元スレ古ジャンル「乗り物にて」
新ジャンル覧 / PC版 /みんなの評価 :
1 :
少女「最近、数Ⅱが難しいんですよねー……」
女子高生だという彼女は、一番後ろの席に座るとすぐに口を開いた。
運動系の部活動でもやっているだろう。短くした黒髪が活発的で、豊かな表情には好感が持てる。
そんな彼女と私の奇妙な交友が始まったのは、まだ花冷えの厳しい頃であった。
少女「私ってグラフ苦手なんです。だから微分……」
大学に通うために一人暮らしを始めたが、足としてバスを利用していた。
自宅近辺から駅前のバス亭に向かうバスで、私の大学はそこから徒歩数分の場所にある。
彼女と顔を合わせるようになったのは、自宅に向かう最終バスの中でだった。
少女「って! 今度のテストやばいんスよー……」
先に声を掛けたのは私だろうか、それとも彼女なのか。
私の座席に転がってきた携帯の持ち主が彼女であった事が、切っ掛けだったのは間違いない。
少女「淑女さんって○○大ですよね? 今度……」
社交辞令から始まった会話が、彼女のテンポに引き摺られる形で盛り上がっていった。
今日で何回目のお喋りになるかは定かではないが、気安く声を掛け合える程度には仲良くなったのだろう。
少女「なんですけど……淑女さん? 話、聞いてます?」
淑女「……え? あ……ご、ごめん。ちょっとボーっとしちゃってた」
少女「あれあれー? もしかして彼氏の事とかですかァー?」
淑女「あ~それだったら嬉しいんだけどなァ……私モテないからさー」
裏表の無さそうな彼女の表情は、年下特有の愛らしさがある。
年下相手の会話で感じていた気付かれを、彼女にはあまり感じなかった。
2 = 1 :
少女「そうですかー? なんか年下の男子にモテそうですよ?」
淑女「お姉さんお姉さんしてるとか?」
少女「そーそー! なんかスーツ姿でビシッとした感じ!」
淑女「……う~ん。男だったら全体的にそういうの好きそうだけど」
少女「あー就活してる女の人って格好良いですもんね~」
淑女「少女もそう思う? なーんか周りの男友達は皆そう言ってる」
少女「あははっ。男子ってそういうのに弱いですもんねーっ」
淑女「……あ、そういえば少女って彼氏とか居るの?」
少女「はい?」
淑女「いや、なんか聞いた事ないなーって思って」
少女「いやーわたしは部活一筋ッスから~」
淑女「……あ~? なんか隠してそうな顔してるぞ?」
少女「いやいやっ。わたし、ほんっとモテないですもん!」
淑女「(……少女の周りの男共は見る目ないなー)」
3 = 1 :
淑女「そういえば、さっきのなんだっけ……数学だっけ?」
少女「あっそうそう! そうなんですよォー……頭悪くてダメッスね」
淑女「う~ん。私も数学苦手なんだよねェ」
少女「あれ? なんか意外ですね?」
淑女「ガリ勉なんてした事ないからなー大学で数学使わないし」
少女「あちゃー……なんか塾でも付いていけてないンですよ」
淑女「塾言ってるんだ?」
少女「言ってなかったですっけ。××塾ですよ」
淑女「××塾……ってまた有名なトコ行ってるんだー?」
少女「あははっ。名前だけは有名ですけど、わたしのクラスは下の方ですよー」
少女「それに、あそこって生徒数が多いから質問も出来なくって大変です」
淑女「(なんかしっかり勉強してるんだなー……偉い偉い)」
4 :
キモい
終了していいかな?
5 :
せめて書き溜めてから貼れよ
6 :
読むぞ期待
7 = 1 :
仲良くなったと言っても他愛ない会話ばかりだった。
ドラマや小説では盛り上げ所なのかも知れないが、そう上手く人生は出来ていない。
淑女「あははは、そうなんだー……って、私つぎだね?」
少女「もーですかー? 淑女さんと話し始めてから時間経つのが早いですね」
彼女は裾からほんの少し出した右手で、耳を掻いた。
しばらく話していて分かった事だが、どうやら彼女の癖のような物らしい。
難しい相談事など、暗い方向の話をする時に多く見られた。
淑女「私も思うなー……ま、また明日だね」
少女「ですねェ。あーこっから一人だー」
彼女の家はこの先にあるらしい。
当然、他愛無い会話ばかりの仲の私達である。詳しくは知らない。
淑女「……よし。じゃあまた明日」
少女「うッス。気を付けて下さいね~痴漢とかっ」
淑女「大丈夫大丈夫。家、近いから」
少女「いやーでも本当、最近多いらしいんですよ」
噂話をするかのように彼女は声を潜めた。
私は少しだけ悪寒を感じながら「そっか。分かった気をつける」とだけ答えて、バスを降りた。
8 = 1 :
書き溜めてないのはゴメンなさい
平日深夜で人少ないだろうしと勝手やってる
朝になったら自然落ちだから目を瞑ってくれ
9 = 1 :
今夜もバスでの鉢合わせとなった。
ここの所、連日連夜で顔を付き合わせているから、訝しく思わないでもない。
彼女は、私に時間を合わせているのだろうか。
淑女「今日も塾?」
少女「あ、違うます違います」
少女「今日は部活が長引いて……友達と晩御飯、食べてきました」
淑女「あ~……通りで、襟元にソースの後が……」
少女「えっ? え、マジっスか? ……うわ、やっちゃってる!?」
淑女「ふふ。早くクリーニングに出さないとね」
彼女の表情は忙しないが、見ていて飽きなかった。
運動系の部活に入っているとは思っていたが、剣道部に属していると照れ臭そうに笑った。
淑女「でも剣道って匂いすごくない?」
少女「あ~慣れちゃいましたよ。小中高でやってましたから」
淑女「え? 小学校って剣道部……部? っていうか、そういうのあったの?」
少女「小学校の時は近くの道場でー……まあ親に勧められたんじゃないッスかね」
淑女「へーじゃあ長いんだね?」
少女「長いだけで弱いですけどねー……後輩の方が体格も良くて、泣かされてます」
彼女は大袈裟に目元を拭って見せた。
そういえば彼女の掌はゴツゴツと固かったように思える。
私に剣道をよく知らないが、彼女が頑張っている事だけは容易に想像出来た。
10 = 1 :
少女「そういえば」
彼女の様子が変わり始めたのは、それから数日後の事だった。
最初こそ「疲れているのだろうか」と気を使っていたが、どうも腑に落ちなかった。
少女「最近、よく眠れないんですよね」
淑女「本当に? 少女、疲れすぎてるんじゃない?」
彼女の目元にはくっきりと隈が出来ていた。
出会った当初の快活さが感じられず、心無しか背筋も曲がって来たように見える。
少女「かも……しれないですけど。なんか、寝るのが怖いんですよ」
淑女「……夢見が悪い、とか?」
少女「あー……うん。多分、そんな感じです」
淑女「そっかー……身体をリラックスさせて寝ると良いかもよ?」
少女「……そうなんですか?」
淑女「うん。お風呂でマッサージとかしてあげて、ぐっすり眠れば夢も見ないって聞くし」
俄かに彼女の表情が明るくなった。
私に気を使ってくれたのだろう。「早速試してみますね」と疲れた笑顔を見せてくれた。
12 :
>>11
記念がっ!
13 = 1 :
次の夜、バス亭に彼女の姿は無かった。
あまり悪い方に考える気にもなれず、たまたま時間がズレたのだろうと自分を納得させた。
そもそも今までが異常だったのだ。バイトの同僚と似たような物である。
淑女「別に会わないなら会わないでも……これで普通よね」
その調子で一週間が過ぎようとしていた夜である。
少女「あ……淑女さんっ!」
淑女「あー少女! 久しぶりじゃない、どうしたの?」
彼女の口から出たのは「風邪引いて寝込んでました」という言葉だった。
「さすがに一週間も姿を見せないのはオカしい」と考え始めていた私は、その軽さに拍子抜けである。
淑女「そうだったんだ~……あー良かったー」
少女「あははっ。風邪で寝込んだのなんて久しぶりですよー」
淑女「事故にでもあったのかって心配しちゃったっ」
少女「大袈裟ですよ~……でも、心配掛けてすいませんでしたっ」
彼女は慇懃にお辞儀をしてみせた。
心配に対してお礼を言われると、あまり悪い気はしない。
淑女「でも何事も無くてよかった」
少女「そんなに心配してくれたなら連絡くれれば良いのにー」
淑女「……あれ? 私たちって番号交換したっけ?」
少女「……あ、れ?」
苦笑いを浮かべながら彼女は「そういえば!」と頭を抱えて見せた。
14 = 1 :
少女「結構、話せてたんで交換したと思ってましたよー」
バスに乗り込むと、定位置に座って彼女は笑った。
隈は少し残っていたが、その表情から「似非不眠症の件は解決したのだ」と安心した。
淑女「だねー」
少女「何か友達とかに相談出来ない事とか、また相談乗って下さいね」
淑女「うんうん……で、そうだ。不眠症っぽいのは治ったみたい?」
少女「あ、そういえばその話もしましたっけ」
淑女「したよ~それでその翌日だっけ? それから姿見なくなっちゃって」
少女「あーそれであの心配ようだったんですねェ」
合点がいったという表情で頷いてみせる。
図形が苦手と嘆いていた彼女であったが、頭の回転は決して遅くないようだった。
淑女「そうそう。タイミングが丁度過ぎてね」
少女「あ~まだ……っていうか、その、淑女さん」
彼女は冗談を言える子で、また理解出来る子だった。
しかし、冗談を言うべきではない時も日常生活では間々ある。
淑女「どうしたの?」
少女「その……幽霊とかって、信じます?」
彼女は、その使い分けがしっかりと出来る子なのだ。
15 = 1 :
淑女「ゆ、幽霊?」
少女「……」
彼女は小さく頷いた。
先までの笑顔が嘘のように静まり返っている。
少女「なんか……寝てると、多分、女の人……だと思うんですけど」
淑女「……それでどうしたの?」
少女「その、よくあるじゃないですか? 圧し掛かって顔を覗く~みたいな」
淑女「(あー……なんか小さい時にTVで見て泣いたかも……)」
少女「顔はよく見えないんですけど……手、が……首を絞めてくるんです」
淑女「……どうして女の人って?」
私自身は怪談話が苦手である。
しかし、どうにも彼女は真面目な様子で、邪険にする訳にもいかなかった。
16 = 1 :
少女「手が、なんか分かるじゃないですか。女の人の手だな~とか、男の人のだ~って?」
淑女「う~ん……うんうん。なんとなく分かった」
少女「金縛りですか、あれとか酷くて……眠れなくって、体調崩しちゃったんです」
淑女「……そうだったんだね」
まったく正直な感想だった。
怪談話に疎い私でも「よくある話」だと感じたし、金縛りに幻覚幻聴を伴うケースは多い。
淑女「今でも、その……そういうことあるの?」
少女「寝込んでた時は、もう完全にダウンしちゃってて……」
淑女「あー有ったかもだし、無かったかもしれないんだ?」
少女「そうですそうです」
彼女は、我に返ったように俯いて耳を掻いた。
その行動に「やっぱり冗談じゃなかったんだ」と、生ぬるいバスの中で震えた。
頭で理解していても、怖いと感じる心理を遮断することは出来ないようだ。
17 :
餃子「天さーーーーーーーーーーん」
―――――――――――――――――完―
18 = 1 :
少女「あー……やっぱり、ちょっと疲れてるんですかね」
彼女は首を傾げながら苦笑している。
一般常識からズレた話をしていると知っているのだ。
淑女「うーん……私、実はちょっと怖い話とか苦手で……」
少女「あっ! あー……すみません。なんか語り出しちゃって……」
淑女「あ、いいよいいよ。大丈夫、少女も冗談じゃないでしょ?」
少女「……はい」
また俯いてしまった彼女に、私は何と声を掛けるべきなのだろうか。
窓の方を眺めてみるが、真っ暗な景色の中に浮かぶ外灯しか見えない。
まあそうだよなwww
さすがに駄目だよな終わるわ
20 :
ちょ
読んでる読んでる
23 = 1 :
新ジャンルじゃないと他の人書かないのか?
タクシーとか飛行機とか船とか自転車もアリだし
作者によっては面白いかもと思ったんだが
時間が駄目な訳じゃないよな人居るし
25 = 1 :
まあいいや続けよ
淑女「なんか嫌な話だねェ……」
何も考えずに携帯を取り出すと、私は手の中でそれを遊んだ。
二の句が継げない。バスのエンジン音だけが、耳に嫌らしくこびり付いて来る。
淑女「(なんて言ってあげればいいんだろ?)」
私は怪談話を「話のネタだよ~」という雰囲気でならば楽しめる。
確かに苦手としているが、周囲が盛り上がっているならば便乗すべきだろう。
しかし相談という形で、この手の話をされると話は変わってくる。
少女「あの……まあ、こういう……話だったんですがー」
淑女「うん……」
少女「どうです……ちょっと、怖かったですかね?」
淑女「うーん……背筋、寒くなったかも……」
嘘も方便である。事実、背筋に嫌な悪寒を感じたのだ。
窓に映った私自身に「どうしようか?」と目で問いかけるが、当然返答はない。
29 = 1 :
少女「……っなーんちゃって!」
直後、彼女に背中を小突かれた。
思いがけない衝撃に、前のめりになって携帯が地面を転がった。
少女「あっ……ご、ごめんなさい」
淑女「大丈夫だけど……あれ、嘘?」
少女「いやー……なんかわたしの学校って文化祭早くって」
淑女「……もしかして出し物で?」
彼女の口を借りるならば「お化け屋敷をするんですよ」とのことだった。
お客さんに怪談話を聞かせた後、教室内を探索するという形式らしい。
どこかで聞いた感じのお化け屋敷だが、友人や何かと行った事があるのかもしれない。
30 = 1 :
淑女「なんだー……重かったから本気になっちゃったよー」
少女「あははっ。でもこれじゃ教室で使えませんねー」
どうやら私で試験運用したようだったが、彼女はそう言って苦笑した。
例の癖が出ている彼女を横目に、我知れず浅い溜息をこぼす。
淑女「(空気悪くなったなぁーって思うくらいなら、話さなきゃいいのに)」
少女「あ~……また新しい話探さないと……」
この後、特に主だった会話は無い。
エンジン音や軋みが、思い掛けないほど大きな音を立てて、私たちを揺らしていた。
33 = 1 :
少女「昨日はすいませんでした」
開口一番に彼女は頭を下げた。
年下である彼女に気を使われてしまうと、逆に申し訳ない気持ちが湧き上がる。
淑女「気にしないでいいよ。ちょーっと眠れなかったけどね?」
少女「あははっ。いやーもう本当、すいませんっ」
冗談で紛らわせたが、彼女も分かってくれたようだった。
相変わらず人の居ない終バス待ちの停留所で、私たちは久しぶりの談笑をする。
少女「えー! スイパラって行った事ないんですけど、そんな感じなんですか?」
淑女「そうなのかも……お皿に盛ってきて食べるでしょ? もう、み~んな無言」
少女「え、え。でもやっぱり会話……ありますよね?」
淑女「周りはねぇー私たちはアレもコレも食べたい! で、なんか頑張ってた」
あまり遊びに行けないという彼女は「行ってみたいなぁ」と悔しそうだった。
「今度連れて行ってあげるよ」と肩を叩いてあげるのは、社交辞令として当然だろう。
35 :
37 = 1 :
淑女「それにしても本当に人居ないよね」
少女「終バスって言っても、まだ二十二時……半ですか」
定位置に腰掛けた私たちは薄暗い車内を見渡した。
大学に入ってから随分と経つが、終バスに私たち以外の人影を見ることは少ない。
淑女「……もしかして凄い田舎?」
少女「えー? そんな事無いと思いますけど……どうなんでしょーね?」
淑女「私も自分の住んでる所を田舎って言われたらアレだけど……」
少女「ですねェ……まあ駅前に大きなマンションがありますし」
首だけで振り返って、背後に流れていく景色を眺めた。
暗闇にそびえ立つ明かりが、摩天楼を作っているかのように錯覚する。
淑女「……確かにこっちの方は田舎かもね」
少女「……まー、明かりは……少ないですよねぇ」
41 = 1 :
この時間は落ちなくていいな
書くペースが遅くて申し訳ない
淑女「そういえばさ」
季節が夏に近づくにつれて車内の温度は上がっていく。
お情け程度ではあったが、扇風機の涼風はせめてもの救いだった。
少女「あー結局、なんか病院の怖い話が採用されましたよ」
淑女「やっぱりそうなっちゃうよねェ」
少女「そもそも怖い話自体が集まらなくって」
淑女「あれ? そうなんだ?」
少女「あ、話は集まるんですけど……形に出来ないっていうか」
淑女「……あーお化け屋敷向きじゃないのね」
「病院側の対応は最悪。死亡事故が数多く隠蔽された」という設定らしい。
おどろおどろしく話してくれた彼女であったが、持ち前の明るさが怖さを半減させていた。
42 = 1 :
少女「……って感じになりそうです。どうでした?」
淑女「……いや、一人暮らしには……ちょっとキツいかも」
半減させていた、とは言っても苦手な物に変わりは無い。
それなりで聞いていたつもりが、予想以上にのめり込んでしまった。
少女「あーそういえば苦手なんですっけ?」
淑女「苦手だなー……あれ、リングだっけ? あれとかも怖くて怖くて……」
少女「あ~貞子でしたっけ……あの髪の長い、目がこーいう……」
淑女「あー似てる似てるっ……ってこうして見ると面白い表情だね」
彼女は目を見開いて下を見る、と言った有名なシーンの真似をしてみせた。
気味の悪さだけが残っている映画だったが、顔真似だけでは酷く滑稽だ。
43 :
こういうの好きだ
>>39-40
ガッ
46 = 1 :
少女「いやでも大変だったんですよー話を集めるの」
淑女「大変って?」
彼女の話では「実行委員が何がなんでも成功させたいと意気込んでいる」
「だから各班ごとに三つの怪談を提出するように」と、要は宿題が出されたらしい。
淑女「うわ……なんていうか、頑張ってるんだァ……」
少女「まあ私の班……結構、カッコいい男子居たんでラッキーでしたけど」
少女「それでー私の家でDVD見ることになったんですけどね」
淑女「うんうん」
「上映会当日は雨で最悪だったんスよー」と、彼女は耳を掻きながら俯いた。
適当に怖そうなDVDを一同で持ち寄ったわけだが、状況が一致する話が多かったそうだ。
雨天の日に自宅でというシチュエーションは、確かに逃げ場が無いように感じられる。
少女「もう『なんで逃げないのー? そこ開けちゃうのー?』って突っ込みまくりです」
淑女「あ~分かるかも。あの手の話の人たちって、なぜか勇気あるよね」
48 = 1 :
誇張表現はあれど、一歩引いて見ている私たちが怖いのだ。
実際に自分がその場に居合わせたとすれば、間違いなく彼らとは逆の行動をする。
淑女「それで、そのカッコいい男子とは仲良くなれた?」
少女「あーそうだ! それが聞いてくださいよ!」
淑女「え? 何、まさか進展したとか?」
少女「違うんですよ。あの、その男子、なんかやたら怪談話に詳しい人みたいで」
彼女のその次の台詞を、私はなぜか鮮明に想像出来た。
考えてみれば不得手の私が、わざわざ話題を振った事からオカしかったのだろう。
少女「男子に『少女の家、なんか居るんじゃない?』ってメール来たんですよ」
49 = 1 :
淑女「え……それって、前話してくれた……」
少女「……はい、多分」
淑女「えー? でもあれ嘘だって言ってなかったっけ?」
少女「それはー……なんか、淑女さん怖がってたし……」
「あの時は冗談という形で取り繕った」と、何故か頭を下げられた。
まず、ここで謝るべきは無用の気遣いをさせてしまった私の方である。
しかし、そういう雰囲気でもなかった。謝罪を後回しにして、彼女に先を促す。
少女「それが、どうやら男の霊らしいんですよ」
淑女「その男子が言ったの?」
少女「そうなんですよね。わたしは女の人だと思ってたんですけど……」
淑女「(……いや、それを信用するのもどうかと思うけど)」
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