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    元スレあずさ「プロデューサーさんを落としてみせます!」

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    51 :

    あずささんをババアと言ってる=酒も飲めないガキ…がVIPに書き込んでる
    これについて、どう思った?

    52 = 1 :


    律子「表の車で亜美を待たせてますから、ぼちぼち行きましょうか。伊織も迎えに行かなきゃですし」

    あずさ「は、は~い。それでは音無さん、プロデューサーさん。行ってきますね」

    小鳥「いってらっしゃ~い」フリフリ

    「頑張ってください。さて、俺もいい時間だし昼飯にするかな……」

    律子さんに引っ張られて、私もお仕事に向かうことにしました。
    今日のプロデューサーさんとの会話は、私としては、たくさん話せるように頑張ったほうかな、と思います。
    でも、これからもっと頑張らないといけませんね。もちろんお仕事の邪魔をしない程度に、ですけれど。
    ……あら、プロデューサーさんが何かゴソゴソしているような~?

    「えっと、この辺に貴音が備蓄しているカップ麺が……。お、あったあった」

    あずさ「……プロデューサーさん? お昼、カップラーメンなんですか~?」

    53 = 1 :


    「ええ、最近はこればっかりですね。手軽ですし、夕飯もこれだけなんて日も……」

    律子「ちょっとあずささん、そろそろ行かないと……」

    あずさ「こんなんじゃダメです~!」

    律子・P「!?」

    プロデューサーさんったら、もう十代でもないのに健康のことを考えていなさすぎですね。
    毎日カップラーメンなんか食べていたら、栄養が偏ってしまいます。
    のんびり屋な私ですら、ちゃんと自炊しているというのに……。あ、朝ごはんは別として、ですけれど。

    「あ、あずささん? どうしたんですか、急に大きな声だして……。そりゃ、貴音にはいつも怒られますが」

    あずさ「そういう問題ではありません。そのうち、お体を壊してしまいますよ~?」

    (あずささん、なんだかいつもと様子が違うような……)

    54 = 1 :


    貴音ちゃんも貴音ちゃんです。どうしてこんな偏食ばかりするのかしら?
    こうして真似する人が出てきてしまうんだから、今度会ったとき、めっ! と言ってあげないといけませんね。

    それに、ラーメンばっかり食べると、その……、余分なお肉がついてしまうでしょうに。
    貴音ちゃんが体型崩れているところは見たことありませんけど……、体質というものですか?
    好きなものを好きなだけ食べて太らないなんて、羨ましいわ~。
    私なんて近頃、お酒を飲むようになったせいで……。

    ……あら、また話が脱線してしまいましたね。ですからつまり、私が言いたいことはですね、

    あずさ「プロデューサーさんのご飯は、私が作りますっ。今度ゴチソウします~!」

    「えっ」

    あずさ「ぁ」

    55 :

    お姫ちんのカップ麺勝手に食べてギルティされないのか?

    56 = 1 :


    あずさ「あ、いえ、その深い意味はなくてですね……、ご、ごめんなさい、なんか今日の私、変ですね~」カァァ

    ……ついつい、頑張りすぎてしまいました。まさにおったまげーしょん、ですね。
    お料理をゴチソウするなんて、とっても特別な意味があるというのに……。
    えっと、律子さんと音無さんは……

    小鳥律子「」

    あらあら、固まってしまっていますね。
    それはそうですよね、昨日の今日でこれですから……。あとで何を言われるのかしら……。

    で、でもこのプロデューサーさんのことですから、きっと……、
    「いいですいいです、迷惑かけるわけにはいきませんよ」なーんて、言ってくるんでしょうね。
    そうです、この人は、そういうところがあるんです。だからそんなに、大事にはならないはず……。

    「本当ですか、じゃあお願いします! 手料理なんて久しぶりだなぁ」

    あら~?

    57 = 1 :


    あずさ「い、いいんですか? 私、本当にお邪魔しちゃいますよ……?」

    まさかのオーケーでした……。表向きなんてことない顔をしてますけど、信じられません!
    誰もいなかったら、思いっきりにこにこゆるんでしまっているところです~。
    ……ちょ、ちょっと展開が早すぎる気がしますけれど。いいんでしょうか……。

    「そうしてくれるなら助かりますよ。いやあ、あずささんの料理が食べられるなんて楽しみです!」

    あずさ「……そ、それなら、期待しててくださいね? じゃあもう本当に、お仕事行ってきます~」

    律子「……はっ! そ、そうですね! い、行きましょうか」

    58 = 1 :


    ブロロロロ……

    あずさ「……」

    亜美「あずさお姉ちゃん?」

    あずさ「なぁに?」グルン

    亜美「ひっ! さっきからなんかヘンな顔してるけど、どったのー? また車酔っちゃった?」

    律子「亜美……、あずささんは頑張ったのよ。ただ、ちょっと飛ばしすぎちゃっただけ」

    亜美「頑張った? なんのことー?」

    あずさ「……うふ、ふふふふ……」ニヤニヤ

    亜美「こ、こわすぎっしょ……」

    59 = 1 :


    律子「……あずささん」

    あずさ「うふふ……。なぁに~?」

    律子「また今夜、女子会ですね」

    あずさ「う……は、はい。……あのー、律子さん。その」

    律子「いいんです、ここでは何も言わないでください! でも……、ぷぷっ」

    あずさ「もうっ……!」

    亜美「なになに! なんなのさー! 仲間はずれよくないっしょ!」

    律子「あんたにはまだ早いわよ。さあ、さっさと伊織を拾って、今日もお仕事頑張りましょー」

    亜美「ずーるーいー!!」

    ブロロロロ……

    60 :


    61 = 1 :


    ― メール編 ―

    夢子『……それじゃあお姉様、おやすみなさい。メール、頑張ってくださいね!』

    あずさ「やるだけやってみま~す……。夢子ちゃんも、涼ちゃんによろしくね。おやすみなさい……」ピッ

    プロデューサーさんに手料理をご馳走する、と約束してから数週間が経ちました。
    でも、まだその約束は果たされていません……。というか、いつにするのかも決めていません。
    あれから毎日、一言でも二言でも、何かしらの会話をするように心がけてはいるのですけれど……、
    なんだかプロデューサーさんの目の前では、あの約束に関する話題を繰り出せないでいるのでした。

    あずさ「だって、もしかしたら社交辞令だったかもしれないじゃない……」

    前までの私だったらきっと、
    「お料理ゴチソウしますよ~。はい、なんだったら私のお家に来てくれても~うふふ~」
    みたいなことも言えたのでしょうけど……。一旦妙に意識してしまうと、積極性もなくなってしまうみたいです。

    63 = 1 :


    小鳥『それでも着実に前進してるわ! だってプロデューサーさんったら……、いえ、今はやめときますか』

    律子『そろそろ次の段階……、メールですね。今日あたり送ってみたらどうですか?』


    自室のベッドに寝転がりながら、私は今日の飲み会でのお二人の言葉を思い出しました。
    なんだか最近、進捗報告という名目でたくさん飲み会をしちゃってます~。
    アイドルとして、これでいいのでしょうか……。でも、他ならぬ律子さんがいいって言うんですから、いいですよね。

    あずさ「メール……、メールって、何を送ったらいいのかしらー……」

    今まで私は、何度かプロデューサーさんにメールを送ったことがあります。
    まだ自分の恋心がこんなに大きくなっていなくて、ただ彼を眺めていれば幸せだったあの頃です。
    送信メールを見ると、ちょっと恥ずかしくて胸が苦しくなりますね~……。

    64 = 1 :


    ―――
    ――


    あずさ『メールの内容は、どんなものがいいんでしょうか~……』

    小鳥『なんでもいいんじゃないですか? ありのまま気持ちを伝えるとか、そういうのでも男性は嬉しいはずです』

    あずさ『こ、告白しろということですか?』

    小鳥『気持ちといっても、何も恋愛感情だけではないはずよ。参考のために……、えーっと』ゴソゴソ

    小鳥『ご覧あれ! ここに、ずっと前、春香ちゃんがプロデューサーさんに送ったというメールがあります!』

    律子『……どこから手に入れてきたんですか? また勝手に覗いてコピーでもしたんじゃ……』

    小鳥『見せてください、って言ったらすぐ見せてくれましたよ? 勝手にコピーしたのはあたしだけど』

    律子『……あの人の鈍感っぷりは、もはや病気ですね』

    小鳥『ま、それはともかく……、見てくださいよ~』

    65 = 15 :

    女子会という響きが気持ち悪いよな

    66 = 1 :


    …………………………………………………………
    From:天海春香
    Title:誕生石……☆


    春香ですっ。プロデューサーさんに問題です。
    さて、私の誕生石は、なんでしょう?



    正解は、ダイヤモンド☆でした。
    なんかちょっとショックですぅ……。
    今度の誕生日に、はじめて自分で、ちゃんとした
    アクセサリーを買おうって思ったんです。
    誕生石にしようと思ったら、ダイヤモンドだなんて……。
    ぜったいムリですよぉ~(>_<)
    ダイヤモンドなんて、まだ私には早すぎますし。

    だけどいつかは、ダイヤモンドの似合うような
    ステキな女の人になりたいですっ♪
    その日まで、誕生石はおあずけ、ですね。
    …………………………………………………………

    67 = 24 :

    春香さんかわええなぁ

    68 :

    逆に高くない誕生石ってなんだよ
    オパールか?アクアマリンか?

    69 = 1 :


    律子『これはまた見事な……、春香ったら、プロデューサーのことを友達か何かだと思ってるんじゃないの?』

    小鳥『でもでも、春香ちゃんらしくてとってもかわいいじゃないっ! あたしもこういうメールが欲しいわ……』ブツブツ

    あずさ『んー……、確かにかわいいですけれど、私にできるかしら~……』

    音無さんの話によると、プロデューサーさんの担当になっている子(つまり竜宮小町と千早ちゃん以外の子)は
    いつもみんな、こういうメールのやりとりをしているそうです。音無さんはなんでも知っていますね~。
    だからちょっぴり恥ずかしくても、私も負けていられません。

    律子『まぁ、どんな内容を送るかは自由ですが……、前も言ったように、相手は一応社会人なんですからね』

    あずさ『社会人だと、何か気をつけるポイントがあるんですか?』

    律子『あんまりダラダラ続かせるようなメールはダメ、ということです。一言二言の雑談メールは好き嫌いもありますし』

    小鳥『一発でバシッ! とノックアウトさせてやるんですね、わかります!』

    70 = 55 :

    これが春香さんの男に貢がせるテクニックか

    71 = 1 :


    ―――
    ――


    あずさ「一発でばしっ、ばしっばしっ……、ふふっ、メールであなたのハートをノックアウト~♪」

    いろいろと考えているうちに、なんだか楽しくなってきました~。
    春香ちゃんのメールを参考に、プロデューサーさん宛てに何かメッセージを作ってみましょう。
    返信は期待しないで、とにかく今のこの気持ちを形にすることから。
    えっと、今日はなんだか調子がよくなさそうだったから、それを心配するように……。

    あずさ「……だ・い・じょ・う・ぶ・ですか……、っと。本文はどうしましょう……」

    ポチ、ポチ……

    72 = 1 :


    …………………………………………………………
    To:プロデューサーさん
    Title:大丈夫ですか?


    プロデューサーさん、大丈夫ですか? あずさです~。

    今日は、プロデューサーさんの顔色があまり
    すぐれなかったようなので……、
    心配になって、ついついメールしちゃいました。

    ご迷惑をかけっぱなしの私が言うのもなんですけれど……、
    プロデューサーさんあっての私なので、どうかくれぐれも
    ムリはなさらないでくださいね。ちゃんと栄養、とれてます~?

    本当は毎日、プロデューサーさんのお家まで
    お食事とか作りに行きたいんですけれど……、
    そんなことして変な噂でもたったら、逆にプロデューサーさんに、
    ご迷惑かけちゃいますものね……。
    …………………………………………………………


    あずさ「こんな感じ……で、いいかしら? んんー……、そうだわ、夢子ちゃんに採点してもらいましょうー♪」ピッ

    73 = 1 :


    ~♪

    …………………………………………………………
    From:夢子ちゃん
    Title:120点!!


    お姉様からそんなメールもらったら、
    絶対嬉しいです!\(>▽<)/ウレシイヨー!

    yume
    …………………………………………………………

    あずさ「まぁ……ふふっ、じゃあ、夢子ちゃんもぜひぜひ参考にしてね♪ っと……」ピッ



    ~♪

    …………………………………………………………
    From:夢子ちゃん
    Title:無し


    べ、べつに私はりょうにそういうメールなんて送ったりしみせ
    …………………………………………………………

    あずさ「しみせ? 何を伝えようとしたのかしら……、夢子ちゃん、もうおねむなのかも~」

    75 = 1 :


    あずさ「それじゃあ今度こそ、プロデューサーさんに……そうし~ん」ピッ

    もうちょっと好き好き~、っていうのをアピールしてもよかったかもしれませんけど……、
    私は奥手なので、美希ちゃんたちみたいに、上手に自分の気持ちを表現することができないのでした。
    プロデューサーさんあっての私、という一文を書くので精一杯です。
    でも急に、「あずさは俺のことが好きなのか~」なーんて思われても、ちょっぴり恥ずかしいですしね。

    内容については、そんなに変じゃないですよね。夢子ちゃんも太鼓判を押してくれたし……。
    体調を心配することはもちろんとして、お食事の件についても少し触れていますし、
    今度の約束についても何か進展があるかもしれません。
    ふふっ、私ったら策士かも~♪

    あずさ「……だけど、返信、来るかしら? いえ来なくても……、まぁ、なんでも、いいですけれど~……」

    76 = 1 :


    あずさ「……」ソワソワ

    あずさ「……」チラ

    あずさ「…………はぁ」

    ~♪

    あずさ「!!」パカッ

    あずさ「……~♪」

    あずさ「…………」ポチポチ… ピッ

    あずさ「…………」ソワソワ

    ~♪

    あずさ「!!」

    78 = 1 :


    あずさ「……んふふ~♪」

    そのあと、私はプロデューサーさんと何通かメールのやりとりをしました。
    結局、雑談メールみたいな形になってしまいましたけど……、
    プロデューサーさんはそれほど、そういうのがキライなタイプではなかったようです。
    「ご迷惑じゃないですか?」って聞いて、「大丈夫ですよ」って応えてくれたから……、そうですよね?

    あずさ「もちろん、優しいからそういう風に、言ってくれたのかもしれないけど~……」

    それはともかく……、手料理を作るというあの約束の件について、ついに触れることができたんです!
    やっぱり顔が見えないと、ふだんできない話題を広げることもできますね。
    今度の休みが重なったときにしよう、ということになりました~。

    あずさ「ねぇ、ねぇ、ねぇ……、すきに~なってい~ですか~♪」パタパタ

    その日は、人生でいちばん大切なチョメチョメになりそうです。
    でも、それは……、今日からだいたい一ヶ月後の話なんですけどね。

    79 = 1 :


    ― 電話編 ―

    ピピピピピ

    あずさ「……あら? メールだわ~」

    80 = 1 :


    …………………………………………………………
    From:律子さん
    Title:頑張ってください


    律子です。オーディション、お疲れ様でした。
    見てて気持ち良いくらいの快勝でしたね!
    最近調子乗っちゃってる涼にも、いい刺激になったはずです。

    あずささん、最近のあなたは、以前よりもずっとずっと綺麗になりました。
    きっと恋しているからですね。
    ……あーあ、私もそんな相手さえいればなぁ、なーんて……。
    っと、そんなことを言いたくてメールしたわけじゃなくてですね……、

    ……実は私。あのときはああ言いましたけど、本当は……、
    あずささんの恋愛に関して、最初は心から賛成してはいなかったんです。
    だってやっぱり、私はプロデューサーですから、立場上、
    アイドルの恋愛に賛成できるはずがありません。

    でもそれは、プロデューサーとしての私であって、
    秋月律子本人の考えからすると……、
    っと、こんなことまで書いたら長くなりそうですね。
    とにかく! 私なりにいろいろ考えて、今ならこう言えるんです。
    私はいま、心から応援しています!
    だから……、後悔のないように、精一杯頑張ってください!!

    それでは!
    …………………………………………………………

    81 = 1 :


    こんにちは……、いえ、こんばんはですね。最近はとっても調子がいいです、あずさです。
    あまりにも絶好調すぎて、一日一回しか迷子にならないんですよ~。

    プロデューサーさんにあのメールを送ってから、およそ二週間が経ちました。
    今日のお仕事がようやく終わって、いまは夜道を帰宅中。
    手の中で光る携帯電話の画面を見ながら、にこにこ顔で歩いています。

    あずさ「うふふ、律子さんったら~……」テクテク

    律子さんには、いつもお世話になりっぱなしです。
    私がアイドルとして活動できるのも、こうして心置きなくプロデューサーさんに想いを寄せていられるのも……。
    ぜんぶぜんぶ、律子さんのおかげなんです。もちろん、音無さんもですけどね。

    あずさ「今度ちゃんとふたりでお話をして、お礼を言わなきゃね。……って、あら?」ジャリ

    ……ここはどこでしょう?
    もうそろそろ家に着いている頃のはずなのに、いつの間にか私は、見たこともない公園の砂場に立っていました。
    公園に入ったことすら気付かなかったわ……。不思議なこともあるものですね。

    83 = 1 :


    あずさ「……月が綺麗ですね~。なーんて……」ギコギコ

    公園のブランコでゆらゆら。
    澄んだ夜空に浮かぶまん丸なお月様を眺めながら、私はプロデューサーさんのことを考えていました。
    本当は、道に迷ってしまったことについて、もっと焦らないといけないはずなのですけれど……。
    なんだか今日は、こうして寄り道するのも悪くないかなーって思っていました。
    たまには近道ならぬ、寄り道したい、なーんて……、だめかしら?

    あずさ「……電話、してみようかな」

    今まで私は私なりに、いろいろと彼に対してアタックをしてきました。
    以前よりたくさんお話をするようにしたり、メールも……、実は、数は少ないけれど毎日続けているんですよ。
    内容は、ナイショです。恥ずかしいですし……、もちろんほとんどが他愛のないことですけれど、それでも。
    私にとっては、一通一通が心にしまっておきたい大切なものなのです。

    だからそろそろ次のステップ。電話をかけてもいい頃合、なのかもしれませんね。

    85 = 1 :


    あずさ「でも電話って……、用もないのにかけるとなると、なんだか緊張するわ~……」

    友美に電話するのとは、わけが違います。違いすぎます~……。
    携帯電話はもうプロデューサーさんの電話帳を開いているので、あとはこの発信ボタンを押すだけ。
    なのに、なんでこんなにもぷるぷる手が震えるのでしょうか……。

    あずさ「話題は何かあるかしら……? やっぱりお仕事のこと? オーディションのこと?」

    ダメです、プロデューサーさんは私の担当の方じゃないんだから……。
    オーディションで成功したのは、プロデューサーさんのおかげです~! なんて、わけがわかりません。
    ただの雑談でもいいんじゃないかしら? とも思いましたけど、「どうしてわざわざ電話で?」
    なんて思われたらどうしましょう。明日、事務所で会ったときに話せばいいじゃない……。

    86 = 1 :


    でも、いつまでもこのままじゃいけませんね。こんなの、私らしくないです。
    電話くらい、なんてことありません、なんてことないんです。
    そんなに悩むなら、電話しなければいいんじゃない、とも思いますけど……、
    きっと今日この瞬間にかけなければ、しばらく後悔でいっぱいになってしまいます。

    思い立ったが吉日。
    それに……、あんな励ましをくれた律子さんに、顔向けできませんから。

    あずさ「そうだ……、道に迷っちゃったんです、っていう形にしましょう! それだわ~」

    私って、案外ずるい女みたいです。迷子になったのは本当ですけどね。
    「律子に頼ればいいだろう」、なんて思いませんように……。

    あずさ「すぅー……はぁー……」

    思いっきり深呼吸をして、心は晴れ色……。いきますー……!
    この発信ボタンを……ついに、押し――

    ピピピピピ!

    88 = 1 :


    あずさ「ひゃっ! こんなときに電話? だ、誰~?」

    ……………………………
    着信:プロデューサーさん
    ……………………………

    !!
    私に電話をかけてきたのは、なんとプロデューサーさんでした。
    まさかこのタイミングでなんて……、やっぱりあなたは、運命の人なのかしら~……!


    ピッ

    あずさ「も、もしもし~……」

    『あ、もしもし。あずささんですか? ――です。すみません、夜遅くに』

    あずさ「いえ……、大丈夫ですよ。ど、どうしたんですか~?」

    『その、律子から伝達がありまして。明日の集合場所の変更の知らせです』

    89 = 1 :


    プロデューサーさんの用事は、ただのお仕事の連絡でした。ちょっとがっかり。
    でも……、やっぱり彼とお話できるのが嬉しくて、嬉しくて……、ついつい、顔がほころんでしまいます。
    ふふふ……。

    『……に集合、ということで、よろしくお願いします』

    あずさ「はい、了解しましたー。わざわざありがとうございます♪」

    『何かあったらすぐ連絡してください。名古屋とかに行ってしまう前に、早めにお願いしますね』

    あずさ「ふふっ。いくら私でも、名古屋までは行きませんよ~」

    『そ、そうですよね。すみません、なんだかそんな夢を見てしまって』


    あずさ「……でも律子さん、どうして直接、私に連絡してこなかったのかしら~?」

    『なんでも、携帯の電池が随分前に切れてしまったみたいで……。さっきまで事務所にいたんですけどね』

    あずさ「……!」

    90 = 15 :

    りっちゃん優しいなー

    91 = 1 :


    律子さん、あなたと言う人は……、どこまで私に、気を配ってくれるんでしょうか。
    なんだかちょっと、涙が出てきました。

    電池切れちゃったって、そんな、嘘までついて……。
    それならさっき私に、精一杯頑張ってくださいって言ってくれたのは、誰だというの?
    私、年上なのに……、律子さんにはいつも、いっぱいいっぱい、頼りっぱなしね……。

    『……あずささん?』

    あずさ「……ぁ、いえ……、ぐす、す、すみません。なんでもないです……」

    『……そうですか。それなら、いいんですが』

    あずさ「……」

    ブロロロロ……

    92 = 1 :


    『あずささん、もしかして今、迷子になったりしてませんか?』

    あずさ「え、どうして……」

    『ときどき車の走る音が聞こえますから。こんな時間なのに外にいるなんて、また迷ってしまったのかなと』

    この人は鈍いのか鋭いのかわかりません……。たぶん、両方なのでしょうね。
    アイドルたちが抱えていることについては、誰よりも先に気が付いて……、理解してあげられる鋭さ。
    そのアイドルたちが自分のことをどう思うかについては……、誰よりも理解できていない、鈍さ。
    それでも、私はそのギャップもまた……、人を惹きつける何かなのかもしれない、と思ってしまうのでした。

    あずさ「……いえ。今日は迷子にならずに、ちゃんと家に帰れました~。今はちょっと、ベランダに出ているんですよ」

    『そうですか……、それならよかった』

    さっきまで考えていた電話の口実を、私はばっさりと捨ててしまいました。
    きっと、頼めばプロデューサーさんは私を迎えに来てくれます。でも、今はなんとなく、会いたくありません。
    彼の顔を見たら……、いろんな思いが溢れてきて、今度こそ涙がぽたぽた零れてしまうに決まっているからです。
    そうして私は、小さなウソをついてしまったのでした。

    93 = 1 :


    『それじゃあ、あんまり遅くなるのも悪いので、このへんで……』

    あずさ「……」

    プロデューサーさんが、電話を切ろうとしています。
    それはそうですよね、彼の性格から考えて……、アイドルのためにならないことはしないはずです。
    たとえば、こんな風に夜遅くまで電話をすること、とか……。

    『あずささん? そこにいますか?』

    あずさ「い、いますよ~。すみません、少しぼーっとしちゃって……」

    こうやって私が黙ってしまうと、ちゃんと確認してくれるのも……、彼の優しさ。
    プロデューサーさんは、いつだって私を見つけ出してくれるんです。
    あのときだって……、私が、この気持ちを初めて抱いたときだって、そうでした。

    95 = 1 :


    ここは誰もいない、夜の公園。
    空から静かに月が見ています。初夏の虫がりんりんと鳴いています。
    私は、胸がとくんとくん、と高鳴りすぎて……、いまにも、泣いてしまいそうです。

    あずさ「……あの、プロデューサーさん? そこにいますか~……?」

    『いますよ、勝手にいなくなったりしません』

    あずさ「……」

    『あずささん?』

    あずさ「……っ……も、もう少し……、私とお話してください……」ドキドキ

    『……もちろん、喜んで。あずささん、ひょっとして……、何かありましたか?』

    あずさ「……ふふっ、何もないですよ~……。ただ、なんだか寝付けなくて。いつもはもっと、早寝なんですけど」

    感極まって涙をこぼしてしまわないないように、いつものあずさになりきって……。
    私たちは、お電話を続けました。

    96 = 1 :


    ―――
    ――


    あずさ「……それで律子さんったら、『あ、アイドルとしてステージに立つなんてもう無理ですよ~!』って……」

    『はは、それはもったいないな。……そういえば律子は、最初はアイドルをやるつもりじゃなかったそうですね』

    あずさ「ええ。ふふっ、でも律子さん、とっても可愛かったんですよ。またいつか、一緒にステージで歌えたらなぁ……」

    『……』

    あずさ「プロデューサーさん? どうかしたんですか?」

    『いえ……、そういえば、あずささんはどうしてアイドルになったんですか?』

    あずさ「…………え、そ、それは~……」

    『あ、すみません、言いたくないならいいんです。ただ、ちょっと気になっただけだから』

    あずさ「……」

    『……』

    あずさ「…………う、運命の人を」

    『運命の人?』

    あずさ「……有名になれば、きっと……、運命の人が、私を見つけてくれるんじゃないかって、思っていたんです」

    97 = 1 :


    あずさ「お、おかしいですよねっ。いえ、一昨年までの私がそう思っていただけで、今は当然ちがって……」

    もちろん、今だってそう思っていたり、いなかったりしますけど……。
    こんなことを言ってプロデューサーさんに変に思われてしまったら、どうしましょう。
    この話は友美と夢子ちゃんにしかしていなかったのに、どうして言っちゃったのかしら……。

    『……全然、変じゃないですよ』

    あずさ「……ホントに? 変じゃないですか? 子どもっぽいとか、け……、軽蔑とか……」

    『するはずがありません、ちょっとビックリはしましたが……。運命の人は、見つかりましたか?』

    あずさ「いえ……、それが、全然なんです~……」

    ここで、「運命の人は、きっとあなたです」と言えるほどの勇気は……、
    今の私にはありませんでした。

    あずさ「……も、もう違う話をしましょう? ね?」

    あずさ「そういえば、こないだ雪歩ちゃんがコーヒーを淹れてくれて……」

    プロデューサーさんと、この夢について深く話すのは、まだちょっとだけ……、怖いです。
    なんだか余計な言葉を、口にしてしまいそうで……、だから私は、ついつい誤魔化してしまいました。

    98 :

    あずささんマジ可愛い

    100 = 1 :


    ……それから1時間。私たちはいろんな話をしました。
    大好きな紅茶やコーヒーのこと、故郷の実家で飼っている愛犬のこと。
    事務所の近くにある輸入食品屋さんで発見した、のヮのという顔をした不思議な生き物のこと……。
    ほとんど自分のことを語る形になってしまいましたが、プロデューサーさんはどんな話でもしっかり聞いてくれて、
    もちろん私は……、とても幸せでした。

    あずさ「それで、その生き物は食べられてしまうときに『ヴぁいヴぁーい』と鳴くんだそうです。もう、こわくてこわくて……」

    『は、はは……、ちょっと想像したくないな……。話を聞くと、なんだか誰かを思い出しますね』

    あずさ「プロデューサーさんも、そう思います? 実は私もなんです~。これは、一体誰なんでしょう?」

    プロデューサーさんは、私が話す言葉のひとつひとつに、こんな風にちゃんと耳を傾けてくれています。
    さっきまであんなにうるさかった、この胸のどきどきも、いつしか落ち着いていました。
    今なら、アレを言えるわ……。いえ、今しかありません!

    あずさ「プロデューサーさん、その……、お料理をご馳走するという、約束の件なんですけど」

    『ああ、もうそろそろ……、再来週の木曜日ですね。毎日メールで言ってくるんだから、ちゃんと覚えていますよ』

    それは今バラさないでください……。恥ずかしいです~……。


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