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元スレ兄「妹が冷たい」
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「はぁ?」
たった二文字なのに、妹の気持ちが痛いほど伝わってきて挫けかけた。
「……高校入ってからなんだかよそよそしいじゃん」
「今までが仲良すぎたんだよ。これが普通」
「そうかな?」
「そうだよ」
「……」
「兄妹なのに一緒に買い物行ったりとか、ありえないし」
そういい残して妹は自室に戻っていった。
たった二文字なのに、妹の気持ちが痛いほど伝わってきて挫けかけた。
「……高校入ってからなんだかよそよそしいじゃん」
「今までが仲良すぎたんだよ。これが普通」
「そうかな?」
「そうだよ」
「……」
「兄妹なのに一緒に買い物行ったりとか、ありえないし」
そういい残して妹は自室に戻っていった。
「妹さんがですか?」
「話はしてくれるんですけど、前に比べるとトゲトゲしいと言いますか」
「それは困りましたね」
放課後、生徒会室に集まって会長とだべるのが日課になっていた。
「知らず知らす嫌われるようなことでもしたんですかね、俺……」
「心あたりがあるんですか?」
「いいえ、全く」
「話はしてくれるんですけど、前に比べるとトゲトゲしいと言いますか」
「それは困りましたね」
放課後、生徒会室に集まって会長とだべるのが日課になっていた。
「知らず知らす嫌われるようなことでもしたんですかね、俺……」
「心あたりがあるんですか?」
「いいえ、全く」
「難しい問題ですね」
「変な相談してすみません」
「いいんです、貴方にはいつもお世話になっていますから」
席をたって、ぴょこぴょこと効果音がつきそうな感じで会長が歩き出す。
コドモ会長と言われるだけのことはあるなぁ。
「緑茶でいいですよね?」
「はい、ありがとうございます」
「……何か?」
「いえ、何も」
コドモ会長は愛称ではあるが、会長本人は快く思っていない。
身長が小さいことは思いのほかコンプレックスになっているらしい。
「変な相談してすみません」
「いいんです、貴方にはいつもお世話になっていますから」
席をたって、ぴょこぴょこと効果音がつきそうな感じで会長が歩き出す。
コドモ会長と言われるだけのことはあるなぁ。
「緑茶でいいですよね?」
「はい、ありがとうございます」
「……何か?」
「いえ、何も」
コドモ会長は愛称ではあるが、会長本人は快く思っていない。
身長が小さいことは思いのほかコンプレックスになっているらしい。
「思春期ではないでしょうか?」
「思春期って中学生までじゃないんですか?」
「何歳から何歳まで、と決まっているわけでないんですよ。個人差にも左右されるんです」
そういえば中学生の頃は別段変わったことはなかったな。
「遅めの思春期ですか。そうかもしれません」
「なら時間が解決してくれますよ」
普段無表情なこども会長のにっこりスマイル。
「……」
「どうしました?」
「な、なんでもありません」
かわいいと思った。
「思春期って中学生までじゃないんですか?」
「何歳から何歳まで、と決まっているわけでないんですよ。個人差にも左右されるんです」
そういえば中学生の頃は別段変わったことはなかったな。
「遅めの思春期ですか。そうかもしれません」
「なら時間が解決してくれますよ」
普段無表情なこども会長のにっこりスマイル。
「……」
「どうしました?」
「な、なんでもありません」
かわいいと思った。
「何か隠してます」
ずいと身を乗り出す会長。
「隠してませんよ。ほんとです」
「そうでしょうか」
疑いは晴れない。
「会長、保健体育はお得意ですか?」
「とくに苦手意識を感じたことはありませんが、得意というわけではないです」
「なるほどなー」
「なぜそんなことを聞くんです?」
……うまい言い訳が思いつかない。
ずいと身を乗り出す会長。
「隠してませんよ。ほんとです」
「そうでしょうか」
疑いは晴れない。
「会長、保健体育はお得意ですか?」
「とくに苦手意識を感じたことはありませんが、得意というわけではないです」
「なるほどなー」
「なぜそんなことを聞くんです?」
……うまい言い訳が思いつかない。
「思春期について詳しかったから、もしかしたらそうなのかなーと思いまして……」
「それは早合点ですよ」
苦しかったか。
「けど思春期について詳しい説明って教科書にありましたっけ?」
「なかったと思います」
「あれ?ならさっきの知識はどこから仕入れたんですか?」
「インターネット……」
会長は顔を伏せてしまった。
今度検索履歴を見てやろうと思った。
「それは早合点ですよ」
苦しかったか。
「けど思春期について詳しい説明って教科書にありましたっけ?」
「なかったと思います」
「あれ?ならさっきの知識はどこから仕入れたんですか?」
「インターネット……」
会長は顔を伏せてしまった。
今度検索履歴を見てやろうと思った。
「ただいま」
「遅い」
帰宅するなり文句が飛んできた。
「また生徒会室?」
「そうそう」
「会長優しいから何も言わないけど、仕事の邪魔なんじゃないの?」
「一応俺も生徒会役員なんだけど」
「仕事してるところ見たことないし。どうせ無駄話しかしてないんでしょ?」
最近はそうだけど、普段は色々と……。
「ロリコン」
頭の中であーだこーだ考えていると、ロリコンの烙印を押された。
「遅い」
帰宅するなり文句が飛んできた。
「また生徒会室?」
「そうそう」
「会長優しいから何も言わないけど、仕事の邪魔なんじゃないの?」
「一応俺も生徒会役員なんだけど」
「仕事してるところ見たことないし。どうせ無駄話しかしてないんでしょ?」
最近はそうだけど、普段は色々と……。
「ロリコン」
頭の中であーだこーだ考えていると、ロリコンの烙印を押された。
「父さんたちは?」
「今月は帰ってこれないって」
うちの両親は仕事柄家を空けることが多い。
「そっか」
「今日は?」
「シチュー」
料理は俺の担当。
妹は壊滅的に料理が下手、というわけではなかったが、どちらかというと俺のが上手かったから。
「……人参」
「小さく切るからちゃんと食べろ」
「今月は帰ってこれないって」
うちの両親は仕事柄家を空けることが多い。
「そっか」
「今日は?」
「シチュー」
料理は俺の担当。
妹は壊滅的に料理が下手、というわけではなかったが、どちらかというと俺のが上手かったから。
「……人参」
「小さく切るからちゃんと食べろ」
そうか「私が居るのに他の女なんか見ないでよね!!」みたいな感じか
夕飯、食事の席。
「そういえば……」
「なに?」
最近お兄ちゃんって呼んでくれないな。
言いかけて思いとどまった。
いきなりこんなことを言えばきっと機嫌を損ねるに決まってる。
まず何気ない話題で場をあたためてからにしないと。
「うちってご飯にシチューかけるだろ?」
「うん」
「世間一般ではご飯にシチューはかけないらしいぜ」
「知ってる」
予想外の答えだった。
「そういえば……」
「なに?」
最近お兄ちゃんって呼んでくれないな。
言いかけて思いとどまった。
いきなりこんなことを言えばきっと機嫌を損ねるに決まってる。
まず何気ない話題で場をあたためてからにしないと。
「うちってご飯にシチューかけるだろ?」
「うん」
「世間一般ではご飯にシチューはかけないらしいぜ」
「知ってる」
予想外の答えだった。
>>23
シチュー食い合わせはパンかパスタ
シチュー食い合わせはパンかパスタ
「絶対に知らないと思ってた」
「知ってるよ、それぐらい」
機嫌を損ねてしまったかもしれない。
「俺なんて最近知ったぜ。給食っていつもシチューにパンだったじゃん」
「うん」
「その謎が!ようやくとけたぜ!」
馬鹿っぽく言ってみた。
「馬鹿みたい」
笑ってはくれなかった。
「知ってるよ、それぐらい」
機嫌を損ねてしまったかもしれない。
「俺なんて最近知ったぜ。給食っていつもシチューにパンだったじゃん」
「うん」
「その謎が!ようやくとけたぜ!」
馬鹿っぽく言ってみた。
「馬鹿みたい」
笑ってはくれなかった。
「……」
ふと目をやると、妹はスプーンの先でコロコロ人参を転がしている。
不機嫌なのは俺の話がつまらなかったからだけではないようだ。
「どうしたんだ?」
「この人参、大きい」
「全部小さく切ったんだけどな」
「……大きい」
なおも抗議を続ける。
これ以上妹の機嫌を損ねてもしょうがない。
「かせよ、食べてやるから」
「ん」
ふと目をやると、妹はスプーンの先でコロコロ人参を転がしている。
不機嫌なのは俺の話がつまらなかったからだけではないようだ。
「どうしたんだ?」
「この人参、大きい」
「全部小さく切ったんだけどな」
「……大きい」
なおも抗議を続ける。
これ以上妹の機嫌を損ねてもしょうがない。
「かせよ、食べてやるから」
「ん」
「あーん……」
「馬鹿じゃないの」
昔はやってくれたのに。
「食べてやるんだからそれぐらいいいだろ」
「調子に乗らないでよ」
「食べてやらないぞ」
「……」
黙る妹。
鍋に戻すからいい!と拗ねないのがかわいい。
「どうしてもしないとだめ?」
押せばやってくれそうだ。
「馬鹿じゃないの」
昔はやってくれたのに。
「食べてやるんだからそれぐらいいいだろ」
「調子に乗らないでよ」
「食べてやらないぞ」
「……」
黙る妹。
鍋に戻すからいい!と拗ねないのがかわいい。
「どうしてもしないとだめ?」
押せばやってくれそうだ。
「冗談だよ。ほら、俺の皿によこせ」
「うん」
でもやらない。
俺はいいお兄ちゃんだから。
「人参ごめんな。今度はもっと注意する」
「別にいい」
「……」
「……」
黙る二人。
なんだか気まずい。
「お兄ちゃん」
「うん?」
「ありがと」
「うん」
でもやらない。
俺はいいお兄ちゃんだから。
「人参ごめんな。今度はもっと注意する」
「別にいい」
「……」
「……」
黙る二人。
なんだか気まずい。
「お兄ちゃん」
「うん?」
「ありがと」
「――ということがあったんですよ」
「それはよかったです」
いつもの生徒会室。
部屋の隅では年季の入ったストーブが赤々と燃えている。
「お兄ちゃんって久しぶりに言われましたよ。日数にして72日ぶりです」
「数えていたんですか?」
会長は相変らずの無表情だが、たぶんひいてる。
「冗談です」
「貴方の冗談は面白くないですね」
グサリと何かが刺さる音がした。
「それはよかったです」
いつもの生徒会室。
部屋の隅では年季の入ったストーブが赤々と燃えている。
「お兄ちゃんって久しぶりに言われましたよ。日数にして72日ぶりです」
「数えていたんですか?」
会長は相変らずの無表情だが、たぶんひいてる。
「冗談です」
「貴方の冗談は面白くないですね」
グサリと何かが刺さる音がした。
「でもまぁ、嫌われてるってことはなさそうですね」
「本当に嫌いなら口もききたくないです」
ふぅふぅしながらゆっくりとお茶をすする会長。
「個人的にはもっと呼んで欲しいですけど」
「そうなんですか、お兄ちゃん」
「……」
「……?」
首をかしげて疑問符を浮かべている会長は、小動物のようにかわいかった。
「本当に嫌いなら口もききたくないです」
ふぅふぅしながらゆっくりとお茶をすする会長。
「個人的にはもっと呼んで欲しいですけど」
「そうなんですか、お兄ちゃん」
「……」
「……?」
首をかしげて疑問符を浮かべている会長は、小動物のようにかわいかった。
「どうしたんです?」
「急にお兄ちゃんなんて言われたもんだから、びっくりしまして」
「……変でしたか?」
「全然!むしろかわいかったです!」
顔が赤くなる。
俺の顔だけど。
「ありがとうございます」
会長はにっこりと笑った。
笑われたのかもしれない。
「急にお兄ちゃんなんて言われたもんだから、びっくりしまして」
「……変でしたか?」
「全然!むしろかわいかったです!」
顔が赤くなる。
俺の顔だけど。
「ありがとうございます」
会長はにっこりと笑った。
笑われたのかもしれない。
「……ハァ」
大きなため息をつく。
「これ見よがしになによ。心配してほしいの?」
見透かされていた。
さすが妹。
「学校でちょっと」
「聞いてないんだけど」
「そうだな、ごめん」
「……」
聞いてくれとは無理に言わない。
「どうしたの?」
なんだかんだで心配してくれる妹は優しい子だと思う。
大きなため息をつく。
「これ見よがしになによ。心配してほしいの?」
見透かされていた。
さすが妹。
「学校でちょっと」
「聞いてないんだけど」
「そうだな、ごめん」
「……」
聞いてくれとは無理に言わない。
「どうしたの?」
なんだかんだで心配してくれる妹は優しい子だと思う。
「最近妹がお兄ちゃんって呼んでくれないなと思って」
「学校で何かあったんじゃないの?」
心配してくれたのが嬉しくて調子の乗る。
「あれ嘘」
「心配して損した」
失敗した。
「心配してくれたのか」
「……」
「お兄ちゃんは嬉しいぞ」
昔みたいにふざけ半分で抱きついてみる。
「や、やめてよ」
「小さい頃はこうしてじゃれあっただろ」
「小さい頃の話だよ。私たちはもう高校生なんだよ?」
抵抗はなかったが、今にも泣き出しそうな声でそう言った。
「学校で何かあったんじゃないの?」
心配してくれたのが嬉しくて調子の乗る。
「あれ嘘」
「心配して損した」
失敗した。
「心配してくれたのか」
「……」
「お兄ちゃんは嬉しいぞ」
昔みたいにふざけ半分で抱きついてみる。
「や、やめてよ」
「小さい頃はこうしてじゃれあっただろ」
「小さい頃の話だよ。私たちはもう高校生なんだよ?」
抵抗はなかったが、今にも泣き出しそうな声でそう言った。
宿題があるからと言って逃げられてしまった。
……数学の宿題が出ていたことを思い出す。
机に向かうはずの足は気がつけばベッドに向かっていた。
ゴロンと横になる。
「今日のは悪ノリが過ぎましたね」
会長に相談するように呟く。
会長だったらなんて言うかなぁ。
「100%貴方が悪いですね。今すぐ謝りに行くべきです」
こんな感じで叱られるな。
うん、謝りに行こう。
……数学の宿題が出ていたことを思い出す。
机に向かうはずの足は気がつけばベッドに向かっていた。
ゴロンと横になる。
「今日のは悪ノリが過ぎましたね」
会長に相談するように呟く。
会長だったらなんて言うかなぁ。
「100%貴方が悪いですね。今すぐ謝りに行くべきです」
こんな感じで叱られるな。
うん、謝りに行こう。
妹の部屋の前に立ち、扉をノックする。
しかし、返事はない。
「さっきのことで話があるんだ。部屋に入ってもいいかな?」
やはり返事はない。
出かけた様子はないから、部屋にいるはずなんだけど。
「入るぞ?」
「……」
妹はベッドに突っ伏して寝ていた。
しかし、返事はない。
「さっきのことで話があるんだ。部屋に入ってもいいかな?」
やはり返事はない。
出かけた様子はないから、部屋にいるはずなんだけど。
「入るぞ?」
「……」
妹はベッドに突っ伏して寝ていた。
妹は制服のままだった。
あの後すぐベッドに入って眠ってしまったのか。
室内とはいえ、布団もエアコンもかけずに寝れば風邪をひいてしまう。
自分の部屋から毛布を持ってきて妹にかけてやった。
「これで大丈夫だな」
満足して部屋を出る。
当初の目的は妹に謝るではなかったか。
夕飯に妹の好物をたくさん作って許してもらおう。
俺は買い物に出かけた。
あの後すぐベッドに入って眠ってしまったのか。
室内とはいえ、布団もエアコンもかけずに寝れば風邪をひいてしまう。
自分の部屋から毛布を持ってきて妹にかけてやった。
「これで大丈夫だな」
満足して部屋を出る。
当初の目的は妹に謝るではなかったか。
夕飯に妹の好物をたくさん作って許してもらおう。
俺は買い物に出かけた。
「ただい――ん?」
帰ってくると妹の靴がない。
何処かに出かけたようだ。
家出を考えたが、普段から高校生なんだからむにゃむにゃ言ってる妹が
家出なんかするわけがない。
大方友達の家に遊びに行ってるんだろう。
気にせず夕飯の準備を進めた。
帰ってくると妹の靴がない。
何処かに出かけたようだ。
家出を考えたが、普段から高校生なんだからむにゃむにゃ言ってる妹が
家出なんかするわけがない。
大方友達の家に遊びに行ってるんだろう。
気にせず夕飯の準備を進めた。
ホットケーキ。
妹が初めて作った料理だ。料理とは呼べないかもしれないけど、俺は大好きだった。
妹とケンカしたときにいつも妹が作ってくれて、「どう?おいしい?さっきはごめんね」なんていってくる。
俺は恥ずかしくて「もういいよ、気にしてないから」なんて言って一度も謝ることはなかったが妹はいつもそれで満足な顔をしてた。
そして夕食の時間に「おにいちゃん、ホットケーキおいしかった?」って聞いてくるが、変なプライドが邪魔してまあまあだなとしか言えなかった。
そしてケンカのことなんて忘れて家族で仲良く話していた。
俺が二十歳になったとき、久しぶりに家で正月を過ごすことになった。
妹は久しぶりに会えてうれしいのか16歳のくせにはしゃいでいた。
だが、酒も入っているせいか俺は妹とくだらないケンカをしてしまった。
原因は俺が彼女を家につれてきたいと言い出したことからだった。
そのあとしばらくして妹はまたいつものようにホットケーキを作って持ってきた。
だけど、俺は手もつけずに自分の部屋へと戻ってしまった。
いつも笑顔だった妹がこのときばかりは悲しそうな顔をしていたが、俺は寝た。
起きたのは夕方7時過ぎ。なぜか家が慌ただしかった。
どうしたのか聞く前に母が、妹が交通事故にたった今遭って危険な状態だと教えてくれた。
どうやら夕食の食材を買いに行っていたときに事故に遭ったらしい。
俺たち家族はすぐに病院に向かったが、もう遅かった。死んだ。妹が死んだ。
どれくらい経ったかはわからないが、しばらくして俺は1度家に帰ることになった。
台所のテーブルには妹の作ったホットケーキがあった。
なんであのとき笑顔でこれを食べなかったんだろうと悔やんだ。
俺はあふれ出る涙と一緒に妹の好きだったジャムをかけてホットケーキを食べた。
「妹、おいしいよ…… 」
妹が初めて作った料理だ。料理とは呼べないかもしれないけど、俺は大好きだった。
妹とケンカしたときにいつも妹が作ってくれて、「どう?おいしい?さっきはごめんね」なんていってくる。
俺は恥ずかしくて「もういいよ、気にしてないから」なんて言って一度も謝ることはなかったが妹はいつもそれで満足な顔をしてた。
そして夕食の時間に「おにいちゃん、ホットケーキおいしかった?」って聞いてくるが、変なプライドが邪魔してまあまあだなとしか言えなかった。
そしてケンカのことなんて忘れて家族で仲良く話していた。
俺が二十歳になったとき、久しぶりに家で正月を過ごすことになった。
妹は久しぶりに会えてうれしいのか16歳のくせにはしゃいでいた。
だが、酒も入っているせいか俺は妹とくだらないケンカをしてしまった。
原因は俺が彼女を家につれてきたいと言い出したことからだった。
そのあとしばらくして妹はまたいつものようにホットケーキを作って持ってきた。
だけど、俺は手もつけずに自分の部屋へと戻ってしまった。
いつも笑顔だった妹がこのときばかりは悲しそうな顔をしていたが、俺は寝た。
起きたのは夕方7時過ぎ。なぜか家が慌ただしかった。
どうしたのか聞く前に母が、妹が交通事故にたった今遭って危険な状態だと教えてくれた。
どうやら夕食の食材を買いに行っていたときに事故に遭ったらしい。
俺たち家族はすぐに病院に向かったが、もう遅かった。死んだ。妹が死んだ。
どれくらい経ったかはわからないが、しばらくして俺は1度家に帰ることになった。
台所のテーブルには妹の作ったホットケーキがあった。
なんであのとき笑顔でこれを食べなかったんだろうと悔やんだ。
俺はあふれ出る涙と一緒に妹の好きだったジャムをかけてホットケーキを食べた。
「妹、おいしいよ…… 」
妹が帰ってきたのは8時半過ぎだった。
いつもは遅くても夕飯前、7時までには帰ってくるのに。
「遅かったな。夕飯出来てるぞ」
「いらない」
「え?」
「……食べてきたから」
携帯を確認する。
「連絡するの忘れてた」
気まずそうに妹が答えた。
いつもは遅くても夕飯前、7時までには帰ってくるのに。
「遅かったな。夕飯出来てるぞ」
「いらない」
「え?」
「……食べてきたから」
携帯を確認する。
「連絡するの忘れてた」
気まずそうに妹が答えた。
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