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    元スレ吹雪「新しい司令官? はぁそうですか・・・」

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    101 = 1 :



    それから私たちは司令官とこの鎮守府の現状や、これからのことについて話しました。

    私が予想していた以上に、司令官はこの鎮守府の事を考えていたのです。きっとみんなも同じことを思ったでしょう。なので私もそれに応えようと意見を交わしました。

    それもひと段落つき……摩耶さんが意地の悪い表情を浮かべました。


    摩耶「なあ提督。あんた……なにやらかしたんだ?」

    提督「なに、とは?」

    摩耶「とぼけんなよ。あんたがさ、本当はここにいるような人間じゃないってことは、あたしにだってわかるぜ。余程のことをやらかしたんだろう? だからここに飛ばされた」

    提督「……悪いが、私は飛ばされたとは思っていないぞ。やるべきことをやって、その結果ここに居る」

    摩耶「あたしはさ、前の提督をぶっとばしてやったんだ」

    提督「……」

    102 = 1 :



    摩耶「これがむかつく奴でな。できもしないことをあたしたちに押し付けて、失敗すれば自分を棚に上げてあたしたちのミスだと責め立てる。
       こういう奴に限って外面は良くてな、余りにもむかつくんで、グーで殴っちまった。正直ここに飛ばされた時は清々したね。でも結果はこの有様さ。何も変わらなかった」

    五十鈴「五十鈴も……だいたい摩耶と似たような理由ね」

    「あたしもそうね」

    摩耶「え? 曙はただ口が悪過ぎて飛ばされたんじゃなかったか?」

    「はぁ!? なんですってぇ!?」

    山城「私はただひたすら不運が重なって……行くとこ行くとこ全部壊滅して居場所がなくなって……お姉さまとも離れ離れになって……ああお姉さま……」

    吹雪「私は……作戦を失敗して、それで不要だと判断されてここに」


    私たちはお互いに、ここに来ることになった経緯を知っています。

    今は笑って話せることだけれど、昔の私にはトラウマだったことです。

    かつて私は侵攻作戦の旗艦を任されたことがありました。ただ司令官の指示に従い、そして失敗しました。

    今の私ならあの時の司令官に進言をして侵攻作戦を成功に導くことができるかもしれません。でもそれはもう叶わないことです。

    司令官は私を不要と判断し、責任を押し付ける形で私を捨てました。

    103 = 1 :



    提督「ふむ……いくらだ?」

    摩耶「は?」

    提督「どうせ賭けてるんだろう? いまいくらなんだ?」

    摩耶「えーと確か……」

    摩耶さんは金額を口にしました。

    提督「そうか……ならもう少し待とう」

    摩耶「おいおい、どういうことだよ提督?」

    提督「どうせなら賭け金が上がったほうが面白いだろう」

    摩耶「そりゃそうかもしれないけどさ……でもあたしとしては、今ここで聞きたいね」

    提督「悪いが今話すつもりはないぞ」

    「じゃあどのくらい貯まったら話すわけ?」

    提督「そうだな……少なくとも今の三倍以上溜まって、いずれ私の気が向いたら、だな」

    「返答になってないんだけど」


    曙ちゃんがジト目で見ますが、司令官はあまり乗り気では無いみたいでした。

    かと言って、それがトラウマになっている……という様子でもありません。

    104 = 1 :



    山城「それだけ焦らすのなら、期待してもいいのよね……?」

    提督「期待はするな。言っただろう、そもそも私は飛ばされたとは思ってないんだ」

    「あーこれはやっぱりセクハラね。間違いないわ。こういうクソ真面目なクソ提督ほど裏ではやばいもの溜め込んでるもんよ」

    摩耶「やっぱそうか。だからあたし達には話せなくて煙に撒こうとしてるんだな……」

    五十鈴「ま、提督も男の人だし、仕方ないわよ。でもあたしたちに手を出すのならそれなりの覚悟はしたほうがいいわよ? 実際何人か締め上げてきてるし」

    提督「あのなあお前ら……」

    山城「やだ提督……不潔だわ。近寄らないでくれますか?」

    吹雪「司令官……」

    提督「ま、待て、違う。誤解だ。私はセクハラなどしていない」

    摩耶「よーしこれで候補が一つ消えたな」

    提督「む……」

    105 = 1 :



    うまく乗せられてあっさり口を滑らせた司令官は、やられたといった顔で口を噤みました。

    そしてあからさまに話の方向を変えてきました。


    提督「ともあれ、この話はこれでおしまいだ。次の任務は二日後だ。各自身体を休めつつ演習を進めてくれ。摩耶はそれまでに今回の任務の報告書を頼む」

    摩耶「はいはい、わかったよ」


    そこで昼食はお開きになりました。

    彼は新米の司令官です。だから司令官を養成する軍学校でなにか起こしたのでしょう。

    興味はあったけれど、無理に聞き出す必要はないと思います。もっとお互いの時間を重ねて親密になれば、司令官も自ら話してくれるはずです。

    摩耶さんや五十鈴さん、山城さん、曙ちゃん……そしてかつての私のように。それまでは好き放題予想を立てるのも悪くありません。

    でも結局……私たちは司令官の口からその真相を聞くことはありませんでした。

    106 = 1 :

    切り。

    107 :

    おつ

    108 :

    乙でございます

    109 :

    無難に志願して着任したのか、やさぐれ艦娘たちもドン引きの失態か…

    110 :

    乙なのです

    111 :


    プライベートライアンのくだりかなあれは結局話したわけだが

    112 :



    ある日の朝早く、私は割り当てられた個室を出ました。

    まだ辺りは薄暗いです。動きやすい軽装に身を包んだ私は日の出を拝むために港へ向かうと、そこには先客がいました。


    吹雪「司令官?」

    提督「吹雪? おはよう……早いんだな」

    吹雪「司令官こそ……。どうしてここに?」


    彼ははいつもの軍服姿ではなく、私と同じ動きやすい服装でした。

    ということは私と同じ目的だと思ったのですけど……


    提督「うむ……眠気覚ましだ。吹雪は走るのか?」

    吹雪「はい。司令官もそうだと思ったんですけど……違うんですか?」

    提督「そのつもりだったんだが……最近は気が乗らなくな。ここに来て、目が覚めたら戻るだけだ」

    吹雪「いつも朝はここに?」

    提督「大体な……」


    まだ眠気が覚めていないのか、ぼんやりとした口調で言ってきます。

    113 = 1 :



    提督「最近は掃除も出来なくなって、情けない限りだ」

    吹雪「それだけ忙しくなったってことです。仕方ないと思いますし……それで司令官を責める人は居ませんよ」

    提督「だがな、こういうのは続けることに意味があると私は思うんだ。ままならないものだな……」

    吹雪「……」

    提督「ああ……私の事は気にするな。走って来ると良い」


    司令官は眠そう……というよりは疲れているように見えました。

    目を細めて水平線を見つめます。まだ完全に日が昇ったわけではないけれど、きれいな朝日が見えました。

    しばらく眺めてから、私は口を開きました。

    114 = 1 :



    吹雪「私……昔、朝走ってたんです」

    提督「ほう、そうなのか?」

    吹雪「はい……でも止めてしまって、また走ろうって思ったんです。
       ずっとやってなかったお菓子作りも……もう忘れてると思ったんですけど、こういうのって意外と覚えてるものなんですね……」

    提督「……」

    吹雪「みんな口にしませんけど、司令官には感謝してます。だから……あまり無理はしないでくださいね」

    提督「うむ……ありがとう、吹雪」


    その言葉を聞いて、私は久しぶりに走り出しました。

    115 = 1 :



    「はぁ? 秘書艦?」

    吹雪「うん……司令官忙しそうだから私たちも手伝えないかなって……」

    山城「秘書艦……そういえばそんなものもあったわね。懐かしい響きだわ……」

    五十鈴「確かに最近の提督は忙しそうよね。掃除する姿も見かけないし……」


    司令官の様子が気になった私は、皆に相談することにしました。

    聞くところによると、やっぱり皆司令官が最近疲れ気味なのは分かっていたようです。

    なので秘書艦をつけることには賛成、ということだったのですが……摩耶さんが憮然とした面持ちで口を開きました。

    116 = 1 :



    摩耶「……不要だとさ」

    吹雪「え?」

    摩耶「秘書艦だよ。先日あたしも提督に提案したのさ。でも言われたよ。あたしたちは今一番波に乗っていて、それを乱したくない。
       任務の予定も先まで組んでて外すことができないって。まあその通りだったよ。これから先の任務はあたしたちのうち誰か一人でも欠けたら難しくなるだろうさ」

    五十鈴「なるほどね。不要……というよりは秘書艦をつける余裕がないってことね」

    摩耶「そーいうこと」


    どうやら摩耶さんは既に司令官に進言していて、断られていたみたいでした。

    司令官が、そして旗艦の摩耶さんが言うのなら間違いではないのかもしれませんが……

    山城さんが、えーとと首を捻りながら口を開きました。


    山城「私たちって今、ひと月後の合同侵攻作戦に向けて調整してるのよね?」

    吹雪「はい……そう聞いてます」

    117 = 1 :



    これからひと月後、私たちは他の鎮守府との合同作戦に参加することになっていました。

    もしその実力を示し作戦を成功に導くことができたなら……私たちは上に評価され、また前回のように予算が降りてくるかもしれません。

    だから今、司令官が多少の無理を押してがんばるのは私にもわかりますし、それは勿論みんなだってわかってるのです。


    摩耶「まあ、今が踏ん張りどころなのさ。あたしたちも、提督もな。あいつはやるべきことをやってるみたいだし、ならあたしたちも出来ることをするだけだ」

    「それが終わったら秘書艦でもなんなりやればいいじゃない。あたしはパスだけど」

    吹雪「そう言って曙ちゃん真っ先に候補しそうだよね」

    「しないわよ」


    まあ楽が出来るならやってあげてもいいけどね、と曙ちゃん。

    きっと摩耶さんと曙ちゃんの言う通りなんでしょう。なら……私も出来ることをするだけです。

    そしてひと段落ついたら、一度司令官とゆっくりお話ししてみるのもいいかもしれません。

    118 = 1 :



    北方海域侵攻作戦。

    北方海域……大分前から深海棲艦と小競り合いが続いていた海域みたいです。

    最近になって激しさが増し、新たに敵艦隊の中規模泊地が発見されたことから、大本営は大きくなる前にこれを撃滅することを決断し、これが今回の目的になりました。

    私たちが複数の鎮守府との合同作戦に参加するのはこれが二回目です。


    摩耶「そっちは片付いたか?」

    五十鈴「ええ、あらかたね」

    山城「偵察機からも敵影の報告は無いわ。ひとまず周辺の安全は確保ってところね」

    「じゃあこれであたしたちの仕事は大体終わりね。あっけなかったわね。なんか肩透かしだわ」

    摩耶「おーい提督、聞こえるか? 付近はあらかた掃討した。新しい敵影も今のところ見られない」

    提督「了解した。引き続き哨戒にあたってくれ。まもなくこちらの主力が敵とぶつかる。それまで邪魔が入らないようにしてくれ」

    摩耶「りょーかい」

    119 = 1 :



    今回の私たちの役割は、敵泊地周辺の制海権の確保と、その後の哨戒でした。要は露払いです。

    この采配に不満はありません。前回はただの輸送係でしたし、むしろ皆の士気は高かったのです。

    私たちの練度がいくら高くても敵主力とやりあえる装備ではありませんし、そもそもそういう編成ではありません。適材適所ということでしょう。

    のんびりとお話をしながら哨戒をしていると、司令官から通信が入りました。


    提督「味方から支援要請が入った。現在、東南方向50㎞地点で敵と交戦中とのことだ。至急向かい協力してこれを殲滅してくれ」

    摩耶「ここの哨戒はどうするんだ?」

    提督「代わりの艦隊を寄越すらしい。今交戦中の艦隊は私たちが一番近い。敵は駆逐、軽巡級が殆どとのことだ。頼んだぞ」

    摩耶「はいよ」


    支援要請を受けた私たちは交戦地点へと向かい、会敵、交戦しました。

    敵の編成、数は報告通りで、私たちはこれを掃討していきましたが……

    120 = 1 :



    摩耶「提督、様子がおかしいぞ。味方の艦隊の姿が見えないし通信も入ってこない。そっちになにか連絡がいってないか?」

    提督「いや、何も来ていない。まさか一足遅かったか……? でも轟沈するほどの状況なら、何かしら報告が入ってきそうものだが……」

    摩耶「轟沈も何も敵は雑魚ばっかりだよ。よっぽど練度が低いか下手な装備でもなきゃ沈みそうにないぜ。そもそも交戦した痕跡がないんだ。場所は合ってるのか?」

    提督「ああ、間違いなく。今、向こうと連絡をとる」


    イ級の砲撃をかわし連装砲を撃ち込みながら、摩耶さんは司令官と話します。

    相手は駆逐軽巡級の雑魚ばかりです。装備も一新し、士気も高い私達の敵ではありません。

    少し待てと言い残して、司令官は通信を切りました。そして


    提督「どうやらその場にいた味方艦隊は引き上げたそうだ」

    「はぁー? なにそれ?」


    曙ちゃんが顔をしかめて割り込みました。

    121 = 1 :



    提督「情報に食い違いがあったそうだが……やることは変わらない。敵主力とそいつらを合流させるわけにはいかない。ここで殲滅する」

    山城「提督……偵察機から新たな敵の増援が確認されました。こっちに向かって来てます……」

    提督「内容は?」

    山城「駆逐軽巡級が多数。加えて今回は重巡、空母、戦艦級の姿もいくつか見られます。正直、私たちだけでは厳しいかと……」

    提督「……」

    摩耶「どうする? こっちは五十鈴が小破したぐらいだが、連戦で残弾が半分近くしか残ってない。まともに相手してたら捌ききれないぞ」

    提督「そうだな。……ともあれ数と空母が厄介だ。だだっ広いところで戦ったらハチの巣にされてたちまち囲まれてしまう……」


    いくら調子が良くとも、そうなれば私たちもおしまいです。かと言って、ここで引くわけにもいきません。

    私たちがここを離れれば敵増援は敵主力と合流して、もしかしたらこの作戦は失敗してしまうかもしれません。

    しばらく沈黙したのち、司令官は続けました。

    122 = 1 :



    提督「……北方向約10㎞地点に離島群があるな。そこへ向かってくれ。地形を利用してなるべく囲まれないようにするんだ。
       私は応援を要請をするが、援軍が来るまでは持久戦になるだろう。無駄弾の使用はなるべく控えてくれ」

    摩耶「わかったぜ。みんな、聞いての通りだ。とりあえず敵増援が来る前にここをぱぱっと片付けて、それから北に向かうぞ」  


    了解、と返事をします。そして敵を殲滅した私たちは離島群へ向かい、続く敵増援を迎え撃ちました。

    交戦開始から2時間以上が経過して……しかし、いくら待っても味方の援軍は現れません。

    残弾はみるみる減っていき、私たちは消耗していきました。そうなれば被弾は避けられません。私たちは全員中破し、これ以上の作戦継続は危うい状況まで追い込まれていきました。


    摩耶「おい提督!? まだ援軍は来ないのか!? あたしたちはこれ以上は持ちそうにないぞ!?」


    流石の摩耶さんも焦りの色を見せて、司令官に怒鳴りました。


    提督「わかっている……さっきからすぐに着く、すぐに着くの一点張りで……もう少しで来るはずだ、持ちこたえてくれ!」

    山城「それ、さっきも聞いたわ……」

    「あーもーほんと人使いが荒い! クソ提督、これが終わったら特別報酬ぐらいだしなさいよ!」

    五十鈴「また打ち上げでも開いて貰おうかしらね?」

    提督「わかった、準備して待ってる」


    曙ちゃんと五十鈴さんが場を和ませるために軽口を言います。

    でも、次に入ってきた司令官の通信に、私たちは言葉を失いました。

    123 = 1 :



    提督「トラブルが発生した」

    摩耶「なんだ?」

    提督「増援の到着がかなり遅れるみたいだ。……来ないものと見ていい」

    摩耶「は……?」


    摩耶さんがぽかんと声を上げて、五十鈴さんが続けました。


    五十鈴「ど、どういうこと? 私たちが支援要請してから何時間経ってると思ってるの? まさか、その支援艦隊も敵に襲われたの!?」

    提督「違う、そいつらは……いや、来ない者のことは考えても意味がない。援軍は一切期待するな……我々は自力でこの状況を打破する」


    押し殺したような声音で司令官は告げました。

    私たちの間に隠し切れない動揺が走りましたが……すぐに切り替えました。


    摩耶「で、どうすんだよ? 援軍が来る体で戦ってたから、もう碌に弾薬なんて残っちゃいないぞ……」


    と、爆撃音が鳴り響き、曙ちゃんがよろめきました。


    「……うぁっ、もう何なのよ!」

    吹雪「曙ちゃん!?」

    「へ、平気よ……このぐらいっ!」

    124 = 1 :



    そう強がるけれど、誰から見てももう曙ちゃんは戦える状態ではありませんでした。

    私はその手を取って、曙ちゃんを強引に引っ張りました。


    吹雪「駄目、下がって。私の後ろに!」

    提督「どうした、何があった!?」

    摩耶「……ちっ、曙が大破した。まずいな、これはいっきに崩れるかもしれない……」

    提督「わかった……これ以上の戦線の維持は無理だ。我々は離脱する」

    五十鈴「逃げるって簡単に言うけど……これ、逃げ切れるのっ!?」

    山城「敵……どんどん集まってきてるわ……!」


    地形を利用して逃げ回っているから囲まれはしないけれど、それも時間の問題です。

    私たちの機動力も随分落ちていたのです。

    125 = 1 :



    提督「全員、弾薬の少ない装備はその場で破棄しろ。最低限の装備だけを残せ。五十鈴、お前はすべての武装を捨てて曙を運べ。殿は摩耶に任せる、吹雪と山城はその補佐をしろ」

    摩耶「分かった。で、何処に向かえばいい」

    提督「……元いた海域に戻るしかない。西へ針路をとれ。最悪逃げきれないと判断した場合は、全武装を放棄して近くの離島に上陸して救助を待つんだ。
       私はしばらく返答できなくなるかもしれないが、通信は開いておく。何かあれば常に報告してくれ」

    摩耶「……ああ、わかった」


    私たちは最悪の事態を予想していたけれど、それは杞憂に終わりました。

    命からがら戦線を離脱してから30分後、敵主力艦隊を撃沈したとの知らせが入り、敵増援もこの海域から撤退したためです。

    私たちは無事友軍に救助されました。作戦は成功し、誰一人沈むことは無かったたけれど……晴れ晴れとした気持ちはありませんでした。

    126 = 1 :

    切り。

    127 :

    おつ
    まさか真に倒すべき敵が深海ではなく陸の快適な作戦室あたりにいるとはな…

    128 :

    帝國海軍のお家芸ですね

    129 :

    敵ハ大本営ニアリ

    130 :

    今思えば、本当に勝つ気があったのか疑わしくなるくらいの杜撰さだからな

    131 :

    お詫びの掛け軸送ってくれるから…

    132 :

    まぁいまの日本にも似たことあるしな
    パナマ文書とトリクルダウンとか

    133 :

    乙でございます

    134 :



    作戦終了からしばらくの間、私たちと司令官はロクに顔を合わせる機会がありませんでした。

    私たちが休暇を言い渡され、療養している間……彼は前回の同じように鎮守府を留守にしていたためです。

    ようやくまともな会話ができるようになったのは作戦終了から7日後……執務室に呼び出された日でした。


    摩耶「作戦が成功したのに、なんの成功報酬もないってはどういうことだよ!?」

    提督「……すまない」


    そこで聞かされた内容に、摩耶さんが机を叩いて講義しました。

    135 = 1 :



    摩耶「確かにあたしたちは制海権を確保できなかったさ。でも、そもそもあそこはもあたしたちの管轄じゃなかっただろ? 
       別の鎮守府の管轄で、あたしたちはその支援に行っただけだ。……そいつらは居なかったけどな。なのにその責任を取らないといけないのか? それは違うだろ?」

    提督「……」

    摩耶「あたしたちは本来の役割は果たしていたはずだ。違うか?」


    摩耶さんが道理を求めるように尋ねます。

    私たちは司令官の言葉を待ちましたが、彼は口を噤んだまま何も言いません。

    見かねた五十鈴さんが続けました。

    136 = 1 :



    五十鈴「……提督、例え百歩譲ってその責任を負ったとしても……今回の作戦で私たちは主要装備の殆どを失ったわ。
        なのにその代用も、まして作戦で消費した燃料も弾薬も一切補充されないのは、流石におかしいんじゃないの?」

    提督「……」

    五十鈴「作戦が失敗したなら話は分かるわ。でも今回は成功したし、被害も少ないと発表されたわ。総指揮官が勲章を受け取るともね。
        だというのに、私たちのこの扱いはどういうことなの? これなら作戦に参加しないほうがよかったじゃない」

    提督「……本当にすまない」


    司令官は絞り出すように口にしました。

    その姿を見て、曙ちゃんはいらいらした口調で言いました。


    「だ、か、ら! 別にクソ提督に謝って欲しいわけじゃないのよ! あんたはあの作戦でやることやったじゃない。
      あたしはただ納得のいく説明が欲しいだけ。いえ、納得なんて出来ないからいいわ。でも、なにかあるんでしょ? それを言いなさいよ!」

    提督「……すまない」

    「だから、謝るなって言ってるの……!」

    137 = 1 :



    それから私たちは何度も説明を求めました。

    けど、司令官は私たちと目を合わせることも無く、ただ申し訳ないと私たちに頭を下げるだけでした。

    確かに、この鎮守府は今まで冷遇されてきました。でも最近は戦果も上げはじめて、だからこそ今回の作戦にも組み込まれたのだと、そう思っていました。

    だというのに、この扱いはあんまりです……


    摩耶「ちっ……もういい……」


    機嫌悪く言い捨てて、摩耶さんは部屋を出て行きました。

    結局、司令官は謝罪以外の言葉を持ち合わせていませんでした。

    私も少し……残念に思いました。曙ちゃんと同じです。例え納得できなくても、なにか事情があったのなら話して欲しかったのです。

    私たちはもう仲間なんですから。でも……司令官はそう思ってくれてないのでしょうか……?

    摩耶さんに続いてみんな部屋を出て行き、私は最後に取り残された司令官を見ました。

    彼は目深に帽子をかぶっていて……その目元が青くなっているのがちらりと見えたような気がしました。

    138 = 1 :

    切り良いとこまで。ぱぱっと。あと少しで終わるはず。

    139 :

    ハッピーエンドでありますように

    140 :

    いっそ降伏して捕虜にでもなった方がまだ待遇いいような…
    提督の頭上には死亡フラグがちらちら見えてるし…

    142 :

    誰も沈んでないのがせめてもの救いか

    143 :

    この提督は元帥の妻が嫁にでも手を出したのかな?

    144 :

    元帥の娘かもしれん

    145 :

    捨て艦とか牧場を推奨する士官を文字通り斬り捨てたのかもしれない

    146 :

    これは提督倒れますねぇ…

    147 :

    この状況でまた合同作戦参加命令が来たら……

    148 :

    暴行まで受けてるし立場は相当弱いんだろうな

    149 :

    乙でございます

    150 :



    それから過ごした2か月間を、私はあまり思い出したくありません……

    責めるように言ってしまったけれど、誰も司令官の責任だと思っていたわけではありません。あの戦いで、彼はその役割を十分果たしてくれました。

    けど、私たちは理由が欲しかったのです。あの時、私たちは一時は死を覚悟しました。さらに虎の子の装備の大半を失い、いたずらに戦力も削られました。

    いったいなんのために戦ったのか……その理由が欲しかったのです。

    けれど彼は答えてくれず……あれ以降、司令官と私たちの間には溝が出来てしまいました。


    山城「不幸だわ」

    五十鈴「そうね……」

    山城「とても不幸だわ」

    吹雪「そうですね……」

    山城「やっぱり私の所為だわ……私が不幸を招いてるの。全部私の所為なんだわ……」

    「あーうっさい! こっちはいちいちあんたの不幸自慢に付き合ってらんないのよ。やるなら一人でやってなさい!」

    山城「うう……」

    摩耶「こら山城を苛めるなよ」

    「ふん、あんた程度の不幸であたし達がどうにかなるもんか。冗談じゃないわ」

    吹雪「山城さん、曙ちゃん慰めてくれてるんですよ」

    山城「あ……あげぼの~」

    「うわ、うざっ。く、くっつくんじゃないわよ!」


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