元スレ京太郎「わらう顔が見たいから」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
52 :
こうやってじわじわ雪解けさせてって
あの京ちゃん呼び咲さんまで漕ぎつける流れかな
最高だな
54 :
京太郎「~~♪」
放課後の廊下を本を片手に持って鼻歌交じりに歩く。
宮永の口から「ありがと」なんて聞けるとは、こんなに嬉しいことはない。
京太郎「っと、着いた着いた」
目的の場所である図書館に到着すると借りていた本を返却する。
これまでの人生でまともに本なんて読んで来なかった俺が何故学校の図書館を利用しているのかと言えば偏に宮永が読書家らしいからである。
最初は何か話のネタに出来れば良いな程度の考えだったが読んでみたら案外ハマってしまい、おかげでここ数日は寝不足気味だ。
55 = 1 :
今度はどの本を借りようかと本棚を眺めながら歩いていると偶然にも宮永を発見した。
宮永はつま先で立って手を伸ばしているが本棚の一番上の段に配置された本にギリギリ手が届かずぴょんぴょんと跳ねている。
あの教室での冷たい態度からは想像出来ない可愛らしい様子に思わず笑いが零れそうになるのを抑えた俺は静かに近づいて宮永が取ろうとしている本に手を伸ばした。
いやあこういう時背が高いってのは便利だ、本当に。
そして宮永は突如頭上に現れた手に驚いたのかびくんと肩を震わせてこちらを振り向く。
京太郎「これでいいか?」
俺の顔を見て驚いている宮永に本を差し出すと宮永は恐る恐る手を伸ばして本を受け取った。
宮永がしっかり本を持ったことを確認して手を離して、折角なので会話をしようと試みる。
ここは「そういう本読むんだな」とかが良いかな。よし、これでいこう。
56 = 1 :
そう思って口を開こうとした瞬間、宮永は俺に背を向けたかと思うと本棚の角を曲がって俺の視界から消えた。
京太郎「あっ……」
別に会おうと思えば教室でいくらでも会えるのだが逃げられたみたいでちょっとショックだ。
いやみたいというか明らかに逃げられたな、うん。
ヤバい、ちょっとどころじゃなくショックかもしれない。
本を探す気分でも無くなったので今日のところは帰ろうと思って図書館を出ることにする。
項垂れながら図書館の出口へと向かい扉の近くに来てようやく顔を上げると本の貸出手続きの最中の宮永と目が合った。
57 = 1 :
咲「……なんでついて来るんですか」
京太郎「宮永と話したいから」
咲「私は話したく有りません」
京太郎「えー」
咲「えーじゃなくてっ!」
図書館を出た後、俺と宮永はそんなやり取りを繰り返しながら一緒に歩いていた。
宮永は隣を歩く俺のことをチラチラと伺いながら「ついて来るな」とは言うものの逃げる気はないようだ。
先程から俺に向ける視線も言葉も拒絶というよりも俺のことを慮っているような節がある、気がする。
マジで嫌がられてるならストーカーだけどここまでの宮永の態度からしてそれはまあ無いだろう。
会話が止まった間にそんな事を考えていると下駄箱に辿り着いた。どうやら外に出るらしい。
宮永は相変わらず何も言わないまま靴を履き替えると校舎の外に出て行く。
ここまで来て引き返すという選択肢は俺にはないので俺も靴を履き替えて宮永の後を追った。
58 = 1 :
京太郎「へえ、いつもこんなトコで本読んでるのか」
咲「……」
宮永は校内にあるうちの一本の木の木陰に腰を下ろしてさっきの本を読み始めた。
少し戸惑ったが俺も隣に腰を下ろして話しかけてみるが返事はない。
京太郎「……ここ、結構良い場所だな」
そこは人通りも少なく静かで本を読むには良さそうだ。
春の陽気は気持ちが良いし時折吹き抜ける風は心地良い。
寝不足だった俺は少し微睡んでしまい、目を閉じていると宮永が話しかけてきた。
59 = 1 :
咲「……んで」
京太郎「ぅん?」
咲「なんで、私に構うの?」
京太郎「なんでって……」
目を開けると宮永は本から顔を出して俺のことをじっと見つめている。
宮永の目を見ればわかる。この問いかけは、本気だ。
宮永は俺に心を開こうとしてくれている。なら俺もしっかり答えなければならないだろう。
京太郎「俺は宮永と友達になりたいんだよ」
そうは思ってもこの場で告白する勇気は残念ながら俺には無く、そんな答えをしてしまった。
だが嘘を言っている訳じゃない、友達になりたいのは本心だ。
60 = 1 :
咲「……ともだち」
京太郎「ああ」
咲「他にも可愛い女の子なら沢山いるし、そもそも須賀君はもう友達沢山いるでしょ」
京太郎「そうかな?」
咲「そうだよ。だから別に私じゃなくたって」
京太郎「駄目だ」
咲「……だめ?」
京太郎「俺は宮永と友達になりたいんだ」
まっすぐに宮永の目を見る。
俺たちはしばらくの間黙ったまま互いの目を見つめ合った。
61 = 1 :
咲「……ヘンなの」
京太郎「変で悪かったな」
宮永は俺の顔から視線を外すと本を閉じて立ち上がる。
京太郎「帰るのか?」
咲「うん」
俺に背を向けたままそう答えて一歩踏み出すと俺の方を振り向いて言った。
咲「少しだけ……少しだけ考えさせて」
62 = 1 :
京太郎「それって……」
咲「じゃ、じゃあねっ」
ぽかんと口を開けている間に宮永の後ろ姿は小さくなっていく。
最後に言った「少しだけ考えさせて」って友達になるのをってことだよな……?
京太郎「……っし!」
残された俺は強く拳を握り締めてしばらくの間木にもたれかかって居た。
63 = 1 :
ここまで
64 :
乙ー
微デレきたな……きたのか?
65 :
3連ゾロ目でコンマ神もお祝いしてるやん
67 :
かわいいなあ
68 :
>他にも可愛い女の子ならたくさんいる
自分の可愛さに自覚があるんですねぇ
まぁ実際可愛いが
70 :
言われて読み返したらちょっと書き方が良くなかったので>>60の咲の台詞を一部訂正
他にも可愛い女の子なら沢山いるし→わざわざ私に拘らなくたって他に女の子なんていくらでも居るし
71 = 1 :
あの木陰で宮永と話してから一週間が経った。
京太郎「よう宮永」
咲「おはようございます」
宮永へのあいさつは続けているが、その前の一週間とは違い宮永もあいさつを返してくれる。
俺にだけではあるが冷たかった態度も幾分柔らかくなりあいさつ以外で話かけても応じてくれるようになった。
だが柔らかくなったと言っても前に比べればの話でやはりまだ宮永との間には距離感を感じる。
話している最中、宮永が俺のことを推し量るような目で見ていることから考えるに宮永はまだ「少し考えている」のだろう。本当に俺に心を許しても良いのか、を。
京太郎「なあ宮永」
咲「何ですか?」
そんな宮永にどう接するのが正解かなんて俺にはよくわからない。
だから俺は自分のやりたいことをすることにした。
72 = 1 :
京太郎「お前って休日は何してんの?」
咲「え?休日は……ええと、本を読んで家事をしてテレビを見るくらいかな」
京太郎「なるほどな」
だって自分を偽って仲良くなっても意味は無いと思うから。
ありのままの俺を知った上でどうするか決めて欲しい。
それで駄目ならその時はその時だ。
咲「それが何か?」
京太郎「つまり暇ってことだろ?」
咲「まあ、そうだけど」
京太郎「ならさ、今度の日曜一緒に遊びに行こうぜ」
73 = 1 :
咲「遊び?」
京太郎「おう」
怪訝そうな面持ちで聞き返してくる宮永。
さて、上手く誘えると良いが……。
咲「いかない」
京太郎「ですよねー」
っていやいや、あっさり断られすぎだろう。
どうにかして食い下がらないと。
74 = 1 :
京太郎「えっと……絶対にいかない?」
咲「いかない」
京太郎「いやあそこを何とか!」
咲「しつこいなぁ」
京太郎「う……」
不味い。このままだと断られた上に嫌われてしまう。
いったいどうすれば……っ。
咲「ちなみに」
京太郎「うん?」
咲「ちなみに遊びってどこに行くつもりだったの?」
75 = 1 :
ん?何でわざわざそんなことを聞いて来たんだ?
疑問に思ったものの遊びに行く話が続くのはありがたいのでひとまず答えることにする。
京太郎「近くのデパートとかどうかなって」
咲「デパート?」
京太郎「ああ、あそこなら色々遊ぶ場所があるからなー」
咲「へ、へぇ」
京太郎「それに近くにある数少ない本屋が入ってるってのもあるな。宮永におすすめの本とか教えてもらいたいし」
咲「!」
宮永の肩がピクリと動く。
顔を背けているせいで表情こそわからないもののいつもと比べて妙に落ち着きが無い。
ここまで来ればバカな俺にもわかる。
京太郎「お前、本当は行きたいんじゃないか?」
咲「なっ、行きたくなんかないもんっ!」
宮永は物凄い剣幕で否定するとハッと我に返り頬を赤らめた。
そして俯きがちになりながらこう続けた。
咲「で、でも須賀くんがどうしてもって言うなら、行っても良いよ……?」
76 = 1 :
今日はここまで
遅くなった上に少なくて申し訳ない
あとあんまり推敲とかしてないので変な部分とかあるかも
指摘されたり読み返して変だと思ったら今回みたいに訂正します
更新ペースを上げていきたいので次回は遅くても一週間以内……の予定
78 :
かわいい
誘拐したい
79 :
乙です
咲ちゃんがテンプレのツンデレさんになってきた
80 :
乙
中学生かわいい
81 :
読書家だから却って反応がテンプレ化しちゃうんだな
乙です
82 :
乙
咲かわいい(断言
84 :
やっぱり京咲ナンバーワン!
85 :
よく晴れた日曜日の朝。
俺は宮永と約束した待ち合わせ場所に呆然と立ち尽くしていた。
京太郎「あっ、あれー……?」
約束した、確かに約束したはずだ。
デパートの入り口で開店時間の午前10時に待ち合わせ、と。
別々の入り口で待っているなんてことが無いようにどの入り口で待つかも確認し合ったし時間も確実に午前の10時だと伝えた覚えがある。
俺の記憶違いかとも思ったがそれは無いだろう。
何故なら俺の頭の中は約束を取り付けたあの日からずっと今日のことで一杯で約束のことを忘れたことなど無かったのだから。
86 = 1 :
京太郎「……はぁ」
ちらりと時計に目をやって溜息をつく。
現在時刻は10時30分。約束の時間からは既に30分が経過している。
寝坊をしたのか約束を忘れてしまったのか、それとも……っとこれは考えないようにしよう、泣けてきた。
しかしどうしたものか、宮永の連絡先はわからないから連絡も取れない。
かと言ってここで帰れば宮永とすれ違いになる可能性があるし待っていたら待ち惚けで一日を棒に振ることになりかねない。
しばらく悩んだ末、俺は考えを決めた。
京太郎「待とう」
宮永が来てくれることを信じて。もし来なかったらその時はその時だ。
87 = 1 :
そう心を決めて待つこと数分。
「遅れてごめんなさいっ!!」
待ち続けた声が、聞こえた。
88 = 1 :
京太郎「……で、近所のデパートに来るのに道に迷って一時間以上かかったと?」
咲「う、うん……」
息を切らして走ってきた宮永が一息ついてからしてくれた説明によるとつまりはそういうことだった。
30分早く着くよう余裕を持って家を出たらしいが遅刻していては意味が無い。
いや待つ時間が30分で済んだと思えば意味はあったか。
京太郎「近所のデパートへの道で迷うか?」
咲「それは……このデパートはあんまり来ないからっ」
京太郎「え、来ないんだ」
咲「そうだよ、悪い?」
宮永の家がどこにあるかは知らないが同じ中学に通ってるならこの近くだろう。近所のデパートっていうのも否定しなかったし。
そしてこの近辺で遊べるような所はあまりない。
だからこの辺りに住んでいる中学生でここにあまり来ないと言うのは珍しい。
89 = 1 :
京太郎「いや、悪くはないけど何で?」
咲「あう、それはその……学校の人とかと会うの嫌だし……」
恥ずかしいのか俺から目を背けながらそう答える宮永。かわいい。
言われてみれば確かに宮永の言うとおりだ。
近所の中学生の遊び場ということは人と関わりたくない宮永にとっては近づきたくない場所だろう。
京太郎「あー、そっか……なら違う場所のが良かったかな」
咲「ううん、別に大丈夫。それより待たせて本当にごめんなさい」
京太郎「気にしてないから謝らなくて良いよ、それより早く中に入ろうぜ」
大分待たされはしたが宮永は来てくれたし会って早々にかわいい姿が見れたのでもう気にしていない。
そんなことより宮永と遊ぶことを楽しむ事のほうがよっぽど重要だ。
咲「……うん!」
俺が店内に向って歩き出すと少し嬉しそうに頷いた宮永が小走りで俺に駆け寄ってきて俺たちは二人並んで店内に足を踏み入れた。
90 = 1 :
咲「それで、どこに行くの?」
隣を歩いていた宮永が一歩前に出て小首を傾げながらこちらに顔を向けて問いかけてくる。
そんな仕草に緩みそうになる頬を抑えながら俺は宮永に一先ず今の行き先を教えた。
京太郎「そうだなあ、昼間でまだ時間はあるし先に本屋行くか」
咲「ん、わかったよ」
本屋に行くと聞いたからか宮永は少し嬉しそうに俺の隣に戻る。
しばらくして目的地の本屋に到着した。
91 = 1 :
京太郎「宮永は普段どんな本読むんだ?」
ずらりと並ぶ本棚を眺めながら宮永に尋ねる。
咲「うーん、私は海外ミステリーとか好きかなあ」
京太郎「海外ミステリーってあれか、コナンとかアガサとか」
見た目は子供頭脳は大人な探偵が主人公の漫画で少しだけ齧った知識で話を合わせる。
そんな俺の言葉に苦笑しながら宮永が訂正する。
咲「アーサー・コナン・ドイルとアガサ・クリスティね」
京太郎「そうそうそれそれ、その中で宮永のおすすめを教えてくれよ」
咲「えー、おすすめかぁ……っと」
話していると宮永が不意に立ち止まった。
どうやら海外ミステリーのコーナーに入ったらしい。
咲「最初に読むならこれとかこれかな」
京太郎「ほう」
92 = 1 :
それから俺は宮永におすすめの本を何冊か教えてもらい、本を見ながら宮永の話を聞いた。
どうやら本に関することになるとかなり饒舌になるらしく好きな本や面白かった本、つまらなかった本など色んなことを喋ってくれた。
その様子はすごく生き生きしていてとても楽しそうで聞いているこちらも楽しくなってくる。
咲「ふう、久しぶりにたくさん話したら疲れちゃった」
京太郎「ああ、もう昼飯にはいい時間だしそろそろ出るか」
咲「そうだね」
京太郎「じゃあ俺この本買ってくるからちょっと待っててくれ」
宮永にそう断ってから勧められた本を手にレジに向かう。
さっと並んで会計を済ませて戻ると宮永は一冊の本をじっと見つめていた。
どうやら最近出版された本らしい。
93 = 1 :
京太郎「それ、買うのか?」
咲「ううん、前から気になってたし欲しいんだけどね」
宮永は少し寂しそうな表情をしながら本から視線を外しこちらを向いた。
咲「ハードカバーは高いし、そのうち文庫化すると思うから」
京太郎「そっか」
返す言葉が見つからずそうポツリと呟くとそこで会話は途切れて俺たちの間に沈黙が流れ始めた。
何となく気不味い空気は耐えられない。そう感じた俺はわざと大きな声を出して言った。
京太郎「さて、飯食いに行こうぜ!お腹減ったろ?」
咲「あっ……そうだね、うん。ご飯食べよっか」
そうして俺と宮永はフードコートへと向った。
94 = 1 :
今日はここまでー
95 :
ツン成分が完全に行方不明になったな
乙です
96 :
すごくいい京咲だと思う
こういうのもっと増えてほしい
乙です
97 :
かわいい
100 :
咲たんイェイ~
今夜投下したかったんですが忙しくて全然書けてないので無理そうですごめんなさい
続きは今月中には投下するのでもう少しお待ちを
みんなの評価 : ★
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