元スレ大和「提督」提督「んあ」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
51 :
>>48
駆逐艦とばかりケッコンしてた提督が戦艦と空母とばかりケッコンしてる鎮守府に入ったら発狂しそう
53 :
沈んだ側か
54 :
最初認知症にでもなったかと
55 :
続きが気になって眠れなくなる
56 :
>>48が秀逸過ぎる
57 :
予想すんのやめロッテ
58 :
・執務室
提督「大和……! ここに居たか」
大和「提督、よく一人で起きられましたね……。誰も居なかったので焦っちゃいました」
提督「聞きたいことがある……」
大和「尋常ではない様子ですね…………加賀さんのことですか?」
提督「知っていたな?」
大和「ええ、もちろん。私は貴方の秘書官ですから」
提督「秘書官は……」
大和「……」
提督「秘書官は加賀だったはずだ。彼女は何処へ行った? 彼女だけでなく、ほかの者たちもだ」
59 = 1 :
大和「……」
提督「大和……答えてくれ」
大和「……」
提督「……」
大和「全部は思い出してないのですね」
提督「なに?」
大和「提督……貴方は自分に蓋をしました。だから私たちは貴方の心を守るために、あえて何も言いませんでした」
大和「ですが……」
大和「貴方が自分からその蓋を外そうというのなら……私たちは止めません。でも覚悟はしてください。貴方の為にも、そして私たちの為にも……」
提督「……話してくれ」
60 = 1 :
大和「提督。加賀さんは……いいえ、貴方の艦娘の殆どは……この鎮守府には居ません」
提督「……どういうことだ」
大和「最後に彼女たちに会った記憶は、何処で途切れてますか?」
提督「それが……わからないんだ。一番近い記憶さえ定かじゃない……」
大和「大きな戦いがあったことを……ご存知ですか?」
提督「戦いだと?」
大和「……はい。今から一年ぐらい前のことです」
提督「一年前……戦い……」
提督「そうだ……戦いがあった。大本営から発令された、我が艦隊主導の大規模侵攻作戦が……」
大和「ええ……」
提督「……ならば」
大和「……」
提督「……」
大和「……」
提督「私たちは……負けたのか?」
61 = 1 :
大和「いいえ、私たちの勝利です」
大和「深海棲艦は……壊滅的な被害を被りました。戦局は大きく傾き、深海棲艦は今体勢を立て直すことに必死です。それを叩き、このまま順当に進めば勝利は目前でしょう」
提督「つまり私は……」
提督「私たちは、相応の犠牲を払ったと……。そういうことか?」
大和「……あえて冷たい言い方をしますが、戦略的に見れば、私たちは最小の犠牲で最大の戦果を勝ち取りました。ですから、どうか自分を責めないでください。あなたは決して無能などではありません。あなたでなければ出来なかったことです」
提督「そうか……」
大和「失った命の何倍もの……いえ、何百倍もの命を救ったと、そう考えてください。必要な犠牲だったと……」
提督「……そうか」
大和「提督っ!」
提督「ああ……すまない……。腰が抜けてしまった……」
大和「提督……」
62 = 1 :
提督「なんてことだ……私はそんな大切なことを忘れていたのか……」
大和「思い出しましたか……?」
提督「……まだ理解が追い付いてない……。受け止めきれていないのかもしれない……」
大和「無理はしないでください。すみません、まだ話すのが早かったかもしれません……」
提督「大丈夫だ……少なくとも、もう忘れることはない」
大和「はい……」
提督「……皆がやけに私に親しかったのは……つまりそういうことなのだな?」
大和「はい」
提督「あの見知らぬ連中はなんだ?」
大和「本土から来た艦娘です。ここの戦力の補填として派遣されてきました」
提督「間宮が閉まっていると聞いたが……」
大和「人員が減りましたから……」
提督「そうか……おかしかったのはこの鎮守府ではなく、私だったか……」
63 = 1 :
大和「……立てますか、提督」
提督「すまないが、肩を貸してくれ……」
大和「自室まで送ります」
提督「そこまでしなくていい。ただ、椅子に座らせてくれれば」
大和「いいえ。ここでは落ち着かないでしょう。お布団できちんとお休みになってください」
提督「……すまない」
大和「提督」
提督「なんだ?」
大和「提督には私が……私たちがいます。それをどうか忘れないでください……」
提督「……ああ」
64 = 1 :
大和「提督」
提督「……」
大和「提督……」
提督「……おお」
大和「ぼーっとしてましたよ」
提督「うむ……だが寝てはいなかったようだ。仕事も……やはり終わっているな」
大和「お茶、淹れますね……はい、どうぞ」
提督「ほうじ茶だ……」
大和「はい」
65 = 1 :
提督「私は昔……よくほうじ茶を飲んでいた。だが、いつからか緑茶を飲むようになったのだ」
大和「加賀さんたちが……居なくなってからですか?」
提督「……そうかもしれん。お茶で加賀を思い出したのは、そういうことなのかもしれない」
大和「そうだったんですね……なら緑茶に、変えましょうか?」
提督「いや、いい。なぜだかお前にほうじ茶を淹れてもらえると、しっくりする」
大和「はい……」
提督「うむ……」
大和「……」
66 = 1 :
提督「思ったより大丈夫なのだ」
大和「?」
提督「加賀達のことだ。喪失感はあるが、不思議と悲しみが湧かない。……いや、すまない。私は酷いことを言ってる」
大和「いいえ、ただ感情が麻痺してるだけかもしれません。今は……それでいいと思います」
提督「実感が湧かなくてな……だが、いずれはすべてを受け止めて、悲しめるようになりたい。彼女たちの心を弔わねば……まあ化けて出てくれるなら、歓迎するが……」
大和「……お出かけですか?」
提督「ついてくるか?」
大和「いえ、今日は遠慮しておきます……すみません」
提督「謝るな。……なるほど。お前がずっと私に付いてまわってたのは、私のお守をするためだったか」
大和「私は貴方の随伴艦ですから。もし不安なら付いていきますが……どうします?」
提督「いいや。ありがとう。ずいぶんと拘束してしまったみたいだ」
大和「私は別に苦ではありませんでしたよ? 提督のお傍に居ることが、私の望みですから」
提督「はは。これ以上居ると、そのうち私のおしめまで変えるはめになるぞ。まったく、提督が聞いて呆れる。皆にも礼を言わねばな……」
67 :
この雰囲気だと本当にそれが真実なのかも疑ってしまうわ
68 = 1 :
暁「司令官。ごきげんよう、です」
提督「ごきげんよう、暁」
暁「大和さんから聞いたわよ。司令官がみんな思い出したって……」
提督「全部を思い出した訳ではないが……事実は受け止められた。本当に迷惑をかけたな、暁……」
暁「気にしてないわ。レディーには男性を包み込む包容力があるのよ! ふふんっ」
提督「響、雷、電のことは、すまなかった。第六駆逐隊を……お前を一人きりにしてしまった」
暁「もう済んだことよ。妹たちだって司令官に感謝してるはずなんだから」
提督「感謝は……されんだろう。私は彼女たちを……」
69 = 1 :
暁「司令官。暁たちは艦娘なのよ? 戦うことが本分だし、司令官がここに居るならあの娘たちも本望をまっとうできるわ」
提督「だが暁はさみしいだろう」
暁「ぜんっぜんさみしくないわ! へっちゃらよ。だってまた会えるんだから、それまでの我慢だもの」
提督「また会える……か」
暁「だから司令官、謝らないで。みんなにもそうするつもりなのかもしれないけど、こっちが困っちゃうんだからね!」
提督「……私が塞ぎ込んでる間に、暁たちはとうに踏ん切りがついていたか」
暁「そうよ。いま司令官にできることは、ここを立て直すこと。暁をいっぱい出撃させて、またこの鎮守府を賑やかにすることだからね!」
70 = 1 :
提督「……私はもう、お前を子供扱いできないな」
暁「なら、きちんと一人前のレディーとして扱ってよね。これからは暁が司令官をなでなでするんだから!」
提督「はは、まったく……本当に頭が上がらない」
暁「へへん。じゃあ司令官、しゃがんで?」
提督「……む」
暁「しゃがむの」
提督「……いや」
暁「早く!」
提督「……」
暁「よしよし……」
71 = 1 :
摩耶「おう、提督!」バシーン
提督「あだぁっ。いきなり背中を叩くな」
摩耶「うるせえ! 辛気臭せー背中してる奴が悪いんだろ! ……ってあれ?」
提督「……どうした」
摩耶「いや、もっとウザい顔してると思ったのに……」
提督「ほんの少し前まではそんな顔をしていたぞ」
摩耶「ちぇっ、なんだよそれ……。先越されたのかよ。せっかく摩耶様がじきじきに活を入れてやろうと思ったのに……」
提督「十分に活は入った。礼を言おう」
摩耶「ふんっ、つまんねーの」
72 = 1 :
提督「なあ、摩耶」
摩耶「なんだよ」
提督「沈んでしまった艦娘たちと……また巡り合うことはできるだろうか?」
摩耶「はぁ……? くっ……ふふ、あははははは! て、提督、何言ってんだよお前!? それ、最高の冗談だぜ!」
提督「笑うんじゃない。暁が言っていたのだ。また会えるから、さみしくないと……」
摩耶「そんなの会えるに決まってんじゃねーか! 変なこと聞くんじゃねーよ、まったく」
提督「即答だな」
73 :
まあ、会えてるよな
74 = 1 :
摩耶「なあ提督……あたしたちをなんだと思ってんだ? あたしたちの中にはむかーし海に沈んだ魂を持ってる奴だっているんだぜ。それがこうして出会ってんだから、また会えるに決まってんだろ。違うか?」
提督「……違わないな」
摩耶「ったく、真顔で馬鹿なこと言うなよな」
提督「いや……お前たちはそういう考え方をするのだな。長い付き合いだが、知らなかった」
摩耶「もしかして、あたし達が怖くなったか?」
提督「ああ、摩耶は叩いてくるからな」
摩耶「なんだと!」
75 = 1 :
提督(いろいろ話を聞いて回ったが……皆、また会えるからとそれほど気にしてないようだった)
提督(鈴谷に会えなかったのは残念だ……哨戒任務で数日出ているが、彼女にも謝らなければ。酷いことを言ってしまった……)
提督(それにしても、また会える、か……)
提督(確かに、海に沈んだ艦娘の魂はまた別の誰かに宿るのかもしれない。だが……果たしてそれは私の知る艦娘なのだろうか?)
提督「……」
提督「そういえば……あいつは私がよく波止場に行っていたと言ってたが……」
提督「ふむ……今日は風が出てないな」
76 = 1 :
・波止場
大和「……提督」
提督「おー大和か」
大和「もう……探しましたよ」
提督「お守はもう必要ないぞ」
大和「はい……ですが、何時間もお戻りにならないので心配になって……。皆さんに聞いたら、何処にも居ないときは大抵、波止場に居ると聞いたんですが……」
大和「ここで何をなさってるんです……?」
提督「海を見ている。別に飛び込んだりはしないぞ」
大和「は、はあ……」
提督「日課だったのだ。朝起きて……ここで朝日を拝むことが」
大和「今は夕日ですが……そんな日課、ありましたっけ?」
提督「……うむ。私はずっとここでこの海を眺めて続けてきた。さすがに暴風雨のときは諦めたが……」
77 = 1 :
大和「……」
提督「……」
大和「……待っているのですか? 沈んでしまった娘達を」
提督「いや……もうずっと昔の話だ。帰っては来ないのはわかってる。少なくとも、私はそう思っている」
大和「提督、そろそろ戻りましょう、お身体に障りますから……」
提督「私はもう少しここに居るよ。先に戻っててくれ」
大和「では、私も……」
提督「……」
大和「……」
78 = 1 :
提督「……慢心だったのだ」
大和「え……?」
提督「あの当時の私は大馬鹿者で……浮かれていた」
提督「軍備も整い始め、何もかもが順調に回っていたのだ。だがその慢心が艦娘の命を奪い、私は罪を背負うことになった……」
大和「……思い出したのですか?」
提督「……」
79 = 1 :
提督「彼女に報いるために、私は進んだ。いくつも失敗は重ねたが……同じ罪は犯さなかった」
提督「多くの快挙を成し遂げたよ……。階級も上がり、執務室にはたくさんの勲章が並んだ。世間では、私を英雄と持て囃す声さえあった……」
大和「……」
提督「だが……ここに立つたびに思い知る。確かに、彼女と一緒にあの馬鹿な若造は死んだ。だが代わりに残ったのは……こうして未練に縋り続ける馬鹿な男だ」
提督「英雄など何処にも……」
大和「……提督」
大和「もしかして貴方はずっとここで……」
80 = 1 :
提督「なんか、しめっぽい話をしてしまったな。墓場まで持っていくつもりだったのだが、どうやらそれさえも私は忘れていたらしい」
提督「まったく情けないことだ……」
大和「……提督」
提督「うおっ」
提督「お、おいっ、いきなり背中にくっつくな。海に突き落とされるかと思ったぞ!」
大和「提督……」
提督「……大和?」
大和「……」
提督「泣いているのか?」
81 = 1 :
大和「……」
提督「大和?」
大和「このまま一緒に海に落ちましょう」
提督「やめてくれ」
大和「冗談です……。提督、加賀さん達は必ず戻ってきます。だからそんな顔をしないでください。私が貴方を支えますから」
提督「加賀達……?」
提督「いや……そうだ。加賀達の話だったな。だが、お前も皆と同じことを言うのだな」
大和「なんの話ですか?」
提督「……戻ろう。やはりそろそろ寒くなってきた」
大和「こうすれば温かいですよ」
提督「おい大和……」
大和「ふふ。さあ、行きましょう」
83 = 1 :
提督「鈴谷」
鈴谷「お、提督。久しぶり。もしかして、お風呂上りの鈴谷を狙いに来たの?」
提督「ずいぶんと遅れてしまったが、こういうのは早いほうがいいと思ってな。哨戒の任務、ご苦労だった。大事なかったようだな」
鈴谷「あーでも鈴谷、いま生足だよ。それでもいいの?」
提督「構わん。この前のことだが……」
鈴谷「まって、ストップ! ここで立ち話もなんだし……部屋に来なよ」
提督「そこまで時間は取らせない」
鈴谷「いーから。鈴谷がここで話したくないの」
提督「うむ……わかった」
84 = 1 :
鈴谷「さあどーぞ」
提督「失礼する」
鈴谷「意外と片付いてるとか思ってるっしょ? まあ相方がそーいうのうるさかったからね」
提督「熊野か……」
鈴谷「あ、やっぱ思い出したんだ」
提督「大和からすべてを聞いて、私も受け入れた。まだ思い出せないことはあるが……じき思い出してくるだろう」
鈴谷「すべてって何処まで?」
提督「何処までも何もすべてだ。一年前に大規模侵攻作戦が決行されて、私の艦隊の殆どが沈んだことだ」
鈴谷「ふーん……」
85 = 1 :
提督「それで私が塞ぎ込んで……お前に酷いことを言ってしまった」
鈴谷「だよねー、誰だお前とか言われたしー、結構傷ついちゃったかなー。鈴谷ちょー繊細だし?」
提督「悪かった。この通りだ、許してくれ」
鈴谷「いいよ、許したげる」
提督「……ありがとう。こんな私を支えてくれて」
鈴谷「あ、やっぱいまのなし」
提督「なに」
鈴谷「提督、ここに座って」
提督「む……わかった」
鈴谷「とりゃー」
86 = 1 :
提督「……これはなんだ」
鈴谷「これで鈴谷の髪を拭きやすくなったっしょ。肩にかかったタオル使って存分に拭いてね。それでこの前逃げたぶんチャラにしてあげる」
提督「うむ……許してくれるなら……是非もない。やろう」
鈴谷「長いと大変なんだよね。じゃあよろしくー」
提督「……」フキフキ
鈴谷「……」
提督「……」ポンポン
鈴谷「……ていうか妙に上手いんですけど。どーゆうこと。なぜに?」
提督「たまに駆逐艦の娘たちにせがまれてやっていたのだ。子供だが、雑に扱うと手厳しく叱られてな。そのせいだろう」
鈴谷「あちゃーロリコンだったかー」
提督「違うわ」
87 = 1 :
鈴谷「じゃあさ。この状況……ちょっとは興奮してる?」
提督「正直に言えば……興奮というよりは、困惑のほうが大きい」
鈴谷「なんで?」
提督「私の中では……鈴谷は怒っている印象が強く残っている。それがこういう……好意的な態度を取られると困惑するのだ」
鈴谷「ああ、引っぱたいたこと? ごめん、あれ痛かったよね。本気でやったもん」
提督「いいさ。謝ることはない」
鈴谷「……ん? ってか、それなら鈴谷以外も大勢やったじゃん! なんで鈴谷だけ? 摩耶に至っては腹パンだよ!?」
提督「そ、そうだったのか……」
鈴谷「金剛さんはタックルだし、榛名さんはグーぱんだし、加賀さんはフルビンタで、ゴーヤちゃんが頭突きで天龍さんが恫喝しに行くわで……とにかくみんなやったでしょ? むしろ長門さんがひたすら泣いてたほうが印象に残ってるよ!」
提督「待て……なんの話だ?」
鈴谷「提督がみんなにフクロにされて、顔面たらこ唇おばけになった話だよ」
88 = 1 :
提督「なんだそれは……覚えてないぞ」
鈴谷「鈴谷の往復ビンタ覚えてんじゃん。あ……まあショックで記憶飛んじゃったのかもね……」
提督「何故金剛達が出てくる? お前が怒ってるのは私が皆を沈めたからではないのか?」
鈴谷「そのことは怒ってないってば。ここのみんなも同じこと言ってたでしょ?」
提督「ならさっき話はなんだ?」
鈴谷「あれは忘れて」
提督「忘れられるか! いや、忘れてるんだが……とにかく思い出したいのだ。どんなものであれ、皆との大事な思い出だ……」
鈴谷「大事な思い出……?」
提督「鈴谷?」
鈴谷「……」
89 = 1 :
提督「……鈴谷、何処に行く?」
鈴谷「……この……馬鹿提督っ」
提督「はばっ!?」
鈴谷「大事な思い出だって……? よくもそんなことがっ、言えるわね!」
提督「まて……落ち着け! マクラで殴るな!」
鈴谷「うるさいうるさい! このっ、このっ!」
提督「おわっ、何を……何を怒っているだ!?」
鈴谷「くっそー……忘れてたのに……思い出したらまた腹が立ってきたじゃん……」
提督「私は何をしたんだ?」
鈴谷「忘れろって言ってるでしょ!」
提督「もう忘れている。だから思い出したいのだ!」
鈴谷「思い出すな!」
提督「鈴谷」
90 = 1 :
鈴谷「いいから、思い出さないで。もう思い出したところで意味ないけど、それでも……。ここの皆だって同じ気持ちだよ。だから話さないんだからね!」
提督「だが私は……。いや……わかった」
鈴谷「ほんとに?」
提督「気にはなるが……」
鈴谷「くだらない話だよ。ほんとに……。提督がどうしようもなく大馬鹿やろーだって話」
提督「馬鹿なのは分かってる」
鈴谷「じゃあいいじゃん。まったく……疲れちゃったよ」
提督「……鈴谷?」
鈴谷「続き、してよ」
提督「……う、うむ」
91 = 1 :
鈴谷「……ごめんね、提督」
提督「怒ったり謝ったり、お前は忙しいやつだな」
鈴谷「女心は山の天気と同じって言うでしょ」
提督「山に登ったことはあるのか?」
鈴谷「ないけどさ……」
提督「今度皆で行こう。この戦いももうすぐ終わりを迎えるらしい。艦娘が登山するのも、なかなか面白い光景だと思うぞ」
鈴谷「どうかなー……山、登れるのかな……」
提督「できるとも。戦後の待遇については私が保証できる。軍とはすでに交渉済みだ。お前たちは何も気にしなくて良い」
鈴谷「……」
92 = 1 :
鈴谷「……提督がさ、ほんとは全部思い出したいっては分かってるよ。鈴谷、わがまま言ってる」
提督「これは暁の言葉だが……今は私に出来ることをしようと思う。結果は後でついてくるだろう」
鈴谷「提督の望みってなに?」
提督「なんだ藪から棒に」
鈴谷「いいから教えてよ」
提督「今はこの戦争の終結しか考えられないな」
鈴谷「提督はさー……ほんと提督だよね……。そういうみんなの幸せとかじゃなくて、鈴谷はもっと個人的なことを聞きたいな」
提督「個人的なこと?」
鈴谷「そうだよ。望みって言うより、野望とか欲望とか……もっと力強くて、自分勝手な気持ちが知りたい」
提督「うーむ……難しいな」
93 = 1 :
鈴谷「難しくないよ、もっと素直になるだけ。提督は人の事考え過ぎなんだよ。だからあーいう馬鹿の事平気ですんの。もっともっと自分本位に考えて」
提督「……自分本位か」
鈴谷「提督の中の……やましい気持ちや、見たくない気持ちにも目を向けてあげて。鈴谷がお手伝いしてあげる……」
提督「私の中の欲望……」
鈴谷「提督の欲望を鈴谷に教えて……」
提督「私は……特上寿司が食いたい。お腹いっぱいになるまで……。漁が難しい時代だ。再開するには、やはり戦争を終結しなければな……」
鈴谷「……」
提督「あだっ!? 足! 何故つねる!」
鈴谷「もーなんでそうなるのよっ! もっとあるでしょ、他にも! そんなお馬鹿な欲望じゃ困るの!」
提督「な、なんなのださっきから!」
94 = 1 :
鈴谷「鈴谷の事、大事でしょ!?」
提督「あ、ああもちろんだ」
鈴谷「他の娘も、みんな大事でしょ!?」
提督「う、うむ」
鈴谷「ずっと一緒に居て欲しいって思う?」
提督「……ずっとは無理だ。私にもお前にも立場や事情があるだろう」
鈴谷「提督、鈴谷は欲望の話をしてるの。立場とか建前とか……そーいうの抜きで言って。提督の本心が知りたいの……」
提督「そりゃ出来るなら……ずっとこうしていたいと思ってる。私はこの鎮守府の皆が好きだ。でも、だからこそその先も」
鈴谷「でも、は禁止だから」
提督「!」
95 = 1 :
鈴谷「……」
提督「……」
鈴谷「……ぷは」
提督「お、お前……」
鈴谷「今の気持ち、絶対に忘れないで。提督が本心から望むなら、きっと叶うんだから。鈴谷だけじゃない。みんなそれを望んでるから……」
提督「……」
鈴谷「ほ、ほら! 話はおしまい! さ、さっさと出ていく!」
提督「あ、ああ……」
96 :
えっと……つまりパンツ脱いでよろしい?
97 :
大和「提督」
提督「……」
大和「提督」
提督「……うむ」
大和「本日のお仕事は終わりましたか?」
提督「……最近は近海が少し慌ただしいらしいな。深海棲艦は大打撃を受けたはずだが、まだ戦力を温存していたのかもしれない」
大和「だとしても、よほどの隠し玉がなければ、この戦況を覆すのは難しいでしょう」
提督「我々とて深海棲艦のすべてを知ってる訳ではない。詰めを誤れば痛い目を見るのは身に沁みて分かっている」
大和「そうですね……」
98 = 1 :
提督「だが、この鎮守府の戦力は激減しているのが現状だ。補填はされたが、それでもかつてのようにはいかない。今は他の鎮守府が詰めを誤らないことを祈ろう」
大和「提督、先ほど新たな補填の連絡がありました」
提督「増員だと?」
大和「はい。貴方の働きが徐々に浸透しつつあります。皆期待しているようですね」
提督「期待か……」
大和「態度の悪い娘や、辛辣な言葉を浴びせる者も多いですが、提督なら従えられるでしょう」
提督「多くの艦娘を沈めたのは事実だ。中には縁のあった者もいるだろう。罵倒されるは仕方ない」
大和「自信を持ってください。確執はありますが、新しく来た娘で貴方の指揮下に入った娘たちは皆実力を認めてますから……」
提督「うむ……ありがとう」
99 = 1 :
大和「これから私は近海の哨戒任務に就きますが、まだご用はありますか?」
提督「大丈夫だ。しかし、わざわざお前が出る必要はないのだがな……」
大和「偶には私が出てもいいでしょう? これでも兵器ですから、動かないと錆びついちゃうかもしれませんよ?」
提督「そうだな……」
大和「では提督。大和型戦艦、一番艦、大和。行って参ります」
提督「!」
提督「……待て!」
大和「はい?」
提督「……」
100 = 1 :
大和「提督、どうかしましたか?」
提督「あ、今、何か……」
大和「……?」
提督「い、いや、なんでもない。気のせいだ」
大和「はあ……では、行ってきますね」
提督「……」
提督「……ダメだ、待て」
大和「あ、あの提督? 手を……」
提督「行くんじゃない」
大和「どうしたんですか? 様子がおかしいですよ?」
提督「私にも分からない。だが……いきなり不安になったのだ。お前がこのまま帰って来なくなるような気がして……」
大和「提督……」
みんなの評価 : ★
類似してるかもしれないスレッド
- 八幡「提督?」鈴谷「チーッス」 (113) - [49%] - 2016/3/28 13:15 ☆
- 堤督「提督と呼んでほしい」 (215) - [43%] - 2015/3/7 8:00 ☆
- 宗介「俺が提督だと?」 (132) - [42%] - 2014/10/21 14:00 ☆
- 八幡「初詣?」小町「うん!」 (525) - [41%] - 2016/3/17 23:30 ☆
- 伊19「提督がなんか冷たい」 (206) - [40%] - 2014/10/15 0:30 ☆
- 垣根「友達が欲しいんだが」 (1001) - [38%] - 2010/10/13 8:34 ★★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について