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    元スレにこ「恋人は凛って言いたい」

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    1 :

    まただ。

     花陽の後ろでベーっと舌を出す凛を見て顔をしかめる。そうすると凛が少し傷ついた顔をするので、ならそんなことしなければいいのにと思う。

    「どうしたのにこちゃん?」

     朝の学校の昇降口。昨日のテレビに出ていたアイドルの話で盛り上がっていた花陽が急に心配そうに私を見つめる。

    「なんでもないわよ。それにしても昨日のメドレーの曲のチョイスは良かったわね」

     無理矢理だったかしら。そう思った話題転換にも花陽は乗ってきてくれた。それは優しさなのか、本当にアイドルの話に目がないだけなのか。キラキラした目で話す花陽の後ろにいた凛はもういなくなっているのだった。

    2 = 1 :

    凛とは仲が良い、と私は思っている。私にだけは遠慮なく自由奔放な発言をしているし、それに対して怒ったり呆れたりしながらもこの生意気な後輩を自分なりに可愛がっている。
    「にこちゃん一緒に帰ろう!」って抱きつきながら言われると「しょうがないわねえもう……」何て口では言いながらもにやける口元を押さえることができなかった。
     休日もよく遊んだ。「ひまならラーメン食べに行こう!」って突拍子もなく連絡が来ると「別にいいけど」なんて素っ気ない返事をするけど、ふと外に出る準備のために鏡を見ると嬉しそうな顔をしていて思わず苦笑するのであった。

    3 = 1 :

    三年間部活をしてきたが、色々あって後輩を持つのは初めてだ。
    最初は彼女たちと上手くやっていけるのか正直不安だった。
    だけど凛を中心に簡単に私の懐に入ってくれた。凛が遠慮なく私に突っかかるので、今ではだれでも私に対して遠慮なしに色々言ってくる。
    その距離が私には居心地の良い距離だった。だから凛には感謝している。生意気だけど素直で元気な、本当に可愛い後輩だ。
    だから彼女をあまやかすのは何よりも楽しいし嬉しいことだった。

    4 = 1 :

    その凛が最近変だ。スマホでのやり取りは相変わらずくるし、むしろ前よりも増えた。
    練習がない休日に遊びに誘われる回数も増えていると思う。
    ただ学校での私に対しての凛の反応がぎこちないのだ。
    その最たる例があのベーっだ。最近は目が合うだけでベーっとされてる気がする。
    なのにスマホでのやり取りはふつうだし、休日に遊ぶときもあの元気な凛のままだ。
    だから学校のあれは何? って聞くきっかけもなかなかなくて、私は一人頭を抱えていた。

    5 = 1 :

    そんな凛の最近のことを考えながら外を見ていると花陽が何もないところで勢いよくこけた。
     大丈夫かしら。
     近くには真姫ちゃんが駆け寄っていた。凛はドリブルに集中して気付いてないみたいだ。

    6 = 1 :

    幸いそんな大事でもないらしく、すっと花陽は立ち上がった。照れ隠しなのか目線を上にやった花陽と教室の私の目がたまたまあって、恥ずかしそうに笑っていた。
    口だけのジェスチャーで「気をつけなさいよ」ってやると嬉しそうに笑って頷くのだった。
    そんな花陽を見て不思議そうにしていた真姫ちゃんだったが、花陽が私の方を指さすと、真姫ちゃんは何か言いながらげんこつを作っていた。
    きっと勉強に集中しなさいとかあの真面目っ子は言っているのだろう。
    からかうつもりでにこにーポーズをすると呆れたように手を頭に置いていた。

    7 :

    読んでないけどどんな顔してこれ書いてんの?

    8 = 1 :

    ふと離れたところにいる凛をみると私にベーっと舌を出していた。
     だからなんでなのよ!
     私が机にゴンと頭を当てるのと、古典の先生が私を当てるタイミングが同じで「そんなにいやだったのね」と先生に言われて、教室は笑いに包まれた。私は顔を真っ赤にしながら、しばらく顔を上げることができなかった。

    9 :

    ニヤニヤしながらだろうな

    10 = 1 :

    授業終わりにさっそく希がからかいにきた。

    「さすが宇宙ナンバー1アイドル! お笑いにも精通してるんやね」
    「うるさいわよ。お笑いはあんたの専門分野でしょ」
    「うちはなんちゃって関西弁やもん」
    「自分で言うな自分で」

     はあ、と大きなため息をついて机に倒れ込む。窓にもたれかかってにやにやしている希を見てまたため息をつく。

    「実はさ、凛が」
    「凛ちゃん?」

    11 = 1 :

    私がしゃべり出した声と希の声が重なった。びっくりして希をみると、自分に指をさしていて、かと思ったら私に指をさして、すっごい笑顔で手を振りはじめた。

    「で、凛ちゃんがなに?」
    「いや、あんたが何よ。何なの人の顔を指さして笑って」
    「あー、凛ちゃんが向こうのドアのところにおって」

     振り返るけどそこにはもう凛はいなかった。

    12 = 1 :

    「すぐ行っちゃった。ベーッしてたから誰にかな思ったらにこっちにやって。いったいなにしたん?」

     わざわざ三年生の教室に来てまでそんなことをしに来る凛に私の頭は重みを増して、もう一度頭を机にたたきつけるのだった。天丼はお笑いの基本やねって言っている希に相談するのも心許なかったが今はとにかく話を聞いてほしかった。

    13 = 1 :

    「凛ちゃんがねえ」

     最近の凛の様子を話すと希は不思議そうに口元に指をあてた。

    「ほんとに何もしてないん?」
    「何かしてたら学校以外での凛の行動は説明がつかないわよ」
    「確かに」

     不思議やねぇって楽しそうに笑う希。やっぱり相談相手を間違えたのだと思って外を眺めていたら、けどな、と前置きして希が言った。

    14 = 1 :

    「凛ちゃんがにこっちのこと大好きなのは間違いないと思うよ」

     微笑みながら私の頭を撫でられ、安心してしまいそうになる私に腹が立つ。

    「私もそう思ってたわよ」

     わざと素っ気なく言うと、希は苦笑をもらした。

    「にこっちは友達少ないから、こういうことになると臆病やね」
    「何が言いたいのよ」

     むっとしてとげのある言い方になってしまったが、そんなことまったく気にせず希は私を安心させるように微笑んで言った。

    15 = 1 :

    「きっと凛ちゃんに直接聞いて大丈夫だと思うんよ」

     机に置いてあるスマホが凛のメッセージを告げるのと希がそう言ったのは、ほぼ同じタイミングだった。画面にポップアップされたメッセージには「日曜日遊ぼう!」と可愛らしい顔文字付きで書かれていた。その画面を希は覗き込んで、なっと言って笑った。
     いつも通り「いいけど」って送ると「なんやその素っ気ない返事は! それが原因ちゃうか!」と怒られた。
     けどこれが私たちのいつも通りなのだ。ほどなくして凛が最近お気に入りの喜んでいる猫のスタンプが押されて、私もつられて笑うのだった。

    16 = 1 :

    「日曜日遊ぼう!>ω</」


    訂正

    17 = 1 :

    その日から日曜日まで、これまで以上に謎の二重生活は続いた。
    部室に早く来ると、凛が一人でいて日曜日楽しみだねって笑いかけてくる。
    と思ったら花陽や真姫ちゃんがくると二人に抱き着いて絡みに行き、練習着に着替えて部室を出るときは私へのべーっは忘れない。廊下でたまたま会うとぎゅーっと抱き着いてくる。
    抱き着かれたまま一緒にいた花陽や真姫と話していると背中をつねってきて、こら凛、と言うとベーってしながら走り去っていく。
    最近は一年生の前では周りを気にせず私にベーっとする機会が増えたが、真姫ちゃんはおふざけの延長だと思ってまったく気にしていなかった。
    ただ花陽だけが困った顔で、私を見つめるのだった。

    18 = 1 :

    極めつけはこの絆創膏だ。
     週末前の日、他のチビたちの弁当がいらない日だったので私はコンビニでお弁当を買うことにした。弁当を包んでもらっている途中、レジ横にあるラーメンのパッケージのお菓子が気になって買うことにした。以前凛が好きだと言っていたお菓子だった。
     放課後早めに部室に来てお菓子を摘まんでいた。そうすると元気よくドアが開かれて、少し息を切らした凛が楽しそうに私に近づいて来た。

    19 = 1 :

    「にこちゃん! お菓子取っといてくれたよね!」

     昼休み自慢するようにパッケージを写真に撮って凛にメッセージを送ったら、「もらうから部室に早めに来て!」って言われて律義に私はこうして早めに来たのだった。

    「確かに美味しいわねこれ」

     そう言うと凛は自分が褒められたようにだらしなく笑った。

    「じゃあにこちゃん! あーん!」

     笑顔のままそう言われて、私は呆れ顔で答えた。

    「自分で食べなさいよ」
    「ひこあんがはへはへてや」
    「口を開けながら喋らないの。もう」

    20 = 1 :

    そう言って苦笑すると、口を開けたまま凛は笑った。結局甘い私がお菓子を口に入れてくれるのを知っているのだ。そして甘やかすのが好きな私は一つ凛の口に放り込んでやった。凛は嬉しそうに食べていて、それだけで買って良かったと思う。

    「にこちゃんもう一つ!」
    「はいはい」

     そう言って口にもう一つ運ぼうとすると、部室のドアが開いた。それと指の痛みを感じるのは同時だった。

    「いたっ」

    21 = 1 :

    楽しそうに会話しながら部室に入って来た穂乃果と絵里には私の声は届かなかったようだ。
    呆然として痛みのする指をみると少し皮が破れて血が滲んでいた。凛の方を見ると、彼女もまた私と同じように呆然としながら私の指を見ていた。
    何だか怒るのがバカらしくて、小さいため息をついたのがいけなかった。
    凛はびくっと怯えた表情をして、はじかれたように立ち上がって部室を出て行った。

    「またにこ何かしたの?」

     絵里が少し心配そうな顔でそういう。何でみんなにこが何かをしたと思うのか。

    「別に」

    22 = 1 :

    そういうと穂乃果がニコニコしながら言った。

    「本当に凛ちゃんとにこちゃんって姉妹みたいだよね。こうじゃれあってるとことかさ」

     そう言って年の近い姉妹を持つ絵里と穂乃果は姉妹談義を始めた。私はバッグから絆創膏を取り出し、もう一度深いため息をついた。そのあと凛から今日は部活を休む旨が伝えられて、いよいよ正直に話さなければいけないと決心した。
     帰宅したあと日曜日の待ち合わせ場所を絆創膏した指でスマホに打ち凛に送る。凛は「うん」とだけ、メッセージだけでも分かる元気のない返事をしてきた。

    23 = 1 :

    良く晴れた日だ。凛と遊ぶ日はいつも晴れている気がする。木陰で凛を待っていると、背中に衝撃を受ける。
    最初はよろけていたけど、今では慣れたもんですぐに踏ん張って後ろを振り返ることができるようになった。
    少し顔を伏せて抱き着いてきた凛は、この間のことを気にしているのかもしれない。だからいつも通りに言ってやった。
    「だから急に抱き着くなっていってるでしょうが!」
     嬉しそうに顔をあげた凛は今日の天気のようにさわやかだった。
     とりあえず楽しい時間にしよう。最近のことを聞くのは帰り際でいいでしょう。そう思って私はいつも通り凛を引きはがして片手をとって歩き出した。
    最初の頃からスキンシップが激しい凛に無理矢理手を引かれ色々なところに回っていた。今では慣れたもので妹につなぐように私から握ってしまう。その手をいつもより強く握った。

    24 = 1 :

    それから私たちはいつものように遊んだ。凛が行きたがっていたラーメン屋があるショッピングモールでいろいろ見てまわった。
    二人ともそんなにお金があるわけじゃないから、ほとんどがウィンドウショッピングだったけれど、流行りものの服を見たり二人で変な雑貨を見ながら笑いあったり、それだけで十分楽しかった。
    ラーメン屋はとても人気みたいで、一時間ほど並ばなければいけなかったけど、その間もμ'sの話をしたり、凛と花陽の昔話を聞いていたらあっという間だった。
    ラーメンが凛の目の前に置かれた時の表情は、新しい物を買ってもらった時の妹たちのように無邪気な顔で喜んでいた。

    25 = 1 :

    その表情がとても良くて思わず写真を撮ると、凛もにこちゃん撮るにゃ! なんて言って二人で無意味にお互いの顔を取り合っていて、ラーメンが伸びるところだった。
    美味しそうにラーメンをすする凛を見て何だかほっとする。チャーシューを一つあげると、ほんとに嬉しそうにありがとう! っていうもんだから、もう一枚あげた。

    26 = 1 :

    「凛の行きたいとこ行ったから、午後はにこちゃんが行きたいとこにいくにゃー!」
     って言って連れてかれたのは、いつものアイドルショップだった。得意げにアイドルショップの前で振り返り私の方を見る凛。
    「確かにちょっと欲しいアイドルのCDがあったのよね」
     撫でてやると、ふにゃりと満足した顔で笑うのだった。

    27 = 1 :

    「に、にこちゃんですよね?」

     推しているアイドルのアルバムの前で、頭の中のお財布事情と真剣に対話をしていたら、後ろから声をかけられた。
    この辺りの中学校の制服を着たショートカットの可愛いらしい女の子が私の目の前で顔を赤らめながら立っていた。

    「はい。そうですけど……」
    「あ、あの私ファンなんです!」

    28 = 1 :

    こんな可愛らしい子に、そんなことを言われるのは初めてだった。
    戸惑って視線で凛を探すと、μ'sのグッズ売り場の前で海未のグッズをニヤニヤしながら写真に収めている姿が見えた。
    顔を朱に染めた彼女は、そんな私の戸惑いには気付かず話を続ける。

    「に、にこちゃんはすごく可愛くて、元気がいっぱいで、いつも声を聞くとすごく元気が出て、だからいつもありがとうって伝えたくて」

    29 = 1 :

    私自身アイドルのファンだから分かる。そのアイドルに元気をもらえたら、どうしても自分の気持ちを伝えたくなるのだ。
     だから良かったと思った。本当に良かったと思った。自分自身をそんなに肯定してあげられる機会は少ないんだけど、今だけは認めてあげたくなった。
    あんたアイドル頑張ってて良かったわよって。真っ赤にそめながら私の顔をも見れずもじもじとする彼女の手をそっと握って言った。

    「にこのほうこそありがとう」

    30 = 1 :

    顔をはっとあげた彼女は嬉しそうに笑った。こうやって自分で笑顔にできる人間がもっと増えればいいなと思った。だから頑張ろうって思った。


     

     そんな嬉しい気持ちを打ち砕くようなローキックが私の膝に見事に決まった。

    「いったぁ!」

     見るとさっきまで写真を楽しそうに撮っていた凛が、ふーふー唸りながら私を睨み付けていた。

    31 = 1 :

    「ちょっと凛! いきなり何するのよ!」

     いきなりだったし、ファンの前だったしで私はいつもより険のある声で凛にそう言った。
     すると怯えた顔をした凛が私の横を通り過ぎお店を一目散に出て行った。

    「ちょ、ちょっと!」

     あまりの突然の凛の行動にあっけにとられてしまった。そのファンの子も呆然としている。

    32 = 1 :

    私はその子に、ちょっと最近ああいう遊びが流行っていて、なんて言い訳になるのか分からないようなことを言ってごまかした。
     その子はμ'sはやっぱり仲が良いんですね、って言ってくれたけど若干顔が引きつってるのが気になった。苦々しい気持ちで私はその子と別れ、凛の後を追った。

    33 = 1 :

    そもそも凛に追いつけるはずがないのだ。がむしゃらに走っていた私は足を止めスマホを取り出した。そして凛の電話にかける。しかしコール音が響くだけで彼女が出る気配は全くなかった。

    「まあ分かってたけどね」

     なんて独りごちて、スマホをしまう。乱れた呼吸を整えるように深いため息をついて、凛のことを考えてみる。
     あのローキックをくらうまでは本当にご機嫌な凛だった。むしろいつも以上に楽しんでいたくらいだ。あの時だって海未のグッズを楽しそうに写真に撮っていた。

    「本当にわけが分からないわよ……」

    34 = 1 :

    とにかく凛に会って話さなきゃいけない。もう一度スマホを取り出し、今度は花陽にメッセージを送る。
    そうすると数分して花陽から予想通りのメッセージが返ってきた。
    あまりにも予想通りすぎて笑ってしまう。分かりやすいのやら分かりにくいのやら。私は少し気合を入れて花陽の家に向かった。




     玄関の前で花陽は立っていた。私を見つけた花陽は本当に申し訳なさそうな顔をしていた。

    35 = 1 :

    「にこちゃんごめんね」
    「どうしてあんたが謝るのよ」

     そう言うと確かにそうだねって少し照れたように笑った。

    「凛ちゃんね今私の部屋で寝てるの。うちに来るなりにこちゃんに嫌われたって泣き出しちゃって」

     いつもそうなのだ。凛は自分がしていることが相手にどう思われているのか、しっかりと分かっている。

    「けど凛ちゃんね。分からないんだって」
    「なにがよ」
    「なんでそんなことしちゃうのか」

     花陽は困ったように笑う。

    36 = 1 :

    「どういうことよそれ」
    「うーん。それは花陽も分からないかなぁ」
    「あんたに分からなかったら誰も分からないじゃない」

     そう言って大きくため息をつくと、けど、とふわりと優しい口調で花陽は言った。

    「いまの凛ちゃんを元気にできるのはにこちゃんだけだと思うよ」

     その微笑みを包んだまなざしは、それを確信しているかのようだった。

    37 = 1 :

    「いまね家に誰もいなくて、けど夕ご飯の買い物に行かなくちゃいけないの。凛ちゃんも寝ちゃってるからにこちゃん少し見ててくれるかな」

     わざとらしく買い物袋を見せつけて言う花陽に、私もわざとらしく返事をした。

    「しょうがないわね。さっさと帰って来なさいよ」
    「うん! なるべくゆっくり買ってくるね!」

     嬉しそうにそう言った花陽に軽くチョップした。すこしのありがとうの気持ち込めて。それが伝わったのか顔をあげた花陽は満面の笑みだった。

    38 = 1 :

    花陽の家に来るのは初めてではない。何度かアイドルトークを徹夜でするために来たことがある。けど私の足取りはいつもと違って少し緊張をはらんでいるのだった。
     花陽の部屋のドアを開けると、ベッドの上で凛は寝ていた。静かに近づいて、ベッドの横に座る。
    凛の顔には涙の糸が頬に伝わっていて、さっきまで泣いていたのが分かる。鼻も真っ赤にそまっていて、何だか胸がしめつけられるように苦しかった。それを紛らわすため凛の透き通った髪をゆっくりと撫でる。

    「私は何にもしてないのにね」

    39 = 1 :

    きっと私は何にもしてない。けれど、彼女からはたくさんの物をもらった。μ'sにいまの私があるのも大げさじゃなくて凛のおかげだと思っている。
    こんな意固地な性格の私がみんなに溶け込めたのは後輩の可愛い凛がいつも突っかかってきてくれたからだ。
    μ'sが解散した時だって一緒についてきてくれた。
     だからこそ凛には何でも許してしまうし、何か困っているのなら力になりたいと思う。そう思いながら撫でていると凛が薄目をあけてこちらを見た。

    「あれ、かよちん……?」
    「花陽は買い物中よ」
    「に、にこちゃん!」

    40 = 1 :

    おしまい

    41 :

    はぁあああ?
    中途半端すぎるだろ

    42 = 1 :

    >>41
    こっから先は気持ち悪い

    43 = 41 :

    いいからはよ書け

    44 = 1 :

    はい

    45 = 1 :

     あまりの驚きに目を見開いた凛は、すぐに布団を勢いよくかぶって中に籠ってしまった。

    「ど、どうしてここにいるの!」

     布団の中のくぐもった声でも焦っているのが伝わってくる。

    「凛が心配だったからよ」

     正直にそういうと凛は黙ってしまった。しばらく待っていると聞こえるか聞こえないくらいの声で凛は言った。

    「怒ってないの?」

     私はなるべく優しい声で答えた。

    「ぜんぜん怒ってないわよ」

    46 = 1 :

     すると布団の中から少しだけ顔をだして凛は私の方を見る。
    悪いことをした時の子どものようで思わず笑ってしまいそうになる。目ざとく私の顔の変化を感じた凛は少し眉をしかめた。

    「何で笑うの」
    「凛が可愛いからっていたい!」

     凛はベッドのそばにあったティッシュ箱を私に投げつけてきた。

    「ちょっと! 痛いじゃない! それに花陽に怒られるわよ!」
    「かよちんは怒らないもん! それににこちゃんが変なこというから!」

    47 = 1 :

    私は頭に当たったところを押さえながらティッシュ箱を拾い、もとの場所に置こうとした。すると凛が最近よく見る少し申し訳なさそうな顔でこちらを見ているのだった。

    「だからそんな顔するなら、しなきゃいいじゃない」

     思わずいつも思っている言葉が口をついてしまう。凛はびくっと反応して少し怯えた顔をして私を見ている。けれどここで言わなかったら先へ進まない。私は言葉をつづけた。

    48 = 1 :

    「私ね。凛のこと大好きよ。だから基本的に何されてもいやじゃないし……。たまには本気で怒ることもあるけどさ。けど凛を嫌いになることは絶対にないわよ」

     そう言ってみるけど凛は全然私の言葉を聞いていないかのように、じわじわと涙ぐみはじめてしまう。

    「けどこないだため息ついた……」
    「こないだって?」
    「指噛んだ時……」

     そう言って凛は私の絆創膏を貼った指をとった。そして凛のあたたかい手がその指を優しく撫でる。

    「ちょっと私もびっくりしただけよ。だっていきなり噛まれるとは思わないじゃない」

     そういうとまた傷付いた顔をして指を持ったままうつむいた。

    49 = 1 :

    「凛ね。にこちゃんに呆れられちゃうって分かってるの。分かってるのに何かにこちゃんが他の人としゃべってたり仲良くしてたりすると、ウーってむしゃくしゃして……。だからさっきも他の人と楽しそうに喋ってるにこちゃんを見て……」

     それを聞いて私も混乱する。だってそんな友達の嫉妬のようなこと凛には縁がないように感じたからだ。

    「花陽だって他の人としゃべることあるでしょ。嫌だったりしたことないの?」
    「かよちんの時はそんなこと一度もなかったの! ほんとに凛だってわかんないんだよ!」

    50 = 1 :

    そうやっていやいやと首をふる。私は落ち着くようにと、さっき私の指を撫でてくれた手を両手でそっと包む。涙がぽたぽたと布団や私の両手に落ちるたびに、なんだか私まで悲しくなってしまう。普段の元気な凛のこのような姿が想像できなくて。だけど……やっぱり凛なのだ。

    「分かんないのに私にはそういうことしちゃうのね」
    「ほんとごめんねにこちゃん……」
    「凛は私のこと嫌いじゃないのよね」
    「それだけは違うよ! むしろ凛はにこちゃんが大好きだよ! だからこんなことしなくないのに……」


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