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    元スレ京子「お姫様の勇気」

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    1 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:22:22.77 ID:+P/FsNd/0 (+125,+30,-91)
    ~ごらく部~

    ちなつ「すっかり肌寒くなりましたね」

    結衣「もう冬だからね」

    京子「私はちなつちゃんがいてくれるなら無問題!」キラーン

    ちなつ「はぁ、そうですか」

    京子「うぅぅ、ちなつちゃんの反応が冷たい」シクシク

    ちなつ「もう慣れましたから」

    ちなつちゃんも入学当初はオドオドとしていて、可愛い反応が見られたのになぁ……。
    今では軽くいなされてしまうのが落ちで、少しつまらない。
    2 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:24:38.54 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-98)
    あかり「冬はお茶が美味しいねー」ニコニコ

    ちなつ「お茶のおかわり、いる?」

    あかり「うん、ありがと」エヘヘ

    キャッキャッ

    京子「むむむ」

    面倒臭いので私をスルーするつもりのようだ。
    のんびりとお茶を飲む姿に動揺は見られず、あかりと談笑を始める始末である。

    京子「………」ソワソワ、ウズウズ

    京子「ふふっ」ニタァ

    ちなつ「」ビクッ

    これは御仕置きが必要だろう。
    今更慌てたって、許してあげないんだから。
    3 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:26:43.90 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-132)
    京子「ちなつちゃーn」

    結衣「おいこら」ガシッ

    京子「ぐぇ、何をする!」プンスカ

    結衣「それはこっちのセリフだ」

    つい表情に出してしまったせいで、行動を阻止されてしまった。
    せっかく可愛い後輩とスキンシップを図ろうとしたのに、結衣も野暮な奴だ。


    チョット、ハナシテヨー ダメッ


    ちなつ「まったく、京子先輩ときたら!」プンプン

    あかり「京子ちゃんを見てるとこっちが元気になれるね」アハハ

    ちなつ「……あかりちゃんは本当に純情ね」ハァ
    4 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:29:40.89 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-106)
    ヒュー ヒュゥー

    あかり「……っ」ビクッ

    ちなつ「大丈夫?」

    あかり「うぅぅ、さむいよぉ」ブルブル

    ちなつ「隙間風だけでも、なんとかできたらいいのにね」


    ハーナーセーヨー アッ、コラ


    あかり「こたつが欲しいけど、難しいかな?」ブルブル

    ちなつ「それ、いいかも!……でも電気使いすぎると、部室の無断使用が問題になるし」

    あかり「ううぅ、どうにかして寒さ対策しないと凍死しちゃうよ……」ブルブル
    5 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:32:50.07 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-130)
    ちなつ「あかりちゃんったら、仕方ないんだから」

    フワッ

    あかり「えっ」キョトン

    ちなつ「私のカーディガン、貸してあげる」

    あかり「ちなつちゃん、でも……」

    ちなつ「私は平気だから、あかりちゃんが使って?」ネッ

    あかり「……ありがとう」ニコッ

    ちなつ「礼を言われるほどのことじゃないし」

    あかり「ちなつちゃんは優しいね」ニコニコ

    ちなつ「なっ、何言ってるの!」ウガー

    あかり「照れなくてもいいのに」ニコニコ

    ちなつ「うぅっ」
    6 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:34:58.35 ID:IEihC7640 (+18,+28,+0)
    きたがたっ
    7 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:36:14.25 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-155)

    ユイノバカー オイ、アブナイダロ

    ちなつ「そっ、そういえば先輩、去年の冬をどうやって乗り越えたんですか?」

    ドタドタ、ガッ

    京子「えっ、私らが一年の時?」イタタ

    結衣「……京子、上からどいて、重い」グタッ

    揉み合いになった結果、気が付けば結衣に馬乗りになっていた。
    結衣のお腹にまたがって、結衣を見下ろしている状態だ。

    京子「重いとは失礼な、この妖精みたいな京子ちゃんに」プンプン

    結衣「京子……」ハァ

    痛みに濡れた瞳と着衣の乱れが扇情的で、思わず胸の鼓動が早まる。
    8 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:39:10.46 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-170)
    ちなつ「ちょっと!きょ京子先輩、結衣先輩から離れてください!」アセアセ

    京子「……ははーん」ニヤッ

    結衣「おい、何を考えt」

    京子「結衣にゃん、ちゅっちゅー」ガバッ

    チュー

    あらわになった結衣の白い首筋に、口付けを落とす。
    何だかイケナイことをしているみたいで、ちょっと興奮する。

    ちなつ「あぁ、結衣先輩が……」ガクッ

    結衣「京子……」イラッ

    京子「あっ、やば、って痛い痛い痛い!」バタバタ

    あかり「」アワワ

    まったく、結衣も冗談がわからない奴だ。
    ちょっとした、単なるじゃれ合いじゃないか。
    9 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:42:40.71 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-166)
    京子「それで、何の話してたっけ?」グスッ

    上手く話の前後を思い出せない。
    涙ぐむまでヘッドロックを続けた結衣は鬼畜だ。

    ちなつ「防寒の話ですよ」

    京子「ああ、ここは暖房ないもんね」

    秋には過ごしやすかった部室も、今では木枯らしが吹き抜けている始末だ。
    ちょこまかと落ち着きのない私は、さほど寒さを感じることもないが。

    ちなつ「結衣先輩、去年はどうしてたんですか?」

    結衣「去年は確か、毛布を被って乗り切ったかな」

    ちなつ「なるほど、毛布ですか」

    あかり「お気に入りの毛布、持ってこようかなぁ」ワクワク

    そういえば、そろそろ寒さ対策が必要かな。
    去年はガムテープで風を止めようとして、結衣に怒られたっけ。
    10 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:46:42.32 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-145)
    京子「……寒さを防げそうなもの、探すか」ヨシッ

    結衣「そんなものあったか?」

    京子「私物を漁れば、何かありそうじゃん?」

    あかり「あっ、あかりも手伝うよ」

    京子「それじゃいくか、あかり隊員!」

    あかり「はーい!」

    あかりは結構付き合いがいい子だ。
    結衣やちなつちゃんは冷めているところがあるので、正直助けられている。

    パタパタ パタン

    ちなつ「………」

    結衣「………」

    ちなつ「急に、静かになりましたね」

    結衣「賑やかなのもいいけど、のんびりできるのもいいね」
    11 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:50:43.81 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-189)
    ちなつ「あの元気が、ある意味羨ましいです」

    結衣「それが取り柄みたいになってるからね」

    ちなつ「……お茶、おかわりはいかがですか?」

    結衣「ありがとう」

    ちなつ「私も丁度おかわり欲しかったので、お安い御用です」エヘヘ

    結衣「ちなつちゃんのお茶は美味しいから、嬉しいよ」

    結衣「あぁ、そうだ」ポンッ

    ちなつ「どうかしました?」

    結衣「お煎餅を持ってきてあるから、一緒に食べようか」

    ちなつ「……京子先輩に怒られちゃいますよ?」

    結衣「ばれたらあいつに食べ尽くされそうだから、こっそりね」

    ちなつ「共犯ですね」フフッ

    結衣「二人の秘密だよ?」

    キャッキャッ
    12 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:51:23.18 ID:BkQtZth10 (+11,+21,-1)
    紫煙
    13 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:54:35.26 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-168)
    ~物置~

    京子「あー、これ、こんなところにあったんだ」ガサゴソ

    あかり「京子ちゃん、ここ埃臭いよぉ」ケホケホ

    京子「あはは、何ヶ月もほったらかしだったからね」

    部室から近いので、この部屋をごらく部の物置として利用している。
    勿論、バレないように最低限のカモフラージュはしているけれど。

    あかり「おまけに、寒い……」ブルブル

    京子「ちなつちゃんのカーディガンしておいて、贅沢な悩みだな!」

    あかり「こっ、これだけは渡せないよっ」ササッ

    京子「いや、とらないから」ナイナイ

    流石に、ちなつちゃんの好意を無下にするようなことはしない。
    誰かが極端に悲しむ悪戯なんてしたくないし。
    14 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:54:53.76 ID:wkFuiX9E0 (+0,+14,-12)
    しえん
    15 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 17:57:54.94 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-160)
    あかり「あかりはこっちを探すね」

    京子「じゃあ私はこの辺りを見てみるよ」


    ガタゴト……バサバサ……ドサッ……


    京子「………」

    京子「………」ガサ

    京子「うーん、防寒に役立つものはないなぁ」ポィ

    京子「これもいらないっと」ポィ

    京子「あかりー、そっちに何かあった?」

    あかり「えっと、まだ何も見つからないよ」

    京子「大人しく毛布を持ち込むか……」ハァ

    手分けして五分程探しているが、特に使えそうなものはない。
    残念だが、諦めたほうがいいかもしれない。
    16 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:02:07.72 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-72)
    京子「ん?」

    ふと、古い絵本が目に入った。

    京子「……これって」ガサッ

    それを手に取った瞬間、古い思い出が私の頭を駆け巡った。

    いつごらく部に持ってきたのか、記憶にはない。
    ただ確かなことは、これが私の記憶のピースだったということだ。

    いつの間にか私の意識は、過去に遡っていた。
    17 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:04:44.44 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-60)
    ~過去~

    京子「………」

    京子「………」トコトコ

    幼い私は引っ込み思案な子供だった。
    自己主張ができず、アクションがとれず鈍臭い、そんな子供だった。

    ドンッ

    京子「………ッ」

    「いってー」

    京子「………」

    「なにしてんだよ!」

    廊下を走る子にぶつかって、頬をつねられた。
    私はただ歩いていただけなのに。
    18 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:05:19.17 ID:clK0AF7k0 (+24,+29,-34)
    地の文を特定の誰かの視点にする場合、
    その人物がいない場面といる場面との切り替えには
    相当な注意を要するのではなかろうか
    19 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:07:11.51 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-123)
    京子「………」

    世の中なんて不条理だと思った。
    自己主張するものが得をして、それが出来ないものは淘汰されるのだ。

    「なんだよ、その目は」

    京子「………」

    「……おまえなに持ってるの?ちょっとみせてよ」

    京子「……いや」ギュ

    部屋の片隅で絵を描いて、絵本を読んで、母親の訪れを待ち続ける、それが私の常だった。
    そんな私のお気に入りのタイトルは茨姫。いつも肌身離さずに持ち歩いていた。
    20 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:09:23.82 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-59)
    私は、お姫様みたいになりたかった。
    誰に傷つけられることもなく、皆に構ってもらえて、最愛の人に愛してもらえる。
    それはきっと、心穏やかなものなのだろう、そう思っていた。


    「みせろよ!」


    京子「………」ビクッ

    私を拒むこの世界から、距離を置くことに夢中になっていた。
    自分から遠ざけて、けれども構って欲しくて、そんな自己矛盾を抱えたままで。

    でも……。
    21 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:10:11.02 ID:EejRPn4S0 (-25,-15,+0)
    22 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:12:14.01 ID:+P/FsNd/0 (+88,+30,-74)
    「おいお前、その子をいじめるな!」

    「はぁ、お前だれ?」

    「あっちいけ!」シッシ

    「なんだよ、チッ」

    「二度とちょっかいだすなよ!」

    「うっせーな、わかったよ男女」フン

    これまでの私を取り巻く環境はどこか少し冷たくって、私は独りだった。
    自己の認識ができず、まるで決められた役割をプレイしているような、そんな感覚。

    けれど、あの日、
    君と出会ってから、私の世界は色付いた。
    23 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:14:44.87 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-101)
    「もう大丈夫だよ」

    京子「……うん」トコトコ

    「………」ジィー

    京子「………」カタン

    「………」ジィー

    京子「………」カキカキ

    「……絵、上手だね!」

    京子「……それくらいしか、することないから」カキカキ

    「色水つくったりしないの?」

    京子「……お花がかわいそう」カキカキ

    「つみきとか、ブランコとか」

    京子「ほかの子のじゃまになる」カキカキ
    24 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:17:08.94 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-130)
    「うーん」

    京子「………」カキカキ

    「じゃあ、私と遊ぼうよ」

    京子「……どうして?」

    「お友達になりたいから!」

    京子「……友達?」キョトン

    「私、結衣!」

    「君の名前は?」

    京子「……京子」

    結衣「よろしく、京子!」

    自分を守るのに必死だった私に、歌うように軽い調子で君は笑いかけた。
    知らない何かがこみ上げてきて、私はこの世界に産声を上げた。

    結衣「えっ、あれ、大丈夫?」オロオロ

    京子「……うん」グスッ

    泣き出した私に、困り顔の君がおかしくて。
    心配してくれる君の姿に、安心して。
    25 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:19:10.47 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-103)
    「お待たせ、京子」

    京子「お母さん!」パタパタ

    「遅くなってごめんなさい」

    京子「お母さん、あのね、今日は楽しかった」

    「あら、それはいいことね」

    京子「結衣ちゃんっていう子と、友達になったの」

    「ひょっとして、苗字は船見さんじゃなかった?」

    京子「……知ってるの?」キョトン

    「お母さんの友達の子供さんなの」
    26 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:21:42.91 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-137)
    京子「お母さんの友達の?」

    「丁度紹介しようと思っていたけれど、自然と仲良くなったのね」

    「あなたも物心つく前に、何度か会っているのよ?」

    京子「ものごころ?」

    「京子が覚えていないだけで、元々あの子と仲良しだったということ」

    京子「ほんと?」

    「だから結衣ちゃんは、きっと大事なお友達になるわね」

    京子「…うん!」

    結衣ちゃんは長いツインテールが可愛いのに、どこか男まさりでカッコイイ。
    私を助けてくれたその姿は、まるで童話の王子様のようだった。
    27 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:22:20.26 ID:I1SW2HCuO (+15,+25,+0)
    ふーん
    28 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:22:49.43 ID:EejRPn4S0 (+4,+14,-12)
    しえん
    29 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:24:38.75 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-148)
    京子「………」カキカキ

    結衣「何の絵、描いてるの?」

    京子「ひゃっ」ビクッ

    結衣「王子様とお姫様?」

    京子「あっ、みちゃだめ」ワタワタ

    絵を描くことに没頭していたようで、人影に気がつかなかった。
    慌てて絵を隠そうとしたけれど、それは手遅れだった。

    結衣「これってひょっとして私?」

    京子「う、うん……」モジモジ

    結衣「わぁ、かっこよく描いてくれてありがとう!」

    あかり「すっごく上手だよ、京子ちゃん」

    怒られないかと心配していたのに、褒められてしまった。
    こんな時にどんな顔をしたらいいのか、私にはよく分からない。
    30 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:26:59.77 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-109)
    京子「……そうかな」エヘヘ

    それでも、嬉しくて、楽しくて、心が躍る。
    友達というのは、こんなにも暖かなものだったんだ。

    あかり「いいなぁ、結衣ちゃん……」ジィー

    京子「その、次はあかりちゃんを描きたいんだけど、いいかな?」

    あかり「ありがとう!可愛いのがいいなぁー」ワクワク

    京子「がんばる」

    私のモノクロの世界は、いつの間にか綺麗な色で満ちていた。
    誰かと世界を共有できる、それはきっと幸せなことなんだ。

    気が付けば、私は自然と笑顔になっていた。
    31 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:27:34.85 ID:gEhdV97j0 (-21,-9,+0)
    支援
    32 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:29:49.84 ID:+P/FsNd/0 (+88,+30,-102)
    ~公園~

    結衣「命拾いしたな!」フン

    「こっちのセリフ!」ベー

    今日は三人で楽しく遊ぶはずだったのに、変な子に絡まれてしまった。

    京子「………」グスッ

    突如現れた女の子は、嵐のように場を荒らして、あっさりと去った。
    いきなりいじめられて、喧嘩になって、みっともなく泣き叫んでしまった。

    結衣「ごめん京子、こわかった?」

    京子「……だいじょうぶ」

    楽しく公園で遊ぶ予定だったのに、お気に入りの服もボロボロだ。
    それが悲しくて、楽しく遊べなかったことが悔しくて、また涙が込み上げてくる。
    33 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:30:18.96 ID:OTYVV0pu0 (-9,-9,+0)
    支援
    34 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:32:12.73 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-184)
    結衣「京子、もう大丈夫だから」

    京子「……うん」ゴシゴシ

    結衣「いい子、いい子」ナデナデ

    チュッ

    京子「ぁ……」

    ファーストキスを、結衣に奪われてしまった。
    それは王子様のためにとっておいたものだけど、それでも結衣が相手なら悪くない。

    京子「……結衣、かっこよかった」

    私はずっとお姫様を夢見ていた。
    でも、そんなかっこいい王子様を見ていて、頑張りたい、そう思えた。

    結衣「京子は私が守ってあげる!」

    結衣の勇ましい言葉、それは今までの私がずっと望んでいたもので。
    でも、守られているだけなんて、もう嫌なんだ。
    35 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:33:44.14 ID:EejRPn4S0 (-25,-15,+0)
    36 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:36:19.73 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-193)
    ~就寝中~

    あかり「………」ムニャムニャ

    結衣「………」クー

    京子「………」スヤスヤ

    パジャマの胸に抱きしめた、お気に入りになった絵本。
    それは愛を探す旅に出た、小さな姫の冒険のストーリー。

    天使に勝るあどけなさ、剣士に負けぬ剣捌き。
    胸に勇気を、瞳に焔を、振りかざす剣は壁を切り裂いて。

    旅の果てに剣は欠け、振り返れども城は遥か遠く。
    それでも愛の歌を口ずさむ、小さな姫の勇敢なストーリー。


    私も、そんなお姫様の勇気が持てたなら……。
    原初の夢は叶わなかったけれど、それは形を変えて、私の心にそっと根付いた。
    37 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:38:28.77 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-167)
    ~現在 ごらく部~

    あかり「京子ちゃん?大丈夫?」

    京子「……いや、何でもないよ」

    本を手にとったまま、過去に思いを馳せていたようだ。
    二人との出会い、懐かしい思い出だった。

    あかり「その古い絵本、確か京子ちゃんの……」

    京子「ああ、持ってきてたみたいでさ」アハハ

    京子「そんなことよりも、何か面白いもの探そっか!」パタン

    あかり「えぇぇ、防寒は?」

    京子「楽しいことがあれば、体もあったまるって」

    あかり「あっ、それもそうかも!」ポン

    京子「ほら、早く探すぞっ」

    あかり「はーい!」

    私の大好きだった、遠く古い国の御伽話。

    今はこの場所に仕舞っておこう。
    あの日の涙を笑い飛ばせるくらい、私が強くなれるまで。
    38 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:40:30.78 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-150)
    ~ごらく部~

    あかり「おまたせー」

    京子「愛と正義の魔女っ娘ミラクるん、華麗に登場!」キュピーン

    ちなつ「先輩は本当にミラクるんが好きですね」

    京子「ミラクるんさえあれば、私は幸せなのさっ」フフン

    ミラクるんは、要は私の目標とする姿なのだ。
    挫けない、いつも明るく元気を振りまいて、それでいてお茶目、そういう人に私はなりたいのだ。

    結衣「そんなにか」

    京子「………」

    結衣「京子?」

    京子「………」
    39 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:43:08.75 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-152)
    結衣「おい、京子」

    京子「な、何?」

    結衣「大丈夫か?急に動きを止めて」

    京子「おうともよ」

    結衣「熱でもあるんじゃないか?」ピトッ

    京子「問題ない」

    ふと思えば、結衣も昔に比べて落ち着いたものだ。
    女たらしなところは変わっていないみたいだけど。

    京子「ところでさ、結衣はどうして私の友達になってくれたの?」

    結衣「……急にどうしたんだ?」

    京子「いいから」

    今まで、改まって聞いたことがなかったから。
    予想はついているけれど、結衣の口から直接聞いてみたい。
    40 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:43:15.33 ID:IEihC7640 (+18,+28,+0)
    追いついたよぉ
    41 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:44:37.09 ID:OTYVV0pu0 (-18,-18,-1)
    支援支援
    42 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:45:35.86 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-100)
    結衣「……ほっとけなかったからな」

    京子「それだけ?」

    結衣「やけに突っ込んでくるな、今日は」

    京子「たまにはいいじゃん」

    結衣「……私は昔の京子みたいな子に、憧れてたんだよ」

    京子「ほほぅ、初耳ですなぁ」

    結衣「からかわれそうだから、言わなかったんだよ」プィ

    赤くなっちゃってまぁ、可愛いやつだ。
    私たちはお互いに、無い物ねだりをしてきたのかもしれない。
    43 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:48:10.86 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-180)
    京子「心配しないでも、結衣は可愛いよ?」

    ちなつ「そうです、結衣先輩はとっても魅力的です!」

    あかり「うんうん」ニコニコ

    結衣「何か照れるからやめて」モジモジ

    座布団を抱えるほどに照れなくてもいいと思うけど。
    まぁ、そんな乙女なところも可愛いから、それでもいいか。

    京子「あっ勿論、ちなつちゃんも可愛いよー」ガバッ

    ちなつ「ひゃぁ」ビクッ

    京子「にゃーちなつちゃーん」スリスリ

    ちなつ「離してくださいよ、もぅぅ」バタバタ

    結衣「こら」コツン

    京子「あいたっ」

    結衣「まったく、目を離すと直ぐにこうなんだから」

    京子「えへへ」イヤー
    44 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:50:47.04 ID:EejRPn4S0 (-25,-15,+0)
    45 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:51:19.92 ID:OTYVV0pu0 (+25,+25,-12)
    しえんぬ
    46 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:52:47.92 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-149)
    あかり「京子ちゃん、そろそろあれ、お披露目しようよ」コソコソ

    京子「そうだな」

    話が脱線して、本筋のことをすっかり忘れていた。
    今回の搜索の成果を発表しないと。

    京子「ほら、色々物色して、面白いもの見つけてきたぞ!」ジャーン

    ちなつ「お姫様のドレス、ですか?」

    京子「多分、演劇部の衣装が紛れ込んでたんだと思う」

    結衣「防寒には全く関係ないな」

    ちなつ「でも可愛いです、これ」ウフフ

    京子「ちなつちゃん着てみなよ!」

    ちなつ「そんな、恥ずかしいですし……」モジモジ
    47 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:55:26.11 ID:+P/FsNd/0 (+95,+30,-202)
    あかり「王子様の衣装もあるよー」ジャーン

    京子「今なら、王子様の結衣もついてくるよ」ヒソヒソ

    ちなつ「……ちょっと着てみようかな」ボソッ

    京子「よしっ」グッ

    将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、有名で有効な兵法だ。
    結衣は恥ずかしがって、素直に衣装を着てくれないだろうから。

    あかり「結衣ちゃん、はい!」

    結衣「私が、これ着るの?」

    京子「まさか期待してる皆を裏切るようなこと、しないよね?」ウフフ

    ちなつ「………」チラチラ

    あかり「………」ワクワク

    結衣「……分かったよ」ハァ

    流石の結衣も、二人の期待する目を無視できなかったようだ。
    渋々ながらも、同意を取り付けることに成功した。
    48 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:57:44.65 ID:OTYVV0pu0 (+34,+29,-1)
    なるほどあれか
    支援
    49 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 18:58:22.56 ID:+P/FsNd/0 (+90,+30,-62)
    京子「お着替えいってらっしゃい」ニパッ

    あかり「あかりも着てみようっと!」ルンルン

    パタン

    京子「………」

    京子「……さて、皆がいない間にカメラを用意しないと」

    重要なのはここからだ。
    50 : 以下、名無しにか - 2011/12/10(土) 19:00:04.75 ID:IEihC7640 (-19,-9,+0)
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