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元スレドラえもん「ここが六軒島だよのび太くん」
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のび太「ドラえもーん!」
勢いよくふすまを開けたのび太は二十一世紀から来たドラえもんに泣きつく。
ドラえもん「はいはい、どうしたのさのび太くん。またジャイアンに殴られたの?」
のび太「うわーん!」
ドラえもんはのび太が泣き止むまで背中を擦りながらなだめる。
のび太「あのねドラえもん。スネオの奴が、出来杉の奴が、
しずちゃんにジャイアンまで!」
また泣き出すのび太。ドラえもんはやれやれと言いたげな表情を
見せながらどら焼きを食む。
勢いよくふすまを開けたのび太は二十一世紀から来たドラえもんに泣きつく。
ドラえもん「はいはい、どうしたのさのび太くん。またジャイアンに殴られたの?」
のび太「うわーん!」
ドラえもんはのび太が泣き止むまで背中を擦りながらなだめる。
のび太「あのねドラえもん。スネオの奴が、出来杉の奴が、
しずちゃんにジャイアンまで!」
また泣き出すのび太。ドラえもんはやれやれと言いたげな表情を
見せながらどら焼きを食む。
――空き地――
スネ夫「じゃじゃーん! これがかの有名な六軒島連続殺人事件の証拠品である黄金の欠片だぞ!」
ジャイアン「こ、こ、これって、金なのか?」
スネ夫「ジャイアン、金なんてそんな珍しい物じゃないだろ。僕が言いたいのは六軒島殺人事件の証拠だって方」
出来杉「すごいじゃないかスネ夫くん!」
静香「すごいわスネ夫さん!」
スネ夫「えへへ、まあね。僕のパパの友人の大学教授が貸してくれたのさ」
出来杉「これがこうしてここにあるって事は、黄金の魔女ベアトリーチェは本当に
右代宮家に黄金を贈ったって事が言えるのかもしれないね」
静香「あら、出来杉さん違うわよ。ベアトリーチェは黄金を贈ったんじゃなくて貸したはずよ」
スネ夫「じゃじゃーん! これがかの有名な六軒島連続殺人事件の証拠品である黄金の欠片だぞ!」
ジャイアン「こ、こ、これって、金なのか?」
スネ夫「ジャイアン、金なんてそんな珍しい物じゃないだろ。僕が言いたいのは六軒島殺人事件の証拠だって方」
出来杉「すごいじゃないかスネ夫くん!」
静香「すごいわスネ夫さん!」
スネ夫「えへへ、まあね。僕のパパの友人の大学教授が貸してくれたのさ」
出来杉「これがこうしてここにあるって事は、黄金の魔女ベアトリーチェは本当に
右代宮家に黄金を贈ったって事が言えるのかもしれないね」
静香「あら、出来杉さん違うわよ。ベアトリーチェは黄金を贈ったんじゃなくて貸したはずよ」
のび太「ね、ね、なに、そのベントーっちって?」
のび太の発言で、皆が静まりかえる。ずれた評価をしていたジャイアンもだ。
のび太「そりゃあ金を持ってるってのは凄いよ。でも、結局はそれだけじゃない。
僕にはよくわからないんだけど」
スネ夫「お前、六軒島連続殺人事件を知らないのか?」
のび太「だから何さそれ。殺人事件だなんて物騒だなあ」
のび太以外の全員がのび太を嘲笑する。
のび太の発言で、皆が静まりかえる。ずれた評価をしていたジャイアンもだ。
のび太「そりゃあ金を持ってるってのは凄いよ。でも、結局はそれだけじゃない。
僕にはよくわからないんだけど」
スネ夫「お前、六軒島連続殺人事件を知らないのか?」
のび太「だから何さそれ。殺人事件だなんて物騒だなあ」
のび太以外の全員がのび太を嘲笑する。
のび太が受けた六軒島連続殺人事件の説明はこうだった。
十年前、親族会議の為に六軒島を訪れていた右代宮家を襲った連続殺人事件。
使用人を含めて島の中に十七人いた内の、右代宮絵羽を除く十六人が行方不明になった。
1986年10月4日から5日にかけて島を襲った台風は、島から逃げ出すことも、島へと進入することをも阻んだ。
事件直後の週刊誌では右代宮絵羽犯人説が主流であったが、その後本州に流れ着いたボトルメールにより、
多種多様な偽書、見ることのできなかった二日間の島を想像して描いた物語が爆発的に流行し、
今では様々な説がある。
十年前、親族会議の為に六軒島を訪れていた右代宮家を襲った連続殺人事件。
使用人を含めて島の中に十七人いた内の、右代宮絵羽を除く十六人が行方不明になった。
1986年10月4日から5日にかけて島を襲った台風は、島から逃げ出すことも、島へと進入することをも阻んだ。
事件直後の週刊誌では右代宮絵羽犯人説が主流であったが、その後本州に流れ着いたボトルメールにより、
多種多様な偽書、見ることのできなかった二日間の島を想像して描いた物語が爆発的に流行し、
今では様々な説がある。
偽書や説の中でも異常なのが、魔女がすべての犯行を行ったとする説である。
六軒島殺人事件を、現在語る際、人々は頭の中で物語化している。現実ではなく虚構として捉えている。
爆発事故により屋敷が存在しないこともプラスされて、言わばオチの無いミステリとして当てはめている。
最後、殺人を犯したものは人間であるとするか。最後、殺人を犯したものは魔女であるとするか。
それにより、ファンタジーなのかミステリなのかを定めようと、人々は躍起になっていたのだ。
最近は下火にあったその論争なのだが、一週間前に、六軒島最後の生存者、右代宮絵羽が病気で床に伏した。
まだ世間の目に晒されていない証拠が表れるのではないかと、世間は再び六軒島論争を引き起こしている。
六軒島殺人事件を、現在語る際、人々は頭の中で物語化している。現実ではなく虚構として捉えている。
爆発事故により屋敷が存在しないこともプラスされて、言わばオチの無いミステリとして当てはめている。
最後、殺人を犯したものは人間であるとするか。最後、殺人を犯したものは魔女であるとするか。
それにより、ファンタジーなのかミステリなのかを定めようと、人々は躍起になっていたのだ。
最近は下火にあったその論争なのだが、一週間前に、六軒島最後の生存者、右代宮絵羽が病気で床に伏した。
まだ世間の目に晒されていない証拠が表れるのではないかと、世間は再び六軒島論争を引き起こしている。
スネ夫「その時に右代宮絵羽の金庫から発見されたって言われているのが、この黄金なんだ」
目をつむり空に顔を上げているスネ夫。しかしのび太は眉をひそめて口を尖らせる。
のび太「偽物なんじゃないの、それ」
スネ夫「へ! これだから夢がないのび太は困るんだよ。これから僕たちの家に言って
ディスカッションをしようと思うんだけど、のび太も来るか? あ、やっぱいいや
のび太、事件も知らなかったみたいだし、どうせろくな説なんてないだろ」
じゃあみんないこうよ、と言いながら船頭を切るスネ夫。のび太を除く全員が着いていく。
一人空き地に取り残されるのび太。話し声が聞こえる。
ワタシヤッパリマジョハイルトオモウノ、ダッテソッチノホウガステキジャナイ
イヤ、ボクハヤッパリニンゲンシカイナカッタトオモウヨ
スネオ、ソレッテクエルノカ?
ダーメ!アシタニハカエスンダカラ……
目をつむり空に顔を上げているスネ夫。しかしのび太は眉をひそめて口を尖らせる。
のび太「偽物なんじゃないの、それ」
スネ夫「へ! これだから夢がないのび太は困るんだよ。これから僕たちの家に言って
ディスカッションをしようと思うんだけど、のび太も来るか? あ、やっぱいいや
のび太、事件も知らなかったみたいだし、どうせろくな説なんてないだろ」
じゃあみんないこうよ、と言いながら船頭を切るスネ夫。のび太を除く全員が着いていく。
一人空き地に取り残されるのび太。話し声が聞こえる。
ワタシヤッパリマジョハイルトオモウノ、ダッテソッチノホウガステキジャナイ
イヤ、ボクハヤッパリニンゲンシカイナカッタトオモウヨ
スネオ、ソレッテクエルノカ?
ダーメ!アシタニハカエスンダカラ……
そして冒頭に繋がる
ドラえもん「のび太くん、本当にいいんだね?」
のび太「いいに決まってるじゃないか!僕は、全世界が羨む真実を、これから手にするんだ!
スネ夫なんか、出来杉の奴をアっと言わせてやる!」
のび太の部屋。座していたドラえもんは立ち上がり、引き出しを開ける。
ちらりと一瞬、のび太を振り向く。その時ののび太の瞳にはきっと
ドラえもんの姿は映っていなかっただろう。
タイムマシンに乗り込み、年代月日時刻場所を入力する。
のび太「さぁ!今こそ真実を!」
ドラえもんがタイムマシンに入力した日付は。
1986年10月4日 午後6時 六軒島
ドラえもん「のび太くん、本当にいいんだね?」
のび太「いいに決まってるじゃないか!僕は、全世界が羨む真実を、これから手にするんだ!
スネ夫なんか、出来杉の奴をアっと言わせてやる!」
のび太の部屋。座していたドラえもんは立ち上がり、引き出しを開ける。
ちらりと一瞬、のび太を振り向く。その時ののび太の瞳にはきっと
ドラえもんの姿は映っていなかっただろう。
タイムマシンに乗り込み、年代月日時刻場所を入力する。
のび太「さぁ!今こそ真実を!」
ドラえもんがタイムマシンに入力した日付は。
1986年10月4日 午後6時 六軒島
既に台風は島を囲んでおり、大量の雨とともに吹きすさぶ風が頬に痛い。
ドラえもん「はい、石ころ帽子」
のび太「ドラえもんは準備がいいなあ」
ドラえもん「あのね、僕たちは本来いちゃいけないんだよ。本当は石ころ帽子を被ったって
僕たちは島にいるんだから……」
のび太「細かいことはいいのいいの。さ、ここじゃ濡れちゃうから屋敷の中に入ろうじゃないの」
施錠されている屋敷の重厚な扉の前で、ドラえもんは通り抜けフープを取り出す。
ドラえもん「のび太くん、僕は止めたからね」
ドラえもん「はい、石ころ帽子」
のび太「ドラえもんは準備がいいなあ」
ドラえもん「あのね、僕たちは本来いちゃいけないんだよ。本当は石ころ帽子を被ったって
僕たちは島にいるんだから……」
のび太「細かいことはいいのいいの。さ、ここじゃ濡れちゃうから屋敷の中に入ろうじゃないの」
施錠されている屋敷の重厚な扉の前で、ドラえもんは通り抜けフープを取り出す。
ドラえもん「のび太くん、僕は止めたからね」
屋敷の中はまさに豪華絢爛。贅の限りを尽くした調度品で溢れかえっていた。
のび太「キレイに掃除はされているけれども、なんだか埃っぽいね」
ドラえもん「しっ! 石ころ帽子を被っていても声は聞こえるんだから静かに!」
玄関ホールの階段を上り、碑文が書かれたプレートの奥に佇んでいる金髪の女性を描いた絵。
黄金の魔女ベアトリーチェの肖像画とされる物だ。
のび太「わあ、キレイな人だねえ」
ドラえもんはのび太を無視し、客間へと続く廊下を歩く。
のび太「わ、待ってよドラえもーん」
のび太「キレイに掃除はされているけれども、なんだか埃っぽいね」
ドラえもん「しっ! 石ころ帽子を被っていても声は聞こえるんだから静かに!」
玄関ホールの階段を上り、碑文が書かれたプレートの奥に佇んでいる金髪の女性を描いた絵。
黄金の魔女ベアトリーチェの肖像画とされる物だ。
のび太「わあ、キレイな人だねえ」
ドラえもんはのび太を無視し、客間へと続く廊下を歩く。
のび太「わ、待ってよドラえもーん」
のび太「この扉の向こうに、屋敷の中の人が全員いるんだね」
ドラえもん「そうだよ。このまま扉を開けるとばれちゃうから……」
再び通り抜けフープを使い、部屋の中へ入る。そこには。
のび太「え、なんで?」
誰もいない。
ドラえもん「そういう事なんだよ、のび太くん」
その声は果たしてのび太の耳に届いたのだろうか。
ドラえもん「そうだよ。このまま扉を開けるとばれちゃうから……」
再び通り抜けフープを使い、部屋の中へ入る。そこには。
のび太「え、なんで?」
誰もいない。
ドラえもん「そういう事なんだよ、のび太くん」
その声は果たしてのび太の耳に届いたのだろうか。
ドラえもん「そもそも殺人なんて起こるはずがないんだ」
二人は椅子に腰を掛けながら会話する。もう石ころ帽子は被らなくても良いと
判断したドラえもんは、のび太の分も預かり、しまい込む。
ドラえもん「ここ六軒島はね、三年前、1983年から無人島だったんだよ」
のび太「じゃあどうして六軒島殺人事件だなんて言われるようになったのさ」
ドラえもん「夫が経営してた会社の業績が落ちて、倒産寸前にまで追いやられた絵羽は確かに魔女だったのかもしれない。
かつて右代宮家に関係していた人物全員にお金を握らせて、あたかも殺人事件が起こったかのように見せかけたんだ」
のび太「それにどういう意味があるの?」
ドラえもん「人っていうのはね、のび太くん。何度も何度もその名前を聞いていたら、洗脳されるんだよ」
のび太は首を傾げる。
二人は椅子に腰を掛けながら会話する。もう石ころ帽子は被らなくても良いと
判断したドラえもんは、のび太の分も預かり、しまい込む。
ドラえもん「ここ六軒島はね、三年前、1983年から無人島だったんだよ」
のび太「じゃあどうして六軒島殺人事件だなんて言われるようになったのさ」
ドラえもん「夫が経営してた会社の業績が落ちて、倒産寸前にまで追いやられた絵羽は確かに魔女だったのかもしれない。
かつて右代宮家に関係していた人物全員にお金を握らせて、あたかも殺人事件が起こったかのように見せかけたんだ」
のび太「それにどういう意味があるの?」
ドラえもん「人っていうのはね、のび太くん。何度も何度もその名前を聞いていたら、洗脳されるんだよ」
のび太は首を傾げる。
ドラえもん「まるで小説みたいな話がこの世にあると思うかい? 閉ざされた孤島で連続殺人だなんて、犯人にはメリットがないんだよ
でも起こってしまった、と世間は思うよね。当然、絵羽の所有する会社名も連日報道されたはずだよ」
ドラえもん「先週死んじゃったけど、絵羽は外食チェーン運営会社の経営者だったんだ。多額の金を投じてコマーシャルを流す事も
宣伝にはなるかもしれないけれども、それよりも効果的なものってなんだかわかる?
のび太「わかんないよ」
ドラえもん「それはね、人の不幸を笑うことだよ。そこから、殺人事件のあった会社の外食ってどういう味なんだろうと、そうなっていくんだ。
でも起こってしまった、と世間は思うよね。当然、絵羽の所有する会社名も連日報道されたはずだよ」
ドラえもん「先週死んじゃったけど、絵羽は外食チェーン運営会社の経営者だったんだ。多額の金を投じてコマーシャルを流す事も
宣伝にはなるかもしれないけれども、それよりも効果的なものってなんだかわかる?
のび太「わかんないよ」
ドラえもん「それはね、人の不幸を笑うことだよ。そこから、殺人事件のあった会社の外食ってどういう味なんだろうと、そうなっていくんだ。
実際。事件以前は中堅に位置していた会社も、今では外食産業最大手と呼ばれる程になっている。
六軒島で手に入れた黄金を担保にして会社を成長させたという説もあるが、
それ以上に人々にもたらした宣伝効果は大きかった。
六軒島の名前が薄れゆく現在も大手であり続けているのは、
殺人事件という週刊誌に躍った文字によるセンセーショナルなインパクトもあったのかもしれない。
ドラえもん「どうだい? わかった? 六軒島にはね、ファンタジーもミステリもなかったんだよ」
のび太「凄いや!!」
椅子から立ち上がるのび太。
のび太「早くみんなに知らせないと! 六軒島の真実はこうなんだって! ねぇねぇドラえもん、早く戻ってみんなを連れてこようよ!」
六軒島で手に入れた黄金を担保にして会社を成長させたという説もあるが、
それ以上に人々にもたらした宣伝効果は大きかった。
六軒島の名前が薄れゆく現在も大手であり続けているのは、
殺人事件という週刊誌に躍った文字によるセンセーショナルなインパクトもあったのかもしれない。
ドラえもん「どうだい? わかった? 六軒島にはね、ファンタジーもミステリもなかったんだよ」
のび太「凄いや!!」
椅子から立ち上がるのび太。
のび太「早くみんなに知らせないと! 六軒島の真実はこうなんだって! ねぇねぇドラえもん、早く戻ってみんなを連れてこようよ!」
1986年 10月4日 午後9時 六軒島
のび太の家に着いてから一言も口を利かないドラえもんは、やはりのび太の目に入らなかったのだろう。
嬉々として家を飛び出しスネ夫の家に向かったのび太。屋敷の中に通された一同は再び、誰もいない屋敷内部を目にする。
スネ夫「これが」出来杉「六軒島の」しずか「真実なのね」ジャイアン「ほげー」
四人の感想を聞いたのび太は満面の笑みを浮かべている。
のび太の家に着いてから一言も口を利かないドラえもんは、やはりのび太の目に入らなかったのだろう。
嬉々として家を飛び出しスネ夫の家に向かったのび太。屋敷の中に通された一同は再び、誰もいない屋敷内部を目にする。
スネ夫「これが」出来杉「六軒島の」しずか「真実なのね」ジャイアン「ほげー」
四人の感想を聞いたのび太は満面の笑みを浮かべている。
のび太「そう! 私がこの真実を発見したのです!」
スネ夫「ドラえもんに早く頼めば良かったよ……」
ジャイアン「おい! こっちに行けそうだぜ! 探検しようぜ探検!」
出来杉「でも勝手に人の家を歩き回ったらだめだよ」
ジャイアン「いいってことよ! だってここは誰も住んでいないんだろ?」
出来杉「それはそうだけど……」
ジャイアン「さ、俺の後に続け!」
他の部屋へと繋がる扉を勢いよく開けるジャイアンの背中に、
スネ夫「ったく調子がいいんだから。さっきまでジャイトリーチェって言ってたくせに」
と独り言を飛ばすスネ夫。ぞろぞろと、皆はジャイアンを追う。その後ろから。
スネ夫「ドラえもんに早く頼めば良かったよ……」
ジャイアン「おい! こっちに行けそうだぜ! 探検しようぜ探検!」
出来杉「でも勝手に人の家を歩き回ったらだめだよ」
ジャイアン「いいってことよ! だってここは誰も住んでいないんだろ?」
出来杉「それはそうだけど……」
ジャイアン「さ、俺の後に続け!」
他の部屋へと繋がる扉を勢いよく開けるジャイアンの背中に、
スネ夫「ったく調子がいいんだから。さっきまでジャイトリーチェって言ってたくせに」
と独り言を飛ばすスネ夫。ぞろぞろと、皆はジャイアンを追う。その後ろから。
ドラえもん「これもみんなのためだ……」
ドラえもんの右手には忘れトンカチ。のび太の家に戻る前に、全員の記憶から六軒島というワードを消すために
用意をし、持ってきた秘密道具だった。
ドラえもん「開けちゃいけない箱の中を開けたんだ。きちんと閉じないと……」
ドラえもんの右手には忘れトンカチ。のび太の家に戻る前に、全員の記憶から六軒島というワードを消すために
用意をし、持ってきた秘密道具だった。
ドラえもん「開けちゃいけない箱の中を開けたんだ。きちんと閉じないと……」
屋敷の中をあらかた捜索し終えた一同は、せっかくだからとゲストハウスへと向かった。
屋敷と同じく、ゲストハウスは施錠されていたので通り抜けフープを使い中へと入った。
ドラえもんは、万が一のことがあるかもしれないから、とみなに石ころ帽子を渡し、建物の中に
人がいないことを確認してから外すように頼み、みなも了承した。
ジャイアン「でも、誰もいないのに帽子を被れって言うのも変な話だぜ」
ドラえもん「いいから! みんなちゃんと被ったね?」
玄関を抜け、客間、いとこたちにあてられた客室を順繰りに見回っていく。
屋敷と同じく、誰もいない。ドラえもんの言うとおり、1986年10月4日の六軒島には人は一人もいない。
屋敷と同じく、ゲストハウスは施錠されていたので通り抜けフープを使い中へと入った。
ドラえもんは、万が一のことがあるかもしれないから、とみなに石ころ帽子を渡し、建物の中に
人がいないことを確認してから外すように頼み、みなも了承した。
ジャイアン「でも、誰もいないのに帽子を被れって言うのも変な話だぜ」
ドラえもん「いいから! みんなちゃんと被ったね?」
玄関を抜け、客間、いとこたちにあてられた客室を順繰りに見回っていく。
屋敷と同じく、誰もいない。ドラえもんの言うとおり、1986年10月4日の六軒島には人は一人もいない。
のび太「ねぇねぇ、ドラえもん!」
ドラえもん「なぁに、のび太くん」気だるそうに返事をするドラえもん
のび太「今日一日、ここに泊まることはできないかしら?」
ドラえもん「な、何を言ってるんだのび太くん! そんなことしたらだめ!」
スネ夫「いいじゃんか、なあ、ドラえもん」
ジャイアン「おう、俺ものび太に賛成-!」
出来杉「僕、今日はこれから塾があるんだけど……」
静香「わたしもこれからバイオリンのお稽古が……」
のび太「大丈夫だって! タイムマシンがあるんだからさ! その時間の前に戻ればいいんだよ!」
静香「それはそうかもしれないけれども……」
スネ夫「そういえば静香ちゃん、さっき屋敷でバイオリンが飾られているのを見たんだけれども、見た?」
静香「え? わたし見てないわ」
スネ夫「じゃあ今から見に行こうよ、ね! ドラえもん、通り抜けフープ貸しておくれよ!」
出来杉「あ、それなら僕も見たいなあ。僕も一緒に行っていいかな?」
ドラえもん「なぁに、のび太くん」気だるそうに返事をするドラえもん
のび太「今日一日、ここに泊まることはできないかしら?」
ドラえもん「な、何を言ってるんだのび太くん! そんなことしたらだめ!」
スネ夫「いいじゃんか、なあ、ドラえもん」
ジャイアン「おう、俺ものび太に賛成-!」
出来杉「僕、今日はこれから塾があるんだけど……」
静香「わたしもこれからバイオリンのお稽古が……」
のび太「大丈夫だって! タイムマシンがあるんだからさ! その時間の前に戻ればいいんだよ!」
静香「それはそうかもしれないけれども……」
スネ夫「そういえば静香ちゃん、さっき屋敷でバイオリンが飾られているのを見たんだけれども、見た?」
静香「え? わたし見てないわ」
スネ夫「じゃあ今から見に行こうよ、ね! ドラえもん、通り抜けフープ貸しておくれよ!」
出来杉「あ、それなら僕も見たいなあ。僕も一緒に行っていいかな?」
ドラえもんは誰とも視線を合わせようとしない。右手に持っていたフープを半ば無理矢理に奪うスネ夫。
ジャイアン「じゃあ俺はいとこ部屋を見て回るぜ! お、テレビも見れるんじゃねーか! 懐かしい、俺が子供の頃にやってた
アニメじゃねーか! マジカルベルンちゃんだぜ!」
のび太「ぼくはちょっと眠くなってきちゃったなあ」
それぞれがそれぞれ、思い思いの行動をしだした。血と魔法で濡れていると思われていた六軒島。
しかし、誰一人もいないということを知った事から来る解放が、彼らを自由にさせた。
ドラえもん「……」
ジャイアン「じゃあ俺はいとこ部屋を見て回るぜ! お、テレビも見れるんじゃねーか! 懐かしい、俺が子供の頃にやってた
アニメじゃねーか! マジカルベルンちゃんだぜ!」
のび太「ぼくはちょっと眠くなってきちゃったなあ」
それぞれがそれぞれ、思い思いの行動をしだした。血と魔法で濡れていると思われていた六軒島。
しかし、誰一人もいないということを知った事から来る解放が、彼らを自由にさせた。
ドラえもん「……」
数十分して、出来杉と静香とスネ夫が帰ってきた。念願のものを見ることができて満足した様子の静香と、
名器によるひどい演奏を聴かされたのだろう、スネ夫と出来杉の顔は引きつっている。
五人それぞれ、勝手に部屋を拝借した。眠りにつく者、興奮で眠れない者、様々だ。
ドラえもんはひとり、部屋にいた。室内の光に反射し、闇に染まる黒雲が禍々しい。
名器によるひどい演奏を聴かされたのだろう、スネ夫と出来杉の顔は引きつっている。
五人それぞれ、勝手に部屋を拝借した。眠りにつく者、興奮で眠れない者、様々だ。
ドラえもんはひとり、部屋にいた。室内の光に反射し、闇に染まる黒雲が禍々しい。
書きためた部分はここまでなので、続きはまた今度にしたいと思います
1986年 10月5日 午前7時
出木杉により起こされたのび太の目はしょぼついている
のび太「ううん、なんだよ出木杉い、まだ七時じゃないか」
出木杉「いいから! 早く起きるんだのび太くん!」
ベッド脇に置かれた水差しからコップに水を移し、一口含み、飲む。
出木杉「そんな事してる場合じゃないんだよ!」
出木杉により起こされたのび太の目はしょぼついている
のび太「ううん、なんだよ出木杉い、まだ七時じゃないか」
出木杉「いいから! 早く起きるんだのび太くん!」
ベッド脇に置かれた水差しからコップに水を移し、一口含み、飲む。
出木杉「そんな事してる場合じゃないんだよ!」
出木杉に連れられたのび太は、今だ続く豪雨の中屋敷へと向かった。
ゲストハウスの中はしんと静まりかえっていた。
出木杉は扉を開け、小走りで駆けていく。
のび太「ま、待ってよお。置いてかないでよお」
起きた瞬間から走らされ、階段を上らされて。
客間の前に着いた。扉の外には静香が膝を抱きかかえうずくまっている。
ゲストハウスの中はしんと静まりかえっていた。
出木杉は扉を開け、小走りで駆けていく。
のび太「ま、待ってよお。置いてかないでよお」
起きた瞬間から走らされ、階段を上らされて。
客間の前に着いた。扉の外には静香が膝を抱きかかえうずくまっている。
のび太「おはよう静香ちゃん。どうしたのさ、みんなして……」
出木杉「君も中の様子を見るんだ」
そう言って、出木杉はドアノブに手を掛け、ぎいと張る音を出しながら扉を開く。
部屋の中にはドラえもんがいる。スネ夫がいる。ジャイアンがいる。
扉の外には静香がいる。今、出木杉とのび太は部屋に入った。
出木杉「君も中の様子を見るんだ」
そう言って、出木杉はドアノブに手を掛け、ぎいと張る音を出しながら扉を開く。
部屋の中にはドラえもんがいる。スネ夫がいる。ジャイアンがいる。
扉の外には静香がいる。今、出木杉とのび太は部屋に入った。
のび太「なんだ、みんないるじゃない。なんでそんなに慌ててるのさ、みんな」
部屋のベッドに顔を埋めているドラえもんに、のび太は安心した様子で話しかける。
スネ夫「お前、本気で言ってるのか?」
ジャイアン「いいから、こっちに来い」
スネ夫とジャイアンはまるで門番のように仁王立ちしている。
何かを守るためのように見える。何かに背を向けるように立っているようにも見える。
部屋のベッドに顔を埋めているドラえもんに、のび太は安心した様子で話しかける。
スネ夫「お前、本気で言ってるのか?」
ジャイアン「いいから、こっちに来い」
スネ夫とジャイアンはまるで門番のように仁王立ちしている。
何かを守るためのように見える。何かに背を向けるように立っているようにも見える。
二人の四本の脚の隙間から覗く、黄色。
二人の身体の間を割って入っていくのび太。
のび太「え、なんで? どうして首が切られているの? どうしてドラミちゃんがここにいるの?」
二人の身体の間を割って入っていくのび太。
のび太「え、なんで? どうして首が切られているの? どうしてドラミちゃんがここにいるの?」
第一の殺人
被害者 ドラミ
首を真っ二つに切断され、床に横たわっている。発見者はジャイアン。
歌の力で台風を吹き飛ばそうと、もっとも空が見える部屋を探すために客室を見回っているところ、
首が切断されているドラミを発見したという。
ロボットである為に死因は不明だが、いくら呼びかけても反応がないことや、ドラえもんが言う
「僕たちは人間と同じで頭の中に生命維持装置が入っているんだ」との事から、
ドラミは死んでいると全員が認識した。
切断面は滑らかで、真一文字に切られている。犯人と接触したのかは不明だが、
抵抗した後がないことから顔見知りの犯行だと考えられる。
――出木杉
被害者 ドラミ
首を真っ二つに切断され、床に横たわっている。発見者はジャイアン。
歌の力で台風を吹き飛ばそうと、もっとも空が見える部屋を探すために客室を見回っているところ、
首が切断されているドラミを発見したという。
ロボットである為に死因は不明だが、いくら呼びかけても反応がないことや、ドラえもんが言う
「僕たちは人間と同じで頭の中に生命維持装置が入っているんだ」との事から、
ドラミは死んでいると全員が認識した。
切断面は滑らかで、真一文字に切られている。犯人と接触したのかは不明だが、
抵抗した後がないことから顔見知りの犯行だと考えられる。
――出木杉
ベッドに泣きついていたドラえもん、部屋の外で膝に頭を埋めて泣いていた静香を起こし、
全員は食道へと移動した。ドラミの死体は、いずれ片付けなければならないとはなったものの、
今は現場を必要以上に荒らしてはいけないという理由から、そのまま放置してきた。
のび太「ドラえもん」
ドラえもん「グスッ、なあに、のび太くん」
目の端に見えるものは涙だろうか。彼は、ドラえもんは悲しんでいるのだろうか。
そう思いながらのび太は冷たく言い放つ。
のび太「君、犯人なんじゃないの?」
全員は食道へと移動した。ドラミの死体は、いずれ片付けなければならないとはなったものの、
今は現場を必要以上に荒らしてはいけないという理由から、そのまま放置してきた。
のび太「ドラえもん」
ドラえもん「グスッ、なあに、のび太くん」
目の端に見えるものは涙だろうか。彼は、ドラえもんは悲しんでいるのだろうか。
そう思いながらのび太は冷たく言い放つ。
のび太「君、犯人なんじゃないの?」
ドラえもん「な」
何を言うんだのび太くん! さびたドラえもんの声が食堂に響く。
驚いた静香の顔とは対照的に、のび太を含む男性陣は至ってクールな表情のままだ。
のび太「僕たちの六軒島に来た理由はなんだったっけ?」
ドラえもん「それは……六軒島殺人事件の真実を知りたいからだって君が言ったからだろう」
のび太「そうだ。僕は確かにそう言ったよ。ドラミちゃんはその事を知らないはずじゃないか!」
鋭さを持ったのび太の声はドラえもんを突き刺したのだろうか。
ドラえもん「それは、ドラミは未来テレビで僕たちの様子を見ていたんだろう……」
出木杉「だからそれがおかしいんだよ!」
別方向からの叫び声
何を言うんだのび太くん! さびたドラえもんの声が食堂に響く。
驚いた静香の顔とは対照的に、のび太を含む男性陣は至ってクールな表情のままだ。
のび太「僕たちの六軒島に来た理由はなんだったっけ?」
ドラえもん「それは……六軒島殺人事件の真実を知りたいからだって君が言ったからだろう」
のび太「そうだ。僕は確かにそう言ったよ。ドラミちゃんはその事を知らないはずじゃないか!」
鋭さを持ったのび太の声はドラえもんを突き刺したのだろうか。
ドラえもん「それは、ドラミは未来テレビで僕たちの様子を見ていたんだろう……」
出木杉「だからそれがおかしいんだよ!」
別方向からの叫び声
出木杉「ドラミちゃんは六軒島殺人事件の真相を知っているんだよ」
えっ、と上がる声の主はジャイアンとスネ夫と静香。
出木杉、ドラえもん、のび太は押し黙ったままだ。
出木杉「二十二世紀、タイムマシンが世の中に広く普及する中で、過去の迷宮入り事件を捜索しない訳がないんだ。
その頃にはもう口を出す遺族もいないだろうし、そもそもドラえもんは真相を知っていた。それは話しぶりを見ても
明らかだとわかるよ」
のび太「そう、ドラえもんは六軒島の真相を知っていたんだ。ドラミちゃんを呼んだのは
その真相を僕たちから隠すためなんじゃないの?」
数瞬後、ドラえもんの口が開く。
えっ、と上がる声の主はジャイアンとスネ夫と静香。
出木杉、ドラえもん、のび太は押し黙ったままだ。
出木杉「二十二世紀、タイムマシンが世の中に広く普及する中で、過去の迷宮入り事件を捜索しない訳がないんだ。
その頃にはもう口を出す遺族もいないだろうし、そもそもドラえもんは真相を知っていた。それは話しぶりを見ても
明らかだとわかるよ」
のび太「そう、ドラえもんは六軒島の真相を知っていたんだ。ドラミちゃんを呼んだのは
その真相を僕たちから隠すためなんじゃないの?」
数瞬後、ドラえもんの口が開く。
ドラえもん「うわああああああああああああ!」
駆けだしたドラえもん。次々と立ちはだかる人をはね飛ばし、扉を開け、
発狂したかのように単純な行動を取る。もしくは、エラーなのか。
ジャイアン「おい待て! 追うぞスネ夫!」
スネ夫「うん、ジャイアン!」
ジャイアンとスネ夫はドラえもんを追うために部屋を飛び出した。
続けて、出木杉とのび太も。
ドラえもん「うわあああああああん!」
大声で叫ぶドラえもん。その姿はドラミの死体が横たわるその部屋にあった。
駆けだしたドラえもん。次々と立ちはだかる人をはね飛ばし、扉を開け、
発狂したかのように単純な行動を取る。もしくは、エラーなのか。
ジャイアン「おい待て! 追うぞスネ夫!」
スネ夫「うん、ジャイアン!」
ジャイアンとスネ夫はドラえもんを追うために部屋を飛び出した。
続けて、出木杉とのび太も。
ドラえもん「うわあああああああん!」
大声で叫ぶドラえもん。その姿はドラミの死体が横たわるその部屋にあった。
ジャイアン「ハァハァ……、ようやく追い詰めたぞ」
スネ夫「ちゃんと言ってもらおうか」
ドラえもんに追いつく四人。
スネ夫「ちゃんと言ってもらおうか」
ドラえもんに追いつく四人。
第一の殺人後 ドラえもんの証言
22世紀のドラミを呼んだのは、確かにドラえもんだった。理由は、
六軒島の真実を、20世紀に生きるのび太らから隠すためだ。
ドラえもんが語った六軒島の真実、殺人事件の真実。
全くの嘘であると、ドラえもん本人の口から得られた。
ドラえもんがドラミに指示した内容は――
1986年10月4日の六軒島の住人全員を、タイムマシンを使い1986年10月3日の六軒島、九羽鳥庵に移す。
すべての住人を移し終わった時点で忘れトンカチを使い、ドラミとあった事実、タイムマシンに乗った事実を
忘れさせる。
元から存在した3日の住人は屋敷内にいるだろうと推測し(ドラえもんは知っていたのかもしれない)、
異なる時間に存在する同じ人格との遭遇によるタイムパラドクスを防いだ。
22世紀のドラミを呼んだのは、確かにドラえもんだった。理由は、
六軒島の真実を、20世紀に生きるのび太らから隠すためだ。
ドラえもんが語った六軒島の真実、殺人事件の真実。
全くの嘘であると、ドラえもん本人の口から得られた。
ドラえもんがドラミに指示した内容は――
1986年10月4日の六軒島の住人全員を、タイムマシンを使い1986年10月3日の六軒島、九羽鳥庵に移す。
すべての住人を移し終わった時点で忘れトンカチを使い、ドラミとあった事実、タイムマシンに乗った事実を
忘れさせる。
元から存在した3日の住人は屋敷内にいるだろうと推測し(ドラえもんは知っていたのかもしれない)、
異なる時間に存在する同じ人格との遭遇によるタイムパラドクスを防いだ。
こうして、のび太らが来た1986年10月4日の六軒島には誰もいない、という状況が成立する。
ドラえもん「みんなが眠った後、ドラミと一緒にもとの歴史に戻すつもりでいたんだ。
でも昨日の夜はドラミからの連絡が無くて、不安に思ったけれども……」
のび太「未来の道具を使って連絡を取れば良かったじゃない!」
ドラえもん「それがね、できないんだよ、のび太くん」
のび太に向けられた言葉であったにも関わらず、他の三人も口を開けて驚きの意を示す。
ドラえもん「僕はね、ベアトリーチェは'い'ると思っていないんだよ。未来にいた頃から
六軒島のことはデータの中に入っていたから、人間の犯行だっていうことは知っているんだ」
ドラえもん「でもね、ベアトリーチェの呪いは'あ'るのかもしれない」
そう言いながら、ドラえもんは腰の四次元ポケットに手を突っ込む。
ドラえもん「みんなが眠った後、ドラミと一緒にもとの歴史に戻すつもりでいたんだ。
でも昨日の夜はドラミからの連絡が無くて、不安に思ったけれども……」
のび太「未来の道具を使って連絡を取れば良かったじゃない!」
ドラえもん「それがね、できないんだよ、のび太くん」
のび太に向けられた言葉であったにも関わらず、他の三人も口を開けて驚きの意を示す。
ドラえもん「僕はね、ベアトリーチェは'い'ると思っていないんだよ。未来にいた頃から
六軒島のことはデータの中に入っていたから、人間の犯行だっていうことは知っているんだ」
ドラえもん「でもね、ベアトリーチェの呪いは'あ'るのかもしれない」
そう言いながら、ドラえもんは腰の四次元ポケットに手を突っ込む。
ドラえもん「いいね、僕は今からタケコプターを出すよ。ちゃんと言ったね」
四次元ポケット。ポケットに手を入れ、望んでいた物を取り出すことができる秘密道具だ。
ドラえもんはタケコプターを出す、と言った。しかし。
ドラえもん「ね。この六軒島に来てから、いくら秘密道具を出そうとしても、出てこないんだよ」
ポケットから出された手には、無。何も無い。空集合。ゼロ。
四次元ポケット。ポケットに手を入れ、望んでいた物を取り出すことができる秘密道具だ。
ドラえもんはタケコプターを出す、と言った。しかし。
ドラえもん「ね。この六軒島に来てから、いくら秘密道具を出そうとしても、出てこないんだよ」
ポケットから出された手には、無。何も無い。空集合。ゼロ。
のび太「冗談はやめてよ、ドラえもん」
ははは、と笑うのび太。彼の笑いにもまた、何も含まれていない。
ジャイアン「おい、ドラえもん! 俺にポケットを貸せ!」
無理矢理ドラえもんからポケットを奪うジャイアン。ポケットの穴に手を無理矢理突っ込み。
空。
ははは、と笑うのび太。彼の笑いにもまた、何も含まれていない。
ジャイアン「おい、ドラえもん! 俺にポケットを貸せ!」
無理矢理ドラえもんからポケットを奪うジャイアン。ポケットの穴に手を無理矢理突っ込み。
空。
声にならない嗚咽をあげならがら、膝から崩れ落ちるスネ夫。
口を微小に開け閉めする出木杉。
ジャイアンはポケットを入れた右手を開け閉めして、何も無いことを確かめている。
のび太「ば、ばかだなあドラえもんは。昨日だってタイムマシンで来たし、石ころ帽子や
通り抜けフープを出していたじゃないか」
ドラえもん「う、うん。そうだけど……」
のび太「こういうのは、天才の僕がやれば出てくるんだよ」
過程も結果も同じ。
のび太「あーあ、なんだか僕つまんないや。ドラミちゃんもさ、未来に持っていって直せば
直るでしょ。タイムマシンさえ使えるんだったら、元の時代に帰れるし、さ」
だがドラえもんの憂いた顔は変わらない。
口を微小に開け閉めする出木杉。
ジャイアンはポケットを入れた右手を開け閉めして、何も無いことを確かめている。
のび太「ば、ばかだなあドラえもんは。昨日だってタイムマシンで来たし、石ころ帽子や
通り抜けフープを出していたじゃないか」
ドラえもん「う、うん。そうだけど……」
のび太「こういうのは、天才の僕がやれば出てくるんだよ」
過程も結果も同じ。
のび太「あーあ、なんだか僕つまんないや。ドラミちゃんもさ、未来に持っていって直せば
直るでしょ。タイムマシンさえ使えるんだったら、元の時代に帰れるし、さ」
だがドラえもんの憂いた顔は変わらない。
ドラえもん「僕が無理矢理にでもみんなを元いた時代に帰すべきだったのかもしれない。
六軒島殺人事件とされている10月4日と5日のうち、危ないのはどっちだかわかるよね?
そう、5日の殺人事件発覚後なんだよ。ドラミから連絡が来ない事で忘れちゃってたけども。
その日だけはね、この六軒島が箱に閉ざされるんだよ。ベアトリーチェが閉じたんじゃない。
いわば未来の魔女たちによってね。未来の人たちは、タイムマシンを使って様々な迷宮入り事件の
真実を暴いてきたんだけれども、ある日突然手のひらを返したかのように、我々が事件を掘り起こしてはいけない
って言い出したんだ。こういう考え、僕たちロボットにはできなかった。
だから、10月5日の今日、六軒島は、どの時間からも来る事ができないし、どの時間に行くこともできないんだ。
出木杉くん、君は本をよく読むんだよね。クローズドサークルって言葉は知ってるね?
僕たちは今日一日、四次元のクローズドサークルに閉じ込められたんだよ」
――出木杉書簡
六軒島殺人事件とされている10月4日と5日のうち、危ないのはどっちだかわかるよね?
そう、5日の殺人事件発覚後なんだよ。ドラミから連絡が来ない事で忘れちゃってたけども。
その日だけはね、この六軒島が箱に閉ざされるんだよ。ベアトリーチェが閉じたんじゃない。
いわば未来の魔女たちによってね。未来の人たちは、タイムマシンを使って様々な迷宮入り事件の
真実を暴いてきたんだけれども、ある日突然手のひらを返したかのように、我々が事件を掘り起こしてはいけない
って言い出したんだ。こういう考え、僕たちロボットにはできなかった。
だから、10月5日の今日、六軒島は、どの時間からも来る事ができないし、どの時間に行くこともできないんだ。
出木杉くん、君は本をよく読むんだよね。クローズドサークルって言葉は知ってるね?
僕たちは今日一日、四次元のクローズドサークルに閉じ込められたんだよ」
――出木杉書簡
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