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元スレサトシ「…………ピカチュウ……」
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オーキド博士が言うには、俺のポケモン達は皆、それぞれ集団のリーダーとしてポケモン達をまとめているらしい。
という訳で、今回の旅に着いてこさせる訳にはいかない。
着いてきたがった奴もいたが、「これからも、みんなを頼む」と言ったら納得してくれた。
かくして、俺とピカチュウはオーキド研究所を後にした。
という訳で、今回の旅に着いてこさせる訳にはいかない。
着いてきたがった奴もいたが、「これからも、みんなを頼む」と言ったら納得してくれた。
かくして、俺とピカチュウはオーキド研究所を後にした。
「明日から、俺とお前の旅が始まるんだな」
今日も俺のベッドを陣取ったピカチュウに言う。
「……ピカ」
ピカチュウはベッドから、床で寝る俺を見下ろしながら応えた。
今宵は綺麗な満月だった。
窓から差し込む月明かりに照らされる、俺とピカチュウ。
シンと静まり返る部屋。
時計の秒針が進む音が、やけに大きく聞こえた。
「なぁ、ピカチュウ」
「……ピ?」
「いや、なんでもない」
ちょっとからかってみただけ。
「ピカァ……」
機嫌を悪くしてしまったようだ。
「ハハハ、悪い悪い」
それっきり、ピカチュウはそっぽを向いてしまい、のちに静かな寝息が聞こえ始めた。
「おやすみ」
そうして、夜は更けていく。
明日から吹くであろう新しい風に、期待と不安を抱きながら――
今日も俺のベッドを陣取ったピカチュウに言う。
「……ピカ」
ピカチュウはベッドから、床で寝る俺を見下ろしながら応えた。
今宵は綺麗な満月だった。
窓から差し込む月明かりに照らされる、俺とピカチュウ。
シンと静まり返る部屋。
時計の秒針が進む音が、やけに大きく聞こえた。
「なぁ、ピカチュウ」
「……ピ?」
「いや、なんでもない」
ちょっとからかってみただけ。
「ピカァ……」
機嫌を悪くしてしまったようだ。
「ハハハ、悪い悪い」
それっきり、ピカチュウはそっぽを向いてしまい、のちに静かな寝息が聞こえ始めた。
「おやすみ」
そうして、夜は更けていく。
明日から吹くであろう新しい風に、期待と不安を抱きながら――
* * *
彼は、安息の眠りに着いていた。
それを妨げる影が一つ、二つ、三つ――と増えていく。
彼の邪悪な力を感じ取り、導かれていた。
「やれやれ、おとなしく眠ることさえ許されねぇのか」
彼、もといミュウツーは重たい腰を上げる。
ミュウツーの周囲を囲むように、複数のポケモンが威嚇の鳴き声を発している。
「頼むからよぉ……オレに挑むなら、ちゃんと勝ってくれよ」
彼は、安息の眠りに着いていた。
それを妨げる影が一つ、二つ、三つ――と増えていく。
彼の邪悪な力を感じ取り、導かれていた。
「やれやれ、おとなしく眠ることさえ許されねぇのか」
彼、もといミュウツーは重たい腰を上げる。
ミュウツーの周囲を囲むように、複数のポケモンが威嚇の鳴き声を発している。
「頼むからよぉ……オレに挑むなら、ちゃんと勝ってくれよ」
勝利は望まない。
勝利に意味などない。
苦痛が延長されるだけだから。
故に敗北を望む。
すなわち、死を。
それが、この苦痛の一生から脱する唯一の方法だから。
しかし、この戦いでミュウツーに負けはない。
多勢に無勢。
数に圧倒的な差があれど、総合的な力はミュウツー単体の方が上だった。
「お前ら、逃げるなら今のうちだ。怪我したくねぇだろ?」
杭を刺しても、獰猛な野生ポケモン達は聞く耳を持たない。
あまりに強大な力を前にして、自己防衛本能を発揮している。
「ったくよぉ。オレはやる気はねぇんだっての」
大きな溜め息を一つ。
「ま、そっちがやる気なら、仕方ないよな」
勝利に意味などない。
苦痛が延長されるだけだから。
故に敗北を望む。
すなわち、死を。
それが、この苦痛の一生から脱する唯一の方法だから。
しかし、この戦いでミュウツーに負けはない。
多勢に無勢。
数に圧倒的な差があれど、総合的な力はミュウツー単体の方が上だった。
「お前ら、逃げるなら今のうちだ。怪我したくねぇだろ?」
杭を刺しても、獰猛な野生ポケモン達は聞く耳を持たない。
あまりに強大な力を前にして、自己防衛本能を発揮している。
「ったくよぉ。オレはやる気はねぇんだっての」
大きな溜め息を一つ。
「ま、そっちがやる気なら、仕方ないよな」
「――いくぞ」
薄めていた力を、解き放つ。
気配、オーラ、殺気、全てが増幅する。
威嚇していたポケモン達は、その圧倒的な力の差に身を震え上がらせる。
逃げ出す者もいた。
だが、時既に遅し――
「手加減はナシだ」
ミュウツーが右手を振り上げる。
空を裂いただけ。
刹那、一匹のポケモンが見えない力によって吹き飛ばされた。
次に左手を横に薙ぐ。
また、空を裂いただけ。
刹那、複数のポケモンが横に吹き飛ぶ。
不可視の力――念力。
抗えぬ強大な力に、ポケモン達はただ弄ばれるだけだった。
「そろそろ終わりだ」
両手に邪悪な力を込め、黒いエネルギーの球体を作り上げた。
「怨まないでくれな……」
黒い球体、もといシャドーボールを放つ。
まがまがしい力を蓄えたそれは、獲物へと一直線。
着弾と共に力を拡散させ、周囲を一掃する。
立ち上がる気力を残したポケモンは、一匹もいなかった。
ミュウツーは無言のまま瀕死のポケモン達に視線を向け、鬱屈な表情になる。
そして空高く舞い上がり、そのまま夜空の彼方へと消えてしまった。
軌跡を残して――
* * *
薄めていた力を、解き放つ。
気配、オーラ、殺気、全てが増幅する。
威嚇していたポケモン達は、その圧倒的な力の差に身を震え上がらせる。
逃げ出す者もいた。
だが、時既に遅し――
「手加減はナシだ」
ミュウツーが右手を振り上げる。
空を裂いただけ。
刹那、一匹のポケモンが見えない力によって吹き飛ばされた。
次に左手を横に薙ぐ。
また、空を裂いただけ。
刹那、複数のポケモンが横に吹き飛ぶ。
不可視の力――念力。
抗えぬ強大な力に、ポケモン達はただ弄ばれるだけだった。
「そろそろ終わりだ」
両手に邪悪な力を込め、黒いエネルギーの球体を作り上げた。
「怨まないでくれな……」
黒い球体、もといシャドーボールを放つ。
まがまがしい力を蓄えたそれは、獲物へと一直線。
着弾と共に力を拡散させ、周囲を一掃する。
立ち上がる気力を残したポケモンは、一匹もいなかった。
ミュウツーは無言のまま瀕死のポケモン達に視線を向け、鬱屈な表情になる。
そして空高く舞い上がり、そのまま夜空の彼方へと消えてしまった。
軌跡を残して――
* * *
「……う……うんん……」
まぶしい……朝か?
ああ、そうか……今日から旅に出るんだった。
重たい瞼をこじ開ける。
窓から差し込む朝日。
良い天気だ。
そして――
「何故お前は俺の布団に入り込んでいる」
俺の横では、ピカチュウが静かな寝息をたてていた。
ベッドで寝ていたはずなのに。
寝相が悪くて落っこちたのか、それとも――
「いや、まぁいいか」
起き上がり、体を伸ばす。
清々しい朝だ。
まぶしい……朝か?
ああ、そうか……今日から旅に出るんだった。
重たい瞼をこじ開ける。
窓から差し込む朝日。
良い天気だ。
そして――
「何故お前は俺の布団に入り込んでいる」
俺の横では、ピカチュウが静かな寝息をたてていた。
ベッドで寝ていたはずなのに。
寝相が悪くて落っこちたのか、それとも――
「いや、まぁいいか」
起き上がり、体を伸ばす。
清々しい朝だ。
今日の予定は、まずシオンタウンのポケモンタワーへ行くことから始まる。
旅立ち前の、墓参りだ。
その為にシオンタウンまでは手っ取り早くバスで向かうことになる。
ここマサラタウンは小さな町だから、バスは一日に数本しか来ない。
したがって9時のバスに乗らなければ、次のバスまではかなりの時間が空く。
ふと、壁にかけられた時計に目をやった。
時計の針は9時を指し、今も休まず時を刻みつづけている――
「遅刻だ」
無駄に間を空け、俺は事態を飲み込んだ。
「おかしい……目覚ましつけてた筈なのに……」
嘆きながらも出発の準備を始める。
後に目覚まし時計はピカチュウの下敷きになって壊れていたと知ることになる。
旅立ち前の、墓参りだ。
その為にシオンタウンまでは手っ取り早くバスで向かうことになる。
ここマサラタウンは小さな町だから、バスは一日に数本しか来ない。
したがって9時のバスに乗らなければ、次のバスまではかなりの時間が空く。
ふと、壁にかけられた時計に目をやった。
時計の針は9時を指し、今も休まず時を刻みつづけている――
「遅刻だ」
無駄に間を空け、俺は事態を飲み込んだ。
「おかしい……目覚ましつけてた筈なのに……」
嘆きながらも出発の準備を始める。
後に目覚まし時計はピカチュウの下敷きになって壊れていたと知ることになる。
「まったく、体は大人になっても、中身は子供のままね」
溜め息をつく母さん。
「おほひてくへへふぁほあっはほひ」
※起こしてくれれば良かったのに。
イチゴジャムをたっぷり塗りたくったトーストをほうばる俺と、ミートボールをかじるピカチュウ。
「だって、今日の詳しい予定を教えてもらってないもの。起こしようがないわ」
確かに。
俺はゴクリン顔負けの勢いでトーストを飲み込む。
「ゴホッゴホッ」
むせる。
「もう、変わったようで、変わってないのね」
呆れたように母さんが、水の入ったコップを俺に差し出す。
俺はそれを受け取り、一気に流し込む。
「っぷはぁ」
危ないところだった。
「バスはもう無理だから、歩いていくしかないか」
「ピカァ……」
徒歩は嫌そうなピカチュウ。
「なんなら、俺の肩に乗るか?」
「ピーカ」
案の定、嫌らしい。
そのあと、早々に朝食を済ませ――いよいよだ。
溜め息をつく母さん。
「おほひてくへへふぁほあっはほひ」
※起こしてくれれば良かったのに。
イチゴジャムをたっぷり塗りたくったトーストをほうばる俺と、ミートボールをかじるピカチュウ。
「だって、今日の詳しい予定を教えてもらってないもの。起こしようがないわ」
確かに。
俺はゴクリン顔負けの勢いでトーストを飲み込む。
「ゴホッゴホッ」
むせる。
「もう、変わったようで、変わってないのね」
呆れたように母さんが、水の入ったコップを俺に差し出す。
俺はそれを受け取り、一気に流し込む。
「っぷはぁ」
危ないところだった。
「バスはもう無理だから、歩いていくしかないか」
「ピカァ……」
徒歩は嫌そうなピカチュウ。
「なんなら、俺の肩に乗るか?」
「ピーカ」
案の定、嫌らしい。
そのあと、早々に朝食を済ませ――いよいよだ。
「忘れ物はない?ちゃんと確認した?」
「母さん、俺だってもう子供じゃないんだからさぁ」
旅仕度を終え、俺は玄関先で母さんとしばしの別れの言葉を交わす。
「あの人のこと、頼んだわよ」
「ああ、必ず連れ帰る」
そう、この旅の第一目的は行方不明の親父を捜すこと。
家族に散々迷惑をかけたんだ。
見つけたら絶対に殴ってやる。
そんな子供じみた想いを胸に秘め――
「じゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
――新しい旅は、始まりを告げた。
「母さん、俺だってもう子供じゃないんだからさぁ」
旅仕度を終え、俺は玄関先で母さんとしばしの別れの言葉を交わす。
「あの人のこと、頼んだわよ」
「ああ、必ず連れ帰る」
そう、この旅の第一目的は行方不明の親父を捜すこと。
家族に散々迷惑をかけたんだ。
見つけたら絶対に殴ってやる。
そんな子供じみた想いを胸に秘め――
「じゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
――新しい旅は、始まりを告げた。
「オレ達、カントーポケモン連合!」
「ヒャッハ!タクさんマジカッコイイっす!!」
「タクさん最高っす!」
そんな連中に絡まれたのは家を出て割とすぐのことだった。
厳つい風貌のスキンヘッドやらリーゼント……いわゆる暴走族という輩の3人組だ。
乗り回しているものはバイクはバイクでもマウンテンバイクだった。
そして何故かリーダーらしいタクという男に限ってはママチャリだった。
「オレ様に目をつけられたが最後!痛い目にあわせてやるぜぇ!」
そう怒鳴り散らしてモンスターボールを取り出す。
なんの因果か、どうやら逃げるという選択肢も、金を置いて見逃してもらうなんて選択肢もないらしい。
いや――
「売られた喧嘩は買うっきゃない。ピカチュウ、初バトルといこうか」
「ピカ!」
「ヒャッハ!タクさんマジカッコイイっす!!」
「タクさん最高っす!」
そんな連中に絡まれたのは家を出て割とすぐのことだった。
厳つい風貌のスキンヘッドやらリーゼント……いわゆる暴走族という輩の3人組だ。
乗り回しているものはバイクはバイクでもマウンテンバイクだった。
そして何故かリーダーらしいタクという男に限ってはママチャリだった。
「オレ様に目をつけられたが最後!痛い目にあわせてやるぜぇ!」
そう怒鳴り散らしてモンスターボールを取り出す。
なんの因果か、どうやら逃げるという選択肢も、金を置いて見逃してもらうなんて選択肢もないらしい。
いや――
「売られた喧嘩は買うっきゃない。ピカチュウ、初バトルといこうか」
「ピカ!」
ピカチュウが戦闘体勢に移行する。
俺の言うことを聞いた訳じゃなく、ただ相手が気に食わないだけなのだろう。
「ヘヘッ、タクさん、やっちゃってくださいよ!」
「あんな虫けら、イチコロっす!」
「テメェら見ておけ!オレ様の華麗なるボール捌きを!!」
俺の言うことを聞いた訳じゃなく、ただ相手が気に食わないだけなのだろう。
「ヘヘッ、タクさん、やっちゃってくださいよ!」
「あんな虫けら、イチコロっす!」
「テメェら見ておけ!オレ様の華麗なるボール捌きを!!」
――俺は自転車に跨がり、風になっていた。
カゴにピカチュウを乗せて。
「いやー、自転車が手に入って良かったな、ピカチュウ」
「ピカ!」
どうしてこうなったかなど、説明するまでもないのだろう。
暴走族の頭を倒したら、「このバイクは……真に強い者が乗ってこそ輝く」と言って俺にママチャリを託したのだ。
とっても助かっている。
これならシオンタウンまでそう時間はかからないだろう。
「それにしてもピカチュウ、お前結構強いんだな」
出会った当初に存分に電撃を浴びたから薄々感づいてはいたが……パワーはかなりのものだ。
動きも良いし、戦い慣れしているようだった
しかし、ただ一つ欠点がある。
俺の命令を受け入れないという、致命的な欠点。
まぁ、予想はしていたのだけれど。
案の定、先程のバトルでは、敵の攻撃と俺の指示を華麗に回避し、自分勝手に行動してあっさりと勝負を決めてしまった。
「ピカチュウさん、もう少し仲良くしましょうよ」
「ピーカ」
そっぽを向いてしまう。
まだまだ、色々な意味で先は長そうだ。
カゴにピカチュウを乗せて。
「いやー、自転車が手に入って良かったな、ピカチュウ」
「ピカ!」
どうしてこうなったかなど、説明するまでもないのだろう。
暴走族の頭を倒したら、「このバイクは……真に強い者が乗ってこそ輝く」と言って俺にママチャリを託したのだ。
とっても助かっている。
これならシオンタウンまでそう時間はかからないだろう。
「それにしてもピカチュウ、お前結構強いんだな」
出会った当初に存分に電撃を浴びたから薄々感づいてはいたが……パワーはかなりのものだ。
動きも良いし、戦い慣れしているようだった
しかし、ただ一つ欠点がある。
俺の命令を受け入れないという、致命的な欠点。
まぁ、予想はしていたのだけれど。
案の定、先程のバトルでは、敵の攻撃と俺の指示を華麗に回避し、自分勝手に行動してあっさりと勝負を決めてしまった。
「ピカチュウさん、もう少し仲良くしましょうよ」
「ピーカ」
そっぽを向いてしまう。
まだまだ、色々な意味で先は長そうだ。
「着いたな」
今日も静かなシオンタウン。
俺とピカチュウはそびえ立つポケモンタワーを前にしていた。
「ここに、俺の親友が眠ってるんだ」
「ぴか……」
乗ってきた戦利品の自転車を端に停め、再び、塔のてっぺんを見上げる。
最上部は雲に隠れて見えない。
天国まで続いているのだろうか。
「さ、入ろう」
ピカチュウに呼びかけ、ポケモンタワーの入口に向かった――その瞬間、入口の扉が開き、中から2人の男女が出てきた。
1人は短い青髪で、端正な顔立ちをした男性。
もう1人は長い赤髪の女性で――――
「え……」
思わず声が漏れた。
俺はこの2人を知っている気がする。
「あ、アンタは……」
向こうも俺に気づいたらしい。
間違いない。
「ロケット団の、ムサシと、コジロウ……?」
今日も静かなシオンタウン。
俺とピカチュウはそびえ立つポケモンタワーを前にしていた。
「ここに、俺の親友が眠ってるんだ」
「ぴか……」
乗ってきた戦利品の自転車を端に停め、再び、塔のてっぺんを見上げる。
最上部は雲に隠れて見えない。
天国まで続いているのだろうか。
「さ、入ろう」
ピカチュウに呼びかけ、ポケモンタワーの入口に向かった――その瞬間、入口の扉が開き、中から2人の男女が出てきた。
1人は短い青髪で、端正な顔立ちをした男性。
もう1人は長い赤髪の女性で――――
「え……」
思わず声が漏れた。
俺はこの2人を知っている気がする。
「あ、アンタは……」
向こうも俺に気づいたらしい。
間違いない。
「ロケット団の、ムサシと、コジロウ……?」
「ジャリボーイ……ジャリボーイじゃないか!」
コジロウが驚きの声を上げる。
「久しぶりね」
腕を組んで言うムサシ。
当たり前だが、2人とも10年前とは変わっていた。
コジロウはやや幼かった顔に少し渋味を加え、無精髭。
ムサシは全体的に落ち着いた雰囲気になっていた。
ちなみに2人とも私服。
「ああ、本当に、久しぶりだな」
俺は愛想笑いのような苦笑いを浮かべる。
あまりに久々の対面に、どう接すれば良いか分からなかったからだ。
コジロウが驚きの声を上げる。
「久しぶりね」
腕を組んで言うムサシ。
当たり前だが、2人とも10年前とは変わっていた。
コジロウはやや幼かった顔に少し渋味を加え、無精髭。
ムサシは全体的に落ち着いた雰囲気になっていた。
ちなみに2人とも私服。
「ああ、本当に、久しぶりだな」
俺は愛想笑いのような苦笑いを浮かべる。
あまりに久々の対面に、どう接すれば良いか分からなかったからだ。
「えと……ピカチュウの墓参りか?」
コジロウが問う。
「ああ」
ムサシとコジロウとニャースは、ピカチュウを失ったあの日、俺と同行していたから、知っている。
その日以来、顔を合わせるのは初めてだった。
「って、あれ?そのピカチュウは?」
俺の隣にたたずむピカチュウに気づいたコジロウが尋ねる。
「つい最近出会ったんだ。新しいパートナー……ってところかな」
と言い、ピカチュウに目をやる。
「ぴーか」
そっぽを向かれた。
「ま、この通り中々懐いてくれなくて」
苦笑する。
「そうか。意外と元気そうだな、うん」
安心したようなコジロウ。
コジロウが問う。
「ああ」
ムサシとコジロウとニャースは、ピカチュウを失ったあの日、俺と同行していたから、知っている。
その日以来、顔を合わせるのは初めてだった。
「って、あれ?そのピカチュウは?」
俺の隣にたたずむピカチュウに気づいたコジロウが尋ねる。
「つい最近出会ったんだ。新しいパートナー……ってところかな」
と言い、ピカチュウに目をやる。
「ぴーか」
そっぽを向かれた。
「ま、この通り中々懐いてくれなくて」
苦笑する。
「そうか。意外と元気そうだな、うん」
安心したようなコジロウ。
「お前達はどうしてここに?まさか……ニャースが!?」
そう、ロケット団と言えばムサシ、コジロウ、そしてニャースだ。
さっきから気になっていたが、ニャースの姿が見当たらない。
「ああ、その通り。ニャースがな……」
言葉を詰まらせるコジロウ。
「ええ、うるさい奴だったけど、いなくなると悲しいものよ……」
うつむくムサシ。
そうか……。
こいつらも大切な仲間を失っ――
「勝手に殺すニャーー!!」
――ていなかった。
扉を壊してしまいそうな勢いで怒鳴りながら中から出てきたのは二足歩行で喋るポケモン、ニャース。
その腕に、小さな小さな、人間の赤ん坊を抱えて。
「うるさいわね!赤ちゃんが泣いちゃうでしょ!」
そう言うムサシの方がうるさかったりする。
「ははは」
そんな光景を見て微笑むコジロウ。
「えっと……どういうこと?」
そして、状況が飲み込めない俺。
そう、ロケット団と言えばムサシ、コジロウ、そしてニャースだ。
さっきから気になっていたが、ニャースの姿が見当たらない。
「ああ、その通り。ニャースがな……」
言葉を詰まらせるコジロウ。
「ええ、うるさい奴だったけど、いなくなると悲しいものよ……」
うつむくムサシ。
そうか……。
こいつらも大切な仲間を失っ――
「勝手に殺すニャーー!!」
――ていなかった。
扉を壊してしまいそうな勢いで怒鳴りながら中から出てきたのは二足歩行で喋るポケモン、ニャース。
その腕に、小さな小さな、人間の赤ん坊を抱えて。
「うるさいわね!赤ちゃんが泣いちゃうでしょ!」
そう言うムサシの方がうるさかったりする。
「ははは」
そんな光景を見て微笑むコジロウ。
「えっと……どういうこと?」
そして、状況が飲み込めない俺。
「ははは、まぁ……なんだ、ははは」
コジロウは照れ臭そうに笑いながら、ニャースから赤ん坊を受け取る。
「俺達……結婚したんだ」
コジロウとムサシが肩を寄せ合う。
どちらも気恥ずかしそうに、視線を泳がせている。
そうか、結婚したのか。
ああ、なるほどね。
その赤ん坊は2人の子供なのか。
なるほどね。
「ニャーは赤ん坊の世話役ニャ。こいつらときたら面倒事は全部ニャーに任せるのニャ。困ったもんだニャ」
うん、なるほどね。
なるほど……
なるほど……
「えぇぇぇーっ!?」
散々、思考した挙げ句に出たのはそんなマヌケな声だった。
それくらい、衝撃的だった。
「えっと……なんというか……」
俺はかける言葉が思い付かず、口ごもる。
とりあえず――
「おめでとう、ございます?」
謎の疑問形。
コジロウは照れ臭そうに笑いながら、ニャースから赤ん坊を受け取る。
「俺達……結婚したんだ」
コジロウとムサシが肩を寄せ合う。
どちらも気恥ずかしそうに、視線を泳がせている。
そうか、結婚したのか。
ああ、なるほどね。
その赤ん坊は2人の子供なのか。
なるほどね。
「ニャーは赤ん坊の世話役ニャ。こいつらときたら面倒事は全部ニャーに任せるのニャ。困ったもんだニャ」
うん、なるほどね。
なるほど……
なるほど……
「えぇぇぇーっ!?」
散々、思考した挙げ句に出たのはそんなマヌケな声だった。
それくらい、衝撃的だった。
「えっと……なんというか……」
俺はかける言葉が思い付かず、口ごもる。
とりあえず――
「おめでとう、ございます?」
謎の疑問形。
「ははは、ありがとうよ」
「アタシも、まさかコジロウと結婚することになるとはね」
「おいおい、何だよその言い方ー」
10年……か。
「ま、てな訳で、アタシ達はロケット団も辞めたわ」
「今じゃ2人、いや、子供を含めて3人で幸せな生活を送っているのさ」
「ニャーを忘れてないかニャ?」
10年。
長い、長い、年月だ。
ここまで変わってしまうんだな。
「あら、そろそろデパートのタイムセールの時間ね」
腕時計を見たムサシがぼやく。
「買い物か?」
「ええ」
「急ぐのニャ!」
慌て始めるニャース。
「じゃあなジャリボーイ……いや、サトシ。縁があったらまた会おう!」
爽やかな笑顔を残して去っていくコジロウ、とその家族。
「ああ、お幸せにな」
俺は手を振ってそんな家族を見送った。
「さて、そんじゃ中へ行こうか」
扉を前にして思わぬ立ち話に時間を費やした。
腐れ縁の幸せ家族との別れを済ませたところで、俺とピカチュウはいよいよポケモンタワーに足を踏み入れた。
そういえば、結局あいつらはココに何の用があったんだろう?
「アタシも、まさかコジロウと結婚することになるとはね」
「おいおい、何だよその言い方ー」
10年……か。
「ま、てな訳で、アタシ達はロケット団も辞めたわ」
「今じゃ2人、いや、子供を含めて3人で幸せな生活を送っているのさ」
「ニャーを忘れてないかニャ?」
10年。
長い、長い、年月だ。
ここまで変わってしまうんだな。
「あら、そろそろデパートのタイムセールの時間ね」
腕時計を見たムサシがぼやく。
「買い物か?」
「ええ」
「急ぐのニャ!」
慌て始めるニャース。
「じゃあなジャリボーイ……いや、サトシ。縁があったらまた会おう!」
爽やかな笑顔を残して去っていくコジロウ、とその家族。
「ああ、お幸せにな」
俺は手を振ってそんな家族を見送った。
「さて、そんじゃ中へ行こうか」
扉を前にして思わぬ立ち話に時間を費やした。
腐れ縁の幸せ家族との別れを済ませたところで、俺とピカチュウはいよいよポケモンタワーに足を踏み入れた。
そういえば、結局あいつらはココに何の用があったんだろう?
――その疑問は、すぐに晴れることになった。
親友が眠る墓に、まだ新しい花が供えられていた。
それだけじゃない。
ほんの数分前に磨かれたかのように、水の滴る墓石。
隅々まで綺麗に手入れが施されている。
「そっか……あいつら……」
ムサシ、コジロウ、ニャース。
ピカチュウの墓参りに来てくれていたんだな。
「……ぐす」
3人の優しさと、亡き親友を前にして、胸が熱くなるのを感じた。
それを合図に、俺は小さな涙をこぼす。
しかしそれを拭い――
「なぁピカチュウ。俺、今日から新しい旅に出ることにしたんだ」
墓石に語りかける。
「立ち直るのに10年もかかっちまったけどさ」
「このピカチュウが、俺にきっかけを与えてくれた」
「もしかしたら、お前と同じ血が通っているのかもな」
「それじゃ、行くよ」
親友が眠る墓に、まだ新しい花が供えられていた。
それだけじゃない。
ほんの数分前に磨かれたかのように、水の滴る墓石。
隅々まで綺麗に手入れが施されている。
「そっか……あいつら……」
ムサシ、コジロウ、ニャース。
ピカチュウの墓参りに来てくれていたんだな。
「……ぐす」
3人の優しさと、亡き親友を前にして、胸が熱くなるのを感じた。
それを合図に、俺は小さな涙をこぼす。
しかしそれを拭い――
「なぁピカチュウ。俺、今日から新しい旅に出ることにしたんだ」
墓石に語りかける。
「立ち直るのに10年もかかっちまったけどさ」
「このピカチュウが、俺にきっかけを与えてくれた」
「もしかしたら、お前と同じ血が通っているのかもな」
「それじゃ、行くよ」
ムサシコジロウってほんといい奴だよな
なんでロケット団にいるのか分からんレベル
なんでロケット団にいるのか分からんレベル
>>378
あの三人は憎めない
あの三人は憎めない
* * *
「遺伝子適合しました。実験は成功です」
暗闇に、機械のモニターの電光が怪しく輝く研究施設。
緑色の液体(おそらく生命を維持するもの)の入ったカプセルの中に、実験体の彼はいた。
「おお……ついに、ついにこの時がきた!」
白衣を着た数人の研究員。
禁忌を犯した実験が、成功の形で終わりを告げた瞬間だった。
研究員達の歓喜の声が、実験体にとってはこの上なく耳障りだった。
彼は自分の身体に視線を落とす。
変わり果てた姿。
内に眠る、異種のDNA、破壊の遺伝子。
彼はもう、人間ではなかった――
「っ!!」
勢いよく起き上がる。
眼前に広がるのは名も知らぬ森林。
そこでようやく、夢を見ていたのだと気づく。
「また……この夢か」
昨晩、獰猛な野生ポケモンに寝床を追われ、長い飛行をしているうちにたどり着いたのがこの森だ。
「いや、夢を見れるのも今のうちなのかもな」
彼、ミュウツーは嘆く。
絶望する。
「誰でもいい……俺を殺してくれ」
* * *
「遺伝子適合しました。実験は成功です」
暗闇に、機械のモニターの電光が怪しく輝く研究施設。
緑色の液体(おそらく生命を維持するもの)の入ったカプセルの中に、実験体の彼はいた。
「おお……ついに、ついにこの時がきた!」
白衣を着た数人の研究員。
禁忌を犯した実験が、成功の形で終わりを告げた瞬間だった。
研究員達の歓喜の声が、実験体にとってはこの上なく耳障りだった。
彼は自分の身体に視線を落とす。
変わり果てた姿。
内に眠る、異種のDNA、破壊の遺伝子。
彼はもう、人間ではなかった――
「っ!!」
勢いよく起き上がる。
眼前に広がるのは名も知らぬ森林。
そこでようやく、夢を見ていたのだと気づく。
「また……この夢か」
昨晩、獰猛な野生ポケモンに寝床を追われ、長い飛行をしているうちにたどり着いたのがこの森だ。
「いや、夢を見れるのも今のうちなのかもな」
彼、ミュウツーは嘆く。
絶望する。
「誰でもいい……俺を殺してくれ」
* * *
「……いただきます」
「ピカピカ!」
墓参りを終えた俺達は、近場のレストランで昼食をとっていた。
俺が注文したメニューはオムライス。
ピカチュウには好みに合わせたポケモンフーズを注文した――はずだった。
俺の前に置かれているのは華やかな皿に盛られたポケモンフーズ。
カラフルな粉がふりかけられていて、なんと美味しそうなことでしょう。
そして、向かいに座るピカチュウの前には、俺が俺の分として注文したはずのオムライスがあった。
ピカチュウは食前の挨拶を済ませると早々、ケチャップとオムライスでお絵かきを始める。
いやいや――
「それ俺のなんだけど」
「ぴーっかー」
ピカチュウはお絵かきに夢中のようだ。
「お前、オムライスが食べたいのか?」
「ピカ」
うなずく。
「このポケモンフーズは俺が食えと?」
「ピカピカ」
2度うなずく。
まぁ、ポケモンフーズ、人間が食えない訳じゃないし……オムライスをもう一つ注文するほど財布は温かくないし。
「仕方ない……」
俺は角切りのポケモンフーズをボリボリとつまむのであった。
意外と美味しい、でも悔しい。
「ピカピカ!」
墓参りを終えた俺達は、近場のレストランで昼食をとっていた。
俺が注文したメニューはオムライス。
ピカチュウには好みに合わせたポケモンフーズを注文した――はずだった。
俺の前に置かれているのは華やかな皿に盛られたポケモンフーズ。
カラフルな粉がふりかけられていて、なんと美味しそうなことでしょう。
そして、向かいに座るピカチュウの前には、俺が俺の分として注文したはずのオムライスがあった。
ピカチュウは食前の挨拶を済ませると早々、ケチャップとオムライスでお絵かきを始める。
いやいや――
「それ俺のなんだけど」
「ぴーっかー」
ピカチュウはお絵かきに夢中のようだ。
「お前、オムライスが食べたいのか?」
「ピカ」
うなずく。
「このポケモンフーズは俺が食えと?」
「ピカピカ」
2度うなずく。
まぁ、ポケモンフーズ、人間が食えない訳じゃないし……オムライスをもう一つ注文するほど財布は温かくないし。
「仕方ない……」
俺は角切りのポケモンフーズをボリボリとつまむのであった。
意外と美味しい、でも悔しい。
「なぁ、知ってるか?伝説のポケモン、ミュウツーの話」
「うん、最近ウワサだよね」
そんな会話を耳に挟んだのは、俺がポケモンフーズを食べ終わって身体をグイっと伸ばした時だった。
後方のテーブルでの、2人の男性の会話。
「近頃、目撃情報が多発している」
「気になるね」
俺は感づかれないように聞き耳を立てる。
「それもカントーだけじゃなく、他の地方でもだ」
「飛び回ってるんだね」
ミュウツー……噂で名前だけなら知っている。
いや、何故か出会ったことがあるような気もする。
「なんと、人の姿に変身するところを見たという情報もあるんだ」
「大勢の野生ポケモンを一匹であっという間に倒したって話も聞いたことがあるよ」
ほう、そんなに凄いポケモンなのか。
思わぬ貴重な情報を胸にしまい、俺達はレストランを後にする。
今は伝説のポケモンより親父が先だ。
「うん、最近ウワサだよね」
そんな会話を耳に挟んだのは、俺がポケモンフーズを食べ終わって身体をグイっと伸ばした時だった。
後方のテーブルでの、2人の男性の会話。
「近頃、目撃情報が多発している」
「気になるね」
俺は感づかれないように聞き耳を立てる。
「それもカントーだけじゃなく、他の地方でもだ」
「飛び回ってるんだね」
ミュウツー……噂で名前だけなら知っている。
いや、何故か出会ったことがあるような気もする。
「なんと、人の姿に変身するところを見たという情報もあるんだ」
「大勢の野生ポケモンを一匹であっという間に倒したって話も聞いたことがあるよ」
ほう、そんなに凄いポケモンなのか。
思わぬ貴重な情報を胸にしまい、俺達はレストランを後にする。
今は伝説のポケモンより親父が先だ。
「はぁ……腹減った……」
レストランを出て早々、こんな台詞を言うことになるとは思いもしなかった。
ポケモンフーズなんて、人間に言わせてみればスナック菓子のようなものだった。
それもこれも全て――
「ピ~ッカァ~」
俺の横で上機嫌にしているこのピカチュウのせいだったりする。
「お腹一杯か?」
「ピッカ!」
満足げに頷く。
「そうかい。そりゃ何よりだ」
皮肉っぽく言ってみる。
さて、腹ごしらえが済んだ(?)ところで、まずは親父に関する情報収集だ。
先日マサラタウンに来ていたのだから、何かしらの情報が掴めるかもしれない。
「行くぞ、ピカチュウ」
こうして、俺とピカチュウによる親父の情報収集が始まった。
レストランを出て早々、こんな台詞を言うことになるとは思いもしなかった。
ポケモンフーズなんて、人間に言わせてみればスナック菓子のようなものだった。
それもこれも全て――
「ピ~ッカァ~」
俺の横で上機嫌にしているこのピカチュウのせいだったりする。
「お腹一杯か?」
「ピッカ!」
満足げに頷く。
「そうかい。そりゃ何よりだ」
皮肉っぽく言ってみる。
さて、腹ごしらえが済んだ(?)ところで、まずは親父に関する情報収集だ。
先日マサラタウンに来ていたのだから、何かしらの情報が掴めるかもしれない。
「行くぞ、ピカチュウ」
こうして、俺とピカチュウによる親父の情報収集が始まった。
* * *
それは、数週間前のこと――
「ウグッ……ハァッ……ハァッ……」
のたうちまわる。
胸を締め付けるような痛み。
頭が割れてしまいそうな痛み。
内から込み上げる、ドス黒い闇。
「グッ……ハァッ……ハァッ……」
家族に会いたい。
そんな願望を胸に秘め、彼は人間の姿に化けてマサラタウンを目指していた。
道中、夜中のトキワの森でのこと。
彼は独り、痛みと戦っていた。
しかし変身は解け、今はポケモンの姿。
こんな事態を予測して人気の少ない夜中の森を通ったのは正解だったのかもしれない。
「飲み込ま……れたら……ダメ、だ……ッ!」
自我を奪う。
眠っていたもう一つの心が、目覚める。
「チッ……クショウ……」
身体が言うことをきかない。
もう一つの心が、勝手に命令を発している。
“スベテヲ破壊セヨ”
「ヤ……メ………ロ……」
手が勝手に動く。
掌に力が集束していき、エネルギー弾を形成する。
「ヤメ……ロ……」
力は止まることを知らず、放たれる。
強大な力を凝縮したその塊の弾道は、木々を破壊し、焼き尽くす。
燃え上がる、森。
泣き喚く、ポケモン達。
それは、数週間前のこと――
「ウグッ……ハァッ……ハァッ……」
のたうちまわる。
胸を締め付けるような痛み。
頭が割れてしまいそうな痛み。
内から込み上げる、ドス黒い闇。
「グッ……ハァッ……ハァッ……」
家族に会いたい。
そんな願望を胸に秘め、彼は人間の姿に化けてマサラタウンを目指していた。
道中、夜中のトキワの森でのこと。
彼は独り、痛みと戦っていた。
しかし変身は解け、今はポケモンの姿。
こんな事態を予測して人気の少ない夜中の森を通ったのは正解だったのかもしれない。
「飲み込ま……れたら……ダメ、だ……ッ!」
自我を奪う。
眠っていたもう一つの心が、目覚める。
「チッ……クショウ……」
身体が言うことをきかない。
もう一つの心が、勝手に命令を発している。
“スベテヲ破壊セヨ”
「ヤ……メ………ロ……」
手が勝手に動く。
掌に力が集束していき、エネルギー弾を形成する。
「ヤメ……ロ……」
力は止まることを知らず、放たれる。
強大な力を凝縮したその塊の弾道は、木々を破壊し、焼き尽くす。
燃え上がる、森。
泣き喚く、ポケモン達。
気づいた時には、トキワの森は燃え尽き、朝日が顔を出していた。
夜通しで消化活動が行われていた。
今は森全体に警察やら調査員が設置されている。
ミュウツーは、見つかる前に此処を去らねばならなかった。
皮一枚のところで、なんとか人間の心を繋ぎ止めたものの、自分の犯した罪に追いやられるだけだった。
いっそ、あのまま人間の心を失ってしまった方が、楽だった。
もう、何も求めない。
己の行動は、災厄を招くから。
――以上が、トキワの森放火事件の全貌である
* * *
夜通しで消化活動が行われていた。
今は森全体に警察やら調査員が設置されている。
ミュウツーは、見つかる前に此処を去らねばならなかった。
皮一枚のところで、なんとか人間の心を繋ぎ止めたものの、自分の犯した罪に追いやられるだけだった。
いっそ、あのまま人間の心を失ってしまった方が、楽だった。
もう、何も求めない。
己の行動は、災厄を招くから。
――以上が、トキワの森放火事件の全貌である
* * *
親父の捜索を始めてから、数日の時が経った。
しかし有力な情報は一切得られず、時間だけが無駄に費やされていた。
なにも、変わっちゃいない。
「はぁ……そう簡単に見つかるとは思ってなかったけど……」
俺は鉄柵に体重を預け、大きな溜め息を一つ。
「ぴぃか……」
ピカチュウも鉄柵によじ登り、疲れきったように溜め息。
俺達の眼前には、広大な海が広がっていた。
日差しは暖かく、空は青く、雲は白く。
空を飛び回るキャモメやペリッパー等の水鳥ポケモンの泣き声と、静かに揺れる波の音。
俺達は、実に優雅な小休止を過ごしていた。
そこは、クチバシティの海沿いにある、とある公園だった。
しかし有力な情報は一切得られず、時間だけが無駄に費やされていた。
なにも、変わっちゃいない。
「はぁ……そう簡単に見つかるとは思ってなかったけど……」
俺は鉄柵に体重を預け、大きな溜め息を一つ。
「ぴぃか……」
ピカチュウも鉄柵によじ登り、疲れきったように溜め息。
俺達の眼前には、広大な海が広がっていた。
日差しは暖かく、空は青く、雲は白く。
空を飛び回るキャモメやペリッパー等の水鳥ポケモンの泣き声と、静かに揺れる波の音。
俺達は、実に優雅な小休止を過ごしていた。
そこは、クチバシティの海沿いにある、とある公園だった。
ボーーッと、船の汽笛が鳴り響く。
豪華客船サントアンヌ号が出港する合図だ。
「懐かしいな……」
俺は10年前の旅でサントアンヌ号に乗った時のことをふと思い出していた。
まるで、昨日の事かのように、10年前の思い出は鮮明だった。
「そこのお前、ポケモントレーナーと見た」
思い出に浸るのもつかの間、ふいに背後から聞こえたその言葉で、俺の意識は現実に戻される。
振り向いてみると、そこには一人の青年が立っていた。
青年は太陽のような眩しい笑顔。
しかし、俺には何故か青年のその笑顔は作り物にしか見えなかった。
「オレはポケモンマスターを目指す者。好きなのは強くてかっこいいポケモン」
作ったような笑顔のまま、青年は言う。
その笑顔の下に何を秘めているのか。
豪華客船サントアンヌ号が出港する合図だ。
「懐かしいな……」
俺は10年前の旅でサントアンヌ号に乗った時のことをふと思い出していた。
まるで、昨日の事かのように、10年前の思い出は鮮明だった。
「そこのお前、ポケモントレーナーと見た」
思い出に浸るのもつかの間、ふいに背後から聞こえたその言葉で、俺の意識は現実に戻される。
振り向いてみると、そこには一人の青年が立っていた。
青年は太陽のような眩しい笑顔。
しかし、俺には何故か青年のその笑顔は作り物にしか見えなかった。
「オレはポケモンマスターを目指す者。好きなのは強くてかっこいいポケモン」
作ったような笑顔のまま、青年は言う。
その笑顔の下に何を秘めているのか。
「試合形式は一対一。ま、軽い腕試しだと思って、どうかな?」
断る理由はなかった。
「ああ、受けて立つ。いくぞ、ピカチュウ」
俺はピカチュウに視線を向ける。
そこで気付いた。
「ピカァ……!」
ピカチュウの様子が、おかしい。
頬から電流を流し、威嚇の姿勢。
その鋭い眼光は、相手トレーナーへと向けられている。
「どうした、ピカチュウ?」
そんなピカチュウの視線に気付いたトレーナーは、一瞬驚いて、
「なーんだ、どこかで見たと思ったら、オレが捨てたピカチュウじゃないか」
ニッコリと笑ってみせた。
断る理由はなかった。
「ああ、受けて立つ。いくぞ、ピカチュウ」
俺はピカチュウに視線を向ける。
そこで気付いた。
「ピカァ……!」
ピカチュウの様子が、おかしい。
頬から電流を流し、威嚇の姿勢。
その鋭い眼光は、相手トレーナーへと向けられている。
「どうした、ピカチュウ?」
そんなピカチュウの視線に気付いたトレーナーは、一瞬驚いて、
「なーんだ、どこかで見たと思ったら、オレが捨てたピカチュウじゃないか」
ニッコリと笑ってみせた。
「ピカァ!」
ピカチュウが怒りを込めた声を上げる。
捨てた?
なんだ?どういうことだ?
「ははは、どうだい?オレのお下がりの弱っちいポケモンは?」
青年はあくまでも笑顔。
「ふざけるな」
話が掴めてきた。
ピカチュウは俺と出会う前、このトレーナーに捨てられた。
しかも、この男の性格から察するに、随分と心を傷つけられたようだ。
ピカチュウが怒りを込めた声を上げる。
捨てた?
なんだ?どういうことだ?
「ははは、どうだい?オレのお下がりの弱っちいポケモンは?」
青年はあくまでも笑顔。
「ふざけるな」
話が掴めてきた。
ピカチュウは俺と出会う前、このトレーナーに捨てられた。
しかも、この男の性格から察するに、随分と心を傷つけられたようだ。
「それにしても、弱っちいから捨てられたポケモンが、お前みたいな弱そうなトレーナーに拾われるとは……ははは、傑作だね。類は友を呼ぶか」
嘲る青年。あくまで笑顔。
俺は拳を握り締める。
自分を馬鹿にされたのが悔しい訳じゃない。
ピカチュウに対する仕打ちが、何よりも腹立たしい。
殴ってやりたい。
このどうしようもないクズの顔面に一発くれてやりたい。
しかし、抑える。
俺が直接手を出したら、負けだ。
決着は、正々堂々とポケモンバトルでつける。
「御託はいい……」
怒りに震える俺の声。
「さっさとバトルを始めるぞ」
「ははは、そのピカチュウで戦うつもりかい?勝敗は明らかだね」
「ああ、明らかに俺達の勝ちだ」
ピカチュウは弱くなんてない。
こいつの強さは、俺が一番知っている。
「ふふふ、オレの実力も知らないで……後悔させてあげるよ」
「お前の実力なんて知るかよ」
ただ一つ、ハッキリとわかることがある。
「お前みたいな奴は、絶対にポケモンマスターにはなれない」
それどころか――
「俺達を越えることすらできない」
海風に吹かれ、緑生い茂る公園にて、戦いの火蓋は、切って落とされた。
嘲る青年。あくまで笑顔。
俺は拳を握り締める。
自分を馬鹿にされたのが悔しい訳じゃない。
ピカチュウに対する仕打ちが、何よりも腹立たしい。
殴ってやりたい。
このどうしようもないクズの顔面に一発くれてやりたい。
しかし、抑える。
俺が直接手を出したら、負けだ。
決着は、正々堂々とポケモンバトルでつける。
「御託はいい……」
怒りに震える俺の声。
「さっさとバトルを始めるぞ」
「ははは、そのピカチュウで戦うつもりかい?勝敗は明らかだね」
「ああ、明らかに俺達の勝ちだ」
ピカチュウは弱くなんてない。
こいつの強さは、俺が一番知っている。
「ふふふ、オレの実力も知らないで……後悔させてあげるよ」
「お前の実力なんて知るかよ」
ただ一つ、ハッキリとわかることがある。
「お前みたいな奴は、絶対にポケモンマスターにはなれない」
それどころか――
「俺達を越えることすらできない」
海風に吹かれ、緑生い茂る公園にて、戦いの火蓋は、切って落とされた。
「ゆけ、ニドキング!」
相手が繰り出したのはニドキング。
毒と地面の2つのタイプを併せ持ち、屈強な体と鋭い角で獲物をひれ伏す。
「ふふふ、どうだい、僕の自慢のポケモンは?かっこいいだろう」
相性の上では、こちらのピカチュウは圧倒的に不利。
だが――
「いけるな、ピカチュウ?」
「ピッカァ!!」
相性なんて気合いと戦略次第で覆せるんだ。
「さぁ、雑魚を黙らせるんだ、ニドキング!」
「いくぞ、ピカチュウ!」
相手が繰り出したのはニドキング。
毒と地面の2つのタイプを併せ持ち、屈強な体と鋭い角で獲物をひれ伏す。
「ふふふ、どうだい、僕の自慢のポケモンは?かっこいいだろう」
相性の上では、こちらのピカチュウは圧倒的に不利。
だが――
「いけるな、ピカチュウ?」
「ピッカァ!!」
相性なんて気合いと戦略次第で覆せるんだ。
「さぁ、雑魚を黙らせるんだ、ニドキング!」
「いくぞ、ピカチュウ!」
先手必勝。
「ピカチュウ、“でんこうせっか”で接近だ!」
俺は当たり前のように指示を出す。
しかし、重要なことを一つ忘れていた。
ここ数日間、ポケモンバトルは何度かやっているが、ピカチュウは俺の指示を一度も受け入れたことはない。
「ピィィカッチュウウゥ!!」
案の定、今回もピカチュウは俺の指示を無視し、真っ正面から電撃を放った。
放たれた電撃は見事、ニドキングに直撃する。
でもな、ピカチュウ。
それじゃあ駄目なんだよ。
「ピカチュウ、“でんこうせっか”で接近だ!」
俺は当たり前のように指示を出す。
しかし、重要なことを一つ忘れていた。
ここ数日間、ポケモンバトルは何度かやっているが、ピカチュウは俺の指示を一度も受け入れたことはない。
「ピィィカッチュウウゥ!!」
案の定、今回もピカチュウは俺の指示を無視し、真っ正面から電撃を放った。
放たれた電撃は見事、ニドキングに直撃する。
でもな、ピカチュウ。
それじゃあ駄目なんだよ。
「ふふふ、トレーナーの命令を無視して、効果のない電撃とはね……」
電撃が直撃したはずのニドキングはピンピンとしていた。
そう、地面タイプのニドキングに電撃は通用しない。
「ピカチュウ、電撃は駄目だ!スピードで相手を撹乱するんだ!」
「ピィィカッチュウウゥ!!」
それでもなお、ピカチュウは電撃を繰り返す。
「ふん、興覚めだよ……」
その時、初めて青年の笑顔が消えた。
「“とっしん”だ」
トレーナーの指示を受けたニドキングは、真っ向から突進を仕掛ける。
向かって来る電撃を恐れもせず、突き破り、ピカチュウへと――
電撃が直撃したはずのニドキングはピンピンとしていた。
そう、地面タイプのニドキングに電撃は通用しない。
「ピカチュウ、電撃は駄目だ!スピードで相手を撹乱するんだ!」
「ピィィカッチュウウゥ!!」
それでもなお、ピカチュウは電撃を繰り返す。
「ふん、興覚めだよ……」
その時、初めて青年の笑顔が消えた。
「“とっしん”だ」
トレーナーの指示を受けたニドキングは、真っ向から突進を仕掛ける。
向かって来る電撃を恐れもせず、突き破り、ピカチュウへと――
「ピカァァァッ!!」
ピカチュウが悲痛な叫びと共に宙を舞う。
ニドキングの巨体から繰り出される突進を受けたピカチュウの小さな体は、呆気ないほど簡単に弾き飛ぶ。
ピカチュウはしばらく空中に弄ばれた後、その体を地面に叩き付けられた。
「ピカチュウ、大丈夫か!?」
俺は反射的にピカチュウの方へ飛び出そうとした。しかし――
「勝負はまだ終わってないだろう?バトル中にトレーナーが手を出してはいけないよ」
「クッ……」
踏み止まる。
そうだ。
まだ負けた訳じゃない。
「ピ……ッカ……」
ピカチュウはなんとか立ち上がる。
しかし、既に虫の息だった。
「ふふふ、やっぱり弱っちいままだね」
嘲笑う青年。
「さぁ、これでフィニッシュだ!“はかいこうせん”!」
ピカチュウが悲痛な叫びと共に宙を舞う。
ニドキングの巨体から繰り出される突進を受けたピカチュウの小さな体は、呆気ないほど簡単に弾き飛ぶ。
ピカチュウはしばらく空中に弄ばれた後、その体を地面に叩き付けられた。
「ピカチュウ、大丈夫か!?」
俺は反射的にピカチュウの方へ飛び出そうとした。しかし――
「勝負はまだ終わってないだろう?バトル中にトレーナーが手を出してはいけないよ」
「クッ……」
踏み止まる。
そうだ。
まだ負けた訳じゃない。
「ピ……ッカ……」
ピカチュウはなんとか立ち上がる。
しかし、既に虫の息だった。
「ふふふ、やっぱり弱っちいままだね」
嘲笑う青年。
「さぁ、これでフィニッシュだ!“はかいこうせん”!」
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