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    元スレ勇者「用件を聞こうか……」スライム「ア、アンタが勇者……か!」

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    51 = 1 :

    【 PART6 白い竜 】



    ─ ホワイトマウンテン ─



    ビュオオォォォォォ……!

    < 洞窟 >

    ホワイトドラゴン「ようこそ、白龍の地獄へ!」

    勇者「…………」

    ホワイトドラゴン「年中雪と氷に囲まれたこの山を登り、単独でここまで来れるのは」

    ホワイトドラゴン「人間ではお前ぐらいのものだろう!」

    ホワイトドラゴン「なにしろ、人間は馬力がない未熟な生き物だからな!」

    ホワイトドラゴン「ところでなんの用だ?」

    52 :

    サキュバスって上位モンスターってイメージがあるからあっさりやられるのは新鮮だな

    53 = 1 :

    勇者「牙をいくつか譲って欲しい……抜けたものでかまわない」

    ホワイトドラゴン「そんなことならお安い御用だ!」

    ホワイトドラゴン「この間、息子の牙が生え変わったばかりだからな!」

    ホワイトドラゴン「処分に困っていたところだ! 何本でも持っていけ!」

    勇者「……礼だ」ドサッ

    ホワイトドラゴン「おお、これはファイアバッファローの不凍肉か!」

    ホワイトドラゴン「食料が不足していたのだ、ありがたい!」

    ホワイトドラゴン「しかし、礼など不要といっているのに、いつも律儀な奴だ!」

    ホワイトドラゴン「もし、お前がいなければ、今頃私も生きていなかっただろうからな」

    勇者「…………」

    54 = 1 :

    ビュオオォォォォォ……!

    勇者「…………」ザクッ…ザクッ…



    ホワイトドラゴン(あんなもの、いったい何に使おうというのだ……?)

    子ドラゴン「ねえねえお父さん、あれは誰なの?」

    ホワイトドラゴン「あれは“勇者”……」

    ホワイトドラゴン「人間でありながら、竜以上の強さを持つ超一流のプロだ!」

    ホワイトドラゴン「私も奴に命を助けられたことがある」

    ホワイトドラゴン「もっともあれは、私を追い詰めていたブラックドラゴンが」

    ホワイトドラゴン「勇者の標的(ターゲット)だったというだけで──」

    ホワイトドラゴン「奴は私を助けた、とすら思っていないだろうが、な……」

    子ドラゴン「ふぅ~ん」

    55 = 1 :

    ─ 大都市 ─



    < 博物館 >

    館長「これは、たしかにホワイトドラゴンの牙! 間違いありません!」

    館長「登山家さん。こんな貴重なものを、無償で提供してくれるというのですか?」

    勇者「ええ……」

    館長「しかし、これをどこで発見されたのですかな?」

    勇者「イーストマウンテンで登山中に、発見しました……」

    勇者「もしホワイトドラゴンがイーストマウンテンにいるとなると、非常に危険です」

    勇者「注意を呼びかけるべきだと思いますが……」

    館長「そうですな。さっそく各新聞社に連絡を取りましょう!」

    57 = 1 :

    【 PART7 モンスターハンター動く 】



    ─ 狩人のアジト ─



    手下A「こないだの狩りの成果、金に換えてきやしたよ」

    手下A「あの程度の村じゃ、額はあんなもんでしょう」

    手下B「そろそろデカイ獲物が欲しいですね」

    狩人「クックック……渡りに船、とはこのことだな」

    手下A「え?」

    狩人「この新聞記事を読んでみな」バサッ

    58 = 1 :

    狩人「つい先日、イーストマウンテンでホワイトドラゴンの牙が」

    狩人「登山者によって発見された」

    手下A&B「ホワイトドラゴン!?」

    狩人「あそこは秘境ではあるが、モンスターはほとんどいないという認識だった」

    狩人「盲点だったぜ……」

    手下A「どうしやすか?」

    狩人「決まってんだろ?」

    狩人「牙ですら、闇ルートじゃ数十万ゴールドでさばけるんだ」

    狩人「竜族でもっとも希少とされるホワイトドラゴンの死体を丸ごと手に入れたら」

    狩人「いったいいくらになるか想像もつかんぜ!」

    狩人「俺のハンター仲間総出で、ホワイトドラゴン狩りだ!」

    59 = 1 :

    【 PART8 “狩り”の開始 】



    ─ イーストマウンテン ─



    < ふもと >

    ザワザワ……

    狩人「仲間を総動員する狩りなんざ、久々だな」

    狩人「地元民を買収して、他の連中はこの山に近付けないようにしておいた」

    狩人「なんとしても、俺たちでホワイトドラゴンを仕留めるぞ!」

    手下A「へいっ!」

    手下B「はいっ!」

    剣士「もし本当にいるのであれば、久々の手応えのある獲物を斬れそうだ」スラッ…

    60 :

    ドラゴンにも子供がいるんだよな・・・
    ってことはだ

    62 = 1 :

    狩人「しっかし、アンタも物好きだな。わざわざ見学に来てくれるとは」ニィッ

    会長「この間スライムを斬ってから、狩りの楽しさに目覚めましてねえ」

    会長「幻の竜、ホワイトドラゴンが狩られる様を、ぜひこの目で拝見したいのですよ」

    狩人「ここはさほど険しい山じゃねえが、足元には気をつけてくれよ」

    狩人「アンタに死なれたら、保護協会との関係がまた厄介になるからな」

    会長「しかし、もしホワイトドラゴンが見つからなかったら……?」

    狩人「そんときゃ、また適当なモンスター村を襲うさ」

    狩人「イーストマウンテン付近にも二、三個モンスターどもの集落があるって聞く」

    狩人「この人数なら、こないだアンタにやってもらったような下準備もいらねえしな」

    会長「なるほど……転んでもタダでは起きない、と」ニッ

    狩人「──よし、出発だ!」

    ザッザッザッ……



    勇者「…………」スッ…

    63 :

    < 中腹 >

    手下A「……今のところ、それらしい気配はありませんぜ。どうしやす?」

    狩人「この山も広いからな……」

    狩人「しかたねえ、隊を三手に分けよう」

    狩人「一隊はお前が率いろ。30人ほどつけてやる」

    手下A「へいっ!」

    狩人「剣士、アンタの部下の30人は、アンタが率いてくれ」

    狩人「その方がやりやすいだろ?」

    剣士「そうだな」

    狩人「俺は本隊として、残りを率いる」

    狩人「隊同士の連絡は狼煙を使って行う」

    狩人「定期連絡には白を、緊急時は赤の狼煙を上げろ」

    手下A「へいっ!」

    剣士「了解した」

    65 = 63 :

    ザッザッザッ……

    手下A(くそっ……ホワイトドラゴンなんか、どこにもいやがらねえ)

    手下A(もうこの山からは出ていっちまったのか──)

    手下A「──ん!?」ハッ

    手下A(あ、あれは……間違いねえ! ホワイトドラゴンの牙!)

    「向こうにも落ちてる!」 「あっちにも!」 「おお、すげえ!」

    手下A(向こうにずっと続いていやがる……)

    手下B「どうする、狼煙を上げるか?」

    手下A「いや、ドラゴンを発見してからでも遅くはねえ」

    手下A「それに今伝えたら、牙を俺たちだけのモンにできなくなっちまう」

    手下A「牙だって数十万ゴールドはするんだしよ」

    手下B「それもそうだな」ニヤッ

    66 = 63 :

    ザッザッザッ……

    手下A「ふへへ、大猟だな。もうこの牙だけで大金持ちになれるぜ」

    手下A「いつも狩人さんが儲けを多く持ってくから、こんなボーナスもたまにゃいいだろ」

    手下B「そうだな……。バレないように売り払おう」

    ザッザッザッ……



    勇者(かかったのは30人、か……)シュッ

    プツンッ……



    ガラガラガラガラ……!!!

    67 = 63 :

    ガラガラガラ……!!!

    手下A「なんだぁっ!?」

    手下B(崖の上から、岩!?)

    「ひぃぃっ!」 「逃げろぉっ!」 「うわぁぁぁっ!」

    ガラガラガラ…… 

    ドズゥゥゥ……ン……!



    手下A「き、牙は俺のもんだ……俺のもん、だ……」ガクッ

    手下B「なんで、落石が……」ガクッ



    勇者「…………」

    68 :

    流石勇者さんやでえ

    69 :

    ゴルゴwww

    70 = 63 :

    【 PART9 “誤算” 】



    < 落石現場 >

    狩人「定期連絡の狼煙が上がらないと思ったら……こんなことになってやがるとはな」

    剣士「落石か……」

    会長「あわわ……全員、岩の下敷きに……」

    狩人「しかも、こいつらホワイトドラゴンの牙を持ってやがる!」

    狩人「ネコババしようとした罰だ! くたばって当然だ、バカどもが!」ドガッ

    剣士「いや、単なる事故ではないかもしれんぞ」

    狩人「どういうことだ?」

    剣士「これは人為的に作られた、“罠”によるものかもしれんということだ」

    狩人「なんだと!?」

    71 :

    なんだと!?

    72 :

    なんやて!?

    73 :

    .

    74 :

    なんやて工藤!?

    75 :

    なんですと!?

    76 = 63 :

    狩人「ドラゴンがこんな知恵を持ってるってのか!?」

    狩人「自分の体を頼りに戦うモンスターに、道具を使った“罠”の発想はないはず!」

    剣士「いや……敵はドラゴンですらないのかもしれん」

    剣士「もしかすると、ホワイトドラゴンの牙自体が──」

    剣士「我々をこの山に誘い出すための餌だったのかも、な……」

    剣士「獲物がホワイトドラゴンとあらばあなたは仲間全員を駆り出す、と読んで……」

    狩人「いったいどこのだれが……!?」

    狩人「俺らを妬む同業者か、あるいは──」チラッ

    会長「ほ、保護協会ではありませんよ! なにせ私が来ているんですから!」

    剣士「さあな、そこまでは分からん」

    剣士「しかし、安心してくれ。モンスターの狩りはあなたたちに一日の長があるが」

    剣士「人間狩り(マン・ハント)ならば、我々の方が得意だ」

    狩人「フフ……アンタを“ヘッド・ハンティング”したのは正解だったな」

    狩人「どこのどいつかは知らんが、どっちが本当のハンターかを教えてやる!」

    78 :

    これはなかなかおもちろいな

    79 = 63 :

    剣士「狩人さんの手下たちをハメたこの罠は、時限式ではなく手動式だろう」

    剣士「この罠を仕掛けた奴らは、今まさに我々がここからどう動くかを見ているはず」

    剣士「ならば下手に動くのは逆効果」

    剣士「人間の追跡に慣れている我々の部隊だけで、さらに上へと登り」

    剣士「罠の主を仕留めてこよう」

    剣士「気配を隠すため、敵は少数のはず。我々だけで十分やれる」

    狩人「分かった……」

    狩人「だが、できれば生け捕りにしてくれよ!」

    狩人「ホワイトドラゴンの牙を、どうやって手に入れたか聞き出したいからな」

    剣士「了解した。 ──全員、行くぞ」ザッザッザッ…

    会長「大丈夫でしょうか?」

    狩人「心配いらねえよ。アイツらは歴戦の元傭兵隊だからな」

    狩人「久々に人を斬れるかもしれねえから、案外ワクワクしてるんじゃねえか?」ニヤッ

    80 :

    パンツはどうしたらいいんですか?

    82 = 63 :

    ザッザッ…… ピタッ

    隊員A「あそこの木の陰、人の気配がします」

    隊員B「隊長、一斉攻撃で仕留めましょう」

    剣士「まぁ、そう慌てるな」

    剣士「出てこい」

    剣士「あの落石、鮮やかな罠ではあったが──」

    剣士「こうもあっさり発見されるとは、その後がお粗末だったな」

    勇者「…………」ザッ…

    剣士「潔いな。仲間はどこにいる?」

    勇者「俺一人だ……」

    剣士「なに……?」

    84 = 63 :

    剣士(たった一人で、これほど大がかりなことをやってのけたというのか……)

    剣士「そうか……お前はプロ、だな? それも凄腕の……」

    剣士「我々違法なハンターの撲滅を、国か、それに準ずる組織に依頼されたか」

    剣士「ずいぶんと思いきった手を打ったものだ」

    勇者「…………」

    剣士「だが、誤算だったな」

    剣士「今、お前を囲んでいる全員が元傭兵だ。対テロリストもお手のものだ」

    剣士「どこまで我々に抵抗できるか、楽しませてもらうぞ」

    勇者「…………」スッ…

    85 = 63 :

    ギュアッ!

    剣士「!?」

    ザンッ! ザシュッ! ズバッ! シュバッ! ドスッ!

    シュッ! ザシュゥッ! ビシュッ! ザクッ! ビッ!

    「がはっ……!」 「ぐええっ……」 「は、はやっ……!」

    ドザザァッ……!

    剣士(なんだと……!? 今の一瞬で10人以上を……!?)

    勇者「自分の身の安全が保証されているわけでもない限り……」ザッザッ…

    勇者「狩りで“楽しもう”などとは考えないことだ……」ザッザッ…

    剣士「お、おのれ……!」

    剣士「ひるむな! 残り全員でかかれぇっ!」

    ワアァァァァァ……!

    ザンッ…… ザシュッ…… ドシュッ……

    87 = 68 :

    強すぎワロタ

    88 = 63 :

    ザンッ……!

    隊員A「ぐはぁっ!」ドザァッ

    勇者「…………」チャキッ

    剣士(我が傭兵隊が……全滅……!)

    剣士「お前は……お前はまさか!」

    剣士「傭兵時代……聞いたことがある……!」

    剣士「最悪の人食い竜だったブラックドラゴンを、たった一人で退治した男の話を……」

    剣士「その男は帝国軍基地に侵入し、司令官を暗殺したとも……」

    剣士「西の王国に出現した魔王軍の敗退にも、関与が疑われていると聞く……」

    剣士「超A級の……プロフェッショナル!」

    剣士「お前が……“勇者”か!」

    勇者「…………」

    剣士「あっさり我々に追跡されたのも、我々を誘い出すため、か」

    剣士「まさか、ドラゴンなどより恐ろしい怪物が、この山に潜んでいたとは……」チャキッ

    剣士「どうやら……誤算は我々の方だったようだな……」ジリ…

    89 = 72 :

    圧倒的強さ

    90 = 63 :

    剣士「しかし、我々とて精鋭……よもやここまで実力差があろうとは……!」

    勇者「いかなる名剣とて、研がねば切れ味は落ちるものだ……」

    剣士「!」ハッ

    剣士「…………」ジリ…

    勇者「…………」スッ…

    剣士「でやぁぁぁっ!」シェッ

    勇者「…………」シュバッ

    ザシィッ!

    ドサァッ……!

    剣士(そっ、そうか……! 無抵抗なモンスターばかりを斬っているうち……)

    剣士(いつしか……我々の“切れ味”も落ちて、いたのか……)

    剣士(違法ハンターなどに……身を落とした報い、か……)ガクッ…

    勇者「…………」

    92 :

    さすがやな

    93 = 63 :

    【 PART10 初めて体験する“狩り” 】



    狩人「狼煙が一向に上がらない……」

    狩人「いったいどうしたってんだ……」

    会長「まさか、全員やられたのでは……」

    狩人「バカな! アイツらは全員が、名うての剣の使い手なんだぞ!」

    会長「し、しかし……他に考えられないじゃありませんか!」

    会長「どうするんです!? 早く何とかして下さいよ!」

    狩人「ぐっ……!」

    ドヨドヨ……

    狩人(ド素人が……好き勝手ほざきやがって!)

    狩人(保護協会のトップでもなきゃ、この場で殺して埋めてるところだ!)

    94 :

    なんかうまいこと言って死んでいったな

    97 = 63 :

    ヒュルルル…… グサッ!

    狩人(剣が飛んできた!?)

    狩人(攻撃か!? いや──)

    狩人「こ、この剣は──剣士の……!」

    「やっぱり剣士さんはやられたんだ!」 「ひぃぃっ!」 「ウソだろォ!?」

    ワァァ……! ヒィィ……! ウワァァ……!

    狩人「お、落ちつけ! ──みんな、落ちつけっ!」

    ガササッ……

    狩人「──あ、あっちだっ!」

    98 :

    勇者なのに暗殺とかやってんのか

    99 :

    フリーランスの傭兵なんじゃね

    100 = 63 :

    狩人「お前ら、矢を打ちまくれぇっ!」

    「あの茂みだっ!」 「死ねぇぇっ!」 「うわぁぁぁっ!」

    ビュバッ! ビュババババッ! ビュバッ!

    シ~ン……

    ハァ…… ハァ……

    狩人(だ、誰もいない……)ゴクッ…

    狩人(もし、さっきの剣や今の音に──)

    狩人(俺たちに“バック・フィーバー”を起こさせ)

    狩人(矢を使い果たさせる狙いがあったとすれば──)



    ※バック・フィーバー
     …狩りで極度の緊張状態に陥ったハンターが、思いもよらぬ行動に出てしまうこと。


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