男「どれどれ…今日はどれくらいホイホイに掛かってるかな」

男「……ん？」

女「そこのお兄さん、助けて下さい…ここから動けないのです」

男「ちっちゃ！……じゃなくて人間がホイホイに掛かっとる！」

女「私もう半日もこの状態で…。助けてくれたら何でもしますから！」

男「ゴクリ…」

女「ありがとうございます、おかげで助かりました！」

男「……最近の人形は良く出来てるなあ」ﾋｮｲ

女「あわわわわ、痛い痛い！宙吊りダメ！」

男「パンツなんかもこんな細かく…」

女「…っ…バカァ！！」ﾄﾞｹﾞｯ

ぐちゃ

男「正直すまんかった」

女「まったく…女のコはもっと丁寧に扱ってください！」

男「すまんこすまんこ。ところでさ…質問していい？」

女「いちいち腹立つなあ」

男「君、人間？」

女「ムカッ」

男「小さくてもパワーはあなどれんね」

女「私をなめると後悔しますよ？…それで私が何故普通の人間より小さいのか説明します」

男「kwsk」

女「………」

男「………」

女「………」

男「今考えてるの？」

女「違います！…アレ？忘れちゃった…」

女「どうして…？どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」

男「(ホイホイの中身見ないで潰しときゃ良かったな)」

女「おかしいな…。まるで頭からぽっかり消えたみたいに忘れてる…」

男「……悪い魔法使いに小さくされた、とか？」

女「そんな非現実的な…」

男「(アンタの存在が既に非現実的だよ)」

女「ま、まあとにかくこんな小さくなっちゃったんです！」

男「ふーん、別に興味無いけどね」

女「冷たいですなぁ、世間の風は冷たい冷たい」


ｸﾞｰｷｭﾙﾙ


女「あ……」

男「…お腹空いてるの？」

女「恥ずかしながら…。小さくなってから何も食べてないんでお腹がスッカラカンです」

男「スッカラカンかぁ…。ちょうど良いかもな」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

女「？」

男「いやいや何でもないよ…」

南君の恋人の存在を差し置いて新ジャンルだと？

かまわん、続けたまえ

男「せっかくだしごちそうするよ」

女「ホントですか！？地獄に仏とはこのことですなぁ」ｳﾙｳﾙ

男「さ、僕の手の上に乗って」

女「はいっ」ﾋﾟｮﾝ

女「なかなか揺れますねえ」

男「そんだけ小さいから少しの振動がすごい大きいんだね」

女「あ、小鳥さんだ。オーイオーイ」

男「それは動かないよ」

女「なーんだ。つまんないな」

剥製フラグ

携帯なだけに手乗りか……なかなか

女「お、こっちにはキツネさんが。こっちはワンちゃんだ！わんわん」

女「う…無反応ですね」

男「きっと君の声が小さすぎるんだよ」

女「そういうもんですかねえ」

男「そういうもんです」

男「ほら、着いたよ」

女「わーいご飯だご飯…」

女「あり？なんかこの床濡れてますよ。ダメだなあ、掃除しなくちゃ」

男「そこは良いんだよ」

男「まな板の上だからね」

>>9
お前すごいな

南君の恋人というものがあってな

女「…まな板？」

男「そう、まな板」

女「やだなあ、まるで私が料理されるみたいな…」

男「フンフフーン」

女「ってちょっと…聞いてます？」

男「僕は運が良いなあ」

女「ちょ」

男「最近動物の剥製だけじゃ物足りなくなってたんだ」

女「はく…せい…？まさか…」

男「小さいとは言え人間を捌けるなんて幸せだ」

女「いやっ！誰かたす…」

男「ここには僕しか住んでないんだ、もう諦めなよ」

事情が変わった
続けて

カーニバルリズム

どうした？

女「うぅ…ん…」

夢か…

このところこんな夢ばかり見る

これは私が心の奥では男君を信用していないという意味なんだろうか

彼に助けられて三日が経った

彼のペット、小鳥のピーチとは仲良くなれたみたい

小さくなって良かったことは時折ピーチに乗って空のお散歩が出来るくらい

また、一日が始まる

女「んしょ…。こんなティッシュ箱じゃなくてちゃんとしたベッド買って欲しいなぁ」

女「あーさでーすよー！」

男「ああっ！……耳が痛いっ」

女「おはよ」

男「…おはようございます」

女「…早く」

男「……なんだっけ」

女「早くトイレ連れて行って！」

男「あー、そーだった。てかそこに簡易トイレあるじゃない」

女「え？こんなペットボトルのキャップにしろと？」

男君はたまにヘンだけどいつもは優しい

でも口に出すと調子に乗りやがるし、何より私が恥ずかしい

男「そうだ、今日から月曜だから学校あるわ」

女「私どうしたら良い？」

男「うーん…学校くる？」

女「へ？」

男「だって一人じゃ何が起きても助けてあげられないし」

女「……そうしようかな」

男「筆箱に入るかな…」

女「ちょ、ちょっと待って！シャーペンが痛い痛いっ」

男「…ならカバンのポケットにでも」

女「うん、良い感じだよ」

女「うぇ…」

男「♪～」

女「ユサユサして酔うよぉ…。男君、男君ってば！」

女「……ダメだ、聞こえてない」





男「やっと着いた、チャリが欲しいなあ」

女「……」

男「…女さん…？」

女「……」ｶﾞｸ

男「うーむ、やっぱり酔ったか」

期待している

女「しばらく筆箱の中で寝る、シャーペンは外に出しとくからね」

男「なんとハタ迷惑な…」

友「おーす。何朝からブツブツ言ってんだ？」

男「おす。何てこたないさ」

友「それより聞いたか？優さんのこと」

男「え？ななな何だよ？」

友「今日の朝だけで五人に告られたんだってよ」

男「優さんモテるからなあ…」

友「しかもその中にはＢ高のイケメンもいたって話だ」

男「ゴクリ…そ、それで優さんはＯＫしたのか？」

友「……いつも通り、バッサリ切った」

男「ホッ…良かった…」

友「お前じゃ高嶺の花すぎて届かねえよ、てかまずは話しかけて友達からにしろって」

男「うっさいな、分かってるよ。分かってるけど…」

友「応援してるぜぃ」ﾎﾟﾝ

男「まったく…」

キーンコーンカーンコーン…

女「むにゃ…ここはどこ、私はだれ…」ｶﾞｻｺﾞｿ

男「ばっ、いきなり出てくる奴があるか。誰かに見られたら」

優「………」

男「あ…ああ…」

優「うわ、キモっ」

取り巻き「フィギュアが許されるのは小学生までだよねー」

取り巻き「キャハハキモーイ！」

野次馬「男にはそんな趣味があったのか」

野次馬「わざわざ筆箱に人形入れてるなんて…」

野次馬「でも可愛いぞあの人形」

ガヤガヤ…

男「人生オワタ」

剥製に期待していたのに

男「もうダメだ…」

男「優さんに見られた…。一度も喋ったこと無いのにキモいて…キモいなんて…」

男「あァんまりだぁー！！」

女「(ね、寝たふり寝たふり…)」

友「さすがの俺もそれは引くわ」

女「き、今日はごめんね…？」

男「いいよいいよ…もう人生終わったし」

男「今この瞬間も俺は帰り道にフィギュアと話すイタい奴に見えてるんだろうな」

女「も…もう吹っ切っちゃえ！あの優って子、結構ひどいよね。あの子達が騒がなきゃ気付かれなかったのに」

男「そんなこと言われても…」

女「それに女なんて星の数ほどいるって。ほらほら、君の目の前にも可愛い子いるじゃん！」

男「どこだよ」

女「ほらほら、目の前だって」

南くんの恋人のパクリ




続けろ

たいがああああああああああ

と思ったのに

女「イキの良い娘っこが！ほれほれ！」

男「さすがの俺もそれは引くわ…」

女「……知らないよ！せっかく元気付けたげようとしたのに…」

男「………」

女「………」ﾁﾗﾁﾗ

男「………あ、ありがとう」

女「そうそう、素直な子はお姉さん好きだぞー」

男「…年上なのか？そういや年齢訊いて無かったね」

女「……それも忘れてるみたい」

男「しかし謎だね。小さくなった時に自分の名前以外忘れちゃうなんて」

男「あ、今週のジャンプチェックしなきゃ」

女「好きだねぇー」


ウィーン


男「げ」

女「あ、噂の優さんじゃん。話しかけないの？」

男「無理だろJK」



女「……結局ジロジロ見てる」

優「………」ｺｿｺｿ

男「何か動きがおかしい」

優「……」ﾊﾞｯ

女「あ！今バッグに商品を入れましたねぇ」

男「信じられない…優さんが万引きするなんて」

続けてくれ

落とさせねえぞコラ

ウィーン
優「…ふふっ」
男「…ゆ、優さん？」
優「！？な、何か用？」

男「……今返すなら黙っててあげるから、店の商品出して」

優「は？濡れ衣よ。いきなり何なのよ」

男「このコンビニはさあ…おじいさんとおばあさん二人でやってるんだよね」
優「……」

男「夜７時には閉まっちゃうし品揃えも良いなんて言えないけど、どこのコンビニより人は多い。それは二人が優しいから」

男「金が無さそうな学生にパンおまけしてくれるし色々悩んでる子がいたら親身に相談に乗ってくれる。こんな二人を悲しませたくない…だから、返そう？」

優「……だから？」

優「別に欲しくて万引きしてるわけじゃないわ。ただの度胸試しよ」

男「………」

優「…あーあ、冷めちゃった。ほら返すわよ」

男「……分かってくれてありがとう」

優「キモっ。勘違いしないでよオタク」ｽﾀｽﾀ

女「……やるじゃん」
男「ちとクサかったかな？」

女「散歩行ってくるね」

男「またピーチに乗って？ピーチ苦しそうにしてたぞ」

女「そんなことないよ、ねーピーチ？」

ピーチ『おまえ おもい しね』

女「ほら、そんなことないって！」

男「都合良く解釈してる気が…」

女「とにかく行くぞピーチ！レッツゴー！」

ピーチ『おもすぎワロタ』

女「風がきもちいーぜ！」

女「おっ、見慣れないわんこ発見！」

ピーチ『！！げ、厳太さんだッッ』

ピーチ『っしゃーす厳太さん！』

厳太『おうピーチ、何乗っけてんの？』

ピーチ『こ、これは…』

女「かーわいいワンちゃんだ、わんわん！」

“！？”

厳太『…こいつ舐めくさりやがって』

ピーチ『女ァ！頼むから厳太さんにそんな言葉はよしてくれェ』

厳太『もうプッツンきたぜ！そいつを引き裂いてやる！』

ピーチ『わっ、バランスが…』

女「きゃっ！」

ヒューン

女「いたた…」

厳太「グルル…」

女「ど、どうやら穏やかな雰囲気じゃないみたい」

厳太「ワンッワンッ！」

女「男君っ！私は先に逝きます！」

？？？「あらゲンタ、何か見つけたの？…あっ…この人形…」

女「あ、アンタは…」

優「これあのクソオタクのフィギュアじゃない。…むかつく、捨てよ」

女「待って！」

優「あーキモいキモい」

優「……は？今、喋った？」

女「決して怪しい者ではありませんっ！」

優「充分怪しいっつの！」

支援しとく

優「…つい連れて帰ってしまったわ」

女「助けてくれてありがとう！でも男君…心配してないかなあ」

優「アンタ一体何者？」

女「…かくかくしかじか…」

優「なるほどねえ…あのオタクにベタ惚れってわけか」

女「って何でそーなるの！？わ、私はただ感謝してるだけで…そんなこと…」

優「あーはいはいノロケはウザいからストップストップ」

女「ムッ」

優「そんなことよりアンタの服ボロボロじゃない」

女「あっ、お尻のとこ破れてる…」

優「ね、ね！これ着てみない？」

優「やーんっ！かわいい～」

女「…ピッタリだわ」

優「やっぱり着てくれる人がいないと作った意味無いわね」

女「あなた意外にこんな女のコらしい趣味あるのね」

優「失礼なヤツね」

女「っと…そろそろ帰らないと…男君が」

優「まだ良いじゃない。…私の家誰もいないのよ」

女「親御さんは？」

優「ママは仕事で三日に一度帰ってくるくらい、使用人はいるけどみんなつまんないのよ。だからもう少し、居て？」

女「うーん…ここにいると男君が心配するし帰ると万引き女が可哀想だし」

優「万引き女言うな」

支援

優「…で、何でこのオタクの家で夕飯食べることになってんのよ！」

女「まぁまぁ…。男君も一人暮らしで寂しいだろうしたまには良いんじゃない？」

男「優さん…オタクって呼ぶのやめてくれない？俺には男って名前があるんだし」

優「はっ、アンタ私に名前で呼んで欲しいの？高くつくわよ？」

男「(うぜぇ)」