元スレ折木「俺が過去になる前に」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
1 :
摩耶花「それってストーカーじゃない!」
夕暮れの地学準備室―――我らが古典部の部室に、突如伊原の怒声が響き渡った。
いや、本当は突如でも何でもないのだろうが、
前後の話を全く聞いていなかったのでひどく唐突に聞こえた。
俺は文庫本から視線を上げる。
折木「急に大声を出すな。どうした?」
える「!」
摩耶花「はぁ?あんた聞いてなかったの?」
伊原はあからさまな非難の眼差しを俺に向ける。
それはつまり、いつも通りの表情で、ということだ。
2 :
うわぁ………地の文とか書いてて恥ずかしくないの?
3 = 1 :
折木「失敬だな。ちゃんと聞いていたぞ。…………ストーカーのくだりから」
摩耶花「……………つまり、今の今まで聞いてなかったってことね。死ねばいいのに」
える「摩耶花さん……」アタフタ
折木「………?」
何故か千反田の方が慌てている。
どういうことだ。さっぱり話が見えない。
4 = 1 :
福部「鈍いなー。まだ分からないのかい、ホータロー?」
まだも何も聞いていなかったのだから……………ん?
折木「…………まさか」
福部「そうさ」
摩耶花「だから、ストーカーに遭ってるのはちーちゃんなんだってば!!」
本日二度目の、伊原の怒鳴り声が炸裂した。
5 = 1 :
える「えーと……そういう大袈裟なことではないんですけど………」
摩耶花「ちーちゃん、人よすぎ!
帰り道で待ち伏せしてるのがストーカーじゃなくてなんだっていうの!?」
える「それは………」
摩耶花「あああ気持ち悪い!!絶対許せない、文句言ってきてやるわ!」
折木「待て」
摩耶花「何よ、止める気?」ギロッ
俺を視線で射殺さんばかりに睨みつける伊原。
誰がそんなおそろしいことをするか。
だが、
6 = 1 :
折木「千反田が違うと言っているんだ。一旦冷静になって話を聞こうじゃないか」
摩耶花「アンタ、自分が話聞いてなかったから一から説明させようってんじゃないでしょうね?」
否定はしない。
福部「ホータローの言うことにも一理あるね。僕らも話のさわりしか聞いてないし」
摩耶花「………まぁ、確かに」
里志のフォローに伊原は少しだけ冷静になったようだ。
7 = 1 :
さて、うるさいのが黙ったところで本題に入ろう。
折木「千反田」
える「は、はい」
折木「伊原の言ったことは本当か?」
える「………」
折木「ストーカーに遭っているというのは事実か?」
える「…………少しだけ、違います」
8 :
みてるよ
9 :
1クール目のOPの方がオレは好きだったぜ
10 = 1 :
「少しだけ」。
それが千反田の精一杯なのだろう。
こいつは他人に対してマイナスの感情を向けることを極端に嫌う。
性善説論者と言い換えてもいい。
根拠があろうとなかろうと、自分の裁量で他人を「悪い奴だ」と決めつけることに強い抵抗があるのだ。
「ストーカー」といういかにも犯罪者のような呼称を用いるのが嫌なのだろう。
11 = 1 :
だがその反面、千反田は嘘がつけない。
嘘が嫌いなのではない。嘘をつくためのスキルが絶望的に欠けているのだ。
またその性格ゆえに、事実に反することや憶測に基づく不確かなことも言わない。
つまり、
折木「『少しだけ』、か………どこが違う?」
える「ストーカーなんてそんな大袈裟なことでは、ないと思います」
12 = 1 :
折木「そうか。
………で、どこまでが本当だ?」
える「………………」
える「通学路で、その方とよくお会いするのは、本当です」
13 :
面白い
14 :
原作読者とみた!
15 = 1 :
………
………………
………………………
える「つい一週間前のことです」
俺の、というよりは伊原の追求をかわしきれず、千反田は観念して事の顛末を語りだした。
える「帰りに商店街の本屋さんに寄ったとき、同じ中学校の方と偶然お会いしたんです」
千反田と同じ中学というと、印地中のヤツか。
ここからは割と距離があるはずだが。
える「ええ。ですから、通学路で印地中学校の方とお会いすることはほぼないんです」
16 :
ついに来てしまったか
19 = 1 :
折木「ふむ。それで?」
える「はい。その方は印地中学で生徒会長をされていた方でした。
私、すっかり懐かしくなってしまって、声をかけてご挨拶したんです」
折木「………」
なるほど。いわゆる「旧交を温める」というやつか。
まぁ同じ中学のヤツに久しぶりに会えば普通はそうなるか。
向こうが声をかけてくれば、俺でも返事くらいはするだろう。
………そいつのことを思い出せればの話だが。
20 = 1 :
折木「………それで、その後は?」
える「はい。ご挨拶したのは会計を済ませた後でしたので、そのままお店を出ました」
折木「ふむ………」
今のところ、特段不審な点は見当たらない。
千反田も何かを隠しているようには見受けられなかった。
しかし、
折木「なるほどな。
…………それで」
える「!」ビクッ
折木「次にそいつに会ったのはいつだ」
える「…………本屋さんでお会いした、その次の日です」
22 = 1 :
………
………………
………………………
千反田によると、次の日もその男(性別は後から聞き出した)は通学路に現れた。
それでもまだ、千反田は偶然だと思っていたらしい。
だが、三日目にも姿を見せた。
それが四日、五日と続き、
六日目、つまり昨日になってようやく偶然ではないと悟ったようだ。
折木「…………」
える「あの……折木さん?どうかされましたか?」
折木「……すまん。少し絶句してた」
24 = 1 :
というよりも、あきれてものも言えない。
そりゃ伊原があれだけ怒鳴るのも無理は……
福部「…………」
摩耶花「……………」
折木「おい」
何でお前らまで呆然としているんだ。
福部「ああ、ごめん……さすがに気付いたのが昨日って言う話は初めて聞いたよ」
摩耶花「私も……」
26 = 1 :
える「え、ええと……私、また何か粗相を……?」
折木「いや、別に………それで?」
える「それで……と、言いますと?」
折木「いや、だからそんなに付きまとわれるような理由に何か心当たりはないのか?」
える「心当たりですか………あれっ?」
折木「何か思い出したのか?」
27 = 14 :
えるたそ~
29 :
結構面白いぞ
30 = 1 :
える「ええ、心当たりと言いますか……」
何故か千反田の歯切れが悪い。
折木「別に具体的な理由でなくてもいい。手掛かりになりそうなことは何でも話せ」
どうして俺はこんなに必死になっているんだ。
「やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなくてはならないことなら、手短に」
それが俺の不変のモットーだというのに。
それとも、
これが俺の「やらなくてはならないこと」なのだろうか。
…………莫迦な。
31 :
面白いやん
支援
32 = 16 :
近頃胸チクが多いよね
快感
34 = 1 :
える「………折木さんがそうおっしゃるなら、お話ししますけど」
折木「ああ」
える「一番最初にご挨拶したとき、なぜかその方がとても驚いていたんです」
驚いていた?
折木「久方ぶりだったからじゃないのか?」
摩耶花「だったらちーちゃんの顔を見た瞬間驚くでしょ。ちょっとは頭使いなさいよ」フン
コイツ……今の今まで黙っていたくせにここぞとばかりに。
える「でも、摩耶花さんの言った通りです。その方が驚かれたのは、私がご挨拶をしてお店を出る寸前だったんです」
36 = 29 :
え
38 = 14 :
え
41 = 1 :
店を出るときに驚いた……
折木「………なるほど」
える「!
何か分かったのですか!?」
折木「ああ。おそらくそいつはお前自身じゃなく、お前の言ったことに驚いたんだろう」
える「私の言ったこと、ですか?」
折木「そうだ」
福部「なるほど!それなら、去り際に驚いたことの説明がつくね」
42 = 16 :
そ
43 = 1 :
折木「ああ」
そしてそれが、この一件の発端だろう。
える「…………」
千反田は黙ったままうつむいている。
大方くだらないことを考えているのだろう。
折木「千反田」
える「は、はい!」
折木「お前のせいじゃない」
える「!」
45 :
そ
46 :
ジュ
47 :
休憩
48 :
あい
49 = 48 :
ほ
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