元スレ京太郎「俺が彼氏で」和「私が彼女」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
51 :
今のうちに甘いもの食べとくか、これから暫く糖分には困らなそうだし
52 :
これは和が立ち去った後に京太郎がボコられるフラグですね…
53 :
乙ー
続き期待しまくりです
54 :
>>50
支持する
55 :
あわあわ期待
56 :
短いですが、ちまちまと更新
この辺りから、グダグダとイチャイチャするだけになってきます
57 = 1 :
和が音楽室で取った大胆な行動の結果
俺と和の二人は職員室に呼び出されることになった
「恋愛大いに結構、しかし節度を持って交際するように」
なんて、意外にも先生達の物分りは良かった
というのも、和の両親を敵に回したくないからなんだろうけど……
和「失礼しました」
京太郎「失礼しました」
そして今、俺と和の二人は職員室を後にした
廊下で二人、横に並んでチラとお互いを見ると……なんだか、不思議と笑えてくる
京太郎「怒られちゃったな」
和「怒られちゃいましたね」
京太郎「和が人前であんなことするからだぞ」
和「須賀君が昨日あんなことするからです」
京太郎「でも、悪い気はしなかったろ?」
和「須賀君こそ、嫌でしたか?」
京太郎「……ぷっ、くくっ」
和「ふふっ」
わざわざ言葉はいらなかった
始まりはどうであれ、過程はともかく
俺と和はお互いを好きなんだと分かったんだ
京太郎「授業、今から戻るには微妙だな」
和「はい。二限目まではまだありますし……」
京太郎「じゃあ、どっかで時間を潰すか」
和「アリですね」
和の柔らかな手を取って、俺は足を進める
きゅっと、和の指がキツくしまったのは……俺の気のせいなんかじゃない
和「須賀君の手、大きくて暖かい」
京太郎「ハンドやってたからな」
和「関係あるんですか?」
京太郎「さぁ?」
和「もう!」
俺が彼氏で、和が彼女
この日から、俺達は付き合い始めたんだ
58 = 1 :
和と図書室で他愛の無い話をして、教室に戻ることにしたのは二限開始の数分前だった
握った手を離すのは名残惜しかったが、機会はいくらでもある
にこやかに俺に手を振る最愛の彼女を見送り、俺は教室の扉を開いた
京太郎「……あー、落ち着こうかみんな」
そこに待ち受けていたのは、血の涙を流しながら凶器を構える野郎の群れ
ですよねー
京太郎「みんなを裏切るつもりなんて無くて、その」
なんて言っていいものか分からず、頭をかくしか出来ない
学校のアイドルを独り占めしてしまったんだ
今からこの野郎どもにボコボコにされても文句は言えない
そう思っていたけど……
京太郎「え? あ、おい!」
凶器を持った男たちは全員、ガックリと肩を落として教室を出て行く
というか、一年から三年まで……こんなに沢山の生徒がよく入りきっていたな
京太郎「一体どうして……」
久「あら? 命拾いしたんだからもっと喜んだら?」
京太郎「竹井先輩!?」
人混みが散り散りになり、その中央から姿を現したのは見知った顔だった
久「もう、聞いたわよ? 音楽室で見せつけてくれたんだって?」
京太郎「さすが、耳が早いですね……」
久「当然でしょ。でも驚いたわ、あの和がね……」
手にしたボールペンをクルクルとイジりながら、竹井先輩が俺の全身を見つめる
京太郎「あの、もしかしてさっきの暴動を抑えてくれたのは」
久「ええ。一時は他校の生徒まで押し寄せかねない事態になったそうよ」
京太郎「さ、さすが和」
もはや県……いや、国のアイドルとなりつつあるのかもしれない
久「骨が折れたわ。ほんっと、いろんな意味で」
京太郎「お疲れ様です。おかげで本当に助かりました」
久「いいのよ。私はただ、みんなに和の幸せを考えて欲しいって訴えかけただけだし」
京太郎「それだけで、よくみんなが落ち着きましたね」
久「あははっ、それがね。面白いのよ」
コンコンと机にボールペンをぶつけて、竹井先輩が大きく笑う
59 = 1 :
久「実は和が授業に乱入した時から、数人の生徒が携帯で録画していたみたいでね」
京太郎「……え?」
久「今じゃそれが動画サイトに上げられてお祭り状態なんだって」
京太郎「え、えええええええええええええ!?」
おいおいおい! そんなのまずいんじゃないのか!?
俺と和のキスが全国、いや! 全世界に!?
久「あ、勿論動画を投稿した生徒は見つけて処分するわよ。でも、既に手遅れ気味なの」
京太郎「そりゃこのネット社会ですからね」
久「そう落ち込まないの。その動画の和の告白のお陰で……和のファンは身を引けたんだから」
京太郎「え?」
久「気付いてなかった? アナタに告白した時の和はきっと、今まで見たことが無いくらいに可愛かったわよ」
京太郎「……」
気付いていた
だけど、俺にとって和はいつだって最高に可愛い女の子なんだ
笑っている時、落ち込んでいる時、怒っている時
どんな顔だって和は……世界一の女だ
久「はいはい。のろけた顔は禁止」
京太郎「いでっ!?」
久「しばらくは刺されないように気を付けなさい。ま、ハンドで鍛えた須賀君なら大丈夫でしょうけど」
京太郎「そんな、いくら俺がハンドの王子様って呼ばれていたからって」
久「そんなオカルトありえないでしょ」
京太郎「まぁ、半分くらいは嘘ですけど」
久「半分、ね。あはは、それくらいかも」
目尻に涙を浮かべ、お腹を抑えて竹井先輩は笑う
久「ほんと……二人が幸せそうでよかったわ……ほん、とに」
京太郎「竹井先輩?」
久「あらやだ。もう、涙っぽくなってダメね私……ふふ」
竹井先輩の頬を伝う涙
いくら鈍いと言われる俺でも、これが祝福の涙でないことくらいは分かった
だけど、それを口にしてはいけない
京太郎「ありがとうございます、部長」
久「……幸せに、なりなさい」
ピシャリと、扉は閉められる
もう間もなく、帰ってきたクラスメイト達でこの教室は賑わうことだろう
根掘り葉掘り質問攻めにあうことは間違いない
せいぜい今のうちに、うまく流す方法でも考えておくことにしよう
60 = 1 :
案の定、というか予定調和の結果
俺はクラスメイトのほぼ全員から和とのことを質問される羽目になった
いつからそういう関係になりつつあったのか、とか
どこまで二人の関係は進んでいるのか、とか
どれもこれも俺と和にとってはまだまだ未知のステージであり
逆にまだこれがスタートなんだと認識させられるいいきっかけにもなった
京太郎「ふぅ……ようやく開放された」
二限目から四限目まで
休み時間はずっと拘束され、授業中は手紙が山のように回ってきた
隣に座る咲は終始苦笑いでその様子を見ており
時々、俯いては顔を伏せ……珍しく、授業中に居眠りをしていた
いびきも、寝息も聞こえない
すすり泣くような声は――聞こえないフリをした
京太郎「……咲?」
四限目が終了し、昼休みになった
俺はいつものように咲を昼飯に誘おうとしたが、咲は起きようとしない
京太郎「あぁ、寝てるのか。じゃあ、俺行くぞ」
咲「……」
返事の無い咲に別れを告げ、俺は教室を出た
心のどこかではこうなることは分かっていたんだ
でも、ごめんな咲
俺が好きなのは――やっぱり、和なんだ
61 = 1 :
昼飯は食堂で何か頼もうかと思ったが、今日の俺はとにかく人気者らしく
食堂に足を踏み入れた瞬間、一斉に視線が俺へと降り注いだ
これじゃあ飯を食べるどころじゃない
俺は購買でささくさとパンを購入すると、一目散にその場を逃げ出した
どこかいい場所は無いものかと、しきりに考えたがいい案は浮かばない
屋上も、中庭もダメだろう
となると、俺の安息の地は一つしかない
京太郎「やっぱ部室、だよな」
ここなら入れるのは麻雀部の部員だけだ
俺は誰にも見られないように確認しながら、素早く部室の中に足を踏み入れた
京太郎「よし、バレずに……!」
和「きゃっ!?」
京太郎「っと、和?」
扉を抜けた瞬間に胸に誰かが当たった
よく見るとそれは和で、俺と同じように手にパンを握っている
京太郎「……えーっと?」
抱きしめるような形で、俺は和を支えている状態だ
ムニムニと和の大きな胸の感触が非常に気持ちいい
和「す、すみません。あの、私……」
パッと俺の腕から離れる和
とても名残惜しいが、致し方ない
京太郎「いや、大丈夫。それより、和も……?」
和「はい。実は、あの告白が、動画に撮られていたらしくて……」
やっぱり俺と同じように居場所をなくしてここに逃げてきたようだ
特に女の質問責めは激しそうだからな
京太郎「あれ? 優希はどうしたんだ?」
和「……ゆーきは、その、寝ています」
京太郎「あー……ごめん」
和「いえ、須賀君が謝ることはありませんよ。抜けがけしたのは私ですから」
友の想い人を奪ったという罪悪感に苛まされているのか、和の顔は暗い
京太郎「それこそ和のせいじゃないさ。だって俺は、入部した時からずっと……和のこと、好きだったんだからさ」
和「え? ほ、本当ですか!?」
京太郎「ああ。世界一可愛い女の子だって、思った」
和「そ、そんなこと……ふふふっ、お世辞でも嬉しいです」
京太郎「お世辞じゃないんだけど、まぁいいか。とにかく、俺はだけを想い続けていたから」
和が責任を感じる必要なんてない
例え優希が先に告白してきても、俺はきっと断っていたと思うから
和「でも、私は須賀君のこといやらしい人だと思ってました」
京太郎「がーん」
和「だけど、今は違いますよ?」
ふわっと、甘い香りが鼻腔をくすぐる
見ると、和が両手で俺の頬を抑えていた
和「んー」
京太郎「!」
瞳を閉じて、つま先立ちで唇を突き出してくる和
なんだこれ? 可愛すぎて禿げ上がりそうなんですけど
62 :
和「んー……」
京太郎「可愛い」
和「んー! んー!」
京太郎「すっごく可愛い」
和「もう、早くキスしてください!」
京太郎「はい」
チュッと唇が重なる
柔らかい和の唇の感触はこれで三度目だが、何百何千とキスしても飽きる気がしない
和「んぅ……ふふっ」
キスに満足してくれたのか、和が俺の腰に手を回す
俺は眼下に見える和の頭をよしよしと撫でて、その美しい長髪を堪能した
和「……私、こんなに幸せでいいんでしょうか?」
ポツリと、俺の胸の中で和が呟いた
和「ゆーきや、咲さん……竹井先輩、もしかすると染谷部長も」
京太郎「和」
和「え? うむぅ……んちゅ」
俺を見上げようとした和に、容赦なく俺は口づけを浴びせる
京太郎「さっきも言っただろ。俺は、和だけだ」
和「……須賀君、好きです」
五回目のキスは和から
ついばむように、六、七、八、九、十
甘えん坊のひなのように、和は何度も何度も俺の唇に己の唇を重ねた
63 = 1 :
和「ふわぁ……いつまでも、こうしていたいです」
京太郎「あのな、まだ付き合ったばかりだぞ」
ブチ切れそうになる野生の本能を必死に押さえ付けて
俺は和の頭をポンと叩いた
和「あ、すみません。私ったら……」
京太郎「これから毎日だって会えるんだ。まずはほら、飯だ飯」
すっかり置き去りになったパンを手に取り、和に見せる
和はクスッと笑ってから頷いて、俺と並んで椅子に座った
京太郎「急いでいたからな。妙なパンしか買えなかったんだよ」
和「何パンですか?」
京太郎「虫パンだって」
和「うっ」
京太郎「大丈夫、虫の型で焼いただけで虫が入ってるわけじゃないから」
和「そ、そうですよね。でも想像したら……うぅ」
青ざめた顔で涙目の和がめっちゃ可愛い
頭を撫でて、そっと抱き寄せる
和「あっ……はぅ、これ……落ち着きます」
京太郎「じゃあ、次は和のパンを見せてくれるか?」
和「はい、私のはこのエトパンです」
京太郎「ペンギンか!」
和「可愛くて買ったんですけど、いざ食べるとなると」
確かに気が引けるよなぁ
でも、パンである以上は食べなきゃならんわけで
京太郎「じゃあ俺が食べさせてやるよ」
和「え?」
京太郎「自分じゃ踏ん切り付かないんだろ? ほら」
俺は和からエトパンを受け取り、封を破る
京太郎「はい、あーん」
和「そ、そんな。私は、子供じゃ!」
京太郎「あーん」
和「もう、怒りますよ?」
京太郎「あーん」
和「……あ、あーん……あむっ」
かぷっと、小さな口がエトパンの頭部に食らいつく
京太郎「無残にも脳漿をえぐられたエトパンは苦しみ悶え、怨嗟の篭った声で和ぁ、和ぁぁぁっと」
和「もう! 須賀君の馬鹿!」
京太郎「あはははっ、ごめんごめん。なら今度は、俺に食べさせてくれよ」
和「……しょうがないですね」
クスクスと笑う和
どうやら、満更もなかったようだ
和「あーん」
京太郎「あーん……はむっ」
和「美味しいですか?」
京太郎「超うまい」
64 = 1 :
それからは交互にパンを口元に運び合い
和は俺に、俺は和に
今まで食べてきたパンの中で――今日を越えるパンは確実に存在しないだろう
和「ご馳走様でした」
京太郎「ご馳走様」
パンを食べ終わり、一息を付く
これからは午後の授業がある
まだまだ気を抜くわけにはいかなかった
和「……もうすぐ時間なので」
京太郎「ああ。次は放課後に、部活だな」
後始末を終えて、俺と和は並び立って廊下に出る
階段を下りれば俺と和は別々の教室に行かなければならない
それがたまらなく、寂しい
和「ほんの数秒でも、離れていたくありません」
京太郎「それは俺も同じだよ」
和「……須賀君、その」
京太郎「?」
和「私も、同じですから」
京太郎「同じ?」
和の言った意味が分からず、聞き返す俺
それに対して、和は顔を赤らめて、俺の手を強く握ってこう返す
和「私も、須賀君だけです。ずっとずっと……いつまでも」
京太郎「……ああ。ずっと一緒にいような」
ぎゅうっと和を抱き寄せる
柔らかいハグは……予鈴が鳴り響く、そのギリギリまで続いた
65 = 1 :
今日は人いないのかな、なんにせよここまでです
昨日言ったほどイチャイチャしていないのは内緒の方向でお願いします
66 :
乙です
とても見てますけどね
途中でコメントを入れて良いのかどうか不明なのでしてない可能性
68 :
乙
投下中はコメント控えてる人も結構いるんじゃないかな
これでイチャイチャしてないのか(困惑)
69 :
乙なのよー
安価とか特に無いからROMってたのよー
70 :
おつ
スレによるけど投下中はROMってる
71 :
基本的に投下中はROMってるのが暗黙のマナーって感じがあるからな
このままあまあまで続けてください
72 :
あまあまあわあわ
73 :
乙
安価スレじゃないし投下中はROMるって人が多いと思う
74 :
今の時点でも甘すぎるんだがまだイチャイチャの段階に入ってないのか
75 :
乙
これでそれほどイチャイチャしてないなら本気でイチャイチャしたら麻雀部の面々憤死するんじゃなかろうか
76 :
これでまだまだなのか(困惑)
77 :
乙です
あま~くて最高でした
78 :
止めて!俺の中の糖分はもうゼロよ!(良いぞもっとやれぃ)
79 :
おつおつー
まだワシに砂糖吐かせるにはたりないぞ(バシャー)
80 :
もう既に砂糖吐くっていうレベルじゃねーぞ!
81 :
これ咲さん辛すぎやろw
長年想ってきた異性が親友と付き合い出して、イチャイチャ見せつけられるって
好意に気付いてたのなら、ちゃんと振ってあげろよな
しかし、これでそこまでイチャイチャしてないって、本気出したら麻雀部の面々は耐えられるんだろうか
82 :
>>81
まだ咲から告白されたわけでもないのに振るとかイミフじゃね?
それに咲の前でイチャついてねーじゃん
83 :
京太郎が自意識過剰なだけで本当に寝てただけかもしれないもんな
84 = 79 :
...すすり泣きしてんだぞ?
あ、和をとられたって考え方もできるのか
85 :
京和はなぜかエロくなりがちだけど、ほどほどに頑張ってほしい
86 :
ちまちま更新
エロに入れる日は遠そうですね
87 = 1 :
今や俺と和の関係は校内中の一ニュースになっているらしく
授業中、休み時間と人気者に変わり果てた俺と和
世界一の幸せ者になった事を思えば、ほんの些細なことではあるが
早いとこみんな飽きてくれることを願うばかりだ
京太郎「授業は終わりか。咲、部活に行くか?」
昼休みで心のケリを付けたのか、戻った時にはいつもの気丈な姿に戻っていた咲
泣き腫らしたであろう頬の赤みは心痛いものではあったけど
咲「うん! 京ちゃんと和ちゃんのお祝いをしなきゃね!」
なんて、屈託の無い笑みを見せられては何も言えない
そもそも、俺に何かを言う資格なんて無いんだから
京太郎「お祝いなんていいよ。普通に麻雀打てればさ」
咲「でも京ちゃん、ずっと和ちゃんのこと好きだったでしょ?」
京太郎「まぁな。念願叶ったってところではあるけど」
咲「だったらお祝いだよ! 部長がケーキ買ってくるけぇ、だって」
京太郎「染谷部長もかよ」
誰も彼も、そんなに俺の起こした奇跡を祝いたいのか
いや、違う
みんな本当に俺と和のことを祝ってくれてるんだ、きっと――心の奥底から
京太郎「分かった。お祝いでいいから、まずは部室に行くぞ」
咲「うんっ」
88 = 1 :
優希「遅いじぇ! 二人とも!」
部室に入るなり、仁王立ちをする優希に出迎えられた
こう言っちゃなんだが、咲の数倍は酷い泣き腫らした顔は心に深い爪痕を残しそうだ
咲「ゆ、優希ちゃん……」
優希「おぉー咲ちゃんも泣いてたのかー」
京太郎「こら。そういう言い方するんじゃねぇよ」
優希「別にいいんだじょ。私と咲ちゃんは失恋同盟を組むから」
咲「え、えええ!?」
京太郎「や・め・ろ」
優希「い・や・ん♪」
クネクネと陽気に踊る優希
全く、コイツも素直じゃないな
京太郎「それで、和と部長は?」
優希「一緒に買い物に行ってる。愛しの彼女に会えなくて寂しい?」
京太郎「だからそれやめろっての」
優希「あははっ、のどちゃんをゲットした世界一の幸せ者をからかうのは楽しいじぇー」
京太郎「こら待て!」
ふざけて走り回る優希を追いかける
いつもと同じように、これまでと変わらないやり取りで
ただ、変わってしまったのはお互いの関係
俺は和の彼氏で、優希はただの部活仲間
二人の関係が、今以上に進展することは――もう有り得ない
咲「優希ちゃんは……強いなぁ」
咲のつぶやきは、夕暮れの空に溶けるように
ただ静かに――ポツリと落とされたのだった
89 :
咲ちゃん・・・
90 = 1 :
まこ「これでええかのぅ?」
和「はい。とても美味しそうですね」
放課後、私は染谷部長と一緒にケーキ屋さんに買い物に来ています
というのも、部長やゆーき達が私と須賀君の交際を祝うパーティをしようと提案したからで
一応、断りを入れたんですが……二人が余りにも頑なに言うので
まこ「甘いのは平気じゃったか?」
和「大好きですよ。最近では食べ過ぎちゃうくらいで」
まこ「ならこれで決まりじゃ。すいません、これをください」
染谷先輩がケーキを注文して、店員さんと何やらお話をしています
私は手持ち無沙汰で、することがないので椅子に腰掛けショーウィンドウのケーキを見つめていました
ショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブラン、チーズケーキ、タルト
様々な種類のケーキは見ているだけでも、私の心を躍らせてくれますね
和「(そういえば、須賀君はどのケーキが好きなんでしょうか?)」
思い返すと須賀君はこれまで、私や皆さんの好きな種類のケーキを的確に把握して買ってきてくれていました
だけど、彼自身が自分の分まで買ってきたのを見たことがありません
甘いものが苦手? それとも、遠慮して?
和「(私ったら、そんなことも知らないんですね)」
須賀君はこれまで、私達の好みや趣味を調べて頑張ってくれていたのに
私は彼の趣味も、好みも、誕生日さえも知りません
和「(彼女、失格です)」
麻雀が出来たって、勉強が出来たって
私は彼のことを何一つ知らない
おそらく、咲さんの足元にさえ……
和「(で、でも! これから頑張ればいいんです!)」
須賀君の彼女は私なんです!
少しずつ、彼のことを教えてもらえば……
まこ「どうしたんじゃ和? 難しい顔をして」
和「ひゃっ!?」
まこ「おぉ、すまんのぅ。じゃが、見たところ京太郎のことじゃな?」
ニヤリと、染谷部長が私の顔を覗き込みます
うぅ、恥ずかしいところを見られてしまいました
まこ「心配はいらんけぇ。和と京太郎はお似合いじゃぞ」
和「染谷部長……」
まこ「ま、わしが決めることじゃないがのぅ。もちろん、周りもそうじゃ」
和「それは、えっと」
まこ「自分で胸を張れればええんじゃ。そうじゃろ?」
和「……はい!」
本当に、私はとても素晴らしい人達に囲まれています
91 = 1 :
和「ただいま戻りました」
まこ「待たせたのぅ」
京太郎「お帰りなさい、二人とも」
俺が優希との追いかけっこを終え、一息ついていたタイミングで和達は戻ってきた
手にはケーキが入った紙袋を下げていて、その顔は明るい
和「! 須賀君!」
パァッと花開いたように眩しい笑顔を見せる和
だけどみんなの手前、露骨にスキンシップを取るのはこらえたようだ
和「(うぅ、須賀君に抱きしめてほしいです)」
京太郎「(みんながいなけりゃ、抱きしめていたかもしれない)」
全身を駆け巡る衝動を抑え、俺はテーブルの上に紅茶の用意をする
カップの数は六つ
俺の予感じゃもうすぐ……
久「はいはーい! やってるー?」
ジャーンジャーン
引退した竹井先輩が姿を現した
まこ「部外者は帰って貰えるかのぅ?」
久「ま~こぉ~」
まこ「冗談じゃ。たくっ、情報が早い奴じゃな」
久「当たり前でしょ。ケーキ、ケーキ♪」
優希「切り分けるじぇー!」
咲「箱から出しますね」
京太郎「あぁ、頼む」
スルスルと箱から出てきたのはフルーツが沢山乗ったケーキだった
おぉ、すげぇ美味そう
和「須賀君はこれでよかったですか?」
京太郎「おう。俺、フルーツ好きだからさ」
和「フルーツが好きなんですね!?」
俺の返事を聞くなり、高速でメモを取り始める和
いや、可愛いんだけど必死過ぎやしないか?
92 = 1 :
なんだかんだでケーキを切り分け、俺達は食べ始める
てっきり、カップルの俺達にむちゃぶりが来るんじゃないかとヒヤヒヤしていたんだが
何事も無く始まってホッと一安心だ
久「んー、美味しい。須賀君さまさまね」
優希「おぉ、これは……」
まこ「人気ナンバーワン商品らしいのぅ」
咲「納得の味ですね」
和「はい。本当に美味しいです」
久「……ふふ、ケーキの味だけじゃないかもね」
京太郎「え?」
竹井先輩が何やら含みを込めた顔で言う
久「私達六人が揃うのも、久しぶりじゃない」
咲「あっ」
まこ「……たまにはいいこと言うのぅ」
久「ちょっとまこ! 部長になったからって、私を虐めないでよ!」
優希「こういうやりとりも懐かしいじょ」
京太郎「ああ。本当にな」
この六人で、俺達は全国大会へ挑んだんだ
そして――最高の結果を残すことができた
久「ほんと……私にとって、みんなは最高の宝物だわ」
潤んだ瞳で竹井先輩が俺たちを見る
祝勝会の時も同じように泣いていたってのに、全く
京太郎「もう大分経つんですから」
久「何よ、いいじゃない。それだけ嬉しいのよぉ」
まこ「やれやれじゃのぅ。これは和と京太郎のお祝い会なんじゃが」
咲「あははっ」
優希「全部ひっくるめちゃえば問題ないじょ!」
93 = 1 :
こうして、竹井先輩が泣き出して
それを俺達がからかって、昔話に花を咲かせて
いつしかケーキは無くなり、紅茶は飲み干し
気が付けばとっくに部活終了の時間になっていた
京太郎「よし、片付け終わりっと」
和「すみません、須賀君ばかりに」
京太郎「いいっていいって。用意は和と部長がやってくれたしな」
和「でも、須賀君を手伝いたかったので」
京太郎「……あんがとな」
和が照れた顔ではにかむ
あぁ、可愛い
もう抱きしめてキスしていたいよ、ずっと
まこ「……お邪魔じゃのぅ」
久「お邪魔ね」
咲「お邪魔ですね」
優希「お邪魔だじょ」
京太郎「あのー、何やってんですか?」
出口の影から揃って、こっちを覗き込んでいる四人
というかいつの間に外に出ていたんだ
久「じゃあ私達はお先に帰るわ!」
まこ「これから二次会があるからのぅ」
京太郎「え? それなら……」
久「馬鹿ね。察しなさいよ」
竹井先輩が訴えかけるように視線を下にずらす
あぁ、そういうことか……
京太郎「分かりました。すみません、何から何まで」
久「あら、なんのこと?」
とぼけた顔で竹井先輩は部長達を引き連れて扉を閉めた
きっとこれから、失恋を慰める会を開くんだろう
和「……須賀君」
京太郎「あぁ。鈍い俺でも、なんとなく分かるよ」
その慰める会は、二人の為のものなのか……
多分だけど、それは四人全員の為の――
和「ですよね。でも、私は気にしません」
京太郎「和……?」
和「須賀君がずっと私を好きでいてくれたという言葉を信じていますから」
京太郎「……そうだな」
和が気兼ねする必要なんて無い
横から掠め取ったわけでも、ましてや奪ったわけでもない
俺が和を追い続け、結ばれただけなんだから
94 = 1 :
和「……二人きり、ですね」
和がススッと、俺との距離を詰める
そして、俺の服の袖をくいくいっと引っ張って……俺を潤んだ瞳で見上げてきた
和「キス、してください」
京太郎「あぁ、いいよ」
十数度目のキスは、ケーキのせいか甘い味がした
ちゅっちゅっとしたバードキスは、次第に頬へとずれ……次第に和の首筋へと移動する
和「んぅ、いや、やぁ」
くすぐったいのか、身をよじらせて和が悶える
だけど、腕はしっかり俺の腰に回して離そうとしない
京太郎「嫌だったか?」
和「ふふ、いえ。つい」
ぺろっと舌を出して、和が笑う
俺は和の背中に手を回して、やさしく抱きしめた
和「……幸せ過ぎて、夢みたいです」
京太郎「そうか? 俺はもう死にそう」
この一日で地獄から天国へ昇天しちまったからな
これが夢オチだったら、間違いなく首をくくるところだ
和「死んだら嫌です」
京太郎「あぁ、俺も死にたくない」
和「これから、もっともっと……ずっとずっと、須賀君と一緒に」
京太郎「分かってる。俺も、和と一緒に」
昼休みからなんの進歩も無い会話を繰り返しながら
俺と和はお互いの体温を感じ合った
ドクンドクンと脈打つ心臓の音が、和の豊満な胸越しに伝わってくる
京太郎「(ていうか柔けぇ)」
和「……もぅ、スケベですね」
京太郎「あいててて」
俺のだらしなく伸びた鼻に反応したのか
和が俺の頬を摘む
和「でも、須賀君になら……いいですよ」
むぐにゅぅんという、規格外の音を立てて和の胸が俺の腕を挟む
なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!? これがおっぱいだっていうのかよ?!
神はなんてモノを生み出したんだ!?
和「……や、やっぱりまだ恥ずかしいです」
京太郎「無理しなくていいよ。俺達のペースでいこう」
俺に気を遣ってくれたであろう和の気持ちは嬉しいが
まだ付き合ったばかりだしな
京太郎「俺はこうして和を抱きしめているだけで、幸せだよ」
和「……嬉しい」
ちゅっと、和が再びキスを始める
ていうか、意外に和はキスがお好きなようだ
和「もう一度、いいですか?」
京太郎「いくらでも……んっ」
俺と和の甘いキスは、まだまだ終わりそうになかった
95 :
和とのキスが三十分も続き、いよいよ帰らなければということで
俺と和は部室を後にした
というか三十分もキスをしていたのに、ただの一度もフレンチキスにならなかったのは
まだまだ俺も和も、緊張に凝り固まっているからなのだろう
和「寒いですね」
コートを羽織った和が、ぶるっと震える
確かにもうすぐ冬になるからな
京太郎「俺のマフラー使うか?」
俺は自分の首に巻いていたマフラーをそっと和に巻いてやる
和は驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうな顔で
和「ふぁっ、須賀君の匂いがします」
なんて可愛いことを言いやがる
和「あ、でも須賀君が寒くないですか?」
京太郎「俺は平気だよ。和があたたくなればそれでいい」
和「そういうわけにも……あっ、そうです」
京太郎「?」
和「もし、よければ……私が、マフラーを」
京太郎「え? いいのか?」
和「はい。是非、作らせてください!」
彼女からの手編みのマフラーだって!?
そんなものを貰った日には死んだっていいぞ!
和「だから、それまでは……」
京太郎「あぁ、我慢するよ。とは言っても、本当にまだまだ寒くないんだけど」
冬の本番になったらちと厳しいが
これくらいの寒さはへっちゃらだ
和「急ぎます!」
京太郎「無理はしないでくれよ?」
和のおでこにキスをすると、和はぎゅぅぅぅと俺に抱きついてくる
あぁもぉぉぉぉかわぇぇぇぇぇ!
和「さぁ、帰りましょう」
京太郎「おう」
俺が右手、和が左手
お互いの手袋を片方ずつ外し、手をつなぐ
和「……やっぱり大きいです」
京太郎「ハンドやってたからな」
和「だから、関係あるんですか?」
京太郎「多分、無い」
和「もぉ……」
俺が彼氏で、和が彼女
その最初の一日は――こんな感じ
はてさて、これからはどんな生活が待っているのやら……
96 :
あますぎる!
97 = 1 :
おわり
淡々と一人で甘いレスを投下してると気が狂いそうになるという新発見
個人的には反応あった方が嬉しいんですがね……安価でもいれてみようかしら
99 :
乙なのよー
100 :
甘々と乙でした
安価は破壊力あるものくると路線固定しちゃうからなぁ
みんなの評価 : ★★
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