私的良スレ書庫
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元スレいろは「せーんぱいっ」八幡「」
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俺がそう言っても一色は頑なにどこうとしない。耳まで紅く染めながらも後ろに少しずつ体重を、かけてくる。
いやそういうのいいから、だからマジでどいてぇぇぇえええ!!
…………はぁ、こうなったら必殺技を使うしかねぇか。
八幡「………重いからどいてくれ」
いろは「ーーーおもっ?!?!」
一色は飛び跳ねる様に俺から離れベッドの端まで駆け込むと顔だけ出して布団にくるまる。
どうだ見たか。これぞ我が必殺技だ。
これならレオやリリも瞬殺できる。
八幡「悪かった冗談だ。本当は空気みたいに軽かったから安心しろ」
いろは「冗談でもその言葉は女の子に絶対に言ったらダメなやつですよっ!ていうか空気みたいに軽いのは先輩の存在ですからね」
八幡「ばっかお前、それは冗談でも本気でも俺には絶対に言ったらダメなやつですよ?」
いろは「………ぁあ、先輩のせいでまた熱が上がってきたみたいです…」
八幡「言わんこっちゃねぇ。そこに座ってねぇでとっとと横になれ」
いろは「はぁい……」
一色は不満顔をしながらも横になった。
俺もそれを見届けるとスックと立ち上がる。
俺が部屋から出ようと歩こうとすると一色は俺の顔をジッと見ながらベッドの空いたスペースをポンポンッと叩く。
………なんだ?
俺が考えていると再び同じように叩く一色。
ふむ、どうやら来いという意味らしい。
俺が側まで行くとまたその場所を叩く。
………?座れということか?
俺がそこに腰を下ろしたところで一色は喋り出す。
いろは「もうっ!なんべんやったら分かるんですかー?普通ポンポンッて叩いたらこっち来て座れって意味ですよ?」
八幡「いや知らねーよ。俺はぼっちだからそんなリア充同士のジェスチャーされても伝わんねぇよ」
つかそんなジェスチャー何べんもするよりも口で言った方が普通に速かろう。なんでリア充共はこんな無駄なことに時間を使うのが好きなんだろうか?
八幡「んでなんだよ?」
いろは「先輩こそどこ行く気ですか?まさか家の中漁って私のパンツとか探してます?」
八幡「なわけあるか。つかお前のパンツ探すならこの部屋探した方が速いだろ」
いろは「確かにそうですね。………はっ!ならお母さんの……?」
八幡「バカか、そんな趣味ねぇよ。お前が腹減った時の為におかゆ作ってやってんだよ」
俺がそう言うと ほぇ?とあざとく目をパチクリさせると今度は顔を真っ赤に染める。
いろは「ま、またそうやって好感度荒稼ぎする気ですか?!せこいですけど、でもダメですっ!先輩は約束破りですからねー」
八幡「いや守ってんだろ。ちゃんと看病してるじゃねぇか」
いろは「いいえ!破りましたっ!だって私が起きるまで側に居てくれなかったじゃないですかー」
八幡「いやそれは仕方ねぇだろ。お前の熱が上がってたっぽいから氷タオルを作ってだなーーー」
いろは「な、なんで私の熱が上がってることに気付いたんですか?まさか私の身体触ったんですか?寝ている女の子の身体を触るなんて最低ですホント無理ですやめて下さい」
八幡「いや、お前が言ったんだろ。ずっと手乗せとけって。これは冤罪だ。俺は何も悪くない。むしろ感謝されても良いくらいだ」
いろは「それはそのっーーーすいません。ありがとございます……」
一色の声はだんだん小さくなり何だかプシューッと音が聞こえそうなほど顔を紅潮させて鼻まで布団をかぶる。
やめろ、その反応やめろ。こっちまで恥ずかしくなるからホントやめろ。
ここは話題を変えねば恥ずかしくてヤバイ。
八幡「お、お前こそなんで布団から落ちてんだよ」
いろは「それはそのぉ………起きたら先輩いなくて…先輩がいなくなっちゃったと思って……探しに行こうと思いまして……っていうかなんというか………」
八幡「お、おう。そうか………」
いろは「はい…………」
何やってんだ俺はぁぁァァァアアアッッ!!!
一番ダメな方向へベクトル変換しちまったぜ。もうこりゃベクトルの原点に対しての対称移動だな。よく分からんがベクトルの一次変換を使ってだな…ちっくしょぉぉお!!数学の授業聞いてないからまるで分からん!!
素数ってなんだよ。1が入らないってどういうことだよっ!!1以外の約数がない数のこと!わかっちまったじゃねぇか。
じゃあ自然数ってなんですか?赤ちゃんが自然に数えれる数ぅ?なら0だって含まれるんじゃねぇのかよっ?!
ホント数学はクソだなっ!ただ極限ってのはカッコよかったな。なんだよリミットって。中二魂燃えるわ。
とりあえず数学への怒りで冷静さを取り戻したわ。
ホント理系の奴ら怖いわ。
なんだよ今日の気温は340m/sか、って。℃で喋れよっ!!
ふぅ、落ち着くにはこれが一番だな。
いろは「先輩?おーい、せんぱーい。せーんぱーいっ」
何やら言っているが気にしない。俺の怒りはこんなもんじゃねぇんだぜぇ?
………こんなことでも考えてなくちゃ顔から火出そう。なんだよこの可愛い生き物っ!
八幡「お、俺そろそろおかひゅっ、おかゆの様子みてくるわ、卵産んでたらアレだし」
いろは「え?あ、はい。…ん?卵?産む?」
めっちゃ動揺してるな俺。
頭の中真っ白だ。存在も真っ白なのに。
あれ?僕どこにいるのん?
とりあえずベッドから立ち上がると一色に袖をくいっと掴まれる。
八幡「な、なんだ?」
いろは「あ、あのですね先輩。そのぉ………お、おトイレ、連れてって下さい……」
いや一人で行けよ、と言いかけたがやめた。こいつフラフラだっしゃねーか。
俺が恥ずかしさを捨てれば良いだけだ。
あれ?どうやって連れてくんだ?
八幡「お、おおう分かった。じゃあ肩かしてやるか歩けるか?」
いろは「なんでそんな熱い男の青春みたいなことしなきゃいけないんですかっ。………おんぶ……」
八幡「は?」
いろは「だ、だからっ!おんぶ、して、下さいよ……」
何だと?!
くっ!何が起こった俺の青春時代っ!
八幡「………了解した」
八幡「…ほれ、手ぇかけろよ」
いろは「は、はい」
再びベッドに腰掛けて体勢をやや低くすると一色の腕が肩から首へと優しくかけられる。それから一色はゆっくりと身体を起こすと膝立ちで俺に密着する。
くそっ、なんでお互い服越しなのにこんな柔らかくて温かいんだよっ!
八幡「…んじゃ、ちゃんと掴まってろよ」
いろは「はい…」
そのまま前に出てから一色の腿裏に手を回す。
柔らけぇっ!!
そのまま部屋を出てトイレへと向かった。一定したリズムで一色の鼻息が首にかかる。その度に全身をゾワゾワ〜っと電流が走った。今ならジブリの中に溶け込めるかも。
トイレの扉を開けてから振り返り、一色を降ろす。
いろは「あの、先輩」
八幡「ん?」
いろは「なるべく離れて下さいね。呼ぶまで近付いたらダメですよ?」
八幡「分かってるよ」
いろは「良かった、先輩にそういう趣味があったらどうしようかと思ってましたー」
八幡「アホ、んじゃまた後で呼んでくれ」
いろは「はいっ」
もちろん、興味がないというわけでは断じてないっ!
だが俺は俺としての尊厳を守るため、後ろ手でトイレのドアを閉めるとそこを後にした。
ーーーー5、6分後。
一色からお呼びがかかり、トイレまで迎えに行くと、同じように一色をおんぶして部屋まで連れていき、ベッドの上に寝かせる。
八幡「おかゆ、できたが食えそうか?」
いろは「少しだけ」
八幡「そうか」
キッチンに向かい、おかゆを少しだけお椀に盛る。それとお茶を入れて部屋まで持っていく。
俺がそれらを手渡すとむすっとした顔で俺を睨んでくる。
八幡「………なんだよ」
いろは「普通こうゆう時はあーんするんですけどねー。先輩はしてくれないのかなーと思いましてー」
八幡「別に手くらい動かせるだろ。とっと食って熱計ったら寝ろ」
いろは「ホント先輩は冷たいですねー。こんな可愛い女の子にあーんできるチャンスですよー?先輩の人生でもう二度と来ないかもですよ?」
八幡「余計なお世話だ。だいたいそんな事に夢なんて持ってねぇよ。俺は将来俺を養ってくれる人と一緒になれればそれで良いからな、そこに愛だの何だのなんて感情はあってもなくてもどっちでも良いんだよ」
言い終えて一色の顔を見てからしまったと思った。
>>259
ゲーデル?ゲーテル?の不完全性定理論ですか?
実は僕は理系なので高校の数学で先生の余談で聞いたんですが正直よく分かりませんでした。
僕には単なる言葉遊びにしか聞こえなかったのですが、それで議論を交わす世の天才たちはホントすごいですよね
ゲーデル?ゲーテル?の不完全性定理論ですか?
実は僕は理系なので高校の数学で先生の余談で聞いたんですが正直よく分かりませんでした。
僕には単なる言葉遊びにしか聞こえなかったのですが、それで議論を交わす世の天才たちはホントすごいですよね
>>259
とぅまり数学は不完全なことが数学的に証明されているけど数学は不完全だしこの証明も不完全って事?
とぅまり数学は不完全なことが数学的に証明されているけど数学は不完全だしこの証明も不完全って事?
無矛盾だということを証明することができない
ということが証明されているだけだぞ
不完全だと証明されているわけではない
ということが証明されているだけだぞ
不完全だと証明されているわけではない
これは自己言及のパラドックスに似ている。
たとえば、「クレタ人は嘘つきである」とクレタ人が言った。
この前提は一見普通の文章に見えるが、これを
1.クレタ人は本当に嘘つきである
2.クレタ人は実は正直者である
という二つの考え方にわけるとおかしなことになる。
1の場合、嘘つきなのだから「嘘つきである」という主張も嘘となり、実は正直者となりおかしい。
2の場合、正直者なのだから「嘘つき」という主張は真実のはずだが、すると嘘つきなはずなのに真実を言ったことになり、これまたおかしい。
「ボクは正直者だ」などと言った場合にも同じことがいえる。
不完全性定理が言いたいのは、「一見無矛盾なあらゆる学問体系にも、肯定も否定もできない、証明不可能な命題が存在すること」、そして「あらゆる学問が証明不可能な命題を含んでいるため、自らの理論体系が完璧に正しいと証明することはそもそも不可能」である。
つまり「数学は完璧だ!」と崇拝する数学者は、己が数学理論の不完全性も肯定しなければならない。
人間が理性を持って作り出した理論体系が真理に到達することは、決してない。
たとえば、「クレタ人は嘘つきである」とクレタ人が言った。
この前提は一見普通の文章に見えるが、これを
1.クレタ人は本当に嘘つきである
2.クレタ人は実は正直者である
という二つの考え方にわけるとおかしなことになる。
1の場合、嘘つきなのだから「嘘つきである」という主張も嘘となり、実は正直者となりおかしい。
2の場合、正直者なのだから「嘘つき」という主張は真実のはずだが、すると嘘つきなはずなのに真実を言ったことになり、これまたおかしい。
「ボクは正直者だ」などと言った場合にも同じことがいえる。
不完全性定理が言いたいのは、「一見無矛盾なあらゆる学問体系にも、肯定も否定もできない、証明不可能な命題が存在すること」、そして「あらゆる学問が証明不可能な命題を含んでいるため、自らの理論体系が完璧に正しいと証明することはそもそも不可能」である。
つまり「数学は完璧だ!」と崇拝する数学者は、己が数学理論の不完全性も肯定しなければならない。
人間が理性を持って作り出した理論体系が真理に到達することは、決してない。
一色は俯き手に持っていたお椀を膝の上に降ろす。
いろは「…それって……遠回しに、フってますか…?」
八幡「い、いやそうゆうわk」
いろは「あはっ、すいません先輩。先輩がお見舞いに来てくれて一人浮かれてました。迷惑でしたよねー、ごめんなさい。もう帰って頂いても結構です…」
八幡「一色……」
普段通りの会話を普段通りにしているから俺たちの関係を頭の隅に追いやれていたが…
俺たちは告白された者、した者の関係なんだ。特に俺の返事待ちをしているコイツは何気ないフリをしているが心の中は色んな想いが渦を巻いているのだろう。
俺はなるべく優しい声で一色に話しかける。
八幡「一色。さっきはすまん。悪気があったわけじゃない。ただ実際に本気でそう思ってたんだ。今だってそう思ってるかもしれない」
一色は俯いたままだが俺は話を続ける。
八幡「でもお前とのことはちゃんと考えてる。考えたいと思ってる。だからきっきのはフったわけじゃない。本当にすまない」
いろは「………。本当に悪いと思ってますか?」
八幡「あぁ」
いろは「なら1つだけ私のお願い聞いてくれますか?」
八幡「あぁ、できる範囲でな」
いろは「なら今日ちゃんと看病して下さいね」
八幡「あぁ分かった」
いろは「じゃあ一回だけあーんして下さい」
八幡「……あぁ了解した」
いろは「今日泊まってって下さいね」
八幡「あぁ、分かっt………は?!」
八幡「いや、お願いは一つだろ?」
いろは「はい、一つですよ?先輩大丈夫ですかー?」
さっきまでとは変わり、えらく華やかに笑みを浮かべてらっしゃる一色さん。
いろは「だってー、看病するのは元々の約束じゃないですかー?だからー、泊まってって下さいっていうのがお願いですよっ」
八幡「そんなバカな…。だがあーんはどうした?アレもお願いだろう?」
いろは「何言ってるんですか先輩?あーんも看病の内の一つだって教えてあげたじゃないですかー?」
なん…だと……。
俺が絶句している間に一色は俺の手にお椀とスプーンを渡してくる。
いろは「はい、あーん……」
目を閉じて口を開ける一色。
ヤバい、これはヤバいっ!心臓の音がヤバい!!
静まれっ!静まりたまえぇっ!!
名のある俺の息子とみるが、なぜ一色を襲ってやろうと思うのかっ?!
八幡「じゃ、じゃあいくぞ」
スプーンにおかゆを少量のせ、一色の口まで運ぶ。
口の中まで入ってきたと感じると一色はパクッと口を閉じる。
そしてスプーンを少し上に傾けるとスッと口外へと運ぶ。そのスプーンに付いてくるように動く一色の唇が妙に艶めかしい。
その一連の行為がスプーンという媒体を通してなのになんだか自分の身体全体にぶわ〜っと鳥肌がたつ。
いろは「もう、一口だけ…」
八幡「お、おう…」
再び一連の動作をする。
また終わると一色はもう一度、もう一度、と囁くように呟く。
俺もなぜかそれに従ってしまう。
気がつくとおかゆは全てなくなっていた。
いろは「んふふー、先輩、美味しかったですよっ」
八幡「そ、そうか。それはなによりで…」
たかだかおかゆを食わせるのに俺の体力はかなり消耗されたのだった……
八幡「とりあえず熱測るか。体温計どこにある?」
いろは「確かリビングのーーー」
一色に指示した通りの場所で体温計を見つけ、一色に手渡す。
いろは「もうっ、普通体温測る時はおでことおでこをコツンさせるもんですよー?」
八幡「アホか。そんなよくアニメや漫画である様なことしたって実際は測れねぇだろ。こうして数値で出せるモンがあるんだから一々そんなことしなくて良いと毎回アニメとか観てて思うわ」
ぶーぶー文句を言いつつも一色は自分の服の中へ体温計を入れて脇ではさむ。
そういやアニメとかで体温計を口に咥えさせたり尻穴に突っ込んだりする事があるが本当はそうするものなのだろうか?
そんな事をせずとも脇で良いではないか。体温計を口に咥えてるのも顎疲れそうだし、尻穴に入れるなんてされる側はもうお嫁にいけないだろう。
昔はあぁしてたのか?
それとも制作側の趣味なのか…?
そんなどうでもいい事を考えてる内にPiPiPiと体温計が合図を出す。
いろは「あちゃー。38.2℃ですねぇ。昨日よりも上がっちゃいましたー。先輩のせいですねー」
八幡「うっせ。ほれ、もう寝てろ」
そう言って一色から体温計を預かろうとするが一色は何やら逡巡している。
俺が視線でそれを促すと一色は目を背け少し頬を染めた。
いろは「先輩、なんかやらしい事考えてませんか?」
八幡「は?何が?」
いろは「………だってこれ、さっきまで私の脇に挟まってたから…」
それを聞いて一気に耳まで熱くなった。
た、確かにそうだ。それはさっきまで一色が脇に挟んでいた物。JKの生脇にギュッと挟まれていた物。
誰だよ脇で良いじゃねぇかとか言った奴?
家族間なら何とも思わんがそれ以外ならこの破壊力も相当なモンだぞっ?!
一色に体温計の入れ物をポイと渡す。
いろは「あ、やっぱやらしい事考えてたんですねー」
八幡「バカ野郎、お前が変な事言うから意識してなかったこと意識しちまったんだよ。本当に何も思ってなかったからな」
いろは「あはっ、照れてる照れてるー。先輩も可愛いトコありますね〜」
うぜー。
……まぁこの調子なら早く治りそうだな。
それから一色は入れ物に入れた体温計を俺に手渡した。
なんだか入れ物越しでも生温かい気がしてしまう。
くっ、何も考えるな比企谷八幡っ!!考えるな感じるんだ。……今は感じたらダメだな。
一色の食べた食器を台所で洗い、再び一色の部屋へと戻った。
いろは「それで先輩、お返事は?」
八幡「ん?何の?」
いろは「今日泊まっていくかどうかです」
八幡「あぁ、そういやそんな事言ってたな。それ強制じゃないのか?」
いろは「いえ強制ですよ」
八幡「だが断る」
いろは「自分にできる範囲ならお願い聞いてくれるんじゃなかったんですかー?」
八幡「くっ……」
いろは「まぁ確かにこれはお願いなのでそんな強制力はないですが、でも先輩には私への責任がありますからねー。こっちには強制力有ると思うんですよねー」
八幡「お前ってホント良い性格してんな。………分かったよ、泊まって看病すりゃ良いんだろ?」
一色は目をキラリと輝かせると はいっ!と満面の笑みを浮かべる。
くっそ、俺は知ってんだよ、その顔が素だってことを……。
そんな俺を差し置いて一色は でも、と続ける。
いろは「どうしますー?先輩ご飯も食べてないしお風呂にも入らなきゃだし」
八幡「飯は別に良い。人間もともと晩飯は食わなくても良いらしいしな。ふろはぁ………」
いろは「なら私と身体の拭きっこしますか?」
恥ずかしい言葉、冗談でも、平気、言える、リア充、すごいっ!
チャイカ純粋で白くて可愛いなぁ…
一色の言葉に思わずぶふっと吹き出しそうになったが、すぐに何だか自分の中が冷たくなるのを感じた。
八幡「……このビッチめ」
いろは「ビッチじゃありませんよっ?!酷過ぎですー。冗談じゃないですかー」
八幡「……冗談でも、そういう事さらっと言っちまう女は正直好きじゃねぇな…」
いろは「ぇ」
八幡「もしそれで俺が襲ってきたらどうすんだよ。お前は今、熱も高くてまともに動けやしない。男なら俺くらい貧弱な奴でも楽に襲えるんだぞ。男なんて性欲が服着て歩いてる様なモンなんだぞ?つうかそういう台詞をサラッと言えるのは普段から言ってる証拠だ。俺は………俺はそんな軽い女は、嫌いだ」
さっきまで和やかな空気だったのに、一瞬で変わる。
一色の言葉が冗談だと分かってるのに、それを許容してやれない自分がいる。
自分でも驚いてる。
普段は流してやるような言葉なのに、なぜか勝手に口が動いてしまったのだ。
あの一瞬で身体の中が冷えていく感覚はなんだ?そしてその後不必要に攻め立てたのはなぜだ?
一色の顔を見るとその瞳は潤み、今にも泣き出しそうだ。
八幡「……わり、ちょっと出てくるわ」
なんだかその場に居づらくて、一色の言葉も待たず俺は持ってきたバッグを持って外へと飛び出した。
そのまま黙々と歩き、以前一色と話した公園で足を止めた。
…………しまった…。
歩いている最中は何も感じなかったのに、ベンチに座り込んでいると冬の寒さが一瞬で身体を冷やした。
それもそのはずだ、一色の部屋にコート忘れた…。
あ、しかも携帯も忘れた…。
これじゃ早く戻らねえと風邪ひくな。まぁすでに一色から菌を貰ってる可能性が高いが。格好つかねぇな。格好つけてるつもりもないが…。
…………。
…………。
…………寒ぃ……。
公園の出入り口の自販機まで足を運び、お目当ての物を見つけるとお金を入れてそれを取り出す。
真冬の乾いた喉にでぇっかい甘みぃ!その名も、MAX・コーフィーッ!!
やっぱ冬にあったかいMAXコーヒーは最強だな。
その場でカコッと開けて一口飲んでから再びベンチに座る。
そして一口、また一口と少しずつ飲んでいく。冷えた身体が内側から熱を帯びていくのが分かる。
ほんと甘いよな、MAXコーヒー。
………マジで甘い、甘過ぎる。飲料者を糖尿病にする気かよ……。
ほんと……ほんと、ほんと、ほんと、ほんとに人生は苦いから、コーヒーだけは甘くて良い……。
別に、涙が出るとか、そういうことはなかった。ただ空虚だった。
その理由が分からない。なぜ一色を冗談と分かっていながらも責めたのかも分からない。
今の俺に分かること。空気の冷たさと、MAXコーヒーの甘さと、きっと今一色が泣いている、ということ。
…………どうすりゃいいんだよ…。
何も思い浮かばなかった。
寒さで脳は冴えているのに、何も答は見つからない。
暗闇を走っているというよりは、何もない真っ白な空間に居る様な感じだ。
そこには答なんてないかの様な、いや、むしろ全てが答である様なそんな感覚。
ーーーMAXコーヒーを飲み終える頃には俺の身体は充分に冷えていてくしゃみを連発した。
マジで風邪ひきそうだ…。
八幡「…………帰るか…」
独り言をポツリと空気に馴染ませるとスッと立ち上がり、空いたMAXコーヒーを捨てると帰路へついた。
………帰ったらどんな顔して会えば良いんだ?何て言ったら良い?
そんな事を考えている間に一色家に着く。
立ち止まっていても風邪をひくだけなので中へと入った。
一色の部屋のドアは空いていた。
………俺が出た時開けっ放しにしちまったのか?
恐る恐る部屋の中を見る。
八幡「……ん?」
部屋の中には、誰もいなかった。
>部屋の中には、誰もいなかった。
いろはすが一つだけ落ちていたのか…
いろはすが一つだけ落ちていたのか…
全身から嫌な汗が出る。
まさかアイツ、俺の帰りが遅いから探しに出たのか…?あんな状態で…?
俺がここを出てから戻ってくるまでおよそ20分くらいは経っている。
だがあんなフラフラな状態の一色がそう遠くに行けるとは思えない。
だが、そんな状態だからこそ何かあったらどうする?フラフラ歩いていて車に轢かれなら?変な奴らに絡まれてたら?
考えれば考えるほど心臓の鼓動が加速する。
……考えてる場合じゃねぇ。考えるよりも先ず、アイツを探しに行かなくちゃダメだ。
俺は踵を返し再び外界へと出ようとした時だった。ザァァーッと水の流れる音がする。風呂場からだ。
一色の親は早くても明日の昼までは帰らない。としたらやはり一色しか考えられない。だがあんな状態で風呂に入るとは思えない。
俺はすぐに風呂場へと向かった。
風呂場のドアは開いており中にはシャワーを手に持ったまま浴槽に腕をかけてグデっとしている一色がいた。
八幡「おい一色、大丈夫か?」
いろは「あ、せんぱーい、帰って来たんですねー」
一色は俺を確認するとニコッと笑顔をつくった。
八幡「…何してんだよお前」
もし俺に言われた事を気にして手首を切っていたりしたらどうしようかと思っていたがそんな心配はなさそうだ。
一色が立ち上がろうとするがフラッとぐらついたので再び後ろから抱え込む形になって一色を補助する。
いろは「たはは、すいません」
八幡「いや、これは別に良いんだが…」
とはかっこつけて言うものの、実際は女の子を抱きしめているという現状で、何度体験しても心臓はバクバクと脈うってしまう。
そのまま一色はひしっと全体重を預けてくると、一色を抱える俺の腕を少し触れてくる。
いろは「先輩やっぱ身体冷えてますねー」
八幡「ん、あぁ、まぁ外にいたからな」
いろは「どこまで行ってたんですかー?」
八幡「………あの公園」
なぜかそこで二人して黙ってしまう。
一色はどこうとせず、かくいう俺もどかそうとはしなかった。冷えた身体に一色の熱が心地良かった。
少し沈黙が続いた後、一色に問いかけた。
八幡「んなことは良いとして、お前こそ何してんだよ。立ったらフラつくくせにこんなトコで」
いろは「…心配してくれてるんですか?」
八幡「……看病の一環だ。俺は自分のことしか考えてないからな」
一色はクスッと微笑むと照れ臭そうに話す。
いろは「きっと先輩帰って来たら寒いだろーなぁって思って、お風呂沸かしてあげとこうと思っただけです」
な、なんだこいつ…。
こんなキャラだったか?ゆるふわビッチから天使へと昇格しなさったのか?!俺の人生における天使は戸塚と小町だけじゃなかったのか?!
俺が黙ったままでいると一色は得意げな声音で喋る。
いろは「ーーーって言ったら先輩の好感度を一気に稼げるかなーと思いましたが、どうでしたかー?」
八幡「……俺の感動を返せ」
してやったり!といった感じで一色は笑った。
やっぱ怖いよこの娘。
…………。
本当はわかってる。
さっきのコイツの言葉は本当だったこと。じゃなけりゃこんな状態なのにここまでしねぇよ。
だから今のコイツの言葉は照れ隠しであり、俺に気を使ってのことだと言うことも当然わかってる。
八幡「……ほれ、部屋に戻るぞ」
いろは「せんぱ〜い、おんぶ〜」
八幡「………分かってるっつーの」
一色を支えながら身体を前に持っていき、一色をおぶる。
そのまま一色の部屋へと向かった。
いろは「今日はおんぶしてもらったりしてるから先輩に風邪うつしちゃったかもですねー」
背中でクスクスと笑う一色。
それだったら本当嫌だなぁ。
ぼっちは風邪で寝込んだりしたら授業付いていけなくなっちまうからなぁ…(泣
一色の言葉にそっと応えておく。
八幡「……もううつされてんぞ、変な熱…」
自分でも、きっと医者でも、よく分かんない変な風邪を、きっと俺はもううつされている…
くっさああああああああああああああああああ!!!!!(いい意味で)
いろは「先輩?何か言いましたかー?」
八幡「……いや、別に」
聞こえてなかったならそれでも良い。
それから一色の部屋に戻り一色をベッドの上に寝かせた。
その後、俺は一色宅の風呂を使わせてもらった。当然着替えはなく、服はそのままだが…
風呂から上がり一色の部屋へ戻ると一色は俺が風呂に入っている間に自分で着替えたようだ。
八幡「悪いな、風呂使わせてわらって」
いろは「いえいえ、看病してもらってるのでこれくらいは」
八幡「そうか。ところで寝るとこだが俺はどこで寝れば良い?別の部屋のソファなんかがあったらそこで寝るがーーー」
いろは「この部屋で良いじゃないですか」
八幡「あぁ、ならこの部屋でーーーって、は?何言ってる」
流暢な会話の流れに流されかけたが何とか踏みとどまる。ホント、こいつ何言ってるんだ?
いろは「だってほら、きっと先輩も私の風邪菌もらってるじゃないですかー。なので家中に菌をばら撒くよりは良いかと思って」
八幡「な、なるほど。一理ある。けどな…」
女の子と同じ部屋で二人きりで寝るだと?何それどこの天国?
いや待て、これは現実だ。
いやだからこそマズいわけであって…
あぁクソっ!どうすれば良いんだよ!!
いろは「やっぱ命令ですねこれは。ここで寝て下さい先輩。私は良いですからっ。家主の命令ですからねー」
俺がよくねぇんだよぉぉぉおお。
なんでそんなニコニコしてんだよ。にっこにっこにーしろよちくしょー。あなたのハートにラブニコしろよぉぉ。
俺が考えあぐねていると、一色はポンポンとベッドを叩いた。
ふむ、それはこっち来て座れというジェスチャーだったな。
よって俺がベッドに腰掛けると同時に一色は身体を起こした。
いろは「よく覚えてましたねー。えらいですよ先輩っ」
そう言って俺の頭を撫でてくる。
やめろ恥ずいからコレ。そういや前に由比ヶ浜にもされたなコレ。結構落ち着くし気持ち良いよなコレ。
俺が木ノ葉丸化している間、一色は良し良し、と言いながらずっと撫でていたが、その手が不意に止まる。
不思議に思った俺がそちらを向くよりも先に身体に強い力が加わる。
いろは「どーーんっ!」
一瞬の出来事に思考が追いつかなかった。身体に柔らかな感触が広がる
どうやら横向きにベッドの上に倒された様だ。
俺が混乱していると再び力が加わり俺の身体は逆向きにされて一色と向かい合わせになった。
すぐそこに一色の顔がある。
いろは「このまま、寝ましょうよ、先輩」
八幡「ぬぁ、にゃに言ってりゅ」
めちゃくちゃ動揺して噛んでしまう。
コホン、と一つ咳払いを入れて呼吸を整える。
八幡「お、俺はこの部屋で寝るとしても床でだなーーー」
そんな俺の言葉を遮る様に一色の腕が俺を包んだ。
その行為に更に俺の鼓動は加速する。
何が起こってる?別の世界線に来てしまったのか?だがリーディング・シュタイナーは発動していないぞっ?!
そのまま一色はモゾモゾと下に動いて胸の高さまで来ると俺の胸に顔を埋めた。
………すまんな一色。俺にはパフパフさせてやれる胸がねぇんだよ…
いろは「………嫌いに、なりましたか…?」
八幡「ぇ?」
いろは「…こんな事する女は、軽くて、ビッチっぽくて、嫌い、ですか…?」
………………。
やっぱ気にしてたか…。
別に軽い女が嫌いなわけじゃない。そんなのアニメとかなら多いし、そういう女ってヒロインと対照的な存在として扱われる事多いから可愛いキャラデザだし。
ただ、こいつや雪ノ下や由比ヶ浜達にはそうであって欲しくないと思ってしまうんだ。
俺が黙ったままでいると一色は再び口を開いた。
いろは「……確かに、先輩の言う通りでした。私、あぁゆう言葉、普段から使ってました。あぁゆう言葉や話題って誰とでも盛り上がれるし、ネタに困りませんから」
顔を埋めたままでその表情は見れないが何となく想像がついてしまうくらいには一色のことを理解できていた。
でも、と一色は続ける。
いろは「先輩を、先輩を好きになってからは使ってませんっ!男子とだって遊びませんっ!だって私………先輩と付き合いたいから…」
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