私的良スレ書庫
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少女「最近、数Ⅱが難しいんですよねー……」
女子高生だという彼女は、一番後ろの席に座るとすぐに口を開いた。
運動系の部活動でもやっているだろう。短くした黒髪が活発的で、豊かな表情には好感が持てる。
そんな彼女と私の奇妙な交友が始まったのは、まだ花冷えの厳しい頃であった。
少女「私ってグラフ苦手なんです。だから微分……」
大学に通うために一人暮らしを始めたが、足としてバスを利用していた。
自宅近辺から駅前のバス亭に向かうバスで、私の大学はそこから徒歩数分の場所にある。
彼女と顔を合わせるようになったのは、自宅に向かう最終バスの中でだった。
少女「って! 今度のテストやばいんスよー……」
先に声を掛けたのは私だろうか、それとも彼女なのか。
私の座席に転がってきた携帯の持ち主が彼女であった事が、切っ掛けだったのは間違いない。
少女「淑女さんって○○大ですよね? 今度……」
社交辞令から始まった会話が、彼女のテンポに引き摺られる形で盛り上がっていった。
今日で何回目のお喋りになるかは定かではないが、気安く声を掛け合える程度には仲良くなったのだろう。
少女「なんですけど……淑女さん? 話、聞いてます?」
淑女「……え? あ……ご、ごめん。ちょっとボーっとしちゃってた」
少女「あれあれー? もしかして彼氏の事とかですかァー?」
淑女「あ~それだったら嬉しいんだけどなァ……私モテないからさー」
裏表の無さそうな彼女の表情は、年下特有の愛らしさがある。
年下相手の会話で感じていた気付かれを、彼女にはあまり感じなかった。
女子高生だという彼女は、一番後ろの席に座るとすぐに口を開いた。
運動系の部活動でもやっているだろう。短くした黒髪が活発的で、豊かな表情には好感が持てる。
そんな彼女と私の奇妙な交友が始まったのは、まだ花冷えの厳しい頃であった。
少女「私ってグラフ苦手なんです。だから微分……」
大学に通うために一人暮らしを始めたが、足としてバスを利用していた。
自宅近辺から駅前のバス亭に向かうバスで、私の大学はそこから徒歩数分の場所にある。
彼女と顔を合わせるようになったのは、自宅に向かう最終バスの中でだった。
少女「って! 今度のテストやばいんスよー……」
先に声を掛けたのは私だろうか、それとも彼女なのか。
私の座席に転がってきた携帯の持ち主が彼女であった事が、切っ掛けだったのは間違いない。
少女「淑女さんって○○大ですよね? 今度……」
社交辞令から始まった会話が、彼女のテンポに引き摺られる形で盛り上がっていった。
今日で何回目のお喋りになるかは定かではないが、気安く声を掛け合える程度には仲良くなったのだろう。
少女「なんですけど……淑女さん? 話、聞いてます?」
淑女「……え? あ……ご、ごめん。ちょっとボーっとしちゃってた」
少女「あれあれー? もしかして彼氏の事とかですかァー?」
淑女「あ~それだったら嬉しいんだけどなァ……私モテないからさー」
裏表の無さそうな彼女の表情は、年下特有の愛らしさがある。
年下相手の会話で感じていた気付かれを、彼女にはあまり感じなかった。
少女「そうですかー? なんか年下の男子にモテそうですよ?」
淑女「お姉さんお姉さんしてるとか?」
少女「そーそー! なんかスーツ姿でビシッとした感じ!」
淑女「……う~ん。男だったら全体的にそういうの好きそうだけど」
少女「あー就活してる女の人って格好良いですもんね~」
淑女「少女もそう思う? なーんか周りの男友達は皆そう言ってる」
少女「あははっ。男子ってそういうのに弱いですもんねーっ」
淑女「……あ、そういえば少女って彼氏とか居るの?」
少女「はい?」
淑女「いや、なんか聞いた事ないなーって思って」
少女「いやーわたしは部活一筋ッスから~」
淑女「……あ~? なんか隠してそうな顔してるぞ?」
少女「いやいやっ。わたし、ほんっとモテないですもん!」
淑女「(……少女の周りの男共は見る目ないなー)」
淑女「お姉さんお姉さんしてるとか?」
少女「そーそー! なんかスーツ姿でビシッとした感じ!」
淑女「……う~ん。男だったら全体的にそういうの好きそうだけど」
少女「あー就活してる女の人って格好良いですもんね~」
淑女「少女もそう思う? なーんか周りの男友達は皆そう言ってる」
少女「あははっ。男子ってそういうのに弱いですもんねーっ」
淑女「……あ、そういえば少女って彼氏とか居るの?」
少女「はい?」
淑女「いや、なんか聞いた事ないなーって思って」
少女「いやーわたしは部活一筋ッスから~」
淑女「……あ~? なんか隠してそうな顔してるぞ?」
少女「いやいやっ。わたし、ほんっとモテないですもん!」
淑女「(……少女の周りの男共は見る目ないなー)」
淑女「そういえば、さっきのなんだっけ……数学だっけ?」
少女「あっそうそう! そうなんですよォー……頭悪くてダメッスね」
淑女「う~ん。私も数学苦手なんだよねェ」
少女「あれ? なんか意外ですね?」
淑女「ガリ勉なんてした事ないからなー大学で数学使わないし」
少女「あちゃー……なんか塾でも付いていけてないンですよ」
淑女「塾言ってるんだ?」
少女「言ってなかったですっけ。××塾ですよ」
淑女「××塾……ってまた有名なトコ行ってるんだー?」
少女「あははっ。名前だけは有名ですけど、わたしのクラスは下の方ですよー」
少女「それに、あそこって生徒数が多いから質問も出来なくって大変です」
淑女「(なんかしっかり勉強してるんだなー……偉い偉い)」
少女「あっそうそう! そうなんですよォー……頭悪くてダメッスね」
淑女「う~ん。私も数学苦手なんだよねェ」
少女「あれ? なんか意外ですね?」
淑女「ガリ勉なんてした事ないからなー大学で数学使わないし」
少女「あちゃー……なんか塾でも付いていけてないンですよ」
淑女「塾言ってるんだ?」
少女「言ってなかったですっけ。××塾ですよ」
淑女「××塾……ってまた有名なトコ行ってるんだー?」
少女「あははっ。名前だけは有名ですけど、わたしのクラスは下の方ですよー」
少女「それに、あそこって生徒数が多いから質問も出来なくって大変です」
淑女「(なんかしっかり勉強してるんだなー……偉い偉い)」
仲良くなったと言っても他愛ない会話ばかりだった。
ドラマや小説では盛り上げ所なのかも知れないが、そう上手く人生は出来ていない。
淑女「あははは、そうなんだー……って、私つぎだね?」
少女「もーですかー? 淑女さんと話し始めてから時間経つのが早いですね」
彼女は裾からほんの少し出した右手で、耳を掻いた。
しばらく話していて分かった事だが、どうやら彼女の癖のような物らしい。
難しい相談事など、暗い方向の話をする時に多く見られた。
淑女「私も思うなー……ま、また明日だね」
少女「ですねェ。あーこっから一人だー」
彼女の家はこの先にあるらしい。
当然、他愛無い会話ばかりの仲の私達である。詳しくは知らない。
淑女「……よし。じゃあまた明日」
少女「うッス。気を付けて下さいね~痴漢とかっ」
淑女「大丈夫大丈夫。家、近いから」
少女「いやーでも本当、最近多いらしいんですよ」
噂話をするかのように彼女は声を潜めた。
私は少しだけ悪寒を感じながら「そっか。分かった気をつける」とだけ答えて、バスを降りた。
ドラマや小説では盛り上げ所なのかも知れないが、そう上手く人生は出来ていない。
淑女「あははは、そうなんだー……って、私つぎだね?」
少女「もーですかー? 淑女さんと話し始めてから時間経つのが早いですね」
彼女は裾からほんの少し出した右手で、耳を掻いた。
しばらく話していて分かった事だが、どうやら彼女の癖のような物らしい。
難しい相談事など、暗い方向の話をする時に多く見られた。
淑女「私も思うなー……ま、また明日だね」
少女「ですねェ。あーこっから一人だー」
彼女の家はこの先にあるらしい。
当然、他愛無い会話ばかりの仲の私達である。詳しくは知らない。
淑女「……よし。じゃあまた明日」
少女「うッス。気を付けて下さいね~痴漢とかっ」
淑女「大丈夫大丈夫。家、近いから」
少女「いやーでも本当、最近多いらしいんですよ」
噂話をするかのように彼女は声を潜めた。
私は少しだけ悪寒を感じながら「そっか。分かった気をつける」とだけ答えて、バスを降りた。
書き溜めてないのはゴメンなさい
平日深夜で人少ないだろうしと勝手やってる
朝になったら自然落ちだから目を瞑ってくれ
平日深夜で人少ないだろうしと勝手やってる
朝になったら自然落ちだから目を瞑ってくれ
今夜もバスでの鉢合わせとなった。
ここの所、連日連夜で顔を付き合わせているから、訝しく思わないでもない。
彼女は、私に時間を合わせているのだろうか。
淑女「今日も塾?」
少女「あ、違うます違います」
少女「今日は部活が長引いて……友達と晩御飯、食べてきました」
淑女「あ~……通りで、襟元にソースの後が……」
少女「えっ? え、マジっスか? ……うわ、やっちゃってる!?」
淑女「ふふ。早くクリーニングに出さないとね」
彼女の表情は忙しないが、見ていて飽きなかった。
運動系の部活に入っているとは思っていたが、剣道部に属していると照れ臭そうに笑った。
淑女「でも剣道って匂いすごくない?」
少女「あ~慣れちゃいましたよ。小中高でやってましたから」
淑女「え? 小学校って剣道部……部? っていうか、そういうのあったの?」
少女「小学校の時は近くの道場でー……まあ親に勧められたんじゃないッスかね」
淑女「へーじゃあ長いんだね?」
少女「長いだけで弱いですけどねー……後輩の方が体格も良くて、泣かされてます」
彼女は大袈裟に目元を拭って見せた。
そういえば彼女の掌はゴツゴツと固かったように思える。
私に剣道をよく知らないが、彼女が頑張っている事だけは容易に想像出来た。
ここの所、連日連夜で顔を付き合わせているから、訝しく思わないでもない。
彼女は、私に時間を合わせているのだろうか。
淑女「今日も塾?」
少女「あ、違うます違います」
少女「今日は部活が長引いて……友達と晩御飯、食べてきました」
淑女「あ~……通りで、襟元にソースの後が……」
少女「えっ? え、マジっスか? ……うわ、やっちゃってる!?」
淑女「ふふ。早くクリーニングに出さないとね」
彼女の表情は忙しないが、見ていて飽きなかった。
運動系の部活に入っているとは思っていたが、剣道部に属していると照れ臭そうに笑った。
淑女「でも剣道って匂いすごくない?」
少女「あ~慣れちゃいましたよ。小中高でやってましたから」
淑女「え? 小学校って剣道部……部? っていうか、そういうのあったの?」
少女「小学校の時は近くの道場でー……まあ親に勧められたんじゃないッスかね」
淑女「へーじゃあ長いんだね?」
少女「長いだけで弱いですけどねー……後輩の方が体格も良くて、泣かされてます」
彼女は大袈裟に目元を拭って見せた。
そういえば彼女の掌はゴツゴツと固かったように思える。
私に剣道をよく知らないが、彼女が頑張っている事だけは容易に想像出来た。
少女「そういえば」
彼女の様子が変わり始めたのは、それから数日後の事だった。
最初こそ「疲れているのだろうか」と気を使っていたが、どうも腑に落ちなかった。
少女「最近、よく眠れないんですよね」
淑女「本当に? 少女、疲れすぎてるんじゃない?」
彼女の目元にはくっきりと隈が出来ていた。
出会った当初の快活さが感じられず、心無しか背筋も曲がって来たように見える。
少女「かも……しれないですけど。なんか、寝るのが怖いんですよ」
淑女「……夢見が悪い、とか?」
少女「あー……うん。多分、そんな感じです」
淑女「そっかー……身体をリラックスさせて寝ると良いかもよ?」
少女「……そうなんですか?」
淑女「うん。お風呂でマッサージとかしてあげて、ぐっすり眠れば夢も見ないって聞くし」
俄かに彼女の表情が明るくなった。
私に気を使ってくれたのだろう。「早速試してみますね」と疲れた笑顔を見せてくれた。
彼女の様子が変わり始めたのは、それから数日後の事だった。
最初こそ「疲れているのだろうか」と気を使っていたが、どうも腑に落ちなかった。
少女「最近、よく眠れないんですよね」
淑女「本当に? 少女、疲れすぎてるんじゃない?」
彼女の目元にはくっきりと隈が出来ていた。
出会った当初の快活さが感じられず、心無しか背筋も曲がって来たように見える。
少女「かも……しれないですけど。なんか、寝るのが怖いんですよ」
淑女「……夢見が悪い、とか?」
少女「あー……うん。多分、そんな感じです」
淑女「そっかー……身体をリラックスさせて寝ると良いかもよ?」
少女「……そうなんですか?」
淑女「うん。お風呂でマッサージとかしてあげて、ぐっすり眠れば夢も見ないって聞くし」
俄かに彼女の表情が明るくなった。
私に気を使ってくれたのだろう。「早速試してみますね」と疲れた笑顔を見せてくれた。
>>11
記念がっ!
記念がっ!
次の夜、バス亭に彼女の姿は無かった。
あまり悪い方に考える気にもなれず、たまたま時間がズレたのだろうと自分を納得させた。
そもそも今までが異常だったのだ。バイトの同僚と似たような物である。
淑女「別に会わないなら会わないでも……これで普通よね」
その調子で一週間が過ぎようとしていた夜である。
少女「あ……淑女さんっ!」
淑女「あー少女! 久しぶりじゃない、どうしたの?」
彼女の口から出たのは「風邪引いて寝込んでました」という言葉だった。
「さすがに一週間も姿を見せないのはオカしい」と考え始めていた私は、その軽さに拍子抜けである。
淑女「そうだったんだ~……あー良かったー」
少女「あははっ。風邪で寝込んだのなんて久しぶりですよー」
淑女「事故にでもあったのかって心配しちゃったっ」
少女「大袈裟ですよ~……でも、心配掛けてすいませんでしたっ」
彼女は慇懃にお辞儀をしてみせた。
心配に対してお礼を言われると、あまり悪い気はしない。
淑女「でも何事も無くてよかった」
少女「そんなに心配してくれたなら連絡くれれば良いのにー」
淑女「……あれ? 私たちって番号交換したっけ?」
少女「……あ、れ?」
苦笑いを浮かべながら彼女は「そういえば!」と頭を抱えて見せた。
あまり悪い方に考える気にもなれず、たまたま時間がズレたのだろうと自分を納得させた。
そもそも今までが異常だったのだ。バイトの同僚と似たような物である。
淑女「別に会わないなら会わないでも……これで普通よね」
その調子で一週間が過ぎようとしていた夜である。
少女「あ……淑女さんっ!」
淑女「あー少女! 久しぶりじゃない、どうしたの?」
彼女の口から出たのは「風邪引いて寝込んでました」という言葉だった。
「さすがに一週間も姿を見せないのはオカしい」と考え始めていた私は、その軽さに拍子抜けである。
淑女「そうだったんだ~……あー良かったー」
少女「あははっ。風邪で寝込んだのなんて久しぶりですよー」
淑女「事故にでもあったのかって心配しちゃったっ」
少女「大袈裟ですよ~……でも、心配掛けてすいませんでしたっ」
彼女は慇懃にお辞儀をしてみせた。
心配に対してお礼を言われると、あまり悪い気はしない。
淑女「でも何事も無くてよかった」
少女「そんなに心配してくれたなら連絡くれれば良いのにー」
淑女「……あれ? 私たちって番号交換したっけ?」
少女「……あ、れ?」
苦笑いを浮かべながら彼女は「そういえば!」と頭を抱えて見せた。
少女「結構、話せてたんで交換したと思ってましたよー」
バスに乗り込むと、定位置に座って彼女は笑った。
隈は少し残っていたが、その表情から「似非不眠症の件は解決したのだ」と安心した。
淑女「だねー」
少女「何か友達とかに相談出来ない事とか、また相談乗って下さいね」
淑女「うんうん……で、そうだ。不眠症っぽいのは治ったみたい?」
少女「あ、そういえばその話もしましたっけ」
淑女「したよ~それでその翌日だっけ? それから姿見なくなっちゃって」
少女「あーそれであの心配ようだったんですねェ」
合点がいったという表情で頷いてみせる。
図形が苦手と嘆いていた彼女であったが、頭の回転は決して遅くないようだった。
淑女「そうそう。タイミングが丁度過ぎてね」
少女「あ~まだ……っていうか、その、淑女さん」
彼女は冗談を言える子で、また理解出来る子だった。
しかし、冗談を言うべきではない時も日常生活では間々ある。
淑女「どうしたの?」
少女「その……幽霊とかって、信じます?」
彼女は、その使い分けがしっかりと出来る子なのだ。
バスに乗り込むと、定位置に座って彼女は笑った。
隈は少し残っていたが、その表情から「似非不眠症の件は解決したのだ」と安心した。
淑女「だねー」
少女「何か友達とかに相談出来ない事とか、また相談乗って下さいね」
淑女「うんうん……で、そうだ。不眠症っぽいのは治ったみたい?」
少女「あ、そういえばその話もしましたっけ」
淑女「したよ~それでその翌日だっけ? それから姿見なくなっちゃって」
少女「あーそれであの心配ようだったんですねェ」
合点がいったという表情で頷いてみせる。
図形が苦手と嘆いていた彼女であったが、頭の回転は決して遅くないようだった。
淑女「そうそう。タイミングが丁度過ぎてね」
少女「あ~まだ……っていうか、その、淑女さん」
彼女は冗談を言える子で、また理解出来る子だった。
しかし、冗談を言うべきではない時も日常生活では間々ある。
淑女「どうしたの?」
少女「その……幽霊とかって、信じます?」
彼女は、その使い分けがしっかりと出来る子なのだ。
淑女「ゆ、幽霊?」
少女「……」
彼女は小さく頷いた。
先までの笑顔が嘘のように静まり返っている。
少女「なんか……寝てると、多分、女の人……だと思うんですけど」
淑女「……それでどうしたの?」
少女「その、よくあるじゃないですか? 圧し掛かって顔を覗く~みたいな」
淑女「(あー……なんか小さい時にTVで見て泣いたかも……)」
少女「顔はよく見えないんですけど……手、が……首を絞めてくるんです」
淑女「……どうして女の人って?」
私自身は怪談話が苦手である。
しかし、どうにも彼女は真面目な様子で、邪険にする訳にもいかなかった。
少女「……」
彼女は小さく頷いた。
先までの笑顔が嘘のように静まり返っている。
少女「なんか……寝てると、多分、女の人……だと思うんですけど」
淑女「……それでどうしたの?」
少女「その、よくあるじゃないですか? 圧し掛かって顔を覗く~みたいな」
淑女「(あー……なんか小さい時にTVで見て泣いたかも……)」
少女「顔はよく見えないんですけど……手、が……首を絞めてくるんです」
淑女「……どうして女の人って?」
私自身は怪談話が苦手である。
しかし、どうにも彼女は真面目な様子で、邪険にする訳にもいかなかった。
少女「手が、なんか分かるじゃないですか。女の人の手だな~とか、男の人のだ~って?」
淑女「う~ん……うんうん。なんとなく分かった」
少女「金縛りですか、あれとか酷くて……眠れなくって、体調崩しちゃったんです」
淑女「……そうだったんだね」
まったく正直な感想だった。
怪談話に疎い私でも「よくある話」だと感じたし、金縛りに幻覚幻聴を伴うケースは多い。
淑女「今でも、その……そういうことあるの?」
少女「寝込んでた時は、もう完全にダウンしちゃってて……」
淑女「あー有ったかもだし、無かったかもしれないんだ?」
少女「そうですそうです」
彼女は、我に返ったように俯いて耳を掻いた。
その行動に「やっぱり冗談じゃなかったんだ」と、生ぬるいバスの中で震えた。
頭で理解していても、怖いと感じる心理を遮断することは出来ないようだ。
淑女「う~ん……うんうん。なんとなく分かった」
少女「金縛りですか、あれとか酷くて……眠れなくって、体調崩しちゃったんです」
淑女「……そうだったんだね」
まったく正直な感想だった。
怪談話に疎い私でも「よくある話」だと感じたし、金縛りに幻覚幻聴を伴うケースは多い。
淑女「今でも、その……そういうことあるの?」
少女「寝込んでた時は、もう完全にダウンしちゃってて……」
淑女「あー有ったかもだし、無かったかもしれないんだ?」
少女「そうですそうです」
彼女は、我に返ったように俯いて耳を掻いた。
その行動に「やっぱり冗談じゃなかったんだ」と、生ぬるいバスの中で震えた。
頭で理解していても、怖いと感じる心理を遮断することは出来ないようだ。
餃子「天さーーーーーーーーーーん」
―――――――――――――――――完―
―――――――――――――――――完―
少女「あー……やっぱり、ちょっと疲れてるんですかね」
彼女は首を傾げながら苦笑している。
一般常識からズレた話をしていると知っているのだ。
淑女「うーん……私、実はちょっと怖い話とか苦手で……」
少女「あっ! あー……すみません。なんか語り出しちゃって……」
淑女「あ、いいよいいよ。大丈夫、少女も冗談じゃないでしょ?」
少女「……はい」
また俯いてしまった彼女に、私は何と声を掛けるべきなのだろうか。
窓の方を眺めてみるが、真っ暗な景色の中に浮かぶ外灯しか見えない。
まあそうだよなwww
さすがに駄目だよな終わるわ
彼女は首を傾げながら苦笑している。
一般常識からズレた話をしていると知っているのだ。
淑女「うーん……私、実はちょっと怖い話とか苦手で……」
少女「あっ! あー……すみません。なんか語り出しちゃって……」
淑女「あ、いいよいいよ。大丈夫、少女も冗談じゃないでしょ?」
少女「……はい」
また俯いてしまった彼女に、私は何と声を掛けるべきなのだろうか。
窓の方を眺めてみるが、真っ暗な景色の中に浮かぶ外灯しか見えない。
まあそうだよなwww
さすがに駄目だよな終わるわ
新ジャンルじゃないと他の人書かないのか?
タクシーとか飛行機とか船とか自転車もアリだし
作者によっては面白いかもと思ったんだが
時間が駄目な訳じゃないよな人居るし
タクシーとか飛行機とか船とか自転車もアリだし
作者によっては面白いかもと思ったんだが
時間が駄目な訳じゃないよな人居るし
いかにもな文学を書かれてもVIPの連中にはレスしにくいんだと思う
俺はこういうのも好きだけどね。
俺はこういうのも好きだけどね。
まあいいや続けよ
淑女「なんか嫌な話だねェ……」
何も考えずに携帯を取り出すと、私は手の中でそれを遊んだ。
二の句が継げない。バスのエンジン音だけが、耳に嫌らしくこびり付いて来る。
淑女「(なんて言ってあげればいいんだろ?)」
私は怪談話を「話のネタだよ~」という雰囲気でならば楽しめる。
確かに苦手としているが、周囲が盛り上がっているならば便乗すべきだろう。
しかし相談という形で、この手の話をされると話は変わってくる。
少女「あの……まあ、こういう……話だったんですがー」
淑女「うん……」
少女「どうです……ちょっと、怖かったですかね?」
淑女「うーん……背筋、寒くなったかも……」
嘘も方便である。事実、背筋に嫌な悪寒を感じたのだ。
窓に映った私自身に「どうしようか?」と目で問いかけるが、当然返答はない。
淑女「なんか嫌な話だねェ……」
何も考えずに携帯を取り出すと、私は手の中でそれを遊んだ。
二の句が継げない。バスのエンジン音だけが、耳に嫌らしくこびり付いて来る。
淑女「(なんて言ってあげればいいんだろ?)」
私は怪談話を「話のネタだよ~」という雰囲気でならば楽しめる。
確かに苦手としているが、周囲が盛り上がっているならば便乗すべきだろう。
しかし相談という形で、この手の話をされると話は変わってくる。
少女「あの……まあ、こういう……話だったんですがー」
淑女「うん……」
少女「どうです……ちょっと、怖かったですかね?」
淑女「うーん……背筋、寒くなったかも……」
嘘も方便である。事実、背筋に嫌な悪寒を感じたのだ。
窓に映った私自身に「どうしようか?」と目で問いかけるが、当然返答はない。
少女「……っなーんちゃって!」
直後、彼女に背中を小突かれた。
思いがけない衝撃に、前のめりになって携帯が地面を転がった。
少女「あっ……ご、ごめんなさい」
淑女「大丈夫だけど……あれ、嘘?」
少女「いやー……なんかわたしの学校って文化祭早くって」
淑女「……もしかして出し物で?」
彼女の口を借りるならば「お化け屋敷をするんですよ」とのことだった。
お客さんに怪談話を聞かせた後、教室内を探索するという形式らしい。
どこかで聞いた感じのお化け屋敷だが、友人や何かと行った事があるのかもしれない。
直後、彼女に背中を小突かれた。
思いがけない衝撃に、前のめりになって携帯が地面を転がった。
少女「あっ……ご、ごめんなさい」
淑女「大丈夫だけど……あれ、嘘?」
少女「いやー……なんかわたしの学校って文化祭早くって」
淑女「……もしかして出し物で?」
彼女の口を借りるならば「お化け屋敷をするんですよ」とのことだった。
お客さんに怪談話を聞かせた後、教室内を探索するという形式らしい。
どこかで聞いた感じのお化け屋敷だが、友人や何かと行った事があるのかもしれない。
淑女「なんだー……重かったから本気になっちゃったよー」
少女「あははっ。でもこれじゃ教室で使えませんねー」
どうやら私で試験運用したようだったが、彼女はそう言って苦笑した。
例の癖が出ている彼女を横目に、我知れず浅い溜息をこぼす。
淑女「(空気悪くなったなぁーって思うくらいなら、話さなきゃいいのに)」
少女「あ~……また新しい話探さないと……」
この後、特に主だった会話は無い。
エンジン音や軋みが、思い掛けないほど大きな音を立てて、私たちを揺らしていた。
少女「あははっ。でもこれじゃ教室で使えませんねー」
どうやら私で試験運用したようだったが、彼女はそう言って苦笑した。
例の癖が出ている彼女を横目に、我知れず浅い溜息をこぼす。
淑女「(空気悪くなったなぁーって思うくらいなら、話さなきゃいいのに)」
少女「あ~……また新しい話探さないと……」
この後、特に主だった会話は無い。
エンジン音や軋みが、思い掛けないほど大きな音を立てて、私たちを揺らしていた。
少女「昨日はすいませんでした」
開口一番に彼女は頭を下げた。
年下である彼女に気を使われてしまうと、逆に申し訳ない気持ちが湧き上がる。
淑女「気にしないでいいよ。ちょーっと眠れなかったけどね?」
少女「あははっ。いやーもう本当、すいませんっ」
冗談で紛らわせたが、彼女も分かってくれたようだった。
相変わらず人の居ない終バス待ちの停留所で、私たちは久しぶりの談笑をする。
少女「えー! スイパラって行った事ないんですけど、そんな感じなんですか?」
淑女「そうなのかも……お皿に盛ってきて食べるでしょ? もう、み~んな無言」
少女「え、え。でもやっぱり会話……ありますよね?」
淑女「周りはねぇー私たちはアレもコレも食べたい! で、なんか頑張ってた」
あまり遊びに行けないという彼女は「行ってみたいなぁ」と悔しそうだった。
「今度連れて行ってあげるよ」と肩を叩いてあげるのは、社交辞令として当然だろう。
開口一番に彼女は頭を下げた。
年下である彼女に気を使われてしまうと、逆に申し訳ない気持ちが湧き上がる。
淑女「気にしないでいいよ。ちょーっと眠れなかったけどね?」
少女「あははっ。いやーもう本当、すいませんっ」
冗談で紛らわせたが、彼女も分かってくれたようだった。
相変わらず人の居ない終バス待ちの停留所で、私たちは久しぶりの談笑をする。
少女「えー! スイパラって行った事ないんですけど、そんな感じなんですか?」
淑女「そうなのかも……お皿に盛ってきて食べるでしょ? もう、み~んな無言」
少女「え、え。でもやっぱり会話……ありますよね?」
淑女「周りはねぇー私たちはアレもコレも食べたい! で、なんか頑張ってた」
あまり遊びに行けないという彼女は「行ってみたいなぁ」と悔しそうだった。
「今度連れて行ってあげるよ」と肩を叩いてあげるのは、社交辞令として当然だろう。
>>32
(´;ω;`) 君にはいつも助けられるな…
(´;ω;`) 君にはいつも助けられるな…
淑女「それにしても本当に人居ないよね」
少女「終バスって言っても、まだ二十二時……半ですか」
定位置に腰掛けた私たちは薄暗い車内を見渡した。
大学に入ってから随分と経つが、終バスに私たち以外の人影を見ることは少ない。
淑女「……もしかして凄い田舎?」
少女「えー? そんな事無いと思いますけど……どうなんでしょーね?」
淑女「私も自分の住んでる所を田舎って言われたらアレだけど……」
少女「ですねェ……まあ駅前に大きなマンションがありますし」
首だけで振り返って、背後に流れていく景色を眺めた。
暗闇にそびえ立つ明かりが、摩天楼を作っているかのように錯覚する。
淑女「……確かにこっちの方は田舎かもね」
少女「……まー、明かりは……少ないですよねぇ」
少女「終バスって言っても、まだ二十二時……半ですか」
定位置に腰掛けた私たちは薄暗い車内を見渡した。
大学に入ってから随分と経つが、終バスに私たち以外の人影を見ることは少ない。
淑女「……もしかして凄い田舎?」
少女「えー? そんな事無いと思いますけど……どうなんでしょーね?」
淑女「私も自分の住んでる所を田舎って言われたらアレだけど……」
少女「ですねェ……まあ駅前に大きなマンションがありますし」
首だけで振り返って、背後に流れていく景色を眺めた。
暗闇にそびえ立つ明かりが、摩天楼を作っているかのように錯覚する。
淑女「……確かにこっちの方は田舎かもね」
少女「……まー、明かりは……少ないですよねぇ」
この時間は落ちなくていいな
書くペースが遅くて申し訳ない
淑女「そういえばさ」
季節が夏に近づくにつれて車内の温度は上がっていく。
お情け程度ではあったが、扇風機の涼風はせめてもの救いだった。
少女「あー結局、なんか病院の怖い話が採用されましたよ」
淑女「やっぱりそうなっちゃうよねェ」
少女「そもそも怖い話自体が集まらなくって」
淑女「あれ? そうなんだ?」
少女「あ、話は集まるんですけど……形に出来ないっていうか」
淑女「……あーお化け屋敷向きじゃないのね」
「病院側の対応は最悪。死亡事故が数多く隠蔽された」という設定らしい。
おどろおどろしく話してくれた彼女であったが、持ち前の明るさが怖さを半減させていた。
書くペースが遅くて申し訳ない
淑女「そういえばさ」
季節が夏に近づくにつれて車内の温度は上がっていく。
お情け程度ではあったが、扇風機の涼風はせめてもの救いだった。
少女「あー結局、なんか病院の怖い話が採用されましたよ」
淑女「やっぱりそうなっちゃうよねェ」
少女「そもそも怖い話自体が集まらなくって」
淑女「あれ? そうなんだ?」
少女「あ、話は集まるんですけど……形に出来ないっていうか」
淑女「……あーお化け屋敷向きじゃないのね」
「病院側の対応は最悪。死亡事故が数多く隠蔽された」という設定らしい。
おどろおどろしく話してくれた彼女であったが、持ち前の明るさが怖さを半減させていた。
少女「……って感じになりそうです。どうでした?」
淑女「……いや、一人暮らしには……ちょっとキツいかも」
半減させていた、とは言っても苦手な物に変わりは無い。
それなりで聞いていたつもりが、予想以上にのめり込んでしまった。
少女「あーそういえば苦手なんですっけ?」
淑女「苦手だなー……あれ、リングだっけ? あれとかも怖くて怖くて……」
少女「あ~貞子でしたっけ……あの髪の長い、目がこーいう……」
淑女「あー似てる似てるっ……ってこうして見ると面白い表情だね」
彼女は目を見開いて下を見る、と言った有名なシーンの真似をしてみせた。
気味の悪さだけが残っている映画だったが、顔真似だけでは酷く滑稽だ。
淑女「……いや、一人暮らしには……ちょっとキツいかも」
半減させていた、とは言っても苦手な物に変わりは無い。
それなりで聞いていたつもりが、予想以上にのめり込んでしまった。
少女「あーそういえば苦手なんですっけ?」
淑女「苦手だなー……あれ、リングだっけ? あれとかも怖くて怖くて……」
少女「あ~貞子でしたっけ……あの髪の長い、目がこーいう……」
淑女「あー似てる似てるっ……ってこうして見ると面白い表情だね」
彼女は目を見開いて下を見る、と言った有名なシーンの真似をしてみせた。
気味の悪さだけが残っている映画だったが、顔真似だけでは酷く滑稽だ。
少女「いやでも大変だったんですよー話を集めるの」
淑女「大変って?」
彼女の話では「実行委員が何がなんでも成功させたいと意気込んでいる」
「だから各班ごとに三つの怪談を提出するように」と、要は宿題が出されたらしい。
淑女「うわ……なんていうか、頑張ってるんだァ……」
少女「まあ私の班……結構、カッコいい男子居たんでラッキーでしたけど」
少女「それでー私の家でDVD見ることになったんですけどね」
淑女「うんうん」
「上映会当日は雨で最悪だったんスよー」と、彼女は耳を掻きながら俯いた。
適当に怖そうなDVDを一同で持ち寄ったわけだが、状況が一致する話が多かったそうだ。
雨天の日に自宅でというシチュエーションは、確かに逃げ場が無いように感じられる。
少女「もう『なんで逃げないのー? そこ開けちゃうのー?』って突っ込みまくりです」
淑女「あ~分かるかも。あの手の話の人たちって、なぜか勇気あるよね」
淑女「大変って?」
彼女の話では「実行委員が何がなんでも成功させたいと意気込んでいる」
「だから各班ごとに三つの怪談を提出するように」と、要は宿題が出されたらしい。
淑女「うわ……なんていうか、頑張ってるんだァ……」
少女「まあ私の班……結構、カッコいい男子居たんでラッキーでしたけど」
少女「それでー私の家でDVD見ることになったんですけどね」
淑女「うんうん」
「上映会当日は雨で最悪だったんスよー」と、彼女は耳を掻きながら俯いた。
適当に怖そうなDVDを一同で持ち寄ったわけだが、状況が一致する話が多かったそうだ。
雨天の日に自宅でというシチュエーションは、確かに逃げ場が無いように感じられる。
少女「もう『なんで逃げないのー? そこ開けちゃうのー?』って突っ込みまくりです」
淑女「あ~分かるかも。あの手の話の人たちって、なぜか勇気あるよね」
誇張表現はあれど、一歩引いて見ている私たちが怖いのだ。
実際に自分がその場に居合わせたとすれば、間違いなく彼らとは逆の行動をする。
淑女「それで、そのカッコいい男子とは仲良くなれた?」
少女「あーそうだ! それが聞いてくださいよ!」
淑女「え? 何、まさか進展したとか?」
少女「違うんですよ。あの、その男子、なんかやたら怪談話に詳しい人みたいで」
彼女のその次の台詞を、私はなぜか鮮明に想像出来た。
考えてみれば不得手の私が、わざわざ話題を振った事からオカしかったのだろう。
少女「男子に『少女の家、なんか居るんじゃない?』ってメール来たんですよ」
実際に自分がその場に居合わせたとすれば、間違いなく彼らとは逆の行動をする。
淑女「それで、そのカッコいい男子とは仲良くなれた?」
少女「あーそうだ! それが聞いてくださいよ!」
淑女「え? 何、まさか進展したとか?」
少女「違うんですよ。あの、その男子、なんかやたら怪談話に詳しい人みたいで」
彼女のその次の台詞を、私はなぜか鮮明に想像出来た。
考えてみれば不得手の私が、わざわざ話題を振った事からオカしかったのだろう。
少女「男子に『少女の家、なんか居るんじゃない?』ってメール来たんですよ」
淑女「え……それって、前話してくれた……」
少女「……はい、多分」
淑女「えー? でもあれ嘘だって言ってなかったっけ?」
少女「それはー……なんか、淑女さん怖がってたし……」
「あの時は冗談という形で取り繕った」と、何故か頭を下げられた。
まず、ここで謝るべきは無用の気遣いをさせてしまった私の方である。
しかし、そういう雰囲気でもなかった。謝罪を後回しにして、彼女に先を促す。
少女「それが、どうやら男の霊らしいんですよ」
淑女「その男子が言ったの?」
少女「そうなんですよね。わたしは女の人だと思ってたんですけど……」
淑女「(……いや、それを信用するのもどうかと思うけど)」
少女「……はい、多分」
淑女「えー? でもあれ嘘だって言ってなかったっけ?」
少女「それはー……なんか、淑女さん怖がってたし……」
「あの時は冗談という形で取り繕った」と、何故か頭を下げられた。
まず、ここで謝るべきは無用の気遣いをさせてしまった私の方である。
しかし、そういう雰囲気でもなかった。謝罪を後回しにして、彼女に先を促す。
少女「それが、どうやら男の霊らしいんですよ」
淑女「その男子が言ったの?」
少女「そうなんですよね。わたしは女の人だと思ってたんですけど……」
淑女「(……いや、それを信用するのもどうかと思うけど)」
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