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    元スレ提督「おかえりなさい」

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    101 = 99 :


    「おい、書類仕事なんて適当に終わらせておけ。外に出るぞ。部屋にこもってばかりじゃあ身体に毒だ」

    「アンタがちっとも書類に手を付けないから部屋にこもらなくちゃいけなくなったんじゃないのよ。

    私今日お休みのはずだったのよ?冬物買いに行きたかったのに…」

    「貴様はまたそんな軟弱な事を言っているのか!!何が冬物だくだらん!流行だ何だと拘って、服に着られているだけじゃないのか?」

    「私服が年中タンクトップ一択の人がファッション語ってるんじゃないわよ」

    「男が身に纏う服は筋肉一つで十分。身体を動かせば熱くなって寒さ等感じん!」

    「ちょっとやめて。脱ぐな!マッチョポーズをとるな!!筋トレを始めるんじゃないわよぉぉぉ!!!」


    多少常識外れな行動が目立ったけれど、人の話を聞かなかったけれども。

    周囲からの心無い声なんて撥ね退ける程に強く馬鹿みたいに明るいあの人の声が、

    きっとあの鎮守府にいた艦娘達全員の心のよりどころだったのだろう。

    寒さ等吹き飛ばしてしまう暑苦しい太陽のような存在が必要だったのだ、あそこには。




    それなのに……


    102 = 99 :


    それは、鎮守府に工廠が設立されることが決定した頃だ。

    中央で建造され、派遣されるだけだった艦娘を鎮守府で建造できるようにする計画は前々から上がっていた。

    中央から艦娘が建造し、派遣されるまでの時間がかかり過ぎるのだ。

    刻一刻と変化していく戦況に対して戦力の補充にかかる時間の問題は議論されていた。

    技術が確立されていない以上、いかに切迫しているからといって安易に実用化させるべきではないと私は考えていたが、一学生にそんな発言権はない。

    実際問題、前線で戦う鎮守府の訴えが切実なものであることは確かだった。


    「なぁ、悔しいとは思わないか」

    建設中の工廠を前に、搬入した資材の確認をしていた私に先輩はそう語りかけてきた。

    「とりあえずその手にしているスクワットを止めなさい」

    「おっとスマン。ついな」

    「それで、何が悔しいのよ?」

    「軍はどんどん艦娘達を建造させ、戦力増強を推し進めていく。女子達に武器を持たせ、戦場に送り込めと国が号令を出しているんだぞ?」

    「……艦娘しか深海棲艦を倒せないんですもの…仕方がないわよ」

    「心にも無い事を言うな。貴様がそんなことを思っていないことなどわかりきっている。

    貴様“だけ”は仕方がないと割り切れんはずだろう」

    「……」

    その通りだった。私が艦娘を戦場に送ることを仕方のないことと割り切れる日はおそらく来ないだろう。

    事実、今もそうだ。私は ――



    103 = 99 :

    「俺はこうして肉体を鍛えるのが好きだ。強くなる実感がするからだ。努力が形になったと実感できるから好きだ。

    強くなった分だけ多くの大切な者を守れると思えるから好きだ」

    らしくもなく、先輩の顔に陰りが見える。

    「それがどうだ。提督等と偉そうにしておきながら、武器を女子に持たせ化け物共のところへ送り出すだけ。

    守るべき女子達の影に隠れ、戦果が上がれば我が物顔で自慢する。そんな奴らばかりだ!!」

    「先輩…」

    「戦うなとは言わん。ただ守られていろと言うのは己が身を捧げてでも艦娘となり戦う決意をしたアイツを侮辱することと同じだ。

    ただ、せめて隣に立って共に戦いたい。そうできない事をこれからよりまざまざと思い知らされることになるんだ。歯がゆい…悔しい…」


    血を吐くような声だった。怒りと憤りがドロドロに溶けたようなマグマのような熱を帯びた呪詛だった。

    104 = 99 :


    工廠が完成を目前とした日のことだった。

    その日は嵐が酷く、漁に出る船など一隻も無い程に海が荒れた夜だった。

    今のように堅固な堤防も無く、深海棲艦への認識もまだ未熟だった頃のこと。

    津波の勢いは凄まじく、鎮守府に海水が浸食を始めた。無論建設中の工廠にも海水は及んだ。

    そして最悪の事態が起きた。

    深海棲艦。

    打ち上げられたのか、津波に乗じて乗り込んできたのかは定かではない。

    しかし、鎮守府は深海棲艦の攻撃を受けたことは事実だった。

    深夜の襲撃。鎮守府内の軍人はおろか、艦娘でさえも休息を取っている時間は完全な不意打ちだった。

    艤装も持たないため大破していく艦娘達。

    瞬く間に瓦礫と化していく鎮守府。

    艦娘と軍人の悲鳴と深海棲艦の唸り声、雷鳴と暴風の音。

    私は怯えて泣きじゃくる駆逐艦や軽巡、潜水艦といった非力な艦娘を誘導し、被害を減らそうと足掻くことしか出来なかった。

    105 = 99 :



    「提督!早くお逃げください!!」


    阿鼻叫喚の中で聞こえた悲鳴にも似た叫び声。

    扶桑ちゃんの声だった。彼女が視線を向けていた先は、ト級に対して刀を構える先輩の姿。

    その背には建設中の工廠。扶桑ちゃんの顔色は真っ青だった。


    「先輩!何やってるのよ!」

    「こいつは壊させねぇよ!!これが無きゃ俺達は戦えねぇ…女子を戦わせる気に入らない設備だが…

    これが無いと可愛いアイツらの負担がもっとでっかくなるからよう」

    「提督…」


    先輩はト級から徐々に距離を取り始める。

    「先輩何を…」

    「なぁ……俺にこれから何があっても、貴様は戦い続けろよ?貴様には貴様の信じた信念があるんだろ?

    貫けよそいつを」


    106 = 99 :




    「最後まで苦労…かけちまったな…だが、貴様と共に過ごした日々は最高の宝物だったぞ」


    「先輩ーー!!」


    107 = 99 :



    「そして先輩は工廠の中に消えて行ったわ…その直後だったわ。ト級の攻撃で工廠が炎に包まれたのは…」

    「そんな…ッ」


    朝潮が悲しげに眉を寄せる。

    艦娘の為に最後まで戦い抜いた男 ―― 漢の熱く悲しい散り様に胸が痛んだ。


    「でもね、悲劇はそれだけじゃなかったの…」

    「提督…お辛いなら、それ以上は…もう」

    朝潮は提督の手をそっと握る。彼の痛みを少しでも和らげたい、彼のセクシーな手をどさくさに触りたい、そんな思いに駆られて。

    「ありがとう、朝潮ちゃん」

    提督は痛みを堪えるように唇を噛み締める。噛み締めた唇から流れる血を舐めたいなぁと朝潮は強く思った。


    「その後だったわ…炎上する工廠の中から目にしたもの…」




    108 = 99 :






    「英国で生まれた帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」



    金剛だった。



    「「何…だと…?」」



    109 = 99 :


    提督が炎の中に消え、そして現れたのは金剛だった。

    マッチョと入れ替わる様に出てきたのは金剛でした。


    「ブゥアアアアァァァァニング……ラァァァァーーーーブ!!!!」


    金剛の連装砲が炸裂した。

    物理的に。

    それは鉄の塊による純粋なパワーによる攻撃であった。

    というかラリアットであった。

    バーニングラブと言いながら繰り出されるラリアット。

    バーニングラブと言いながら繰り出されるドロップキック。

    バーニングラブと言いながら繰り出される袈裟切りチョップ。

    バーニングラブと言いながら繰り出されるハーフネルソン。

    バーニングラブと言いながら繰り出されるムーンサルトボディープレス。

    そこは最早鎮守府ではなかった。四角いジャングルだ。

    生れたての金剛(元マッチョ)によるデビュー戦は無制限一本勝負だった。

    鎮守府を襲撃していた深海棲艦達はたった一人の艦娘の前に撤退を余儀なくされた。

    110 = 99 :



    『落雷と海水が浸水したことによる機器の故障と筋肉が科学反応を起こして例外的に金剛の魂が定着してしまったんでしょう』

    それが後日、中央の艦娘の研究機関から送られてきたヤケクソ気味の回答であった。

    男であろうと、十代でなかろうと、可憐な美少女艦娘になれる。

    『筋肉さえあれば何でも出来る!!』

    嘗て先輩が言っていた言葉がよみがえる。

    本当だったんだ。筋肉って凄い。

    「ヘェェーーイ!!提督!!何をそんなに私を見つめちゃってますか。

    もしかして私の魅力にようやく気付いてフォーリンラブしちゃったデスか!!」

    目の前にはとても可愛らしい女の子。

    でも…ダブって見えてしまうのだ…



    111 :

    シリア…あれ?

    112 :

    おお、もう…

    113 = 99 :


    「マッチョですか…」
    「マッチョなのよ…」


    すっかり紅茶は冷めてしまっていた。

    提督にとって金剛は何処かでマッチョ先輩のままなのだ。

    どれだけ可憐な美女であっても、その前に「元マッチョ」の肩書がついてくるのだ。

    「金剛ちゃんは色々と規格外でね。結局私の鎮守府で面倒を見ることになったの」

    「規格外…確かに、あの人ケッコンカッコカリしてないのに何故かレベル120ありますね」

    最初はジュウコンカッコカリでもされたのだろうかと思い、朝潮は金剛襲撃計画を頭の中で組み上げてしまったのは乙女の秘密だ。

    「だからかしら…つい、先輩への不満も含めてつい遠慮が無くなっちゃうのよねぇ…金剛ちゃんには…」

    いけないとわかってるんだけどね、と苦笑を浮かべる提督を見つめながら、朝潮は少し羨ましいと感じていた。

    提督との繋がりを持っている金剛が、それ故に特別な存在である金剛が、羨ましいと感じたのだ。


    114 :

    こいつはひどい

    115 = 99 :



    「……」

    「朝潮?どうしマシタ?何か私の顔についてマスカ?」

    (金剛さんは元マッチョで提督の先輩だった…当然若かりし頃の提督のお姿も知っているということですね…)

    「朝潮?」

    (更には…先輩後輩という間柄上、提督と一緒に入浴する機会もあったということですよね。男同士ですし…)

    「あの…モシモーシ?朝潮?」

    (記憶はなくとも、提督の裸を目にしていたわけで…)

    (………)

    「………憎いッ」ギリッ

    「朝潮!?どうしてそんなオーガみたいな目で見るんデース!?」

    116 :

    シリアスなのかギャグなのか…

    117 = 99 :

    今日の投下は以上で終わります。
    頭の中にある書きたいことを実際に書き起こす際には上手い事まとめられません。
    このお話では朝潮は二代目秘書艦で、古参の艦娘ですが一番の古株ではありません。
    最初の投稿時にも書きましたが、ちょこちょこ勝手な艦娘設定は出していきます。
    いずれは提督の過去編とかもちょこちょこ書きたいとか思っています。それではノシ。

    119 = 114 :

    とんでもない合体事故もあったもんだ
    朝潮がブレなくてシリアスシーンでも安心する

    120 :

    ブレなさ過ぎるのも、ね……?

    美少女になりたきゃガチムチになれ(真理)
    ちょっとライザップ行って艦娘という結果にコミットしてきますわ

    121 :

    チチフンジンが乳奮迅ではなくマジで父奮迅だったか……

    122 :


    そうかぁマッチョかぁ~

    123 = 112 :


    金剛くんの方だったかー

    124 :

    金剛くんワロタ

    125 :

    この金剛本物のフォークボール投げるとか言われてただろ

    126 :


    電車の中で読むもんじゃないな

    127 :

    金剛君マジ懐いなぁ、マッチョマックス!ってアホな必殺技がだな…
    コロコロコミックで連載されてたっけか

    128 :

    筋肉なら仕方ないね…

    129 :

    投下しますが、本日の注意点を以下に記します。

    ・提督の設定に主眼を置いた構成
    ・前後っぽい?
    ・相変わらずの独自設定

    以上の点が地雷だと感じたらバックで。

    130 = 129 :


    夜も更け、多くの人々は仕事を終え、寝るまでの時間をゆったりと過ごす。

    明日の仕事に備え、身体を休める者、或いは英気を養うために友と語り合う者、そして恋人との甘いひと時を過ごす者など、過ごし方は人それぞれだ。

    それは日々戦いに身を窶している艦娘達とて変わらない。
    夕餉を終え、部屋で仲間の艦娘達と過ごしたり、或いは酒宴に興じる者、なかには自主訓練を己に課す者もいる。

    しかし、そんな艦娘達が今日ばかりは些か趣が異なっていた。

    居酒屋鳳翔。

    甘味処間宮。

    夕食時を過ぎ、遠征前の艦娘達もしくは遠征から帰還したばかりの艦娘達が食事を摂る以外には常連の艦娘達が数名いる時間帯であるが、今日は鎮守府の殆どの艦娘達が集まっていた。

    彼女達の視線は一様に設置された大型のテレビへと向けられている。

    艦娘達の最前列にいるのは秘書艦朝潮。

    テレビからきちんと二メートル離れた上で、真っ直ぐに背筋を伸ばして彼女はテレビを凝視していた。

    131 = 129 :


    その目は大海原の先にいる深海棲艦を睨みつける戦場での彼女の視線を彷彿とさせる。

    時刻は10時。普段ならば朝潮は提督抱き枕にだいしゅきホールドをしながら寝ている時間帯だった。

    「始まりましたね…」

    計り知れない気迫を以て見つめる先 ―― テレビは軽快な音楽と共に軍の広報から切り替わる。





    『突撃!!あなたの鎮守府の提督!!』




    132 = 129 :



    「おおぉ~!」という歓声と拍手が聞こえる。

    率先して拍手しているのは無邪気でノリが良い駆逐艦の少女達。

    更に一際大きな拍手をしているのは朝潮である。駆逐艦の艦娘ってミルクの香りがしそうだよね。電ちゃんの頭の匂いを嗅ぎたいと思っている提督は全提督の九割だろう。私は朝潮のうなじの匂いを夢に見る程嗅ぎたいと思っている。

    「突撃!!あなたの鎮守府の提督!!」とは軍主導の広報番組であるが、重苦しい肩書とは裏腹にざっくばらんかつ挑戦的な番組である。N○KがCCさ○らを放送していたような感じだ。

    この番組、作成された背景は存外に重い。

    艦娘が現れたばかりの頃、彼女達は見目麗しいが得体の知れない化け物という認識を抱かれていた。

    しかし、次第にその認識は変わる。

    見目麗しくも得体の知れない化け物ではなく、見目麗しい人間に都合の良い道具へと。

    謎多き艦娘であるが、人間の味方であり、「提督」という存在に対して基本的に従順な娘が多いことが広く認識されるようになったのである。

    そこで、人類にとっての英雄が現れたとすべての人々が思ったわけではなかった。

    今でこそ提督を輩出するための教育機関が設立されているが、当時はたまたま適正を備えていただけの者が着任することが一般的であった。

    なかにはそれまで性格、容姿、家柄、能力等において嘲笑され、蔑まれていた人間が幸運にも提督としての素質を認められ着任することも珍しくはなかった。

    人は置かれた環境によって太く真っ直ぐ育つこともあれば、醜く歪んで育つこともある。

    そして歪んだ人間が歪んだ提督へとなり、従順な見目麗しい艦娘達に対してどうしたか。

    それまでの周囲からの扱いへの蓄積した不満、怒りの捌け口としたのだ。

    そもそもが人間に使役され、人間を守り、人間に奉仕すべき戦艦の魂を宿した彼女達はどれ程醜悪で愚かであろうとも、人間を、提督を拒絶することは出来なかった。


    133 = 129 :


    そんな現状を見かねた一部の有力者たちが設立したのが憲兵であるが、憲兵が設立され、艦娘達の安全がある程度確立されるようになる頃になって、新たな問題が浮上し始めた。

    人間から艦娘への偏見が薄れ始め、受け入れる風潮が広がりだす動きとは正反対に、艦娘達の提督を初めとした人間に対する不信感が生まれ始めたのだ。

    漫画版デビルマンが「こんな奴ら守ろうと頑張ってたの馬鹿みたいじゃん」とプンプンしたのを想像すれば問題ない。

    艦娘達には感情がある。それも人間と変わりの無い等身大の感情が。

    どのような非道な扱いを受けようとも変わらぬ愛を人類に注ぐ、そんな都合の良い話は無いのだ。

    焦り始めたのは軍上層部だ。

    感情を持った兵器という艦娘の不安定さ、しかもそんな艦娘に頼らなければ深海棲艦は倒せない。好き勝手にぞんざいに扱っていい存在ではないという理解をするのが遅すぎたのだから無理もない。

    そして、話は「突撃!!あなたの鎮守府の提督!!」へと戻る。

    134 = 129 :

    広報部と憲兵の後見人となっている上層部の中のとある派閥は考えた。

    艦娘達の人間に対する好感度を上げなければならない、ならばどうするか。

    もっとも身近で尚且つ命を預ける「提督」という存在の人となりを知ってもらおう。

    そう結論づけたのだ。

    番組は艦娘随一のマスゴミ兼パパラッチこと青葉と提督のインタビューという構成だ。

    青葉はインタビューを受ける提督の鎮守府“以外”の青葉を選出する。

    N○KのやT○Sお得意のやらせを極力排除するためだ。

    かくして作られた「突撃!!あなたの鎮守府の提督!!」は、予想以上に艦娘達に高評価であった。

    ただ予想外だったのは、


    『あそこの鎮守府の提督って素敵ね、今度演習で当たるからアプローチしてみようかしら』

    『ああ~ズルい~私も気になってるのに~』


    そんな声も多くみられるようになったことであろうか。

    婚活かよ。そんなツッコミを上層部は入れたくて仕方が無かったが、提督という存在が身近で親しみやすいと艦娘達に思われるようになったのは大きな収穫であった。

    目論みは成功と言えるであろう。

    135 = 129 :

    ただし、提督側からすればこれはたまったものではない。自分のところの艦娘が他所の鎮守府の提督に惹かれるのだ。

    転属願いなど出されれば戦力減少であるし、異性として気に入って目を掛けていれば最早NTRである。


    『ええ、ああいうのが好みなの。確かにカッコよかったけどさ。そういやこの前の放送見た?うちの鎮守府の』

    『見た見た。終始青葉のこといやらしい目で見てたよね。それに自分のところの艦娘は皆自分の女みたいなこと言っててマジキモかったよね』

    『そうそう、キモかった。鏡見ろっての。アンタに愛想良いのは上司だからなんだっての』

    『自分は無条件にみんなから好かれてるって思ってるのが最高に気持ち悪いよね。あんたの秘書艦の夕張、整備士ととっくにデキてるんだっての』

    『気付いてないのがマジウケるわwww』


    こんな会話を耳にして提督を辞める者はこれまた少なくはなかった。

    現状、プラスマイナスを勘案し、プラスになっているため放送は続いているのであるが。


    136 = 129 :



    「朝潮ちゃん、寝なくて大丈夫なの?」

    朝潮の隣で吹雪は心配そうに覗き込む。

    しかし、朝潮は余裕綽々といった笑みを浮かべ、テレビから視線を外さず答える。

    「何のために今日は吹雪さんに秘書艦をしていただいたと思ってるのですか?昼間にしっかりと睡眠をとっています。この放送を最後まで見てから、録画済の番組をもう一度鑑賞し、更に司令官の寝室に忍び込む余力は十分にあります」

    「最後のは自重しよ」

    この朝潮、録画の準備はしっかりとしているのに、リアルタイムで見ることにもこだわりを持っているのだ。

    吹雪は素直な感嘆と、心からの諦観が半々の溜息を吐いた。

    そう、今週の「突撃!!あなたの鎮守府の提督!!」は彼女達の鎮守府の提督の番なのである。







    『さて、今週お呼びした提督はこの方です!』

    『うふふ、なんだか緊張するわね』


    提督が簡単な挨拶と自己紹介をする。

    背後から「へぇ~提督ってそんな名前だったんだ~意外~」等と言う声が聞こえた。新参の艦娘達程提督の本名を知らないのはざらだ。

    職場で何年も顔を合わせ、結構親しげに世間話をする他部署の人間のフルネームをいざ聞かれると思い出せない、そもそも知らない、そんな感じだろう。

    137 = 129 :


    「カメラを前に緊張する司令官尊いです」

    「朝潮ちゃん鼻血鼻血」

    司令官の名前を知らないとは、その命、神に返しなさい、と朝潮が暴れ出さないか吹雪は内心ヒヤヒヤだったが、朝潮はマイティッシュで鼻を拭うことに一生懸命だ。

    朝潮ちゃんは最初からクライマックスである。



    『提督さんはさる名家のお子さんなんですよね?』

    『名家って言っても本家の京都と違って、佐世保で呑気に暮らしてる分家。それもお気楽な三男坊よ』

    『ご兄弟がいらっしゃるんですか?』

    『兄二人に姉二人。それに妹が一人』

    『お年は25でしたよね』

    『ちょっとぉ、無闇に年齢を口にするのはデリカシーにかけるわよ青葉ちゃん』

    『だってウチの提督の同期なんですから今更ですよ~それに実はですね、提督は有名な方なんですよ?』

    『あら、それってやっぱりこんな喋り方だからかしら?』

    『それもありますが、それだけじゃないですよ。主席で士官学校を卒業、容姿端麗、しかも家柄も良い。提督の話題って他の提督同士で結構出るんです。
    ウチの司令官もその一人ですけど』

    『あなたの鎮守府の提督って…確か、あの子だったわよね』



    「そういえば、女性提督って結構多いんだってね」

    「艦娘への評価が化け物から英雄へと変われば、自然と女性の社会的な地位も向上するのでしょう。今では男女平等どころか女尊男卑の傾向すら強いとか」

    「女同士で気安いからって女提督を好む子達も多いもんね」

    「私は司令官とくんずほぐれずの気安い関係になりたいですけどね」

    「朝潮ちゃんの司令官への愛という名の忠誠心は本当にブレないね」




    138 = 129 :


    『そういえば、ウチの司令官と同期なんでしたよね。その頃からオネエだったんですか?』

    まぁストレートな聞き方。嫌いじゃないけどね。オネエっていう肩書を意識したつもりはないけど、基本的に変わってないわ。安心して、女の子のガードを緩めるためのファッションオネエじゃないから』

    『ほっほ~う。ということは男の人好きなんですか?ちなみにタイプは』

    『ベタだけど阿部寛はセクシーよね。遠藤憲一さんはチョイ悪オヤジに見えてお茶目で可愛いおじ様だし。あと三浦知良選手かしら。カズダンスしてた若い頃より遥かに男としての魅力があるわ』

    『ガチだぁ。ちなみに、女の子は好きなんですか?』

    『大好きよ?可愛い女の子なんて見てるだけで幸せだもの』

    『いえ、そういう意味でなくて』

    『ふふふ、女の子だってウェルカムよ?』


    『ほぇ!?』

    『あら、可愛いわね。真っ赤になっちゃって』

    『い、いえ、そりゃビックリしますよ。そんな流し目されたら。え?提督さん男が…』

    『私ってゲイ寄りのバイなの。だからどっちも好きなの』

    『初耳ですよ!?ウチの司令官ってば提督さんがゲイだから諦め…ゲフンゲフン』




    「マジかよ。提督って女もイけるのかよ…」

    「司令官がゲイだと思って諦めた子って結構多いんですよね」

    「マジかよ吹雪。これ朝潮は知ってたのかよ?」

    「司令官のことなら大抵把握しています。寧ろ天龍さんはご存知なかったんですか?」

    「知らねーよ!!だからお前アプローチ激しいんだな」

    「別にゲイだろうとノンケだろうと関係ありません。私の司令官への愛は性癖すら乗り越えます」

    「……あ、そうですか……」



    『えっと、ちなみに好きな女性のタイプは?』

    『可愛くて綺麗な子は大好きよ』

    『そうじゃなくて』

    『わかってるわよ。そうねぇ…髪が長くて綺麗な子とか頑張り屋さんな子かしら』


    139 = 129 :



    「ふふふふ…司令官ったら…髪には自信がありますけどね」ドヤァ

    「私なんてまだまだ頑張りが足りないけど…でも頑張り屋さんって司令官に褒めていただいてるのは私が一番多いのは気のせいかな?かな?」ドヤヤァン



    「なぁ、摩耶。朝潮がすっげぇドヤ顔で髪をかき上げてるんだが…」

    「天龍、吹雪も何故か胸を張って勝ち誇った顔をしてるぜ…」




    『さて、恒例の質問ですが、提督さんは自分のところの艦娘に彼氏が出来たらどうしますか?』

    『寂しいけど祝福するかしら。娘をお嫁さんにやる親の心境になるけど。ただ、ウチの可愛い子達に相応しいか、じっくり吟味するけどね』

    『独占欲は無いんですか?うちの艦娘達は全員俺の女だぁ~~!!って』

    『そうねぇ、半分は当たってるかしら。独占欲はあるけど、艦娘ちゃん達は私の妹とか娘みたいなものだしね』

    『ほぇ~~結構他所の提督さんなんて嫉妬メラメラだったのに。酷い提督なんて自分の鎮守府を俺のハーレムだなんて言う人もいるんですよ。気持ち悪いですよね』

    『あははは、そりゃ男の子ですもの。可愛い女の子達に囲まれてハーレムって妄想しない男の子なんていないわよ。それは男の子として当然のことよ。気持ち悪いなんて言わないであげて』


    「確かに、司令官にハーレムなんて必要ありませんね。一人で十分でしょう。妹、娘、恋人、妻、雌犬、すべての役割を一手に引き受けられる黒髪の綺麗な艦娘一人がいれば」

    「朝潮、最後、最後の」

    140 = 129 :



    『ハーレムだって平等に愛して、女の子が幸せを感じていれば問題ないわよ。優柔不断なのを誠実なふりで誤魔化してるだけの釣った魚に餌をやらない男の方がよほど害悪だわ。そもそも、性欲をただ愛情なんて偽って艦娘ちゃん達にぶつけようとする提督が多いわね。花は愛でるものであって手折るものじゃないわ。それをわかっていない提督が多すぎるのよ』

    『……素敵な言い回しですね。そういう提督さんは愛でていらっしゃるんですか?』

    『みんな私の可愛い子達ですもの』




    「愛で、撫でると書いて愛撫。良い言葉です」

    「何を言ってるの朝潮ちゃん?」

    「もっと司令官に愛でて欲しいです。愛でて、撫でて、時々おしおきして、そして愛撫してほしいです」キリッ

    「鼻血吹き出しながら変な事言わないで!!!」

    141 :

    以上で投下を終えます。
    提督がオネエなのかフリなのかという質問がクラスのマドンナにあたったことにヒントを得ました。
    どうせ質問に答えるならプロフィールっぽい箇条書きよりも、お話に組み込もうとしてこうなりました。
    何かご質問がございましたら、次回の後編でお答えします。

    142 = 141 :

    クラスのマドンナって何書いてるのでしょうね。意味が分かりません。
    インタビュー編は番外編みたいなものですので、後編以降はまた元のお話に戻す予定です。
    それではノシ

    144 :

    クラスのマドンナに当たる…なんか哲学的だ

    145 :


    だめだこの朝潮早くなんとかしないと

    146 :

    今回特に手厳しいし生々しいなww
    女の子に対していやらしい目とか上から目線とか勘違いを自覚する瞬間って死にたくなるね
    ワーカホリック気味の駆逐艦のお世話をしてあげたい乙

    147 :

    これから投下します。

    148 = 147 :



    『ところで提督さんはご存知ですか?提督さん達の代は優秀な方が多いらしいですね』

    『話には聞くのだけれども正直ピンと来ない話ねぇ』

    『提督さんの世代、正確にはその前後の年を含めた世代の方々が最も士官学校卒業生で提督に就任されている割合が多いんですよ!みなさん優秀なんですね』

    『光栄なことだけど、私達の世代になって士官学校の教育体制が整ってきた結果なのよ。これからどんどん優秀な子達は出てくるわよ』

    『ほほぉ~流石の謙虚さ。主席提督は伊達じゃありませんね』

    149 = 147 :


    「へぇ~提督って主席だったのかよ」

    「あれだけ強くて優秀な人がゴロゴロいても怖いですけどね」

    「ご存知なかったのでありますか天龍殿は」

    「寧ろ憲兵が知ってることにビックリだよ。そんな情報まで入ってくるのか」

    「我々の任務は艦娘の守護ですからね。昔ほどではないにしろ人格より能力や家柄を重視して選抜される提督は多いですから。我々には詳細な情報が伝えられるのです」

    「ヤバそうな提督はチェックしているっていうわけか」

    「以前からこの鎮守府の提督殿は艦娘に対してとてもお優しいと我々にも伝わっていたであります」

    「そうでしょうとも」

    「何で朝潮がドヤ顔すんだよ…」


    150 = 147 :


    「普段私達の髪結ったりお料理してる姿ばっかり見かけるから意識したことないけどウチの提督って凄かったんだね」

    「司令官の実力ならば当然過ぎる評価でしょう」

    「でもさ、采配はちょっと慎重すぎよね。大破どころか中破で撤退だよ?」

    「その細心こそが我が鎮守府を常勝たらしめているのですよ千代田さん。何よりも私達を大切にしてくださっている司令官のお心遣いでもあります。
    中破でその目障りな胸部脂肪をまろび出しているというのに、まだ出し足りないんですか痴女田さん?」

    「痴女田!?」

    「これ見よがしに中破の度に黒パンを曝け出して…調子に乗っていますか?黒の下着を司令官から窘められて購入に至らなかった私への嫌味ですか黒パン田さん?」

    「田しか合ってない!?」

    「朝潮ちゃん千代田さんに手厳しいね…」

    「朝潮ちゃんは巨乳さんには基本厳しいのです」



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