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元スレ紳士「私はもう……小便小僧じゃないんだ……」
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二人が目を覚ますと──
少年「うぅ……」ムクッ
少年「こ、これは!?」
少女「なによこれ!? 村が火の海じゃない!」
ゴォォォォォ……! ボワァァァァァ……!
炎はすでに村の半分以上を包み込んでいた。
村人たちも消火に励んでいるが、炎は勢いを増すばかり。
放火魔「ハッハッハァ~、いいとこで目覚めたねェ! ベストタイミング!」
放火魔「いい眺めだろう!?」
放火魔「これじゃまだミディアムってとこだけど、ウェルダンも時間の問題だァ~!」
少年「ひ、ひどい……これじゃ村のみんなが……!」
少女「な、なんてことすんのよ!」
少年「うぅ……」ムクッ
少年「こ、これは!?」
少女「なによこれ!? 村が火の海じゃない!」
ゴォォォォォ……! ボワァァァァァ……!
炎はすでに村の半分以上を包み込んでいた。
村人たちも消火に励んでいるが、炎は勢いを増すばかり。
放火魔「ハッハッハァ~、いいとこで目覚めたねェ! ベストタイミング!」
放火魔「いい眺めだろう!?」
放火魔「これじゃまだミディアムってとこだけど、ウェルダンも時間の問題だァ~!」
少年「ひ、ひどい……これじゃ村のみんなが……!」
少女「な、なんてことすんのよ!」
放火魔「安心しなよ、キミたちもすぐにウェルダンにしてやるからさァ~」
放火魔「未来ある子供がド派手に焼け死ぬシーンってのは」
放火魔「間近でじっくり見物する方が格別だからねェ~」
放火魔「ほらァ、オリーブオイル」ドボドボ…
二人に大量のオリーブオイルが浴びせかけられる。
少女「いっ、いやぁぁぁっ! だれか、だれか助けてぇっ!」
少年「だいじょうぶだよ、ボクが、ボクが……っ!」
放火魔「いくら泣き叫んでも無駄だっつうの」
放火魔「村のヤツらも火をどうにかするので精一杯さ」
放火魔「ま、少し水をかけたぐらいじゃボクの火は消えない……どうにもできんがね!」
少女「うわぁぁ~~~~~んっ!!!」
少年「ボクがかならずきみをまもる……っ!」ガシッ
放火魔「仲良くファイヤーしな!」カチカチッ
放火魔「未来ある子供がド派手に焼け死ぬシーンってのは」
放火魔「間近でじっくり見物する方が格別だからねェ~」
放火魔「ほらァ、オリーブオイル」ドボドボ…
二人に大量のオリーブオイルが浴びせかけられる。
少女「いっ、いやぁぁぁっ! だれか、だれか助けてぇっ!」
少年「だいじょうぶだよ、ボクが、ボクが……っ!」
放火魔「いくら泣き叫んでも無駄だっつうの」
放火魔「村のヤツらも火をどうにかするので精一杯さ」
放火魔「ま、少し水をかけたぐらいじゃボクの火は消えない……どうにもできんがね!」
少女「うわぁぁ~~~~~んっ!!!」
少年「ボクがかならずきみをまもる……っ!」ガシッ
放火魔「仲良くファイヤーしな!」カチカチッ
ジョバァァァァァ……! バシャァッ!
どこからともなく飛んできた液体が、放火魔の火打ち石と水筒に命中した。
放火魔「!?」
放火魔「なんだこの液体は……小便!? ま、まさかっ!」
放火魔「“小便小僧”かッ!!!」
小便小僧「もうとっくに小僧なんて年齢じゃないがな……」ザッ
小便小僧「今日こそ捕まえてやるぞ、放火魔!」
放火魔「くそォ~いつもいつもボクのジャマしやがって……!」
放火魔「まさか、こんな田舎の村にまでやってくるなんてェ……!」ギリッ…
放火魔「オマエさえいなければ、ボクが誇る全焼市町村数記録や焼死体数記録は」
放火魔「10……いや100倍はちがっていただろう!」
放火魔「この小便まみれの火打ち石やオイルじゃ、当分放火は無理だ……」
放火魔「オマエは、いつかこのボクが必ず燃やしてやるからなァ~!」タタタッ
小便小僧「待てっ!」ジョバババッ
小便小僧「くそっ……!」
どこからともなく飛んできた液体が、放火魔の火打ち石と水筒に命中した。
放火魔「!?」
放火魔「なんだこの液体は……小便!? ま、まさかっ!」
放火魔「“小便小僧”かッ!!!」
小便小僧「もうとっくに小僧なんて年齢じゃないがな……」ザッ
小便小僧「今日こそ捕まえてやるぞ、放火魔!」
放火魔「くそォ~いつもいつもボクのジャマしやがって……!」
放火魔「まさか、こんな田舎の村にまでやってくるなんてェ……!」ギリッ…
放火魔「オマエさえいなければ、ボクが誇る全焼市町村数記録や焼死体数記録は」
放火魔「10……いや100倍はちがっていただろう!」
放火魔「この小便まみれの火打ち石やオイルじゃ、当分放火は無理だ……」
放火魔「オマエは、いつかこのボクが必ず燃やしてやるからなァ~!」タタタッ
小便小僧「待てっ!」ジョバババッ
小便小僧「くそっ……!」
少年少女の前に放火魔が現れ
放火魔の前にチンコ丸出しの変質者が現れたのか、シュールだな
放火魔の前にチンコ丸出しの変質者が現れたのか、シュールだな
小便小僧「君たち、大丈夫か!?」
少女「えぐっ……えぐっ……」
少年「あ、ありがとう、ございます……」
小便小僧「強い子たちだ。だったら、もう少しだけ我慢できるね?」
小便小僧「君たちはここから絶対動いちゃダメだ」
小便小僧「今すぐ消防団とともに、村の火事を消し止める!」
小便小僧「大丈夫、絶対に犠牲者は出さない!」タタタッ
少女「ううっ……」グスッ
少年「もう、だいじょうぶだよ」ガシッ
少女「うん……」
少女「えぐっ……えぐっ……」
少年「あ、ありがとう、ございます……」
小便小僧「強い子たちだ。だったら、もう少しだけ我慢できるね?」
小便小僧「君たちはここから絶対動いちゃダメだ」
小便小僧「今すぐ消防団とともに、村の火事を消し止める!」
小便小僧「大丈夫、絶対に犠牲者は出さない!」タタタッ
少女「ううっ……」グスッ
少年「もう、だいじょうぶだよ」ガシッ
少女「うん……」
そして──
小便小僧(消防団の力でどうにか村は全焼を免れ、犠牲者も出なかったが……)
小便小僧(放火魔は取り逃がし、畑や家はだいぶ焼け落ちてしまった……)
女後輩「先輩、お疲れ様です!」ビシッ
女後輩「さすがです! あの神出鬼没の放火魔が次に狙う場所を的確に予測して」
女後輩「住民を一人も死なせることがなかったのですから!」
小便小僧「……ありがとう」
団員A「なぁ、アイツまた放火魔取り逃がしたってよ。なにが“小便小僧”だ」ヒソヒソ…
団員B「やっぱりあのウワサは本当なんじゃねえか?」ヒソヒソ…
団員A「ああ、十分考えられる」ヒソヒソ…
団員B「だいたいこうもみごとに放火魔の狙いを当てられるって時点でさ……」ヒソヒソ…
小便小僧(消防団の力でどうにか村は全焼を免れ、犠牲者も出なかったが……)
小便小僧(放火魔は取り逃がし、畑や家はだいぶ焼け落ちてしまった……)
女後輩「先輩、お疲れ様です!」ビシッ
女後輩「さすがです! あの神出鬼没の放火魔が次に狙う場所を的確に予測して」
女後輩「住民を一人も死なせることがなかったのですから!」
小便小僧「……ありがとう」
団員A「なぁ、アイツまた放火魔取り逃がしたってよ。なにが“小便小僧”だ」ヒソヒソ…
団員B「やっぱりあのウワサは本当なんじゃねえか?」ヒソヒソ…
団員A「ああ、十分考えられる」ヒソヒソ…
団員B「だいたいこうもみごとに放火魔の狙いを当てられるって時点でさ……」ヒソヒソ…
ザワザワ…… ドヨドヨ……
村人(命こそ助かったが……家や畑がこれでは……)
村人(王国や消防団から多少は支援金が出るらしいが……)
村人(とても今までのように、子供たちを養っていく余裕はない……)
村人(どうすれば……)
少女&少年「…………」
少女「ねえ、おじさん!」
少女「あたしたち、村からでていくわ!」
村人「え!?」
少年「いつまでもお世話になるわけにはいきませんし……」
少年「ボクたち、そろそろ自立したいと思ってたんです」
村人「二人とも……」
村人(命こそ助かったが……家や畑がこれでは……)
村人(王国や消防団から多少は支援金が出るらしいが……)
村人(とても今までのように、子供たちを養っていく余裕はない……)
村人(どうすれば……)
少女&少年「…………」
少女「ねえ、おじさん!」
少女「あたしたち、村からでていくわ!」
村人「え!?」
少年「いつまでもお世話になるわけにはいきませんし……」
少年「ボクたち、そろそろ自立したいと思ってたんです」
村人「二人とも……」
村人「すまんっ……すまんっ……!」ポロポロ…
少女「な、なかないでよ、だいじょうぶだって!」
少年「そうです。都会にいけば、きっとしごとだってありますし」
村人「俺たちが情けないばかりに……!」グスッ
少女「だから全然だいじょうぶだって! ねえ?」
少年「うん!」
村人「すまんっ……!」ポロポロ…
少女「な、なかないでよ、だいじょうぶだって!」
少年「そうです。都会にいけば、きっとしごとだってありますし」
村人「俺たちが情けないばかりに……!」グスッ
少女「だから全然だいじょうぶだって! ねえ?」
少年「うん!」
村人「すまんっ……!」ポロポロ…
<山道>
少女「──と村を出たはいいけど」
少女「ねえ、これからどうしよっか」
少女「あたしら二人きりで、生きていけるわけないよねえ」ポロッ…
少女「ううっ……うっ……このまま死んじゃうのかな、あたしたち……」グスッ
少年「──そんなことないよ!」ガシッ
そばに落ちていた、大きな石を持ち上げる少年。
少年「お、おもっ……」ヨロッ…
少女「ちょ、ちょっと! 石なんか持ち上げてなにやってんの!?」
少年「ボク、つよくなって……きみをまもるよ!」グッグッ…
少年「ふたりでがんばって生きぬいてさ……」グッグッ…
少年「いつか、この村やボクらを助けてくれたあのおじさんにお礼をいおう!」グッグッ…
少女「…………」グスッ
少女「──と村を出たはいいけど」
少女「ねえ、これからどうしよっか」
少女「あたしら二人きりで、生きていけるわけないよねえ」ポロッ…
少女「ううっ……うっ……このまま死んじゃうのかな、あたしたち……」グスッ
少年「──そんなことないよ!」ガシッ
そばに落ちていた、大きな石を持ち上げる少年。
少年「お、おもっ……」ヨロッ…
少女「ちょ、ちょっと! 石なんか持ち上げてなにやってんの!?」
少年「ボク、つよくなって……きみをまもるよ!」グッグッ…
少年「ふたりでがんばって生きぬいてさ……」グッグッ…
少年「いつか、この村やボクらを助けてくれたあのおじさんにお礼をいおう!」グッグッ…
少女「…………」グスッ
少女「ふん、アンタじゃいくら強くなっても、気が弱いからダメよ!」
少女「アンタ一人に任せてらんないわ!」
少女「だったら、あたしはマッチ売りになるわ!」
少年「マッチ売り……? ボクたちは火事のせいでこんな目にあったのに……?」
少女「だからこそ、よ」
少女「火事のこわさやくやしさを、ぜったいわすれないようにってね!」
少女「あぶない時は、マッチを投げてたたかうの」ヒュッヒュッ
少女「放火魔だって逃げちゃったけど、いつかあたしが捕まえてみせるんだから!」
少年「ハ、ハハ……すごいなぁ」
少女「さあ、いくわよ!」タタタッ
少年「ま、まってよぉ!」タタタッ
………
……
…
少女「アンタ一人に任せてらんないわ!」
少女「だったら、あたしはマッチ売りになるわ!」
少年「マッチ売り……? ボクたちは火事のせいでこんな目にあったのに……?」
少女「だからこそ、よ」
少女「火事のこわさやくやしさを、ぜったいわすれないようにってね!」
少女「あぶない時は、マッチを投げてたたかうの」ヒュッヒュッ
少女「放火魔だって逃げちゃったけど、いつかあたしが捕まえてみせるんだから!」
少年「ハ、ハハ……すごいなぁ」
少女「さあ、いくわよ!」タタタッ
少年「ま、まってよぉ!」タタタッ
………
……
…
<小屋>
少女「ま、そんな感じで色々あって今に至るワケ」
マッチョ「昔のことを、こうやって人に話すのははじめてです」
紳士(私もこの子らの話を聞きながら、まるで昨日のことのように思い出した)
紳士(あの時の子供たちは厳しい現実から逃げず、二人でたくましく生きてきたんだな)
紳士(私は逆に、ちょうどあれからすぐ、消防団から──)
紳士(そして、全てから逃げた……)
紳士(仲間からも、放火魔からも、“小便小僧”だった自分自身からも……)
少女「ねえ、おじさん……」
マッチョ「あなたはあの時の小便小僧さん、ですよね?」
少女「そうよ、絶対そうだわ! ずっとお礼をいいたかったの!」
紳士「…………」ズキン…
紳士「いや……わ、私は……」
少女「ま、そんな感じで色々あって今に至るワケ」
マッチョ「昔のことを、こうやって人に話すのははじめてです」
紳士(私もこの子らの話を聞きながら、まるで昨日のことのように思い出した)
紳士(あの時の子供たちは厳しい現実から逃げず、二人でたくましく生きてきたんだな)
紳士(私は逆に、ちょうどあれからすぐ、消防団から──)
紳士(そして、全てから逃げた……)
紳士(仲間からも、放火魔からも、“小便小僧”だった自分自身からも……)
少女「ねえ、おじさん……」
マッチョ「あなたはあの時の小便小僧さん、ですよね?」
少女「そうよ、絶対そうだわ! ずっとお礼をいいたかったの!」
紳士「…………」ズキン…
紳士「いや……わ、私は……」
ワアァァァ……! ワアァァァ……!
紳士「!?」
少女「なに!?」
マッチョ「外でなにかあったのかな……」
「火事だっ!」 「燃えてるぞ!」 「消し止めろーっ!」
少女「火事だって!」ダッ
マッチョ「行ってみよう!」ダッ
紳士「火事……か」ダッ
紳士「!?」
少女「なに!?」
マッチョ「外でなにかあったのかな……」
「火事だっ!」 「燃えてるぞ!」 「消し止めろーっ!」
少女「火事だって!」ダッ
マッチョ「行ってみよう!」ダッ
紳士「火事……か」ダッ
少女「あ、町民さん!」
町民「やあ、少女ちゃんにマッチョ君」
マッチョ「みんな、火事だって大騒ぎしてましたけど……」
町民「なあに、大したことはないよ。ただのボヤだよ、ボヤ」
町民「ゴミ捨て場にあったゴミがちょっと燃えただけさ」
町民「おおかた、ちゃんと火の消えてなかったタバコが燃えたんじゃないかな?」
町民「最近ボヤが多いけど、火の始末はしっかりしなくっちゃな!」
紳士「…………」
紳士(最近ボヤが多い……)
紳士(これは……ヤツの……放火魔の手口だ)
紳士(何度かボヤ騒ぎを起こし、住民の行動パターンや町の構造を探り──)
紳士(もっとも手薄と思われるところから、一気に町全体を焼き尽くす!)
紳士(私がいなくなったことで、活動を再開したということなのか……?)
紳士(いや……偶然のボヤにちがいない。きっと……そうだ。そうに決まってる)
町民「やあ、少女ちゃんにマッチョ君」
マッチョ「みんな、火事だって大騒ぎしてましたけど……」
町民「なあに、大したことはないよ。ただのボヤだよ、ボヤ」
町民「ゴミ捨て場にあったゴミがちょっと燃えただけさ」
町民「おおかた、ちゃんと火の消えてなかったタバコが燃えたんじゃないかな?」
町民「最近ボヤが多いけど、火の始末はしっかりしなくっちゃな!」
紳士「…………」
紳士(最近ボヤが多い……)
紳士(これは……ヤツの……放火魔の手口だ)
紳士(何度かボヤ騒ぎを起こし、住民の行動パターンや町の構造を探り──)
紳士(もっとも手薄と思われるところから、一気に町全体を焼き尽くす!)
紳士(私がいなくなったことで、活動を再開したということなのか……?)
紳士(いや……偶然のボヤにちがいない。きっと……そうだ。そうに決まってる)
<小屋>
少女「……ねえマッチョ、どう思う?」
マッチョ「どうって?」
少女「なんか、あの時とそっくりじゃない? 状況が」
マッチョ「う~ん……たしかに……」
少女「結局うやむやになっちゃったけど、あたし絶対おじさんは小便小僧だと思うの」
少女「明日朝一番で、もう一度二人で相談してみない?」
マッチョ「うん、そうだね」
少女「……ねえマッチョ、どう思う?」
マッチョ「どうって?」
少女「なんか、あの時とそっくりじゃない? 状況が」
マッチョ「う~ん……たしかに……」
少女「結局うやむやになっちゃったけど、あたし絶対おじさんは小便小僧だと思うの」
少女「明日朝一番で、もう一度二人で相談してみない?」
マッチョ「うん、そうだね」
翌朝──
<紳士の家>
紳士「やあ、おはよう。どうしたんだい、こんな朝早く」
少女「ねえ、おじさん……」
少女「あたしたち、この町で起きてるボヤは放火魔の仕業だと思うの」
マッチョ「きっと町の近くにいると思うんですけど」
マッチョ「ボクたちが町の人に防火を呼びかけたところで」
マッチョ「きっと放火魔にとってはなんの意味もないでしょうし……」
少女「だから、おじさんの力を貸して欲しいの!」
少女「いいえ、小便小僧さん!」
紳士「……悪いが、私では力になれないよ。まして放火魔に立ち向かうなんて……」
少女&マッチョ「!」
少女「ど、どうして!?」
<紳士の家>
紳士「やあ、おはよう。どうしたんだい、こんな朝早く」
少女「ねえ、おじさん……」
少女「あたしたち、この町で起きてるボヤは放火魔の仕業だと思うの」
マッチョ「きっと町の近くにいると思うんですけど」
マッチョ「ボクたちが町の人に防火を呼びかけたところで」
マッチョ「きっと放火魔にとってはなんの意味もないでしょうし……」
少女「だから、おじさんの力を貸して欲しいの!」
少女「いいえ、小便小僧さん!」
紳士「……悪いが、私では力になれないよ。まして放火魔に立ち向かうなんて……」
少女&マッチョ「!」
少女「ど、どうして!?」
紳士「一連のボヤはただの偶然だよ」
紳士「何かあったとしても、兵士や消防団が駆けつけて何とかしてくれるさ」
マッチョ「紳士さん……」
少女「おじさん、なんでそんなこというの!?」
少女「おじさんは……おじさんは小便小僧なんでしょ!?」
紳士「…………」ズキッ…
紳士「私は……」
紳士「私はもう……小便小僧じゃないんだ……」
少女「!」
マッチョ「…………」
少女「ふんっ、もういいわよ! 行きましょ、マッチョ!」
少女「おじさんのいくじなしっ!」ダッ
マッチョ「……あ、さようなら紳士さん」ダッ
バタン……
紳士「すまない……」
紳士「何かあったとしても、兵士や消防団が駆けつけて何とかしてくれるさ」
マッチョ「紳士さん……」
少女「おじさん、なんでそんなこというの!?」
少女「おじさんは……おじさんは小便小僧なんでしょ!?」
紳士「…………」ズキッ…
紳士「私は……」
紳士「私はもう……小便小僧じゃないんだ……」
少女「!」
マッチョ「…………」
少女「ふんっ、もういいわよ! 行きましょ、マッチョ!」
少女「おじさんのいくじなしっ!」ダッ
マッチョ「……あ、さようなら紳士さん」ダッ
バタン……
紳士「すまない……」
マッチョ「ダメだよ! 事情も分からないのに、いくじなしだなんて……」
少女「事情がどうあれ、町が危ないかもって時に動かないのはいくじなしよ!」
マッチョ「でもほら、まだ放火魔の仕業って決まったワケじゃないし……」
少女「い~え、間違いないわ。絶対そうよ!」
マッチョ「でもどうするの? ボクたちだけで探してみる?」
少女「う~ん……」
少女「そうだわ!」
少女「おじさんが取材に行ったっていう探偵さんに頼むのはどう?」
少女「探偵なら、人探しはお手のものでしょ!」
マッチョ「なるほど、いいかもしれないね!」
少女「そうと決まれば急ぐわよ、マッチョ!」ダッ
マッチョ「うん!」ダッ
少女「事情がどうあれ、町が危ないかもって時に動かないのはいくじなしよ!」
マッチョ「でもほら、まだ放火魔の仕業って決まったワケじゃないし……」
少女「い~え、間違いないわ。絶対そうよ!」
マッチョ「でもどうするの? ボクたちだけで探してみる?」
少女「う~ん……」
少女「そうだわ!」
少女「おじさんが取材に行ったっていう探偵さんに頼むのはどう?」
少女「探偵なら、人探しはお手のものでしょ!」
マッチョ「なるほど、いいかもしれないね!」
少女「そうと決まれば急ぐわよ、マッチョ!」ダッ
マッチョ「うん!」ダッ
隣町にたどり着いた少女とマッチョ。
<探偵事務所>
少女「こんにちは!」
マッチョ「こんにちは」
女探偵「あら、いらっしゃい」
女探偵「あなたたちはマッチョ売りの少女、ね? ウワサはこの町にも届いてるわよ」
女探偵「この私になにか用?」
少女「実はね……放火魔を探して欲しいの!」
女探偵「!」ピクッ
女探偵「放火魔ですって!?」
<探偵事務所>
少女「こんにちは!」
マッチョ「こんにちは」
女探偵「あら、いらっしゃい」
女探偵「あなたたちはマッチョ売りの少女、ね? ウワサはこの町にも届いてるわよ」
女探偵「この私になにか用?」
少女「実はね……放火魔を探して欲しいの!」
女探偵「!」ピクッ
女探偵「放火魔ですって!?」
女探偵「──なるほど。たしかに放火魔が活動を再開したという情報は聞いてるし」
女探偵「ヤツは大火事を起こす前に、ボヤ騒ぎを何度か起こすクセがあるわ」
女探偵「分かったわ、協力しましょう」
少女「やった~!」
マッチョ「ありがとうございます!」
少女「小便小僧さんも協力してくれればいいのに、もう」
女探偵「あなたたちは先輩──小便小僧を知っているの!?」
マッチョ「はい、最近ボクたちの町に引っ越してきたそうです」
女探偵「そうだったの……」
少女「でもいくじなしよ!」
少女「あたしたちがいくら頼んでも“私はもう小便小僧じゃない”っていうしさ」
女探偵「いいえ……先輩は悪くないわ。先輩を小便小僧でいられなくさせたのは」
女探偵「私たちなの……」
少女&マッチョ「え?」
女探偵「ヤツは大火事を起こす前に、ボヤ騒ぎを何度か起こすクセがあるわ」
女探偵「分かったわ、協力しましょう」
少女「やった~!」
マッチョ「ありがとうございます!」
少女「小便小僧さんも協力してくれればいいのに、もう」
女探偵「あなたたちは先輩──小便小僧を知っているの!?」
マッチョ「はい、最近ボクたちの町に引っ越してきたそうです」
女探偵「そうだったの……」
少女「でもいくじなしよ!」
少女「あたしたちがいくら頼んでも“私はもう小便小僧じゃない”っていうしさ」
女探偵「いいえ……先輩は悪くないわ。先輩を小便小僧でいられなくさせたのは」
女探偵「私たちなの……」
少女&マッチョ「え?」
女探偵「先輩が小便小僧と呼ばれるようになったのは、幼い頃の武勇伝に由来するわ」
女探偵「なんでも五歳の時、敵国が故郷の町に仕掛けた爆弾の導火線に小便をかけて」
女探偵「火を消して、町を救ったらしいわ」
少女「たった五歳で!?」
マッチョ「すごい勇気だ……」
女探偵「その後も小便で火薬庫の火事を消し止めたり」
女探偵「全焼まちがいなしの山火事を鎮火したりと大活躍したそうよ」
女探偵「そんな先輩が、消防団に入るのは当然のなりゆきだったといえるわ」
女探偵「先輩の力は消防団に入ってから、よりいっそう輝きを増した」
女探偵「先輩は消火能力はもちろん、火や放火犯人の動きを読むことにも長けてて」
女探偵「仲間を指揮して八面六臂の活躍をしたわ」
女探偵「直接的、間接的に救った命はおそらく万は下らないでしょうね」
女探偵「あの悪名高い放火魔でさえ、先輩には何度も放火を阻止されてたもの」
女探偵「だけど──」
女探偵「なんでも五歳の時、敵国が故郷の町に仕掛けた爆弾の導火線に小便をかけて」
女探偵「火を消して、町を救ったらしいわ」
少女「たった五歳で!?」
マッチョ「すごい勇気だ……」
女探偵「その後も小便で火薬庫の火事を消し止めたり」
女探偵「全焼まちがいなしの山火事を鎮火したりと大活躍したそうよ」
女探偵「そんな先輩が、消防団に入るのは当然のなりゆきだったといえるわ」
女探偵「先輩の力は消防団に入ってから、よりいっそう輝きを増した」
女探偵「先輩は消火能力はもちろん、火や放火犯人の動きを読むことにも長けてて」
女探偵「仲間を指揮して八面六臂の活躍をしたわ」
女探偵「直接的、間接的に救った命はおそらく万は下らないでしょうね」
女探偵「あの悪名高い放火魔でさえ、先輩には何度も放火を阻止されてたもの」
女探偵「だけど──」
女探偵「ある日、こんなウワサが流れ始めたの」
女探偵「先輩の活躍はマッチポンプなんじゃないか、とね」
マッチョ「マッチポンプ?」
少女「アンタ、知らないの? マッチの形をしたポンプのことよ!」
女探偵(全然ちがうけど、とりあえず説明を先にしようかしら)
女探偵「ようは、先輩は自分の活躍を演出するため」
女探偵「自分で火をつけて、自分で消してるんじゃないかといわれ始めたのよ」
女探偵「同じ頃、放火魔とグルなんじゃないか、なんてウワサも流れ出したわ」
少女「ひっど~い! どうして!?」
女探偵「先輩の消火は、消防団の仲間から見てもあまりにも的確だったし」
女探偵「被害を食い止めてはいたけど、あの放火魔を何度も取り逃がしてたからね……」
女探偵「とはいえなんの証拠もない、ガセ同然のウワサだった」
女探偵「だけれどもウワサが広がるにつれ」
女探偵「いつの間にか、みんなの中でそれは“事実”となっていったの」
女探偵「愚かなことに、あの当時は私さえそれを信じてしまった」
女探偵「先輩の活躍はマッチポンプなんじゃないか、とね」
マッチョ「マッチポンプ?」
少女「アンタ、知らないの? マッチの形をしたポンプのことよ!」
女探偵(全然ちがうけど、とりあえず説明を先にしようかしら)
女探偵「ようは、先輩は自分の活躍を演出するため」
女探偵「自分で火をつけて、自分で消してるんじゃないかといわれ始めたのよ」
女探偵「同じ頃、放火魔とグルなんじゃないか、なんてウワサも流れ出したわ」
少女「ひっど~い! どうして!?」
女探偵「先輩の消火は、消防団の仲間から見てもあまりにも的確だったし」
女探偵「被害を食い止めてはいたけど、あの放火魔を何度も取り逃がしてたからね……」
女探偵「とはいえなんの証拠もない、ガセ同然のウワサだった」
女探偵「だけれどもウワサが広がるにつれ」
女探偵「いつの間にか、みんなの中でそれは“事実”となっていったの」
女探偵「愚かなことに、あの当時は私さえそれを信じてしまった」
女探偵「それから先輩は……毎日のようにひどい嫌がらせを受けた」
女探偵「中傷の手紙が山のように送りつけられ、町を歩けば石を投げつけられ」
女探偵「嫌がらせがエスカレートして、自宅に火をつけられたこともあったわ」
女探偵「同時期に、先輩には敵わないと悟ったのか、放火魔が活動しなくなったのも」
女探偵「ウワサの真実味をますます高める結果となってしまった」
女探偵「そして先輩はとうとう……消防団を辞め、どこかに消えてしまった」
マッチョ「そんな……」
女探偵「その後……先輩がいなくなった消防団は烏合の衆と化したわ」
女探偵「仕事に厳しかった先輩がいなくなってからは、ろくに訓練もしなくなり」
女探偵「小さな火事にすらまともな対処ができなくなってしまった」
女探偵「私は消防団に見切りをつけ、独自にあのウワサの出所を調査したわ」
女探偵「結果、先輩の活躍に嫉妬していた消防団内の一派が出所だったと分かったの」
女探偵「私はその事実を公表し、先輩の名誉を回復した」
女探偵「そして失踪した先輩を探すため、消防団を辞めて探偵になったの」
女探偵「中傷の手紙が山のように送りつけられ、町を歩けば石を投げつけられ」
女探偵「嫌がらせがエスカレートして、自宅に火をつけられたこともあったわ」
女探偵「同時期に、先輩には敵わないと悟ったのか、放火魔が活動しなくなったのも」
女探偵「ウワサの真実味をますます高める結果となってしまった」
女探偵「そして先輩はとうとう……消防団を辞め、どこかに消えてしまった」
マッチョ「そんな……」
女探偵「その後……先輩がいなくなった消防団は烏合の衆と化したわ」
女探偵「仕事に厳しかった先輩がいなくなってからは、ろくに訓練もしなくなり」
女探偵「小さな火事にすらまともな対処ができなくなってしまった」
女探偵「私は消防団に見切りをつけ、独自にあのウワサの出所を調査したわ」
女探偵「結果、先輩の活躍に嫉妬していた消防団内の一派が出所だったと分かったの」
女探偵「私はその事実を公表し、先輩の名誉を回復した」
女探偵「そして失踪した先輩を探すため、消防団を辞めて探偵になったの」
マッチョ「そんなことが……」
少女「あたし……おじさんにひどいこといっちゃった……」
女探偵「……とにかく、先輩についてはそっとしといてあげて。お願い……」
女探偵「あと、放火魔については私に任せて!」
女探偵「私も消防団のはしくれ、きっと探し出してみせる」
女探偵「だけど、もう何度かボヤが起こったというなら、時間がないわ」
女探偵「急ぐわよ!」バッ
少女「うん!」
マッチョ「あ、あのお代はどうすれば……」
少女(また余計なことを……)
女探偵「いらないわ。これは私自身、決着をつけたかったことだからね」
マッチョ「そうですか! ……ありがとうございます」
少女(ラッキ~)ニコニコ
女探偵(先輩……必ず私が放火魔を捕まえてみせます!)
少女「あたし……おじさんにひどいこといっちゃった……」
女探偵「……とにかく、先輩についてはそっとしといてあげて。お願い……」
女探偵「あと、放火魔については私に任せて!」
女探偵「私も消防団のはしくれ、きっと探し出してみせる」
女探偵「だけど、もう何度かボヤが起こったというなら、時間がないわ」
女探偵「急ぐわよ!」バッ
少女「うん!」
マッチョ「あ、あのお代はどうすれば……」
少女(また余計なことを……)
女探偵「いらないわ。これは私自身、決着をつけたかったことだからね」
マッチョ「そうですか! ……ありがとうございます」
少女(ラッキ~)ニコニコ
女探偵(先輩……必ず私が放火魔を捕まえてみせます!)
そして──
<町>
女探偵「……見つけてきたわ!」
少女「えっ、もう!?」
マッチョ「すごい! 名探偵ですね!」
女探偵「からかわないの。消防団時代、何度か対峙したのが幸いしたわ」
女探偵「あの気配、まちがいない! ヤツは今町外れの廃屋を隠れ家にしてるわ!」
マッチョ「どうしましょう……人を集めますか?」
女探偵「いえ、ヤツは勘が異常なまでに鋭い。少数精鋭の方がいいでしょうね」
女探偵「もしここで取り逃がすと、さらに厄介なことになる」
女探偵「だからここは、私とマッチョ君の二人で行きましょう」
少女「えっ、ちょっと待って。なんであたしだけ留守番なの!?」
女探偵「相手は超のつく凶悪犯よ。さすがに女の子は──」
シュババッ!
<町>
女探偵「……見つけてきたわ!」
少女「えっ、もう!?」
マッチョ「すごい! 名探偵ですね!」
女探偵「からかわないの。消防団時代、何度か対峙したのが幸いしたわ」
女探偵「あの気配、まちがいない! ヤツは今町外れの廃屋を隠れ家にしてるわ!」
マッチョ「どうしましょう……人を集めますか?」
女探偵「いえ、ヤツは勘が異常なまでに鋭い。少数精鋭の方がいいでしょうね」
女探偵「もしここで取り逃がすと、さらに厄介なことになる」
女探偵「だからここは、私とマッチョ君の二人で行きましょう」
少女「えっ、ちょっと待って。なんであたしだけ留守番なの!?」
女探偵「相手は超のつく凶悪犯よ。さすがに女の子は──」
シュババッ!
カカカッ!
少女の投げたマッチが、近くの石壁に突き刺さった。
女探偵「…………!」
女探偵(まるで投げナイフじゃない……! いえそれ以上かも……!)ゴクッ…
少女「これでも置いてく?」ニコッ
女探偵「わ、分かったわ。あなたもついてきて。ただし無理は絶対ダメよ」
少女「はぁ~い!」
マッチョ「紳士さんへは、どうしましょうか?」
女探偵「……一応、もう一度三人で訪ねてみましょうか」
ところが──
少女「……留守だったわね」
マッチョ「ボクたちを避けてるのかな……」
女探偵「仕方ないわ。放火魔の居場所だけ、手紙に書いてポストに入れときましょう」
女探偵(先輩……)
少女の投げたマッチが、近くの石壁に突き刺さった。
女探偵「…………!」
女探偵(まるで投げナイフじゃない……! いえそれ以上かも……!)ゴクッ…
少女「これでも置いてく?」ニコッ
女探偵「わ、分かったわ。あなたもついてきて。ただし無理は絶対ダメよ」
少女「はぁ~い!」
マッチョ「紳士さんへは、どうしましょうか?」
女探偵「……一応、もう一度三人で訪ねてみましょうか」
ところが──
少女「……留守だったわね」
マッチョ「ボクたちを避けてるのかな……」
女探偵「仕方ないわ。放火魔の居場所だけ、手紙に書いてポストに入れときましょう」
女探偵(先輩……)
<町外れの廃屋>
少女「……あそこ?」
女探偵「ええ、さっきあそこに入っていった。間違いないわ」
女探偵「ヤツはこれまでのボヤで、すでにこの町の構造や町民の行動パターンを分析し」
女探偵「あとは“本当の放火”を待つばかりのハズよ」
マッチョ「どうしますか?」
女探偵「まずは私がアジトに入るわ。これでも腕には自信があるの」
女探偵「だけど、私一人で捕まえきるのは困難でしょうから──」
女探偵「私が声を上げたら、あなたたちも隠れ家に突入し──」
女探偵「自慢のマッチと筋肉でヤツを捕まえてちょうだい!」
少女「分かったわ」コクッ
マッチョ「分かりました」
女探偵「うん。じゃあ行ってくるわね」スッ…
少女「……あそこ?」
女探偵「ええ、さっきあそこに入っていった。間違いないわ」
女探偵「ヤツはこれまでのボヤで、すでにこの町の構造や町民の行動パターンを分析し」
女探偵「あとは“本当の放火”を待つばかりのハズよ」
マッチョ「どうしますか?」
女探偵「まずは私がアジトに入るわ。これでも腕には自信があるの」
女探偵「だけど、私一人で捕まえきるのは困難でしょうから──」
女探偵「私が声を上げたら、あなたたちも隠れ家に突入し──」
女探偵「自慢のマッチと筋肉でヤツを捕まえてちょうだい!」
少女「分かったわ」コクッ
マッチョ「分かりました」
女探偵「うん。じゃあ行ってくるわね」スッ…
女探偵(中に気配はある……)
女探偵(ドアを少し開けたら、一気に中に突入する!)キィィ…
バッ!
女探偵「!?」
女探偵(だれもいない!?)
放火魔「ハロォ~」
女探偵「後ろ──」バッ
ガツンッ!
火打ち石で、女探偵の頭を殴りつける放火魔。
女探偵「きゃっ……!」ドサァッ
放火魔「バァ~カな女め、こそこそ人のことを嗅ぎ回りやがって」
放火魔「あんな尾行に気づかないボクじゃないよォ~?」
放火魔「放置してせっかくのファイヤータイムをジャマされたくないから」
放火魔「来るのを待っててあげたんだよ~ん」
放火魔「そうだ。町を火の海にする前に、コイツをウェルダンしとくかァ~」ニヤッ
女探偵(ドアを少し開けたら、一気に中に突入する!)キィィ…
バッ!
女探偵「!?」
女探偵(だれもいない!?)
放火魔「ハロォ~」
女探偵「後ろ──」バッ
ガツンッ!
火打ち石で、女探偵の頭を殴りつける放火魔。
女探偵「きゃっ……!」ドサァッ
放火魔「バァ~カな女め、こそこそ人のことを嗅ぎ回りやがって」
放火魔「あんな尾行に気づかないボクじゃないよォ~?」
放火魔「放置してせっかくのファイヤータイムをジャマされたくないから」
放火魔「来るのを待っててあげたんだよ~ん」
放火魔「そうだ。町を火の海にする前に、コイツをウェルダンしとくかァ~」ニヤッ
マッチョ「なんだか様子が変だよ……?」
少女「行くわよ!」ダッ
~
放火魔「さァ~て、オリーブオイルをかけて、と」ドボドボ…
放火魔「もう帰ってくることもない、この隠れ家ごと燃やし──」
シュバババァッ!
放火魔「!」バッ
少女(ウソ!? あたしのマッチをかわした!?)
マッチョ(背後からだったのに……なんて反応だ!)
放火魔「おやおやァ? ずいぶん可愛いのとゴツイのがまだいたのか……」
放火魔「まぁいい、この気絶してるバカ女ごと燃やしてやるよォ~」
少女「このマッチで、今までアンタに傷つけられた人の痛み、味わわせてやるわ!」サッ
マッチョ「人を殴るために鍛えたわけじゃないけど、おまえだけは全力で殴る!」ムキッ
少女「行くわよ!」ダッ
~
放火魔「さァ~て、オリーブオイルをかけて、と」ドボドボ…
放火魔「もう帰ってくることもない、この隠れ家ごと燃やし──」
シュバババァッ!
放火魔「!」バッ
少女(ウソ!? あたしのマッチをかわした!?)
マッチョ(背後からだったのに……なんて反応だ!)
放火魔「おやおやァ? ずいぶん可愛いのとゴツイのがまだいたのか……」
放火魔「まぁいい、この気絶してるバカ女ごと燃やしてやるよォ~」
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マッチョ「人を殴るために鍛えたわけじゃないけど、おまえだけは全力で殴る!」ムキッ
少女「あたしのマッチ、今だけ無料出血大サービスよ!」シュバババッ
放火魔「ほォう」サッ
ガキキキンッ!
十数本のマッチが、放火魔の両手にある火打ち石によって全て叩き落とされた。
少女「ウ、ウソ……!」
放火魔「なかなかい~いマッチ捌きだ。けっこう驚いたよ、ボク」
マッチョ「うわぁぁぁっ!」ダッ
ブオンッ! ブンッ! ブオッ!
マッチョが拳を振り回す。しかし、当たらない。
放火魔「放火でなにより大切なのは、“神出鬼没”ってことさァ」ヒョイッ
放火魔「“神出鬼没”ってことは、全ての動作が速いってことなんだよねェ~?」シュッ
ガガガッ!
火打ち石による顔面殴打。
マッチョ「ぐあ……っ!」ガクッ
少女「マッチョ!」
放火魔「ほォう」サッ
ガキキキンッ!
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少女「ウ、ウソ……!」
放火魔「なかなかい~いマッチ捌きだ。けっこう驚いたよ、ボク」
マッチョ「うわぁぁぁっ!」ダッ
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放火魔「放火でなにより大切なのは、“神出鬼没”ってことさァ」ヒョイッ
放火魔「“神出鬼没”ってことは、全ての動作が速いってことなんだよねェ~?」シュッ
ガガガッ!
火打ち石による顔面殴打。
マッチョ「ぐあ……っ!」ガクッ
少女「マッチョ!」
放火魔「ボクはさァ、子供の頃から20年以上も放火一筋で生きてきた」
放火魔「消防団や兵隊だって、幾度も撃退してきたよ」
放火魔「君らもいいセンいってたけど、ボクに挑むのは……三年後にすべきだったなァ~」
マッチョ「ぐっ……!」グラッ
少女「なんでよ……。アンタこんなにすごいのに、なんで放火なんかするのよ!」
放火魔「決まってるだろォ? 楽しいからだよォ~!」
放火魔「ボクの作った炎で、村や町や人が一瞬でパァになっちゃうんだ」
放火魔「悲鳴や、混乱や、オリーブオイルの匂いのおまけつきでねェ~」
放火魔「こんなに楽しいこと……他にないだろォ~? 絶対ない!」
放火魔「ハァッ~ハッハッハッハァ!」
少女「この外道!」シュバババッ
放火魔「おっと」ガキキキンッ
放火魔「さァてと、ボクは忙しいんだ。これからこの町を焼き払うんだ」
放火魔「さっさと君らをウェルダンしちゃうかなァ~」カチカチッ
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マッチョ「ぐっ……!」グラッ
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少女「この外道!」シュバババッ
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放火魔「さっさと君らをウェルダンしちゃうかなァ~」カチカチッ
放火魔「まァ~ずは、さっきからやかましいキミからだァ!」バシャッ
少女の体に大量のオリーブオイルがかかった。
少女「きゃああっ!」
放火魔「お次はこのマイ火打ち石で……」
マッチョ「うおおおおっ!!!」バッ
放火魔「──うわっ! あれだけ顔面を殴られて、まだ動けるのか!?」
マッチョ「逃げて! ボクがコイツを食い止める!」ブンッ
放火魔「……うぜェなァ~」バシャッ
ズルッ……!
マッチョ「うわっ!?(足がぬるぬる滑る……!)」ドサッ
放火魔「キミの足にオリーブオイルをかけた……もうまともに立てないよォ~」
放火魔「そうだ、そんなにあの小娘が大事だってんなら」
放火魔「他ならぬあの小娘のマッチで燃やしてやるよ!」シュッ
すると、放火魔は落ちていた少女のマッチに火をつけ、マッチョの足に投げつけた。
ボワァァァッ!
少女の体に大量のオリーブオイルがかかった。
少女「きゃああっ!」
放火魔「お次はこのマイ火打ち石で……」
マッチョ「うおおおおっ!!!」バッ
放火魔「──うわっ! あれだけ顔面を殴られて、まだ動けるのか!?」
マッチョ「逃げて! ボクがコイツを食い止める!」ブンッ
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ズルッ……!
マッチョ「うわっ!?(足がぬるぬる滑る……!)」ドサッ
放火魔「キミの足にオリーブオイルをかけた……もうまともに立てないよォ~」
放火魔「そうだ、そんなにあの小娘が大事だってんなら」
放火魔「他ならぬあの小娘のマッチで燃やしてやるよ!」シュッ
すると、放火魔は落ちていた少女のマッチに火をつけ、マッチョの足に投げつけた。
ボワァァァッ!
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