元スレ新ジャンル「鬱っ子」
新ジャンル覧 / PC版 /みんなの評価 : ▲
1 :
別に新ジャンルじゃないけど、新ジャンルって書くしか思いつかなかった。
二部構成の、一部5章立てを予定。
一部が男視点。二部が女視点です。
……そして、まだ全部書けてないから完成はいつになるか未定。
というか一部の一章しか書けてない。だって全部書くと時間がかk(ry
突発的の思いつきなので、苦しい展開なのはご容赦を。
それでは、どうかよろしくお願いします。
2 :
◇学校◇
男「よぉ」
鬱「……あぁ、鬱だなぁ」
男「いやいや、人の顔見てそれは酷っ」
鬱「あ、男さんすか。はよぉです」
男「気付かなかっただけか……相変わらずって言うか、今日も暗いなお前は」
鬱「えぇ、まぁ……鬱陶しくてすいません」
男「別に謝らなくていいけどよ」
鬱「そっすか」
男「……」
鬱「……」
男「……えっと、今日も天気は快晴だな」
鬱「そっすね……はぁ、鬱だ」
男「晴れだと鬱なのか……」
鬱「はい、だるいですから」
男「相変わらずだな、ホント」
鬱「基本鬱ですから、すいません」
男「そか……んぁ、そろそろHR始まるか。じゃ、また後でな」
鬱「はい、またです……はぁ、鬱だなぁ」
――俺は鬱といつも通りの挨拶を交わし、自分の席に着く。ため息と共にお決まりのセリフを吐きだす鬱に、苦笑しながら。
3 = 2 :
◇放課後 帰り道◇
男「……あ、あのさぁ、鬱さん?」
鬱「どしたんすか、男さん?」
男「今度の土曜、遊びに行かね?」
鬱「……あぁ、鬱だなぁ」
男「!……そんなに嫌だったか?」
鬱「あ、すいません。聞いてませんでした」
男「聞いてなかったのかよ!……思いっきしショック受けたわ」
鬱「すいません、ホント。で、なんでした?」
男「いやだから、今度の土曜、遊びに行かないかって」
鬱「はぁ、かまわないすけど、自分なんかでいいんすか?」
男「いいから誘ってんだよ」
鬱「……物好きですね、男さんも。いくら自分が女子とはいえ、暗い、うざい、気味悪い、と負の三拍子そろってる自分を遊びに誘うなんて」
男「お前は自分のことをそこまで言うか……。俺がいいって言ってるんだから、いいんだよ。それに、ちゃんとすればお前だって可愛いっての」
鬱「……男さん、どうかしたんすか? よりによって自分なんかのコトを可愛いだなんて。頭打ちました? 悪いモノでも食べました? 病院行きましょう、119番!」
男「誰も悪いとこなんてないわ! 携帯しまいやがれ!」
鬱「だって男さん、変なこと言い出すんすもん」
男「なにが変なことだ。その顔隠してる前髪なけりゃ、もっと可愛くなると思うぞ、俺は」
鬱「やっぱり、119番……」
男「だから電話をかけるな! なんかコール音聞こえてるし!」
鬱「まぁ、かけてますから……あ、すいません。ちょっと精神科に行かないといけない人がいるんすけど……」
男「ホントに119番にかけてる!? おまっ、馬鹿野郎!」
鬱「ほら、聞いてください。自分、女なのに野郎って男呼ばわりするんです。おかしいすよね」
男「早く切れ! ってか切る!」
4 = 2 :
鬱「あ、切られた……せっかちなんすから、男さんは。それで、男さん」
男「なんだよ、鬱」
鬱「土曜は晴れみたいです。良かったすね」
男「107番だったのかよ!」
鬱「という訳でお出かけ日和ですけど、いったいどこに行くつもりなんすか?」
男「遊園地のつもりだけど、どうだ?」
鬱「はぁ、遊園地すか……ほんとーに、自分なんかでいいんすか?」
男「いいんすよ」
鬱「それ、本心すか? 罰ゲームで、とかじゃないんすか?」
男「んな訳あるか。俺の本心だよ」
鬱「はぁ……変人ですね、男さんも」
男「おい、さっきより悪くなってないか」
鬱「気にしないでください。そんなことより、どうして自分なんかがいいんすか? 前から色々と誘ってもらってますけど、普通、うっとうしいだけじゃないすか?」
男「どうしてって……それをみなまで言わすか、おのれは」
鬱「すいません。……でも、嫌われ者なんすよ、自分は。嫌われてなくても、興味ないヤツって見られてるんすよ、少なくとも。男さんは別に、嫌われてもハブられてもないのに、どうして自分なんかに興味を持つんです?」
男「……。話してるうちに、面白いヤツだなぁって思ったから、じゃダメか?」
鬱「はい、足りません。それだけじゃ信じられません」
男「だよなぁ……いや、さ。話せない訳とかはないんだけどさ、出来ることなら話したくないっていうか……その、恥ずかしいし」
鬱「……それは、その、すいません。……でも」
男「あぁ、うん。話さなきゃいけねぇのはわかってる。ちゃんと話すよ。……お前と初めて話した時のこと、覚えてるか?」
鬱「初めてと言うと……今年度の頭、放課後での時すかね?」
男「そう、そん時の。ほら、俺が手を怪我した時あたりだな」
鬱「包帯巻いてましたよね。空手で怪我したんでしったけ?」
男「そうそう。相手殴った時、ミスって手首捻ったんだよなぁ。それで、結構落ち込んでたっていうか悩んでたっていうか」
鬱「その時の男さん、クールでしたよね」
男「んなカッコイイもんじゃねぇよ。……そんで、なんとなく放課後になっても教室にいた時にお前が入ってきたんだよな。クラスのヤツ、全員帰ってたと思ってたから驚いたよなぁ、確か」
鬱「びっくしたのはこっちすよ」
男「まぁ、それでなんか色々と話したんだよな。」
鬱「えぇ、怪我のこととか、鬱のこととか」
男「で、そん時にさ、俺が『空手、辞めようかと思ってる。高校三年だし、そろそろめんどくさいって思う時もあるし』って言った時、お前言ったよな」
5 = 2 :
鬱「……えと、なんて言ったんすか、自分て?」
男「ま、覚えてないか。……『男さんの好きな風にすればいいんじゃないすか。無理なものは無理って思うのも、必要だと思いますよ。どんなことでも』って言ったんだよ」
鬱「あー……そんなこと言ったんすか、自分。すいません、変なこと言って」
男「いやいや。俺、その言葉聞いて考えたんだよ。空手って俺は無理だって思ってるのかなってさ」
鬱「……それで、男さんは無理っておもったんすか?」
男「あぁ、思ったよ。……ただし、辞める方を」
鬱「…………」
男「俺、空手は小学校の低学年からやっててさ。もう十分だと思ってたんだよ。でも、やっぱり好きだったんだよな。無理やり無理だって思い込んで辞めようと思ってたんだよ。本当は、空手続けるの無理だなんて全然思ってないのにさ」
鬱「そう……だったんすか」
男「だからさ、お前の言葉で気づいたって言うか、さ。まぁ、それでいいヤツなんだなって思って」
鬱「……それが、理由すか?」
男「あぁ、そうだな。他にあるって言えば、そんな気づかせてくれたヤツを、暗い顔だけじゃなくて……笑わせてやりたい、って思ったからってのも、あるか、なぁ」
鬱「……。そう、すか」
男「お、おう。そうっす」
鬱「…………」
男「…………」
鬱「……顔」
男「んぁ?」
鬱「顔、赤いすね、男さん」
男「う、うるせぇ! お前が恥ずかしいこと言わせたんだろうが!」
鬱「まさかそんな恥ずかしいこととは……予想外でしたから。すいません」
男「悪かったな、恥ずかしいことで」
鬱「いや、別に悪くはないんすけど……。で、土曜は何時にどこ行けばいいんすか?」
男「……それは、オッケーってことか?」
鬱「おっけーってことです」
男「じゃあ、九時にいつもの駅で。どうだ?」
鬱「大丈夫です。問題ないです」
男「ならそれで。サンキューな」
鬱「いえ、こっちこそ誘ってもらってありがとうございます」
男「っと、この辺で道分かれるか。んじゃまぁ……また土曜、かな」
鬱「そうすね。また土曜に。それでは」
男「じゃあなー!」
――俺は鬱が誘いを了承してくれたことが嬉しくて嬉しくて、浮かれていた。
今度の土曜、俺は鬱に……言うんだ。
そう思うだけで俺の心はドキドキと高鳴って、それのことしか考えられなくて。
鬱「……はぁ。……鬱だなぁ。ホント……」
――だから、鬱が別れ際につぶやいたその言葉は、俺の耳には届いてなかった。
6 = 2 :
◇土曜 約束場所の駅◇
鬱「あ、男さん。はよぉです。」
男「……ポカーン」
鬱「あの……男、さん?」
男「いや、あ、うん、お、おう。……よぉ、鬱」
鬱「はい、はよぉです。どうしたんすか、ぼーっとして。寝不足すか?」
男「いや、まぁ多少はそうだけど、気にするほどじゃねぇよ。んなことより、お前、髪が……」
鬱「あ、あぁ、はい。その、男さんが前髪なければって言ってたんで、ちょっとピンで横に流してみました。……どうすか?」
男「……あまりにも可愛くてびっくりした」
鬱「…………」
男「…………」
鬱「えと、ありがとう……ござぃ……」
男「…………」
鬱「…………」
男「……顔」
鬱「は、はい?」
男「顔、赤いぞ、鬱」
鬱「そっ、それは、男さんが恥ずかしいこと言うからっ!」
男「お前が聞いたくせに」
鬱「それは!……そうです、けど」
男「てか、昨日の仕返しだ」
鬱「な、じゃあ嘘ですか! それは酷いすよ!」
男「あ、いや。嘘じゃないけど。仕返しってだけで」
鬱「…………」
男「えと……」
鬱「……う、嘘じゃないんすか……」
男「お、おう」
鬱「……うぅ~。なんか、無性に恥ずかしいすよ……」
男「ま、まぁともかく。行くか?」
鬱「あ、はい。遊園地、すよね?」
男「おう。他のとこがいいなら、そうするけど?」
鬱「いえ、ないすよ。遊園地ってちゃんと行ったことないんで……結構、楽しみです」
男「そか、それはよかった。んじゃ、行きますか」
鬱「えぇ、行きますか」
――ちょっとうつむきながら、はにかんだ笑顔を受かべる鬱は無茶苦茶可愛くて、それだけで俺の胸は大きく震えて。……今日、俺の心臓持つかな、なんて馬鹿みたいな心配をしてしまった。
7 = 2 :
◇遊園地◇
鬱「おぉ……なんか、すごく楽しそうに見えますね」
男「そりゃまぁ、遊ぶとこだしな。てか、入り口できょろきょろしすぎだっての」
鬱「遊園地ってあんまり楽しそうに見えたことないんで、つい。すいません」
男「別に謝ることねぇよ(苦笑) けど、見えたことないって……行ったことはあるのか? ……ってそりゃそーか。学校の遠足だか何だかで行ったもんな。けど、見えたことないってどういう意味だ?」
鬱「あ、いや、その……」
男「……まぁ、何でもいいけど。鬱は何か乗りたいのあるのか?」
鬱「えと、乗りたいのすか?……ジェットコースター、とか?」
男「ん、わかった。ジェットコースターな。じゃ行くか」
鬱「あ、いえ、やっぱいいです。怖いんで止めときます。あんなの乗ったら無事でいられる気がしません」
男「へぇ……怖いんだ、ジェットコースター?」
鬱「そりゃ、まぁ……あんなの見るからに怖そうじゃないすか」
男「ふむ、乗ったことはないのか?」
鬱「えぇ、ないです。というか、遊園地の乗り物はなにも乗ったことないです」
男「そうか……よし、なら乗ろう。食わず嫌い、もとい乗らず嫌いは良くない。まずは乗ってみようか」
鬱「え゛。だからいいですってば、男さん」
男「いや、よくない。乗るぞ」
鬱「ちょ、まっ、止めましょうよ! ほあら、他にも色々乗るのあるじゃないすか。わざわざあんなのに乗らなくても」
男「ヤダ。つべこべ言わず乗る」
鬱「わ、背中押さないで下さいよ! き、きゃー。男さんがセクハラするー」
男「棒読みで言ってもなぁ……顔真っ赤だしさ。恥ずかしいなら、んなこと言うなよ」
鬱「うぅ……た、助けてー」
8 = 2 :
男「楽しかったなー、なぁ、鬱?」
鬱「……まぁ、悪くはなかったすけど。今日はもういいです」
男「最初は怖い怖いって震えながら俺の手握ってたくせに、途中からは両手挙げて楽しんでたじゃんかよ。むしろこっちが恥ずかしかったよ、あれは」
鬱「だ、だってジェットコースターって言えば両手挙げるイメージあるじゃないすか!」
男「まぁ、あるけどさ。」
鬱「ですよね!?」
男「でも、恥ずかしいもんは恥ずかしい」
鬱「う、うぅ……」
男「ま、楽しかったならなんでもいいけどな。じゃ、次はタワーフォール行きますか~。そん次はバイキングな」
鬱「……たわーふぉーるって、あの高いヤツすか?」
男「おう、そうだ」
鬱「……バイキングって、あのブラブラ揺れてる船のヤツすか?」
男「おう、そうだ。わかったところでレッツらゴー!」
鬱「いやそれ古いすよ! っていうかちょっと待ってください。少しぐらい休憩お願いしますよ、男さん! おーとーこーさーんー!」
9 = 2 :
鬱「いや、楽しいもんすね、絶叫マシンって。ちょっとクセになりそうです」
男「……あぁ、そうだな」
鬱「もう一回ジェットコースーターに乗っとこうかな……どう思います? 男さん」
男「……おまえ、今日はもういいとか言ってなかったっけ」
鬱「言ってましたけど、別にいいじゃないすか。楽しいですし」
男「……まぁ、別にいいけど」
鬱「じゃあ早速行きましょう」
男「いや、ちょっと待とうぜ、鬱。さすがに連チャンで乗り過ぎじゃね? まさかバイキングの後に回転ブランコまで乗ったしさ、な?」
鬱「そうすね……」
男「んじゃあちょっと休憩がてら昼飯でも食べて……」
鬱「じゃあ、ジェットコースターだけにしときます。そんなに並んでないみたいですし。さ、男さん、速く!」
男「……ちょっと、調子乗り過ぎたかな、俺。まさか鬱がそんなに絶叫マシンに強かったとは……はぁ」
10 = 2 :
男「…………」
鬱「いや、良かったです。風すごく気持ちいいし、流れてく景色は爽快ですし、最高すね」
男「…………」
鬱「じゃあ、ちょっとお腹も空きましたしお昼にでもしますか?」
男「…………」
鬱「……? 男さん、どうしたんすか?」
男「……もぉ、ダメかも」
鬱「え?」
ぐらぁ……
鬱「ちょ、っとと! お、男さん、しっかりしてください! 大丈夫ですか!?」
11 = 2 :
男「……ベンチまで運んでくれてありがとう。……そしてすまん。酔った。酔いすぎた。気持ち悪い」
鬱「自分こそ、すいません……調子乗り過ぎて気づきませんでした」
男「まぁ、楽しかったんだろ? ならかまわないって。……うぇぇ」
鬱「すいません……なにか飲み物買ってきます」
男「あぁ、悪いな、ホント」
鬱「いえ……早めに戻ってくるんで。すいません」
タッタッタッタ……
男「……はぁ。俺、なにしてんだろ。鬱をパシって……情けない。……あぁ、気持ち悪……」
男「…………」
男「…………すぅ、すぅ」
12 = 2 :
男「(……なんか、やぁらかい? なんだ、このやぁらかさは……?)」
ふに
鬱「……あっ」
男「(あったかし……ベンチ、じゃない?)」
ふに、ふに
鬱「あ、う……」
男「(てか、なんで俺は横になってる……?)」
鬱「く、くすぐったい……」
男「…………はっ、俺寝ちゃってた!?」
鬱「……あ、男さん。はよぉです。お目覚めはどうすか?」
男「あ、鬱……すまん、思いっきし寝ちまった……って、うぉう!?」
鬱「おぅ、いきなり飛び起きてどうしたんすか、男さん」
男「いいいい、いや、さっきまで俺が寝てたのって……!」
鬱「自分の膝っていうか、脚の上すけど」
男「それって、いわゆる、膝枕ってヤツじゃあ……!」
鬱「えぇ、そうすよ。あ……まさか、自分なんかのは嫌でした? すいません」
男「嫌なんてことはまったく全然これっぽちもないけど!」
鬱「そうでしたか。なら良かったです」
男「……いや、なんか、すまんっていうか、ありがとうっていうか、ごちそうさまっていうか、気持ちよかったっていうか」
鬱「あとになるほど下心が出きてるのは流すとして、喜んでもらえたならやったかいがありました」
13 = 2 :
男「そか。寝たおかげか、酔いもずいぶん覚めたよ。ありがとな、鬱」
鬱「いえいえ、酔わせてしまったお詫びですから」
男「そか……じゃあ、なんか乗るか? 時間とらせたしな。……まぁ、絶叫マシンは出来るだけ遠慮したいけど」
鬱「はい、絶叫マシンはもう十分です。次は……メリーゴーランド、とか乗ってみたいです」
男「メリーゴーランドとは、またなんというか……」
鬱「えっと……ダメ、ですか?」
男「ん、あぁ……いや、んなことねぇよ。ほれ、行くぞ」
鬱「あ……」
男「あ……ごめん、なんか勝手に手なんか取っちゃって。嫌ならh」
鬱「嫌じゃないです!……だ、だから、離さないで、ください……」
男「お、おう……わかった。じゃあ、行くか?」
鬱「はい……行きましょう、か」
14 = 2 :
男「なぁ、鬱さんよ」
鬱「どうしたんすか、男さん?」
男「マジでこれに乗るのか? しかも二人で」
鬱「えぇ、マジすけど」
男「……馬車とかならわかるんだケドさ、これ白馬だぞ?」
鬱「えぇ、そうすね」
男「えらい不安定なんですけど」
鬱「そうすね」
男「いやね、鬱さん?」
鬱「はい、なんすか男さん」
男「…………」
鬱「…………」
男「……はぁ、わかったよ。乗るよ乗りますよ乗らせて頂きますよ」
鬱「はい、男さんと二人で乗るの、楽しみです」
男「……いや、お前さ」
鬱「……はい?」
男「いや、やっぱなんでもない。……わかって言ってんのかね、こいつは(ボソッ」
15 = 2 :
鬱「……男さん」
男「なんだよ」
鬱「顔、赤いすよ」
男「……うるせぇ。って、そーいや俺はどこ持てばいいんだ? 馬の首はお前が持つし」
鬱「あ、じゃあここにでも腕回してください」
男「……いや、おい。そこ、お前の腰だけど」
鬱「えぇ、そうすけど」
男「……なぁ、やっぱ馬車に変えないか?」
鬱「…………」
男「…………」
鬱「…………」
男「……あー、はい。俺が悪かったよ。このままでいいです、はい」
鬱「そうすか。じゃあ、どうぞ」
男「(えぇい、恥ずかしがるな、役得だぞ役得!)じゃあ、失礼します」
ぎゅ
鬱「……っ」
男「…………あー、うん、その……」
鬱「…………」
男「顔、赤いな」
鬱「男さんも、さっきより赤いですよ」
ガクン
男「っと! 始まる合図くらいしろよ! やばっ、バランスが……!」
鬱「お、男さん!?」
むにゅっ
男「……あ」
鬱「!!」
男「ご、ごめん! 胸さわっ……! いや、ホントごめん!」
鬱「い、いいんすよ。わざとじゃないんですし。……男さん、ですし(ボソッ)」
男「そ、そか……でも、ホントごめんな」
鬱「はい……」
ごうん、ごうん
男「…………」
鬱「…………」
ごうん、ごうん
16 = 2 :
鬱「結構、恥ずかしかったすね」
男「……ホント、恥ずかしかったなぁ」
鬱「でも、楽しかったすよ」
男「そうか……恥ずかしさを我慢したかいがあったよ」
鬱「そろそろ夕方ですけど……どうします? もうそろそろ閉まるんじゃないすか?」
男「そうだな……最後だし、やっぱここは観覧車に乗らないか?」
鬱「観覧車、すか……定番すねぇ。襲わないでくださいよ?」
男「襲わねぇよ!」
鬱「ほら、男はみんな狼だって言うじゃないすか」
男「言うけどさぁ!」
17 = 2 :
鬱「……それに、さっき胸触った」
男「う゛っ、いや、だからそれは、わざとじゃなくてだな……!」
鬱「冗談すよ。慌て過ぎです、男さん」
男「お前なぁ……」
鬱「それで、乗るんすよね? 観覧車」
男「……おう、乗るよ」
鬱「じゃあ……エスコート、お願いします」
男「エスコートって……この手を、取れと?」
鬱「そして、エスコートしてください」
男「……わかったよ。お姫さま、仰せのままに」
鬱「はい、お願いします」
男「……すげぇ恥ずかしいんだけど、これ」
鬱「似合ってないすよ、男さん」
男「お前、やらせといて……! んじゃ、とっとと行くぞ」
鬱「はい、王子さま」
18 = 2 :
男「……あー、恥ずかしかった」
鬱「お疲れ様です、王子さま」
男「その呼び方やめてくれ、恥ずかしいっての」
鬱「そんな……わかっててやってるのに」
男「ったく、お前は……」
鬱「でも、面白かったです、男さん。ありがとうございました」
男「はいはい……で、今日はどうだった? 楽しかったか?」
鬱「はい、もちろんすよ。ありがとうございました」
男「それは良かった。俺も楽しかったよ」
鬱「……はい」
男「それで、あのさ……」
鬱「なんづか、男さん?」
男「えっと、その……」
鬱「…………」
男「あー……」
鬱「…………あ」
男「ん、どうした?」
鬱「いえ……景色、が」
男「あぁ、いい感じに見えてきたか」
鬱「はい……綺麗すね」
男「そうだな」
19 = 2 :
鬱「見える景色全部が紅くて……なんか、すごいです」
男「こうして高い所から見ると、また色々と感じるな」
鬱「はい……学校は、あっちの方すかね?」
男「あぁ、あっちかなぁ。別に目印になるような建物がないからわからんケド、たぶんそうだろ」
鬱「……あっちが、自分たちの街すか」
男「おう、そうだな」
鬱「……そう、かぁ」
男「(……微笑んでる、のか?)」
鬱「…………」
男「(でも、なんか悲しそうに見てる……?)」
鬱「……はぁ、鬱だなぁ」
男「……なんか、嫌なことでもあったか?」
鬱「! あ、いえ、別にそんなわけじゃ……っ」
20 = 2 :
男「…………そうか。なら、いいよ」
鬱「あ……。はい、すいません」
男「それよりさ、鬱……」
鬱「はい、なんすか」
男「実は、お前に言いたいことあってさ」
鬱「……。はい、どんなことすか?」
男「俺、さ……」
鬱「…………」
男「前から、鬱のことが……」
鬱「……っ」
男「すk」
ちゅっ
男「!?」
鬱「……今は、景色を見ませんか?」
男「お前……」
鬱「それは、帰りにまた言ってください。その時は、ちゃんと最後まで聞きますから」
男「……あぁ、わかった」
鬱「……ありがとう、ございます」
――そう言って、鬱はほほ笑んだ。突然の出来事に俺は何も考えられなくて、鬱のほほ笑みにあった違和感に、ちゃんと気付けなかった。
21 = 2 :
◇帰り道◇
鬱「今日はホント楽しかったすよ。ありがとうございました、男さん」
男「お、おう。こっちこそ、楽しかったよ。サンキューな」
鬱「はい……おかげで、決心出来ましたし」
男「決心って……」
鬱「男さん」
男「な、なんだ?」
鬱「観覧車の中で……なにを、言いかけたんすか?」
男「……。あぁ、それな。俺は――」
鬱「……。」
男「お前のことが、好きだ」
鬱「……っ」
男「だから、よかったら付き合って欲しい」
――前は、鬱の顔は、恥ずかしすぎて見ていられなかった。
鬱「…………」
――だから、今鬱がどんな表情をしているかわからなくて。
鬱「ごめん、なさい……」
――きっとオッケーという返事をもらえるとばかり思っていた俺は、その言葉が頭の中に入らなかった。
男「……え?」
鬱「すいません、男さん。自分は、男さんとは、付き合えないです」
22 = 2 :
男「なん……で、だ?」
鬱「……迷惑、かけて、しまいます……から」
――言葉を口にする鬱は、鉛でも吐き出すかのように重々しく、辛苦をともなっているかのように顔をに歪める。
男「迷、惑って……どういう意味だよ」
鬱「……すいません。男さんには、迷惑、かけたく……ないん、です」
男「だから、どういう……」
鬱「今日は、ホントに、本当に楽しかったすよ。今までで、最高の思い出に、なるほど」
男「じゃあ、なんで!」
鬱「……遊びの誘いも、最初から、断ればよかったと思います。でも、どうしても、男さんとの、大事な思い出が、欲しかった……んすよ」
男「思い出なんて、これからも作ればいいだろ!」
――ただ必至に、俺は叫んだ。彼女の言ってる意味はわからない。でも、彼女が無理をしているのだけはわかったから、俺は叫ぶ。考え直せ、と。
男「本当に俺は、鬱のことが――!」
鬱「ごめん、なさいっ! 今までわたっ……自分に良くしてくれてありがとうございましたっ」
男「鬱っ!」
鬱「とても、嬉しかったです。涙が出るくらい、嬉しかったんすよ。……でも、それも今日までです」
――行ってしまう。止めないと。彼女が、離れていってしまう。でも、止められない。
鬱「これからは、学校でも無視してください。お願いします」
――彼女が、笑う。それは、見たこともないくらいの満面の笑顔で。……そして、痛々しいくらい、悲しい笑顔で。幸せそうに瞳からは、止めどなく涙が溢れていく。それには、本当の彼女の気持ちを孕んでる気がして、大事ななにかが流されていっている気がして。そんな彼女を見た俺は、どうすることも出来なかった。
鬱「ありがとう、ございましたっ……そして、さよならです!」
男「待っ…………」
――伸ばしかけた手は半ばで止まり、頭の中に『今の俺になにが出来る?』と答えられない問がリフレインする。……俺は、走っていく彼女の背中を見続けることしか……見続けることすら出来ず、項垂れた。
男「なんだってんだよ、くそぉ……っ! 意味がわからねぇ、なにが迷惑なんだ。誰でもいいから、答えてくれよ!」
――苛立ち紛れに電柱を殴りつける。感じるのは、痛みだけしかない。あぁ、ホントに……鬱だなぁっ……!
23 = 2 :
取りあえず、一章は終了。
そして書き溜め消えました。
これからはゆっくり
二章書いていきます。
24 = 2 :
◇学校◇
男「……よぉ」
鬱「……はよぉです」
男「なぁ、鬱……」
鬱「すいません、男さん。まだ英語の宿題終わってないんです」
男「そう……か。悪い、邪魔したな」
鬱「いえ……」
男「じゃあな、宿題頑張れよ」
男「…………無理、か」
――あれから一週間。鬱は俺が話しかけようとするたび、すぐ逃げて行った。明らかに、避けられてる。俺はどうすることも出来Aないでいることに歯噛みしながら、席に着いた。
25 = 2 :
◇休み時間◇
友人「なぁ、男」
男「ん、どうした?」
友人「お前さ、鬱とケンカでもしたのか?」
男「なんだよ、いきなり」
友人「だって最近あんま話してないじゃん。前は休み時間の度に話してたのにさ」
男「いや、まぁ……」
友人「反応悪いなー。まさか、振られた?」
男「なっ!……なに言ってんだよ、お前は」
友人「冗談だよ、だ冗談。でも、その反応からすると、ホントだったりする?」
男「か、んな訳あるか」
友人「だよなぁ、ある訳ないよな。だって、あの鬱だし」
26 = 2 :
男「……あの鬱? なんのことだ?」
友人「ほら、だって暗いじゃん、あいつって」
男「……まぁ、暗いけどさ」
友人「だろ? それに、変な噂も聞くしさ」
男「変な噂、って?」
友人「あぁ、女子が話してるのを耳にしただけなんだけど」
男「あぁ、かまわねぇよ」
友人「中学の時、男誘ってヤリまくってた、とか」
男「はぁ!? なんだと!?」
友人「声でけぇよ、バカ」
27 = 2 :
男「わ、悪い。でも、それって本当なのか?」
友人「知らね。女子が話してるの聞いただけだっての」
男「そうか……」
友人「他にも、捨て子だったとか、学校にエロイおもちゃ持ってきてるとか、薬やってるとか」
男「な……なんだ、それ。根も葉もない噂だろ、そんなの」
友人「だよなぁ。でも、みんながみんな言ってるんだよ、それ」
男「噂だからだろ」
友人「でも、実際見たってヤツは何人かいるらしいんだよな」
男「どうせ嘘じゃねぇの?」
友人「でも、本当かもしれないだろ?」
男「(……本当な訳ない。だって、あの鬱だぞ?
……でも、それじゃあ、迷惑かけるっていうのはいったいなんなんだ? もし噂が本当なら、鬱があんなこと言ったわけも……いや、なにを考えてるんだ、俺は。鬱がホントにそんなヤツなら、俺は鬱と付き合って鬱に利用されてるだろ。
……じゃあ、鬱が避ける理由は結局なんなんだ?)」
28 = 2 :
友人「おい、どうした?」
男「……あ。ごめん、考え事してた」
友人「そうか。まぁ、そういう訳で、鬱のことは気をつけろよ」
男「あぁ、わかった。ありがとな」
――結局、真実はわからない。ただ、不審に思う点が出来ただけ。しかし、それだけでも進歩は進歩だ。
29 :
>>1ガンガ
30 :
さて、前日、前々日と書けなかったけど、今日は書きます。
まぁ、書き溜めてないからゆっくりだけど。
見てる人は特にいない気もするけど、やります、はい。
でも、>>29ありがとう。マジで嬉しい。頑張るよ。
31 = 30 :
◇昼休み 屋上◇
男「はぁ、鬱と昼飯食おうにも、避けられるからなぁ。他の誰とも会う気しないし、屋上行こ。……まぁ、扉閉まってるから、手前踊り場でだけど。
……って、あれ? 鍵、空いてる? らっき、誰か壊したのかしらんけど、お邪魔しまーす。
へー、屋上ってこんなんになってるんだ。なにもないなー。ほこり……は、まぁ気にするほどでもないな。
あっち側だと反対の校舎から見えるといけないから、こっちなら大丈夫かね。おー、なんか壮観だなぁ。4階とそう高さは変わらんのにねぇ。……しかし、こう景色が良くても、心中曇ってたら意味ないもんだなぁ。
……鬱、なぁ。どうして避けるんだ? たぶん、一応、おそらくは……嫌い、って訳じゃないだろーし。早まった、かなぁ?
他にも、よくわからん噂みたいなのも立ってるみたいだし。それが、迷惑うんぬんの理由なのかねぇ……
噂を本当だとすると、だ。色んな出来事の問題に巻き込まれるから、ってことになるよな。んで、噂を嘘だとすりゃあ、俺のことも鬱の噂としてさらに噂が立つから、って感じか。……まぁ、ここらなら俺のアプローチしだいでなんとかなる、か? まぁ、それは鬱の言う『迷惑』が噂のことだった場合の話だけどな。
で、噂以外のことが問題なら……そりゃあ、なんだ? よくある……いや、ドラマとかでの話だけどさ。とりあえず、よく聞く問題は、家族のことや性格やら身体障害やら……薬、イジメにあってる、だとか、かなぁ。まぁ、最後二つは行き過ぎだと思うけどさ。
ま、想像だけで考えたってしょうがないか。まずは今までの鬱の行動から考えてみようかね。鬱のことは、今年クラスが一緒になってからしか知らんから、とりあえずそっからか。
鬱は……基本授業は真面目に受けてるか?……いや、寝てる時もけっこうあるな。しかも、抜けてる時もあるっちゃああるし。本人は、気分悪くて保健室にいたとか言ってたな。休み時間も、大人しく席に着いてるな。……いや、でも他の女子に話しかけられたりもしてた、か? 本人は鬱陶しそうな顔してた気がするな……そういう時、けっこう席立って一緒にどっか行くような気も……
まぁ、わかるのはこれぐらいかぁ。で、以上のことから考えられる結論は?
……病弱、または先生の手伝い、もしくは……なんだ? イジメとかか?……って、この案さっき否定したばっかじゃんか。はぁ、わかんねぇ。
わかるかってんんだ、このくそー!」
ガタンッ
男「……って、なんの音だ? ここ屋上のはず……あ」
32 = 30 :
鬱「ぁ……」
男「う、つ? ど、どうしたんだよ。こんなとこに」
鬱「お、お昼ご飯に……男さんこそ、なんで?」
男「いや、俺も昼飯……」
鬱「でも、ここって普通入れないはずですけど」
男「たまたま来てみたら、入れた。お前もなんで来てんだよ」
鬱「ここの鍵外したの、自分すから」
男「お前だったのかよ……まぁ、その、ピッキングご苦労さん」
鬱「あ、はい。どもです。ここの鍵開けるため、頑張ってピッキング覚えたかいがあります」
男「わざわざ覚えたのかよ……どこまで屋上に来たかったんだ」
鬱「ほら、屋上ってすごく行きたくないすか? 漫画とかでよくそういうシーンあるじゃないすか。それで、すごく憧れまして」
男「気持はわからんでもないけど……よくやるなぁ」
鬱「いえ、大したことないすよ」
男「……まぁ、そうか」
鬱「……まぁ、そうです」
男「…………」
鬱「…………」
男「……えと、あのさ、鬱。一緒に昼飯食べr」
鬱「い、いえ、すいません。自分戻ります。どぞ、男さんは悠々屋上を満喫してください」
男「お、おい。だから、鬱」
鬱「すいません、男さん。……自分は、男さんとは食べれません」
男「っ!……それって、どういう意m」
鬱「お食事中、失礼しました」
ガチャ、バンッ
33 :
鬱な奴を誘って遊園地来るわけないだろカス
鬱な奴は総じて引きこもるわ。誘ったって理由つけて断るわ
からにころまずして何が鬱っ子だよ
こいつは鬱っ子ではなくただヒステリーぶったビッチ
34 = 30 :
男「……止める暇もなし、かよ。いったい、俺がなにしたって言うんだよ。ホント、訳わかんねぇ。……はぁ、ちゃっちゃと飯食って教室戻ろ
切るとこ間違えた……orz
次、場面転換です。
35 = 30 :
男「ふー……戻って友人とでも話すかな。ついでに六限目の宿題のノート借りるかな」
通りすがりの女1「……マジ鬱陶しいよね、アイツ」
女>2「いきなりぶつかってきてさ。ふざけてんのかって」
女>3「調子乗ってるよね。最近はやっと男に付きまとうの止めたみたいだけどさぁ」
男「……ん、俺のコト呼んだ?」
女>3「あ、ごめん。違う違う」
男「そか、話の最中に悪かったな」
男「(……けど、気になるなぁ。鬱陶しいとか言ってなかったか? ちょっと、こっそり付いてって盗み聞き、っと)」
女>1「……でさぁ、鬱のヤツ。自分の身の程わきまえたと思ったら、さっきのだもんね。アンタ脳味噌入ってる? って感じ」
男「(鬱の話か……!?)」
女>2「入ってないんじゃない? 授業で当たっても、毎回わかりませんとか言ってるし」
女>3「しかも、とろいし暗いし邪魔だし」
女>1「あはは、そうそう」
男「(話からするに、さっき鬱に会ってたみたいだな……ちょいと聞いてみるかね)」
男「なぁ、何度も悪いんだけど、ちょっといいか」
女>2「なぁに、男くん?」
男「鬱、どこにいるか知らないか? さっきから探してるんだけどさ、見つからなくて」
女>3「えっ」
女>1「……知らないよ。全然見てない」
女>2「そっ、そうそう! 私たちは知らないよっ」
男「……そう、か。引き止めて悪かったな」
女>1「いいよいいよ。ごめんね」
男「こっちこそ、わざわざ悪かったな。んじゃあな」
男「(全然隠れてないっての。態度に出過ぎだ。……けど、鬱と会ったのを隠したい、か。何したんだ? あいつらは)」
36 = 30 :
◇5限目◇
男「……授業始まっても、鬱は戻ってきてないか」
男「(いったいどうしたってんだ? 何で戻ってきてない?……まさか、戻ってこれない、のか? 腹痛、とかか?……いや、もっと可能性があるのは、さっきのあいつらがなんかした、か。
……もしそうだとして、なにをされた? ぶつかった、とか言ってたような……つまり、鬱があいつらにぶつかって、あいつらはそれにキレて鬱になんかしたわけ、だ。俺に隠したいぐらいだから、悪いことに決まってるな。なんか言って泣かしたか?……それぐらいなら、さすがにもどってくるわな。もっと、他のこと……怪我した、とかか? そしたら保健室に行くか。まぁ、これが妥当なとこかな。でもま、一応他の可能性も考えとくか。
他の可能性……戻ってこれないってことは、人に見せられないってこと、かな。人に見せられないとしたら……それはどんな時だ?……恥ずかしいとき。格好が、酷いとき。……格好が酷くなるほど、服が着てられなくなるほどのことを、された、時。)」
男「…………。さすがにそりゃあ、ないよなぁ」
男「(……ま、どうせ保健室にいるだろ。次の休み時間でも見に行くか。……宿題は、諦めよう。うん)」
37 = 30 :
男「誰も……いませんか」
保健の先生「えぇ。今日は誰も来てもないわよ」
男「……そう、ですか。わかりました。失礼します」
男「(保健室に、いない? じゃあなんでさっきの時間、鬱は教室に戻ってきてないんだよ。まさか、マジで戻ってこれないのか?
おいおいおい、冗談だろ? 鬱のヤツ、どこにいやがるんだ?
とりあえず、鬱が授業中ずっといそうな場所……特別教室は、授業あるかもしれんから却下だし。体育館も同じく。校舎の外……なら、窓から見ればいいから後でだな。
他には……トイレ、とか? ……もしトイレなら、どうやって探そう? だって女子のだろ?……まぁ、ここも後回しでいいかな。
他には……あぁ、そうだ。確か北館の一回は普通に授業で使う教室も少なくて、全然人来なかったな。よし、まずはそこかな)」
38 = 30 :
男「見た感じ、外にはいなかったと。……まぁ、絶対じゃないけど。で、ここにはいるかな……
……廊下にひょっこりいたりはしないよなぁ、やっぱ」
キーンコーンカーンコーン
男「うーあー。チャイム鳴りやがったぁ……まぁ、しょうがないか。愛しの鬱のためだもんな!……言ってて恥ずかしすぎた。馬鹿なコト言ってないで探そ。……と言っても、他にはもうこのトイレしかなくてですねー……
…………。い、一応男子トイレからさがすかな」
男「……案の定、いませんよねー。ですよねー。あとは、まぁ……女子トイレ、かな?
…………。…………・。
し、仕方なくなんだからね! 別に入りたい訳じゃないんだからね!? ほ、ホントだよ! 嘘じゃないよ! い、愛しの鬱のためなんだから!……れ、レッツゴー!
うわぁ……入っちゃったよ、女子トイレ。……えーと、鬱さーん? いませんかー? いたら返事してくださ-い。
…………。いないー? ホントー? てか、誰も入ってないよねー? 個室ばっかだから、怖いのなんの。いや、扉は全部開いてるんだけどさ。
……あ、便器の中になんかあった。あれは、メモ……ってか、もしや生徒手帳? 誰だの、こんなとこ落としたの。しかも、ちょうど水がたまってるトコだし。
これ、取るのか? 取っちゃうのか? 水流して、一度水が引いたところを一瞬で……! と思ったけど、そしたら生徒手帳も一緒に流れてきそうだなぁ。
……覚悟、決めるしかないか?
…………。えーい、やってやらぁ!」
男「しくしくしくしく……お母さん、お父さん、ごめんなさい。僕(の右手)は汚されてしまいました。……っと、いったい誰の生徒手帳かなー。悪い予感よ、当たるなよー?
……なーんて、なぁ。そうさぁ、予感ってのはなんで悪い時ばっかあたるのかねぇ。
よりによって……鬱の、かよ。
いやまぁ、ただ単に落としたってこともあるかもしれないけどさぁ……
女たちが話してた鬱の悪口、授業来ない、どこにもいない、トイレにこんなもん落としてる、とまで来りゃあ、ねぇ……もう、マジでそんな可能性が出てきたよオイ。
授業中も休み時間も、誰も来ないような場所……もう、あそこぐらいしかねぇな。あそこなら、ここから階段登ってくだけで着くし、な」
39 :
43 :
>>22
言った。 616 しかしヘロデはこのことを聞いて言った,これは,わたしが首をは
田舎から出て来た通りがかりの者で,アレクサンデルとルフォスの父であるキュレネ
44 :
ているのを見つけた。彼らの目は非常に重くなっていたのである。そして彼らは,彼
だがそれでいい。
知らない
45 :
男「……ホントに屋上にいやがったか。どうしたんだよ、こんなとこに」
鬱「授業、サボってんすよ。……男さんこそ、なんで?」
男「俺もサボり。しかしまぁ、昼までとは打って変わって、刺激的な格好してるねぇ。なに、イメチェン?」
――今の鬱の格好は、キャミソールの上にシャツをボタンをしないではおり。下にはスカートはなく、下着のみ。なんとも目に毒な太ももを大胆にさらし、でもそれらをすこしでも隠すように、出来るだけ小さくなるようにして膝を抱えていた。
鬱「……えぇ、そうです。どうすか、萌えたりしますか?」
――昼まで着ていたブレザーにスカートは、水で濡れていて、鬱の隣に広げて置いてあった。多少は乾いたみたいだけど、まだとても着る気にはなれない。
男「……そうだな。それで私を抱いてくださいとか言われたら、萌えるかもな」
鬱「私を抱いてください……どうすか?」
男「棒読みじゃあ萌えない。残念だったな」
鬱「そうすか、それは残念すね」
男「……となり、座るぞ」
鬱「……嫌です。帰ってください」
男「で、お前寒くないの? まだ秋とは言え、さすがに冷えるだろ」
鬱「……嫌って言ったのに、なんで座ってんすか」
男「座りたいから。……で、お前寒くないの?」
鬱「……。寒いすよ。でも、この服着たらもっと寒くなりますから」
男「じゃあほれ、このブレザー着とけ。まぁ、俺のだから大きいけどさ。今はちょうどいいだろ?」
鬱「……いりません。男さんのなんか着たくないです」
男「風邪引くといけないからな。まぁ、せくしーな姿が見れなくて残念だけど」
鬱「……なら、見ればいいじゃないすか。ブレザー返しますんで」
男「んーで、このあとどうするんだ? まさか、学校から誰もいなくなってから荷物取りに行くつもりだった、とか?」
鬱「だから、人の話しを……!」
男「で、どうするんだよ?」
鬱「……はぁ、鬱だなぁ」
男「……で?」
鬱「…………」
男「おいおい……本気で全員帰るの待ってたのか? まだ秋とはいえ、冷えるぞ? ホントに風邪引くっての」
鬱「……仕方ないじゃないすか」
男「仕方ないって、お前……携帯で呼んでくれりゃ、俺が行ったって」
鬱「……携帯もずぶ濡れで使えないすよ」
男「あぁ、そっか……」
46 = 45 :
鬱「……それに」
男「それに?」
鬱「……あんなことしといて、男さんに連絡出来るはずないじゃないすか」
男「あぁ、まぁ……そうか」
鬱「今だって、そうすよ……早くいなくなってくれって言ってるのに、聞く耳持たずで……」
男「…………」
鬱「自分は、男さんを振ったんすよ? しかも、一緒に遊びにまで行っておいて」
男「確かに、振られたねぇ」
鬱「それなのに、どうして自分にかまうんすか……」
男「どうしてって、そりゃあねぇ……好きだからだろ」
鬱「……思いっきり振られたのに?」
男「思いっきり振られたのに」
鬱「どうして、そこまで……」
男「前にも言ったはずだけどなぁ」
鬱「本当に、あんなことで……?」
男「あんなこととは、酷ぇなオイ。本気なんだぞ」
鬱「すいません……でも、なんで自分なんかを……」
男「はいはい、何度言っても平行線だから、この話題は一旦やめな。……それで、だ。お前にひとつ聞きたいんだが」
鬱「……なんすか」
男「どうしてお前が俺に迷惑かけるんだ? その意味がわからねぇんだけどさ……説明してくれよ」
鬱「…………」
男「一応、お前のこと好きだって言ってるヤツなんだからさ、それぐら説明されても良くねぇ?」
鬱「言わなくても……もう、わかってんじゃないすか」
男「なんとなくは。でも、正直ホントかどうかわからないし、もしホントだったとしても信じたくないから」
鬱「…………」
男「無理、か?」
鬱「…………」
男「……無理なら、まぁ話さなくてもかまわねぇよ。出来れば話してほしいけどさ」
鬱「…………」
男「別に引いたりしないから安心しろ」
47 = 45 :
鬱「…………」
男「…………」
鬱「……自分は、ですね。男さんのご察しの通り、イジメ、受けてんすよ」
男「そう、か」
鬱「きっかけは、なんなんでしょうねぇ……やっぱり、暗くて鬱陶しいからすかね。そうやって、陰からひそひそと言われてましたし。自分も、自分のことをそう思いますし」
男「……それは、わかった。それで?」
鬱「自分も色々受けてきましたよ。出来るだけ表沙汰にならないよう、陰湿なのを。あれですね。ストレス発散なんでしょうね、彼女たちからしたら。教室ぐるみでとか、そういうのがなかっただけマシすかね」
男「……いったい、どんなの受けてたんだ?」
鬱「男さんは……それを聞いてどうします? 聞かないほうがいいと思いますよ」
男「……そうか、ごめん。ぶしつけだったな」
鬱「いえ、かまわないすよ。それでですね。1年の頃は、まぁさほど気にならない……靴を隠したりだとか、オブラートに包まれたパシリだとか、そんな程度だったんすよ。2年の頃からすか、それがエスカレートしてったんすよね」
男「なんで、また……なんかあったのか?」
鬱「まぁ、あったんでしょうねぇ……彼女たちからしたら。学校の人気者が、学校の嫌われ者にかまうだなんて、許せなかったんでしょうね」
男「人気者って……おい、まさかそいつってのは」
鬱「はい。男さん、すよ」
男「そう、だったの、か……」
鬱「別に男さんのせいじゃないすから。気にしないでください」
男「いや、ごめん。全然気付けなかった」
鬱「だから、気にしないでくださいって。男さんが話しかけてくれて、嬉しかったんすから。イジメられるんも気にならなくなるぐらいに。これはホントですって」
男「でも、ごめん」
鬱「はぁ……だから、話したくなかったんすよ。男さん、絶対気にするんすから。まったく、鬱だなぁ」
男「いやその……ごめん」
鬱「気にしないでくださいって……まぁ、もういいです。そういうとこは、男さんのいいところすもんね。……つまり、です。男さんと自分が付き合おうものなら、彼女たちには今までよりも許せない状況になるわけです。今は自分だけで済んでますが、それが男さんまで飛び火するかもしれないわけです。さすがに、そんな迷惑かけてまで付き合おうだなんて思いません」
男「それが……理由か」
鬱「はい、それが理由です」
48 = 45 :
男「…………」
鬱「…………」
男「……なぁ」
鬱「どうしました」
男「ちょっとこっち見ろ」
鬱「はい? ってええ!? ちょっと、男さん、いきなりなにをっ!」
男「抱きしめた」
鬱「そ、そんな即答されても……」
男「堪らなくなった」
鬱「け、ケダモノですか……男さんは」
男「耐えられるか」
鬱「……ブレザー、着てるじゃない、すか」
男「もう、いいから」
鬱「なにが、っすかぁ……」
男「無理、しなくていいから」
鬱「……そんな、はしたなく、ない、すよ……自分は」
男「だから、無理するなよ」
鬱「……わけ、わかんないすよぉ」
男「そんな震える声で。そんな作った笑顔で。そんな辛かったこと……なんでもなかったかのように、話すなよ」
鬱「なんの、こと、ですか……?」
男「もう、いいからさ……」
ぎゅ……っ
鬱「あ……」
男「お前のそんな顔、見たくない。だから、無理するな」
鬱「……っ」
きゅっ
男「辛かったんだろ?」
鬱「……(こくん)」
男「もう、嫌だったんだろ?」
鬱「……(こくん)」
男「……誰かに、助けて欲しかったんだろ?」
鬱「……」
男「頷いたなら、俺がお前を助けるから。絶対に、とは言えないけどさ。でも、頑張って助けるから。ひとりには、しないから。……だから、頷いてくれ」
鬱「……でも、私は」
男「俺はお前を助けたいんだ。お前の笑った顔が、見たいんだ。迷惑だなんて思わない。必ずだ!」
鬱「……男、さん」
男「だから、さ。頷いてくれよ」
鬱「……はいっ(こくん)」
男「鬱っ」
ぎゅうっ
鬱「男さんっ……ぅぁ……」
男「……泣け。好きなだけ。顔は見ないでやるから」
鬱「ぅぁあ……うああぁぁぁっ……男さん……男さんっ! っひ、うぁぁぁぁぁぁああああんっ!」
――鬱の頭に腕を回して、優しく、だけど強く彼女を抱きしめる。
俺の腕の中で泣き叫ぶ彼女は、あまりにも小さく、儚くて。
この女の子は、俺が助ける。それは、彼女に救われた俺の恩返し。
この女の子は、俺が守る。それは、彼女のことが好きだから。
「……好きだよ、鬱」
「ひぅっ……はい、私も、男さんのことが、好き、ですっ……うあああぁぁぁぁぁっ……」
――そして俺たちは、思いきり抱き合った。想いが、伝わるようにと。
49 = 45 :
……久々に思い出し、スレを見てみたらレスが。
思わず書きました、はい。
「鬱っ子」というより、「鬱展開」ですね、これって。
今さらながらタイトル間違えたと……と後悔してる自分がいる。
読んでくれた人がいたら、幸いです。
50 :
ノシ
読んでるよ~。
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