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    元スレ朋也「軽音部? うんたん?」2

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    201 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:38:35.50 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-161)
    ボグッ

    春原「があああっ!」

    メキメキィ

    骨のきしむ音。

    「おおお!!」

    肘打ち、両手突き、手刀、貫手、肘振り上げ、手刀、鉄槌…
    琴吹の連打は続く。

    「…煉獄」

    中段膝蹴り、背足蹴り上げ、下段回し蹴り、中段廻し蹴り…

    朋也(すげぇ…倒れることさえできない…)

    そこにいた全員が、その連打に目が釘付けになっていた。

    「おおお!!」

    「あ゛あ!!」

    バフゥ

    拳が空を切る。
    春原が事切れて、すとん、と床に倒れこんだからだ。
    202 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:39:01.97 ID:NWTOuQ4+0 (+24,+29,-3)
    喧嘩商売好きなんだなwwww
    俺も大好きです
    203 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:39:44.19 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-238)
    「はぁー…はぁー…」

    どれだけの時間打ち込んでいたのだろう。
    時間にして、それほどでもないのかもしれないが…
    ずいぶんと長く感じられた。
    それは、連打を受けた春原自信が一番感じていることだろう。

    「あ、ご、ごめんなさい、春原くん、つい…」

    春原を抱き起こし、安否を気遣っていた。

    春原「あ…う…ムギちゃん…素敵な連打だったよ…」

    春原「僕…幸せ…」

    どうやら、かろうじて生きていたようだ。
    にしても…

    朋也「部長…狙ったのか?」

    「ふ…まぁな。番号を指定した時、必ず表情に出るからな」

    「りっちゃん、すごぉいっ! 遊びの達人だねっ」

    「おほほほ! まぁなぁ~」

    「変なとこで突出してるからなぁ、律は…」

    「律先輩、私にその技、伝授してくださいっ!」
    204 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:40:10.07 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-201)
    「ばか者! 一朝一夕で身につくものではないっ!」

    「これは、私が踏み越えてきた数々の死線の中で、自然に身につけたものなのだ!」

    「おまえのような小娘には、まだ早いわっ!」

    「う、うう…」

    「大げさに言うな…遊んでただけだろ…」

    ―――――――――――――――――――――

    「王様だ~れだ?」

    6だった。

    「あ、私だぁ」

    「唯か…正直、なにが来るか想像がつかん」

    「えへへ、えっとね…」

    「6番の人が、私を好きな人だと思って、愛の告白をしてください」

    朋也(マジかよ…)

    「おお、なんか、おもしろそうだな、それ」

    「んん? その他人事な口ぶり…りっちゃん、6番じゃないんだ?」
    205 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:41:19.42 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-226)
    「まぁな~。で、誰だ、6番は」

    朋也「…俺だ」

    「へ!?」

    「え…」

    「まぁ…」

    「うおぉっ、これは…まさかの二回目で、こんな内容」

    「しかも、相手は唯…かぁ~、持ってんなぁ、岡崎」

    春原「これ、もうゲームじゃなくていいんじゃない?」

    「ただのゲームですっ! 岡崎先輩も、その辺忘れないでくださいよっ!」

    朋也「わかってるよ…」

    朋也「あー…座ったままでいいか」

    「う、うん…」

    朋也「じゃあ…」

    こほん、とひとつ咳払い。

    朋也「明日朝起きたらさ…」
    206 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:41:45.40 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-278)
    朋也「俺たちが恋人同士になっていたら面白いと思わないか」

    朋也「俺がおまえの彼氏で、おまえが俺の彼女だ」

    朋也「きっと、楽しい学校生活になる」

    朋也「そう思わないか」

    「思わないよ。きっと、こんなぐだぐだな私に、腹が立つよ、岡崎くん」

    朋也「そんなことない」

    「どうして」

    朋也「…俺は平沢が好きだから」

    朋也「だから、絶対にそんなことはない」

    「本当かな…自信ないよ…」

    朋也「きっと楽しい。いや、俺が楽しくする」

    「そんな…」

    「岡崎くんだけが…頑張らないでよ」

    「私にも…頑張らせてよ」

    朋也「そっか…」
    207 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:42:57.34 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-150)
    「うん…」

    顔を伏せる平沢。

    朋也「じゃあ、平沢…頷いてくれ、俺の問いかけに」

    俺は、彼女をまっすぐ見据えてそう求めた。

    「………」

    朋也「平沢、俺の彼女になってくれ」

    「………」

    少しの間。
    顔を上げることもなく、頷くこともなく…
    ただ小さな声が聞えてきた。
    よろしくお願いします…と。

    「…わお」

    春原「成立しちゃってるね」

    「はい、そこまでそこまでっ!」

    中野が俺と平沢の間に体を割りこませてくる。
    そして、平沢と対面し、その肩をがしっと掴んだ。

    「唯先輩、これ、演技ですよ!? わかってますか?」
    208 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:43:18.41 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-250)
    「う、うん…」

    「それと…」

    俺に向き直る中野。

    「岡崎先輩、なんで唯先輩の名前使ってるんですか!」

    朋也「いや、だって、平沢を好きな奴と想定するって話だったろ…」

    「仮想好きな人なんだから、偽名使ってくださいよっ!」

    「これじゃ、ほんとに唯輩に告白してるみたいじゃないですか!」

    朋也「いや、そんなつもりは…」

    「ふん、どうだか。あわよくばって考えてたんじゃないですか」

    朋也「いや…」

    「あと、唯先輩がOKしたのも、仮想空間での話ですからね!」

    「現実だったら振られてますからっ」

    「ふんっ」

    ぷい、とそっぽを向いて、自分の席に戻っていった。

    朋也(なんなんだよ…)
    209 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:44:42.43 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-200)
    「ははは、唯と付き合うには、まず梓に認められなきゃな」

    朋也「…知るか」

    ―――――――――――――――――――――

    「王様だ~れだ?」

    2を引いた。俺じゃない。

    「…来ました。私です」

    「お、梓か」

    「あずにゃん、おてやわらかにね」

    「………」

    睨まれる。やはり、俺に狙いを定めてくるのか…。

    「決めました。皆で岡崎先輩をタコりましょう」

    朋也「って、それじゃ番号クジでやる意味ないだろっ」

    「そうだぞ。私だってちゃんと実力で春原を地獄に叩き落したんだからな」

    春原「ちっ…でも、ある意味天国だったけど」

    「攻撃するなら、ルールに則った上でやれよ」
    210 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:44:43.99 ID:LXRyRTn+0 (+24,+29,-3)
    あずにゃんこんなキャラだっけww
    211 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:45:09.13 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-193)
    それも嫌だが。

    「…わかりました。じゃあ…」

    「1番と…」

    そわそわと全員の表情を窺っている。
    部長の真似事なのだろう。

    「う…やっぱり、2番…」

    「あう…4…いや5…6?」

    混乱し始めていた。

    「う…もう、7番と1番が、恋人つなぎしながら愛を囁いてくださいっ!」

    大方、俺と春原を引き合わせて、屈辱を与えようとでも思ったんだろう。
    もし外れても、部員同士なら罰ゲームにもならない。
    だから、一発ギャグや、尻文字で自分の名前を書く、なんて露骨なものを避けたんだろう。

    「だ、誰ですか…?」

    「1…」

    春原「…7」

    春原と部長のどちらもが真っ青な顔をして、震える声でそう告げていた。

    「あはは、おもしろい組み合わせだね」
    212 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:46:19.56 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-170)
    「ぜんっぜんおもしろくねぇよっ」

    春原「ムギちゃん、これ、罰ゲームの類だから。僕の本心じゃないからね」

    「そりゃこっちのセリフだっ」

    「いいから、ふたりとも、そろそろやんなきゃだよ」

    「くそ…」

    春原「ちっ…」

    立ち上がり、近づいていく。
    そして、その手がぎゅっと握られた。

    「…アンタ、カコイイヨ」

    春原「…オマエモ、カワイイヨ」

    「アハハ」

    春原「アハハ」

    「カタコトじゃだめだよ。ちゃんとやらなきゃ」

    「ルールは厳守しなきゃいけないんでしょ?」

    「うぐ…」

    自分で課した掟が自分の首を絞めていた。
    213 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:46:57.39 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-193)
    「あ、あんた、あれだよ、あの…」

    「そう、身長低くてさ、ヘタレで…ダサカッコイイよ」

    春原「はは、おまえは、額とか残念だけど…デコカワイイよ」

      「あははは」
    春原「ははは」

    「…はぁ、りっちゃん、遊びの帝王だと思ってたのに…」

    「あずにゃんにも、あんなにびしっと言ってたし…」

    「それなのに、ルールのひとつさえ守れないんだね…」

    「う…わ、わかったよ…」

    「はぁ…」

    「あんたは、普段アホだけど…いざという時は頼りがいがあって…」

    「…かっこいいよ。漢だよ」

    春原「お、おう。おまえも…よくみりゃ、顔も悪くないし…」

    春原「か、かわいいと思うよ…」

    春原「………」

    「………」
    214 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:48:09.80 ID:jpDSDOMkO (+55,+30,-227)
    春原「ぐわぁああああっ!!」

    「のぉおおおおおおっ!!」

    同時に手を離し、体をかきむしる。

    春原「はぁ、はぁ、かゆい、かゆすぎるよっ!」

    「アレルギー反応だ! ヘタレアレルギー!」

    床を転げ周り、ぎゃあぎゃあわめいていた。

    「ふふ、行動がそっくり」

    「だな。やっぱり、気が合うんじゃないか?」

    ―――――――――――――――――――――

    「王様だ~れだ?」

    朋也「おっ…俺だ」

    春原「岡崎、僕とムギちゃんに、なんかエッチなの頼むよっ」

    「アホか、おまえはっ! 岡崎、こいつに罰ゲームくれてやれ!」

    朋也(どうするかな…)

    そもそも、俺は王様ゲーム自体に興味はない。
    215 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:48:31.57 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-299)
    朋也(そういえば…)

    秋山がしきりに練習しようと訴えていたな…。
    なら、ここで俺が切り上げてやるのも、悪くないかもしれない。

    朋也「…よし、決めた。おまえら、練習しろ」

    「え…岡崎くん…」

    「なぁんであんたがそれ言うんだよぉ」

    「もうやめちゃうの?」

    朋也「なんか、やらなきゃならないんだろ。よく知らねぇけど」

    朋也「だろ? 秋山」

    「え?…うんっ」

    朋也「だったら、王様命令だ。練習、始めろよ」

    「うえぇ…つまんねー奴ぅ…」

    「まだやりたいよぉ…」

    朋也「中野、おまえも練習派だろ。何か言ってやれよ」

    「え…あ…お、岡崎先輩に言われなくても、今言おうと思ってましたっ」

    「こほん…律先輩、唯先輩、練習するべきですよ」
    216 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:49:52.36 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-223)
    「うん。ちょうど一週できたしな」

    「まだおまえに回ってないじゃん」

    「私に回っても、どうせ終わるんだから、同じことだろ」

    「ぶぅ~」

    「それじゃ、今日はティータイムはお開きね」

    「ムギちゃんが言うなら、しょうがないかぁ」

    「部長はあたしだぞっ」

    「おまえは威厳がないからな」

    「なんだとっ」

    春原「岡崎、まだ間に合う、最後に僕とムギちゃんを引き合わせてくれぇっ」

    朋也「そんなに王様ゲームしたいなら、あのカメとサシでやれ」

    朋也「あ、これは俺の個人的な命令だからな」

    春原「プライベートでも主従関係なのかよっ!?」

    「わははは!」

    「あの…岡崎くん」
    217 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:50:42.26 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-237)
    朋也「あん?」

    「ありがとね。練習、するように言ってくれて」

    朋也「いや、別に礼を言われることでもないだろ」

    朋也「もとはといえば、俺たちがいたせいで始まったようなゲームだし」

    「それでも、やっぱり、ありがとうだよ。私も、ちょっと楽しんじゃってたし」

    朋也「そっか」

    「うん」

    朋也「まぁ、練習頑張れよ。俺が言えた義理じゃないけどさ」

    「うん、ありがとう。頑張るよ」

    言って、微笑んだ。
    そして、俺に背を向け、準備に向かう。

    春原「くそぅ…ムギちゃんお持ち帰りする計画がパァだよ…」

    朋也(まだ言ってんのか、こいつは…)

    最後まで合コン気分の抜けない奴だった。

    ―――――――――――――――――――――

    218 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:52:28.18 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-235)
    4/29 木 祝日

    4月の祝日。
    週末からはゴールデンウィークに突入するので、今日はその前座といった感じだ。
    俺のような、何も予定がない暇人は、ただ怠惰に過ごして終わるだけなのだが。
    今だって、町の中を意味もなくぶらついたりなんかしているわけで…
    強いて言うなら、朝食の後の散歩といったところだ。
    気が済めば、いつものように春原の部屋に向かうつもりなのだが。

    朋也(ん…?)

    歩いていると、ひとりの女の子を見つけた。

    「………」

    中野だった。
    身をかがめ、停めてある車の下を覗き込んでいた。
    その姿に、通行人がじろじろと目をくれていく。
    それもそうだろう。スカートがはだけて少し下着が見えてしまっているんだから。

    朋也(はぁ…ったく…)

    顔を合わせる前に、無視して過ぎ去ろうと思ったのだが…
    一応、忠告しておくことにした。

    朋也「おい、中野」

    声をかける。

    「え…」
    219 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:52:52.52 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-198)
    振り返る。

    「ああ…」

    なんだ、こいつか…とでも言いたげな顔。

    「はぁ…」

    大きくため息をつき、また頭を下げて、車の下を覗き込む。
    …せめて、なにか言え。

    朋也「おい、見えてるぞ…おまえのパンツ」

    「っ!」

    ばっと身を起こし、手でスカートを抑えながら俺に向き直る。
    頬を赤く染め、目を潤ませていた。

    「へ、変態っ!」

    朋也「いや、おまえ自ら見せてたんだろ。そんなに自信あったのか、下着に」

    「ち、違いますよっ! 私はただ…」

    車を見る。

    朋也「車上荒らしか? やめとけよ、ここは人の目が多い」

    「それも違いますっ!」
    220 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:54:05.42 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-243)
    「この下に猫がいるから、危ないと思って、助けようとしてたんですっ!」

    朋也「猫?」

    俺もしゃがんで覗き込んでみる。

    朋也(あ…ほんとだ)

    身を丸め、じっとしたまま動かない猫が一匹いた。

    朋也「あの猫、あそこからどかせればいいんだな?」

    低姿勢のまま言う。

    「え?」

    朋也「ちょっと待っとけ」

    俺は匍匐前進で車の下に入り込んでいった。

    朋也(ん、動かないな、あいつ…)

    近づけば逃げていくかと思ったのだが…

    朋也(よ…)

    ひょい、と掴めてしまった。
    そのまま這い出る。

    朋也「ほら、いけ」
    221 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:54:32.46 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-193)
    そっと手を離す。
    だが、それでも動かない。
    座り込んで、前足を舐めていた。

    「あ…この子、怪我してる…」

    見れば、舐めている箇所の毛が抜けていて、そこから血が滲みだしていた。

    「ど…どうしよう…助けてあげなきゃ…」

    おろおろと狼狽する中野。

    朋也「動物病院、行ってみるか」

    「あ…は、はいっ…」

    朋也「よし」

    中野の返事を聞き、俺は猫を抱えた。
    そして気づく。病院の場所なんて、まったく心当たりがないことに。

    朋也「あのさ…この辺って、動物病院、あったっけ」

    「ちょっと待ってください…」

    携帯を取り出し、なにか操作していた。

    「あ、ありました。こっちですっ」

    液晶画面を見ながら言う。
    222 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:55:40.50 ID:lUITvkE60 (+22,+29,-20)
    ひさしぶりに神SS見たな
    223 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:56:34.92 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,+0)
    そして、先導するように小走りで道を進んでいった。
    俺もその後についていく。

    ―――――――――――――――――――――

    行き着いた先には、こじんまりとした、寂れた建物があった。
    看板には、しっかりと、動物病院と記されていたのだが…
    ペンキが落ちたのか、文字がただれていて、ホラーチックだった。
    ここで本当に大丈夫かと、内心、心配だったのだが、それも杞憂に終わった。
    診察と治療は至極まともだったのだ。
    担当の獣医は、好々爺然とした風貌で、事情を話すと、おもしろそうに笑っていた。
    なにが気に入られたのか知らないが、診察代も、治療代も格安にしてくれていた。

    ―――――――――――――――――――――

    「…かわいそうです」

    今は中野が猫を抱いていた。
    通りに据えられたベンチに腰掛け、膝の上でくつろぐその猫を撫でている。

    朋也「まぁ…野良だろうからな。首輪もしてないし」

    獣医が言うには、どうも、傷は、人の手によってつけられた可能性が高いということだった。

    「じゃあ…飼い猫だったら、こんな目に合わないって言うんですか」

    朋也「まぁ、少なくとも、野良よりはマシなんじゃないのか」

    朋也「そもそも、野良なんて、保健所に収容されれば、それだけでアウトだからな」
    224 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:57:56.20 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-249)
    朋也「それに、餌の確保ができなけりゃ、餓死するし…他にも、危険なんてたくさんある」

    「…そう…ですよね、やっぱり」

    「………」

    しばらくの間視線を落として黙っていると、猫を抱きかかえ、無言で立ち上がった。
    どこか思いつめたような顔をしている。

    朋也「どうしたんだよ」

    「私、この子を飼ってくれる人を探します」

    朋也「どうやって」

    「それは…道行く人に、声をかけて、とか…」

    朋也「そら、大変だな」

    「それでも、やるんですっ」

    声を張って答えていた。

    朋也(はぁ…俺、こういうのに弱いのかな…)

    なぜか放っておけない。

    朋也「俺も手伝うよ。おまえがよければだけど」

    「ほんとですか? ちょっと、不本意ですけど…」
    225 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:58:30.40 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-238)
    「この際、なんでもいいです。よろしくお願いしますっ」

    朋也「ああ」

    「それじゃ、人通りの多いところに…」

    朋也「いや…そうだな、まず、軽音部の連中に当たってみろよ」

    朋也「知り合いだから訊きやすいだろ? それに、もしOKならそこで終わりだ」

    「あ、そうですね、すっかり忘れてました」

    携帯を取り出す。
    そして、猫の写真を撮ると、また画面と向き合っていた。
    多分、今の画像を添えてメールでも送っているんだろう。
    俺は黙って結果を待つことにする。

    ―――――――――――――――――――――

    「あ、きた」

    中野の携帯から着信音が鳴り響く。
    慌てたように開いて、返信を確認する。

    「…ムギ先輩もダメでした」

    朋也「そうか…」

    他の部員からも、断りの返事が届いていた。
    家庭の事情や、経済的負担などが理由だった。
    226 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 00:59:56.28 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-212)
    琴吹なら、猫の一匹くらい、なんでもないだろうと期待していたのだが…
    その想いも、打ち砕かれてしまった。

    朋也「で、琴吹はなんだって?」

    「なんか…ポチに捕食されるかもしれないから、責任が持てない…らしいです」

    朋也「……捕食?」

    「……はい」

    朋也「………」

    「………」

    朋也「…なにを飼ってるんだろうな、琴吹は」

    「…多分、知らないほうがいいです」

    だろうな…。

    ―――――――――――――――――――――

    朋也「あ、すいません、ちょっとい…」

    朋也「あ…くそっ」

    人の往来が激しい大通りで飼い主探しを始めたのだが…
    何かのキャッチと思われているのか、見向きもされなかった。
    227 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:00:22.70 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-169)
    朋也「俺じゃだめだ。次、おまえいってくれ」

    「わかりました」

    「…不甲斐ない人」

    朋也「聞えたからな…」

    ―――――――――――――――――――――

    朋也(あいつはなんか、上手くやりそうだよな…)

    中野から預かった猫とじゃれあいながら、思う。

    「あの、すみません」

    「ん?」

    一発目から捕まえることに成功していた。

    「えっと、私、今…」

    「3万…いや、君なら4万出すよ」

    「へ? どういう…」

    「この近くに、いいとこあるからさ、今からいく?」

    これは、まさか…
    228 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:01:39.55 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-250)
    「え…いいとこ…ですか?」

    朋也「おい、おっさん、なにやってんだよ」

    猫を抱いたまま、睨みを利かせて近づいていく。
    プリチーな生き物を伴って絡んでくる仏頂面の男…さぞ不気味なことだろう。

    「ひぃっ、い、いや、私はまだなにも…」

    朋也「まだ?」

    「い、いや…はは、なんでも」

    背を向けて、足早に去っていった。

    「なんで邪魔するんですか!」

    朋也「おまえ…わかんなかったのか、今の」

    「岡崎先輩の行動の方がわかりませんよ!」

    朋也「いや…だから…」

    「足を引っ張るなら帰ってください!」

    本当に、ただ俺が妨害しただけだと思っているようだ。
    誤解を解いておいたほうが、今後の信頼関係のためにもいいんだろうが…
    詳しく説明するのも、なんだか気が引けた。

    朋也「…ああ、悪かったよ。もう邪魔しない」
    229 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:02:05.24 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-192)
    だから、俺に非があったと、黙って認めておくことにした。

    「勘弁してくださいよ、ほんとにもう…」

    朋也「でも、ああいうおっさんは避けろよ、一応」

    「おっさん差別ですか? 最低ですね、自分の近い将来の姿なのに」

    朋也「まだ遠いっての…」

    今年で18だ、俺は。

    ―――――――――――――――――――――

    「そうですか…話を聞いてくれて、ありがとうございました」

    「いえ…」

    朋也(だめだったか…)

    今ので4人目だった。

    「はぁ…」

    中野も落胆を隠しきれないようだった。

    男>1「ねぇ、君さ、さっきから声かけてるよね」

    男>2「逆ナン?」
    230 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:03:21.13 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-303)
    「え? いえ…違います…」

    ちゃらちゃらとした男の二人組に絡まれていた。

    男>1「じゃ、俺らが君ナンパしていい?」

    男>2「かわいいよね、君。遊びいこうよ」

    「あの…それは、ちょっと…」

    男>1「いいじゃん、いこうよ」

    男>2「そこのカフェでなんか食べようよ。おごりだよ?」

    「う…あう…」

    困惑した表情で、すがるように目を向けてくる。
    SOS信号だろう。

    朋也(いくか…)

    立ち上がる。

    朋也「こらぁ、なんだ、おまえらは」

    男>1「はぁ?」

    男>2「なにおまえ」

    朋也「みりゃわかるだろうが。猫を持ったキレ気味な人だ」
    231 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:03:42.78 ID:P9ePJfTa0 (+36,+29,-14)
    こっ、この>>1人間じゃねぇっ
    あさからぶっ通しじゃねーか
    文章のレベルも段違いだし・・・
    232 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:04:01.40 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-203)
    「にゃあ」

    男>1「意味が…」

    男>2「君、もういこうよ。変なの来たし」

    中野の手を取ろうと、腕を伸ばす。
    俺はその腕を掴んで止めていた。

    朋也「やめとけ。こいつは俺が先に目をつけてたんだよ」

    少しキャラを作ってみた。設定は、鬼畜王だ。

    朋也「失せろ、カスども」

    「にゃあ」

    男>2「…っ離せよっ」

    ばっと俺の手を振り払う。
    そして、その瞬間から睨み合いが始まった。

    朋也「………」

    男>1「………」

    男>2「………」

    「にゃあ」
    233 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:04:23.57 ID:M7+8PrPH0 (+29,+29,-1)
    >>231
    だーまえが書いてるんだろ
    234 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:05:17.25 ID:lUITvkE60 (+24,+26,-5)
    >>231
    だよな・・・
    プロなのかな?
    235 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:05:25.70 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-266)
    男>1「…ちっ」

    男>2「ばぁか」

    間の抜けた猫の鳴き声を以って、ガンつけ勝負は終わった。
    ふたりの男は捨て台詞を吐くと、雑踏の中へと消えていった。

    朋也(ふぅ…)

    朋也「おい、中野…」

    朋也「あん?」

    振り返ると、俺から距離を取って身構えていた。

    「…このけだもの。ずっと私を狙ってたんですねっ」

    朋也「おまえが信じるなっ! ありゃ方便だっ」

    「………」

    疑惑に満ちた目を向けてくる。

    朋也(どこまで信用ないんだ、俺は…)

    もともとなかったところを、先の一件でさらに信用を失ってしまったのか…。
    なら、捨て身でこちらから歩み寄っていくしかない。
    まずは安心感を与えて、警戒を解かなくては…。

    朋也(はぁ…ちくしょう)
    236 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:05:53.64 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-230)
    朋也「こほん…あー…」

    朋也「ほら、おいで梓ちゃん、怖くないよ~」

    ぎこちない笑顔で、猫なで声を出す。

    「…キモ」

    …ものすごく冷めた顔で暴言を返されていた。

    朋也(ま、そりゃそうか…)

    わかってはいたが、実際言われると、ショックと恥ずかしさが同時に襲ってきた。

    「冗談です。助けてくれて、ありがとうございました」

    朋也「ああ、別に…」

    恥をかく前に言って欲しかったが。

    「キモかったのは本当ですけど」

    朋也「あ、そ…」

    徒労に終わった上に、追い討ちまでかけられていた。

    朋也「まぁ、いいけど、何か対策考えないとな」

    朋也「おまえ、見た目可愛いから、変な奴よってくるし」
    237 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:07:02.35 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-178)
    「な、か、可愛いって…お、おだててどうするつもりですかっ!」

    「気をよくしたところを、一気につけこんでくるつもりですかっ!」

    「このけだものっ!」

    朋也「想像が飛躍しすぎだ。思ったことを言ったまでだよ」

    「な、なな…わ、私は騙されませんからっ」

    朋也「だから、そんな気はないっての」

    朋也「それよか、もう昼だし、飯にしようぜ」

    「う、うう…」

    朋也「ほら、いくぞ」

    俺が歩き出すと、後ろからうーうー言いながらもついてきた。
    238 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:07:22.42 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-212)
    ―――――――――――――――――――――

    朋也「ほらよ」

    コンビニで買ってきたパンとジュースを差し出す。

    「ありがとうございます」

    受け渡すと、俺も中野が座っているベンチに腰掛けた。

    「よかったんですか? おごってもらっちゃって」

    朋也「いいよ。いつか、おまえにおごってもらった事あっただろ」

    朋也「これであいこだ」

    「でも、あれはお詫びのつもりだったから…」

    朋也「まぁ、細かいことは気にするなよ」

    「はぁ…」

    朋也「よし、おまえにもやろう」

    俺は自分のパンをちぎって猫に与えた。
    くんくんと匂った後、ぺろりと口にしていた。
    その姿を見て思う。

    朋也「こいつって、あの時おまえがねこじゃらしで遊んでた奴か?」
    239 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:08:37.33 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-230)
    「そうですよ。気づかなかったんですか?」

    朋也「ああ、まぁな。今ようやく思い出したよ」

    「こんな可愛い子、普通は一度みたら忘れないのに」

    言って、中野も自分のパンをちぎって猫の前にそっと据えた。
    すると、それも遠慮なく食べ始めていた。

    「かわいいなぁ…」

    その様子を温かい目で見守る中野。

    朋也「おまえ、猫好きなのか」

    「はい、大好きですっ!」

    朋也「そっか。なんか、らしいよな。おまえ、猫っぽいし」

    「あ、ありがとうございます…」

    こいつにとっては称賛と同義だったようだ。
    素直に礼なんか返してきた。

    朋也「でもさ、それなら、おまえの家で飼ってやれないのか」

    「それができたら、最初から飼い主探しなんてしてませんよ」

    朋也「それもそうだな」
    240 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:09:01.54 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-249)
    「岡崎先輩こそ…いや、いいです、やっぱり」

    俺に飼えるかどうか打診するつもりだったんだろう。
    だが、回答はどうあれ、俺に飼われるのは嫌だったようだ。
    だから、途中で切ったんだろう。
    まぁ、うちで飼えるわけじゃないので、別によかったが。

    朋也「飯、食い終わったら、また頑張って探さなきゃな」

    「そうですね。頑張りましょうっ」

    ―――――――――――――――――――――

    「あの…ほんとにこれ、効果あるんでしょうか」

    朋也「ああ、ばっちりだ」

    中野が手に持つのは、可愛らしく装飾されたプラカード。
    頭には、ネコミミカチューシャをつけていた。
    その2つのアイテムは、憂ちゃんと行った、あのファンシーショップで調達してきていた。

    朋也「今までは、こっちから攻めていってたけど、それは間違いだった」

    朋也「興味のない人にまで当たっちまうから、効率が悪かったんだ」

    朋也「だから、今度は待ちに入るんだ」

    「いえ…そうじゃなくて、なんでネコミミなんですか…」

    「このプラカードは、わかりますけど…」
    241 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:10:19.94 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,+0)
    そのプラカードには『この猫、飼ってください!』と書いてある。
    宣伝のつもりだった。

    朋也「そっちの方がわかりやすいじゃん」

    「いえ、これつけなくても、プラカードだけで事足りると思いますけど…」

    朋也「より目立ったほうが、目を引きやすいだろ」

    朋也「おまえ、似合ってるしさ、大抵の男は振り向くと思うぞ」

    「そ、そんな…」

    朋也「こいつのためだ。頑張れよ」

    ダンボールを抱えてみせる。
    その中には、猫が入っていた。
    やはり、拾ってください、なんて言うなら、このスタイルしかないだろう。

    「うう…わかりました」

    ダンボールを手に持ち、街頭に立つ。
    そして、足元に置くと、プラカードを掲げた。
    やはり、道行く人は皆一瞥をくれていく。
    こっちをみて、ひそひそと話しこんでいる者たちも見受けられた。
    ナンパの算段でも立てているんだろうか。
    それでも、隣に俺も立っているから、簡単には近づいてこないだろう。
    これが、俺の考えた対策だった。抑止力というやつだ。
    単純なことだが、効果は高いと思う。
    今も、中野を遠巻きに眺めていた男たちが、諦めたように散会していくのが見えた。
    242 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:10:27.36 ID:PRCvP3Z4O (+24,+29,-6)
    これ完結までいったら文庫本一冊くらいの分量にはなりそうだな
    243 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:10:47.22 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-186)
    やはり、これで合っていたようだ。

    ―――――――――――――――――――――

    5分くらい経った頃だろうか。
    一人の男がこちらに近寄ってきていた。

    「あの…ふぅ、ふぅ…」

    興奮しているのか知らないが、息が荒い。

    「か、飼うって、い、いいの…?」

    「え…はいっ、もちろんですっ!」

    「はぁ…はぁ…き、君、家出少女なんだ…?」

    「え、あ…はい?」

    「ふっひ…う、うちのアパート…いこう…」

    「君みたいな可愛い子なら…悦んで飼ってあげるよ…」

    「い、いえ、私じゃなくてっ! この子ですっ」

    ダンボールから猫を抱き起こした。

    「にゃあ」

    「え…なんだ…でも、君も猫だし…」
    244 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:12:20.43 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-172)
    言って、ネコミミに目をやる。

    「君もついてくるなら、一緒に飼ってあげるよ…ふっひ…」

    「ひぃっ…え、遠慮しておきます…」

    「はぁ、はぁ…じゃあ、いいや…」

    のそのそと立ち去っていった。

    「…岡崎先輩のせいですよ」

    朋也「いや、でも、世間にはああいう奴もいるってわかってよかったじゃん」

    「上から目線で言わないでくださいっ!」

    「次は岡崎先輩がやってくださいよっ!」

    俺にプラカードを押し付けてくる。

    朋也「ああ、いいけど」

    受け取る。

    「ちゃんとこのネコミミもつけてくださいよ」

    朋也「やだよ、なんで俺が」

    「私にはつけさせたじゃないですかっ!」
    245 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:12:47.46 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-230)
    朋也「だからってなぁ、俺だぞ?」

    「いいから、つべこべいわずにつけてくださいっ!」

    朋也「わかったよ…」

    仕方なく、装備した。
    …周囲の視線が痛い。

    「…ぷっ」

    朋也「せめておまえだけは笑わんでくれ…」

    ―――――――――――――――――――――

    朋也(お…)

    一人の女性がこちらに近づいてくる。
    男の情欲を煽るような服を綺麗に着こなして、妖艶な雰囲気を纏っていた。
    年の頃は、二十代後半といったところか。

    朋也(って、なに分析してんだ、俺は…)

    「ボウヤ…飼って欲しいの?」

    朋也「あ、いえ…俺じゃなくて、こっちの猫っす」

    ダンボールを指さす。

    「そうなの?」
    247 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:14:02.70 ID:jpDSDOMkO (+60,+30,-219)
    朋也「はい。だめっすか」

    「私、動物嫌いなの」

    「でも…」

    俺の頬に手を添えた。
    どきっとする。

    「あなたみたいな動物なら、死ぬほど可愛がってあげるわ」

    朋也「はは…」

    なんと答えていいのやら…。

    「これ、名刺。渡しとくわ」

    手を取られ、少し強引に握らされた。
    そこには、夜の店の名前と、この人の源氏名らしきものが書かれていた。
    裏も見てみる。電話番号が手書きされていた。

    朋也「俺、未成年なんですけど…」

    「見ればわかるわよ」

    朋也「そっすか…」

    「お店に来いって言ってるんじゃないわ」

    「私にいつでも連絡入れなさいって言ってるの」
    248 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:14:23.10 ID:+UZ/pLeq0 (+60,+30,-236)
    朋也「はぁ…」

    「それじゃね」

    色気を漂わせながら去っていく。

    「…ヒモ野郎。最低です。死ね死ね」

    朋也「悪口のタガが外れてるからな、おまえ…」

    「こんな時まで女をたぶらかすなんて、信じられないです」

    朋也「俺は何もしてないだろ…」

    朋也「…あぁ、とにかく、もうネコミミはやめだ。これは危険すぎる」

    「最初からいらないって言ってたのに…このヒモ男は…」

    ぶつぶつと小言をぶつけられていた。
    止む気配はない。
    しばらくはこの状態が続きそうだった。

    朋也(はぁ…)

    ―――――――――――――――――――――

    一度休憩を取るため、適当な石段に腰掛けた。

    朋也「なかなか見つからねぇな」
    249 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:14:33.51 ID:lwsvFJe90 (+10,+25,-2)
    おもすれい
    250 : 以下、名無しにか - 2010/09/26(日) 01:16:50.38 ID:71jhCrBL0 (+27,+29,-7)
    岡崎を好きなんであろう梓が良い感じにウザイな
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