元スレ加賀「提督……あなたのスタンドは……この世の何よりも優しいスタンド」
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51 = 1 :
「『暇』じゃないィィィ~~~~~~?」
「『誰かと違って』的な意味に聞こえるんだけど、気のせいじゃねーよなぁぁ~~~~~~?」
……良く判ったな。
と、答える代わりに自然と溜め息が漏れた。
どこぞの誰かが戦艦の癖に魚雷まで発射する所為で資源がカツカツなのと、どこぞの誰かが書類を読み進めない所為で整理がかっつかつなのだ。
ある駆逐艦が怒号を散らして追いたてているから、辛うじて鎮守府も回っているというもの。
……作戦指揮は悪くないが、所掌の事を遣りたがらない指揮官なのだ。つまり書類が溜まる。
「ビス子よぉ~~~~~~なんか感じ悪くねーン、こいつ」
「ビス子じゃない! だけど、ええ、そうね、Admiral……彼女は協調性が足りてないんじゃないの?」
……コイツらだけには言われたくない。
というかお前ら実は仲いいだろ。
耳打ちし合って。しかも聞こえてる。絶妙に聞こえる声出しやがって。ちくしょう。
52 = 1 :
「……それで、元の話はなんなの?」
深く深く溜め息が出る代わりに、助け船を出す事にした(艦娘だけに)。
元はと言えば、このどこかの国の高飛車戦艦サマが提督の元に報告を持ってきた。
それがいつのまにかナチだナチじゃないだどーだこーだという話に刷り変わっていたのである。
「……ああ、そうね。Admiral! 演習の相手よ」
「演習ぅぅぅ~~~~~~?」
「そう、この中から演習の相手を選びなさい?」
ふふん、と背を反らして髪を掻き上げる魚雷発射可能戦艦。
タブレット……というものを渡された提督はというと、思いっきり眉を顰めた。
仕事をしたくない、という意味の顔ではない。
「ビス子ちゃ~~~ん、これもう見たりしてる~~~?」
「ビス子じゃないわ! ビス子じゃ! ……で、何かしら?」
「これよこれ、この演習相手のし・ゃ・し・んンンン~~~~~~」
53 = 1 :
「写真……?」
ふむ、とクラッカーの間にクリームソースを挟んだ菓子のようなアダ名をつけられた戦艦がタブレットを覗き込む。
「リュー……ジョー……? 珍しいわね。うち以外に駆逐艦を秘書艦にするなんて」
「そっちじゃなくて下よ、下」
「あら」
と、口に手を当てた。
……それほどまでに衝撃的なものでもあったのだろうか。
「いい男じゃないの。中々、ワイルドな感じで」
と、まじまじと身を乗り出して眺めるビス子……改め戦艦ビスマルク。
よほど気に入ったのか、タブレット画面を食い入るように眺めている。
……最も彼女の場合、『男が格好いいから御近づきになりたい』というよりも『自らの美的感覚にそぐっていたので評価している』という意味合いが大きいだろう。
「そぉ~~~かぁ~~~~~~? こーゆー奴は先祖代々ロクデモナイ事をしてると思うぜ~~~~~~? 面に出てる気がするのよねーン」
「そうかしら……?」
「間違いなく全うな仕事じゃあねーぜ。どんな育て方をしたらこんな顔になるんだ? きっとロクでもないじーさんが甘やかして育てたに違いねーと思うのよねー」
「うーん……」
と、提督がくしゃみ。誰かが噂しているのだろうか。
54 = 1 :
「おっと……でもねーんだよ。その下よン、その下」
「その下……?」
と、更に二人の視線が下がり……制止した。
一体何が映っていたのだろうか。ひょっとしたら、猫や犬や亀が提督をしていたのか? それとも、オランウータンとか?
「……ビス子、一つばかし聞きてーんだけど」
「Bismarckよ。……それで、何かしら?」
「『それ』……お前の国の発祥だったよなぁー?」
「……ええ。『これ』は私の国が始まりよ」
「……」
「……」
「『それ』って……頭の上に乗せるものだったか? それとも俺の記憶違いとかいうヤツ?」
「……食べ物よ。列記とした」
55 = 1 :
それから、暫し沈黙。
タブレットを眺めたまま、二名が停止する。
…………食べ物? ドイツ発祥の? ザウアークラフトとか?
それともポテトを蒸して潰しただけの豚の餌の事だろうか。或いは何の捻りもなくただ腸にミンチ肉を詰めて焼いただけのものだろうか。
提督にしてもビスマルクにしても食が憐れな国の出身だ。
パスタがない国はこれだから駄目だという奴だ。そりゃ、頭の上にも乗せたくなるかもしれない。
世の中には砂糖で豆を煮て潰した中身のパンに頭を埋め込んだものが居ると言うし、特に不思議でもないだろう。多分。
それにしても……一体……。
「ふ、普通……普通の神経してたらよぉー」
「や、止めなさい……Admiral」
くつくつと。
「普通の神経してたら……こんな……」
「やめて。それ以上は、絶対、言わない、で……」
噛み殺されていた笑いが。
「頭の上に『ハンバーグ』乗せるか普通ゥウ~~~~~~~~~~~~!?」
――――噴火した。
56 = 1 :
「なんでコイツ惚けた顔の上に『ハンバーグ』乗せてるのよ~~~~~~ン!」
「やめて! やめなさい! やめなさいAdmiral!」
「Oh,NO! 東洋人にはハンバーグを頭に乗せるものって伝わっちまったっつーのォ!? コレェ!?」
「やめ……っ、っク……やめッ、やめなさい!」
「マジにコイツはど~~~~~~かしてるぜ! 熱くねーのぉ~~~~~~!?」
「だから、やっ、やめなさい!」
「そ・れ・と・もぉ~~~~~~! ハンバーガー作ろうとして『パン』がなくて仕方なくっつーのォ~~~~~~!?」
「やめっ、ちょ、やめっ! やめな、やめなさい!」
腹を抱えて、とはこの事だろうか。
思いっきり画面を指差して、震える手で支えたタブレット向かって爆笑を続ける二名。
……頭の上に? ハンバーグ? 一体……一体何が起きてるというのか?
「親がどーしたらこんなハンバーグ乗せる教育に行き着くっつーのよ! コイツの親の顔が見てみてーぜ!」
と。
ひとしきり笑って、死ぬほどくしゃみを漏らしてから……絶叫者二名は笑顔の神通と妙高に連行されていった。
……そんな体力があるなら鍛練をしよう、という意味なのだろう。
ごく自然に提督が艦隊運動に加えられているのはともかくとして。まぁ、慣れた。
57 = 1 :
……さて。
古くからの言い伝えにこんな諺がある。ある事はあるのだ。
しかし、それにしても。
それにしても――――なんというか。
「……はぁ」
全ての道はなんとやら――――というが。
……何もこんなお馬鹿な鎮守府の道まで通じなくてもいいのではないだろうか?
戦艦Romaは片息を一つ、タブレットを拾い上げて憂鬱そうに眼鏡を上げた。
なお。
「……ハンバーグ? これが?」
なんというか。
「……言うほど悪くない髪型だと思うけど。いや、むしろ……」
その後、やたらと提督のくしゃみが止まらなくなるという理由で、件の『彼』についての話題が出される事は激減した。
――了
58 = 1 :
お待たせしました
年末~年度末、忙しい、イベント、できない
かゆ、うま
59 = 48 :
乙乙!
ジョセフそれ全部自分ww
60 :
乙
見事にブーメラン過ぎてメッチャ笑った、さすがジョセフwww
61 :
乙ー!
ジョセフww息子にそんなこと言ってwww
62 :
乙
誰かー!195cmの大男がおさまるぐらいの鏡持ってきてー!
63 :
来てた乙ぅ!
ビス子&ローマとかジョセフのとこ有能な戦艦そろってんなー。最強クラスの重軽巡もいるし、変わりに航空戦力が薄い水上打撃特化なんかな?
つーか仗助のとこと演習やったら提督同士の場外乱闘不可避じゃねーかww
64 :
現状
【仗助くんと愉快な仲間たち】
東方仗助
秘書艦:加賀
・大井
・山城
・天龍
・卯月
【星屑十字軍】
提督:空条承太郎
秘書艦:瑞鶴
・比叡
・島風
・那珂
・利根
【きょういの格差艦隊】
提督:ジョニィ・ジョースター
秘書艦:龍驤
・照月
・浦風
・浜風
・潮
【ジョセフと愉快な仲間たち】
提督:???
秘書艦:霞
・神通
・妙高
・Bismarck
・Roma
65 :
>【ジョセフと愉快な仲間たち】
>提督:???
隠しきれてねぇw
66 :
そこは、未来の不動産王や波紋使いと愉快な仲間たちでよかったやろwww
67 :
RJ
虐めんな
68 :
RJ以外は駆逐艦だから、ちっぱい仲間じゃないの?(すっとぼけ
69 :
ジョナサンとか徐倫はどうやって戦闘に貢献するんだ……気になるな
70 :
ジョセフの艦隊空母来たら夜戦も強いし完璧やな
71 :
【天龍は肝試しがお好き? その1】
72 :
「苦情っスか~~~~~~?」
長椅子に腰掛けて卯月の飲むコーヒーは苦い。
いや、コーヒーは元々苦いものだけど。
「ええ。妖精から苦情が寄せられています」
「苦情言うンすねー、妖精さんも」
繰り返すが飲むコーヒーは苦い。別に煮立てすぎたワケでも、イカスミを入れられたワケでもない。
ちなみにイカスミは生臭い。あまり苦くない。墨なのに。
「ええ。だから働かせすぎないで下さい」
「…………それ、加賀さんが言うンすかぁ~~~~~~~~~~?」
「……何か?」
「い、いや何でもねーッスよ! 何でも!」
「……そう」
73 = 1 :
何故、苦いか。
それは単純である。
執務机に腰掛けて、秘書艦である加賀と会話するダサ……古くさ…………げふんげふん、古典的なリーゼントとポンパドールの司令官の所為ではない。
いや、厳密に言うと司令官の所為だった。
司令官の“おやつ”がどちらがいいかと、卯月の頭の上で冷戦が繰り広げられるからである。
山城が正気を疑う瘴気を発し、大井が言い様のない笑顔で良いように居直る。
片やお彼岸のお墓の前にでも備えるのではないかという和菓子であり、もう片方は街に出て購入してきたケーキである。
つまりいつもの事だった。いつもコーヒーが苦い。
(……うーちゃんはもうツッコミしないっぴょん)
卯月は『ご自由にお取りください』とテーブルの上に置かれた胡椒せんべいを取り出してかじる。
こしょうの香りが染み付きそうだ。
74 = 1 :
「……それで、苦情ってのは一体なんなんスか?」
「まず一件……『先日、とある戦艦に提督の寝顔の撮影を依頼(依頼とは言ってない)されました。助けてください』」
「……」
おい戦艦一人しか居ねえぞおい。
「二件目……『先日、とある重雷装巡洋艦に提督の寝顔の撮影を依頼(依頼ならよかった)されました。助けてください』」
「……」
おい重雷装巡洋艦一人しか居ねえぞおい。
というかお前ら実は仲いいだろ。ズッ友ならぬジョッ友か。
仗助……じょうじょ……ジョジョを眺め続ける仲間か。ジョッ友か。
(――ハッ!? うーちゃんはもうツッコミしないっぴょん!)
思わず煎餅を勢いよく頬張りすぎて、むせた。
「三件目……『先日、とある駆逐艦にデザートをカツアゲされました。取り返してください』」
「……」
「ひゅ、ひゅー♪」
駆逐艦なんてこの世に一杯いるよね。
75 = 1 :
「なんつーか、もぉ~~~~ちょっと『マトモ』なお悩み相談はねーんスかぁー?
これじゃあ、新聞の投稿欄に悪戯書き放り込んで批評させるよりも『どーしようもねー』モンっすよ」
……よ、よし。どうやら妖精からの悪戯と思われたらしい。セーフだ。
思わず胸を撫で下ろして、静かに嘆息。ちょっと引っ掛かった胡椒煎餅に噎せた。
「……デザートの件は後で私がやるとして」
ですよねー。
「四件目……『幽霊が鎮守府内に出ます。こわいです。なんとかしてください』」
「……幽霊ィィイ~?」
「……」
「幽霊って、あの『ユーレー』っスか? 足がなくて、宙に浮いてて、勝手に物を動かしたり音を鳴らせて驚かせるって……あの?」
「……【スタンド】も幽霊みたいね」
76 = 1 :
そのまま、「そういえば幽霊には知り合いがいた」とか「ものは動かしてなかったかも」とか「デザートは多目に受けとります」とか、そんなやり取りをしたのちに。
……いや、かなり聞き捨てならない言葉が混じってたが。
「……流石に普通なら気にしないんスけど、幽霊には少し覚えがあるというか、なんというか」
「そう」
「この苦情を持ってきた妖精さんってどこにいるんスかね?
……というか、そもそも妖精さんって文字とか書けるんですか? あんなにちっこいのに?」
確かに。
言われてみれば、人間が『大判新春書き初め』をするようなサイズ比であろうか。
それを一枚分書き上げて折り畳むというのは、些かな重労働という気もしなくもない。卯月ならゴメンだ。
……と。
「ああ、悪いな提督。それ、オレのだ」
眼帯の不良風艦娘、天龍が手を上げた。
……なんたる事だろうか。まさか、度重なる戦闘のストレスに天龍の精神は偽りの妖精の記憶でも蘇ってしまったというのか。
いや、まぁ、流石にそれはないとしても……。
せっせと天龍が妖精めいた丸文字の筆跡を刻んでるとなると、それはそれでうすら寒いものがある。
77 = 1 :
「『これ』……本当に天龍……おめーが書いたのかよ」
「んー? フフッ、オレが妖精の世話を焼くのは意外だったか?」
「いや……」
雑そうでいて、どことなくファンシーな文字。
そう。だからこそ、司令官である東方仗助も、秘書艦である加賀もそれが『妖精から送られたもの』と判断したのだ。
つまり……
「随分と、そのぉー……『カワイイ』感じで書くんだな、その……おめー……」
「う、うるせえ! オレは妖精さんからの手紙……それっぽく書いただけだ! あいつらからみたいに! 可愛くなんかねえ!」
恰かも不本意そのものと腕を組んで顔を背ける天龍と、実際ただ関心したと手紙をマジマジと眺める仗助。
他方の加賀は、熟練のギャンブラーがチップを毟り取るように、卯月の目の前から胡椒煎餅を没収していた。
実際この正規空母容赦せん!
「んで、この手紙を全部おめーが書いたとして……どーゆーつもりなんだよ
、こいつぁー」
「ああ、それは――」
78 = 1 :
眠気、限界。近い内に続きをまた
80 :
あーん!加賀様が容赦せん!乙
81 :
乙乙
正規空母ww
83 :
おつおつ!
84 :
次は一話放送してからかな?
85 :
アニメも良かった……こっちもたのしみだぜ……
86 :
まってる
87 :
まだなのかー
88 :
お待たせしました。今夜です
4部のアニメグレートっすね
89 :
続き楽しみです
乙
90 :
次の「投稿」の時を待て…
91 :
お待たせ。ゆるりと
92 = 1 :
「一応よぉ、妖精も一緒に戦ってるだろ? だったらなるべく気持ちよく戦って貰いてーと思わねーか?」
「気持ちよく……っすか?」
「ああ、……今は昔と違うんだ。油よりも兵隊の方が安いとか、そんな事も言いたくねえ」
「天龍、おめー……」
「少し思っただけだぜ。少し……少しだけどな、少し」
何となく気まずそうに、目線を反らしてボリボリと頬を掻く天龍。
心なしか頬が染まり、渋いものでも口にしたかの如く唇を波立たせる。
それを見た仗助も……暫しの沈黙の後、よっしゃと手に拳を打ち付け立ち上がった。
「グレートだぜ、天龍! そうと決まれば、とっとと問題解決するしかねーよなぁ~! 早けりゃ早い方がイイ!」
「……いいのか、提督?」
「なーにしおらしくしてるんスか! んなのおめーのキャラ『らしくね』ーってモンじゃあねーかよぉー!」
「ああ、だな! そうと決まれば――」
立ち上がった二人の視線の先――突き出された加賀の手。
というより、襟首を捕まえられた卯月。
「やりました」
「……グレート」
「……世界水準軽く越えてやがるぜ」
93 :
まさかのスピード解決。
可愛そうだけど、妖精からカツアゲされたデザートはこの先加賀に上納されるのだろう。
そんな目で見送った仗助と天龍だ。
……ともかく、これで一件は解決したが一件落着とはいかないところ。
「んで、次は寝顔の撮影、っと……」
「……おう」
「……」
「……」
「……これよぉー、天龍」
「……な、なんだ?」
「パスしちゃあいけねえかなぁー。パスするっつーのもこの場合は悪くないと思うんだけどよぉ~……」
「……お、おう。ま、まあ話せばすぐわかるからな」
見つめ合って何度も首を動かす二人。
戦艦と重雷装巡洋艦はこの鎮守府に二人とおらず、そのどちらに対しても触れる事はかなりなんか死を意味した。
94 = 1 :
流石に仗助も、
(何となく好感持たれてるっつー感じだから『ムゲ』にするのもどーかって話だけどよぉ――――)
大井と山城からの好意は自覚していた。
流石にあれだけモーレツに世話を焼かれればその意味も分かるし、こう見えても東方仗助は『モテる』。
自分に対してアピールをしてくる女子には覚えがあるのだ。
……とは言っても、
(流石に俺の寝顔を撮って集めるっつーのは、ちょっぴり薄気味悪いっつーか……。
そもそも『寝顔』なんて撮って何がどーなるっつーんスか? スタンドに閉じ込めるつもりでもねーんだから)
あくまでも、常識の範囲内で。
健全に女の子にはしゃがれるのに慣れているのであって、
だからそこから彼女を作ろうと躍起にもなっていないし、ましてや寝顔を集めるなんてのは人知の外である。
ただ、何となく実際怖い。直接問いかけるのが憚られるほどに。
「つーと、残りはこの……」
「お化けっすかぁ~~~? 実は俺、あんま『お化け』とか『吸血鬼』とか得意じゃあねーんだよなぁ……薄気味悪くて」
「スタンド……? ってのもオレが聞く分じゃお化けみてーなもんだけどな」
「『スタンド』は『スタンド』……『お化け』は『お化け』だぜ、天龍」
「そうかぁ~~~~~~?」
95 = 1 :
残りはどれも、乗り気がしない。
とは言っても――――天龍の言う事は至極尤もであるのだ。
街を守っている艦娘たちにも、その艦娘を助ける妖精たちにもなるべく憂いなく戦って貰いたいのが本音。
となれば、
「……一丁、やるしかねーみてーだなぁー。お化け退治、って奴をよぉ~~~」
消去法で、解決する事件は決まっていた。
「フフ、怖いか?」
「そーゆーおめーは怖くねーんスか? お化けとか、亡霊とか……」
「何言ってんだ、提督! オレたちは一度沈んだ船だぜ? 今更お化けとか言われても、それがどーしたって感じだろ?」
「ああ、なるほど」
言われれば尤もだ。
天龍らは皆、前の大戦で――――仗助が生まれるより遥か昔の大戦で沈んだ船の記憶を引き継いだもの。
オカルトだ、不思議だという話は的外れすぎる。
ところで、
(……実際そこんとこ、どーなってるんだ? いまいち艦娘っつーのが何かよく判らねーんスけど)
ここに来て仗助も、僅かな疑問を持った。
天龍らがいかにこうして今を生きていて、そして、人の姿を取っているのか。
96 = 1 :
顎に手を当てて、思案顔の仗助。
その辺りの事でも問いかけてみようかとすれば、拳で手を打つ天龍。
振り返った先は、卯月と加賀。
「つーワケで幽霊退治、っつーか肝試しでもやってやるとして……フフ、怖いか?」
「うーちゃん、パスだっぴょん」
掌をひらひらと、卯月が首を振る。
「あん? なんだぁ? やっぱり、外見らしくブルっちまってんのかぁ~? 卯月よぉ~」
「まさか。うーちゃん幽霊なんか怖くないぴょん」
平然と答える卯月の目は冷めていた。
外見が子供なだけに、なんとも可愛げがないというか……なんというか……。
だが、怖くないというなら何故――
「……罰掃除でっす」
「あ」
「もー、ひどいっぴょん! うーちゃんカツアゲなんてしてないっぴょん。ほんの少し、いらないならデザートを分けてくれないかなーって」
「……出口塞いで、か?」
「……た、たまたまそっちが出口だっただけでっす!」
97 = 1 :
あからさまに口笛を吹く卯月に、仗助は苦笑。
今回は卯月は抜きだ。正確に言うと前回も卯月は抜きだったのだが――――それはまぁ良いとしよう。
なお、
「天龍ー、大井さんと山城さんはどーしたんだ?」
「あの二人は…………っかしいな。どこ行ったんだ?」
いつのまにか、二人は消えていた。
つい先ほどまで、お茶請けで言い争っていたというのに……だ。
なお、部屋の外、
「肝試しィィィ~~~~~~~?」
耳打ちに、声を上げた大井。
二人は退避していた。決して幽霊が怖いとか、怨霊を気にして……ではない。
妖精さんからの苦情を察知した二人は部屋の外に脱出していたのだ! 九秒の時点で!
そして、注目したのは、部屋を出る直前に耳にした最後の苦情であった!
「……静かにしてください。提督たちに聞こえるわ」
「あ、はい」
98 = 1 :
ふふふ、と暗い笑みを浮かべた山城。
その瞳に……漆黒の炎が点る。その様はどこか鬼めいて怖い。
「いい……よく考えて? このままなら確実に『確かめる』……そして幽霊騒ぎと言ったら……」
「き、肝だめし……ッ」
ごくり、と鳴る大井の喉。頷く山城。
「そこで…………もしも、ただ確かめるだけじゃあ詰まらない……『肝だめしもしよう』と言ったら……」
「な、なるほど……。でもなんで私に……?」
「一人なら反対されるかも知れないわ…………でも、二人…………少なくとも二人集めたなら……」
加賀はそういうお遊びに反対するだろう。
卯月もきっと、他人を驚かす仕掛けならともかく、自分が仕掛けられるのは嫌がるかもしれない。
だが、残る仗助と天龍は恐らく中立。むしろ、激しい熱意を向ければ賛成になるだろう人間たちだ。
となれば、
「ひ、必勝法……!」
ざわ、ざわ……と空気が揺れる。
99 = 1 :
「わ、私は…………その、別にねーさま一筋だから提督はどうでもいいですが……あくまでも興味として……」
誰に対してか、というか目の前にいる大井に対して、今さらながら取り繕う山城。
何の言い訳か。
かなり強く病んでいる風でいながら、表面的には思い出した風に虚勢を張るタイプだった。めんどくさいタイプだった。
頬を掻く大井は――――それに対して、
「……自然を装って提督に抱き着く、抱き着くのよ大井! そうよね北上さん!」
やはり小声で拳をグッと握り締める。
もう一人の、向けるべき好意の対象――北上――がいない分、大井は妙に前向きにオープンになっている。
北上がいる手前、或いは提督へと懐疑的な態度を長く続けてしまったならその手前――恥ずかしくて表には出さないが――。
北上はここにおらず、仗助へと強く当たった時間は殆どなかった。
故に――
(肝だめし……ええ、肝だめしよ! 肝だめし!)
大井には、好意を取り繕って誤魔化すという発想はなかった。
あるのはただ、
(ここで提督の心に魚雷を撃ち込むのよ! どんな手を使っても、重雷装巡洋艦は頼りになると!)
勝利して、支配する――――ただそれのみ!
100 :
俯き加減に、「べ、別に提督は」とか「私にはねーさまが」とか「そう、これはあくまでもねーさまのため」とか呟く山城と――
「気絶させて……布団に……」とか「お姫様抱っこ……海にさえ出れば艤装のパワー」とか「薬をカレーに……」とか笑う大井。
そこへ、
「おっ、大井さんに山城さん。こんなところに居たんスか? これから――」
「ご、ごめんなさい提督! 少し考え事が!」
「……あ、そーっすか」
んじゃあしょうがないかと、天龍と共に連れだって歩く仗助。
その背中が遠ざかっていく中も――――二人は妄想相手に顔を青くしたり、赤くしたりしていた。
「そう……あくまでもその、山城はねーさまが…………だからこれは……」
「そうよ……そうですよね、北上さん! ええ!」
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