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    元スレ新ジャンル「聞き分けのいいヤンデレ」

    新ジャンル覧 / PC版 /
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    タグ : - ヤンデレ ×2+ - 完結 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 6 :

    「はぁ…はぁ…」

    動悸が速くなっているのを感じた
    走ったわけでもないのに体が熱くなる
    芯から熱があふれ出ているかのように

    「また…来てたのか…」

    扉を挟んで向かい側、女を後ろに立たせたまま男はつぶやいた
    ドアは少し開いている

    「…もぉダメなの」

    ドアの向こうから彼女のか細い声が聞こえてくる
    これ以上扉が開かないように
    彼女が両手でつかむようにしてドアノブを反対から引っ張っている

    「何が…?

    男も半ばため息混じりな返答を返した
    それは彼女の行動への疑問や、女に対してどう説明するか、
    といった事柄への面倒くささを表した口調だった

    「私…あなたと死にたいの」

    52 :

    支援
    出来れば鬱ENDはやめていただきたい

    53 = 6 :


    「みたいだね。だけどさ、それはムリみたいだよ」

    「…うん。だけどね、今はそこにいる女のひとを殺したくなっちゃってるの
    ここでその人のことを見たら首を絞めちゃいそうなの」

    「それは困ったな…」

    女はいきなりのことに頭が付いていかないようだ。まず、部屋にほかの女が待っていた
    という時点で結構な疑問だっただろうに
    その女が自分を殺したいと言っているのだからそれも仕方がない
    その上男は困ったと言ってこちらを振り返るだけだ

    「じゃぁとりあえずこの子はタクシーで帰らせるよ。だからさ、
    とりあえずその間に帰っててくれないかな」

    「………」

    向こうから返事はない。男はそっとドアノブから手を離した

    「ごめんね。それじゃぁ大通りまで戻ろうか」

    54 = 6 :

    「ちょっと!なんなのよさっきの子!!
    あんな子が一緒に住んでるなんて聞いてないし!!」

    「言ってないし。住んでないよ。勝手に入ってただけさ」

    この返答に女はただ押し黙る。
    この男、なんか天然っぽくて可愛いかも、なんて思ったけど、ダメだ。
    天然なんてレベルじゃない。吹っ飛んじゃってる…

    大通りまで来て、タクシーが来るのを黙って待つ。

    むしろ良かったわよ。こんな奴と寝たりなんかしなくて
    あんなキチ女と一緒にいるようなやつになんて関わりたくねーし
    そうよ、あんなわけわかんない女と

    「ねぇ」

    「ん?」

    女は気になっていたことを口にした

    55 :

    女何様だよwwwwww

    56 = 6 :

    「最初にも聞いたんだけど、あの子がヤンデレ子って子でしょ?」

    「あぁそうだね」

    「なんであんな子が部屋に入ってるのにそんな感じでいられるの?
    あの子おかしいよ!?あんなの不法侵入じゃない!なんとも思わないわけ!?」

    「うーん。そりゃ、またかーとは思ってんだけどね」

    「その程度!?あの子さぁ男くんにとって一体何なの?
    それとも男くんは誰が部屋にいてもそんな感じなの?
    正直言ってあんな子には二度と近付かないほうがいいと思うよ
    男くんがやな思いさせられるだけだって」

    「いや、そりゃ知らない奴がいきなりいたら驚くけど
    一応知り合いだし、前科あるしなぁ」

    「けど…!」
    「それに」

    「………?」

    「結構いい子だからさ。悪いけど君なんかよりよっぽど
    だからあの子のことそんなに悪く言わないでくれない?」

    58 = 6 :

    秒針が回る
    くるくると
    くるくると
    彼女は先ほどの自分の感情を思い出していた
    ぐるぐると何か気持ちの悪いものが通り過ぎていく
    ぐらぐらと何か重いものが頭を揺らす
    なんて恐い感情
    なんて醜い感情
    彼はこんな私をどう見たんだろう
    いくら考えても答えは出ない

    彼女は
    ゆらゆらと歩きだす
    軽いはずの扉が重く感じる
    彼の部屋を出て鍵を締める
    もうここには来ないようにしよう
    彼女は合鍵をドアノブから引くとそのままポストに入れた
    カラカラと音を立てて鍵はポストに吸い込まれた

    気持ちのいい風だけがさらさらと流れていた


    59 = 45 :


    寝る。

    60 :


    第二章を勝手に期待しつつ寝る

    61 :


    可愛かった

    62 :

    これは続きがあってほしいぜ

    63 :

    完?え?

    64 :

    おい
















    おい

    65 = 6 :

    いつからだろうか

    彼女がいない生活がはじまったのは
    まるで桜が散っていなくなったかのように
    彼女は男の目の前からいなくなった

    「もう…卒業か」

    大学の卒業式も何事もなく終え
    男は家に帰ろうと歩を進める

    遠くで旧友たちが手を振っている
    別に今生の別れじゃないさ
    また会う機会もあるだろう

    また会う機会も

    また会える機会が

    彼女に会える機会は

    66 = 6 :

    桜が好きだと彼女は言っていた
    今日の空には満開の桜だ

    「覚えてる?」

    2年前、彼女がしてくれた話を思い出す

    「私がね、いやなことがあって一人で泣いてたの
    この桜よりももっと大きな桜の木の下で
    そしたらね。あなたが私にそっと手を差し伸べて言ってくれたの
    何か嫌なことがあったら、きっとそれは
    いつか誰かにやさしさを与える力になるんだって
    つらいことを知らない人は、楽しいことだってわからないんだ、って
    だからね、その時から私は
    桜と、男くんのことが大好きになったんだよ」

    68 = 6 :

    小さい頃の話だ
    きっとその前に見た本か何かのセリフだと思う
    つらいことを知らない人は、か

    彼女はそれだけで俺のためにこれまでの人生を使ってきたのだろうか
    たったそれだけの
    子供が言ったなんの力もない言葉に
    彼女は自分なりの力を見つけていたのだろうか

    「………」

    男は家までの道のりを歩みだす

    強い風が、桜の花をさらっていく


    自分にとって彼女は空気だったんだ
    なければ
    彼女がいなければ
    こんなにも苦しいものだったんだ

    男は彼女がいない後ろを振り返る

    強い風が、桜の花をさらっていく

    69 = 6 :

    道行く人々も満開の桜を眺めている
    1年に一度限られた期間しか咲かないという理由で

    まるで

    与えられた時間を慈しむように
    そしてそこに思い出を刻んでいけるように

    カンカンカン

    と4年間お世話になった借家の階段を上がる
    ポケットから鍵を取り出し
    ドアノブに差し込む
    いつの間にか確定した、ほとんど無意識の動作だ

    その無意識が
    とたんにはっきり意識としてある変化をとらえるまで
    さほどの時間は要さなかった

    70 = 6 :

    「また…来てたのか…」

    「…もぉだめなの」

    「なにが…?」

    「私…あなたと死にたいの」

    「みたいだね。だけどさ、それはムリみたいだよ」

    「…うん。だけどね…」

    「………」

    「ねぇ」

    72 = 6 :

    ドアの向こうから彼女のか細い声が聞こえてくる
    これ以上扉が開かないように
    彼女が両手でつかむようにしてドアノブを反対から引っ張っている

    男は力を込めって一気にドアノブを引いた

    「きゃっ」

    よほどの力でつかんでいたのか、
    軽い彼女はノブに引きずられ男に飛び込んできた

    「あっ……」

    彼女は頬を赤らめ、彼を見上げた
    その距離は20センチメートル

    「なんか言いかけてなかった?」

    「そ、その…こ、こんなに近くで話したことなかったし
    お、男くんとも会うの久しぶりなのに急にこんな、あ、あのぉ」

    急な展開にどうやら思考回路と呂律が付いていけなかったらしい
    男は特に微笑むでもなくそんな彼女を見つめていた

    74 = 6 :

    彼女の体温が伝わってくる
    彼の体温が伝わってくる
    どこまでも近く、どこまでも遠かった二人が
    はじめて思いを伝えている

    「わ、私は男くんのことが好き。たぶん誰よりも好きなの
    ううん。絶対負けないはず
    だから私はあなたと愛し合って
    それで、死にたいの……あなたと一緒に」

    「…うん」

    「だけどこの想いはあなたに届かないのね
    いつも私の一方的な感情なんだもの
    いつか伝わる、届いてくれるって思ってたけど
    やっぱりあの日、あなたは私を見てはくれなかった」

    男は2年前のあの日を思い出す
    ひどく疲れた一日だった
    家に戻ってみたらスペアのカギがポストに入れてあった
    鍋のシチューは冷たかった

    「だから私、もうこれ以上あなたを愛し続けるのをやめようと思った
    私にとってあなたはなくてはならないものだったけど
    このままじゃだめだな、って
    だから私ね今まで死に場所を探してたの」

    「わぁお。それは素敵な旅になったろうね」

    75 = 6 :

    「いろいろ見て回ったけど
    ダメね……。どこもあなたの魅力にはかなわない」

    「世界最高の死に場所に選ばれるなんて光栄だね」

    「うん……そう思ったら、また帰ってきちゃった
    迷惑におもってるでしょ?」

    「……そうでもないさ」

    「……ほんとに?」

    「自分でも意外なくらいにね
    強いて言うならまたスペアキーが増えたのは少し厄介だよ」

    そう言って男は口元を少しだけ緩めた
    彼女はそんな彼のやさしくまっすぐな瞳を見て
    やっと触れられたよ、とつぶやいた

    77 = 6 :

    あの日

    アルバムを見ながらいつかこんな日が来るのかと想像した
    いつかこんな日が来たらどうしようと緊張した
    今はあの時の何倍もドキドキしていたけれど
    現実の彼は想像の何千倍も幸せを与えてくれた

    「これがあなたのやさしさなんだよね……これが」

    初めて触れた優しさを軽々と塗り替える彼女新記録のやさしさの波に
    喜びと心臓の高鳴りを抑えることができない

    「ねぇ」

    さっき一度途切れた言葉の続きも今なら言える
    そんな気がした

    「なに……?」

    男は少しうるんだ彼女の瞳を見つめ聞き返す
    二人の距離は16センチメートル

    78 = 6 :

    その時一陣の風が吹いた
    散った桜も舞い上がるほどの風だ
    桜は揺れ、花弁を落とした

    「ねぇ男くん…最後は私と死んでくれる…?」

    舞い散る桜が空をふわりと舞っていた
    風はおとなしくなっている
    男はそっと口を開いた

    「それはムリだよ」

    そして彼女の丸い頭にそっと手を回し
    顔を引き寄せる
    二人の距離は7センチメートル
    あきらかに彼女の顔が赤くなったのを視覚がとらえた

    「君は僕の後に死んでくれ。それまでは僕の隣で笑ってくれ」

    二人の距離は0センチメートル


    79 :

    何このいい話。

    80 :


    とてもよかった

    82 :

    いちおつ

    83 = 23 :

    おつおつ!

    84 :

    いやぁえがったえがった


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