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元スレ大井「少し離れてくださいな」 北上「え、なに?」
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このまま大井と北上が早まって後追い自殺なんてしたら…
必然的に嫁のポジションに空きができる事になる
まさか多摩のいう「愛あればこそ」ってのは…
必然的に嫁のポジションに空きができる事になる
まさか多摩のいう「愛あればこそ」ってのは…
―――
鎮守府より約90海里。
メートル法に換算して166km北方の海上。
波静か風は無し。雲は遠く晴天也。
「吹き飛べぇぇぇぇっ!!!」
およそ穏やかと呼べる状況。
時代が違えば客船が凪いだ海の上を遊覧するに適した海。
けれど私達が居るここはそんな牧歌的な要素を完全に打ち消した
戦いの最中にあった。
爆音。轟音。熱風に、上がった飛沫。
黒く、そして白い深海棲艦に向けて放った酸素魚雷は
するすると敵の直下に入り込みまた一つ紅い噴水を立ち上らせる。
至近で次々上がる蒼と紅の水飛沫。
一見すれば幻想的であるそのコントラストも
敵の体液交じりと思うと反吐が出る。
前髪から垂れるモロに浴びた海水に気分が鬱屈する。
「……ソナー、エコー共に敵影無し。状況終了、これより帰投します」
「蒼龍さん金剛さんは高速修復材を使用してください。
その後羽黒・五十鈴・如月は順に一番からドックを使って、私は四番を使うから」
海から上がり指示をだす。
提督の指示に従い五連戦。
流石に皆の顔にも疲れが見えるし、ダメージも馬鹿にならない。
「大井、ちょっといい?」
出来る限り的確に、最低限の指示を出す。
どうせ私は大して被弾もしていないし可能なら入渠もせずに
提督の所に走りたい。いまは少しでも一緒にいたい。
けれど私を信用して任せてくれたのなら完遂しなくちゃいけない。
「川内? なにかしら、見ての通り事後処理で急がしいんですけど」
そんな時に、川内が妙に早歩きで近づいてきて私を呼んだ。
踵を鳴らし、似合わないしかめっ面。
「提督の私室に行って」
感情を押し殺したかのような声。
そしてその台詞。寒気が走る心臓の音がうるさい。
落ち着け、落ち着け。
「わかりました。では補給と報告書の製作が――
「いいから行けよっ!」
ぐいと胸倉を掴まれ額をぶつける勢いで顔を近づけてくる、
首の座っていない赤子の様に頭が大きく揺れる。
「あの人は他の誰でもない、お前を待ってるんだ!」
「どういう……意味よ」
大声がわんわんと頭に響く。
反響する声、ぐらつく視界。
それはきっと理解したくないという私の感情がそうさせるのか。
「まだ間に合うから……さっさと走れ!」
その近づけられた顔。
いまにも泣き出しそうな、真っ赤な瞳。
言葉よりもよほど雄弁なそれに、私は全てを理解する。
「こっちは、私がやっとくから……」
川内が最後に言った台詞。
それを聞き終える前に、足が動いた。
廊下を走る。外し忘れた艤装が重い。
足を止めずに力任せに外して投げる。
重たい金属がリノリウムの床に跳ねて鈍い音がいくつも連なる。
改2になって提督から与えられた五連装酸素魚雷、
毎日磨いて大事にしていたそれも今はただ煩わしい。
壁にぶつかり床に落ちた20.3cm連装砲は視界の端で砲塔が歪むのが見えた。
関係ない。関係ない。全部全部、要らない。
たった一つ、大切なものが手元に残るのなら全部失って構わない。
「……はぁっ! はぁっ! はぁっ……!」
樫の重い扉。その前で息を整える。
覚悟を決めろ、見て見ぬ振りはもう終わり。
直視しなくちゃいけない時が来てしまった。
「……失礼します」
今まで何度も足を踏み入れた。
時に軽い気持ちで、時に強い決心と共に。
けれどここまでこの扉を重く感じた事はなかった。
「……大井か?」
広い部屋。見慣れた内装。大きなベッド。
そこに横たわる提督が私の名前を呼びながらふらふらと右腕を上げる。
「どこだ、大井」
なにかを探すような腕。
その意味が理解できるまで数秒の時間を要した。
「ここです。貴方の大井はここに居ますよ」
駆け寄って、宙を彷徨う手を両手で握る。
出来る限りいつも通りに、可能な限り落ち着いて。
「はっは、そこに居たか。よかった」
ぼんやりとした瞳。その瞳は私の少し横の当たりに向けられている。
その仕草に、胸の中がぐっと熱くなって、思わず頬を伝う物がある。
「ま、……まったく、情けないですね」
「いやいや、不甲斐無い所を見せてしまったな」
軽い調子で、けらけらと笑う提督。
その声には力なく、握った手にも力なく。
今にも消え入りそうな儚さ。
これどう転んでも側から離れなくなるよね…
仕掛人皆殺しあるで
仕掛人皆殺しあるで
「……」
沈黙が部屋を覆う。
「大井、ちょっと痛い」
知らず知らず手に力が篭っていたのか
提督が少し困った様に呟く。
謝って、でも力は抜けない。意識した瞬間、
力を緩めた途端手をすり抜けてしまいそうで。
強く握って置かないと、繋ぎとめて置けない気がして。
「少し、眠くなってきた」
先ほどよりも小さく、ゆっくりとした口調で提督はぽつりと零す。
それは、最後の、決定的な。
「っ! ……なら、子守唄でも歌ってあげましょうか?」
視界が滲む。声が震える。嗚咽が漏れそうになる。
でも、提督に気付かれる訳にはいかないから、
唇を強く噛んで必死に堪える。
口の中に血の味がする、両手に更に力を籠める。
「珍しいな……お前がそんな事言うなんて、さ」
「たまには、そんな日もあります」
言って小さく歌いだす。
――ねんねこ しゃっしゃりませ
「いい声だな」
貴方の守りたいものは私が守って見せます。
――寝た子の かわいさ 起きて 泣く子の
「……眠い」
貴方の後を追ったりしません。
だから、安心しておやすみなさい。
――ねんころろ つらにくさ ねんころろん ねんころろん
「……おやすみ大井」
「おやすみなさい……あなた」
全部終わるまで、待っててください。
私はずっと貴方を想うから。
「提督……」
するりと抜ける彼の手がゆっくりとベッドに横たわる。
「提督」
二度、呼びかける。
「て、……いとくぅ……」
三度。呼んで。返事は無くて。
「うぅぅっ……」
泣くな、泣くな。
私にはまだやる事がある。今泣いたら、きっともう止まらない。
二度と歩けなくなってしまう。だから、泣いちゃダメなのに。
「くぅっ……ひっ……うぐっ……」
大きく深呼吸を繰り返す、天井を睨む。
神様が居ると信じた事があった、
再び命を得たときに、北上さんと会えたときに、彼と結ばれたときに。
神様に心から感謝をした。
「……」
もし神様が本当に居るのなら別に恨みはしない。
けど、私が艦娘として70年の時を経て彼に出会えたように
また70年後でもその先でも、どうか今一度。
お、俺……ドッキリするって聞いてすごくワクワクしてたんだ……
おかしいな……胸が痛くて、上手く笑えないや……
おかしいな……胸が痛くて、上手く笑えないや……
誰だよ、死んだふりドッキリをネタ提供した奴…
読んでるだけなのに気まずい気分で一杯になっちまったじゃねえか…
読んでるだけなのに気まずい気分で一杯になっちまったじゃねえか…
お、おらネタ提供したけどこんなことになるだなんてわ、わかるわけねえべよぉ
>>124
開廷
開廷
>>124
有罪
有罪
>>124
閉廷
閉廷
>>124
控訴
控訴
>>124
却下
却下
>>124
上告
上告
>>124
棄却
棄却
いやこれ……考えようによっては提督が悪いんじゃね?なにがあっても死にそうにないせいでここまで大掛かりなドッキリになってしまってる事を考えると。
――― やってきたネタばらし
「うぅ、……ん」
救護室の片隅。いくつも並んだベッドの一つ、
白いシーツ白い枕白い布団。白、白、白の空間。
「ここは……」
目が覚めた北上の視界に飛び込んできたのはそんな部屋。
普段余り用のない閑散とした救護室に自分が居るのだと
そう認識できたのは幾許かの時間を置いてからだった。
「て、いとくぅ……」
横から声がしてぼうっとした頭で隣を見ると、
未だうなされている大井の姿があった。
(大井っち、出撃の直ぐ後に聞いたのかな)
泣きはらした顔で眠る大井。
北上はそれを眺めながら自分もあんな顔をしているのかと苦笑する。
未だ信じられない。あの提督が死んだなど。
天井を見た瞬間、あぁ夢だったのかと思ったほどに。
けれど隣で眠る大井を見るにそんな希望はなくなった様で。
「大井っち、起きて」
起き上がり、二度自分の頬を強く叩いてから北上は
隣で眠る大井を起こす。もう少し寝かせておいても、
という気持ちが無かったわけではないが。
事ここに至ってしまった以上やらなくてはならない事が山積みで、
それを誰かに任せてしまうのは嫌だった。
「んぅ……はっ!? て、提督!」
揺すって声をかけ、何度か寝ぼけ眼を瞬かせた後
大井は勢いよく飛び上がる。
「おはよう、大井っち」
北上はここしばらく見せてなかった穏やかな笑みでそれを迎える。
「北上さん……ここは、救護室。ですよね」
「うん。二人してぶっ倒れたみたいだね」
「……初めて嘘つかれちゃったね」
「そうですね。誓うと言ってくれたのに」
死と言う単語を無意識に避ける。
そしてそこまで言って、二人顔を見合して黙る。
言いたい事が沢山ある。言わないといけないことも沢山ある筈。
けれど言葉が口をでない。
「……二人とも起きたクマ?」
そこへやってきたのは球磨だった。
渋い顔をして、二人の妹の顔をためつすがめつした後。
「今後の話をするクマ。二人とも執務室へ」
―――
三つの足音が静まり返った廊下に響く。
「球磨姉」
前を歩く球磨に北上が小さく声をかける。
けれど返事はなく、険しい顔を少し北上に向けるだけだった。
(……そりゃそうか。ダメージ受けてるのは私等だけじゃないもんね)
その顔を見て、俯きながら二の句を次げず後ろを歩く。
けれど実際球磨がなにを考えているかといえば"ヤバイ〟の一言に尽きる。
(やべぇやべぇやべぇ。思わず語尾を忘れる位やべぇクマ
ドッキリと言った直後。具体的には提督が出てきて直ぐは喜ぶかも知れないけど
その後間違いなく沈められるクマ。曙・大淀・川内・多摩と球磨を含めて五隻沈むクマ。
やべぇクマやべぇクマ。洒落にならねぇクマ)
だらだらと額から冷や汗だか油汗だかわからないものを掻きながら
必死で考える。自然執務室に向かう足も牛歩になる。
後ろで俯いて黙って着いて来る二人の妹が数分後どうなるか考えるだけでも
顔が自然強張る。それが余計に二人に変な誤解を与えてる事も知らず。
(クマだって軽巡じゃ強い方という自負があるクマ。
二人より先に転生してこの鎮守府に来て、練度だって高い方クマ。
でもどう考えても先制雷撃で沈む未来しかみえねークマ)
黙々と歩く三人。球磨にとって、向かう執務室が死刑執行台の様な感覚だ。
ならば後ろを歩く二人は執行官かなにかか。
どっちにせよ一生軽蔑されながら生きる事になりそう
二人以外の艦娘からも当然
二人以外の艦娘からも当然
戦々恐々な心持で執務室につく。
「すぅー……はぁー……」
深呼吸する。まぁしょうがない、なるようになれ。
とばかりに思い切り景気よく扉を開いて中に入る。
「さぁ、二人も」
「ん……」
「はい」
中には既に待機している今回の仕掛け人が四人。
ちなみに一番のメインである提督はまだ居ないようだ。
「なにこのメンバー? 大淀は、まぁわかるけど」
ぐるりと部屋を見渡して北上が怪訝そうに呟く。
大井も口にはしないものの似たような感想を抱いた様で
目を細めて球磨を見つめる。
「じゃあ、一人ずつ」
球磨が音頭を取ると大淀から順にパネルを掲げる。
カタカナが一文字書かれたパネルと四人で一つずつ。
「……リキッド?」
「そう……ちげ、逆クマ。お前等出す順番逆クマ」
逆? と大井が首をかしげ、北上と二人改めて読み直す。
「……ど、っきり?」
「YES、クマ」
「ぜかまし」とか「すでのな」的に考えたら「りきっど」は逆ではないとも言える
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