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    元スレ古ジャンル「乗り物にて」

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    1 :

    「最近、数Ⅱが難しいんですよねー……」

     女子高生だという彼女は、一番後ろの席に座るとすぐに口を開いた。
     運動系の部活動でもやっているだろう。短くした黒髪が活発的で、豊かな表情には好感が持てる。
     そんな彼女と私の奇妙な交友が始まったのは、まだ花冷えの厳しい頃であった。

    「私ってグラフ苦手なんです。だから微分……」

     大学に通うために一人暮らしを始めたが、足としてバスを利用していた。
     自宅近辺から駅前のバス亭に向かうバスで、私の大学はそこから徒歩数分の場所にある。
     彼女と顔を合わせるようになったのは、自宅に向かう最終バスの中でだった。

    「って! 今度のテストやばいんスよー……」

     先に声を掛けたのは私だろうか、それとも彼女なのか。
     私の座席に転がってきた携帯の持ち主が彼女であった事が、切っ掛けだったのは間違いない。

    「淑女さんって○○大ですよね? 今度……」

     社交辞令から始まった会話が、彼女のテンポに引き摺られる形で盛り上がっていった。
     今日で何回目のお喋りになるかは定かではないが、気安く声を掛け合える程度には仲良くなったのだろう。

    「なんですけど……淑女さん? 話、聞いてます?」
    「……え? あ……ご、ごめん。ちょっとボーっとしちゃってた」

    「あれあれー? もしかして彼氏の事とかですかァー?」
    「あ~それだったら嬉しいんだけどなァ……私モテないからさー」

     裏表の無さそうな彼女の表情は、年下特有の愛らしさがある。
     年下相手の会話で感じていた気付かれを、彼女にはあまり感じなかった。

    2 = 1 :

    「そうですかー? なんか年下の男子にモテそうですよ?」
    「お姉さんお姉さんしてるとか?」

    「そーそー! なんかスーツ姿でビシッとした感じ!」
    「……う~ん。男だったら全体的にそういうの好きそうだけど」

    「あー就活してる女の人って格好良いですもんね~」
    「少女もそう思う? なーんか周りの男友達は皆そう言ってる」

    「あははっ。男子ってそういうのに弱いですもんねーっ」
    「……あ、そういえば少女って彼氏とか居るの?」

    「はい?」
    「いや、なんか聞いた事ないなーって思って」

    「いやーわたしは部活一筋ッスから~」
    「……あ~? なんか隠してそうな顔してるぞ?」

    「いやいやっ。わたし、ほんっとモテないですもん!」
    「(……少女の周りの男共は見る目ないなー)」

    3 = 1 :

    「そういえば、さっきのなんだっけ……数学だっけ?」
    「あっそうそう! そうなんですよォー……頭悪くてダメッスね」

    「う~ん。私も数学苦手なんだよねェ」
    「あれ? なんか意外ですね?」

    「ガリ勉なんてした事ないからなー大学で数学使わないし」
    「あちゃー……なんか塾でも付いていけてないンですよ」

    「塾言ってるんだ?」
    「言ってなかったですっけ。××塾ですよ」

    「××塾……ってまた有名なトコ行ってるんだー?」
    「あははっ。名前だけは有名ですけど、わたしのクラスは下の方ですよー」

    「それに、あそこって生徒数が多いから質問も出来なくって大変です」
    「(なんかしっかり勉強してるんだなー……偉い偉い)」

    4 :

    キモい

    終了していいかな?

    5 :

    せめて書き溜めてから貼れよ

    6 :

    読むぞ期待

    7 = 1 :

     仲良くなったと言っても他愛ない会話ばかりだった。
     ドラマや小説では盛り上げ所なのかも知れないが、そう上手く人生は出来ていない。

    「あははは、そうなんだー……って、私つぎだね?」
    「もーですかー? 淑女さんと話し始めてから時間経つのが早いですね」

     彼女は裾からほんの少し出した右手で、耳を掻いた。
     しばらく話していて分かった事だが、どうやら彼女の癖のような物らしい。
     難しい相談事など、暗い方向の話をする時に多く見られた。

    「私も思うなー……ま、また明日だね」
    「ですねェ。あーこっから一人だー」

     彼女の家はこの先にあるらしい。
     当然、他愛無い会話ばかりの仲の私達である。詳しくは知らない。

    「……よし。じゃあまた明日」
    「うッス。気を付けて下さいね~痴漢とかっ」

    「大丈夫大丈夫。家、近いから」
    「いやーでも本当、最近多いらしいんですよ」

     噂話をするかのように彼女は声を潜めた。
     私は少しだけ悪寒を感じながら「そっか。分かった気をつける」とだけ答えて、バスを降りた。

    8 = 1 :

    書き溜めてないのはゴメンなさい
    平日深夜で人少ないだろうしと勝手やってる
    朝になったら自然落ちだから目を瞑ってくれ

    9 = 1 :

     今夜もバスでの鉢合わせとなった。
     ここの所、連日連夜で顔を付き合わせているから、訝しく思わないでもない。
     彼女は、私に時間を合わせているのだろうか。

    「今日も塾?」
    「あ、違うます違います」

    「今日は部活が長引いて……友達と晩御飯、食べてきました」
    「あ~……通りで、襟元にソースの後が……」

    「えっ? え、マジっスか? ……うわ、やっちゃってる!?」
    「ふふ。早くクリーニングに出さないとね」

     彼女の表情は忙しないが、見ていて飽きなかった。
     運動系の部活に入っているとは思っていたが、剣道部に属していると照れ臭そうに笑った。

    「でも剣道って匂いすごくない?」
    「あ~慣れちゃいましたよ。小中高でやってましたから」

    「え? 小学校って剣道部……部? っていうか、そういうのあったの?」
    「小学校の時は近くの道場でー……まあ親に勧められたんじゃないッスかね」

    「へーじゃあ長いんだね?」
    「長いだけで弱いですけどねー……後輩の方が体格も良くて、泣かされてます」

     彼女は大袈裟に目元を拭って見せた。
     そういえば彼女の掌はゴツゴツと固かったように思える。
     私に剣道をよく知らないが、彼女が頑張っている事だけは容易に想像出来た。

    10 = 1 :

    「そういえば」

     彼女の様子が変わり始めたのは、それから数日後の事だった。
     最初こそ「疲れているのだろうか」と気を使っていたが、どうも腑に落ちなかった。

    「最近、よく眠れないんですよね」
    「本当に? 少女、疲れすぎてるんじゃない?」

     彼女の目元にはくっきりと隈が出来ていた。
     出会った当初の快活さが感じられず、心無しか背筋も曲がって来たように見える。

    「かも……しれないですけど。なんか、寝るのが怖いんですよ」
    「……夢見が悪い、とか?」

    「あー……うん。多分、そんな感じです」
    「そっかー……身体をリラックスさせて寝ると良いかもよ?」

    「……そうなんですか?」
    「うん。お風呂でマッサージとかしてあげて、ぐっすり眠れば夢も見ないって聞くし」

     俄かに彼女の表情が明るくなった。
     私に気を使ってくれたのだろう。「早速試してみますね」と疲れた笑顔を見せてくれた。

    12 :

    >>11
    記念がっ!

    13 = 1 :

     次の夜、バス亭に彼女の姿は無かった。
     あまり悪い方に考える気にもなれず、たまたま時間がズレたのだろうと自分を納得させた。
     そもそも今までが異常だったのだ。バイトの同僚と似たような物である。

    「別に会わないなら会わないでも……これで普通よね」

     その調子で一週間が過ぎようとしていた夜である。

    「あ……淑女さんっ!」
    「あー少女! 久しぶりじゃない、どうしたの?」

     彼女の口から出たのは「風邪引いて寝込んでました」という言葉だった。
    「さすがに一週間も姿を見せないのはオカしい」と考え始めていた私は、その軽さに拍子抜けである。

    「そうだったんだ~……あー良かったー」
    「あははっ。風邪で寝込んだのなんて久しぶりですよー」

    「事故にでもあったのかって心配しちゃったっ」
    「大袈裟ですよ~……でも、心配掛けてすいませんでしたっ」

     彼女は慇懃にお辞儀をしてみせた。
     心配に対してお礼を言われると、あまり悪い気はしない。

    「でも何事も無くてよかった」
    「そんなに心配してくれたなら連絡くれれば良いのにー」

    「……あれ? 私たちって番号交換したっけ?」
    「……あ、れ?」

     苦笑いを浮かべながら彼女は「そういえば!」と頭を抱えて見せた。

    14 = 1 :

    「結構、話せてたんで交換したと思ってましたよー」

     バスに乗り込むと、定位置に座って彼女は笑った。
     隈は少し残っていたが、その表情から「似非不眠症の件は解決したのだ」と安心した。

    「だねー」
    「何か友達とかに相談出来ない事とか、また相談乗って下さいね」

    「うんうん……で、そうだ。不眠症っぽいのは治ったみたい?」
    「あ、そういえばその話もしましたっけ」

    「したよ~それでその翌日だっけ? それから姿見なくなっちゃって」
    「あーそれであの心配ようだったんですねェ」

     合点がいったという表情で頷いてみせる。
     図形が苦手と嘆いていた彼女であったが、頭の回転は決して遅くないようだった。

    「そうそう。タイミングが丁度過ぎてね」
    「あ~まだ……っていうか、その、淑女さん」

     彼女は冗談を言える子で、また理解出来る子だった。
     しかし、冗談を言うべきではない時も日常生活では間々ある。

    「どうしたの?」
    「その……幽霊とかって、信じます?」

     彼女は、その使い分けがしっかりと出来る子なのだ。

    15 = 1 :

    「ゆ、幽霊?」
    「……」

     彼女は小さく頷いた。
     先までの笑顔が嘘のように静まり返っている。

    「なんか……寝てると、多分、女の人……だと思うんですけど」
    「……それでどうしたの?」

    「その、よくあるじゃないですか? 圧し掛かって顔を覗く~みたいな」
    「(あー……なんか小さい時にTVで見て泣いたかも……)」

    「顔はよく見えないんですけど……手、が……首を絞めてくるんです」
    「……どうして女の人って?」

     私自身は怪談話が苦手である。
     しかし、どうにも彼女は真面目な様子で、邪険にする訳にもいかなかった。

    16 = 1 :

    「手が、なんか分かるじゃないですか。女の人の手だな~とか、男の人のだ~って?」
    「う~ん……うんうん。なんとなく分かった」

    「金縛りですか、あれとか酷くて……眠れなくって、体調崩しちゃったんです」
    「……そうだったんだね」

     まったく正直な感想だった。
     怪談話に疎い私でも「よくある話」だと感じたし、金縛りに幻覚幻聴を伴うケースは多い。

    「今でも、その……そういうことあるの?」
    「寝込んでた時は、もう完全にダウンしちゃってて……」

    「あー有ったかもだし、無かったかもしれないんだ?」
    「そうですそうです」

     彼女は、我に返ったように俯いて耳を掻いた。
     その行動に「やっぱり冗談じゃなかったんだ」と、生ぬるいバスの中で震えた。
     頭で理解していても、怖いと感じる心理を遮断することは出来ないようだ。

    17 :

    餃子「天さーーーーーーーーーーん」



    ―――――――――――――――――完―

    18 = 1 :

    「あー……やっぱり、ちょっと疲れてるんですかね」

     彼女は首を傾げながら苦笑している。
     一般常識からズレた話をしていると知っているのだ。

    「うーん……私、実はちょっと怖い話とか苦手で……」
    「あっ! あー……すみません。なんか語り出しちゃって……」

    「あ、いいよいいよ。大丈夫、少女も冗談じゃないでしょ?」
    「……はい」

     また俯いてしまった彼女に、私は何と声を掛けるべきなのだろうか。
     窓の方を眺めてみるが、真っ暗な景色の中に浮かぶ外灯しか見えない。


    まあそうだよなwww
    さすがに駄目だよな終わるわ

    20 :

    ちょ
    読んでる読んでる

    23 = 1 :

    新ジャンルじゃないと他の人書かないのか?
    タクシーとか飛行機とか船とか自転車もアリだし
    作者によっては面白いかもと思ったんだが

    時間が駄目な訳じゃないよな人居るし

    25 = 1 :

    まあいいや続けよ

    「なんか嫌な話だねェ……」

     何も考えずに携帯を取り出すと、私は手の中でそれを遊んだ。
     二の句が継げない。バスのエンジン音だけが、耳に嫌らしくこびり付いて来る。

    「(なんて言ってあげればいいんだろ?)」

     私は怪談話を「話のネタだよ~」という雰囲気でならば楽しめる。
     確かに苦手としているが、周囲が盛り上がっているならば便乗すべきだろう。
     しかし相談という形で、この手の話をされると話は変わってくる。

    「あの……まあ、こういう……話だったんですがー」
    「うん……」

    「どうです……ちょっと、怖かったですかね?」
    「うーん……背筋、寒くなったかも……」

     嘘も方便である。事実、背筋に嫌な悪寒を感じたのだ。
     窓に映った私自身に「どうしようか?」と目で問いかけるが、当然返答はない。

    29 = 1 :

    「……っなーんちゃって!」

     直後、彼女に背中を小突かれた。
     思いがけない衝撃に、前のめりになって携帯が地面を転がった。

    「あっ……ご、ごめんなさい」
    「大丈夫だけど……あれ、嘘?」

    「いやー……なんかわたしの学校って文化祭早くって」
    「……もしかして出し物で?」

     彼女の口を借りるならば「お化け屋敷をするんですよ」とのことだった。
     お客さんに怪談話を聞かせた後、教室内を探索するという形式らしい。
     どこかで聞いた感じのお化け屋敷だが、友人や何かと行った事があるのかもしれない。

    30 = 1 :

    「なんだー……重かったから本気になっちゃったよー」
    「あははっ。でもこれじゃ教室で使えませんねー」

     どうやら私で試験運用したようだったが、彼女はそう言って苦笑した。
     例の癖が出ている彼女を横目に、我知れず浅い溜息をこぼす。

    「(空気悪くなったなぁーって思うくらいなら、話さなきゃいいのに)」
    「あ~……また新しい話探さないと……」

     この後、特に主だった会話は無い。
     エンジン音や軋みが、思い掛けないほど大きな音を立てて、私たちを揺らしていた。

    33 = 1 :

    「昨日はすいませんでした」

     開口一番に彼女は頭を下げた。
     年下である彼女に気を使われてしまうと、逆に申し訳ない気持ちが湧き上がる。

    「気にしないでいいよ。ちょーっと眠れなかったけどね?」
    「あははっ。いやーもう本当、すいませんっ」

     冗談で紛らわせたが、彼女も分かってくれたようだった。
     相変わらず人の居ない終バス待ちの停留所で、私たちは久しぶりの談笑をする。

    「えー! スイパラって行った事ないんですけど、そんな感じなんですか?」
    「そうなのかも……お皿に盛ってきて食べるでしょ? もう、み~んな無言」

    「え、え。でもやっぱり会話……ありますよね?」
    「周りはねぇー私たちはアレもコレも食べたい! で、なんか頑張ってた」

     あまり遊びに行けないという彼女は「行ってみたいなぁ」と悔しそうだった。
     「今度連れて行ってあげるよ」と肩を叩いてあげるのは、社交辞令として当然だろう。

    35 :

    >>31
    >>12

    37 = 1 :

    「それにしても本当に人居ないよね」
    「終バスって言っても、まだ二十二時……半ですか」

     定位置に腰掛けた私たちは薄暗い車内を見渡した。
     大学に入ってから随分と経つが、終バスに私たち以外の人影を見ることは少ない。

    「……もしかして凄い田舎?」
    「えー? そんな事無いと思いますけど……どうなんでしょーね?」

    「私も自分の住んでる所を田舎って言われたらアレだけど……」
    「ですねェ……まあ駅前に大きなマンションがありますし」

     首だけで振り返って、背後に流れていく景色を眺めた。
     暗闇にそびえ立つ明かりが、摩天楼を作っているかのように錯覚する。

    「……確かにこっちの方は田舎かもね」
    「……まー、明かりは……少ないですよねぇ」

    41 = 1 :

    この時間は落ちなくていいな
    書くペースが遅くて申し訳ない


    「そういえばさ」

     季節が夏に近づくにつれて車内の温度は上がっていく。
     お情け程度ではあったが、扇風機の涼風はせめてもの救いだった。

    「あー結局、なんか病院の怖い話が採用されましたよ」
    「やっぱりそうなっちゃうよねェ」

    「そもそも怖い話自体が集まらなくって」
    「あれ? そうなんだ?」

    「あ、話は集まるんですけど……形に出来ないっていうか」
    「……あーお化け屋敷向きじゃないのね」

     「病院側の対応は最悪。死亡事故が数多く隠蔽された」という設定らしい。
     おどろおどろしく話してくれた彼女であったが、持ち前の明るさが怖さを半減させていた。

    42 = 1 :

    「……って感じになりそうです。どうでした?」
    「……いや、一人暮らしには……ちょっとキツいかも」

     半減させていた、とは言っても苦手な物に変わりは無い。
     それなりで聞いていたつもりが、予想以上にのめり込んでしまった。

    「あーそういえば苦手なんですっけ?」
    「苦手だなー……あれ、リングだっけ? あれとかも怖くて怖くて……」

    「あ~貞子でしたっけ……あの髪の長い、目がこーいう……」
    「あー似てる似てるっ……ってこうして見ると面白い表情だね」

     彼女は目を見開いて下を見る、と言った有名なシーンの真似をしてみせた。
     気味の悪さだけが残っている映画だったが、顔真似だけでは酷く滑稽だ。

    43 :

    こういうの好きだ

    >>39-40
    ガッ

    46 = 1 :

    「いやでも大変だったんですよー話を集めるの」
    「大変って?」

     彼女の話では「実行委員が何がなんでも成功させたいと意気込んでいる」
     「だから各班ごとに三つの怪談を提出するように」と、要は宿題が出されたらしい。

    「うわ……なんていうか、頑張ってるんだァ……」
    「まあ私の班……結構、カッコいい男子居たんでラッキーでしたけど」

    「それでー私の家でDVD見ることになったんですけどね」
    「うんうん」

    「上映会当日は雨で最悪だったんスよー」と、彼女は耳を掻きながら俯いた。
     適当に怖そうなDVDを一同で持ち寄ったわけだが、状況が一致する話が多かったそうだ。
     雨天の日に自宅でというシチュエーションは、確かに逃げ場が無いように感じられる。

    「もう『なんで逃げないのー? そこ開けちゃうのー?』って突っ込みまくりです」
    「あ~分かるかも。あの手の話の人たちって、なぜか勇気あるよね」

    48 = 1 :

     誇張表現はあれど、一歩引いて見ている私たちが怖いのだ。
     実際に自分がその場に居合わせたとすれば、間違いなく彼らとは逆の行動をする。

    「それで、そのカッコいい男子とは仲良くなれた?」
    「あーそうだ! それが聞いてくださいよ!」

    「え? 何、まさか進展したとか?」
    「違うんですよ。あの、その男子、なんかやたら怪談話に詳しい人みたいで」

     彼女のその次の台詞を、私はなぜか鮮明に想像出来た。
     考えてみれば不得手の私が、わざわざ話題を振った事からオカしかったのだろう。

    「男子に『少女の家、なんか居るんじゃない?』ってメール来たんですよ」

    49 = 1 :

    「え……それって、前話してくれた……」
    「……はい、多分」

    「えー? でもあれ嘘だって言ってなかったっけ?」
    「それはー……なんか、淑女さん怖がってたし……」

     「あの時は冗談という形で取り繕った」と、何故か頭を下げられた。
     まず、ここで謝るべきは無用の気遣いをさせてしまった私の方である。
     しかし、そういう雰囲気でもなかった。謝罪を後回しにして、彼女に先を促す。

    「それが、どうやら男の霊らしいんですよ」
    「その男子が言ったの?」

    「そうなんですよね。わたしは女の人だと思ってたんですけど……」
    「(……いや、それを信用するのもどうかと思うけど)」


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