!!」

「それにあの小娘は充分に魔王たりえる魔力を有している。
・・・・・300年ぐらいは城を守れるのではないか?」

側近「・・・・・このッ」

「お前が無駄に事を計ることはないのだ、側近よ。・・・ただ
お前はあの小娘に魔王の意義を与えていれば良いのだ。
魔王は戦い、我らは事を計るのが役目なのだからな」

113 = 1 :

魔王「ねぇねぇ側近さん!」

側近「・・・何でございましょう」

魔王「すっごく暇なんだけどなぁ?」

魔王が上目遣いで側近を見つめ、小首を傾げて尋ねる。
いわゆるカワイイ攻撃である。

側近「そうですか」

側近には効果がないようだ・・・・。

魔王「・・・うぅー、暇暇暇暇ーーーー!!!なんか一緒にやろうよ側近さんっ!」

側近「その言葉遣いの矯正、魔法の訓練、掃除などでしたらかまいませんよ」

魔王「うぇっ、そんなの楽しくないよっ!?」

魔王はくしゃっと顔をしかめた。

114 = 1 :

魔王「うう、やっぱり村の方が楽しかったなぁ・・・・」

側近「・・・・」

魔王「・・・・ねぇ側近さん」

側近「なんでしょうか」

魔王「・・・・魔王になることって、悲しい事なのかな」

ぽつり、ぽつりと魔王は言葉を続ける。

魔王「私が次の魔王になるってきまって・・・・・お父さんとお母さん、泣いてたんだ」

魔王「どうして泣いてたのかな?城の人たちは誇らしい事って言ってたのになぁ・・・・」

側近「・・・それは、」

私は何もこの子に感じてはいけない。

側近「・・・・・とても誇らしい事なのだと思います」ニコ

だが自分の胸にささる痛みが止むことはなかった。

115 = 1 :

ーーーーーーーーー1年後

魔王「どうして外に出ちゃ駄目なの!?」

その目は涙で赤く腫れている。

側近「・・・貴方様は魔界にとって重要なお方ですから」

魔王「そんなのわからないよ!」

側近「貴方様を危険にさらすわけにはいかないのです」

魔王「だったら魔王なんかやめる!言葉遣いだって直さない!
  魔法の練習だって、全部、全部止める!!」

側近「・・・それはできません。・・・・・もう決まった事ですから」

魔王「・・・・・もういい、出てってよ」

側近「・・・・わかりました、失礼します」バタン

魔王「お父さん、お母さん・・・・もう会えないの?」ポロポロ

側近「・・・・いつまでこんな事を続ければいいのよ」

116 = 1 :

側近「・・・落ち着きましたか?」

魔王「・・・うん」

側近「・・・貴方様は一年前、私に魔王になる事は良い事な
  のか、と聞きましたね」

魔王「うん」

側近「正直、私は誇らしい事などとは少しも思っておりません」

魔王「・・・・えっ」

側近「私の兄は・・・・・現代魔王なのです」

117 = 1 :

魔王「・・・・じゃあ今の魔王って側近さんのお兄さんなの?」

側近「・・・そうです。兄とは言っても、200歳程年上ですが」

側近は静かに言葉を続ける。

側近「兄は魔王として城を、魔界を約300年守り続けました。
  そして魔王である事を今も誇りに思っています。
  ・・・・今ではもう立つ事さえできないのに」

側近は唇を血が出る程かみ締める。

魔王「側近さん・・・」

側近「誇りと引き換えに命を失うなどこんなにも馬鹿げた事
  はありません、そう私は思います」

魔王は力なく笑う。

魔王「じゃあ・・・・私もいつか勇者に殺されちゃうんだね」

側近「そうはなりませんよ」

魔王「・・・どうして?」

側近「私が守りますから」

118 = 1 :

ーーーーーーーーーーーーーー2年後

「魔王就任、おめでとうございます」

魔王「うむ」

「これからの魔界は貴方様にかかっています。
貴方様の御力で勇者一行を幾度もはねのけて
いただける事を期待していますぞ」

魔王「・・・わかっている」

魔王「・・・・少し一人になりたい、下がれ」

「「はっ」」

城の者達が部屋を出て行く。そしてやがてその扉は
また開かれた。

側近「魔王様、就任おめでとうございます」ニコ

119 = 1 :

魔王「側近っ!久しぶりっ」ダッ

魔王は側近に抱きつく。側近はクスリと笑った。

側近「もう、言葉使いはどうしたんですか?」

魔王「うぅ、あの話し方、年寄りっぽくてちょっと・・・・」

魔王は急に沈痛な面持ちになった。

魔王「側近の兄さんの事は残念だったね・・・・」

側近「・・・・・兄は最後まで笑って逝きました」

魔王「・・・すごいお方だね、私なんか全然だよ」

側近「・・・兄のようになってはいけないのですよ?」

魔王はにっこりと笑う。

魔王「わかってる」

120 = 1 :

ーーーーーーーーーーーーーーーー3年後

魔王「やはり私では力不足、か」

魔王は自傷気味に笑う。

側近「辺境の村に森の主が来るのを事前に止められなかったのは
  貴方の責任ではありませんよ」

魔王「だが側近もわかるだろう?城の者全員が私を信じている
  わけではない」

側近「これから皆に慕われるような魔王になれば良いのですよ」ニコ

121 = 1 :

魔王「・・・・側近」

側近「何でしょうか」

魔王「・・・・本当に皆から慕われる魔王とは何なのかな?死ぬまで
  勇者一行から城を守り続ける魔王がそうなのか?」

側近「・・・それは」

魔王「他の道はないのか?人と魔物が手を取り合って共に平和を
  得る事は本当にできないのか・・・?人と話し合うことは本当にできないのか?」

側近「・・・・それはこの魔界の歴史が示していますよ」

その声は重く、冷たい。

魔王「・・・私は魔族の為に本当に必要な事をしたいんだよ、側近」ニコ

側近「・・・魔王様」

・・・なんて優しい魔王。
でもその道は最も辛く、苦しい道。
純粋すぎる貴方一人では耐え切れないかもしれない。
だから私は貴方様を命を懸けて守ろう。これからもずっと、いつまでも。

122 = 1 :

ーーーーーーーーーーーーーーーー2年後


側近「もうっ!あの人間はどこにいったのですか!?」スタスタ

「・・・・・・・・す」

側近「これはあの人間の声・・・・?」

今は城の中で誰も使っていない筈の部屋から勇者の声がしたのだ。

側近「一体何を話しているの・・・・?」

123 = 1 :

勇者「ええ・・・・、もうすぐです」

側近が聞いたこともないほど冷たく鋭い声。

「そうか、だが期限は明日までだ。」

勇者「・・・・申し訳ございません」

「良い、律儀にお前が王国を出てから20年も待った甲斐が
あったというものだ」

勇者「はい。必ずや貴方様のお望みに応えられるような
  戦果を持ち帰りましょう」

勇者「・・・・必ず王様に魔王の首を」

「うむ」

側近「・・・・・・・・・・嘘・・・・よね」

124 = 1 :

側近「はっはっ」タッタッ

・・・早くこの事を魔王様に伝えなければ

勇者は嘘をついていた。
魔物を救う気などなかったのだ。
ここにくるまで村に立ち寄ったのは今度攻める時に
警戒心を根こそぎ奪う為。
この城に来たのも魔族の戦力の要を潰す為。
いつも浮かべていたあの笑みさえ嘘だったのか。
1年前に魔王様に対して浮かべたあの表情さえ・・・

早く、早くこの事を・・・

ぽたり、と床に滴が落ちる。

側近「はっ・・・・はっ・・・・・・・・・・どう伝えればいいのよ・・・・うっ」ポロポロ

言えない。
言える訳がない。

なぜ私が泣いているのかはわからない。
こんな事などわかっていた事ではなかったのか。
それとも私もあの人間を心の底では・・・

側近「うっ・・・ひっく・・・・・・もう・・・・勇者を信じる
  しかないじゃないのよ・・・・・」ポロポロ

125 = 1 :

側近「・・・・勇者」

勇者「うぇっ」ビクッ

勇者「ど、どうも側近さん・・・本日はお日柄も良く」ビクビク

側近「・・・・」

勇者「・・・・あれ?今日は殴らないんですね。ってぇえ!?
  今僕の事勇者って・・・・」

側近「・・・・私は貴方の事を信じますよ、・・・・勇者」スタスタ

勇者「・・・・ありがとうございます」

勇者はその後姿を見送る

勇者「・・・そっかぁ・・・見られちゃったんだな・・・」

勇者「それでも僕の事を信じてくれたのか・・・」

126 = 1 :

魔王「ううむ、暇だな」

側近「・・・・・そうですね」

勇者「どうも」

魔王「む、なんだか結構久しい気がするぞ・・・、仕事は良いのか?」

側近「・・・・・ッ!」

勇者「・・・・・はい、仕事は今日全て休んできましたから」ニコ

・・・・その笑みに何が含まれているのか

側近「・・・・・」

勇者「少し、お話したい事があるんです」

127 = 1 :

魔王「・・・・話とは何だ?」

勇者「はい、今日をもってここを辞めさせていただこうと思いまして」ニコ

魔王「・・・・どういう事だ」

勇者「言葉通りの意味ですよ?だからですね・・・・」

勇者「記念作りに魔王様と一度戦ってみたいなぁ、と」ニコ

128 = 1 :

側近「信じてるって・・・・言ったのに・・・・ッ!!!」ダッ

側近「勇者ァアアアアアアアアアア!!!!!」

魔王「そ、側近?!」

側近は城の歴戦の兵士とは比べ物にならないほどの
早さで魔方陣を組み立てる。

勇者「遅すぎですよ」ブン

勇者が軽く手を横に振るっただけで魔法陣がこなごなに
砕け散った。

側近「なっ・・・!?」

勇者「少し大人しくしててください」

一瞬にして側近の自由が拘束される。

側近「・・・・・・ッ!・・・・・・魔王様・・・!!逃げ、て・・・・・・ッ!!」

129 = 54 :

頑張れ

130 = 1 :

勇者「そんな状態でよく喋れますねぇ・・・・・」

魔王「・・・・・勇者、貴様本当に何のつもりだ?」ギロッ

勇者「・・・やっとですか、戦闘態勢に入るの遅すぎですよ?」

勇者「言ったじゃないですか、これはただの記念作りだって、遊びですよ遊び」

魔王「遊びで側近にこんな事まで・・・・・!!!私はお前の事
  を誤解していたようだな」

勇者「・・・・いいから早くやりましょうよ」

側近「や・・・・・め、て・・・・・」ポロポロ

ぎしり、と魔王の顔が歪む。

魔王「いいだろう・・・・!!やってやる・・・・!!!」

131 = 1 :

魔王「・・・・どうした、来ないのか」

勇者「そんな言葉を吐ける程、貴方に余裕なんてない筈なんですがね」ニコ

勇者「・・・・お先にどうぞ?」

勇者は魔王に恭しくお辞儀をしてみせる

魔王「どこまでも・・・・嘗めた奴だ」

魔王の膨大な魔力が魔方陣に転換され、掌に巨大な魔弾が構築される。

魔王「・・・どうだ、これでもお前はそんな口が利けるのか?」

勇者は退屈そうに口を開く。

勇者「あはは・・・そんなに僕と戦いたくありませんか?
  勇者はこんな事しない、勇者は優しい、って今でも思ってるんですか?」

勇者「・・・・側近さんでも殺してみれば貴方の気も変わるんですかね」

勇者はいつものあの笑みを浮かべた。

132 :

いいね

133 = 1 :

魔王「・・・・もう、いい」

その声には殺気が篭っている。

魔王「お前はやはり《勇者》だったのだな」

ゴッッッッ!!!!!! という音と共に唸りを上げて魔弾が
勇者に放たれた

勇者「・・・そんな顔で泣かないでくださいよ」

勇者は目の前に迫る魔弾を前にして笑みを浮かべたまま、
そうぽつりと呟いた。

側近「(・・・・ッ!まさか・・・・!)」

耳が割れるほどの轟音が城中に響いた。その魔弾の余波
で城の頂上の屋根の半分が吹き飛ぶ。・・・そして静寂が訪れた。

134 = 1 :

魔王「・・・どうせお前にはかすり傷一つついてはいないのだろう?」

魔王は自傷気味にはき捨てる。勇者の姿は巻き上がった
粉塵のせいで確認することはできない。

魔王「お前に勝てるとなどは思っていない、だが魔王として私は最後まで戦おう」

側近「魔王様!」

魔王「な、何!?拘束が解けたのか!」

側近「ああ、魔王様、貴方は何ということを・・・」

魔王「・・・どういう事だ」

側近は数時間前に勇者と王様のやり取りの件について話した。

魔王「なん・・・だと」

魔王の顔が蒼白に染まる。

135 = 1 :

側近「・・・おそらく勇者はわざと魔王様を嗾け、魔王様が自分を殺すように・・・」

震える声で側近は呟く。

魔王「ゆ、勇者・・・・、どこにいるのだ?・・・勇者ぁあああ!!」

悲痛な叫びに応える声は聞こえない。

魔王「う、・・・ぅぁああぁああああああああああ!!」

勇者「か、勝手に殺さないでくださいよぉ・・・」

弱弱しい声で勇者はそう呟いた。

136 = 1 :

魔&側「ひゃうっ!?」

そういえばよく目を凝らすと人影が見える。

魔王「お、お前よくも私を騙し・・・・・」

そこから言葉が出なかった。我が目を疑った。
服はずたずたに破れ、その服は真紅に染まり、ところ
どころがおかしな方向に曲がっている。
その血に染まった顔はあの笑みを浮かべていた。

勇者「あはは、ちょっと死ぬかと思いましたね・・・。ごほっ・・・流石魔王様です」ニコ

魔王「あ、・・・・あ・・・そん、な」ガタガタ

自分に対する嫌悪で体が小刻みに震える。これは私がやったのだ。

137 = 1 :

側近が勇者に駆け寄る。

側近「勇者!大丈夫ですか!?今、回復魔法を・・・・」

側近の手を勇者が掴む。

勇者「しなくていいですよ・・・。これは僕に対する罰です
  から。回復魔法なら自分で今やってます。まあ、
  ぎりぎり立てるぐらいまでで止めますけどね」

魔王「・・・なぜこんな事をしたんだ、お前ならあんな魔弾
  ぐらい軽く止められるだろう?」

魔王の手はまだ軽く震えている。

勇者「元々魔弾自体はくらう予定だったんですけどね。
  魔王様の泣いている顔を見たら防御魔法を使う
  気になれなかったんですよ・・・・」

魔王「・・・馬鹿だな、お前は本当に・・・」

138 = 1 :

側近「・・・勇者はこれからどうするつもりなんですか?」

勇者「これから王国へ向かいます。魔王討伐の期限は明日ですから」

魔王「そんな体で行くのは無茶だ!」

勇者「大丈夫ですよ。歩いていくわけじゃないですから、
  それに徒歩じゃ1日で王国に着きませんし」

夥しい数の足音が響いてくる

兵士達「一体何があったのですか!?」

側近「後で説明しますから、今は出て行ってもらえますか」ギロッ

兵士達「は、はい」

ぞろぞろと部屋を出て行った。

139 = 1 :

側近「どうして勇者はこのような事を・・・?」

勇者「王国に僕が魔王に敗北した事を知らせる為ですよ」

魔王「・・・・勇者」

勇者「人間の魔法に関する技術はもはや魔物を超えてい
  ます。並大抵の事では誤魔化すことができないんですよ」

魔王「私と戦ったのもその為なのか・・・?」

勇者「ええ、そのお陰で僕の体には魔王様の残留魔力
  が残ってますから、少しぐらいなら誤魔化せるはずです」

140 = 1 :

魔王「そういう事なら事前に話してくれれば・・・!」

勇者は穏やかな顔で魔王に告げる。

勇者「僕と本当に戦いましたか?」

魔王「・・・・それは」

勇者「・・・もう時間もありませんからね」

側近「それならもっと前に話していれば良かったのでは?」

勇者はすこし困ったような顔になった。

勇者「うぅ、・・・痛い所つきますね」

141 = 1 :

勇者「・・・それは楽しかったからですよ」ニコ

側近「・・・それはどういった・・・」

勇者「僕が最初に来たときの事を覚えていますか?」

魔王「ああ、見たときからおかしな奴だと思ったぞ?」

勇者「うっ、それはちょっとおいときまして・・・最初は
  僕も大変だったんですよ。皆さんからボコボコに
  されたり、食事五日間連続なしとかされたり」

側近「それは誰の事を言ってるんですか?」ガスッ

勇者「ぐはっ!うぅ・・・怪我してるのに容赦ないですね」

勇者「でもそれも時間が経つにつれてだんだん皆さん
  も僕に対してそんなに厳しくなくなっていって
  、そこからだんだんと楽しくなってきたんですよ」

側近「・・・・」

142 = 1 :

勇者「ちゃんと話ができるようになってからは皆さん
  の事がよくわかるようになって・・・・仕事もちゃんと
  やらせてもらえるようになって」

勇者は満面の笑みを浮かべて話を続ける。

勇者「今となっては逆に僕に話しかけてくれたりして、
  毎日忙しいですけど色んな方と笑って話せて」

勇者「そんな生活が僕にとってはすごく大事になった
  ですよね、魔王様や側近さんや皆さん全員がいる生活が」

勇者「村の人たちだってそうです。僕がここまでくるまで
  に出会った人たちも本当に良い方達ばかりで、辛い事も多かったですけど」

魔王「勇者・・・・」

勇者「だから僕はどんなに辛くなっても限界までこの
  生活を続けたかった、続けたかったんです」ニコ

144 = 1 :

勇者「でも、もうその時は来ました」

魔王「ああ、・・・・そうだな」

勇者「魔王様、お願いしたいことがあるんですが」

魔王「・・・言ってみろ」

勇者「人と、・・・・人間と協定を結んでくれませんか?」

魔王「・・・無理だな」

勇者「何故ですか?」

魔王「人間は、奴らは私達に対する敵対心が強すぎる。
  それに勇者は今の人間は強い魔力を有していると
  言ったな。仮に奴ら一人ひとりが勇者一行の一人
  と同等の働きができるとするならば危険が高すぎる」

勇者「その為に僕がいるんです」ニコ

145 = 1 :

勇者「それに全ての人間が魔物を嫌っているわけでは
  ありませんよ?」

側近「そんなことは・・・・ありえるかもしれませんね」

・・・このような人間がいるなら。

魔王「それでもだな・・・」

勇者「なら信じてください、僕の事を」

魔王「・・・魔王が勇者を信じる・・・か」

魔王「あはっ、あははは!本当にお前は面白い奴だっ」

魔王は腹を抱えて笑う。

魔王「ふふっ・・・・いいだろう、その冗談呑んでやる」ニコ

勇者「ありがとうございます」ニコ

146 = 1 :

勇者「では僕は先に王国に行ってるので後を追ってきてくださいね」

魔王「王国の下町にあるお前の家を見せる約束、忘れるなよ?」ニヤ

勇者「うっ、い、いってきますっ」ドンッ

赤く焼けた空を見上げて魔王は呟いた。

魔王「あの飛行魔法、今度教えてもらいたいものだな」

側近「そうですね・・・」

魔王「・・・それと側近、お前さっき勇者と何をを長々と話してた?」

側近は勇者のような笑みを浮かべる。

側近「・・・・些細なことですよ」ニコ

147 = 1 :

10時間後

ーーーーーーーーーーーー王国のはずれの村

村人1「ひっひっぃいいい!!!ば、化け物め、今頃何しに
  きやがった!!ここには何もねぇぞ!!」

勇者「・・・すぐに出て行きますから、安心してください」ニコ

勇者が村の中を歩くたびに悲鳴があがる。
来るな、化け物。
悪魔め。どこかへ消えろ。

勇者は涼しい顔をして歩き続ける。

・・・やがてある墓標に行き着いた。

勇者「あはは、埃と雑草だらけ、ひどいね、掃除しないと」

勇者「久しぶり、父さん」ニコ

148 = 1 :

・・・・やばい、俺6時には落ちなきゃいけないのに
まだ書き溜めの4割しか投下できてない;

149 = 1 :

ーーーーーーーーーーーー約30年前

家の前にある少年が立っている。
その顔は暗く、沈んでいたが、やがて手で自分の顔が
モニュモニュ揉むと笑顔になった。よし、と少年はドアを開ける。

少年「ただいま!父さん!」バタン

「おう!おかえり!遅かったなぁ、今日も友達と遊んできたのか?」ニカッ

少年「う、うん!そうなんだ!」ニコ

一人森の中で時間を潰していた、などとは当然言えない。

少年「今日のご飯は何?」

「くくく、聞いて驚け!今日はグリズリーを使った肉鍋
  だぁーーー!!!」ドーン

少年「わぁ、お肉たくさん入ってるね!」

「おう!たくさん食えよ?」

150 :

SS速報池


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