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    元スレ黒鎧「勇者と魔王、捕まえた」

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    101 = 1 :


     押し合いはしばらく続いて、一際大きな音とともに途絶えた。

    「――っ」

     弾き飛ばされた黒鎧が地面に落ちる。
     槍がその後を追った。

    「<"autumn field" ready...>」

     白鎧の無機質な声が響く。

    「<...exist>」

     天井に光が瞬いた。それが白鎧の追撃。
     一拍置いて雨のように降り注いだ光の一つが、黒鎧を貫いた。

    「ガッ……!」

     苦悶の声が黒鎧から漏れた。

    102 = 1 :


    白鎧「……」キュイィィン

    勇者「……おい」

    魔王「ああ」

    白鎧「……」クル

    勇者「今度は俺たちか……!?」

    魔王「構えろ」スッ

    メイド「ひっ……」

    銃士「……」ジャキ

    103 = 1 :


     白鎧はゆっくりと四人の方へと足を踏み出した。
     緩慢な足取り。その足音。まるで威圧するかのように。

     魔王と勇者はそれぞれ右方と左方に分かれて身構える。
     鎧の正面には拳銃を構えた銃士。その後ろに隠れるようにメイド。

     鎧との距離が三歩に迫った。
     魔王と勇者が同時に踏み出し、銃士が引鉄にかけた指にわずかに力を込めた。
     だが、交錯の前に事態は収束した。

    「<...damaged>」

     白鎧が跪く。その背中に黒い槍が突き立っていた。
     それから数拍も置かずに、白鎧は虚空に姿を消した。まるで幻だったかのようにそこには何も残らなかった。

    104 = 1 :



         ・
         ・
         ・

    105 = 1 :


     かつて――


     かつて、はるか遠い昔。人が決定的に神を殺した時代があった。
     栄え、力に溺れた時代があった。

     新エネルギーの模索のさなか発見された謎の素子。
     それが、全ての引き金。

    106 = 1 :


    黒鎧「旧文明が発見したそれは、この世に存在する物質ではありまセン。
       この世界とほぼ重なるようにしてある別種の世界のものデシタ」

    勇者「それが、魔力素子?」

    黒鎧「ハイ。便宜的な呼び名ではありマスガ」

    魔王「どうでもいいが、少し言葉が流暢になってるな」

    黒鎧「言語取得後の学習で少しずつ上達していマス」

    魔王「そうか。で、その魔力素子というのはどういった働きをするのだ?」

    黒鎧「魔力素子はこの世界の物質ではないと言いマシタガ、しかし、この世界に影響を及ぼしていマス。
       もともと極めて近い世界同士ナノデ、相互に影響を与えるんデスネ」

    銃士「つまり?」

    黒鎧「特別な方法で魔力素子を操作することで物理現象をこの世界に起こすことができマス」

    メイド「もしかして、魔術?」

    黒鎧「ハイ。その発見は当時のエネルギー問題を根こそぎ駆逐しまシタ。夢のエネルギー抽出法と呼ばれていたんデスヨ」

    魔王「ほう……」

    107 :

    さよけ支援

    108 = 1 :


    勇者「で、それと魔王勇者システムだったか? と何の関係があるんだよ。あとあの白い鎧」

    黒鎧「"運命"というものを信じマスカ?」

    銃士「ん?」

    黒鎧「この世にはそういった流れがあるそうデス」

    109 = 1 :


    『魔力素子蒸着確認』

    『"魔王ユニット"安定』

    『"勇者ユニット"発生ルーチン確立』

    『……運命操作機構"魔王勇者システム"、始動』

    110 = 1 :


    黒鎧「魔力素子のポテンシャルは、物理現象を引き起こすにとどまりませんデシタ」

    魔王「まさか」

    黒鎧「この世の物事の移り変わりにも影響を与えることが分かったんデス」

    勇者「え、ええと?」

    黒鎧「隕石をご存知デスカ?」

    銃士「そりゃね」

    黒鎧「説明を簡略化すれば、そういった類の"不運"をキャンセルできマス。そういうシステムデス」

    メイド「え?」

    黒鎧「他にも文明を脅かす天災、人災は全て"起きないこと"にできマス」

    勇者「……」

    黒鎧「当時研究されていた不老不死と合わせて、運命の完全掌握を目論んでいたようデスガ、それは成りませんデシタ。
       その前に文明が滅びたのデス」

    銃士「え、なんでさ。システムとやらに守られてるんだろ?」

    黒鎧「不明デス。しかし確かに滅びマシタ。一説では、"受け継ぐ"ための文化や風習等が廃れてしまったためと言われてイマス」

    111 = 1 :


    黒鎧「次に、システムの仕組みの概要デスガ、これは全魔力素子の流れを制御してやることで可能となりマス。
       デスガその際、そのための中心が必要となりマス」

    魔王「……我輩か?」

    黒鎧「エエ。正確には歴代魔王デス。
       魔力素子を肉体感覚で操れるように遺伝子操作されたもの、これは現在の魔族デスガ、そのうち最も力の強いものデス。
       現在魔王城と呼ばれているこの施設はそれ自体が一つの装置で、魔王の力を増幅し、運命に干渉シマス」

    勇者「じゃあ俺は?」

    黒鎧「次の魔王候補デス」

    勇者「なに?」

    112 = 1 :


    黒鎧「――アナタは魔王になる前は何をしていマシタカ?」

    魔王「……聞いてどうする?」

    黒鎧「記憶がないはずデス。アナタはそれが始まった時から魔王ダッタ」

    魔王「……」

    黒鎧「……魔王という心臓部もいつかは取り替えねばなりマセン」

    銃士「その交換部品が、勇者?」

    黒鎧「ハイ。運命操作プログラムには、勇者の発生から魔王交代までのルーチンも刻まれてイマス。
       通常全人類のなかからランダムに選定されて、身体のどこかに印が発生シマス。それが勇者の証」

    メイド「……」

    黒鎧「勇者は魔王城まで連れてこられ、廻りの間にて魔王と戦いマス。
       勇者が勝った場合はその部屋ごと一時凍結され、数十年間ほど設定の上書きを行い、元勇者は魔王として目覚める、というわけデス」

    銃士「……」

    113 = 1 :


    勇者「勇魔の決闘に余人の立ち入りを禁じるってのは……」

    黒鎧「スムーズに魔王引き継ぎを行うためにできた不文律デスネ」

    魔王「旧文明が滅びたあとも、このシステムだけは残ったというわけか」

    黒鎧「皮肉デスネ」

    銃士「うん?」

    黒鎧「不老不死もこのシステムも、後世への引き継ぎを拒否し己を存続させるためのものデス。
       そのシステムがこのように受け継がれているトハ」

    114 = 1 :


    メイド「あの、質問なんだけど」

    黒鎧「なんデショウ?」

    メイド「あんたやあの白鎧は一体何なの?」

    黒鎧「あの白鎧は、システムの番人デス。
       システムの運営に支障が出そうなときに出現し、問題を解決するようプログラムされてイマス」

    勇者「じゃあお前もその類か?」

    黒鎧「イエ。私はただのエラーの産物デス。"keeper"は私を消去するために現れたのデス」

    魔王「どういうことだ?」

    黒鎧「数百年、数千年を稼働し続けてきたシステムは、既に限界にありマス。
       このまま続ければ崩壊し、世界も丸ごと引きずり込みかねマセン。
       最近地震が多くありまセンカ? それが予兆です」

    メイド「あの地震が……?」

    黒鎧「崩壊に向かうシステム。その中にエラーがたまり、偶然発生した存在。それが私、"phantom"デス」

    勇者「……」

    魔王「……」

    黒鎧「私はシステムを停止させねばなりマセン。それが私の存在意義だから、デス」

    115 = 1 :


    黒鎧『"keeper"は今回は撃退出来マシタ。でも、あれは、またやってきマス。今度こそ私を消去するために』

    黒鎧『次こそはあれを、システムを停止させなければなりマセン』

    黒鎧『システムの仕様から逆算するに、再び襲ってくるのは二日後の夕刻デス』

    黒鎧『――協力していただけマスカ?」

    116 = 1 :


    <魔王城.魔王城自室>


    メイド「――って言ってたけど」

    魔王「……」

    メイド「……あんたはどうするの?」

    魔王「残って戦う」

    メイド「……分かったわ。あんたならそう言うと思ったわよ」

    魔王「ああ」

    メイド「がんばりましょうね!」

    魔王「ん?」

    メイド「え?」

    117 = 1 :


    魔王「……お前、もしかして一緒に残るつもりか?」

    メイド「ちょっと! わたしだけ逃げろっていうの!?」

    魔王「勇者との決闘のときは残りたいというお前に我輩が折れた。今度はこちらの言うことを聞いてもらう番だ」

    メイド「で、でも」

    魔王「別に我輩は危険を冒すつもりはない。いざとなったら逃げる。安心しろ、な?」

    メイド「……わたしが治癒魔術しか使えないから?」

    魔王「……」

    メイド「そうなんでしょ?」

    魔王「違う」

    メイド「分かってるわよ。わたしが残っちゃうと足引っ張っちゃうものね」

    魔王「違う」

    メイド「でもわたしは――」

    魔王「話を聞け」ポコ

    メイド「あいたっ」

    118 :

    ここまで支援がないssも珍しいが始めたなら最後まで書くんだ
    中途半端は許さない

    119 = 1 :


    魔王「我輩が魔王として目を覚ましたときの事を覚えているか?」

    メイド「……忘れるわけないじゃない」

    魔王「皆に盛大に迎えられ称えられ、初めて入る自室にお前はいた」

    メイド「……」

    魔王「第一声は『誰よあんた』だったな」ククッ

    メイド「し、知らなかったものは仕方ないじゃない!」

    魔王「数十年ぶりに誕生した魔王を? 馬鹿言うな。ふふ」

    メイド「なんで今その話をするのよ!」

    魔王「あれから十数年だが、いまだに我輩に正面切って楯突くのはお前くらい」

    メイド「悪かったわねじゃじゃ馬で」

    魔王「そんなお前にもしものことがあっては困る」

    メイド「っ!?」

    魔王「我輩と真に対等な友人はお前だけだからな」

    メイド「え、あ、友人……?」

    魔王「さて……」

    120 = 1 :


    魔王「何はともあれ、今回は我輩の言うことを聞け」

    メイド「……分かったわよ」

    魔王「それでいい」

    メイド「でも! これだけは約束しなさい。絶対に危険は冒さないこと!」

    魔王「我輩はもとよりそのつもりと言ったはずだが」

    メイド「言うのと約束するのは違うの」

    魔王「……分かった、約束する」

    メイド「絶対だからね」

    魔王「ああ……もちろんだ」

    122 = 1 :


    <魔王城.食堂>


    勇者「――と、言うわけで俺は残る。お前は逃げろ」

    銃士「分かったよ」

    勇者「……」

    銃士「?」

    勇者「お前、そこは少し粘ったりするもんじゃねえのか?」

    銃士「何を?」

    勇者「……まあいいや」

    銃士「冗談だよ。でも、あたしが残ったところで何になる? 足を引っ張るのだけはごめんだよ」

    勇者「分かってんならいいんだ。気持ちの問題だ」

    123 = 1 :


    銃士「まあ、足を引っ張るのもそうだけど」

    勇者「ん?」

    銃士「受け継ぎ、だっけ。それはあんたたちの役目だと思うからね」

    勇者「……」

    銃士「主役はあんたたちだ。あたしは脇役」

    勇者「おい」

    銃士「勘違いしないでおくれ。不満はないよ。むしろあたしはその役に誇りすら覚える」

    勇者「?」

    銃士「あたしはちょっと逃げる。けど、あんたの仲間をやめるつもりもない。
       安心しな。どんな時もあたしはあんたの味方だよ」

    勇者「……」

    勇者「……!」ハッ

    勇者「ば、馬鹿言ってんじゃねえよ。そんな言葉だけじゃなんの足しにもなんねえよ」プイ

    銃士「あたしの言葉、忘れないでよ?」

    勇者「……おう」

    124 = 1 :


    <二日後.夕刻.魔王城.城門前広場>


     ――ズズン……グラグラ……


    勇者「……地震だな」

    魔王「ああ」

    黒鎧「……」

    魔王「……なあ、勇者」

    勇者「ん?」

    魔王「先代勇者については何か聞いているか?」

    勇者「聞きたいのか?」

    魔王「我輩の前世だ。気にもなる」

    勇者「前世じゃないだろ……まあいいか」

    125 = 1 :


    勇者「まず、生まれて三カ月にしてもう立って歩いていたという逸話がある」

    魔王「ほう?」

    勇者「五歳にして武におけるあらゆる領域でその筋の達人をうならせ、魔術の師匠のプライドを折って泣かせたらしい」

    魔王「ふむ」

    勇者「十六歳のとき既に人格は完成しており、その徳は天に届き、神の祝福を余すところなく受けた彼は、それまでの勇者の中で最も早く当時の魔王を降したとか」

    魔王「なるほど。さすが我輩、勇者時代からして最強だったのだな」

    勇者「――というのが表向きの口伝」

    魔王「ん?」

    126 = 1 :


    勇者「話を盛ってるのさ。それに武の面以外の彼はあまりいい噂は聞かない」

    魔王「……」

    勇者「やれ働きたくないやれ面倒くさい。彼のゆくところ怠惰の嵐が吹き荒れたそうだ」

    魔王「う、ううむ……」

    勇者「地位の高い人間には誹謗中傷も多い。他にも女癖が悪かったとか酷い乱暴者だったとかあるらしいが、まあ噂だ。気にすんな」

    魔王「聞かなければ良かった気もしてきた」

    勇者「だな」


    黒鎧「……」サッ


    勇者魔王「!」

    黒鎧「来ました」



    白鎧「……」キュイィィン


    127 = 1 :


    <database>


    『受け継ぐ』:前任者が残した仕事などを引き受けて行う。ある人の性質や意志などを引き継ぐ。継承する


         ・
         ・
         ・

    128 = 1 :


     相変わらず唐突な出現だった。やはり瞬きの前にはいなかったと断言できる。
     夕日の紅を反射し、白鎧が立ちあがった。

    「<..."keeper" launch>」

     すぐさま黒鎧が進み出る。

    129 = 1 :


    黒鎧「<quick processing "spring field" exist>」


     ――ブワ……

    130 = 1 :


     黒鎧の背後から猛烈な追い風が発生する。
     同時、白黒両方の鎧が地を蹴る。
     魔王勇者を置いてきぼりに、激しい衝突音が響いた。

     追い風を受け黒鎧には有利に、向かい風を受け白鎧には不利に働いた。
     したがって黒鎧に分があった。はずなのだが。

     崩れ落ちる音。
     黒鎧が地に倒れ伏した。

    131 = 1 :


    勇者「ファントム!?」

    魔王「馬鹿な! 一撃だと!?」

    白鎧「……」キュイィィン

    黒鎧「――」

    魔王「チッ、我輩らも行くぞ!」

    勇者「おう!」

    132 = 1 :


     魔王と勇者が地を蹴り飛び出した。

     魔王がやや先行した。白鎧の左に回り込み、その横腹に拳を飛ばす。
     しかし、障壁に防がれるよりも前に白鎧の腕の一振りで叩き伏せられた。

     勇者は。既に槍にその槍に肩を貫かれて力を失っていた。
     悲鳴を上げる彼に構わず、白鎧はその使命を遂行する。

    「<Catch>」

     槍に光がともる。

    「<rewrite ready...>」

    133 = 1 :


    魔王「ぐ……」

    魔王(あくまで、あれの目的はシステムの存続を図ること……強引に勇者を魔王に変換する気か!)

    魔王「やめんか!」

    白鎧「<5.4.3...>」

    勇者「あぐ……」

    勇者(俺が俺じゃなくなっていく……)

    魔王「勇者!」

    勇者(……死ぬのか)

    134 = 1 :



    「いいや」



     ガシャ!



    銃士「それはないね」



     ――ズキュゥゥゥン!


    135 = 1 :


     白鎧の身体が震えた。
     勇者が槍から解放されて地面に落ちた。

     白鎧が夕日の方角を見る。
     そしてさらに飛来した弾丸によってのけぞった。

    ◆◇◆◇◆

     離れた小高い丘に、彼女は伏せていた。
     スコープの向こう側に目標を捉えたまま。
     次弾を装填し、引鉄を絞る。

    136 = 1 :


    白鎧「……っ!」ドス

    魔王「……狙撃?」

    勇者「銃士……」


      銃士『どんな時もあたしはあんたの味方だよ』


    勇者「そう……そうだったな」

    137 = 1 :


     合計六発。撃ちこんだ弾丸の数だ。
     彼女はさらに次弾を装填し、スコープを覗き込んだ。

    「あたしの目から逃げられると思うんじゃないよ……!」

     だがその覗き込んだ先で、

    「……!」

     目標と目が合った。

    138 = 1 :


    白鎧「<anti snipe mode...>」スッ

    魔王「?」

    勇者「なんだ?」

    白鎧「<fire>」


     カッ――!

    139 = 1 :


     彼女にもそれは見えていた。

    「チッ、ここまでか」

     スコープの向こうが光で埋まる。
     それでも彼女はそれを睨むのをやめなかった。

    「後は任せたよ、勇者」

     光と熱が彼女を吹き飛ばした。

    140 :

    荒れてるなぁ

    141 = 1 :


     ――ドゴォォッ……


    勇者「……銃士?」

    魔王「……」

    勇者「…………こ、の」

    魔王「待て!」

    勇者「クソ野郎がァァァッ!」

    白鎧「……」キュイィィン!


     ――ドス!

    142 = 1 :


    勇者「っ……!」ドサ

    魔王「が……ッ」

    勇者「ばっ……お前、なんでかばった!」

    魔王「ぐぶ……」

    白鎧「<Catch>」

    勇者「ちくしょう、魔王を放しやがれ!」

    143 = 1 :


     飛びかかる勇者に、白鎧は空いている腕を振り上げた。
     が、突如動きを変え、飛び退る。
     魔王から槍が引き抜かれ、彼は地面に倒れ伏した。

     白鎧が退いた理由。それは死角に迫っていた黒鎧である。

    144 = 1 :


    黒鎧「すみません、再起動に時間がかかりました」

    魔王「ぐ……が……」

    勇者「魔王!」

    黒鎧「離れたところへ。私は番人を止めます」

    勇者「わ、分かった」

    白鎧「……」キュイィィン


         ・
         ・
         ・

    145 = 1 :


    魔王「ゼィ、ゼィ……」

    勇者「しっかりしろ! おい魔王、聞いてんのか!?」


      「わたしに任せて」


    勇者「……?」

    メイド「……わたしが助ける。あんたはファントムを手伝ってあげて」

    勇者「どうしてここに……いや、分かった。頼むぞ」

    メイド「ええ」

    146 :

    ヨメヤソラキを超えたなこいつ

    147 = 1 :


    メイド「"癒しよ"」ポゥ

    魔王「……」

    メイド「"慈悲よ"」ポゥ

    魔王「……」

    メイド「……"恵みよ"」ポゥ

    魔王「……」

    メイド「……あんた、危険は冒さないって約束したじゃない。危なくなったら逃げるって言ってたじゃない……」

    メイド「なのに何よこれ! なに死にかけてんのよぉ!」

    魔王「……」

    メイド「ふざけんじゃないわよ。必ず約束は守らせんだからね……!」グス


         ・
         ・
         ・

    148 = 1 :


    魔王「……っ!」ゴボ!

    魔王「うっ、がは……!」

    魔王「ゼィ、ゼィ……」

    魔王「……我輩は、一体」ムクリ

    メイド「――」

    魔王「メイド?」

    メイド「――」

    魔王「おい、メイド」ガシ

    メイド「――」ズルリ……ドサ

    魔王「メイド! お前まさか!」

    メイド「――」

    魔王「馬鹿者! 自分の命を削る奴があるか! なぜ逃げなかった! なぜ、こんな無茶を!」

    メイド「――ま、おう……」

    魔王「メイド!」

    149 = 1 :


    メイド「……これ、で、おあいこ、ね」

    魔王「っ……」

    メイド「また、ね……」

    魔王「……」

    メイド「――」

    魔王「……すぐ追いつく、から。待ってろ」

    150 = 1 :


    白鎧「フシュ――ッ!」

    勇者「うわっ!」ドサ

    黒鎧「くっ!」ドサ


      魔王「こっちだ!」シュッ!


    白鎧「!」バックステップ

    勇者「魔王!」

    黒鎧「大丈夫ですか?」

    魔王「いや……傷だらけだ」

    黒鎧「……」

    勇者「そうか……」


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