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元スレ長門「彼のためにクッキーを焼いてみた…」
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泣きじゃくる朝比奈さん
震えるハルヒと、それを支える古泉
俺はただ、立ち尽くしていた
「とにかく、連絡を…」
「待て、古泉」
「ですがっ…!!」
「…頼むから、時間を、時間をくれないか」
「本当は、気付いてたんだ」
「心の奥で、あいつがあいつでない事に」
「もしかしたら、あの長門なのかもしれないって」
「でも、言わなかった」
「俺は…気付いてたのに、言わなかった、言えなかった」
突然クッキーを作った長門
デパートに行きたいと言った長門
楽しそうな笑顔
笑顔
笑顔
「…このままでも、大丈夫なんじゃないかって、勝手に思ってた」
「蓋をして、認めないフリをしてた。」
「悪いのは……俺なんだよ」
「何、言ってんのよ…」
「なに、何、言ってんの?
有希が、あの有希とかこの有希とか、気付いてたとか気付いてないとか、何なの…?
ねえ、何の話なの…?」
困惑した瞳が、立ち尽くす俺を刺す。
俺は今更ながら自分の無能さを思い知った。
「その、それはだな、ハルヒ…今のは、」
「答えてよ、キョン……答えなさいよ!!!!」
迂闊だった。
動転しすぎて、ついにやってしまった。
俺たちが今まで、必死になって隠していたその片鱗を、ハルヒは今まさに掴もうとしていた。
>>883でいいんでねーの
>>883に期待
>>389がやったのを見て自分も笑いを取れると思ったんだろうな
>>410
可哀相な奴だなw
可哀相な奴だなw
ハルヒが俺の方へ歩き出そうとする。
しかし、その肩を支えていた古泉が、それを許さなかった。
「いっ…古泉君、離してよ!」
「…落ち着いて下さい、涼宮さん」
「良いから離して!!」
「落ち着いて下さい!!!!」
古泉が、普段は出さないような大声を張り上げた。
ハルヒの動きがびくりと止まる。
「…とにかく、落ち着いて下さい」
唖然とするハルヒを置き去りに、古泉は俺を見た。
「貴方は、自分が何をしたのか、もうお分かりでしょう」
十分すぎる程、それは分かっていた。
何もかもがぐちゃぐちゃだった。
滅裂だ。
「行って下さい」
「だが……」
「恐らくは、これが最後のチャンスです。それが尽きてしまえば、時間も、為す術も、我々には残っていません」
使う単語を最小限に、古泉が語る。
ハルヒの肩を掴むその指には、力が籠っていた。
「僕は彼らに連絡をしません。…最も、彼らならばすぐに気がつくでしょうが」
彼ら、が何を指すのかは分かっていた。
「ふふ、貴方はいつぞやの約束を、覚えているでしょうか」
「古泉、お前…」
「さ、早くして下さい。涼宮さんには、僕と朝比奈さんがついていますから」
俺はこいつを、初めてこんなにも頼もしいと思った。
「キョンくん」
涙目の朝比奈さんは、ハルヒに聞こえないよう、最大限に俺を勇気づける言葉を囁いた。
「…この事は、未来からは何も伝えられてなかったの。この意味、分かるでしょう?」
◆
降りしきる雨の中、俺はひたすら走った。
長門はいない。
人もまばらだった。
何処にいるのだろうと考える余裕もなく、ただ闇雲に走り回る。
近所の公園
商店街
駅前
デパート
長門の家
思い当たる所には行ってみた。
だのに長門は何処にもいなかった。
もう、手遅れなのだろうか。
降りしきる雨の中、俺はひたすら走った。
長門はいない。
人もまばらだった。
何処にいるのだろうと考える余裕もなく、ただ闇雲に走り回る。
近所の公園
商店街
駅前
デパート
長門の家
思い当たる所には行ってみた。
だのに長門は何処にもいなかった。
もう、手遅れなのだろうか。
…いや、違う。
きっと何か、俺は何か忘れているのだ。
思い出せ、思い出せ。
デパート
公園
喫茶店
学校
校庭
閉鎖空間
部室の、
パソコン
YUKI.N> また図書館に…
「図書館…?」
何度となく車に轢かれそうになりながら、俺は図書館を目指した。
◆
図書館前の広場には、誰もいなかった。
やはり間違えたか、と、今度こそ泣きそうになる。
しかし、ふと見上げた図書館に、俺は違和感を感じた。
違和感を感じる余裕があったことに驚きながら、その正体を探るべく全体を見回す。
何だ、別に普段と変わらないか。
いや、少し暗いが、雨のせいだろうか。
「あ…」
そうか。
やはり長門はここにいる。
図書館に近付くに連れ、疑惑は確信へ変わる。
扉付近の傘用ビニール。
あたかもさっきまで使われていたかのように、ゴミ箱から溢れていた。
だが、人っ子一人いない上に、休館でもないのに図書館は明かり一つ点いていなかった。
「長門…」
正面の大扉を開ける。
鍵は掛かっていなかった。
薄暗い館内。
長門は、何処にいるのだろう。
俺は、必死に思い出していた。
長門の好きなジャンル。
ハードカバー。
外国人作家。
借りた回数が多いのは、確か…
「SF、か」
SF・時代小説の棚は二階だ。
誰もいない館内を、暗闇に紛れて、走った。走った。
真直ぐ行って、角を曲がって…
ここだ。
「長門!!!」
…いない。
自分の荒い息と耳鳴りで、周りの音が聞こえない。
クソッ、絶対に、ここにいるはずなのに。
俺は祈るような気持ちで深呼吸をし、静かに歩き出した。
「……、………」
何だ…?
今、何か…
「……、は、……否、」
ズラリと並んだ本の壁。
挟まれながら進むと、徐々にそれは大きくなっていった。
「…否する、……能、私は…」
「同期を拒否する、それは、不可能…嫌、私は」
壁が途切れる。
右は、いない。
左は、
……いた。
椅子に座ったまま、滝のように涙を流し、ひたすらに何事かを呟いているのは紛れもなく長門有希だった。
「……長門」
「拒否する、拒否する、同期は、不可能、データ長門有希00を削除、削除、削除、削除」
「……長門」
「どうして、何故、何故消去が不可能なの」
「……なが、と」
「消去、消去、強制コード使用…不可?何故、何故、どうして、どうして」
「長門…!!」
考える暇もなく、身体が動いた。
壊れたテープレコーダーのように、繰り返し繰り返し悲しい声で呟く長門を、抱き締める。
「長門…すまん、すまん!」
「俺が…初めに気付いた時に、お前に言ってやってたら…!!」
「こんな、こんなに深刻になる事はなかったんだ!」
畜生、畜生。
俺の馬鹿野郎。
長門はこんなに苦しんでるのに、俺は、俺は…!!!
悔しくて情けなくて、どんなに歯を食いしばっても、涙が溢れて止まらなかった。
「……エラー発生」
「データ長門有希01、凍結」
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