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元スレ勇者「魔王捕まえた」
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勇者「俺はさらに先を考える」
剣士「先?」
勇者「敵を失った巨大な国がどうなるのか、さ」
剣士「……」
勇者「帝国は最近になって統一に成功した国だ。
元は大小様々な国だったものの集合体で、表面上は穏やかだが、軋轢は並大抵のものではなかった。
酷いもんだぞ? とりこまれた国の末路ってのはな。いや、奴隷とかそういうのはないんだが。
だが似たようなものだ」
剣士「もし……魔族の根絶に成功してしまったら」
勇者「平和になる。わけじゃない。わかるだろ?
何かの間違いで百年安泰もあり得ないでもないけど」
剣士「……」
剣士「あなたは、それを防ぐために?」
勇者「そうだな、そういうことになる。
人間同士で血の浴びせっこはごめんこうむりたい」
剣士「……」
勇者「俺は手の届く範囲でしか物事を動かせない。
これが身の丈に合わないことだってのはわかる。
俺は厳密には勇者じゃないし、こう見えて臆病だ
でもやる」
剣士「勇者じゃない?」
勇者「それはまあ、後々話すよ」
勇者「そういうわけだ。邪魔しないでほしい」
剣士「勇者、わたしは」
勇者「できれば手伝ってほしい」
剣士「OK、その言葉がほしかったのよ」
勇者「……ありがとう」
魔王「勝手に話をまとめないでください!」
剣士「あら」
魔王「ぼくは魔王だ、誰にも邪魔させない! 必ず人間を根絶やしにしてみせます!」
勇者「お前が友好的ならもう言うことなしだったのに、とは思うよ」
魔王「ふざけないでください! 父さんは人間に殺された。兄さんたちもだ!」
勇者「先代魔王はこいつの父親だったそうだ。
いや厳密には兄たちが魔王の座についたそうだから先代じゃないんだが、すぐに戦で死んでこいつにお鉢が回ってきた」
剣士「そんなに簡単に死ぬもんなの? 魔王でしょう?」
勇者「こちらの王と違って、魔族は長が先陣を切って戦うことが多い。
勇敢さが王の資質だとかで」
魔王「それを人間どもは利用したんです!」
剣士「利用?」
勇者「単に狙いやすいところに出てきた的に一斉射撃を加えただけだけどな」
魔王「魔族の誇りを汚した!」
勇者「言うな。人間にも人間の戦い方があるんだ」
魔王「この後に及んで言い逃れなんて」
勇者「お前は怒りに我を忘れているのか」
魔王「何を!」
勇者「見えなくなったんだな。あの頃と違って」
魔王「訳のわからないことを言わないでください!」
剣士(何かしら?)
勇者「ともかく、俺はお前を殺す気はないよ」
魔王「ぼくにはあります!」
勇者「止めはしない。だが、できないなら同じことだ」
魔王「この首輪さえなければ……」
剣士「首輪?」
勇者「魔封じだ。こいつ、まだ未発達なせいか、魔術以外にとびぬけた才はなかった。
だから魔術を封じてやればこうやって閉じ込めておける」
魔王「くっ……」
剣士「なるほどね」
勇者「そういうわけだ、大人しくしてるんだな」
<城内>
勇者「じゃあ、剣士はこの部屋で寝てくれ」
剣士「ありがとう」
勇者「それじゃ、俺は」
剣士「待って」
勇者「ん?」
剣士「ちょっと確認したいんだけど」
勇者「うん」
剣士「わたしたちは仲間よね?」
勇者「相棒だよ」
剣士「わたしを置いて魔王城に乗り込んだのは、なぜ?」
勇者「どう思う?」
剣士「信頼されてなかったって思う」
勇者「信頼」
剣士「大事よ」
勇者「事はもっと単純だな。俺は君に危険な思いをしてほしくなかった。これまでも、これからも」
剣士「それが信頼してないっていうのよ」
勇者「そうかな」
剣士「だいたい、あなたわたしより年下のくせして生意気。もっとお姉さんを頼りなさい」
勇者「これからは存分に頼るよ」
剣士「まったく……」
勇者「おやすみ」
剣士「ええ、おやすみ」
ガチャ バタン
コソ……
「……」
「よし。敵は部屋に入りましたわね。とりあえずは一安心ですわ」
「さて、こちらを直接叩くのもいいですが」
「あの人間、隙が全くありません」
「わたしの力では悔しいですが、きっと返り討ちでしょう」
「ならば時間を待って、魔王さまのところへ!」
<牢屋>
魔王「……疲れました」
魔王「もう声もかれちゃいましたし、体当たりしたせいで肩も痛いですし……」
魔王「……ぼくはもうここから出られないんでしょうか」
ギィィィィィィ……
魔王「……!」
「魔王さま……!」
魔王「メイドさん!」
メイド「お久しぶりです魔王さま!
わたくし、心から無事を祈っておりましたわ!」
魔王「助けに来てくれたのですか?」
メイド「はい!」
魔王「でも、牢屋の鍵は勇者が……」
メイド「魔王さま、吸血鬼の力を侮ってはいけませんわ。
こんな牢屋の鍵くらいちょちょいと処理できます」
魔王「吸血鬼の力と鍵開けって関係あるのでしょうか?」
メイド「ふふ、細かいことは気にしてはいけませんわ」
魔王「と、とにかくお願いします!」
「そこまでだ」
メイド「っ……!」
魔王「勇者!」
勇者「鍵開けができるやつがいたのか。これは迂闊だったな」
メイド「なぜあなたがここに!」
勇者「いや、俺が魔王を捕まえてもう五日だ。そろそろ余計なことする奴がいるんじゃないかというただの予想だよ」
メイド「くっ……」
勇者「早いうちに厄介な奴のあぶり出しができて良かった。止めさせてもらおうか」
メイド(どうする……? 相手は魔王さまを降した人間)
メイド(わたくしの力では間違いなく敵わないでしょう)
メイド(ならば)バッ!
勇者「!」
ガチャン!
メイド「魔王さま、早く外へ!」
勇者「ノーラグで開錠か!」
魔王を「倒す」じゃなくて「捕まえる」と言われたら勇なましか出てこない
魔王「おおおおおおおお!」バッ!
勇者「くっ! "崩拳"!」シュッ!
魔王「がふッ!」ガクン
メイド(魔王さま!)
メイド「ですがこのタイミングでわたくしの攻撃はかわせない!」ヒュッ!
勇者(まず――)
「ふっ――!」ブン!
バキィ!
メイド「きゃああああああ!?」ドサァ
「大丈夫?」
勇者「助かったよ剣士」
剣士「言ったでしょ、もっと頼りなさいって」
勇者「悪い、忘れてた」
剣士「もう。で、この娘は?」
勇者「この城のメイドらしい。吸血鬼とか言っていたな。
特技は開錠のようだ」
剣士「厄介ね」
勇者「だな」
勇者「こいつも牢屋に放り込んでおきたいけど」
剣士「開錠が魔術じゃなくて特技なら意味ないわね。殺すか腕折る?」
勇者「気が進まないな」
剣士「そうよね……」
勇者「よし仕方ない」
剣士「どうするの?」
勇者「俺の奴隷にする」
剣士「えっ」
勇者「というのは冗談で」
剣士「驚きと疑問と殺意が同時に湧いてどうしようかと思ったわ」
勇者「四六時中こいつを監視できるようにしようと思う」
剣士「つまり?」
勇者「俺専属のメイドにする」
剣士「ちょっと」
勇者「他に良い手は?」
剣士「ないけど」
勇者「ならいいよな」
剣士「なんだか気にいらないわ」
メイド「うう……」
勇者「目が覚めたか」
上条「じゃあ、最後は尻を出せ!!」
さやか「は、はい・・・」
上条「クンカクンカ」
さやか「きゃあ!!」
上条「クサッ!!」
さやか「え・・・」
上条「お前、ちゃんと、尻拭いてるのか?」
さやか「ギクッ・・・」
さやか「は、はい・・・」
上条「クンカクンカ」
さやか「きゃあ!!」
上条「クサッ!!」
さやか「え・・・」
上条「お前、ちゃんと、尻拭いてるのか?」
さやか「ギクッ・・・」
メイド「この……」
勇者「諦めた方がいい。この二対一は絶望的だよ」
メイド「う……」
勇者「というわけで、君は今夜から俺の専属メイドだ。よろしく」
メイド「え゛?」
勇者「じゃあ行こうか」
剣士「どこへよ?」
勇者「寝室だよ?」
剣士「な!? 一緒の部屋で寝るっていうの!?」
勇者「そういえばベッド一つしかなかったな」
剣士「寝るときはわたしが見張るから!」
勇者「そうか? じゃあ頼む」
メイド(ええと……)
メイド「そ、そうですわ、魔王さま!」
魔王「」グッタリ
メイド「魔王さまー!?」
勇者「あ、悪い、思わず崩拳ぶちこんだから多分起きないぞ」
剣士「崩拳?」
勇者「すごいパンチ」
剣士「そ、そう……」
勇者「とりあえず魔王は牢屋に放り込んで、じゃあさっさと寝ようか」ガシ
メイド「いやー! 魔王さまー!」ズルズル
・
・
・
上条「じゃあ、最後は尻を出せ!!」
さやか「は、はい・・・」
上条「クンカクンカ」
さやか「きゃあ!!」
上条「クサッ!!」
さやか「え・・・」
上条「お前、ちゃんと、尻拭いてるのか?」
さやか「ギクッ・・・」
さやか「は、はい・・・」
上条「クンカクンカ」
さやか「きゃあ!!」
上条「クサッ!!」
さやか「え・・・」
上条「お前、ちゃんと、尻拭いてるのか?」
さやか「ギクッ・・・」
<帝国>
騎士軍元帥「陛下、お待たせして申し訳ありません。本日も陛下におかれましては――」
皇帝「元帥か。挨拶はよい」
元帥「は」
皇帝「単刀直入に聞こう。魔界侵攻の具合はどうだ?」
元帥「ありていに申しあげまして……芳しくありません」
皇帝「そうか……。"勇者"からの連絡は?」
元帥「二十日前に途切れたきりです」
皇帝「……」
元帥「もともと勇者計画は失敗を前提としております、どうか気を落とさぬよう」
皇帝「分かっておる」
元帥「ですが、代わりといいますか良い報せがございます」
皇帝「何だ?」
元帥「魔術士計画の土台が整いました。それほどしないうちに実戦投入ができるかと」
皇帝「それはまことか?」
元帥「神に誓って申し上げます。我々は皇帝陛下に輝かしき勝利を献上すると」
皇帝「期待しているぞ」
元帥「は!」
<魔界>
鬼人族長「思うことがある」
鬼人従者「何でしょう?」
鬼人族長「なぜ我らは耐えねばならぬのだろう」
鬼人従者「……」
鬼人族長「魔王さまは確かに大器のお方だ。しかし……」
鬼人従者「族長」
鬼人族長「すまぬ」
鬼人従者「……もしものときは私があなた様を支えましょう」
鬼人族長「……すまぬ」
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