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元スレ大井「少し離れてくださいな」 北上「え、なに?」
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―――
提督「……しっかし、うちは喧嘩っぱやいのが多くて困るな」
大井「一緒にしないで欲しいですね、私はほらそこの相手の時だけですから」
北上「言われてるよ球磨ねえ」
球磨「なんと」
多摩「いやいやいや、お前の事にゃ」
北上「え、うそん。そこの呼ばわりか~たはー」
大井「いえ、球磨姉さんです」
球磨「ばかなっ!?」
木曾「ただいまー」
提督「おう、お帰り……あれ、お前入渠してきたんじゃねぇの?」
多摩「なんか中破してるにゃ」
木曾「天龍に改2自慢して遊んでたら龍田にやられた」
北上「へぇ~あほじゃん」
球磨「当然の結果クマ」
提督「お前の姉さん達冷たいな」
木曾「いやまったくな」
大井「で、どうだったの? 感想は」
木曾「は? なんのだよ?」
多摩「ぼこられた感想にゃ」
木曾「手も足もでなかったわ。ぶったまげたわ、本当に人間か?」
提督「おう」
球磨「嘘発見機があったら針振り切れてるクマ」
北上「先端恐怖症のあたしには厳しいね」
多摩「それも嘘にゃ、多摩以外嘘つきばっかりにゃ」
大井「それも嘘でしょうに」
提督「なんの話だ?」
木曾「本当にドライだろ俺の姉連中」
球磨「だってわかりきってた結果クマ」
大井「もうハンデ無しで挑んだ段階で"あぁ、ぼこられたいのかな”って思ったわね」
木曾「ファック!」
>>40
【してみた】
提督「死んだふり?」
球磨「そうだクマ」
提督「なんでまたそんな悪質などっきりをせにゃならんのだ?」
多摩「日々他の艦娘の精神と資材。主に弾薬を削る二人の狼狽してテンパる様を見て
盛大に笑ってやろうという企画にゃ。溜飲をさげるにゃ」
球磨「やってくれるクマ?」
提督「いや、まぁ日頃お前らには迷惑をかけてる事は重々承知していたからな、仕方ない」
多摩「流石にゃ」
提督「後のフォローを思うと気が重いが」
球磨「では早速打ち合わせに入るクマ」
提督「そうだな、毎日顔を合わせてるんだ。死ぬにしてもそれなりの原因とかシチュエーションを詰めておかないと
あの二人にはすぐばれそうだ」
多摩「特に殺しても死なない病気とも縁遠い提督の事にゃ
振りのために数日かける事も視野に入れるにゃ」
提督「思っていたより大がかりだな……」
球磨「提督が言った通り、あの二人をだまくらかすにはかなり頑張る必要があるクマ。頑張るクマー!」
多摩「にゃー!」
【してみた】
提督「死んだふり?」
球磨「そうだクマ」
提督「なんでまたそんな悪質などっきりをせにゃならんのだ?」
多摩「日々他の艦娘の精神と資材。主に弾薬を削る二人の狼狽してテンパる様を見て
盛大に笑ってやろうという企画にゃ。溜飲をさげるにゃ」
球磨「やってくれるクマ?」
提督「いや、まぁ日頃お前らには迷惑をかけてる事は重々承知していたからな、仕方ない」
多摩「流石にゃ」
提督「後のフォローを思うと気が重いが」
球磨「では早速打ち合わせに入るクマ」
提督「そうだな、毎日顔を合わせてるんだ。死ぬにしてもそれなりの原因とかシチュエーションを詰めておかないと
あの二人にはすぐばれそうだ」
多摩「特に殺しても死なない病気とも縁遠い提督の事にゃ
振りのために数日かける事も視野に入れるにゃ」
提督「思っていたより大がかりだな……」
球磨「提督が言った通り、あの二人をだまくらかすにはかなり頑張る必要があるクマ。頑張るクマー!」
多摩「にゃー!」
―――
北上「健康診断?」
提督「あぁ、本部で各地の軍務関係者にな」
大井「なんでまた急に?」
提督「他所で最近新型のウィルスが確認されたんだ。完全な」
北上「完全な新型ってなにさ、不完全とかあるの?」
提督「昨今見つかってる新型ウィルスはなんらかの亜種、あるいは突然変異で元になるウィルスがある。
だからC型とかなんとか付随した名前を付けられたりする訳だが、此度見つかったそれは
そういった親戚が一切ないんだ。どのウィルスとも類似性がない」
大井「なるほど……けど、それがどうして提督が健康診断する理由に?」
提督「発生源があまりにも不明だからだ。上ではそれが深海棲艦の所為ではないかと言っていてな」
北上「バイオ兵器って奴?」
提督「可能性としては、生態がまるで未知の深海棲艦が体内に持っている物が人間にとって有害であるとか。
艦娘と違って生きたまま隅から隅まで検査なんてしたことないからな、
奴らが未知のウィルス、乃至最近を体内に保持してるかもしれない」
大井「だから接触の多い提督達って事ですか?」
北上「でも、ならなんであたしらは検査されないの……ってそりゃ兵器だからか」
提督「……ま、そういう事だな。というわけでしばらく留守にする。
明日の朝には帰ってくるからよろしく頼む」
大井「えぇ任せてください、私がしっかり回しておきますから」
北上「いやいや、大井っちは秘書艦の仕事してなよ。代理は責任をもって――
提督「有事の際の代理指揮官は大淀に頼んである」
大井「なんでですか!?」
提督「お前らがそうやって喧嘩するからだ」
北上「あー、そりゃごもっとも」
提督「じゃ、行ってくる」
大井「「いってらっしゃい」
北上「いってらー」
北上「……」
大井「……」
北上「ってか聞き損ねたけどさぁ」
大井「えぇ、その新型ウィルスってどんな症状がでるんでしょうか?」
北上「……わざわざ健康診断とか言って各地に緊急招集かけたんだよね、あの本部が」
大井「……万が一、なんてことないですよね?」
北上「いやぁ、流石にないっしょ? 提督のノリを見る感じ」
大井「実際そうだった場合に提督の表面上の雰囲気はあてにならないと思いますけど」
北上「……」
大井「……」
北上「あの提督にまさかなんてないよね?」
大井「そ、そうですよ! えぇ、そうですとも!」
―――
提督「よっこいしょっと」
球磨「いらっしゃいクマ」
提督「で、あんな感じで大丈夫だったのか?」
川内「うん、問題ないみたいだよ!」しゅたっ
提督「お、戻ってきたのか」
川内「あれ、気付いてた?」
提督「流石にな。ずっと執務室の屋根裏に居ただろ」
球磨「状況確認の為に雇ったクマ」
提督「大方そんなところだと思ったよ」
多摩「で、様子はどうだったにゃ?」
川内「うん。勝手に想像膨らまして焦ってたよ」
球磨「よしよし、いい調子クマ。続けて大淀に追い討ちをさせるクマ」
提督「改めて性質が悪いドッキリだな」
多摩「今更にゃ」
提督「というか一つ聞いていいか?」
球磨「なんだクマ?」
提督「木曾は仲間外れなのか?」
多摩「木曾にはこういう隠し事はできないにゃ」
球磨「顔にそっこーで出るクマ」
提督「そりゃそうか」
>>48
韻を踏みたかったんだろうけどここで予知はおかしい
前に挙がってるものと予知は別種のもの
読点を打つ場所だとか助詞の使い方とか所々おかしいし
小難しい言い回しはまともな文が書けるようになってから手を付けるべき
韻を踏みたかったんだろうけどここで予知はおかしい
前に挙がってるものと予知は別種のもの
読点を打つ場所だとか助詞の使い方とか所々おかしいし
小難しい言い回しはまともな文が書けるようになってから手を付けるべき
>>57
お、国語の先生ちっす
お、国語の先生ちっす
>>57
予想、予測は経験則によるもの。それに対して予知は超常的な意味合いを含む場合が多いので
違うと言いたいのかもしれない。
しかし予知とは、本来「予め知る」という文字通りの意味しか持たない。
それが超常的な力だろうが科学的なものだろうが、予め知っている結果であるなら予知という
表現は正しい。
予想、予測は経験則によるもの。それに対して予知は超常的な意味合いを含む場合が多いので
違うと言いたいのかもしれない。
しかし予知とは、本来「予め知る」という文字通りの意味しか持たない。
それが超常的な力だろうが科学的なものだろうが、予め知っている結果であるなら予知という
表現は正しい。
経験や情報など人間の能力上で働く予測や予想と違い予知ってのは超能力だの啓示だの機械のセンサーだの人非ざる力によって未来を知ることだからな
予測だの予想は予め測る予め想う、即ち未来を想像するって意味合いが強いけど予知ってのは予め知る、未来を知るって事だし若干ニュアンスは違うよな
未来の想像と未来を知るのじゃ前者は結構外れるけど後者は外れにくい上位互換って感じよね
予測だの予想は予め測る予め想う、即ち未来を想像するって意味合いが強いけど予知ってのは予め知る、未来を知るって事だし若干ニュアンスは違うよな
未来の想像と未来を知るのじゃ前者は結構外れるけど後者は外れにくい上位互換って感じよね
球磨「大淀から連絡きたクマ。今から執務室に向かって接触するらしいクマ」
川内「見に行ってくるね!」 すっ
多摩「頼んだにゃー」
提督「で、大淀にはなにをやらせるんだ? 言われた通りに代理に立てといたけど」
球磨「二人にそれとなく死に至る病だと伝えさせるクマ」
多摩「不安を煽る係にゃ、シラッと嘘つける大淀向きにゃ」
提督「ふぅん……しかし、あれだよな。普通に考えたら経口感染か空気感染か粘膜感染か、
経路もわからないウィルスを保持してるかもしれない人間を本土に呼ばないよな」
多摩「普通はこっちに人を寄越すだろうけどその辺はアバウトにゃ」
球磨「その辺に気付かないようにする為にも不安を煽るだけ煽って回転さげるクマ」
提督「お前等のそういう謎のアグレッシブさと行動力、もっと別のところに生かしてもらいたいが……」
―――
大淀「どうも、少しの間ですけど失礼します」
北上「あーどうもどうも」
大井「わざわざすみません。と、言ってもやることなんてないですし
重要書類に関しては提督の判断が必要なので」
大淀「主にデイリー任務達成の為の出撃指揮をと頼まれましたから」
北上「なるほどねぇ、それでどうする? とりあえず計12回の出撃全部戦艦六隻艦隊で行く?」
大淀「ものすごい怒られますよね、私」
大井「まぁいつも通り潜水艦隊にオリョール行ってきて貰って、ついでに入渠と補給任務も達成させる感じで」
大淀「ですね。では早速指令書を……」
北上「はいはい、えぇっとこっちに……はい」
大淀「はいどうも」
大井「……」
北上「……」
大淀「……提督、何事もないといいですね」
北上「え? あ、うん……」
大井「……」
大淀「……ブインの方は、亡くなったらしいですから」
大井「えっ!? そ、そんな、え!?」
北上「ちょ、それマジで?」
大淀「あら、提督から聞いてないんですか?」
北上「嘘、なんか普通にふらっと……」
大井「……提督」
――― その翌日
提督「戻ったぞ」
大淀「あっ、お帰りなさ――
大井「提督!」 どん
提督「ごっふっ……!? な、なんだ大井いきなり!?」
北上「心配してたんだよ。大丈夫だったの?」
提督「心配って、軽い健康診断程度だって」
大井「嘘吐かないでください。亡くなった方がでたんですよね?」
提督「……大淀、喋ったのか?」
大淀「……申し訳ありません。当然伝えてるものと」
北上「で、大丈夫だったの?」
提督「あぁ、大丈夫だ。問題ない」
大井「本当ですか?」
提督「……あぁ、大丈夫だって。二人に誓って」
北上「そっか……よかったぁ」
大井「もうっ、心配させないでください」
提督「ごめんって」
――― そ・れ・か・ら……
提督「んぐっ……」
大井「何飲んでるんですか?」
提督「うわ、いたのか」
大井「えぇ、ずっと。……で、なにを飲んでるんですか? 薬?」
提督「いや、これは……ほらサプリだ」
大井「サプリ? 珍しいですね提督がそんなのに頼るなんて」
提督「仕方ないだろ。お前等の所為だ」
大井「私達の?」
提督「亜鉛とエビオス錠」
大井「なっ……! なにを!」
提督「はっはっは……じゃあちょっと席外すな」
大井「もー! さっさとどっか行ってください!」
提督「ひでえ」
大井「……」
大井「…………」
――― なに食わぬ顔で一週間(ネタ振りしつつ)……
北上「うえぇっ!? どしたの、シャツ真っ赤じゃん!」
提督「トマトジュースアタックを曙に食らった」
北上「なんじゃそりゃ……」
提督「練度上げに単艦出撃繰り返して大破させまくってたらやられた」
北上「それは提督が悪い」
提督「まじか」
北上「単艦で出撃する緊張とか、たった一人で敵艦に向かう恐怖とか、
大破して一人帰還する不安とか提督は知るべきだよ。いくら妖精の加護で単艦だと沈まないと言っても」
提督「あぁ、少し焦りすぎていたかもな」
北上「最近低練度組の育成急いでるよね? ホントなににそんな焦ってるのさ?」
提督「まぁちょっと思うところがあってなぁ……」
北上「……」
提督「……」
北上「……ねぇ」
提督「ん?」
北上「……なんでもない。…………ったく! もうさっさとお風呂入ってきたら?」
提督「おう、そうするよ」
北上「なんなら背中流そうかぁ~?」
提督「遠慮しとく」
――― 球磨達の計画通りに過ぎていった……
北上「ねぇ曙」
曙「なによ」
北上「提督にトマトジュースアタックした?」
曙「はぁ? そんなことするわけないじゃない。昔じゃないんだし」
北上「……そっか、だよね。ごめんありがと」
曙「……」 ぐっ
川内「……」 ぐっ
大井「提督が最近こまめに取ってる薬なんだか知ってる?」
大淀「え、……っと。薬じゃないですよ? サプリです」
大井「あぁ、そういえばそんなこと言ってたかも。マルチビタミンとかなんとか」
大淀「そ、そうですそうです! いつも食事に気をつかってるんだし必要なさそうなんですけどね」
大井「……そうね」
――― そして
球磨「とうとう提督が死ぬ日が来たクマ」
提督「なんか嫌。その言い方」
多摩「二人の様子はどうにゃ?」
提督「最近片時も離れてくれないな。一人になりたいと言うとすげぇ顔する」
大淀「雰囲気の暗さが尋常じゃありませんね。色々と詳細を聞かれましたし」
川内「詳細? あぁ、症状のかな?」
大淀「はい。とりあえず吐き気頭痛から始まり身体の末端が痺れ吐血しだしたらもう……と」
曙「相変わらずシレッと嘘吐くわね」
球磨「おかげ様で食事の時間がすげぇクマ。北上と大井は暗いし」
多摩「多摩達は知ってるからいいけど木曾が必死に場をとりなそうとして笑えるにゃ」
提督「あ、そっか木曾なにも知らんのか」
曙「この間工廠の隅で天龍相手に泣きながらなんとかしなきゃなんとかしなきゃって呟いてたけど」
球磨「真実も知らずに笑えるクマ」
提督「ホントひでぇ姉だなお前ら」
多摩「愛あればこそにゃー」
球磨「で、ちゃんとやってくれたクマ?」
提督「あぁ、とりあえず大井には蒼龍・如月・金剛・羽黒・五十鈴を連れて出撃させた」
多摩「割とガチパにゃ。改2済み勢にゃ」
提督「防衛線押し上げの為と言ってある」
球磨「じゃあ北上は今一人で執務室クマ?」
多摩「まずは北上にゃ」
―――
膨大な量の書類。
70年前と変わらない、軍のあり方。
戦う事は勿論。しかし軍とは多くの人間が厳しい上下関係の中
多くの金・多くの資材を消費する大きな会社である。
当然管理職の人間は一日の大半を書類と向き合う事を仕事とする。
「ちょっと外すな」
むしろ人の在り様が、文化が、道具が、多彩になった分
70年前の大戦期よりもそれは顕著かもしれない。
机に積まれた書類の束は『北上』の中で彼等が扱っていたものよりも
多く、厚く、多岐に亘るように見えた。
「どしたの?」
そんな作業の最中。提督は不意に立ちあがりその場を去ろうとする。
行き先は言わず、ふらりと。以前にも折につけそういう事はあったが、
本土から帰ってきてからは富に多い。
理由は、なんとなしに察しはついているけれど。
「少し、な」
見えないなにかを摘むように人差し指と親指を突き出してそういう提督。
その表情は笑ってるようで、困ってるようで。
彼に再び命を与えられ、使命を与えられ。
艦娘としてこの地に降り立ち彼と出会ってから二年と半年。
幾度も見たその表情が、私はとても好きで。
……けれど今は少しだけ辛い。
パタンと浅く扉が閉まり、
時計の針が動く音だけが僅かに響く部屋の中。
俯いて、自分が拳を握り震えてる事に気がついた。
「……大丈夫だよね?」
問うた言葉は空虚に消える。
大丈夫、大丈夫。言い聞かせる。
提督は誓うと言ってくれた。
あの人がそう言って、嘘だったことがあっただろうか?
――ない。そうだ。だから信じていいんだ。大丈夫。大丈夫。
「失礼します」
床に敷かれた絨毯を眺めていると二回のノックの音と共に
そんな声が転がり込んでくる。
「……どうぞ」
答えた声は震えてなかっただろうか?
そんな自分は見せられない。表情も引き締めて、姿勢は凛と。
誰あろう私は秘書艦なんだ。最高練度の、大井っちと二人でこの鎮守府の顔なんだ。
情けないところを見せられるか。
「提督にご報告が……あら?」
果たして入室してきたのは大淀だった。
――いま、一番会いたくない顔だった。
「……提督ならいま居ないよ、私室じゃないかな」
大淀は、多分なにかを知ってる。
私も大井っちも知らない提督の秘密を共有してる。
それが凄く嫌だった。私は、ケッコンしてるのに。
「では、そちらを当たってみます」
素っ気無く、一礼して部屋をでていく大淀。
その態度が、また嫌に感に障る。
パタンと、扉の閉まる音。
「……嫌な子だな」
カチカチと、時計の針が心をざわつかせる。
「……とりあえず片付けよ」
提督が目を通し判を押した分だけでも、
そう思って立ち呆けて身体を動かし机に近づく。
『提督っ!?』
声が、さっきと同じ声が、聞こえた。
否、さっきと同じなんかじゃない。
それは悲痛な色を多分に含んだ叫び声。
『提督っ! 提督っ!』
廊下から、扉越しに聞こえる大淀の少しくぐもった大声。
幾度も幾度も提督を、呼ぶ声。
それは、私の中のざわつきを焦燥感を
鼓動と共に加速させていく。
「っ!」
気がつけば部屋を飛び出していた。
手に持った書類なんてぶち撒いて、扉を蹴破るように廊下に飛び出た。
息があっという間に上がっていく、苦しい苦しい。
見たくない近づきたくない知りたくない。けど、行かなくちゃいけない。
「―――!!」
名前を呼んで走った。
肩書きじゃない、彼自身の名前を。
全力で、全力でその場所に向かって走った。
髪が崩れる、服が乱れる。そんなの知ったことか。
もっと、もっと早く走れ。
「提督っ!」
扉が開きっぱなしになった提督の私室。
そこには――。
赤、朱、紅。
「あ……あぁ……」
予想してた。察してた。
漠然と、それでいて確信的に。
けれどどこか大丈夫だと、信じてた。
このまま信じ続けていたかった。
「提督っ!」
血塗れた、青白い顔の提督に駆け寄る。
抱き上げていた大淀から奪い取るように提督を抱きしめて名前を呼ぶ。
「北上、か」
「そうだよ! 目を開けてよ!」
力ない声色に、全身が粟立つ。
怖い。目の前の現実が信じられない。
なんで、どうして。わけがわからないまま単語だけがいくつも脳裏に過ぎる。
「全く情けない事だ。国土を、民草を、誇りを、守る為戦うとこの身に刻みこんだ筈が、
まさか丘で死ぬとは、自分にほとほと愛想が尽きる」
「やめてよ! 死ぬとか、そんな事言わないでよ!」
足元からやってくる冷たいものに。
必死で怒鳴って、駄々を捏ねて抗う。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
「どうしてっ!?」
「わかってるだろう? すまなかった、黙ってて。
最後のときまで、今まで通り過ごしたかった」
そう言って私の頬を、優しく撫でる。
ひやりとした感触が、私の涙腺を壊す。
泣いた。泣いて泣いて、泣きじゃくった。
提督はただただ頭を撫でてくれた。
「ごほっ……」
「提督!」
小さく咳き込む、新しい血が滴る。
「俺はもう、長くない。……大淀」
「はい。用意、……して……あります」
私の後ろに立っていた大淀が
提督の言葉に頷いて懐から注射を取り出し、提督に近づく。
「……なにそれ」
大淀は答えない。僅かに入っていた空気を押し出して、
淡々と準備をしている。提督も、ただ黙っている。
「なにそれって、聞いてるじゃん」
針を、提督の、腕に。
「答えろよっ!!!」
気がつけば大淀の腕を強く掴んで叫んでいた。
「擬似ワクチンだ。今の俺の身体はウィルスの温床だ。
感染経路もわからない以上パンデミックの危険性がある、
だからこれを打ってウィルスを殺すんだが。副作用として摂取した人間は死ぬ、
まぁ簡単に言えば安楽死の薬みたいなものだな」
提督もまた淡々と答える。
「ふざけないでよ。安楽死なんて、そんなの認めない。
まだ、まだ方法があるかも知れないじゃん! 諦めないでよ!」
「っつぅ……」
掴んだ手に力が入る。
みしみしと大淀の腕が音を立てて軋み始めた。
「北上」
それを止めたのは、やっぱり静かな提督の声だった。
「お前の気持ちは嬉しいが、事はそうはいかないんだ。
俺の最後の命令だ。頼む」
そう言った彼の表情は、
笑ってるようで、困ってるようで。
「……ずるいんだ。その顔されたら、もう、なにも言えないって、わかってて」
手を離す。紅く掴んだところが色付いていた。
「ごめん、大淀」
「いえ、気持ちは、わかりますから」
そこで初めて気付く。大淀の声もまた震えていた。
「……私が、やる」
ひったくるように注射を奪う。
大淀が言い出したのか、提督が言い出したのかはわからない。
私を慮ってのことだったんだろう。
けど、その役目はやっぱり私がやるべき事だと思うから。
「……愛してるよ」
みっともなくてもいい、恥知らずでいい。
情けなくても、汚くても、生きていて欲しかった。
もっと笑いあいたかった、もっと触れたかった。
もっと、もっと。
――でも、それが適わないなら。せめて。
「俺もだ、北上」
せめて。この手で終わらせよう。
大淀「北上さん泣きつかれて眠ってしまいましたよ提督」
提督「……そうか」
曙「大成功ね。名演技だったわ二人とも」
提督「よくそんな台詞が飛び出るなお前、俺は後悔以外なにもなかったぞ」
大淀「次は大井さんですね。そろそろ帰ってきますし着替えて準備しましょうか!」
提督「……あのさぁ」
川内「次は私の出番あるんだっけ?」
球磨「そうクマ。台詞はちゃんと覚えたクマ?」
川内「ばっちり!」
提督「お前等のバイタリティはすげぇな」
多摩「大丈夫にゃ、問題にゃい」
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