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    元スレ狩人「スライムの巣に落ちた時の話」

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    201 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:18:54.55 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-129)
    私の頭の中に、素晴らしい光景が広がる。



    深い森の中。



    アオとアカが狩りをしている。

    アオは予想通り、狩りが上手だ。

    けど、アカは上手く獲物を捕る事が出来ない。



    ミドリは相変わらずマイペースで。

    遠巻きに座って歌を歌っている。

    その声で、獲物が逃げてしまい、アオとアカが怒っている。



    私のそばには、クロが座っていて。

    何かと私の世話を焼いてくれる。



    狩人でなくった私。

    そう、そうんな未来が。

    あっても、いいのかもしれないね。



    ふと、足元に花が生えているのを見つけた。

    綺麗な花だ。

    そうだ。

    彼女に持って帰ってあげよう。
    202 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:19:42.45 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-60)
    私は、村へ向かい。

    彼女を探した。



    けど、見つからない。

    村中探したけど、見つからない。

    見つからない。

    何処にも居ない。




    ああ。

    そうだ。

    そうなんだ。




    もう。

    彼女は絶対に見つからない。

    生き返っても。

    その世界に、彼女はいないのだ。

    私が手に持っていた花は、何時の間にかなくなってしまっていた。
    203 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:20:22.44 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-116)
    目から雫が流れる。

    涙が止まらない。

    胸が締め付けられる。

    立っていられない。




    ああ、そうか。

    私はもう。

    狩人じゃないんだ。

    だから。

    だから、誰かが死ぬのが。

    こんなにも、悲しい。




    悲しい。

    苦しい。

    いやだ。

    いやだよ。

    しんじゃいやだ。

    いやだ。

    ほんとうは。

    だれにもしんでほしくなかった。

    すごくかなしかったんだ。

    すごくくるしかったんだ。




    おかあさん。

    おとうさん。

    そして彼女。

    あいたい。

    あいたいよ、もういちど。





    ああ、だめだ。

    こんなことには。

    たえられない。

    わたしには、たえられないんだ。

    たえることなんて、できるはずがないんだ。



    狩人でない私は。

    ただの弱いヒトなのだから。
    204 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:21:06.55 ID:VhB1aNzu0 (+40,+30,-25)
    素敵な光景が、消えて行く。

    森も。

    空も。

    地面も。




    落ちて行く。

    私は。

    暗闇の中に。

    落ちて行く。



    クロ達の声を聞いた気がした。

    それを最後に、私の意識は暗闇に包まれた。
    205 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:21:37.23 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-75)
    クロ「お母さん……駄目です!お母さん!」

    クロ「意識をしっかり持ってください、お母さん!」

    ミドリ「……」

    アオ「クロ……母さまは?」

    アカ「……ママ、いなくなっちゃったの?」

    クロ「……いいえ、そんな事はありません」

    クロ「お母さんが、お母さんが私達を置いていなくなるはずがありません」

    クロ「身体は、身体はちゃんと治ったんです、あとは脳を活性化すれば」
    206 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:22:29.94 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-237)
    クロ「……そうです、やっぱり、やっぱり洞窟から出るべきじゃなかったんです」

    クロ「そうすれば、こんな事にはならなかった」

    クロ「……戻りましょう、お母さん」

    クロ「そ、そうすれば、お母さんだって、きっと」

    クロ「きっと、目が覚めてくれるはずです」

    クロ「アカ、お母さんの身体を温めてあげてください」

    クロ「あの洞窟の温度は、お母さんの身体に悪い」

    クロ「アオ、お母さんが何時目覚めても言いように、新鮮な魚を用意してください」

    クロ「ミドリは、お母さんが好きだったあの音楽を」

    クロ「お母さんは、お母さんは」

    クロ「今は、ただ、疲れて眠ってるだけなんです」

    クロ「私が保証します」

    クロ「種族の最先端である、この私が」

    クロ「何時か、お母さんが目覚めると」

    クロ「……さあ、早く戻りましょう、私達の理想郷へ」

    クロ「ああ、それと」

    クロ「帰る前に、少し狩りをしまいましょうか」

    クロ「上手く狩れれば、お母さんが喜んでくれるかもしれませんし」
    207 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:23:22.47 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-199)
    スライム達が狩人の死体に集まっている間に、私は準備をしていた。

    村の周囲をキマイラ達で包囲させたのだ。

    逃がさない。

    絶対に逃がさない。



    スライム達が世代交代、いや「進化」していた事は予想外だった。

    とても喜ばしい事だ。

    あのスライム達を解析すれば、私の合成生物達を更に強化する事が出来るだろう。



    スライム達の戦闘能力は不明だが、こちらには切り札がある。

    「竜とケモノのキマイラ」よりも、更に戦闘力が高い合成生物。

    「悪魔と人間のキマイラ」を温存しているのだ。



    今はまだ覚醒させていないので只の小娘だが。

    私が術式を解放すれば真価を発揮できる。

    文字通り、悪魔のような力を発揮するだろう。



    私が配置したキマイラは38体。

    それは小さな国であれば蹂躙出来る程度の戦力。
    208 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:24:23.19 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-155)
    戦闘開始後。



    2秒後には、竜獣のキマイラが超振動によって砕け散り。

    8秒後には、13体のキマイラが熱に焼かれて死滅し。

    13秒後には、9体のキマイラが凍結四散し。

    17秒後には、14体のキマイラが発狂し岩や木に頭を叩きつけ自害した。



    切り札であったキマイラに至っては。

    黒いスライムの精神浸食に怖じ気づき、私の制止を振り切り。

    あっさりと逃げ出してしまった。



    その段階で、私は脚部に埋め込んだケモノの因子を活性化させ、高速で村を離脱。

    スライム達の攻撃を幾つか受けたが、何とか森へ逃げむ事に成功した。
    209 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:25:06.01 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-63)
    痛い、痛い、痛い

    右足が痛い

    今すぐ蹲ってしまいたくなるほど、痛い

    きっと傷口は大きく、骨にまで達しているのだろう


    ああ、けど止まる訳にはいかない

    止まったら追いつかれてしまう


    どうして

    どうしてこんな事になったのだろう


    様々な感情が頭をよぎるが、それでも


    それでも、私は足を動かし続ける

    森の中を走り続ける
    210 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:25:57.66 ID:VhB1aNzu0 (+43,+30,-161)
    私は、自らが作り上げた合成生物の因子を身体に取り込んでいる。

    皮膚を硬化出来るし、四肢の性能を一時的に上げる事が出来る。

    再生能力すらあるのだ。

    そんな私が、こんな所で死ぬはずがない。



    そう、そうだ、思い出せ。

    確か随分前に、共和国軍に蝙蝠と人間のキマイラを納品した事がある。

    あの時の因子が、私の身体の中にも残っていたはずだ。

    あんな大きな因子を活性化させると、ヒトの形に戻れなくなる可能性もあるが。

    そんな事はこの際どうでもいい。

    今は、ここから逃げのびて。

    私の知識を残す事を最優先にしないと。

    私が死ねば、私が積み上げてきた知識が全て無くなってしまうじゃないですか!
    211 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:26:55.65 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-131)
    私の背中から、グググと蝙蝠の羽が隆起する。

    耳り形状が変化し、周囲の物体を音で感知できるようになる。

    そう、そうだ。

    あとはこれを羽ばたかせて。

    よし、よし、上手くいく。

    あはははははは!

    凄い!凄いです!

    私、空を飛んでます!

    これはこれで、良い経験で……




    ピィィィィィィィィィィィィィィィィッ




    地上から凄まじい音が響く。

    それにより、私は激しくバランスを崩した。

    回転する。

    飛行状態を保つ事が出来ない。

    一体、一体何が……。
    212 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:27:32.66 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-44)
    回転する視界の中、地上にミドリ色の何かが見えた。

    あれは、楽器?

    どうしてあんな所に、巨大なラッパが。



    いや、待ってください。

    その後ろにある、あれは。

    あれは、なんですか。



    まるで、赤と青で作られた。

    巨大な弓のような。
    213 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:28:03.52 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-91)
    次の瞬間、私の身体が大きな衝撃を受ける。

    文字通り体がバラバラになりそうな衝撃。

    けど、私は自らの身体に宿した因子を総動員し、何とか飛行状態を取り戻した。



    ああ、痛い!

    痛い痛い痛い!

    身体が痛い!

    お腹が!



    ああ、そうか、連中は!

    あのスライム達は、自分達の身体で弓を作ったのだ!

    そうして、巨大な木か岩を、私に向けて射出したのだ!

    だから私のお腹にこんな大きな穴が!
    214 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:29:11.98 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-56)
    けど、けど何とか耐えきりました。

    ふ、ふふふふふ、これで逃げのびる事が出来る。

    一撃で仕留め切れなかったのが連中の敗因です。

    私の再生能力を持ってすれば、この程度の穴、数時間でふさがる。

    そして……。

    私は、貴女達を、決して、決して逃がさない。

    次はもっと強力なキマイラを作って、あのスライム達を……。
    215 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:29:47.82 ID:VhB1aNzu0 (+40,+30,-19)
     



    「あれ、貴女の顔って、良く見たら私の顔と似てますね」

    「ひょっとして、前に会った事あります?」




     
    216 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:30:53.00 ID:VhB1aNzu0 (+41,+30,-132)
    連中が弓で射出したのは、木や岩ではなかったのだ。

    では、何を撃ちだしてきたのか。

    それは……。



    「ううん、そう言えば、前に貴女から酷い事をされた記憶がある気がします」

    「まあ、けど、そんな事はどうでもいいですよね」

    「私にとっては、お母さんが、あんな事になっちゃったことが」

    「一番辛い思い出ですし」

    「それ以外は、本当に」



    腹部に空いた穴から這い出した黒いスライムは、私の頭に手を当てて、こう呟いた。



    「どうでもいいです」
    217 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:32:01.88 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-53)
    次の瞬間、合成術師は発狂した。

    合成術師の体内に内包していたキマイラ達の因子も全て発狂した。

    それらは合成術師の身体を内部から食い荒らした。

    その結果。


    合成術師は空中でバラバラに飛び散り。

    肉片として森に降り注いだ。
    218 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 04:57:25.76 ID:CvIRL2wH0 (+19,+29,-1)

    スライム無双たまらん
    219 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 05:40:16.47 ID:DmcQPUTLO (+19,+29,-4)
    最初のがそこに繋がるのか!
    220 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:07:01.58 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-230)
    ~86日目~


    共和国医療師団報告書より抜粋


    天候、晴れ。

    村長からの救助指令を受けた私達は、村とその周辺を調査。

    情報通り、異形の生物に食われたと思われる死体を多数発見しました。

    情報と違っていた点は、異形の生物の死体も多数発見された事。

    この村は、迷いの森の狩人と縁があったらしいので、彼女が責務を果たしたのかもしれません。

    事情を聴こうにも、彼女の家が何処にあるか不明なので無理なのですが。


    死体は全て私達で埋葬予定。



    以下、私見です。


    先日配属された女医が反抗的です。

    私の命令を無視する事が何度か。

    転属要請を同封致しますので、どっか別の師団に移してください。

    そもそも治療魔法を使える私が居るのに、医者とか不要でしょう。
    221 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:08:10.07 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,+0)
    シスター「はい、報告書作成終わり」

    シスター「伝令さん、これを拠点まで届けてくださいな」

    シスター「残りの皆さんは遺体を集めてください、埋葬します」

    「……」

    シスター「ほら、女医さんも、手を貸してください」

    「隊長、この子……」

    シスター「……まだ若い娘なのに、可哀そうですね」

    シスター「けど、感傷には浸ってられませんよ、死体が腐敗する前に埋葬しないと疫病が……」

    「いえ、この子はまだ死んでません」

    シスター「……死んでいますよ、生命反応がありませんから」

    シスター「貴女には魔力が無いので判らないかもしれませんが……」

    「複数の外傷がありますが、どれも古い傷です」

    「直接的な死因と見られる傷はありません」

    「何らかのショックを受けて心停止しただけの可能性があります」

    「蘇生を試みますので、手伝ってください」

    シスター「いや、だからもう死んでますって言って……」

    「早くなさい!」

    シスター「ひゃ、ひゃい!」ビクッ

    シスター「……」

    シスター「何なんですかこの人、怖いんですけど」ブツブツ

    シスター「何で隊長である私が怒鳴られないといけないんですか」ブツブツ

    シスター「そもそも、死んだ人間を蘇らせるなんて、出来るはずが」ブツブツ

    シスター「え、この人、何してるんです、死体の口に、え、キス?」ブツブツ

    シスター「え、え、え……」
    222 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:08:57.39 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-93)
    共和国医療師団報告書より抜粋


    追記。


    村の傍にて生存者を確保。

    しかし、村人ではありません。

    何も食べていなかったのか、非常に弱っています。

    ただ、この生存者は村を襲った異形の生物の正体を握っている模様。


    詳しい情報は拠点に戻ってから調査する予定です。




    私見の追記。


    先の転属届けは無効にしてください。

    彼女は素晴らしい方です。

    まさか死んでしまった人間を生き返らせるなんて。

    しかも、その様子が凄く格好よかったです。

    彼女は優秀な人間です。

    超優秀です。

    お給料あげてあげてください。

    好き。
    223 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:09:24.55 ID:VhB1aNzu0 (+40,+30,-21)
     



    「悪魔と人間のキマイラ」である少女は、こうして共和国に保護された。

    彼女がどんな顛末を迎えるかは、また別のお話。



    224 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:10:02.70 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-85)
    ~10000日後~

    ~洞窟内~



    神殿の掃除を終えた私は、物陰に灰色のスライムが蹲ってるのを発見した。


    「また来たのですか、ここは気軽に立ち寄っていい場所ではないとあれほど……」

    「クロお姉ちゃん、おはなしきかせて」

    「……何のお話がいいんですか」

    「お母さんのおはなしー」

    「ふふふ、貴女はお母さんの話が好きですね」

    「かっこういい」
    225 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:10:48.24 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-122)
    「そうです、お母さんは、凄く格好よくて、凄く優しくて、凄く綺麗なヒトでした」

    「私はね、最初にお母さんの姿を見た時、凄く感動したんです」

    「何て綺麗なヒトなんだろうって」

    「自分も、そうなりたいって」

    「だから、私は頑張りました」

    「頑張って、お母さんの事を知って、同じ姿になろうとしたんです」

    「そして、知れば知る程、お母さんの事が好きになりました」

    「お母さんの心も好きになりました」

    「けど……」

    「同じ姿になるのには、躊躇しました」

    「何だか、不謹慎な気がしたんです」
    226 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:11:17.73 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-161)
    「私は、ヒトの外見を3種類しか知りませんでした」

    「一つ目は、お母さん」

    「二つ目は、お母さんの大切なヒト」

    「三つ目は、記憶には残ってるけど誰だかわからないヒト」

    「お母さんの大切なヒトを模すと、お母さんから猛烈に怒られそうな気がしたんで」

    「消去法で、三つ目の外見を選択したんです」

    「ああ、けど」

    「怒られてもいいから、二つ目を選択しておくべきだったかもしれません」

    「そうすれば……もしかしたら……」

    「私は、クロお姉ちゃんの姿、好き」

    「……そうですか、ではこの姿を選択した甲斐があるという物ですね」

    「うん!」
    227 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:11:57.74 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-86)
    「さあ、そろそろお昼の時間ですよ、下へ降りましょう」

    「はーい、お母さん、またね」



    灰色のスライムは、幼いヒトの姿で、するすると降りて行く。

    私達が「水溜り」と呼んでいた穴だ。

    もう既に、水は抜いてある。


    お母さんの予想通り、その下には広大な地底湖があった。

    その水を全て排除し、そこに私達は住んでいるのだ。
    228 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:12:38.26 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-149)

    「では、お母さん、また明日、来ますね」



    お母さんは。

    アオの力で作り上げた、巨大な氷の中で眠っている。

    私達が、過ごした、あの洞窟で。

    天井を塞いで地上への道を閉ざした、あの洞窟で。

    あの日からずっと。

    ずっと眠っているのだ。



    今日も眠っていた。

    きっと、明日も、明後日も。



    けど、いつの日か。

    その瞼が揺れて、目を開けてくれるのだ。

    私には、それが判る。



    何日かかかわるは、判らない。

    けど、何時かきっと。
    229 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:13:06.81 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-92)
    「それまで、待ちます」

    「ずっと、待ち続けます」

    「いつまでだって、待ち続けます」

    「例え、地上が滅んでも」

    「例え、ヒト族が息絶えても」

    「ずっと」

    「ずっと」

    「私達の巣で」

    「だって」

    「だって、私達は」
    230 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:14:01.34 ID:VhB1aNzu0 (+45,+30,-221)
    「神殿」から降りた私は、周囲を見渡す。



    ヒカリゴケに照らされた、膨大な空間。

    そこには深い森が広がっていた。

    兎や、鳥たちの姿も見える。



    地上への道を塞ぐ前に集ておいた植物や動物。

    それに私達の因子を埋め込んだのだ。

    お陰で、太陽の光が無いこの空間でも根付いてくれている。

    成長も早い。



    「……クロ、聞いて、またアオが我儘言ってる」

    「我儘はアカの方だろ、ボクはただもう少し動物を増やしたいって言ってるだけで」

    「……増やし過ぎたら、植物が減ると、アカは思う」

    「大丈夫、増やした分、ボクの眷族がちゃんと狩るからさ」

    「……狩るなら別に増やさなくていい」



    何時ものように、騒がしい日々。

    高台の上からは、ミドリ達が演奏する曲が流れている。



    そう、ここは。

    数千匹にまで増えた、スライム達の巣。

    私達の、理想郷なのだ。
    231 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:14:43.89 ID:VhB1aNzu0 (+39,+29,-10)
    きっと、お母さんも気に行ってくれる。

    だから、私達は何時までだって待てる。

    だって。
    232 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:15:09.58 ID:VhB1aNzu0 (+39,+29,-19)

     




    「私達は、貴女の事を愛しているのですから」




     
    233 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:15:35.67 ID:VhB1aNzu0 (+39,+29,-20)
    こうして、スライムの巣での一日が、また始まる。

    彼女が目覚めるまで。






                完
    234 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:16:02.80 ID:VhB1aNzu0 (+40,+30,-36)
    同一世界線のSS

    狙撃手「観測手ってレズなの?」 観測手「ふっへっへ」

    幼女「お医者さんごっこするれす」 メイド「嫌です」
    235 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 06:25:48.74 ID:kzfB6Fzzo (+19,+29,-1)

    貴方だったのか
    236 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 08:18:11.56 ID:i8md4zI00 (+24,+29,-7)
    おつ

    クロ達が最後まで狩人をちゃんと愛してくれたみたいで良かった
    237 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 09:47:00.93 ID:DWq7qwY20 (+25,+30,-18)
    乙でございます
    冒頭へのつなぎ方がおぉってなりました
    良いSSありがとうございましたです
    238 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 10:02:20.30 ID:WBUHH/BXo (+24,+29,-17)
    冒頭の85日目への繋ぎが予想外すぎたわ
    239 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 10:51:02.43 ID:X5jVjXBbo (+24,+29,-3)
    狙撃手の人だったのかー面白かった


    240 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 12:00:55.35 ID:B8tgG/7W0 (+24,+29,-29)
    構成、凝ってるなあ……面白かった
    幼馴染が切り札のキマイラだった?
    いつか目覚めて会えるといいな
    241 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 12:05:23.87 ID:YKRLXiaOo (+24,+29,-21)
    でも幼馴染みって幼女の方のメイドでしょ?
    ゾンビになってるじゃん
    242 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 12:20:36.33 ID:iLMUSaimo (+24,+29,-24)
    過去作見てきた
    この人の作風好きだわ
    このスライムの理想郷もいつかは崩れ去ってしまいそうだ
    243 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 13:07:50.19 ID:IizQtIFA0 (+19,+29,-16)


    ちょっと過去作みてくる
    244 : 以下、名無しにか - 2017/11/19(日) 22:38:20.62 ID:AtyyTD/c0 (+24,+29,-27)
    小国を蹂躙できる戦力を四匹で17秒あれば全滅させるスライムが数千匹詰まった地下洞窟

    245 : 以下、名無しにか - 2017/11/20(月) 04:06:45.90 ID:ZVztk9c40 (-8,+6,-2)
    246 : 以下、名無しにか - 2017/11/20(月) 11:26:58.92 ID:JtUh0ZUA0 (+24,+29,-19)
    洞窟脱出するまでは面白かった
    洞窟脱出したあとはつまらなかった
    247 : 以下、名無しにか - 2017/11/20(月) 11:38:04.25 ID:1QquQT63o (+4,+19,+0)
    面白かった!!
    248 : sage - 2017/11/23(木) 08:08:28.33 ID:s7dZsblC0 (+24,+29,-16)
    あれ?蘇生したのって狩人?
    じゃあ最後に神殿にあるのは何なの?
    249 : 以下、名無しにか - 2017/11/23(木) 08:26:24.07 ID:GYfXVZMoo (+24,+29,-27)
    蘇生して体は大丈夫だけど脳が生きるのを拒否したんじゃ?
    悲しいことが多いからって
    250 : 以下、名無しにか - 2017/11/23(木) 08:29:17.81 ID:aFLADYGco (+24,+29,-42)
    この人のSS全部落ちが救われないからなぁ
    過去作先にあげてくれれば読まずに済んだのに
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