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    元スレ春香「プロデューサーさんのいじわるっ♪」

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    51 = 1 :

    「ボク達大丈夫かな……。今はプロデューサーもいないし……」

    貴音「なればこそ、今はわたくし達だけでも精一杯練習すべきです」

    真美「はるるんが復活したとき、すぐに合わせられるようにしなきゃね!」

    雪歩「私、初ライブの練習のとき足引っ張っちゃったし、今度こそやりますぅ!」

    千早(春香。私達頑張るから……)

    真美「んじゃ、曲かけるYO!」

    千早(だから、あなたも早く戻って来て――)

    ――。

    52 = 1 :

    病室。

    春香「あの、こんにちは……」

    P「ん? やぁ、春香」

    春香「え、えっと……」

    春香(うぅ、昨日あんなに縋り付いて泣いちゃったし、恥ずかしぃ……)

    P「どうしたんだ、入らないのか?」

    春香「あ、いえ、失礼しマスっ!」

    P「ははっ、何緊張してるんだよ」

    春香「キ、緊張してないですヨ?」

    53 = 1 :

    P「う~ん……あ、わかったぞ!」

    春香「ふぇ!?」

    P「昨日あんなに泣いちゃったからなぁ~?」ニヤニヤ

    春香「プ、プロデューサーさんっ、いじわるですよぉ!」

    P「あはははっ!」

    春香「うぅ~」ジトー

    P「おっと、そんな可愛い上目遣いで睨まないでくれヨ」ニヤニヤ

    春香「た、性質が悪いですよぉ~!」カァ~

    54 = 1 :

    P「ははっ、じゃあ、お詫びに緊張を解くおまじないをしよう」

    春香「おまじないですか?」

    P「ああ、前にもやったろ? まずは手を出してぇ~」

    春香「は、はい」

    P「人という字を書いてぇ~」

    春香「く、くすぐったいです……プロデューサーさんっ」

    P「そして今書いた人の字を~~飲み込む!!」

    春香「ふぇ!?い、いきなり飲み込めませんよぉ~」

    P「おいおい、あの時と同じだなぁ……ほら、お水」

    春香「あ、どうも……んぐんぐ……」

    春香(…………ん?)

    ――

    55 = 37 :

    dis半端無いな

    56 = 1 :

    翌日、収録現場。

    スタッフ「ねぇねぇ、天海さんってお休み中なんでしょ?大丈夫なの?」

    亜美「えっ!?あ、あぁ~、えっとぉ~」

    亜美「(ど→しよ、いおりん!?)」ヒソヒソ

    伊織「(あんま言っちゃダメって、律子に言われてるんだからね!)」ヒソヒソ

    あずさ「あの、すみません。私達も詳しいことは……」

    スタッフ「あ、そうだよねぇ。これだけ別々に仕事してたら分かるわけないよねぇ」

    伊織「なっ! ち、ちがっ……!」

    あずさ「いえ、そういう訳では、ないんですけど……」

    57 = 1 :

    ロケ現場。

    スタッフ「同じ事務所って言っても、ファン獲得のライバルでもあるわけだし」

    「えっ!?」

    スタッフ「自分達の仕事もある訳だから、お互いの状況なんて分かんないよね」

    やよい「えっと、そのぉ……」

    スタッフ「まぁ、個人で売れてるんだし、765プロってことに拘らなくてもねぇ」

    「そ、そんなことっ!」

    やよい「ない、です……」

    ――。

    58 = 1 :

    病室。

    春香「こんにちは、プロデューサーさん」

    P「やぁ、春香」

    春香「えへへ、今日はお菓子を作って来たんです」

    P「おお!って、嬉しいけど、そんなに気を使わなくて良いんだぞ?」

    春香「好きでやってることですから。じゃ~ん、今日はフルーツケーキですよ♪」

    P「おっ、フルーツケーキといえば――」

    春香「どうかしましたか?」

    59 :

    フレンチクルーラーアプッル風味の宣伝ですかプロデューサーさん

    60 = 1 :

    P「いやさ、前に春香が寝不足になるくらいレシピで悩んでたな~って」

    春香「え?」

    P「ちょっと思い出してな。それじゃ、早速いただきまーす!」

    春香「あ、どうぞどうぞ」

    P「モグモグ……うん!相変わらず、春香のお菓子は美味しいな!」

    春香「えへへ、お菓子作りなら任せてください!」エッヘン!

    P「あとは、たまにやるドジを直せば完璧だな~」ニヤニヤ

    春香「うっ……それは自信ないですよぉ」

    61 = 59 :

    フルーツケーキと言えば今ローソンでフレンチクルーラーアプッル風味が売っています
    100円というお手頃価格ですよそしてなんと2つ買うとクリアファイルがつくんです!
    今すぐローソンへGO!

    62 = 1 :

    P「おいおい、自信ないのかよ」

    春香「だって、私ドジですし……」

    P「いつだったか、間違えて焦げた方のクッキー持って来ちゃったしな~」

    春香「うぅ~、プロデューサーさぁん……」

    P「あはは、ごめんごめん、いじめすぎたかな?」ナデナデ

    春香「そ、そうですよぉ………えへへ」

    春香(――って、あれ?)

    ――

    63 = 1 :

    翌日、社長室。

    社長「どうかね律子君。アイドル達の様子は?」

    律子「仕事はなんとか……ですが、やっぱり全体的に沈んでいますね」

    社長「そうか、今は彼も天海君も不在だからね」

    律子「はい。特に春香は、前回のライブでもムードメーカーでしたから」

    社長「うむ。吉澤君も指摘していたが、彼女の明るさには随分救われた」

    律子「吉澤記者が……ええ。本当にその通りですよ」

    社長「だから、それだけに残念な知らせがあるのだよ」

    64 = 1 :

    社長「天海君の出演している番組側から、出演者変更の連絡が来た」

    律子「そっ、それって!春香は降板っていうことですか!?」

    社長「そこまではっきりとは言わなかったが、事実上の降板だろう」

    律子「そんな……」

    社長「今のところ先方は、代わりのアイドルを765プロからと言ってくれている」

    律子「そう、ですか………仕方ないこと、なんですよね……?」

    社長「厳しいかもしれないが、この世界では至極当然のことだ」

    律子(春香……)

    ――。

    65 = 59 :

    少なくとも一周してるとはとんだタヌキだなバネP

    66 = 1 :

    病室。

    春香「こんにちは、プロデューサーさん」

    P「やぁ、春香。お疲れ様」

    春香「ぁ……」

    P「ん、どうした?」

    春香「な、なんでもないです……アハハ」

    P「そうか?」

    春香「それよりも、今日はクッキーを焼いて来ました!どうぞ!」

    P「お、おお。それじゃあ、早速頂こうかな。あ~…む」

    67 = 1 :

    P「ムグムグ……うん、いつも通り美味いよ」

    春香「へへっ、良かったぁ~♪」

    P「春香って、小さい頃はお菓子職人になるのが夢だったんだもんな」

    春香「え……」

    P「どうかしたか?」

    春香(私、プロデューサーさんにそんな話したかなぁ?)

    P「お~い、春香ぁ~」

    春香「あっ、すみません」

    68 = 1 :

    P「いやいや……そういえば、ここ最近、仕事の方はどうだなんだ?」

    春香「えっと……一人のお仕事が多いですけど、なんとか……」

    P「ふむ、春香は皆とする仕事が好きかい?」

    春香「それは…………好き、ですけど……」

    P「うん、そうかそうか」

    春香(でも、元はと言えば、私がそのことで悩んでた所為で……)

    P「それはすごく良いことだ。春香の魅力の一つだな」

    69 = 1 :

    春香「魅力、ですか?」

    P「ああ。皆との時間を大切に思えるんだ、春香は優しいよ」

    春香「そんなこと……」

    P「そういえば、春香が皆で歌うのが好きなのって、歌のお姉さんとの思い出だったよな」

    春香「歌の、お姉さん……?」

    P「小さい頃に、公園で知り合ったお姉さんと友達と、皆で歌を歌ったって」

    春香(っ――…………)

    P「それで、通りがかった人達が聞いて拍手をしてくれたんだよな」


    (あぁ……そっか……)

    70 = 49 :

    夜勤ひまだ~④

    71 = 1 :

    (そういうことだったんだ……)


    たとえば、初めてのミーティング。

    一緒に繁華街を歩いて、ケーキやお菓子、小さい頃の夢の話をした。


    『パティシエになるのが、夢だったりしたこともあったんです』

    『今からでもなれるさ。どうだ春香、職人を目指したら?』

    『ええっ!今からですか!?でも私、今は歌が大事だし……』

    『いやいや、歌のパティシエを目指すっていうのはどうかな?』


    ちょっぴりキザな言い回しだったけど、嬉しくて舞い上がったのを覚えてる。

    72 = 1 :

    (他にも……)


    たとえば、昼の公園。

    歌を頑張る理由を聞かれて、はじめて他人に話した。


    『お姉さんと友達とみんなで歌ってると、周りに人が集まって来て』

    『もしかして、褒められた?』

    『はい!みんなに拍手してもらえて、ふふふっ』

    『それが、春香が歌を頑張るきっかけになったんだな』


    あなたに話して、自分がアイドルを目指した理由を、自覚したのを覚えてる。

    73 = 1 :

    少し無理して頑張ったCDショップの店頭販売も。

    いきなり好きな男性を聞かれた雑誌取材の練習も。

    ひたすら走り抜いたPV撮影も。

    はじめてドラマに出演させてもらうことになったレコーディングも。

    そして、最後のドーム公演も。

    どの時にも、私の側には、プロデューサーさんが居てくれたのを覚えてる。


    (そうだよ。アイドルランキングが上がる度に喜んで、二人で新しい目標を立てたっけ)


    ……。

    74 = 1 :

    P「つまりさ、アイドルを目指した理由が“皆で歌いたい”っていう――」

    春香「ふふっ」

    P「春香?」

    春香「でも結局、そのことで悩んで、みんなに迷惑掛けちゃいました」

    P「そうか?」

    春香「はい、心配も掛けちゃってます。今も、こうしてる間にも」

    P「……ははっ、気付いたのか?」

    春香「気付いちゃいました」

    75 = 1 :

    春香「これは、私の夢なんですね」


    P「ああ、その通りだ」

    76 = 1 :

    P「春香は、舞台から落ちて病院に運ばれたんだ」

    春香「そして、私は今もベッドの上なんですね」

    P「ああ。でも、どうして気が付いたんだ?」

    春香「だって、小さい頃の話なんて、プロデューサーさんにしたことないですから」

    P「そうだな。ここでの春香は、担当プロデューサーとそんな話はしていない」

    春香「でも不思議です」

    P「うん?」

    春香「体験していないのに、あなたとの思い出は、ずっと側にあったんですね」

    77 = 1 :

    P「俺との記憶は、天海春香のルーツでもあるからな、きっとどこかで覚えてるのさ」

    春香「うふっ、ちょっとキザですよ、プロデューサーさん♪」

    P「本当だな、確かにキザだ、あはははは!」

    春香「もう、プロデューサーさんったら……」

    P「いやぁ、あははっ!」

    春香「うふふっ」

    P「ふぅ………なぁ、春香」

    春香「………はい」

    78 = 1 :

    P「一つ、わがままを言わせてくれるか?」

    春香「はい」

    P「俺は、春香にトップアイドルになってほしい」

    春香「はい」

    P「他の誰でもない。春香になってほしいんだ」

    春香「………」

    P「聞き届けてくれるかい?」

    春香「もう……本当にわがままですよ、プロデューサーさん」

    79 = 1 :

    春香「でも、聞いちゃいます。ちょっとシャクですけど!」

    P「え、癪?」

    春香「だって、自分を振った人のわがままを聞くんですよ?」

    P「なっ!……は、春香?」

    春香「全部思い出しちゃいました。よくも振ってくれましたね?」

    P「いやっ!あれは春香の将来を思ってだなぁ!」

    春香「むぅ~っ………ふふっ、わかってますよ」

    80 = 1 :

    春香「だから、今度もプロデューサーさんの言うこと聞いちゃいます」

    P「良いのか? それはきっと、ここの春香が望む“皆で”じゃないぞ」

    春香「そうですね……うふふっ」

    P「春香?」

    春香「前に、美希と千早ちゃんと、アイドルってなんだろうって話したんです」

    春香「そのとき、二人はちゃんと答えを持っていたのに、私は答えられませんでした」

    P「アイドルとは……か。二人はなんて答えたんだ?」

    81 :

    いやあなたうまい具合に言いくるめられてたじゃないですか

    82 = 1 :

    春香「美希はキラキラ輝いてる人。千早ちゃんは幸せを届ける人。あと、それを歌でしたいとも」

    P「なるほど。言い換えれば、アイドルとしての夢や目標ってことだもんな」

    春香「はい。そして私の夢は、“みんなで楽しく歌うこと”でした」

    P「春香の夢は、前回のライブで実現していたわけだ」

    春香「でも、思いがけず夢が形になって、そのあとは力が抜けちゃってましたけど」

    P「仕方ないさ。それに、周りの変化もあって戸惑もあったんだろう」

    春香「えへへ、白状すると、競争とかランキングとか、ついて行けてませんでした」

    P「ははっ、正直だな。今も同じ気持ちかい?」

    春香「いいえ。おかげさまで、新しい夢を見つけましたから」

    83 = 1 :

    春香「私の夢は、思い描くアイドルは、あなたの理想のアイドルです」

    P「あぁ――………ありがとう、春香」

    春香「いいえ、こちらこそです」

    P「やり方は分るか?」

    春香「あなたから教わりましたから」

    P「そうか、じゃあ……」


    “行っておいで、春香。”


    春香「っ……はい!行ってきますっ、プロデューサーさん!」

    ――

    84 = 1 :

    病室。

    春香「う…ぅ……」

    赤羽根P「は、春香? 春香っ!?」

    春香「うぅ……?」

    赤羽根P「春香っ!目を覚ましたのかっ!?」

    春香「ぷろでゅーさ、さん?」

    赤羽根P「ちょ、ちょっと待ってろ!今お医者さん呼ぶからな!」

    春香(……私、頑張りますよ、プロデューサーさん)

    ――。

    85 = 1 :

    数週間後。

    年越しライブ当日、控え室。

    「いよいよだな、年越しライブ!」

    「うん。歌もダンスもなんとか形になったし」

    雪歩「でも、あんまり練習できなかったし、ちょっと不安だよぉ」

    貴音「確かに、前回のらいぶに比べ、練習量が少なかったですね」

    真美「そんなのへ→きだYO!ステージに立っちゃえばなんとかなるって!」

    あずさ「それもそうよね。ここまで来たら、頑張るしかないわよね」

    86 = 1 :

    亜美「ってゆ→か、はるるんが出られないのはイタイYO!」

    美希「まったくなの。春香が一番上手なのにぃ……」

    春香「うぅ……めんぼくないです……」

    伊織「ま、今回は伊織ちゃんの華麗なステージを見てることね!」

    千早「私達、春香の分まで頑張ってくるから」

    やよい「うっうー!がんばりますよー!」

    春香「えへへ、ありがとう……」

    87 = 1 :

    赤羽根P「春香……」

    春香「あ、お疲れ様です、プロデューサーさん」

    赤羽根P「改めてすまなかった」

    春香「へ?」

    赤羽根P「今回のこと、俺がちゃんとしていれば、こんなことには……」

    春香「なっ、何言ってるんですか! 舞台から落ちたのは、完全に私のドジですよ!?」

    律子「いや、それも違うから、あれは完全に舞台側の不備よ」

    88 = 1 :

    赤羽根P「それだけじゃないんだ。事故の後、俺はプロデューサーの仕事まで放棄していた」

    「でも、それこそずっと春香の付き添いだったわけですし」

    雪歩「そうですよぉ~」

    赤羽根P「いや、皆にもたくさん迷惑を掛けた。本当にすまなかった!」

    伊織「べ、別に、あんた一人抜けたくらい、どってことなかったわよ!」

    「そうだぞ! 自分は完璧だし、なんくるなかったさー!」

    貴音「どうか気に病まれないよう、プロデューサー」

    89 = 1 :

    赤羽根P「み、皆……」

    真美「あれあれぇ~、兄ちゃん涙目ぇ→?」

    亜美「え→!見せて見せてぇ~!」

    赤羽根P「うわっ!?ちょっ!やめっ……!!」

    やよい「あ、プロデューサー赤くなってますー」

    あずさ「あらあら、可愛らしいですね~」

    貴音「ふふっ、まことその通りですね」

    赤羽根P「か、勘弁してくれ……」

    90 = 1 :

    律子「はいはい、遊んでないで、ちゃんと身体をほぐしておくのよー」

    小鳥「あと、今の内に何かお腹の中に入れておいてねー」

    全員「「「「はーい!」」」」

    美希「ミキ、おにぎり食べたいの!」

    律子「あ、食べ物も飲み物も、今は別の控え室に置いてあるんだったわ」

    美希「えぇー」

    春香「私が案内するよ。行こう、美希」

    美希「うん!」

    91 = 1 :

    別室。

    美希「もぐもぐ……」

    春香「はい、飲み物もどうぞ」

    美希「ありがとなの」

    春香「いよいよだね、年越しライブ」

    美希「うん。いっぱいキラキラしたミキを、みんなに見てもらうの!」

    春香「そうだね。お客さん全員の記憶に残るライブになると良いよね」

    美希「………春香?」

    92 = 1 :

    春香「ん、なに?」

    美希「春香、なんだか変わったの」

    春香「え?」

    美希「落ち着いてるって言うか、すごくまっすぐ~ってカンジ」

    春香「そうかな……」

    美希「うん。なにかあったの?」

    春香「……前に、アイドルってなんだろうって、話したことあったよね」

    美希「あ、うん」

    93 = 49 :

    まだオチてないw

    94 = 1 :

    春香「私もね、答えを見つけたんだ」

    美希「ふぅん、ぜひ教えてほしいの!」

    春香「それはヒミツです♪」

    美希「えぇー、そんなのってないの~」

    春香「ごめんね。でも……」

    美希「春香?」

    春香「私、負けないよ」

    美希「……うんっ、ミキも負けないの!」

    ――。

    95 = 1 :

    765プロ初の年越しライブ。

    みんな練習不足を心配してたけど、そんなこと全然なくって。

    最後までしっかりと、最高のステージを見せてくれました。

    律子さんは、『プロなんだから当然!』って言ってたけど。

    お客さんも喜んでくれて。

    ファンもたくさん増えて。

    メディアにも注目されて。

    私には、みんなが眩し過ぎるくらい輝いて見えました。

    96 = 1 :

    新年になって。

    年越しライブの評判もあって、765プロがますます忙しくなる中。

    私はというと、怪我の治療やら検査やらで、しばらくお仕事はお休み。

    お仕事は減ってくし、ファンからは忘れられちゃうし、置いてけぼりです。

    それに、再起ってすごくすごく大変で、正直へこたれちゃいそうでした……。


    「……でも、約束ですからね――

    97 = 1 :

    61週後、ドーム公演。


    ――私、ここまで来ましたよ、プロデューサーさん」


    かつて訪れた夢のステージ。

    前と違うのは、彼が隣にいないこと。


    (あなたとやったことを思い出しながら、一つ一つ登って来たんです)


    営業、取材、撮影、レコーディング、ライブ……。

    本来ならば知りえない、天海春香の原初の記憶。


    (私は、あなたの理想のアイドルになれましたか?)


    “………。”


    「ちぇ、まだダメですかぁ~……ふふっ」


    そうして、今日も答えは得られない。――ステージの幕が上がる。

    98 = 1 :

    ドーム公演、ゲスト控室。

    千早「すごい歓声ね、地響きがしてる……」

    美希「相変わらず、春香さんのライブはすごいの!」

    赤羽根P「春香のライブは、遠い席のお客さんも楽しめるように工夫されてるからな」

    千早「だから、いつも春香は、顔を少し上げて声が通る歌い方をしているんですね」

    赤羽根P「ああ。実に春香らしい気遣いだよ」

    美希「うーん……ミキ、それはちょっと違うって思うな」

    千早「どういうことなの?」

    美希「春香さんはね、もっと遠くにいる誰かに向けて歌ってるの」

    99 = 1 :

    千早「遠くにいる、誰か?」

    美希「そうなの。いろんな気持ちを込めてね、歌ってるの」

    千早「なんだか、少し悲しい感じね……」

    美希「でもね、だからこそ、みんな応援したくなっちゃうんだって思うな」

    千早「春香を応援したくなるのは、歌の表現効果なんじゃなくて、ただ純粋に一生懸命だから……」

    美希「うん!ミキね、春香さんに負けないよって言ったのに、すっかりファンになっちゃったの!」

    千早「そうね。私も同じようなものかしら、ふふっ」

    スタッフ「如月さん、星井さん、準備の方お願いしまーす!」

    100 = 1 :

    ステージ。

    春香『みんなー!今日は、765プロから特別ゲストが来てるんですよー!』

    春香『早速呼んじゃいますね~……千早ちゃーん!美希ぃー!』

    千早『皆さんっ、こんばんわ!』

    美希『みんなよろしくねっ☆ そして春香さん、会いたかったのー!!』ダキッ

    春香『うわわ!?って、やっぱり“さん”付けは変だよぉ~』

    美希『いーの!ミキ、春香さんのこと尊敬してるんだから♪』

    千早『二人とも、お客さんに笑われてるわよ?』

    春香『うぅ……つ、次の曲!次の曲行きますよーっ!』

    ――。


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