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元スレ新ジャンル「聞き分けのいいヤンデレ」
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ヤンデレ「ねぇ男くん…」
男「う…な、なんだよ」
ヤンデレ「お願いがあるの…」
男「だからなんだよ。言ってみろって」
ヤンデレ「私と…死んでk」
男「断る」
ヤンデレ「…そっかぁ」シュン
男「う…な、なんだよ」
ヤンデレ「お願いがあるの…」
男「だからなんだよ。言ってみろって」
ヤンデレ「私と…死んでk」
男「断る」
ヤンデレ「…そっかぁ」シュン
いつからか、男の近くにはいつも彼女がいた
小学校、中学校、高校、そして大学生となった今、
どの年代のアルバムを見ても彼女が写っている
周りはそんな彼女をヤンデレ子と呼んだ
彼女は死にたがっていた
そして男のことを深く愛していた
「ねぇ男くん…最後は私と死んでくれる…?」
小学校、中学校、高校、そして大学生となった今、
どの年代のアルバムを見ても彼女が写っている
周りはそんな彼女をヤンデレ子と呼んだ
彼女は死にたがっていた
そして男のことを深く愛していた
「ねぇ男くん…最後は私と死んでくれる…?」
大学も2年目の春を迎えたころ
友人が男に向かって疑問を問いかけた
「なぁ、なんかあの子いつもおまえの後ろにいないか?」
それに対して付き合いの長い友達は
「そうか、おまえは知らないのか。あいつはヤンデレ子だよ」
「ヤンデレ子?なんだそれ」
「ヤンデレって言葉知ってるか?まぁその言葉の意味どおりさ」
「あの『あなたを殺して私も死ぬ』みたいな?」
「そんなところだな」
「おまえらなぁ…」
そこでようやく男も会話に加わった
男はなぜか、いや、むしろ当然というか彼女の存在など
気にならないようになっていたのだ
いつも自分の近くにいる彼女。当然話かけてくることもあれば
話しかけてこないで今みたいにずっと付いているだけの時もある
「あの子のことはいいだろ。気にすんなよ。
それに、その呼び方もやめろっていっただろ」
友人が男に向かって疑問を問いかけた
「なぁ、なんかあの子いつもおまえの後ろにいないか?」
それに対して付き合いの長い友達は
「そうか、おまえは知らないのか。あいつはヤンデレ子だよ」
「ヤンデレ子?なんだそれ」
「ヤンデレって言葉知ってるか?まぁその言葉の意味どおりさ」
「あの『あなたを殺して私も死ぬ』みたいな?」
「そんなところだな」
「おまえらなぁ…」
そこでようやく男も会話に加わった
男はなぜか、いや、むしろ当然というか彼女の存在など
気にならないようになっていたのだ
いつも自分の近くにいる彼女。当然話かけてくることもあれば
話しかけてこないで今みたいにずっと付いているだけの時もある
「あの子のことはいいだろ。気にすんなよ。
それに、その呼び方もやめろっていっただろ」
彼女は特に害を与える存在ではなかった
少なくとも男自身はそう感じていた
確かに他の友人たちは総じて彼女を不気味なもののように話題に挙げるが
男にはそういった感情は一切ないといってもいい程だった
思い返せば彼女ともなんだかんだで10年以上の付き合いだ
今更迷惑だとか、気持ち悪いとか
そんなことどうだっていいし、興味もない
つまり
男は彼女を空気のようにしか感じていなかった
そこにはもちろん恋愛感情は成立しない
少なくとも男自身はそう感じていた
確かに他の友人たちは総じて彼女を不気味なもののように話題に挙げるが
男にはそういった感情は一切ないといってもいい程だった
思い返せば彼女ともなんだかんだで10年以上の付き合いだ
今更迷惑だとか、気持ち悪いとか
そんなことどうだっていいし、興味もない
つまり
男は彼女を空気のようにしか感じていなかった
そこにはもちろん恋愛感情は成立しない
つーかヤンデレって割と聞き分けいいだろ
最終的に暴走すると止まらないだけで
最終的に暴走すると止まらないだけで
「ねぇ…男くん…これ、作ってきたんだけど…」
大学の講義が終わったころ
それまで後ろの席に座っていた彼女が話しかけてきた。もちろん友人たちはいない
友人たちがいるときに話しかけてきたことなんてこれまでだって一度だってない
「へぇクッキーか。君はほんとに料理が好きだね」
「ううん…。私は男くんが好きだから作ってきたの」
「はは、食べてみていい?」
「う、うん…」
彼女は確かに男のことが好きだったのだろう
もしかしたら彼女の愛し方が違っていたら、
違う出会いがあったとしたならば、
彼女のその想いは屈折することなく彼に届いていたかも知れない
しかし
彼女がこうである今
その想いがまっすぐに届くことなどない
「うん。おいしいよ。ごちそうさま」
「えへへ…」
大学の講義が終わったころ
それまで後ろの席に座っていた彼女が話しかけてきた。もちろん友人たちはいない
友人たちがいるときに話しかけてきたことなんてこれまでだって一度だってない
「へぇクッキーか。君はほんとに料理が好きだね」
「ううん…。私は男くんが好きだから作ってきたの」
「はは、食べてみていい?」
「う、うん…」
彼女は確かに男のことが好きだったのだろう
もしかしたら彼女の愛し方が違っていたら、
違う出会いがあったとしたならば、
彼女のその想いは屈折することなく彼に届いていたかも知れない
しかし
彼女がこうである今
その想いがまっすぐに届くことなどない
「うん。おいしいよ。ごちそうさま」
「えへへ…」
男のことをこんな形でしか愛せない
愛の表現ができない彼女を
ヤンデレ子
と周りは呼ぶ。
「あいつってさぁ、男のこと好きなの?」
「ヤンデレ子?」
「そうそう。っていうかあいつの名前なんなわけ?」
「ヤンデレ子が本名だろ」
「はは、ねーよ」
「てか、男もなんだかんだで嫌いじゃないんじゃねぇの?
結局突き放したりしねぇんだし、今日なんてちょっとフォローとかしてよぉ」
愛の表現ができない彼女を
ヤンデレ子
と周りは呼ぶ。
「あいつってさぁ、男のこと好きなの?」
「ヤンデレ子?」
「そうそう。っていうかあいつの名前なんなわけ?」
「ヤンデレ子が本名だろ」
「はは、ねーよ」
「てか、男もなんだかんだで嫌いじゃないんじゃねぇの?
結局突き放したりしねぇんだし、今日なんてちょっとフォローとかしてよぉ」
「まぁヤンデレちゃん見た目はかわいいしねぇ」
「え?おまえあぁ言うのタイプなの?」
「性格がじゃねぇからな。見た目オンリーだよ」
「いくら見た目が良くても本人があれじゃぁな」
「まぁムリだよな」
「なんだかんだで男もよくわかんねぇ奴だよ。結構お似合いなんじゃねぇの?」
「それはねーよ」
彼らの周りでは、しきりに持ち上がる
『あの2人の関係は何なのか』
それはだれにもわからない謎であった
「え?おまえあぁ言うのタイプなの?」
「性格がじゃねぇからな。見た目オンリーだよ」
「いくら見た目が良くても本人があれじゃぁな」
「まぁムリだよな」
「なんだかんだで男もよくわかんねぇ奴だよ。結構お似合いなんじゃねぇの?」
「それはねーよ」
彼らの周りでは、しきりに持ち上がる
『あの2人の関係は何なのか』
それはだれにもわからない謎であった
風が強く吹き始めていた
桜が散り、季節は春の峠を越えようしている
「桜…散っちゃったね…」
ふと後ろを歩いていた彼女が当然のように話しかけてきた
「桜が?」
「うん。私、桜の花大好きなんだぁ」
「きれいだもんね」
「私たちがはじめて出会ったのもこんな季節だったよね」
彼女は、まるであとからくっつけたかのような
所々に点々と残っている花びらを見上げながら語り始めた
「覚えてる?」
桜が散り、季節は春の峠を越えようしている
「桜…散っちゃったね…」
ふと後ろを歩いていた彼女が当然のように話しかけてきた
「桜が?」
「うん。私、桜の花大好きなんだぁ」
「きれいだもんね」
「私たちがはじめて出会ったのもこんな季節だったよね」
彼女は、まるであとからくっつけたかのような
所々に点々と残っている花びらを見上げながら語り始めた
「覚えてる?」
始業の鐘が鳴る
彼女は今日も男の後ろにいる
男は今朝の彼女の話を回想していた
彼女は、まるでつきあって何年も一緒にいるかのように
お互いに歩んできた道を振り返るかのように
懐かしみながら初めて出会ったころの話をした
その最中彼女はとてもうれしそうだった
何か大事なものを自慢するかのように丁寧でいて、温かい語りだった
実際、彼女にとっては思い出深い話だったのだろう
しかし、男にとってそれは全く身に覚えのない内容であった
彼女は今日も男の後ろにいる
男は今朝の彼女の話を回想していた
彼女は、まるでつきあって何年も一緒にいるかのように
お互いに歩んできた道を振り返るかのように
懐かしみながら初めて出会ったころの話をした
その最中彼女はとてもうれしそうだった
何か大事なものを自慢するかのように丁寧でいて、温かい語りだった
実際、彼女にとっては思い出深い話だったのだろう
しかし、男にとってそれは全く身に覚えのない内容であった
授業も終盤に差し掛かり、担当教諭がまとめのような口調になると
周りは一斉に片づけや、会話の音で騒がしくなる
それは男の友人にも同じことだった
「なぁ男、今度の週末俺の知り合いの女の子グループと
遊園地行くんだけどお前もいかないか?」
「なんで?俺、そういうの得意じゃないんだよ」
「いやいや、大丈夫だって!ただ遊びに行くだけでもいいし!」
「何が大丈夫なんだよ。なにも解決してないし」
周りは一斉に片づけや、会話の音で騒がしくなる
それは男の友人にも同じことだった
「なぁ男、今度の週末俺の知り合いの女の子グループと
遊園地行くんだけどお前もいかないか?」
「なんで?俺、そういうの得意じゃないんだよ」
「いやいや、大丈夫だって!ただ遊びに行くだけでもいいし!」
「何が大丈夫なんだよ。なにも解決してないし」
帰りに自宅までの道を歩いていると彼女が話しかけてきた
「男くん、遊園地行くんでしょ?」
「そうみたいだね。まったくもって面倒臭いよ」
「えへへ、楽しみだな」
「ん?」
「だって男くん最近あまり休日に外出してなかったから、
久しぶりに男くんと休みを過ごせると思うと」
「ダメダメ」
「…?」
「いや、今回はダメだよ」
「な、なな…!」
「なんでも何もないよ。だってこれ俗に言う合コンみたいなもんだし
あっちの子怖がらせて友達にキレられたくないし。だからダメ」
「…はぅ~」
「聞きわけはいいんだよな」
「男くん、遊園地行くんでしょ?」
「そうみたいだね。まったくもって面倒臭いよ」
「えへへ、楽しみだな」
「ん?」
「だって男くん最近あまり休日に外出してなかったから、
久しぶりに男くんと休みを過ごせると思うと」
「ダメダメ」
「…?」
「いや、今回はダメだよ」
「な、なな…!」
「なんでも何もないよ。だってこれ俗に言う合コンみたいなもんだし
あっちの子怖がらせて友達にキレられたくないし。だからダメ」
「…はぅ~」
「聞きわけはいいんだよな」
>>18
激しく萌えた
激しく萌えた
彼女は聞きわけが良かった
それが男に対して彼女の存在が迷惑にならない最大の要因だった
確かに彼女はまるで影のように彼について回ったが
彼が本気で「迷惑だ」とさえ言えば、
恐らくついて回るようなこともなくなるかもしれない
彼女は死にたがりの愛したがりのNOと言えない日本人だった
それが男に対して彼女の存在が迷惑にならない最大の要因だった
確かに彼女はまるで影のように彼について回ったが
彼が本気で「迷惑だ」とさえ言えば、
恐らくついて回るようなこともなくなるかもしれない
彼女は死にたがりの愛したがりのNOと言えない日本人だった
そもそも、彼女がこのような範疇を超えた性格をしているのには
幼いころのひどいトラウマが起因していた
死にたがりなのは
大好きだった年老いた祖母がボケて犬とけんかしているのを見て
「若いうちに死にたい」と感じた
愛したがりなのは
川の字で寝ているとき両親が隣でうっふんあハンしてるのを見て
「何をやっているの?」と聞いたら
「ちょ、こ、これは、あ、その…あ、愛し合っているんだよ!
こうしないとお父さんとお母さんは死んでしまうんだ!!
お前も将来好きな人ができたら愛し合うんだぞ!!ははは」
と言われ
「なーるほど」
と思ったから
幼いころのひどいトラウマが起因していた
死にたがりなのは
大好きだった年老いた祖母がボケて犬とけんかしているのを見て
「若いうちに死にたい」と感じた
愛したがりなのは
川の字で寝ているとき両親が隣でうっふんあハンしてるのを見て
「何をやっているの?」と聞いたら
「ちょ、こ、これは、あ、その…あ、愛し合っているんだよ!
こうしないとお父さんとお母さんは死んでしまうんだ!!
お前も将来好きな人ができたら愛し合うんだぞ!!ははは」
と言われ
「なーるほど」
と思ったから
聞きわけがいいのは
そのような人生において、彼女は素直すぎた
純真な心にはすべてが真実に映り
相手の意見には自分の意見をぶつけられなくなってしまった
からである
こうして
今の彼女は形作られた
そのような人生において、彼女は素直すぎた
純真な心にはすべてが真実に映り
相手の意見には自分の意見をぶつけられなくなってしまった
からである
こうして
今の彼女は形作られた
そして週末、男は合コンに向かった
彼女は男の言いつけどおり集合場所まであとをつけると
そのままバスに乗ってきた道を引き返した
バスの窓の向こうで男が待ち人と合流した
あんなきゃばきゃばした女に男が惹かれないとはわかっていても
彼女としてはやはり面白い気はしなかった
「男くんには私がいるんだから…」
彼女はバスが次に角を曲がるまでその光景を眺めていた
彼女は男の言いつけどおり集合場所まであとをつけると
そのままバスに乗ってきた道を引き返した
バスの窓の向こうで男が待ち人と合流した
あんなきゃばきゃばした女に男が惹かれないとはわかっていても
彼女としてはやはり面白い気はしなかった
「男くんには私がいるんだから…」
彼女はバスが次に角を曲がるまでその光景を眺めていた
「お。今日はあの子は一緒じゃないんだ」
友人の一人が男の後ろを確認しながら口に出す
「つーかヤンデレちゃんは今日のこと知ってんの?浮気だと思われちゃうよ?」
それに乗じてネタとも本気ともとれる言葉も出てくる
「えー!ヤンデレ子ってこういうときにまでついてくんのぉ!?」
2人の言葉につい最近まで彼女の存在を知らなかった1人が驚きの声を上げる
もちろんこの会話に女の子たちはみんなついてこれていない
しかしその眼は「ヤンデレ子って誰?」と如実に語っていた
「いや、いいじゃんあの子のことは。説明めんどいし」
友人の一人が男の後ろを確認しながら口に出す
「つーかヤンデレちゃんは今日のこと知ってんの?浮気だと思われちゃうよ?」
それに乗じてネタとも本気ともとれる言葉も出てくる
「えー!ヤンデレ子ってこういうときにまでついてくんのぉ!?」
2人の言葉につい最近まで彼女の存在を知らなかった1人が驚きの声を上げる
もちろんこの会話に女の子たちはみんなついてこれていない
しかしその眼は「ヤンデレ子って誰?」と如実に語っていた
「いや、いいじゃんあの子のことは。説明めんどいし」
この言葉で流そうと考えたが、女の子盛り上げ隊長みたいな子が
「えー!?なになにそのヤンデレ子ちゃんって男くんのなんなわけ??」
と聞いてくる。このようなシチュエーションはもちろん初めてではないが
そのたびに男は非常に厄介な思いにさせられるのであった
男自身、自分にとって彼女がどういう立ち位置なのか把握していなかったのだ
というか、そこまで考えることがなかった
彼女はいて当たり前であり、そこにいて何かしてくるわけではない
話しかけたり、ときどき触れたりもするが何か残るわけではない
見た目は確かにかわいいし、素直なのだが何か思うわけでもない
男にとって彼女はいったい何なのだろうか
と問われて、一番その答えが知りたいのは男自身であった
「えー!?なになにそのヤンデレ子ちゃんって男くんのなんなわけ??」
と聞いてくる。このようなシチュエーションはもちろん初めてではないが
そのたびに男は非常に厄介な思いにさせられるのであった
男自身、自分にとって彼女がどういう立ち位置なのか把握していなかったのだ
というか、そこまで考えることがなかった
彼女はいて当たり前であり、そこにいて何かしてくるわけではない
話しかけたり、ときどき触れたりもするが何か残るわけではない
見た目は確かにかわいいし、素直なのだが何か思うわけでもない
男にとって彼女はいったい何なのだろうか
と問われて、一番その答えが知りたいのは男自身であった
バスに乗ってころころゆられていた彼女は男のことをずっと想っていた
彼女にとって男は大切な人であったし、彼女としては
男のほうからも自分は一目置かれた存在になれていると思っていた
しかし
彼女の与えている愛に対して、与えられている愛はないに等しかった
確かに、男の顔や声を聞いているだけでも十分幸せなのだが
世間でいうところの恋人、というには余りにも一方的すぎる関係だった
そんなことに、彼女も党に気づいていたが
それでも一心に彼を愛し続けるのは
この自分なりの愛が彼に届く日が来ると信じていたからに他ならない
しかし
そんな彼を見つめ続ける瞳が
彼の瞳を正面からとらえられたことは今にして一度もなかった
彼女にとって男は大切な人であったし、彼女としては
男のほうからも自分は一目置かれた存在になれていると思っていた
しかし
彼女の与えている愛に対して、与えられている愛はないに等しかった
確かに、男の顔や声を聞いているだけでも十分幸せなのだが
世間でいうところの恋人、というには余りにも一方的すぎる関係だった
そんなことに、彼女も党に気づいていたが
それでも一心に彼を愛し続けるのは
この自分なりの愛が彼に届く日が来ると信じていたからに他ならない
しかし
そんな彼を見つめ続ける瞳が
彼の瞳を正面からとらえられたことは今にして一度もなかった
今日はシチューを作ろう、と
彼女はこっそり作った合鍵をキーケースから出し彼の部屋に入った
材料は買ってあるし、鍋や皿は彼のものを使えばいい
今頃彼は今どきで普通の女の子と同じ空間を過ごしている
そんな女に今まで男のことだけを見てきた自分が負けるなどと思ってはいなかったが
彼が帰ってきたときに、いいところが見せられたなら
「やっぱりこいつだ」と思ってもらえるチャンスに違いない
そう、彼女は思っていた
彼女は持参したエプロンを締め狭い台所に立った
彼のために上達した料理の味だけは
どうあっても男にまっすぐに伝わってくれる
「よしっ」
包丁とジャガイモを握り、彼女は調理を開始した
彼女はこっそり作った合鍵をキーケースから出し彼の部屋に入った
材料は買ってあるし、鍋や皿は彼のものを使えばいい
今頃彼は今どきで普通の女の子と同じ空間を過ごしている
そんな女に今まで男のことだけを見てきた自分が負けるなどと思ってはいなかったが
彼が帰ってきたときに、いいところが見せられたなら
「やっぱりこいつだ」と思ってもらえるチャンスに違いない
そう、彼女は思っていた
彼女は持参したエプロンを締め狭い台所に立った
彼のために上達した料理の味だけは
どうあっても男にまっすぐに伝わってくれる
「よしっ」
包丁とジャガイモを握り、彼女は調理を開始した
部屋を整理し、投げ出してあった服をたたみ
男が帰ってくるのを彼女は待った
遊園地は7時に閉まるらしい
その後飲み会が催されたとしても、
もしかしたらそろそろ帰ってくるかもしれない
時計は9時を指していた
お酒があまり飲めない彼に限って、酔っぱらってそのまま寝てしまったりなんてことはない
その辺の自己管理ができないような人じゃないし
もしかしたら3次会があるのかもしれない。それで遅くなっているのかも
彼女は眺めていた男のアルバムを閉じてもう一度時計を確認した
時計は12時を迎えようとしている
男が帰ってくるのを彼女は待った
遊園地は7時に閉まるらしい
その後飲み会が催されたとしても、
もしかしたらそろそろ帰ってくるかもしれない
時計は9時を指していた
お酒があまり飲めない彼に限って、酔っぱらってそのまま寝てしまったりなんてことはない
その辺の自己管理ができないような人じゃないし
もしかしたら3次会があるのかもしれない。それで遅くなっているのかも
彼女は眺めていた男のアルバムを閉じてもう一度時計を確認した
時計は12時を迎えようとしている
深夜も2時を回ろうとしていた
部屋は街灯から差し込む光だけが照らしている
ほとんど真っ暗ともいえる部屋の中で、
彼女は小学校時代のアルバムを開いていた
このころは、よく男くんに「なんでついて来るの?」って話しかけてもらえたな
でもこのころから男くんは女の子とも仲良かったし
男くんのことを好きなほかの女の子にいたずらされちゃったりなんかしてさぁ
でも、男くんだけは変わらずに接してくれたんだよねぇ
中学生になっても、高校生になっても
男くんは一回も私を避けたりなんかしてこなかった
なんてやさしい人…
彼女はページに写る彼にそっと唇をふれさせた
部屋は街灯から差し込む光だけが照らしている
ほとんど真っ暗ともいえる部屋の中で、
彼女は小学校時代のアルバムを開いていた
このころは、よく男くんに「なんでついて来るの?」って話しかけてもらえたな
でもこのころから男くんは女の子とも仲良かったし
男くんのことを好きなほかの女の子にいたずらされちゃったりなんかしてさぁ
でも、男くんだけは変わらずに接してくれたんだよねぇ
中学生になっても、高校生になっても
男くんは一回も私を避けたりなんかしてこなかった
なんてやさしい人…
彼女はページに写る彼にそっと唇をふれさせた
アルバムから顔を離すと
なんだか急に恥ずかしさがこみあげてくる
彼の部屋で、彼の写真にキスをするなんて
もちろん家でしたことはあったが、
彼の家でというシチュエーションは初めてだった
「本当のあなたとはいつ触れ合えるの…?」
頬を赤らめたまま、彼女は写真の彼にぽつりとつぶやいた
そして直後部屋の前で彼が帰ってきた音がする
なんだか急に恥ずかしさがこみあげてくる
彼の部屋で、彼の写真にキスをするなんて
もちろん家でしたことはあったが、
彼の家でというシチュエーションは初めてだった
「本当のあなたとはいつ触れ合えるの…?」
頬を赤らめたまま、彼女は写真の彼にぽつりとつぶやいた
そして直後部屋の前で彼が帰ってきた音がする
彼女はとたんに胸が弾むのを感じた
彼を思いながら彼とこんなに離れているのは
やはり何回体験しても慣れるものではない
しかも今日はほか女と一緒にいる時間を男は過ごしていたのだ
いつもよりその間の不安は一層強いものだった
しかし、それでも今、彼は目の前にいる
この薄い扉を開けさえすれば、すぐに彼に会える
彼女は口元を緩ませながら扉のほうへと歩を進めた
あの扉の向こうに彼が
「男くんって結構きれいなとこに住んでんだねぇ」
彼を思いながら彼とこんなに離れているのは
やはり何回体験しても慣れるものではない
しかも今日はほか女と一緒にいる時間を男は過ごしていたのだ
いつもよりその間の不安は一層強いものだった
しかし、それでも今、彼は目の前にいる
この薄い扉を開けさえすれば、すぐに彼に会える
彼女は口元を緩ませながら扉のほうへと歩を進めた
あの扉の向こうに彼が
「男くんって結構きれいなとこに住んでんだねぇ」
「あー私酔っちゃったみたいー」
2次会、として開かれた飲み会も会計を済ませ終わりそうになったころ
そもそも遊園地は一次会だったのか、と疑問を持っていた男も帰り支度を済ませ席を立っていた
「女さん、今から急がないと終電のがしちゃいますよ
俺たちも送っていくんで早く駅行きましょう」
女さん、は今回の合コン中やたら男にくっついていた女性だ。
周りを見てもなんとなく2人ずつ分かれて歩き出しているように見える
「う~ん歩きたくな~い。だっこぉ~」
いつもヤンデレ子と呼ばれる女が近くにいるからか
男はこういった女性の発言というか性格には耐性が付いていた
しかし、本来彼が持つ性格が、やっぱり女って面倒だと、いやでも思わせる
「ほら、急がないとみんなどんどん先行ってるし」
「いいんだよぉ。だってぇ私終電で帰るつもりないし」
「え?」
2次会、として開かれた飲み会も会計を済ませ終わりそうになったころ
そもそも遊園地は一次会だったのか、と疑問を持っていた男も帰り支度を済ませ席を立っていた
「女さん、今から急がないと終電のがしちゃいますよ
俺たちも送っていくんで早く駅行きましょう」
女さん、は今回の合コン中やたら男にくっついていた女性だ。
周りを見てもなんとなく2人ずつ分かれて歩き出しているように見える
「う~ん歩きたくな~い。だっこぉ~」
いつもヤンデレ子と呼ばれる女が近くにいるからか
男はこういった女性の発言というか性格には耐性が付いていた
しかし、本来彼が持つ性格が、やっぱり女って面倒だと、いやでも思わせる
「ほら、急がないとみんなどんどん先行ってるし」
「いいんだよぉ。だってぇ私終電で帰るつもりないし」
「え?」
「私、あまり家に帰りたくないんだぁ。お父さんが超うるさくってさ
今日もどうせこんな時間に帰ったら怒られるだけだもん」
女がこの言葉の裏にどんな真意を含めているのかは男にも分かっていたが
友人たちは「いい思いしろよな」みたいな遠い目でこっちを颯爽と見てるし
女は甘えた声で「どぉすればいいかなぁ?」とかいってるし
「じゃぁうちに来る?」
こう言いだすしか道はなかった
っていうか、何あいつらいい仕事した、みたいな顔してんだよ
グッジョブ、じゃねぇよ
男は内心ため息をつきながら、女を自宅へと案内した
このとき男はもう一人の女性が自分の部屋にいるだなんて思ってもいなかった
今日もどうせこんな時間に帰ったら怒られるだけだもん」
女がこの言葉の裏にどんな真意を含めているのかは男にも分かっていたが
友人たちは「いい思いしろよな」みたいな遠い目でこっちを颯爽と見てるし
女は甘えた声で「どぉすればいいかなぁ?」とかいってるし
「じゃぁうちに来る?」
こう言いだすしか道はなかった
っていうか、何あいつらいい仕事した、みたいな顔してんだよ
グッジョブ、じゃねぇよ
男は内心ため息をつきながら、女を自宅へと案内した
このとき男はもう一人の女性が自分の部屋にいるだなんて思ってもいなかった
ガチャ
と、軽い扉のロックが外れる音が聞こえる
彼がドアノブに手をかけたのがわかる
彼が女を連れてきた
こんな時間に
私という女がありながら
ううん。だけど彼にも理由があるはず
彼に会いたい
彼に会いたくない
逃げ出してしまいたい
今までだって彼の帰りを待っていたことはあったけど
今回は状況が違う
逃げなきゃ
なんで私が逃げるの?
彼には私がいるのに私しかいないのに
私はあなたを愛しているのに
ねぇ!!どうしてあなたは私を見てくれないの!!!
私はあなたにこんなに尽くしてきたのに!!!どの女よりも同じ時間を過ごしてきた!!どの女よりあなたのことを見てきた!!私もあなたに私のすべてを見せたわ!!!なのにどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
愛してくれないの!!!!!!!!
と、軽い扉のロックが外れる音が聞こえる
彼がドアノブに手をかけたのがわかる
彼が女を連れてきた
こんな時間に
私という女がありながら
ううん。だけど彼にも理由があるはず
彼に会いたい
彼に会いたくない
逃げ出してしまいたい
今までだって彼の帰りを待っていたことはあったけど
今回は状況が違う
逃げなきゃ
なんで私が逃げるの?
彼には私がいるのに私しかいないのに
私はあなたを愛しているのに
ねぇ!!どうしてあなたは私を見てくれないの!!!
私はあなたにこんなに尽くしてきたのに!!!どの女よりも同じ時間を過ごしてきた!!どの女よりあなたのことを見てきた!!私もあなたに私のすべてを見せたわ!!!なのにどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
愛してくれないの!!!!!!!!
ほかの女を私に見せに来たの?その女のほうが私よりあなたを理解できるって??
私だってもっとあなたを知りたい。だけどあなたは私に見せてくれないじゃない
あなたのやさしさも、温かさも、愛おしさも、与えてくれる愛も!!!私に見せてくれない!!!
私は彼の家に招待されたことなんてない。いつも私が押し掛けて、彼が「またか」っていってくるだけ
だけどそれでもいいの。彼の部屋でアルバムを見つめるだけで、かれの部屋から出されるまで彼が私を相手してくれるだけで
それだけで私はよかったの!!なのに!!!あなたは今日その女を家に連れ込むのね
これから2人で夜を越すつもりなのね。あなたはその女を抱きたいの!!???
そんなの許せない
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない
絶対許さないんだから!!
私しか彼を愛せないわ。あぁ彼の本当のやさしさに一度でもふれたならわかる
彼の本当の魅力が。だけど彼にはもっともっと愛を与えてほしい
私だけを見ていてほしいの!!だからその女はいらない。いらないの。
邪魔なのよ私には。私たちには
さぁドアを開けて?
私は今からあなたを見るわ
だけどそれで、さいごにしてあげる
私だってもっとあなたを知りたい。だけどあなたは私に見せてくれないじゃない
あなたのやさしさも、温かさも、愛おしさも、与えてくれる愛も!!!私に見せてくれない!!!
私は彼の家に招待されたことなんてない。いつも私が押し掛けて、彼が「またか」っていってくるだけ
だけどそれでもいいの。彼の部屋でアルバムを見つめるだけで、かれの部屋から出されるまで彼が私を相手してくれるだけで
それだけで私はよかったの!!なのに!!!あなたは今日その女を家に連れ込むのね
これから2人で夜を越すつもりなのね。あなたはその女を抱きたいの!!???
そんなの許せない
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない
絶対許さないんだから!!
私しか彼を愛せないわ。あぁ彼の本当のやさしさに一度でもふれたならわかる
彼の本当の魅力が。だけど彼にはもっともっと愛を与えてほしい
私だけを見ていてほしいの!!だからその女はいらない。いらないの。
邪魔なのよ私には。私たちには
さぁドアを開けて?
私は今からあなたを見るわ
だけどそれで、さいごにしてあげる
静かな夜だった
恐らく最後の桜が散り、滑るようにして地面についた
強かったはずの季節風も
次第に心地いいくらいになって
静かに、木の枝を揺らした
静かな夜だった
恐らく最後の桜が散り、滑るようにして地面についた
強かったはずの季節風も
次第に心地いいくらいになって
静かに、木の枝を揺らした
静かな夜だった
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