元スレえる「いつもご苦労様です、折木さん」 折木「毎度どうも」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★×5
1 :
立ったら書く
3 = 1 :
折木「主任、7番書架の補充おわりました」
主任「ああ折木くん、御苦労さま。じゃあレジにまわってくれる?」
折木「わかりま……いや、ちょっと待ってください」
客「…………」キョロキョロ
折木「………」
客「……」スタスタ
4 :
おしまい
5 = 1 :
ガシッ
客「!?」
折木「お客様、まだお会計がお済みでない品があるようですが」
客「なっ……なんのことだ?」
折木「とぼけるな」
客「!」ビクッ
折木「……鞄の中を改めさせていただいてもよろしいですか?」
6 = 1 :
………
……………
…………………
主任「いやー毎度お手柄だねえ折木くん!」
折木「いえ、そんなことは」
主任「でもどうして分かったんだい?あのお客が万引きしてたなんて」
折木「まぁ………何となくですよ」
主任「それにしちゃあ随分と自信ありげだったね。いや、確信と言ってもいいかな。
それには何か根拠があったんだろ?」
7 = 1 :
折木「そうですね……さすがに何もないってことはありませんが」
主任「本を鞄に入れる瞬間でも見たとか?」
折木「いや、そういう決定的なものではないんです。
主任、本屋で本を選ぶとき、まずはどこを見ますか?」
主任「え?そりゃあ表紙か背表紙で題名を……」
折木「そうです。普通はそれらが収まってる……棚を見ますよね?」
主任「ああ!!」
折木「あの客は、本棚にまともに目もくれず周りばかりをうかがっていました。
人の視線を憚るように。ウチみたいな本屋でそんなことをするのはエロ本を買いに来た中高生か」
主任「万引き犯か……ってことかぁ。いやあ本当にすごいね!」
折木「そんなことはありませんよ。見てれば誰だって気づくことです」
8 = 1 :
主任「でもねえ、君がこの店に来てから確かに万引きの被害は減ってるんだよ」
折木「そうなんですか?」
主任「うん。店を出る前に君が捕まえちゃうからね。さすがは『寝ぼけ眼の黒後家蜘蛛』だな!」
折木「………何ですそれは?」
主任「うん?この辺の中学生が君につけたあだ名だよ。とぼけた顔して何処に巣を張ってるかわからないってね」
折木「………まぁ、ナメられてないならいいですけど」
主任「恐れられてるのさ!……あ、折木くん、休憩入っていいよ」
折木「えっ、少し早くないですか?」
9 :
店出る前に捕まえたらダメなんじゃねえの
11 = 1 :
主任「警察への対応とかで疲れただろう?功労者へのご褒美ってやつさ。お昼でも食べてきなさい」
折木「…………わかりました、ありがとうございます」
主任「うんうん。あっ、休憩終わったら例のアレよろしく!」
折木「了解しました。休憩いただきます」
………
……………
…………………
12 :
ホータローが率先して万引き犯捕まえたり、その説明をしようとするわけない
そもそもバイトなんてしない
実は折木の姉という叙述トリック
13 = 1 :
なぜ俺が書店員として働いているのか。
それを説明するには、まず高校3年生の時までさかのぼらなくてはならない。
そのころ俺の成績は贔屓目にみても芳しいものではなく、大学に進学する事すら危うい状態だった。
ハッキリ言って、浪人するか就職するか、といった状態だ。
普通の高校生ならば親や教師を説得するなりして浪人をさせてもらうのだろうが、俺の場合そうはいかなかった。
「やらなくてもいいことならやらない。やらなければならないことは手短に。」
14 = 1 :
里志や伊原に『省エネ』と呼ばれていた俺のモットーは、大人の目には「怠惰」としか映らなかった。
結果、俺は進学を許されず、地元で就職することになったわけだ。
伊原に『人間性の欠如』と言われるほど好悪を持たない俺であったが、
かろうじて読書という胸を張って言える趣味があった。
そこで地元でも有力な…………『桁上がりの四名家』の一角である百日紅家が経営する書店へ就職することにした。
もちろん俺の実力だけでそんな大それたところに入ることができたわけではない。
………とある有力な筋からの口利きがあってのことだ。
15 :
店出ないと犯罪にならないが、
出た事にしておこう続けろ
16 :
超絶圧倒的支援
間違いなく超大作
17 = 1 :
書店員と言うのは存外にきつい仕事だった。
毎日大量の新刊を運び込まなくてはならないし、
客から理不尽なクレームをつけられることなど日常茶飯事だ。
今日のようなことも少なくはない。
18 = 1 :
だが悪いことばかりではない。
本に囲まれて仕事をするというのは悪いものではないし、
お客が笑顔で帰って行くのが嬉しくないと言えばウソになる。
一言でいうならば、満足感。
華やかではないが、充足した日々がそこにはあった。
19 :
紫煙
20 = 1 :
高校のころには、こんなことを思う日がくるなんて想像もしなかった。
「薔薇色」と「灰色」。人生にはその二種類しかなく、
薔薇色のためにエネルギーを注げない俺は灰色しか選べないのだと思っていた。
しかし今の生活はそのどちらでもない。
いうなれば「白」。
そんな穏やかな明るさが、今の俺を照らしていた。
21 = 1 :
折木(今の俺を見たら、里志と伊原は何と言うだろうか)
「あのホータローが労働に目覚めるなんて……!!」と目をむくだろうか。
「ふーん、アンタにも甲斐性ってもんがあったのね」とため息交じりにもらすだろうか。
何となくだが、そのどちらでもないような気がする。
22 = 12 :
ミステリ部分はよ
24 = 15 :
ミステリなくてもこれは期待
25 = 1 :
あの二人はそろって都市部の大学へ進学した。
里志は俺以上に絶望的な成績だったはずだが、伊原に相当尻を叩かれたようだ。
「同じ大学に行くんでしょ!!」
と部室から響いていた怒鳴り声が懐かしい。
あの二人とは高校を卒業して以来一度も会っていない。
連絡はたまに取っているが、どうやら一緒に住んでいるようだ。
26 = 1 :
物思いにふけっているうちに昼休みが終わりそうだ。
俺は握り飯をお茶で流し込んだ。
腹ごしらえが終わったら仕事が待っている。
――――月に一度の、憂鬱な時間だ。
27 :
えるたそ~
28 = 1 :
もうちょっとスピード上げたいがながら作業なので失礼
30 = 15 :
ほす
31 = 1 :
――――――5か月前
折木「蔵書を処分したい?」
店長「ああ」
俺が研修で同じグループの古書店に出向していた時、
店長に呼び出されてそんな話をされた。
店長「書庫をリフォームするので中身を引き取ってほしいと本店に依頼があってな」
折木「はぁ……でもそこまでの規模なら図書館や学校にでも寄贈されては?」
店長「クライアントの希望だそうだ」
32 = 1 :
正直に言うと、この時点でかなりイヤな予感はしていた。
この危機管理能力は、高校時代に培った数少ないものの一つだ
折木「なるほど……それで、自分が呼ばれた理由は?」
店長「そうそう、それなんだが」
折木「はい」
店長「その蔵書の引き取りを君に任せたいと思う」
折木「……………は?」
もっとも、危機回避については全く身につかなかったのだが。
33 :
いいね
34 = 15 :
ほ
35 = 1 :
折木「その………何で自分が?もっと適任の方が…」
店長「うん、それもクライアントの希望でね。取扱いは君に一任したいそうだ」
折木「ですが、自分はこの店では研修中の身ですし……」
店長「大丈夫、査定はこっちでやるから、君はトラックで本を運んでくるだけでいい。
免許は持っていたよな?」
折木「は、はい。普通免許ですが」
店長「なら軽トラだったら運転できるな」
折木「しかし」
36 = 1 :
店長「……ここだけの話、あそこの書庫にはかなりの稀覯本が眠っているという話でな。
本店では譲ってもらえるよう前々から交渉していたんだが、今回ようやくその気になったんだ」
折木「はぁ……」
店長「君も5年目なわけだし、ここらで大きな案件に関わってほうがいいんじゃないか?」
折木「……………」
以前の俺ならば、ここで絶対に首を縦には振らなかっただろう。
「やらなくてもいいことならやらない。やるべきことは手短に」
それが俺のモットーでありスタイル…………だった。
37 = 1 :
だが今の俺は知っている。
その姿勢は安寧と引き換えに時間とともに色々なものを失っていく両刃の剣であることを。
それ以前に、
折木「……………断る権利はなさそうですね」
店長「あるように聞こえたかな?」
上の意向に逆らえる社会人など存在しないということを。
38 :
期待しつつ支援
39 = 1 :
折木「…………わかりました」
店長「おお、やってくれるか」
折木「さすがに本を運ぶだけなら研修にもできるでしょう」
店長「はは、そうだな」
折木「それで、どこの御大尽なんです?こんなズブの素人に大事な本を預けたいなんて奇特なクライアントは……」
思えば、何故この時に気づかなかったのだろう。
40 = 1 :
先ほど感じたイヤな予感は、
店長「ああ、千反田さんの家だよ。知ってるだろ?『豪農』千反田家」
折木「…………!!!」
高校時代散々経験したものだったのに。
………
……………
…………………
41 = 1 :
ご飯たべてくるお
44 = 1 :
『何やら娘さんの意向らしくてね』
『本を処分するならどうしても君に任せたい、と聞かなかったみたいで』
『そう言えばあの娘さんは君と同じくらいの歳じゃなかったか?』
『えっ?高校の同級生?へぇーそう』
『………立派になったよねぇ』
本当にな。
45 = 1 :
俺は軽トラのハンドルを握り、一面田圃しか見えない道をひた走りながら、
店長とかわした会話を思い出していた。
千反田家が出した条件は二つ。
一つ、本を邸から運び出す作業は俺がやること。
二つ、書庫に納められた3000冊の蔵書を毎月500冊ずつ、6か月かけて運び出すこと。
46 = 15 :
ふむ
47 = 1 :
古書店への出向が明けた後も、この仕事は俺に任されている。
それがクライアントの意向ならば致し方あるまい。
…………それ以外の理由は、社会人に必要ない。
うだうだと考えているうちに、件の豪邸が見えてきた。
最初は圧倒されたこの邸も、今ではすっかり見慣れたものだ。
門の脇に車を止め、呼び鈴を鳴らす
折木「すみませーん!百日紅書店の折木ですが!」
するとすぐに、
「はーーーい」
と、応じる声が聞こえてきた。
48 = 1 :
聞きなじんだはずの声だが、未だに慣れることはない。
ぎいぃーーーーーーー………っ
門が開き、声の主が姿を現した。
「お待たせして申し訳ありません」
『豪農』千反田家の跡取り娘であり、この状況を創り出した張本人。
千反田える。
俺の高校の同輩であり、
49 = 1 :
える「いつもご苦労様です、折木さん」
折木「毎度どうも」
ウチの店の「クライアント」だ。
50 = 15 :
わくてか
みんなの評価 : ★★★×5
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