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元スレ魔王「お前の泣き顔が見てみたい」
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魔王「・・・おかしい」
側近「・・・・・・そうですね」
勇者が来ない。
30年に一度、この魔界に降り立ち、鎧を全身を同胞の
血で濡らし、この地に暴虐を巻き散らす化け物ーーー勇者という人間。
その畏怖の存在は、20年前に訪れるはずだった。
魔王「何も起こらなければ良いのだが・・・」
側近「・・・というかあと何回このやり取りすれば気がすむん
です?」
魔王「む、良いではないか。こうしないと気が緩んでしま
ってなぁ・・・・」
5年前に先代魔王の後を継いだ魔王は、勇者という化け物
に会った事がない。勇者について知っていることは、
自分を殺すことだけに命をかけ、魔物の滅亡を望む人間
という事だけだ。
勇者が来ないということに、不安だけでなく幾らかの安堵が隠れていることも
確かだった。
勇者「・・・あの~、すみません」
側近「・・・・・・そうですね」
勇者が来ない。
30年に一度、この魔界に降り立ち、鎧を全身を同胞の
血で濡らし、この地に暴虐を巻き散らす化け物ーーー勇者という人間。
その畏怖の存在は、20年前に訪れるはずだった。
魔王「何も起こらなければ良いのだが・・・」
側近「・・・というかあと何回このやり取りすれば気がすむん
です?」
魔王「む、良いではないか。こうしないと気が緩んでしま
ってなぁ・・・・」
5年前に先代魔王の後を継いだ魔王は、勇者という化け物
に会った事がない。勇者について知っていることは、
自分を殺すことだけに命をかけ、魔物の滅亡を望む人間
という事だけだ。
勇者が来ないということに、不安だけでなく幾らかの安堵が隠れていることも
確かだった。
勇者「・・・あの~、すみません」
魔&側「「ーーーーーッ!!!」」
そこに立っていたのは、みすぼらしい佇まいの人間の男だった。
旅人の服を身に纏い、首につけている黒い首輪は目につい
たが、杖代わりに手に持っているのはただのヒ
ノキの棒だけで、武器らしいものは何も持っていない。
顔は魔王の種族の中でも類を見ない程整っていたが、全体として
まとめるとやはりただの貧相な人間だった。
魔王「・・・何者だ、貴様。」
勇者「一応、勇者やってます」ニコッ
そこに立っていたのは、みすぼらしい佇まいの人間の男だった。
旅人の服を身に纏い、首につけている黒い首輪は目につい
たが、杖代わりに手に持っているのはただのヒ
ノキの棒だけで、武器らしいものは何も持っていない。
顔は魔王の種族の中でも類を見ない程整っていたが、全体として
まとめるとやはりただの貧相な人間だった。
魔王「・・・何者だ、貴様。」
勇者「一応、勇者やってます」ニコッ
魔王「笑えない冗談だな」
そんなわけあるか、純粋にそう思った。伝承の勇者とこの眼で
見る勇者とは明らかに違いがあったからだ。
殺気を感じない、いや、殺気どころか覇気すら感じない
。というかそもそもその風格がこの男には存在しなか
った。こんな弱そうな人間が勇者のはずがない。
勇者「うぅッ・・・・。なんか凄いけなされてる気がする・・・」
そんなわけあるか、純粋にそう思った。伝承の勇者とこの眼で
見る勇者とは明らかに違いがあったからだ。
殺気を感じない、いや、殺気どころか覇気すら感じない
。というかそもそもその風格がこの男には存在しなか
った。こんな弱そうな人間が勇者のはずがない。
勇者「うぅッ・・・・。なんか凄いけなされてる気がする・・・」
魔王「・・・本当に貴様は勇者、なのか?」
勇者「やっぱりそうですよね・・・、疑問系はいっちゃいま
よね・・・でも勇者なんです・・・、ごめんなさい」
うん、やっぱりこいつは勇者ではないな。
と、ここで我と取り戻した側近が叫んだ。
側近「勇者ッ!よくもぬけぬけと一人でここでッ!
死んでもらいます!!」
魔王「待て」
側近「魔王様ッ!?」
魔王「よく見ろ、こんなナリの勇者がいるか。第一
弱そうだ」
側近「そんな馬鹿なことが・・・・あれ?」
その勇者は「やっぱり納得しちゃいますよね・・・ごめんなさ
い・・・弱そうで、勇者に見えなくて・・・」とかぶつぶつ言って
背中を小さくしていた。
側近の方も我を取り戻すのに時間がかかりそうだ。
勇者「やっぱりそうですよね・・・、疑問系はいっちゃいま
よね・・・でも勇者なんです・・・、ごめんなさい」
うん、やっぱりこいつは勇者ではないな。
と、ここで我と取り戻した側近が叫んだ。
側近「勇者ッ!よくもぬけぬけと一人でここでッ!
死んでもらいます!!」
魔王「待て」
側近「魔王様ッ!?」
魔王「よく見ろ、こんなナリの勇者がいるか。第一
弱そうだ」
側近「そんな馬鹿なことが・・・・あれ?」
その勇者は「やっぱり納得しちゃいますよね・・・ごめんなさ
い・・・弱そうで、勇者に見えなくて・・・」とかぶつぶつ言って
背中を小さくしていた。
側近の方も我を取り戻すのに時間がかかりそうだ。
魔王「・・・で、だ。人間、お前はこの魔界の中心に何を
しに来た。話せ。」
勇者「話が早くて助かります!用件というのは
ですね・・・」
この言葉から、全てが始まったのだ。
勇者「雑用でも何でも良いのでこの城で働かせてもらえま
せんか?」ニコッ
魔&側「・・・ぇぇええええッ!!?」
しに来た。話せ。」
勇者「話が早くて助かります!用件というのは
ですね・・・」
この言葉から、全てが始まったのだ。
勇者「雑用でも何でも良いのでこの城で働かせてもらえま
せんか?」ニコッ
魔&側「・・・ぇぇええええッ!!?」
魔王「・・・こほん、だが勇者、お前は私の同胞を散々殺して
この城までやってきた、もちろんこの城の者達もな。
そんな道理は通らない事ぐらい貴様にもわかるだろう・・・?」
勇者は弱弱しい事で呟いた。
勇者「でも僕、魔物は一度も殺したことなんかないんですけど・・・」
魔王「何・・・だと・・・?」
この城までやってきた、もちろんこの城の者達もな。
そんな道理は通らない事ぐらい貴様にもわかるだろう・・・?」
勇者は弱弱しい事で呟いた。
勇者「でも僕、魔物は一度も殺したことなんかないんですけど・・・」
魔王「何・・・だと・・・?」
側近が復活した。
側近「大体、この城の頂上まで来るに一回も戦わずに来れる
なんてありえないじゃないですか!」
勇者「ああ、それは魔法でちょちょいと」
何のこともないかのように「難しい事じゃないですよ」と
付け足した。
側近「そんな馬鹿な事がッ・・・!」
魔王が片手で制す。
魔王「貴様のいう事が本当ならば確かに勇者なのかもな」
側近「魔王様!?」
側近「大体、この城の頂上まで来るに一回も戦わずに来れる
なんてありえないじゃないですか!」
勇者「ああ、それは魔法でちょちょいと」
何のこともないかのように「難しい事じゃないですよ」と
付け足した。
側近「そんな馬鹿な事がッ・・・!」
魔王が片手で制す。
魔王「貴様のいう事が本当ならば確かに勇者なのかもな」
側近「魔王様!?」
魔王「(まぁ、待て・・・、仮にこの人間が勇者ではないとしてもこの私に存在を感じ取らせないほどの魔法使いだ、
・・・下手に手を出せばこちらが殺られる)」
魔王「(それに勇者だとしても敵意はないようだ、何事もないのであればそれに越した事はない。
私達は戦いを望んでいるわけではないのだから。)」
側近「(・・・・それは・・・)」
勇者「あの・・・それで僕はここで働かせてもらえるのでしょうか・・・?」
それに魔王は応じる。
魔王「ああ、許可しよう」
・・・下手に手を出せばこちらが殺られる)」
魔王「(それに勇者だとしても敵意はないようだ、何事もないのであればそれに越した事はない。
私達は戦いを望んでいるわけではないのだから。)」
側近「(・・・・それは・・・)」
勇者「あの・・・それで僕はここで働かせてもらえるのでしょうか・・・?」
それに魔王は応じる。
魔王「ああ、許可しよう」
魔王「当然、貴様が勇者だという事は皆の者にはふせる」
言う必要はないと思うが、と念のために確認をとる。
勇者「僕はここで働ければ何でもいいですよ?」
側近「・・・私はそんなの認めたくありません・・・」
魔王は呆れながら
魔王「私とてこんな事は不本意だが、仕方のない事だ」
と諭した。
勇者は具合が悪そうにあはは、と乾いた笑みを顔に
浮かべた。
魔王「さて、勇者よ。ここで働くのならこの城の
者に挨拶でもしてきたらどうだ」
勇者「それはそうですね。では失礼します」
言う必要はないと思うが、と念のために確認をとる。
勇者「僕はここで働ければ何でもいいですよ?」
側近「・・・私はそんなの認めたくありません・・・」
魔王は呆れながら
魔王「私とてこんな事は不本意だが、仕方のない事だ」
と諭した。
勇者は具合が悪そうにあはは、と乾いた笑みを顔に
浮かべた。
魔王「さて、勇者よ。ここで働くのならこの城の
者に挨拶でもしてきたらどうだ」
勇者「それはそうですね。では失礼します」
魔王「・・・さて、どうしたものか」
側近「・・・あの者は本当に勇者なのでしょうか?」
魔王「それは私にもわからん。ただ、わかるのはあの人間
が私とは比較にならない程の魔力を持ち、敵意のかけらさえも
持っていないという事ぐらいか」
側近「私もあのような勇者は見たことがありません」
側近「これまでの勇者は皆、殺気と狂気に満ち溢れていました
から・・・・」
魔王「とりあえず今のところは雑用・・・という形を維持する
しかないな」
勇者が魔王の雑用など聞いたこともないがな、と笑う。
側近「もう、笑っている場合じゃないんですよ?」
側近「・・・あの者は本当に勇者なのでしょうか?」
魔王「それは私にもわからん。ただ、わかるのはあの人間
が私とは比較にならない程の魔力を持ち、敵意のかけらさえも
持っていないという事ぐらいか」
側近「私もあのような勇者は見たことがありません」
側近「これまでの勇者は皆、殺気と狂気に満ち溢れていました
から・・・・」
魔王「とりあえず今のところは雑用・・・という形を維持する
しかないな」
勇者が魔王の雑用など聞いたこともないがな、と笑う。
側近「もう、笑っている場合じゃないんですよ?」
魔王城の厨房室に鈍い音が響く。
勇者「うぅ・・・、いたた・・・」
勇者が頬をさすりながら床にへたりこんでいた。
厨房室の魔物「人間臭ぇっていってんだろ!まったく・・・
なんで魔王様は人間なんか雇ったんだ!!」
勇者「あはは、それは色々ありまして・・・」
厨房室の魔物「笑ってんじゃねぇ、胸糞わりぃ!」バキッ
勇者「ふぎゃっ」
勇者「うぅ・・・、いたた・・・」
勇者が頬をさすりながら床にへたりこんでいた。
厨房室の魔物「人間臭ぇっていってんだろ!まったく・・・
なんで魔王様は人間なんか雇ったんだ!!」
勇者「あはは、それは色々ありまして・・・」
厨房室の魔物「笑ってんじゃねぇ、胸糞わりぃ!」バキッ
勇者「ふぎゃっ」
そこで声がかかる。
厨房室の魔物2「もうその辺でやめときなよ、その人間は
何したってんだい?ただ挨拶に来ただけじゃないか」
厨房室の魔物「だがよ・・・」
どうやら止めてくれた魔物はこの魔物よりも上の立場に
あるらしい。
厨房室の魔物「ほら、あんたも今日のところは戻りな」
厨房室の魔物2「もうその辺でやめときなよ、その人間は
何したってんだい?ただ挨拶に来ただけじゃないか」
厨房室の魔物「だがよ・・・」
どうやら止めてくれた魔物はこの魔物よりも上の立場に
あるらしい。
厨房室の魔物「ほら、あんたも今日のところは戻りな」
勇者「はい、ありがとうございます」
勇者「あの」
厨房室の魔物1「・・・なんだよ」
勇者「これから暫くの間よろしくお願いします」
厨房室の魔物1「・・・ッ!また殴れてぇのかテメェッ!!」ブンッ
勇者「わわっ、ごめんなさいっ」ダッ
厨房室の魔物1「ったくよぉ・・・」チッ
厨房室の魔物2「・・・何が不満なんだい?人間にしては
いい奴じゃないか」
厨房室の魔物1「・・・うるせぇっ」
勇者「あの」
厨房室の魔物1「・・・なんだよ」
勇者「これから暫くの間よろしくお願いします」
厨房室の魔物1「・・・ッ!また殴れてぇのかテメェッ!!」ブンッ
勇者「わわっ、ごめんなさいっ」ダッ
厨房室の魔物1「ったくよぉ・・・」チッ
厨房室の魔物2「・・・何が不満なんだい?人間にしては
いい奴じゃないか」
厨房室の魔物1「・・・うるせぇっ」
心底愉快そうな顔で魔王は勇者に尋ねた。
魔王「・・・で同じような事を延々と繰り返してきてその顔か」
勇者「とりあえず皆さんに挨拶できてよかったですよ~」
あはは、と何も無かったかのように笑う。・・・笑うその顔は不気味だが。
勇者「後半は一度も殴られないで挨拶を終えられたん
ですよ?皆さんやさしいですね」ニコ
それはもはや殴るところがないからだ、というのが喉まででかかったが抑える。
魔王「フフッ・・・お前はなんだかおかしな奴だな」
勇者「それは光栄ですね」
勇者はそれに答えるように、恭しくお辞儀をしてみせた。
魔王「・・・で同じような事を延々と繰り返してきてその顔か」
勇者「とりあえず皆さんに挨拶できてよかったですよ~」
あはは、と何も無かったかのように笑う。・・・笑うその顔は不気味だが。
勇者「後半は一度も殴られないで挨拶を終えられたん
ですよ?皆さんやさしいですね」ニコ
それはもはや殴るところがないからだ、というのが喉まででかかったが抑える。
魔王「フフッ・・・お前はなんだかおかしな奴だな」
勇者「それは光栄ですね」
勇者はそれに答えるように、恭しくお辞儀をしてみせた。
側近「・・・・こんな夜中に何をしているのですか」
勇者「こんばんわ側近さん。あ、あとすみません雑用なのに部屋なんか
使わせてもらっちゃって・・・・」
側近「何か企んでいるつもりではありませんよね」
勇者「えっ、いやっ、そんな事全然考えてないですっ」
首をぶんぶんと振り否定するが、逆に肯定しているようにしか見えない。
勇者「窓から景色を見てただけですよぉ。ほら、魔王城ってすごく高いから
とても綺麗なんですよね」
側近「それだけの為に起きていた、というのはやはりおかしいです」
勇者「こんばんわ側近さん。あ、あとすみません雑用なのに部屋なんか
使わせてもらっちゃって・・・・」
側近「何か企んでいるつもりではありませんよね」
勇者「えっ、いやっ、そんな事全然考えてないですっ」
首をぶんぶんと振り否定するが、逆に肯定しているようにしか見えない。
勇者「窓から景色を見てただけですよぉ。ほら、魔王城ってすごく高いから
とても綺麗なんですよね」
側近「それだけの為に起きていた、というのはやはりおかしいです」
勇者「うっ、・・・・本当の事を言えばですね。僕は寝る必要がないんですよ」
側近「・・・・どういう意味ですか」
勇者「いや、言葉通りの意味なんですけど・・・。他に意味なんてないから困りましたね」
側近「・・・わかりました、もう結構です」
勇者「あっ、側近さん」
側近「・・・・何か?」
勇者「おやすみなさい」ニコ
側近「・・・明日から早いので覚悟してください」
側近「・・・・どういう意味ですか」
勇者「いや、言葉通りの意味なんですけど・・・。他に意味なんてないから困りましたね」
側近「・・・わかりました、もう結構です」
勇者「あっ、側近さん」
側近「・・・・何か?」
勇者「おやすみなさい」ニコ
側近「・・・明日から早いので覚悟してください」
一ヶ月後
魔王「・・・相変わらずだな」
勇者「面目ないです・・・・」
勇者は申し訳なさそうに頭をさげた。
側近「全く・・・・!一ヶ月たってもロクに雑用さえできないなんて・・・この人間の食事、今日も抜こうかしら」
勇者「うえぇ・・・勘弁してくださいよ~」
もう三日間何も食べてないんですよ~、と泣きそうな顔で懇願した。
魔王「・・・相変わらずだな」
勇者「面目ないです・・・・」
勇者は申し訳なさそうに頭をさげた。
側近「全く・・・・!一ヶ月たってもロクに雑用さえできないなんて・・・この人間の食事、今日も抜こうかしら」
勇者「うえぇ・・・勘弁してくださいよ~」
もう三日間何も食べてないんですよ~、と泣きそうな顔で懇願した。
魔王「ふふ・・・、まぁそう邪険になるな。勇者が仕事できないのは城の者からはぶかれてるからという事ぐらい
側近もわかっているだろう?」
あといい加減人間じゃなくて勇者と呼んでやれ、と微笑を浮かべながら付け足した。
側近「これのっ!どこがっ!勇者なんですか!?見てて情けないったらありはしませんよ!」
魔王「・・・それ以上言ったら勇者が小さくなりすぎて消えるぞ」
勇者の縮小具合は魔法でも使ってるのか?というくらい凄かった。
側近もわかっているだろう?」
あといい加減人間じゃなくて勇者と呼んでやれ、と微笑を浮かべながら付け足した。
側近「これのっ!どこがっ!勇者なんですか!?見てて情けないったらありはしませんよ!」
魔王「・・・それ以上言ったら勇者が小さくなりすぎて消えるぞ」
勇者の縮小具合は魔法でも使ってるのか?というくらい凄かった。
兵士1「失礼します。側近殿、お伝えしたい事が」
側近「・・・はい、今そちらに行きます」
魔王「・・・どうした」
兵士1「・・・」
兵士1は何も答えない。
魔王「・・・・ッ!!何がいう事があるならば、ここで言えば良い
だろう!!」
魔王の体から怒りと共に魔力があふれる。
顔を歪ませ、その口から呻くように言葉が零れ落ちる。
魔王「・・・・・・・・そんな私が魔王の座に居座っているのが気にくわないというのか・・・!」
兵士1「ひっ・・・!・・・あの、この城の辺境の村に八岐大蛇が出現したと報告があったのですが・・・はい」
側近「・・・はい、今そちらに行きます」
魔王「・・・どうした」
兵士1「・・・」
兵士1は何も答えない。
魔王「・・・・ッ!!何がいう事があるならば、ここで言えば良い
だろう!!」
魔王の体から怒りと共に魔力があふれる。
顔を歪ませ、その口から呻くように言葉が零れ落ちる。
魔王「・・・・・・・・そんな私が魔王の座に居座っているのが気にくわないというのか・・・!」
兵士1「ひっ・・・!・・・あの、この城の辺境の村に八岐大蛇が出現したと報告があったのですが・・・はい」
魔王「八岐大蛇、だと・・・!?いかん、すぐに戦闘の準備を!」
八岐大蛇、前触れもなく現れ、山の如き巨躯を動かす
毎に大地が震え、あらゆる魔法を無効化する龍の鱗を
身に纏い、八つの首を持つ、《災害》の二つ名を持つ魔物。
ーーーーそんな化け物が村を襲えばどうなるかは考えるまでもないだろう。
側近「行ってはいけません」
魔王「・・・邪魔をするな!」
側近「子供のような事を言わないでください。貴方様はこの先何百年のも間この魔界をお導きになるお方・・・、
今ここでその命を危険にさらすわけにはいけません」
魔王「ここで命をかけずに・・・何が王だというのだ!!」
勇者「じゃぁ、僕がいってきましょうか?」
勇者は元の大きさに戻っていた。
八岐大蛇、前触れもなく現れ、山の如き巨躯を動かす
毎に大地が震え、あらゆる魔法を無効化する龍の鱗を
身に纏い、八つの首を持つ、《災害》の二つ名を持つ魔物。
ーーーーそんな化け物が村を襲えばどうなるかは考えるまでもないだろう。
側近「行ってはいけません」
魔王「・・・邪魔をするな!」
側近「子供のような事を言わないでください。貴方様はこの先何百年のも間この魔界をお導きになるお方・・・、
今ここでその命を危険にさらすわけにはいけません」
魔王「ここで命をかけずに・・・何が王だというのだ!!」
勇者「じゃぁ、僕がいってきましょうか?」
勇者は元の大きさに戻っていた。
魔王「・・・な、」
八岐大蛇は魔王ですら一人では苦戦を強いられる程の相手。
それをこの人間は気負いもなく口にしてみせた。
側近「八岐大蛇がどういう化け物なのかわかってるんですか・・・・?」
勇者「いや、全然知りませんよ?会ったこともないですし」
魔&側&兵「・・・・」
暫しの沈黙の後、魔王が口を開いた。
魔王「現状はどうなってる」
兵士1「はい、鳥族部隊が既に村に到着していますが、あと数時間ももつかどうか、というところでしょうか・・・・」
八岐大蛇は魔王ですら一人では苦戦を強いられる程の相手。
それをこの人間は気負いもなく口にしてみせた。
側近「八岐大蛇がどういう化け物なのかわかってるんですか・・・・?」
勇者「いや、全然知りませんよ?会ったこともないですし」
魔&側&兵「・・・・」
暫しの沈黙の後、魔王が口を開いた。
魔王「現状はどうなってる」
兵士1「はい、鳥族部隊が既に村に到着していますが、あと数時間ももつかどうか、というところでしょうか・・・・」
魔王「・・・よし、兵士1は城門に龍族、狼族部隊を配置させろ、・・・・指示は私が城門に到着したら下す。」
兵士1「・・・よろしいので?」
兵士1は側近の方に目を向ける。
側近「駄目に決まっているでしょう」
魔王「うるさい!私は行くと言ったら行くのだッ!」
勇者「あの~、無視ですか・・・?」
勇者がまた小さくなった。
兵士1「・・・よろしいので?」
兵士1は側近の方に目を向ける。
側近「駄目に決まっているでしょう」
魔王「うるさい!私は行くと言ったら行くのだッ!」
勇者「あの~、無視ですか・・・?」
勇者がまた小さくなった。
側近「はぁ・・・、本当に魔王様は子供ですね」
その言葉に魔王は不敵に口を吊り上げ
魔王「はっ、私の5倍生きてるババアの側近よりはマシだ」
とはき捨てた。まるで心臓に杭を刺されたかのように
側近の表情が歪むが、その表情はすぐに凶暴な笑みに塗り替えられる。
側近「・・・・・・どうやらお仕置きが必要みたいですねぇ」
魔王「いつまで世話係顔してるつもりだ・・・?」
勇者「・・・ちょっと僕の話を聞いてくださいよ!」
泣きそうな顔で勇者が口をはさんだ。
その言葉に魔王は不敵に口を吊り上げ
魔王「はっ、私の5倍生きてるババアの側近よりはマシだ」
とはき捨てた。まるで心臓に杭を刺されたかのように
側近の表情が歪むが、その表情はすぐに凶暴な笑みに塗り替えられる。
側近「・・・・・・どうやらお仕置きが必要みたいですねぇ」
魔王「いつまで世話係顔してるつもりだ・・・?」
勇者「・・・ちょっと僕の話を聞いてくださいよ!」
泣きそうな顔で勇者が口をはさんだ。
魔王「・・・なんだ」
勇者「だから僕が行くって・・・」
魔王「ふざけている場合ではないのだ!」
この状況下でまだ戯言をぬかすとは、面白い奴だと
思ったが思い違いだったか、と内心で失望していると
勇者「・・・しょうがないですね」スタスタ
勇者は窓に向かって歩き始めた。
魔王「おい、ここは最上階だぞ。一体」
ーーーどれだけの高さがあると思っているのだ、と言う前に
勇者「じゃあ、いってきます」タン
いつもの穏やかな笑みを浮かべながら飛び降りた。
魔&側「・・・・ぇええええええええええ!?」
勇者「だから僕が行くって・・・」
魔王「ふざけている場合ではないのだ!」
この状況下でまだ戯言をぬかすとは、面白い奴だと
思ったが思い違いだったか、と内心で失望していると
勇者「・・・しょうがないですね」スタスタ
勇者は窓に向かって歩き始めた。
魔王「おい、ここは最上階だぞ。一体」
ーーーどれだけの高さがあると思っているのだ、と言う前に
勇者「じゃあ、いってきます」タン
いつもの穏やかな笑みを浮かべながら飛び降りた。
魔&側「・・・・ぇええええええええええ!?」
勇者「わぁ、高いなぁ」
絶賛落下中にも関わらず勇者はその笑みを崩さない。その右手に魔方陣が描かれる。
勇者「流石にこのまま落ちたら怪我しそうだしなぁ・・・、ほっ」
左手には異なる魔方陣が輝き、両手を下にかざす。
すると紋様と紋様が溶けるように交じり合う。
勇「急がないとね」
その瞬間、ドンッ という音と共に、勇者の体はかき消え
その軌道が二つの光の残像によって赤い空に描かれた。
絶賛落下中にも関わらず勇者はその笑みを崩さない。その右手に魔方陣が描かれる。
勇者「流石にこのまま落ちたら怪我しそうだしなぁ・・・、ほっ」
左手には異なる魔方陣が輝き、両手を下にかざす。
すると紋様と紋様が溶けるように交じり合う。
勇「急がないとね」
その瞬間、ドンッ という音と共に、勇者の体はかき消え
その軌道が二つの光の残像によって赤い空に描かれた。
側近「なんて速さなの・・・!?」
魔王「魔法の・・・同時発動だと!?そんなものは今まで聞いたことが・・・!」
本来魔法というものは一つの役割の為に《元始の魔王》が生み出した
ものだ。元々重複ができるように作られていない。
魔王「勇者・・・か。何て怪物だ」
側近「・・・魔王様」
魔王「・・・なんだ、話せ」
側近「歴史上の勇者の中でも・・・あんな事をしてのけるのはあの人間だけです」
魔王「魔法の・・・同時発動だと!?そんなものは今まで聞いたことが・・・!」
本来魔法というものは一つの役割の為に《元始の魔王》が生み出した
ものだ。元々重複ができるように作られていない。
魔王「勇者・・・か。何て怪物だ」
側近「・・・魔王様」
魔王「・・・なんだ、話せ」
側近「歴史上の勇者の中でも・・・あんな事をしてのけるのはあの人間だけです」
鳥族1「早く地下に避難するんだ!」
村では民の避難が行われていた。地下があるのは勇者一行による
被害を最小限に抑える為のもので、日頃から訓練をしているからか
民の避難も速やかだった。
鳥族1「このままいけばなんとか被害は食い止められるか・・・・!」
仲間の悲鳴と共に大気を震わす程の咆哮が響き渡る。
鳥族2「ぐあああぁッ!!」
八岐大蛇「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
鳥族1「くッ、東ももう長くはもたねぇか・・・!早く、早く来てくれッ・・・・!!」
民の一人がこちらに必死の形相で走ってくる。
鳥族1「おい、何をしている!ここは危険だ!戻れ!!」
村では民の避難が行われていた。地下があるのは勇者一行による
被害を最小限に抑える為のもので、日頃から訓練をしているからか
民の避難も速やかだった。
鳥族1「このままいけばなんとか被害は食い止められるか・・・・!」
仲間の悲鳴と共に大気を震わす程の咆哮が響き渡る。
鳥族2「ぐあああぁッ!!」
八岐大蛇「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
鳥族1「くッ、東ももう長くはもたねぇか・・・!早く、早く来てくれッ・・・・!!」
民の一人がこちらに必死の形相で走ってくる。
鳥族1「おい、何をしている!ここは危険だ!戻れ!!」
だがその民はその場を動かず上空を飛ぶ鳥族1に何かを叫んでいる。
鳥族1「チィッ・・・!!」スタン
鳥族1「何してやがる!!死にてぇのか!」
エルフの女「お願いです!助けてください!お願いです!」
鳥族1「あぁ、助けてやる!だから早く逃げろっつってんだろ!」
エルフの女「違うんです!娘が・・・娘がいないんです!」
鳥族1「チィッ・・・!!」スタン
鳥族1「何してやがる!!死にてぇのか!」
エルフの女「お願いです!助けてください!お願いです!」
鳥族1「あぁ、助けてやる!だから早く逃げろっつってんだろ!」
エルフの女「違うんです!娘が・・・娘がいないんです!」
鳥族1「何だと・・・!?おい、あんたどこから逃げてきたんだ」
エルフの女「ひ、東です!」
鳥族1「よりによって東かよ!あぁもう畜生!!」バサッ
翼に力を込める。
鳥族1「おいあんた!ガキは必ず助けてやっからあんたは逃げろ!」
エルフの女「はい・・・!あ、ありがとうございます!」タッ
鳥族1「畜生、畜生・・・!誰も死なしてたまるかってんだ
よ・・・!罪のねぇ民が死ぬのは勇者でもうたくさんなんだっ!!」
鳥族1はさらにあらん限りの力を翼に込める。もう二度と
、自分の目の前で民を殺させない為に。
エルフの女「ひ、東です!」
鳥族1「よりによって東かよ!あぁもう畜生!!」バサッ
翼に力を込める。
鳥族1「おいあんた!ガキは必ず助けてやっからあんたは逃げろ!」
エルフの女「はい・・・!あ、ありがとうございます!」タッ
鳥族1「畜生、畜生・・・!誰も死なしてたまるかってんだ
よ・・・!罪のねぇ民が死ぬのは勇者でもうたくさんなんだっ!!」
鳥族1はさらにあらん限りの力を翼に込める。もう二度と
、自分の目の前で民を殺させない為に。
辺境の村ーーー東
殺戮の音が鳴り響く中、少女は家の影でうずくまって震えていた。
エルフ少女「みんな・・・怖いよぉ」ポロポロ
鳥族3「ぐはぁッ!・・・ここまでか・・・!」ドサ
鳥族4「くそッ、このままでは・・・!」
八岐大蛇「グルルル・・・・」
鳥族3の視界が少女の姿を捉える。
鳥族3「なんてことだ・・・・。おい!鳥族4!」
鳥族4「大声出すんじゃない!殺されるぞ!」
鳥族3「そんなのはどうでもいい!ここに・・・まだ民が残ってるんだ!!」
鳥族4「何だと・・・!?」
化け物にやられた同胞たちが視界に入る。
鳥族4「くそッ・・・・!まだ死ぬわけにはいかないじゃないか!!」
殺戮の音が鳴り響く中、少女は家の影でうずくまって震えていた。
エルフ少女「みんな・・・怖いよぉ」ポロポロ
鳥族3「ぐはぁッ!・・・ここまでか・・・!」ドサ
鳥族4「くそッ、このままでは・・・!」
八岐大蛇「グルルル・・・・」
鳥族3の視界が少女の姿を捉える。
鳥族3「なんてことだ・・・・。おい!鳥族4!」
鳥族4「大声出すんじゃない!殺されるぞ!」
鳥族3「そんなのはどうでもいい!ここに・・・まだ民が残ってるんだ!!」
鳥族4「何だと・・・!?」
化け物にやられた同胞たちが視界に入る。
鳥族4「くそッ・・・・!まだ死ぬわけにはいかないじゃないか!!」
助けて、ぽつりと少女は呟く。
城の兵士の方が来てくれた。助かるかもしれないと思った。
でもそれは間違いだった。自分の為にあの化け物と
戦ってくれた兵士様は簡単に殺されてしまった。
死が自分に近づいてくる。その度に大地は震え、その八つの顎から炎が漏れる。
ーーーーー死にたくない。
エルフ少女「・・・助けて」
誰に助けを求めているわけではない、ただ言葉が漏れる。
八岐大蛇「ギャォオオオオオオオオオオオオオオ!」
その死は口から灼熱の炎を吐き出した。空気がちりちり
と焼けていく。死が少女の目前まで迫る。
少女はああ、本当に私は死んでしまうんだ、どうせなら
お母さんとお父さんにもっといい子にして喜ばせてあげ
たら良かった、と思う。その心の中はとても静かで、
別の自分が今の私を見ているようだった。
だが死が少女を飲み込むことはなかった。
勇者「・・・随分と遅くなってしまいました」
城の兵士の方が来てくれた。助かるかもしれないと思った。
でもそれは間違いだった。自分の為にあの化け物と
戦ってくれた兵士様は簡単に殺されてしまった。
死が自分に近づいてくる。その度に大地は震え、その八つの顎から炎が漏れる。
ーーーーー死にたくない。
エルフ少女「・・・助けて」
誰に助けを求めているわけではない、ただ言葉が漏れる。
八岐大蛇「ギャォオオオオオオオオオオオオオオ!」
その死は口から灼熱の炎を吐き出した。空気がちりちり
と焼けていく。死が少女の目前まで迫る。
少女はああ、本当に私は死んでしまうんだ、どうせなら
お母さんとお父さんにもっといい子にして喜ばせてあげ
たら良かった、と思う。その心の中はとても静かで、
別の自分が今の私を見ているようだった。
だが死が少女を飲み込むことはなかった。
勇者「・・・随分と遅くなってしまいました」
エルフ少女『もう行っちゃうんですか?』
勇者『そうだね』
エルフ少女『でっ、でもこれからも私達が危険にさらされた時は
助けに来てくれるんですよね』
勇者『・・・ごめん、ずっと守り続ける事はできないかもしれない』
エルフ少女『・・・そうなんですか』
勇者『絶対なんて言葉は存在しないんだ、・・・わかってほしい』
エルフ少女『・・・じゃあ私、強くなります!勇者様が助けにこれなくても
村を守れるように!』
勇者『ああ、お願いするよ。約束だ』ニコ
エルフ少女『はいっ!約束です!』
勇者『そうだね』
エルフ少女『でっ、でもこれからも私達が危険にさらされた時は
助けに来てくれるんですよね』
勇者『・・・ごめん、ずっと守り続ける事はできないかもしれない』
エルフ少女『・・・そうなんですか』
勇者『絶対なんて言葉は存在しないんだ、・・・わかってほしい』
エルフ少女『・・・じゃあ私、強くなります!勇者様が助けにこれなくても
村を守れるように!』
勇者『ああ、お願いするよ。約束だ』ニコ
エルフ少女『はいっ!約束です!』
私はこの目の前に現れた人間を知っていた。3年前に
私達の村を訪れた勇者と名乗る人間、私が小さい頃に
森に迷い込んでしまって泣いていた時に出会った人間、
いつも私を助けてくれた人間。
でも村に来てから2年ほど経った頃に村を出たはずだった。
もう勇者様に助けてもらわなくてもいいように、私は強くなった筈なのに。
私の魔法はあの怪物には全然効かなくても、もう泣かないと約束したのに。
エルフ少女「勇者様、・・・私っ、約束・・・」ポロポロ
勇者「もう充分すぎるくらいだよ」
あの時と何も変わらない、私を安心させる笑みを向けて、
勇者「あとは僕にまかせて」
勇者様は怪物を見据えた。
私達の村を訪れた勇者と名乗る人間、私が小さい頃に
森に迷い込んでしまって泣いていた時に出会った人間、
いつも私を助けてくれた人間。
でも村に来てから2年ほど経った頃に村を出たはずだった。
もう勇者様に助けてもらわなくてもいいように、私は強くなった筈なのに。
私の魔法はあの怪物には全然効かなくても、もう泣かないと約束したのに。
エルフ少女「勇者様、・・・私っ、約束・・・」ポロポロ
勇者「もう充分すぎるくらいだよ」
あの時と何も変わらない、私を安心させる笑みを向けて、
勇者「あとは僕にまかせて」
勇者様は怪物を見据えた。
八岐大蛇「ギャオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
憤怒に塗られた咆哮が響き渡る。獲物を横取りさせた為
か、十六つの憎しみの目を勇者に向ける。
勇者「これならまだ助けられますね」
勇者はそれに見向きもせず、鳥族達を見渡す。
その時には恐るべき速度で鋼鉄の鞭の如き尻尾がうなり
をあげて迫っていたが、突然勇者の後ろに現れた魔法陣に容易く弾かれた。
勇者「僕は貴方を殺したくない」
微笑んでいるがその目には何の感情も映していない。
八岐大蛇「グルル・・・・」
軽く唸り声をあげ、ゆっくりを勇者の前に八つの頭を差し出した。
勇者「もう二度とこの周辺には近づかないてほしい。・・・お前の一族
にはそう伝えておけ」
私には目前のまるで御伽噺のような光景を信じる事ができなかった。
エルフ少女「嘘・・・あの八岐大蛇を手懐けるなんて・・・」
憤怒に塗られた咆哮が響き渡る。獲物を横取りさせた為
か、十六つの憎しみの目を勇者に向ける。
勇者「これならまだ助けられますね」
勇者はそれに見向きもせず、鳥族達を見渡す。
その時には恐るべき速度で鋼鉄の鞭の如き尻尾がうなり
をあげて迫っていたが、突然勇者の後ろに現れた魔法陣に容易く弾かれた。
勇者「僕は貴方を殺したくない」
微笑んでいるがその目には何の感情も映していない。
八岐大蛇「グルル・・・・」
軽く唸り声をあげ、ゆっくりを勇者の前に八つの頭を差し出した。
勇者「もう二度とこの周辺には近づかないてほしい。・・・お前の一族
にはそう伝えておけ」
私には目前のまるで御伽噺のような光景を信じる事ができなかった。
エルフ少女「嘘・・・あの八岐大蛇を手懐けるなんて・・・」
鳥族3「・・・・お前、雑用の人間・・・か」
勇者「覚えててくれて光栄ですよ」ニコ
勇者の手には白い魔方陣が創られている。
鳥族4「回復、魔法なんて・・・代物、ポンポン使いやがって・・・お前何者だよ・・・」
勇者「皆さんを治してる・・・ただの人間ですよ。安心して
ください、命さえあれば助けられますから」
鳥族1「・・・おい」
その目には殺気が篭っている。
勇者「・・・なんでしょうか?」
鳥族1「しらばっくれてんじゃねぇ・・・・!!」ジャリン
鞘から鈍く輝く刀剣が抜かれる
鳥族1「お前・・・勇者なんだろ?」
勇者「・・・そうだったらどうします?」
鳥族1「お前を・・・殺す!!」
勇者「覚えててくれて光栄ですよ」ニコ
勇者の手には白い魔方陣が創られている。
鳥族4「回復、魔法なんて・・・代物、ポンポン使いやがって・・・お前何者だよ・・・」
勇者「皆さんを治してる・・・ただの人間ですよ。安心して
ください、命さえあれば助けられますから」
鳥族1「・・・おい」
その目には殺気が篭っている。
勇者「・・・なんでしょうか?」
鳥族1「しらばっくれてんじゃねぇ・・・・!!」ジャリン
鞘から鈍く輝く刀剣が抜かれる
鳥族1「お前・・・勇者なんだろ?」
勇者「・・・そうだったらどうします?」
鳥族1「お前を・・・殺す!!」
鳥族1「お前が来てから城の中は変わった・・・!!どいつもこいつ
も腑抜けになってんだよ・・・!!」
勇者「・・・」
鳥族1「この八岐大蛇の襲撃もそうなんだろ・・・?お前が
来たら直ぐに収まったもんなぁ・・・!おまけに殺さなかったんだって?
どう考えても正気の沙汰じゃねぇ」
鳥族1「なぁ勇者さんよ・・・。お前らはあとどれだけ俺たち
を苦しめれば気が済むんだ?この襲撃の件を経て
信頼を得た後でお前は何をする気なんだ?」
鳥族1「なぁ・・・教えてくれよ!!」ビュッ
剣が勇者の足元に刺さる
鳥族1「・・・その剣ととって俺と戦え」
勇者「・・・ずいぶんと優しいんですね」
だが勇者は動かない。
鳥族1「その剣をとれといってんだよ!!!」
エルフ少女「やめてください!」
も腑抜けになってんだよ・・・!!」
勇者「・・・」
鳥族1「この八岐大蛇の襲撃もそうなんだろ・・・?お前が
来たら直ぐに収まったもんなぁ・・・!おまけに殺さなかったんだって?
どう考えても正気の沙汰じゃねぇ」
鳥族1「なぁ勇者さんよ・・・。お前らはあとどれだけ俺たち
を苦しめれば気が済むんだ?この襲撃の件を経て
信頼を得た後でお前は何をする気なんだ?」
鳥族1「なぁ・・・教えてくれよ!!」ビュッ
剣が勇者の足元に刺さる
鳥族1「・・・その剣ととって俺と戦え」
勇者「・・・ずいぶんと優しいんですね」
だが勇者は動かない。
鳥族1「その剣をとれといってんだよ!!!」
エルフ少女「やめてください!」
鳥族1「お前はあの女のガキか・・・!」
助かったのか、と一瞬気が緩みそうになったのを引き締める。
エルフ少女「勇者様は・・・この方は怖い人なんかじゃ
ないです・・・!・・・どうして決め付けるんですか?!」
鳥族1顔がビキリと歪む。
鳥族1「何もわかってねえな・・・何もわかってねえよ。
何だ、同胞だけじゃなくこんな子供まで洗脳したってのか・・・?」
エルフ少女「そんな酷い言い方ッ・・・」
鳥族1「勇者共が今まで何をしてきたか本当にわかって
んのかッ?!!お前の村だって今まで一体何回
勇者共に襲われたと思ってんだ!?お前はその化け物に騙されてんだよ・・・・!」
エルフ少女「それでもこの人は違うんです・・・!化け物
なんかじゃ・・・ッ」
勇者「もういい・・・もう充分だよ、ありがとう」ニコ
エルフ少女「でも・・・」
勇者「僕から離れた方がいい。なに、大丈夫だよ」
僕はこういうのにはもう慣れてるからね、と微笑みながら呟いた。
助かったのか、と一瞬気が緩みそうになったのを引き締める。
エルフ少女「勇者様は・・・この方は怖い人なんかじゃ
ないです・・・!・・・どうして決め付けるんですか?!」
鳥族1顔がビキリと歪む。
鳥族1「何もわかってねえな・・・何もわかってねえよ。
何だ、同胞だけじゃなくこんな子供まで洗脳したってのか・・・?」
エルフ少女「そんな酷い言い方ッ・・・」
鳥族1「勇者共が今まで何をしてきたか本当にわかって
んのかッ?!!お前の村だって今まで一体何回
勇者共に襲われたと思ってんだ!?お前はその化け物に騙されてんだよ・・・・!」
エルフ少女「それでもこの人は違うんです・・・!化け物
なんかじゃ・・・ッ」
勇者「もういい・・・もう充分だよ、ありがとう」ニコ
エルフ少女「でも・・・」
勇者「僕から離れた方がいい。なに、大丈夫だよ」
僕はこういうのにはもう慣れてるからね、と微笑みながら呟いた。
鳥族1「・・・ずいぶん余裕じゃねぇか、なぜ剣をとらねぇ」
勇者「あなたを殺す気なんかさらさらありませんからね」
鳥族1「・・・・あ?」
勇者「あッ、でもできれば僕も今はまだ死にたくないんですよ」
あはは、と困ったような表情を浮かべる。
鳥族1「・・・もういい。お前の都合など知ったことか」ジャキ
鳥族1「お前ら勇者共もいきなり何の罪もねぇ民を皆殺し
にしてきたんだ・・・・、俺にその権利がねぇとは言わせねぇ!!」ダッ
エルフ少女「勇者様・・・!!」
勇者「あなたを殺す気なんかさらさらありませんからね」
鳥族1「・・・・あ?」
勇者「あッ、でもできれば僕も今はまだ死にたくないんですよ」
あはは、と困ったような表情を浮かべる。
鳥族1「・・・もういい。お前の都合など知ったことか」ジャキ
鳥族1「お前ら勇者共もいきなり何の罪もねぇ民を皆殺し
にしてきたんだ・・・・、俺にその権利がねぇとは言わせねぇ!!」ダッ
エルフ少女「勇者様・・・!!」
くそったれが。
俺にだってわかってんだ、この勇者が他の奴らとは違うって事ぐらい。
八岐大蛇がこの野郎のせいじゃねぇって事ぐらい目を見ればわかる。
だがよ、こいつに本当に危険がねぇかどうかはわから
ねぇじゃねぇか。ほんの少しの危険性でも見逃すわけにはいかねぇんだ。
こいつが少し指を動かすだけで俺なんか簡単に殺される
んだろうな、だからよ
俺の命でこいつの化けの皮を剥いでやるよ。
目にも追えない速さで勇者の心臓に向かって剣突が繰り出される。
さぁ見せろ!!お前の本性をよ!!
だが勇者は決して動かない、鳥族1を見据えたまま。
・・・こいつッ!!避けないつもりかッ!!・・・くそ!俺も後には引けねぇ!
鳥族1「うぉおおおあああああ!!!」
ドスッ・・・・・・
場に静寂が満ちる。・・・その静寂をついたのは少女の震える声だった。
エルフ少女「いや・・・・、やだよそんなのぉ・・・」ポロポロ
翡翠色の瞳に映されたのは、勇者が胸を剣で貫かれた姿だった。
俺にだってわかってんだ、この勇者が他の奴らとは違うって事ぐらい。
八岐大蛇がこの野郎のせいじゃねぇって事ぐらい目を見ればわかる。
だがよ、こいつに本当に危険がねぇかどうかはわから
ねぇじゃねぇか。ほんの少しの危険性でも見逃すわけにはいかねぇんだ。
こいつが少し指を動かすだけで俺なんか簡単に殺される
んだろうな、だからよ
俺の命でこいつの化けの皮を剥いでやるよ。
目にも追えない速さで勇者の心臓に向かって剣突が繰り出される。
さぁ見せろ!!お前の本性をよ!!
だが勇者は決して動かない、鳥族1を見据えたまま。
・・・こいつッ!!避けないつもりかッ!!・・・くそ!俺も後には引けねぇ!
鳥族1「うぉおおおあああああ!!!」
ドスッ・・・・・・
場に静寂が満ちる。・・・その静寂をついたのは少女の震える声だった。
エルフ少女「いや・・・・、やだよそんなのぉ・・・」ポロポロ
翡翠色の瞳に映されたのは、勇者が胸を剣で貫かれた姿だった。
かすれる声が漏れた。その声は震えている。
鳥族1「・・・・なぜ・・・避けなかった」
勇者「そりゃぁ・・・信じてましたからね」ニコ
勇者「やっぱり鳥族1さんはやさしい方ですよ、こうして
僕は生きてるんだから」
鳥族1「ハハッ・・・急所をずらした事もお見通しかよ」
無償に笑いたくなった。
鳥族1「なんかもう・・・いいや、俺の負けだ」
・・・こんなに馬鹿みたいに何でも信じる奴が命を奪えるわけねぇじゃねえか。
鳥族1「・・・・なぜ・・・避けなかった」
勇者「そりゃぁ・・・信じてましたからね」ニコ
勇者「やっぱり鳥族1さんはやさしい方ですよ、こうして
僕は生きてるんだから」
鳥族1「ハハッ・・・急所をずらした事もお見通しかよ」
無償に笑いたくなった。
鳥族1「なんかもう・・・いいや、俺の負けだ」
・・・こんなに馬鹿みたいに何でも信じる奴が命を奪えるわけねぇじゃねえか。
エルフの少女はうずくまってエグエグ泣いている。
鳥族1「おいガキ」
エルフ少女「・・・・ッ!・・・貴方は絶対に許しません」キッ
鳥族1「安心しろ、お前の勇者様は生きてる。ピンピンしてるぞ」
勇者「いやっ、急所は外れてるけどすごく痛いですからっ!」
エルフ少女「勇者様っ!」ダッ
頭から勇者に突っ込んだ。
勇者「ふぎゃっ・・・・死んじゃう」
鳥族1「おいガキ」
エルフ少女「・・・・ッ!・・・貴方は絶対に許しません」キッ
鳥族1「安心しろ、お前の勇者様は生きてる。ピンピンしてるぞ」
勇者「いやっ、急所は外れてるけどすごく痛いですからっ!」
エルフ少女「勇者様っ!」ダッ
頭から勇者に突っ込んだ。
勇者「ふぎゃっ・・・・死んじゃう」
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