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元スレクリス「私とまゆりのどっちかが死ぬはずだった?」 岡部「そうだ」
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岡部「そうして俺は、最終的に自分自身を騙してお前を助けた」
クリス「信じられない……」
岡部「無理もない…………だが事実だ……」
クリス「……ちょ、ちょっと待って……整理させて……」
岡部「あぁ」
クリス「……つまり、岡部は過去にタイムリープマシンを完成させて、まゆりと私を助けたって……そういうこと?」
岡部「限りなく簡潔に言えばそういうことになる。」
クリス「うん…………。……で、そのアトラクターフィールド……?」
岡部「あぁ、世界線収束範囲だ。……その世界線で起きる事柄は、大小の差はあるが確実に起こる。」
クリス「……で、その世界線で起きる事は、未来から観測された事柄……」
岡部「……そうだ。未来から観測された事柄は、たとえタイムトラベルを利用したとしても必ず起こる。」
クリス「……確定された私たちの死を、回避するための世界線がこの、シュタインズゲート……ってわけなの……?」
岡部「そうだ。このシュタインズゲートだけが、少なくとも2025年までは、完全に何が起こるか決まっていない世界なのだ。」
クリス「……待って、そこのところがよくわからない。もっと詳しく教えて。そもそもどうして私の死は観測されているのに、回避できたの?」
岡部「………少し長い話になるんだが……まず7月に俺が中鉢博士の会見に……」
そうして俺は、全てをクリスに打ち明けた。
クリスはやはり理解度がずば抜けていて、俺ですらあいまいにしか理解していないことを
きちんと言語化し概念付けた。
さて、そろそろ説明しておかないといけないだろう。
何故俺が、いきなりクリスに過去の事を打ち明けたのか。
それには深刻な原因があった。
まゆりが死んだのだ。
数日前のことだ。
いつものように、ラボに集まってダラダラ過ごし、解散する。
夜遅かったこともあり、まゆりを家まで送る事にした俺は、まゆりと一緒にまゆり家を目指した。
まゆりの家の前まで送り届け、家に帰ろうとする俺をまゆりが引き止める。
まゆり「オカリンオカリン。中であったかい物でも飲んでいかない?」
岡部「うーん、こんな時間にお邪魔しても悪いだろ。俺は帰るよ」
まゆり「えー、誰もオカリンを邪魔なんて思わないのです……」
岡部「また明日。じゃあな。まゆり」
まゆりに手を振りつつ、踵を返し、駅に向かう。
まゆり「うん。またね!オカリ……」
数歩進んだところで、後ろを振り返ると、まゆりが倒れていた。
転んだのか?
と、思ったが身動ぎ一つしないのを見て、俺はすぐに駆け寄った。
岡部「ま、まゆり!まゆり!どうした!?」
まゆりの肩と腰に手を当て、呼びかけてみるが、全く反応しない。
それどころか、呼吸する様子さえ感じられない。
これはまずい。
そう察知した俺は、即座にまゆり家のインターフォンを押し、救急車を呼んでもらった。
まゆりの両親もあわてて表に出てき、俺は急いで事情を説明した。
そうして、ご両親と共に救急車を待つ事5分弱。
ようやく、サイレンと共に救急車が到着した。
中から、救急救命士と思われる作業着を着た2人が出てき、まゆりの横にかけつける。
俺は後ろからまゆりの容態を説明すると、二人はまゆりをタンカに乗せ、救急車へと運んだ。
付き添いにまゆりのお父さんが乗り、俺とお母さんはまゆり家に待機した。
そうして連絡を待つ事30分。
ようやく受け入れ先の病院住所を聞く事ができ、俺たちはタクシーで直ぐに病院に向かった。
待っていたのは絶望だった。
病室のベッド上に横たわるまゆり。
その横で涙を浮かべるお父さん。
そして隣で佇む医者。
俺は即座に理解した。
あぁ、まゆりが死んだ。と
呆然と突っ立ったままの俺に、医者が声をかけてきた。
曰く、死因は不明。
曰く、手の施しようがなかった。
曰く、曰く、曰く。
俺の頭には、何一つとして入ってこなかった。
あらゆる疑問でパンク状態の
支離滅裂、混沌の極みの俺の頭の中に
あるひとつの思考が浮かぶ。
【俺は、この死に方を知っている】
あの死に方は間違いなく、アトラクターフィールドの収束によるものだった。
前触れもなく、原因不明の死など、それ以外にありえない。
だが、今居るこの世界線【シュタインズゲート】では、
SERNも居なければ、世界大戦も起こらない。
もっと言ってしまえば、タイムマシンが【絶対に】開発されない世界なのだ。
だから未来を観測する者は存在しないし、
故に、アトラクターフィールドの収束は起こりえない。
なのにまゆりは死んだ。
これは一体どういうことなんだ。
もしかしたら、何かの弾みでタイムマシンが開発され、
何かの弾みで未来が観測され、その結果、まゆりの死が確定されたのかもしれない。
そう考えたが、ありえないという結論に達した。
まず、この世界線上の未来において、少なくとも、2025年までにタイムマシンが開発されていないのは明白だ。
なぜなら鈴羽がこの時代にタイムトラベルしてこなかったからだ。
鈴羽の存在は一種の指標と言っていい。
SERNが統治する世界にしろ、第三次世界大戦が起こる世界にしろ、
どっちみちタイムマシンは必ず開発され
鈴羽が必ずそれに乗って、未来から分岐線である2010年にやってくる。
これは決まっている流れであって、故にその鈴羽が来ないと言う事は
未来において、少なくともタイムマシン絡みの大災害は起こらないと言う事だ。
タイムマシンが開発されていないということは、未来を観測する者はおらず、その結果アトラクターフィールドの収束は起こり得ない。
なのにまゆりは死んだ。
アトラクターフィールドの収束によって。
誰もまゆりの死なんて観測していないのに。
未来など決まっていないのに。
考えても考えてもわからなかった。
それでも考え続けて、やがて日が落ちた頃。
俺は、決心した。
まゆりを救うために、もう一度。タイムマシンを作ってみよう。
あれほど二度とは、つくらないと誓ったのに、わずか数ヶ月で反故にするなんて
運命のいたずらとしか思えない。
(いや、運命なんて言葉はシュタインズゲートでは存在しないのだったな。)
そう苦笑した瞬間にあるひとつの考えが浮かんだ。
水泡のように突然浮かんだそれを必死で否定しようとした。
だが否定しようとすればするほど、その仮説はピタリと疑問に嵌まり
これ以上ないくらいの解に思えた。
【ここはシュタインズゲートではない?】
一人で考えるのは非効率的だ。
俺がようやくそう考えたのは、まゆりの死を知らせてからすっかり消沈してしまったクリスを見てからだ。
一人で考えるより、クリスに相談して二人で考えたほうが遥かに良い。
なぜなら、今ソファで顔を埋めているそこの助手は
過去未来において、タイムトラベルの権威だからだ。
自分一人で考えるよりも、クリスにすべてをうち明かした方がずっと効率的である。
過去の経験からそれがわかっている俺は、クリスにすべてを話した。
俺がようやくそう考えたのは、まゆりの死を知らせてからすっかり消沈してしまったクリスを見てからだ。
一人で考えるより、クリスに相談して二人で考えたほうが遥かに良い。
なぜなら、今ソファで顔を埋めているそこの助手は
過去未来において、タイムトラベルの権威だからだ。
自分一人で考えるよりも、クリスにすべてをうち明かした方がずっと効率的である。
過去の経験からそれがわかっている俺は、クリスにすべてを話した。
事情を説明しはじめて、既に5時間は経過していた。
やがて時刻は深夜に差し迫ったあたりで、
ようやく俺とクリスは対等の位置で議論できるようになった。
クリス「……考えてもさっぱりわからないわ……」
岡部「全く同感だ……」
クリス「岡部……まゆりの死は、本当にアトラクターフィールドによる収束の死だったの?」
岡部「……それは……間違いない……何度も何度も見てきたんだ。あの死に方を……」
クリス「…………ごめん……」
そうして、しばらく無言で考えていたクリスが口を開いた。
クリス「……考えられる仮説としては、この世界線の未来でタイムマシンが開発されるってことよ」
岡部「それは俺も考えてた。……だが、タイムマシンが開発される世界の時はかならず鈴羽がこないといけないんだ」
クリス「そこからおかしいのよ」
岡部「……え?」
クリス「別にタイムマシンが開発されたら、鈴羽さんが来ることは確定じゃない」
岡部「……だ、だが今までの世界線では、全て鈴羽が来て居たんだぞ!」
クリス「統計論は、その状況が違えば全く意味を成さないわ。……それに鈴羽さんが、今から1年後に来る可能性も否定はできない」
岡部「……い、いや!1年後だと駄目なのだ!…………鈴羽は、2000年と2010年がアトラクターフィールドの分岐点だと言っていた。」
クリス「分岐点……?」
岡部「そうだ。Dメールを作ったこの年が未来の、SERNが支配する世界や、第三次世界大戦が起きる世界への分岐点となっているのだ」
クリス「……………………」
岡部「だから、タイムマシンが開発されていたのならば、鈴羽が今ここに、世界線を変える為に存在してないと駄目なのだ」
クリス「…………いや、ちょっとまって……」
岡部「どうした?」
クリス「岡部っ!さっきのもう一回言って!」
岡部「…………?……だからタイムマシンが開発されたのならば……」
クリス「違う!その前!」
岡部「その前……?…………2000年と2010年の分岐点か?」
クリス「それ!……そこがわからないわ」
岡部「……だから2010年にはDメールを開発してしまい……
クリス「2010年はわかるの……DメールをSERNが見つけたり、父が私の論文を使ってロシアに亡命したり、あらゆる世界線への分岐点になってるのは理解できるわ……」
岡部「なら何を……?」
クリス「でもね、2000年が引っかかるの。……人類の未来がかかってるこの2010年と等しい分岐点って……いったい何があった?」
岡部「それは…………鈴羽が言っていたが、2000年問題がどうのこうのって……」
クリス「確かに……2000年にはミレニアムバグがあったわ……」
岡部「それゆえの分岐点だろう……?」
クリス「…………ていうか、そもそも2000年問題って何か知ってる?」
岡部「パソコンのプログラム上の問題だろう……?2000年が1900年に誤認識してしまう……」
クリス「そう。それがミレニアムバグ。……………確かに、発電機関や交通機関なんかは多少影響視されるかもしれない……」
岡部「…………」
クリス「……もしかしたら、ミサイルなんかも誤作動で発射されちゃうかもしれない……」
岡部「…………」
クリス「でも、岡部が知ってるとおり、2000年は何も起こらなかったわ。」
岡部「それはこの世界での話だろう?別の世界では起きたかもしれない」
クリス「仮に起きていたとしても、それが人類の存続に関わる何かに影響するほどの物なの?」
岡部「ありえることだろう……?……仮にミサイルが他国に向かって誤射されていたらこれは重大な分岐になるはずだ」
クリス「……限りなく低い確率の元で、他国に向かってミサイルが発射されたとしても、当時の技術ならなんなく撃墜できたはずよ。」
岡部「ミサイルが落ちるかどうかが問題じゃなくて、発射された事自体が問題なんだろう……?……それが引き金で第三次世界大戦も否定できないだろうし……」
クリス「……確かに、その考えから言ったら、2000年が重大な分岐点となっているのは理解できるわ」
岡部「なら何がひっかかるんだ……?」
クリス「別に2000年じゃなくても関係ないって事よ。」
>>19
バイオハザード
バイオハザード
岡部「…………?」
クリス「別に、戦争なんて起こそうと思えば簡単に起きるわ。……誰かが核のボタンを押せばいいだけだもの」
岡部「それは……そうだが……」
クリス「わたしは、……アトラクターフィールドの分岐点の重要性は……そういうものじゃないと思ってる……」
岡部「…………どういう意味だ……?」
クリス「何かひとつをした時、そのひとつが次のひとつに繋がって、最終的にあることに繋がる……」
岡部「……………バタフライエフェクト……」
クリス「そう。さっき岡部が言った話。……メタルうーぱを岡部が引き当てて、それをわたしが拾って、お父さんがそれを持ってロシアに飛ぶ」
岡部「その結果、各国のタイムトラベル開発戦が起こり、世界大戦まで起こった……」
クリス「……たった一つで57億人を殺す惨事にまで発展したわ。…………アトラクターフィールドの分岐点の重要性は、これだと思う」
岡部「つまり、連鎖性……ということか……?」
クリス「そう。連鎖が起これば起こるほど、その分岐の数も増えて等比数列的に世界は分岐するわ。だから2010年はとても重要な年なわけ」
岡部「……なら2000年は……?」
クリス「2000年問題も重要なファクターになってるのは疑えないけど、それだけだとどうしても納得がいかない……」
岡部「……何が納得いかないと言うのだ……」
クリス「さっきも言ったでしょう!……1991年の湾岸戦争や、2010年のタイムマシン関連なら納得できる!その影響力が!」
岡部「…………」
クリス「でもミレニアムバグは違う!不確定すぎるのよ!……さっきも言ったように戦争なんてどの世界線でも起き得る事だし、特別2000年だからって何かあるわけじゃない」
岡部「……結局、お前の結論はなんなのだ……?」
クリス「……わたしの結論はこうよ。」
【2000年にはミレニアムバグに隠れたバタフライエフェクトが存在する】
岡部「隠れた……分岐……?」
クリス「そう。……気づかないような、些細な事で……それで居て、人類の存続が関わっているような、何か重要な出来事があったはずなの……」
岡部「それは一体……なんだと言うのだ……?」
クリス「…………わからない…………2000年に何が起きたか覚えてる……?」
岡部「2000年……2000年…………悪いが思い出せない……」
クリス「そうよね……今から10年も昔だもの…………」
岡部「………………」
クリス「……でも、必ず何かがあるはずよ。それこそ世界の分岐点たる何かが……」
岡部「………………」
クリス「……?……何か思い出した……?」
岡部「…………いや、……なんでもないな……」
クリス「岡部。」
岡部「……どうした?」
クリス「例えどんな事であろうと、思い浮かぶことがあったら教えて。……それがバタフライエフェクトになってるかもしれない……」
岡部「……あぁ、わかった。……これからは全てを話す……」
クリス「……うん。…………で、さっきはどうしたの?」
岡部「いや、……2000年というか、ほとんど1999年の話なんだが……」
クリス「うん」
岡部「風邪を引いて、高熱に苦しんでいたんだ。一ヶ月ほど」
クリス「………………」
岡部「……で、2000年になった時に、峠というか……死にそうな感じがしたんだ。……世界がグルグル回るような感じがして」
クリス「………………」
岡部「……その感覚がしばらく続いた後、ふと世界の回転が収まったんだ。……で、気づいたら熱もすっかり退いてた」
クリス「………………」
岡部「……それだけなのだが……クリス……?」
クリス「…………ぇっ!?……」
岡部「どうした?何か思案してるようだが……」
クリス「………………」
岡部「………クリス……?」
クリス「…………あ、あのね……」
岡部「ん?」
クリス「これは、…………あくまでも仮説なんだけど……」
岡部「…………もしかして……何かに気づいたのか……?」
クリス「か、仮説よ!仮説!…………仮説なんだけど…………」
岡部「……あ、あぁ……」
クリス「…………岡部さ…………」
岡部「…………?」
クリス「……その時に、死んでない?」
岡部「…………順序だてて、説明してもらおうか……?」
クリス「あ、うん……えっと……その………………あぁごめん!頭が追いつかない!」
岡部「クリス……落ち着いてくれ……俺にはお前だけが頼りなのだ……」
クリス「……ま、待って…………今論理立ててるから…………」
岡部「………………」
クリス「………………」
そうして数分が過ぎた。
そこら辺の番組真っ青の引きを残して、このお預けは中々に堪えるものがある。
俺は一刻も早く、さきほどの発言に対する考えを聞かせてほしいのだが。
そうして身悶えていると、ようやく思案が終わったクリスが顔を上げて話始めた。
クリス「これはあくまでも仮説の話よ。……前もって言っておくけど。……過信は禁物」
岡部「…………あぁ、わかっている」
クリス「2000年の、当時は10歳?の岡部は風邪を引いた」
岡部「あぁ。」
クリス「その風邪は1ヶ月近くも長引いて、最後の方には死にそうだった」
岡部「…………あぁ」
クリス「で、何故か世界が回るような感覚がして、その少し後に、何故か体調が全快していた」
岡部「……その通りだ」
クリス「この世界がグルグル回るって表現、さっき思ったんだけど、……岡部が話してくれた……リーディング……?」
岡部「リーディングシュタイナーだ」
クリス「そう。………その力が発動した時と似てない……?」
岡部「……い、今考えると確かに……似ていなくも………ないな………」
クリス「で、そっから考えたんだけど………………繰り返し言うけど、仮説よ……?」
岡部「……わかっている」
クリス「もしかして、岡部は本来そこで死ぬ予定だったんじゃないのかしら……」
岡部「…………なんだと……?」
クリス「岡部が本来、そこで死ぬ予定だったとすると、全てが合わさるの。」
クリス「何で2000年が、2010年と等しいほど重要な年なのか……それを考えると一つの結論に至ったわ」
岡部「…………なんだ?」
クリス「2010年の【タイムトラベル関連】の分岐点に匹敵するには、2000年の分岐点も【タイムトラベル関連】でないとおかしいって事」
岡部「…………」
クリス「もし岡部が2000年に死んでいたとするとどうなるか考えてみたの」
岡部「……あまり物騒な話ではないな……」
クリス「………仮説よ」
クリス「お父さんが秋葉原で会見をするって事は何も変わらないはず。」
岡部「あぁ、その時点では俺は何も関わっていないからな……」
クリス「問題はその後、岡部の話によると、私がパパにタイムトラベルの論文を見せて、それをパパが盗用しようとして、咎めたわたしが殺された……のよね?」
岡部「…………殺したのは俺だったがな……」
クリス「誰が殺したかは問題じゃないわ……要は、パパがタイムトラベルの論文を持ったままロシアに亡命して、わたしの理論を誰にも邪魔されずにパパの理論として発表するって事が重要なの」
岡部「その通りだ。…………その結果、タイムトラベル開発合戦が起こり、第三次世界大戦が起きる……」
クリス「これが岡部が死んでいた場合の世界よ。……岡部が死んで、私も死んで、第三次世界大戦も起きる…………仮説だけどね」
岡部「…………最悪な世界だな……」
クリス「本当にね。…………でもこの仮説なら、2000年の岡部の死が、2010年の分岐点と同じぐらいの重要性が持つって所は満たすと思う」
岡部「…………確かに。…………実際その後、俺がタイムマシンを開発して、世界大戦が起こらないシュタインズゲートに移行させたからな……」
クリス「でも、岡部は生きている」
岡部「…………あぁ」
クリス「だから私はこう考える。………2000年で岡部が死んでいる世界線……これを仮にA世界と言うわ」
岡部「…………」
クリス「このA世界では、タイムマシン開発合戦が行われ、その結果世界大戦が起きる。…………ここまではほとんど確定……」
岡部「……だろうな……」
クリス「問題はこの後。…………私は、【このA世界でタイムマシンが開発された後、2000年の岡部を助けに行った人物が存在する】…………と考えた」
岡部「………………」
クリス「その結果。…………その謎の人物が岡部を助けた瞬間に世界線は移動して、岡部はその時のリーディングシュタイナーの力を風邪の影響と勘違いしたのよ。」
岡部「……じゃあ勝手に熱が引いたのではなく……」
クリス「詳しくはわからないけど、おそらく…………そんな病気にかかってない世界線に移動したのか、それともその謎の人物が薬やらを処方したのか……いずれにせよ、その時に世界線は入れ替わったのよ」
岡部「…………ま、まてまて!」
クリス「……なに?」
岡部「……お前の仮説はわかった……確かにその理論で言うと2000年の分岐点はミレニアムバグの影響ではないということも理解できる」
クリス「…………」
岡部「しかし、それとまゆりが死ぬことは何も関連がないぞ?」
クリス「…………」
岡部「だから、この話とまゆりの死については何も関連性はない。…………違うか?」
クリス「………………あるのよ」
岡部「………え?……」
クリス「だから言ったでしょ…………ある仮説を元にすると、全ての謎がピタリと嵌まるの……」
岡部「…………ど、どういうことだ……?」
クリス「だからね、……さっきから言っている、その謎の人物が……」
岡部「………………」
クリス「…………まゆりなのよ」
【蜃気楼上のシュタインズゲート】 12章 完
岡部「悪いが、俺の頭では理解できない……」
クリス「……考えてみて、このシュタインズゲートでは、タイムマシンは、少なくとも2025年まで絶対に開発されないわ」
岡部「…………あぁ」
クリス「なのにアトラクターフィールドの収束が起きた。……これが何を意味するか……」
岡部「………………」
クリス「つまり、まだ矛盾が生じているのよ」
岡部「……だ、だが未来は観測できないはず……」
クリス「…………その未来が観測できない世界。シュタインズゲートに到達できたのは誰のおかげ……?」
岡部「そ、それは、この俺だが……」
クリス「そう。岡部のおかげよ。…………ならその岡部は本来2000年には死んでるはずなのに、どうして2010年まで生きてて、世界をシュタインズゲートに移行できたの?」
岡部「…………お前の仮説によるならば…………まゆりが2000年の俺を助けたから…………ということになる」
クリス「そのまゆりは、どうやってタイムトラベルできたの……?」
岡部「………………あ、」
支援するが岡部がいなかったら、メタルウーパがでない訳だから、中鉢論文って燃えるんじゃないか?
クリス「気づいた?……矛盾が起きるのよ。……岡部を助ける事と、まゆりがタイムトラベルすることは本来並行してはいけないことなの」
岡部「…………もし、俺が死んでいたのなら……」
クリス「……2010年にシュタインズゲートに移行することなく、そのままA世界に到達するわ。……その後まゆりは開発されたタイムマシーンで2000年の岡部を救いに行く」
岡部「…………2000年の俺を助けたら……」
クリス「……岡部は2010年まで生きて、その後シュタインズゲートの扉を開けて、タイムマシンを作らない世界にするわ……」
岡部「…………つまり、……俺を助けたら、……まゆりが俺を助けにこれなくなる……」
クリス「矛盾するって言った意味がわかった……?これは親殺しのパラドックスに酷似してるわ……」
岡部「だ、だが、この通り俺は生きてて、世界をシュタインズゲートに移行させることもできた!……これはすなわち、お前の理論は間違っているということにならないか!?」
クリス「確かに、岡部が本来死んでいた……なんて私の憶測に過ぎないわ………でも、まゆりがアトラクターフィールドの収束によって死んでる以上、何かしらの矛盾の代償を取らされたと考えるしかない」
岡部「そ、それに!この世界線上で、未来永劫タイムマシンが開発されないなんて保証は……どこにも……」
クリス「……さっきと言ってる事が違うけど…………それでも駄目よ。」
岡部「……何故だ!?」
クリス「……この世界線上で、仮にタイムマシンが作られたとしても、まゆりがそれを使って、2000年の岡部を助ける意味がない」
岡部「……ど、どういう意味だ……」
クリス「……この世界線上のまゆりにとって、岡部は2000年に死ぬ存在じゃない。だから助けに行く理由が存在しない」
岡部「………………」
岡部「………………」
クリス「そして、そう考えた結果……まゆりが死んだ理由を説明できるようになる」
岡部「…………な、なんなんだ……」
クリス「岡部が本来2000年に死んでいる」
クリス「そして、まゆりがなんらかの方法を使って、矛盾を生じさせないで岡部を助ける」
クリス「その代償として新たに生じた矛盾によって殺された……そう考えられるの」
岡部「……あ、新たな矛盾……?」
クリス「……えぇ。……一番初めの矛盾。これをクリアしないと岡部は助けられない。……ここまではいいわね?」
岡部「……あぁ……」
クリス「現実に岡部は2010年まで生きていて、シュタインズゲートに世界を移行させた。……という事は初めの矛盾はクリアできてるのよ。信じられないけど」
「問題はその後」
岡部「……後……?」
クリス「……まゆりは何かしらのタイムトラベルトリックを使った……。おそらく……岡部が15年費やした執念の策に匹敵する何かを考えて……」
岡部「……ま、まゆり……」
クリス「どれくらい悩んだのかは知らないけど……、おそらく血のにじむ思いで考え出したのよ……」
岡部「………………」
クリス「でも待っていたのは新たな矛盾だった……」
岡部「……………その結果が……まゆりの突然死……と、そういいたいのか……?」
クリス「そうとしか考えられないわ」
俺とクリスは気づけば一晩議論しあっていた。
そうして、得た結論は
『まゆりは何かしらのトリックを使い、親殺しのパラドックスを回避したが、新たに生じた矛盾によって収束された』
という物だった。
結局、仮説は仮説の域を出ず、
当然のように解決策は生まれなかった。
そうして一週間が過ぎた。
まゆりの葬儀やらなにやらで慌しい一週間で、
だが、それ以上にややこしかったのが、クリスとの議論だった。
タイムマシンをもう一度開発するか、しないか。
ひたすらそのことだけを一週間話し合った。
クリス「……だから!タイムマシンを作るのは時期尚早だって言ってる!」
岡部「ならいつまで待つと言うのだ!明日か!来週か!来月か!2025年まで待機しろとでも言うのか!」
クリス「極端にとるな!今はまだ思考の段階で、無考の行為は身を滅ぼすことになる!」
岡部「現にまゆりが死んでいるんだぞ!」
クリス「だからこそ、慎重にならないといけないでしょ!」
この繰り返しだった。
そもそも、
タイムマシンを開発してから原因を究明しようとする俺に対して、
原因を究明してからタイムマシンを作ろうと言う助手との議論に、妥協点などあるわけもなく。
0か1か。きわめて単純な結果しか存在しなかった。
どちらが諦めるか。ということである。
これに関しては、かなり俺に分が悪かった。
クリス「大体、岡部がタイムマシンを作ってしまったら!せっかくシュタインズゲートに到着したのが無意味になっちゃうのよ!?」
岡部「そもそも、まゆりが死んでる時点でまだ運命の輪の中だ!」
クリス「だからそれは!別の世界の収束によってで、この世界はそれ以外は完全に未知なのよ!?」
岡部「別の世界の収束が起きてる時点で、ここはシュタインズゲートなどではない!!」
クリス「違うわ!まゆりは特例中の特例なのよ!ここは確かにシュタインズゲートよ!」
岡部「誰がそれを保障した!?俺か!?お前か!?神か!?……あぁいいさ神は俺だ!保障してやるよ!この世界に絶対なんて無い!ここはシュタインズゲートではない!」
クリス「なら、タイムマシンを適当に作って!まゆりを助けて!その後は第三次世界大戦でも起こす!?どうなの!?神様!」
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