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    元スレ和「君がいない冬」

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    101 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:12:33.80 ID:4UYhISO+0 (+19,+29,-4)
    なん…だと…
    102 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:13:44.42 ID:ZfFn9kXV0 (+89,+29,-8)

    その数週間後、咲さんは東京へと転校していった。
    それ以来、私は彼女に会っていない。
    103 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:17:53.47 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-96)

    ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


    「……どうしてあなたは、『宮永さん』なんですか?」


    気が付けば私は彼女――――宮永淡さんに向けて、そう問い掛けていた。
    二年前、彼女が咲さんとほとんど入れ替わりに転校してきた時。
    まさにその日に投げかけた質問と、まったく同じものだった。


    「離婚した母親の旧姓が、宮永だったから、だよ。和ちゃん」


    そしてその答えも、二年前と寸分違わぬものだった。
    104 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:22:44.48 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-125)

    何度聞いても同じ答えだった。
    私が聞いても、優希が聞いても、竹井先輩が聞いても、染谷先輩が聞いても。
    須賀くんが聞いても、宮永さんは首を横に振って、それ以上のことは何も言わなかった。


    「なあ、淡ちゃん」


    優希が、堪えられなくなったように問いかける。


    「どうして咲ちゃんは、私たちに何も言わずに、いなくなっちゃったんだ?」
    105 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:25:33.07 ID:LrReJTvP0 (+12,+27,-2)
    今から読むから
    106 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:26:21.81 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-124)

    あれから二年も経つというのに、その答えはいまだ闇の中に埋もれたままだ。

    咲さんはまさに転校するその日まで……いや、転校してからも、私たちに何かを語ることはなかった。
    私たちは何一つ聞かされていなかった。
    ただ彼女のクラスの担任が、淡々と、トレーシングペーパーを転写したかのように、


    『宮永咲は東京へ転校した』


    と知らせただけだ。
    彼女は携帯電話を持っていなかったし、正確な転居先が何処なのかも杳として知れなかった。
    107 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:28:37.75 ID:ehnTgm4C0 (+24,+29,+0)
    オール地の文ってこのためか
    108 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:30:47.67 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-205)

    何より彼女はその後二年間、麻雀の公式大会に姿を現すことはなかった。
    私は東京のみならず、すべての県予選の全部門の全記録を、目を皿のようにして眺め続けた。
    しかしついに、「宮永咲」の名を高校麻雀界で目にすることはなかった。

    時を同じくして「宮永照」の名もまた、日本の麻雀界から消えた。
    プロ入りを確実視されていた高校生チャンプの失踪は、一時は凄まじい狂騒を巻き起こしたものだ。
    そして私たちは、事ここにいたってようやく、事態の異常性をはっきりと認識したのであった。

    咲さんは、消えてしまった。
    この世にいた痕跡を残さず、跡形もなく、消えてしまったのだった。

    ただ一つ、部室の写真立てに飾られた、六人の麻雀部員が笑い合う―――あの写真を除いては。
    109 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:34:59.44 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-99)

    手掛かりがあるとすればそれは、目の前の少女の証言をおいて、他にはないはずだ。
    優希が悲痛に訴える主張と同じものを、誰もが同じように、同じ胸の奥に秘めていた。


    「……ごめんね、優希ちゃん。私には、何もわからないんだ」

    「でも! 咲ちゃんと淡ちゃんは、入れ替わりでこの長野にきたんだ! そんで淡ちゃんは、咲ちゃんのお姉さんと同じ学校だったんだ! それで、それで……」

    「それで、関係ないはずが、ないって? ……うん。それは、あたしもそう思うよ」

    「だったら!」

    「でも、ごめんね」
    110 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:38:35.86 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-93)

    それでも。
    昏い瞳をかすかに瞬かせた優希の希望は、即座に切って捨てられる。


    「あたしにも、その理由まではわからないんだ。あたしはただ、母さんと一緒に、こっちに引っ越してきただけだから」


    失望の暗さが、重く肩にのしかかる。
    今さら有益な情報など得られはしないだろうと、わかっていても胃にずしんとくる。

    彼女は。
    宮永さんは。
    やはり、何も知らないのだ、と。
    111 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:40:54.42 ID:prPkW8ixO (-2,+7,+0)
    ほし
    112 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:47:50.63 ID:fqufYqZ9O (+30,+29,-40)
    「宮永さん」
    「あたし」
    ・キラキラした金髪と、軽くウェーブがかったショートブラウン
    違和感はあったがやられた
    113 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:50:50.08 ID:prPkW8ixO (+29,+29,-12)
    「切ない」ではなく「暗い」の意味がこれか…
    114 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:50:58.09 ID:4UYhISO+0 (+34,+29,-4)
    さるったか

    >>112
    ああ、気づかんかった…
    115 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:52:37.16 ID:LUqYap4g0 (+19,+29,-1)
    こりゃ地の文じゃなきゃあかんわな
    116 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 15:57:23.69 ID:+FkJkf1y0 (-20,-10,+0)
    支援
    117 : さるってました - 2012/10/06(土) 16:00:21.59 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-60)

    「……だったら」


    肩を落とす私と優希。
    しかし彼は、悲痛そのものの泣き笑いを浮かべながら、なおも宮永さんに食い下がった。


    「だったら、淡。どうしてお前は、そんな格好してるんだ?」

    「……」

    「どうして、髪を茶色く染めて、短く切って、整えてまで、どうして……」

    「……」
    119 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:03:52.90 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-95)

    「どうして、咲の真似なんかしてるんだよ」


    ウェーブがかったショートブラウンの少女に向けて、問うた。


    「やだなぁ、そんなの決まってるじゃん」


    返答の代わりに、淡い微笑み。


    「京ちゃんのこと、好きだったからだよ」

    「……………………な?」

    「転校してきたばっかの私に、最初に話しかけてくれたの、京ちゃんじゃん」

    「それ、が、なんだって」

    「それだけだよ。それだけで好きになっちゃうチョロい女の子も、この世にいないわけじゃないんだよ?」
    120 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:07:37.13 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-87)

    「でも、京ちゃんの心の中には、いつだっていなくなったあの子が棲んでたから」


    淡くて、消えてしまいそうな儚い笑み。


    「だから、あの子の、咲ちゃんの、真似してみよう、って」


    今にも壊れてしまいそうな、しかし。


    「そしたら、京ちゃん、振り向いてくれるかな、って」

    「――――っ」


    微笑みかけられた須賀くんごと、何もかも壊してしまいそうな笑み。
    121 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:09:45.35 ID:+FkJkf1y0 (+24,+29,-2)
    咲さんはいったいどこにいったのか
    122 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:10:25.34 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-63)

    「ごめんね……期待させちゃったなら、ごめんね。咲ちゃんに繋がる手掛かりがあるんじゃないかって、勘違いさせちゃったならごめんね。いきなり、好きだなんて言って――――ごめんね?」


    少年が、がくりと膝から崩れ落ちた。
    処理しきれない情報量が、彼の脳の内側と外側でパンクしかけている。


    「違うんです……宮永さんが悪いんじゃないんです」


    私は、気が付けば声を上げていた。
    123 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:10:50.88 ID:7qCP56AWO (+19,+29,-1)
    おぉ……
    124 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:13:45.33 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-65)

    「ただ、私は悔しいんです」


    気が付けば、自然に声は張り上がっていた。


    「どうして、どうしてこの場に」


    気が付けば、大きくかぶりを振っていた。


    「どうしてこの輪の中に、咲さんがいないんですかっ!?」


    気が付けば――――私もまた、泣いていた。
    125 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:16:26.37 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-93)

    「なあ、淡。教えてくれ」

    「俺たちは、どうすれば、咲を失わずにすんだんだ?」

    「お前が、淡がいて」

    「俺がいて、優希がいて、和がいて、先輩たちがいて、後輩たちもいて」

    「――――咲が、いて!」

    「どうして、それじゃダメだったんだ?」

    「……なんでだよ?」

    「なんでなんだよおおおっっ!!??」
    126 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:19:41.60 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-77)

    気が付けば、その場にいる全員が泣いていた。
    私は啜り泣いていた。
    優希はへたりこんで嗚咽していた。
    須賀くんは地に腕を叩きつけ、慟哭していた。

    そして、宮永さんは。


    「……残酷なことを言うようだけれど、あたしはこう思う。あたしが勝手にこう思ってる、って意味なんだけど」


    はらはらと珠の様に、落涙していた。
    127 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:19:45.99 ID:cDJ2gODG0 (-22,-12,-1)
    128 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:21:48.05 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-79)

    「多分、みんなは、咲ちゃんを」

    「テルに会わせちゃ、いけなかったんだよ」

    「離れ離れでいることが、あの二人にとっての幸せだったんだよ」

    「すべてが終わっちゃった今だから、そう言えるんだけど、ね」


    終わった。
    何が終わったというのか、宮永さんははっきりと言葉には出さなかった。
    それでも私は、彼女の言わんとするところを、なんとなくだが理解できてしまった。

    ああ、もう――――何もかも、終わってしまったことなんだ、と。
    129 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:23:01.74 ID:VXU8r87T0 (+29,+29,-10)
    ここに来てこう来るのか
    SSは最初にインパクトないと伸びないのが残念だな
    130 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:24:38.18 ID:+FkJkf1y0 (-20,-10,+0)
    支援
    131 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:25:16.14 ID:ZfFn9kXV0 (+95,+30,-86)

    山の上の空に花が咲く。
    彼女が大好きだった麻雀役の由来が、私たちのあんな近くにいる……というのは、少々こじつけに過ぎるだろうか。

    どこかで彼女も、この花を見ているのだろうか。
    仕様もないことを考えてから、私は小さくかぶりを振った。

    咲さんが、私たちの隣にいない冬。

    もう戻らない夏に向かって、小さな祈りを捧げながら。

    この冬という現実を、私は強く強く噛みしめた。



    132 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:27:16.39 ID:ZfFn9kXV0 (+90,+29,-18)
    今のりつべならこのぐらいの展開はやりかねないかな、と思って書いてみた
    咲さんがどうなったのかは多分あなたの想像通りです
    それじゃ、お付き合いいただきありがとうございました
    133 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:27:59.71 ID:+FkJkf1y0 (-4,+5,-1)
    134 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:28:00.25 ID:b13sp1Rj0 (-13,-3,-1)
    乙!
    135 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:28:01.02 ID:ehnTgm4C0 (+0,+10,-2)
    乙ァ…
    136 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:30:47.30 ID:Xu3woXCo0 (+18,+28,-1)
    乙だじぇ…
    137 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:31:04.47 ID:HOz7Qng30 (+0,+15,-1)
    乙やで!
    138 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:31:16.34 ID:VXU8r87T0 (+30,+30,-26)


    しかし
    「離れ離れでいることが、あの二人にとっての幸せだったんだよ」
    がわからん。本人たちはこれで幸せで、離れ離れでいることで幸せになるのは
    清澄の皆じゃないの?
    139 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:32:06.85 ID:cDJ2gODG0 (+20,+25,-3)
    乙、乙
    そして解決編はよ
    140 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:34:18.93 ID:VXU8r87T0 (+29,+29,-23)
    あ、あとそれとスレタイで和が「君」っていう普段使わない言い方をしてる理由
    141 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:35:52.48 ID:i6TsA/3I0 (+24,+29,-23)
    やりかねないだろうけど、売り物としては叩かれると思う。
    ここでSSとして書く分には構わないだろうけど。

    お疲れ様でした。
    142 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:37:13.63 ID:3O75Eq7I0 (-29,-17,-1)
    乙ー
    143 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:41:37.88 ID:prPkW8ixO (+12,+22,-13)
    うぎゃあー
    144 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:42:08.65 ID:sCI3mOn60 (+19,+29,+0)
    おつ
    面白かったよー
    145 : 以下、名無しにか - 2012/10/06(土) 16:45:25.02 ID:PIQ7gEOE0 (+24,+29,-6)
    原作ではそういう存在でないことを祈ろう…
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