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    元スレ友「ハーレムエンドっていいよな」

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    101 = 80 :


    「……いや、何でもない。言うのが遅れて悪かった」

    黒髪「なんなら一番初めに言ってきてほしいぐらいよ。小さな頃から見てきた男に彼女ができたなんて、”姉”として嬉しいわ」

    「あ、ありがとう……。……ん? ”姉”?」

    黒髪「? だって、あなたは私の弟であり、私はあなたのお姉ちゃんでしょう?」」

    黒髪「小さな頃からあれだけ触れ合ってきたんだもの……。これはもう完全に姉弟だと思うのだけれど。いや、完全に姉弟ね」


    (こ、こいつ……。おかしな方向に吹っ切れてやがる……!)

    102 = 80 :


    黒髪「なので今から姉弟としてのスキンシップをしましょう。それが一番だわ」ダキッ

    「ちょっ! いきなり抱きついてくるなっ! やばいって!!!!」

    (主に背中に当たっているその2つの球体が!!!!)

    黒髪「いいじゃない。勉強会の時だっていつもしてきたことじゃない。それに……」

    黒髪「こんなに大きな胸は、あの娘には無いのよ?」ササヤキ

    「~~~~~~っ!」ゾクゾク

    黒髪「……この様子だとまだ一夜を過ごしたわけではなさそうね」

    「ば、ばか! 離れろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

    103 = 80 :


    「よぉー男ー。……大丈夫かお前? 妙にげっそりしてるけど」

    「……黒髪のせいで大変な目にあった」

    「黒先輩にか。……このリア充め、ざまあみろ」

    「はあ……。夜ご飯作ってくれるのはありがたいんだけどなー……」

    「誰が夜ご飯作ってくれるの?」

    「おわぁ! ……なんだ、女か。おはよう」

    「お、いいんちょおはよー」

    「友君、それに男君もおはよっ」

    104 = 80 :


    「昨日メールで言ってた実行委員の仕事はもう終わったのか?」

    「うん。最初の予定だとホームルームに間に合うかどうか微妙だったけど、以外と早く終わっちゃった」

    「……」ニヤニヤ

    「そうか。そりゃあよか――」

    「それで、さっきの話の事。詳しく聞きたいな~」ニコニコ

    「あ、いや、その……」

    「ききたいなぁ~♪」ニコニコ

    「アッハイ」

    105 = 80 :




    「そんなのずるいよっー!」

    「悪い……。確かに彼女がいるのに他の女子に夕飯作ってもらってるってのは無神経だった」

    「……私も作りに行く」

    「……はい?」

    「今日、男君の家にご飯作りに行くから放課後は買い物に付き合ってね?」

    「でも女は委員会じゃ……」

    「委員会より大事な事ができたの」

    「わ、分かりました……」



    「……」ニコニコ

    「イイナー。オレモカノジョホシイナー」ニコニコ

    106 = 80 :


    「じゃがいも、人参、玉葱……」

    「……」

    (結局女に押し切られて、食材の買い出しに来た。ちなみに何を作るのか聞いてみたが一向に教えてくれそうにない)

    「しらたきと豚肉っと。そういえば男君の家に調味料って揃ってる?」

    「一般的な調味料なら大丈夫だ」

    「そっか。じゃあ後は――」

    107 = 80 :


    (……なんかこの時点で作るメニューが分かってきた気がするな)

    「ねぇ、男君……なんだかこうやって買い物してると……夫婦みたいだね」

    「   」

    「私達、今新婚さんみたいにアツアツだもんね♪」

    「お、俺はこんな子に育てた覚えはないぞっ……!」

    「……?」

    108 = 80 :


    「ごめんね、荷物持たせちゃって。重かったら持つよ?」

    「これぐらい大した事ないって。女はこれから料理作るんだから、それに備えてもらわないと」

    「そう言われたら仕方ないなぁー。よーっし! 気合い入れて作るよ―っ!」


    (彼女の手料理か……。今まで黒髪に作ってもらってはいたけど、それとはまた別だよな……)

    (やっぱ、雰囲気とか違うもんですよ。それだけに彼女の手料理というのは魔翌力を持っているはず)

    (くぅー! 楽しみだな……!)


    「あら」


    「え」

    「あっ」

    109 = 80 :


    黒髪「これは奇遇ね。男に……女さんでよかったかしら」


    (ラスボスktkr)


    「あ、はい。私、女って言いますっ。その男君とは……」

    黒髪「聞いてるわ。付き合ってるんでしょ、あなた達」

    「そ、そうです」

    黒髪「そんなに堅くならないで。別に取って食おうってわけじゃないのよ?」

    「いえ、そのぉ……あの黒先輩と話してるってだけでなんだか萎縮しちゃいますよぉ……」

    110 = 80 :


    黒髪「……私ってそんなに怖い?」

    「い、いえ! そういうわけじゃないんです」

    「私達女子の間でも黒先輩は、憧れの人なんで」

    黒髪「こんな可愛い子に慕ってもらえるなんて私も幸せ者ね」

    黒髪「その彼女の男なんてもっと幸せものね」フフ…

    「と、とんでもないですっ!」

    黒髪「……ホントに可愛い子ね」








    黒髪「”で” そこでさっさと家に帰ろうとしている買い物袋を持った男君?」

    111 = 80 :


    「」ビクッ


    黒髪「その買い物袋の中身、気になるのだけれども」

    「い、いやぁ……。これは……」

    「私が今日、男君に夕飯をつくるんです」

    黒髪「そうだったのね……」

    黒髪「……」


    (……なんでだろう。すごく不穏な気配がするのですが……)






    黒髪「私も、ご一緒させてもらおうかしら」ニッコリ

    112 = 80 :

    今回はここまでです。 次回はほっこりまったり食卓回です(白目)

    113 :

    乙です

    俺バカだからよお、女ルートが確定した時の英語が何言ってるのか全然わかんなくてよぉ、誰か和訳を教えてくれねぇか

    114 :

    >>113
    僕の方から教えると少し野暮な気もするので……『<英文> 和訳』で調べるとすこしハッピーになります(白目)

    115 = 114 :


    (買い物をしていた時の女の”新婚”という表現はあながち間違っていなかった)


    「……っ」

    黒髪「……」ニコニコ


    (一生懸命夕飯を作ってくれている女。その様子を遠巻きに微笑みながら”観察”している黒髪)

    (早くも嫁姑問題の様な形相を描き出している我が家の食は果たして大丈夫だろうか)

    (結婚とかしてないけどね! あくまでそれっぽいってだけあって、決して他意は無いからなっ!)

    116 = 114 :


    黒髪「……こうしてると、本当に弟を送り出す姉の様な気持ちになるわね」

    「”姉”じゃないけどな。どちらかと言えば姑みたいな感じ」

    黒髪「いつから私はあなたの母親になったの? それとも姉を否定して母親を肯定するって事は私が年老いてるとでも言いたいのかしら?」

    「すみませんお姉様。これからは言動に気をつけます」アセアセ

    黒髪「よろしい」

    117 = 114 :


    黒髪「……ところで男。あなたはどうして女さんを好きになったの?」

    「え、やだよ……。何でそんな恥ずかしい事を言わなきゃならんのよ」

    黒髪「いいじゃない……。お姉さんからのお願いよ」

    黒髪「言わないと……イタズラしちゃうかも」ボソッ

    「わ、わかったよ……」


    (確かに、今までそういう所を考えてこなかったな……。俺が女を好きになった理由か)

    (いつも明るくて、誰に対しても優しい。誰からも慕われる女)

    (だけど、二人きりなると俺の為に一生懸命尽くしてくれたり、少しワガママになったり、他の女子に嫉妬したりする可愛い一面もある)

    (彼女の隠された一面を知っているのは多分、俺だけ。……きっとそんな性格を好きになったのだろうな)

    (理由としてはこうだと思う。けれど、そんな事考えていた時間なんて一度も無かったんだ。だから俺の答えは……)

    118 = 114 :


    「――気づいたら彼女を好きになっていた。ただ、それだけ」


    黒髪「……ふぅん」

    「……なんだよ、興味なさそうに」

    黒髪「別に? 考えた結果がそんなものかなんて思ってないわよ?」

    「絶対思ってんだろ……」

    黒髪「じゃあ、ここでお姉さんからワンポイントアドバイス」

    「姉を訂正しろ姉を」

    黒髪「……ノリが悪いわね。あなた気づいたら好きになってたなんて言ってたけれど」




    黒髪「彼女の事、ちゃんと分かってる?」

    119 = 114 :


    「当たり前だろ……。」

    黒髪「じゃあ、彼女の好きな食べ物は?」

    「それは……」

    (あれ……? なんだっけ……? この間デートした時はパスタを美味しそうに食べてはいたが……)

    黒髪「彼女の趣味、得意な事。逆に苦手な物や不得意な事……。あなたはそれが今、全て言えるの?」

    「……言えない」

    黒髪「はぁ……。これだからあなたは」

    120 = 114 :


    黒髪「女さんが好きなら、彼女の事をもっと見て、もっと知りなさい」

    黒髪「浮ついた気持ちじゃなくて、本当に好きになった相手なんでしょう?」

    「……ああ」

    黒髪「だったら尚更よ。……女の子は好きになった相手には自分を理解してほしい生き物なの」

    黒髪「彼女もきっとそれを望んでいるはず。だから、男。あなたはそれを肝に命じて置きなさい」

    「……分かった」


    (黒髪の言ったことに何も反論できなかった。そんな自分に腹が立つ)

    (女の事、何も理解しないまま彼氏面して……。ダセえな、俺)

    (もっと彼女の事を理解していかなければ、そうしてもっと近づいていける様に)

    (そしたらきっと――)


    『……』


    (あんなにも寂しく、虚しい顔をしていた女さえも理解する事ができるはずだ)

    121 = 114 :



    「出来ましたーっ!」


    「おぉ……!」黒髪「へぇ……」


    (明るい声と共に料理を持ってくる女。その手にあったのは俺の予想通り……肉じゃがだった)

    「やっぱり肉じゃがだったんだな」

    「あれだけ材料見られたらさすがにバレちゃうよ」

    「野菜を買っている時はまだカレーの線をまだ捨てられなかったけどな……しらたきの時点でピンときた」

    「しらたきをカレーに入れることなんて絶対無いもんね」クスッ

    「それ以外にも煮浸しとか、酢の物、これは……」

    「ほうれん草の胡麻和え。お母さんが好きだからよく作るんだ」

    「へぇ……。料理できるって言ってもまさかここまでとは思ってなかった」

    122 = 114 :


    「じゃあ……いただきます」

    黒髪「……頂きます」

    「どうぞ、召し上がれ」ニコニコ

    「んー! んまい、って熱っ!」ホフホフ

    「あっ、大丈夫?」パクパク

    「大丈夫……。いきなり一口大のじゃがいも頬張ろうとしたから……」

    「んもー……。量は多目に作ったつもりだからどんどん食べてね?」

    黒髪「……」

    「黒先輩も私に遠慮しないで食べてくださいっ」

    黒髪「ええ。そうさせてもらうわ」ニコ

    黒髪「……ところで、これは隠し味でも入れてるのかしら。少し風味が違うように感じるわ」

    「あっ、それは味噌を――」


    (この様子だと黒髪と女の心配をする必要もないみたいだな。主に黒髪が何をしでかすか分かったもんじゃないし)

    123 = 114 :


    「……本当に大丈夫か?」

    黒髪「大丈夫よ。まだ9時も回ってないし、駅までの道も明るくて人通りも多いでしょ」

    「いや、やっぱり俺も送りに行くよ」

    黒髪「たまには”女の子”だけで話したい事だってあるの。そうでしょ、女さん」

    「は、はい……」

    黒髪「変な事があったらすぐ電話するから」

    「わかったよ。女、今日はありがとう」

    「よかったら……また作ってくれ」

    124 = 114 :


    「うんっ、またその内にね」

    「じゃあ黒髪、女の事頼む」

    黒髪「ええ。……では、失礼するわね」

    「男君、じゃあね~」フリフリ

    「……」フリフリ


    バタン……


    (女の肉じゃが美味かったな……。次はまた違うメニューを作って欲しいな)

    (彼女の手料理……ん~! いい響きだなぁ~)

    125 = 114 :





    スタスタ……




    黒髪「……」

    「……」


    「……あ、あのっ」

    黒髪「?」

    「話したい事があるって聞いたので何だろうと思いまして……」

    黒髪「そうね……私、口下手だからあまり話題浮かばないのよねぇ……」

    126 = 114 :


    「あ、あはは……」

    黒髪「……ということでいきなり聞くけど、女さんは男のどこを気に入ったのかしら」

    「えっ、ええと……優しい所です」

    黒髪「分かるわ。男は変に細かい所まで気を遣ってくるから」

    「そうですよねっ」

    黒髪「男ったら小さい時なんて……これは、やめておくわ」

    「男君の小さい頃の話ですかぁ……。気になりますね」

    127 = 114 :


    黒髪「この話はまた今度でいいかしら。そろそろ駅に着くでしょう?」

    「そうですね、また機会があればその時に是非……」

    黒髪「じゃあ、私から最後に一つだけ……」


    黒髪「――あなたが何を目的として男に近づいたかは私は別に興味無いし、男にも言うつもりも無いわ」


    「……!!」


    黒髪「ただし……」
























    黒髪「男に何か危害を加えるような事をしたら、私はあなたを絶対に許さない」ギリッ



    「……」

    128 = 114 :


    黒髪「……なーんて。冗談よ」



    「……ふ、ふ……」

    「ふはあぁぁぁぁ…………息が詰まるかと思いましたよぉ……」


    黒髪「ごめんなさいね。ちょっとこういう事するのに憧れがあったの」

    「黒先輩、すっごく怖かったです……」

    黒髪「女さんをここまで怖がらせる事ができたってことは私の演技も板に付いてきたってことかしらね」

    「今後はこういう事をしないでくださいね……。心臓いくらあっても足りません」

    129 = 114 :


    黒髪「ふふっ……。あなたも反応が可愛いわね……」

    「あ、私ここまでで大丈夫ですっ」

    黒髪「そう? ……では、女さん。またいつかこうしてお話しましょ?」

    「はい……。おやすみなさい!」

    黒髪「ええ。おやすみなさい……」

    130 = 114 :






































    黒髪「……もしかしてと思ってカマをかけてみたけど、あの顔――」


    『……』


    黒髪「……残念ながら、”クロ”ね……」







































    131 = 114 :

    今回はここまでですん

    133 :

    ~~~~~~


    (夏の気配は鳴りを潜め、いよいよ秋も深まってきた。文化祭も近づき、本格的に校内が文化祭ムードに染まりつつある)

    (それは俺の周りも例外ではなく、クラスの準備等でこれからは忙しくなりそうだ)

    (中でも女は実行委員なだけあって多忙を極めている。その為、ここ最近は放課後に共に過ごす事も少ない)


    「はぁ……」


    (そして今は部活に来て、女の仕事が終わるのを待っている。……待っている事は女に伝えてないけど)

    (サプライズの様なもんだし、作業で疲れている彼女を少しでも元気づけられる……と思う)

    134 = 133 :


    後輩「先輩、珍しくため息なんて溜め息ついてどうしたんですか?」

    「あっ、悪い。無意識に……」

    後輩「何か悩みがあるのであれば、私が聞きましょうか……? 解決は、できないかもしれないですけど」

    「いや、大丈夫。別に大したことじゃないから」

    後輩「そう、ですか……」シュン

    「あっ、気を悪くしないでくれ。本当に大した事じゃないんだ。これは自分で考えるべきことだから」

    後輩「いえ、私が勝手な考えで先輩のお役に立とうとしただけです」

    後輩「……これぐらいで、恩を返すとは程遠いことですが……」

    「いや、後輩の気遣いのお陰で少しは楽になった。ありがとな」ニコ

    135 = 133 :


    後輩「ぁ……は、はい」

    「それにあの時の事はもういいって。俺が勝手に出しゃばっただけだし」

    後輩「い、いえっ! そんな事はないですっ!」

    後輩「あそこで先輩がいなかったら、私はっ……!」

    「お、落ち着け後輩……」 

    後輩「あ……すみません」

    「いや、謝る必要はない。ただ、後輩がそこまで声を出すなんて少し珍しいから驚いた」

    後輩「~~~っ!!」セキメン


    (後輩は手に持っていた本で顔を隠す。よっぽど恥ずかしかったのか……)

    136 = 133 :


    後輩「わ、忘れてくださいっ……」

    「いーや、覚えとく。こんな姿の後輩なんて二度と見れないからな」

    後輩「うぅ……」

    「……まーとにかく、あれは俺が勝手に恩を投げ売りしていっただけ。それに返すも何もない。それでいいな?」

    後輩「……じゃ、じゃあ私からも1ついいですか?」

    「ん?」

    後輩「また先輩が困っている様なことがあったら、その時は私が勝手に恩を投げ売ります」

    後輩「そこに貸し借りは無い……。そういう事でよろしいですか?」ニコ

    「……まいったな。こいつは一本取られた」

    「わかったよ。ただ勝手に無茶するような事だけはしないでくれよ?」

    後輩「……はいっ」

    137 :

    きたい

    138 :

    きたい

    139 :

    きたい

    140 :

    おもしろい

    141 :

    きたい

    142 :


    ~~~~




    「……」


    (時間も頃合いになったので、後輩に別れを告げて校門に向かい、女の下校を待つ)

    (前ほどの暑さは感じられなくなり、程よく心地の良い気温なので、女が来るのを待つのも苦じゃない)

    (……女はどんな反応してくるのだろうか。少しワクワクする)

    (遠目に昇降口を見ると、下校してくる人の中に女の姿を見つける。……内心、いなかったらどうしようかと思っていた所なので、ほっとする)

    143 = 142 :


    (……さーてと。そろそろ姿を出そう)


    「よっ、お仕事おつかれ――」

    (女が校門近くまで来たのを確認し、声をかけたその瞬間)



    「――――え?」



    (女の顔は、心底驚いたような顔をしていた。それは喜ぶ類の感情ではなく……まるで凍りつくような冷たい表情だった)

    144 = 142 :


    「……あっ、ちょっとしたサプライズで……その、最近あんまり一緒に帰ってなかったし……」

    「そ、そんな……私のせいで男君に負担をかけさせたくないって前に言ったはず」

    「大丈夫だって。今日は部活に出てきたから、負担も何もかかってないから」

    「で、でも……」

    「……最近、仕事の忙しさで大分疲れていたのを見てて、俺も何か出来ないかって考えたんだ」

    「仕事を手伝おうにも女は断るから、せめて少しでも話を聞いて、疲れを癒せればと」

    「……う、ううん。大丈夫だから」

    145 = 142 :


    「……そ、そうか」

    「……」

    「……ご、ごめんなっ。俺の勘違いで返って女に負担かけさせて」

    「そんなことないよ。男君の気持ちはすごく嬉しいから……」

    「あ、うん……」

    「……」


    (女の気持ちを考えないで自分勝手な行動をしていた事に恥じなければならない)

    (そして、彼女の気持ちを第一に考え……自分の気持ちを”押し殺せばいい”)

    (少し待てば、きっとまた女と触れ合う時間は増えるはず……)

    146 = 142 :


    (――しかし、本当にそれでいいのか?)


    (女の状態は明らかにいつもと違う。いつもの明るい表情は鳴りを潜め、曇った表情をしている彼女を俺は野放しにしている事が彼女の為になる?)

    (彼女を支える立場にいる俺が、今何もしないことは本当に正しいことか?)



    (……違う。それは正しい”選択”ではない。俺が成すべきことは……)




    「……女」


    「……?」

    147 = 142 :


    「俺は、女を支える立場にいる人間だと思っている」


    「だから辛いことがあれば、遠慮なく言ってほしいし、それを解決する為の手助けをしたい」

    「……彼女が暗い顔するのは、俺は嫌だから。女は笑顔の方が絶対似合っていると思うし……」


    (映画館で見た表情。そして、さっき見せた表情だって……。俺はまだ、彼女という存在を理解していない)

    (彼女には俺の知らない面が隠されている……。そう思ったから)


    「……」

    「俺の自己満足かもしれない。おこがましい事を言ってるのかもしれない……。それでも、俺は女の力になりたい」

    「悩みがあるならいくらでも聞く。何かしてほしい事があるならいくらでもやってやる」


    「……だから、手を貸してほしい時は声をかけてくれ。その時まで、俺は待つから」


    (今言っている事は、彼女に負担をかけさせてしまうかもしれない。けれど、そうしてでも言わなきゃならない)

    (彼女の様に身近な人が困っているのなら手を差し伸べなければならない)



    『おれといっしょにあそぼうっ!』



    (俺がそうされた様に。手を差し伸べることが、いつかはその人を救う事になると信じているから)

    148 = 142 :


    「急に色々言ってごめん。でもこれが俺の気持ちだから。迷惑だと思ったのなら聞き流してくれ」

    「……それじゃあ、また明日」

    (ちょうどいつも別れている付近まで来たので、一言入れてさっさとと行くことにした)

    (……だって、少し恥ずかしい事言ったしなぁ……ちょっと離れたい気分もある……)

    (女も考える時間が必要だろう。だから、今はこれいいはずだ)






    「……」

    149 = 142 :


    ――――




    「……今日で終わりだ。今までご苦労だったな」

    「問題ないです。……今までに無かった体験ができましたから」

    「へぇ……興味深いな。計画が終わった際には色々と聞かせてもらおうか」

    「……大した事ではありません。”持った”同士で行動すると何が起きるか想定ができないというだけです」

    「なるほど。”再生<ロード>”を繰り返してきたお前にとって、同じ行動を取らない対象は扱いにくいと?」

    150 = 142 :


    「……そのような解釈です。第一に今回は”再生”が許可されていません」 

    「持っている者同士だと互いに”再生”を繰り返して行動パターンが読めなくなると説明を受けてましたから」

    「そうだったな。まぁ、研究対象についてはまだアレを自覚していない点からしても、”再生”を行う可能性は極めて低いのだがな。念には念を入れとかないとな」

    「……」

    「だからヤツが選ばれたと言っても過言ではない。っと、他愛もない話はここまでにしとこうか」

    「次に向けての準備をしなければな……」

    「お前は、役目からしても少し疲れてはいるだろうから休暇を一日ほど取っても構わないが、どうする?」

    「大丈夫です。私はいつでも”再生”してもらっても構いません」

    「そうか。なら日付が変わる前に”再生”を実行する。三時間後、またここに来るように」

    「……はい」


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