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    元スレこりずに新?ジャンル「勇者と女魔法使い」

    新ジャンル覧 / PC版 /
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    351 :

    乙~。楽しめた

    352 :

    乙華麗

    353 :

    保守、そして乗っ取り準備

    354 = 353 :

    勇者「ありあとやしたーっ」
    街の「おう、ごっそーさんっ」

    街の「またくるねー」
    勇者「ごひいきにーっ」

    勇者「や。客も引けたな。ひの、ふのみの……。
     今日はそろそろ切り上げるか。暖簾下ろして、と」

    魔王「入っても平気ですか?」
    勇者「あいあい! お客さんで最後だ。どうぞー」

    魔王「焼き豆腐定食でお願いします」
    勇者「がってんだ」

    355 = 353 :

    魔王「もぐもぐもぐ」
    勇者「……」

    魔王「もぐもぐ」
    勇者「あの」

    魔王「はい?」
    勇者「もしかして、魔王とか?」
    魔王「はい」

    勇者「……」
    魔王「もぐもぐ」

    356 = 353 :

    魔王「ご馳走様でした」
    勇者「お前、死んでなかったのか?」

    魔王「死にました。綺麗さっぱり。勇者さんは
     かなり容赦が無かったですからね。倒れてるのに
     何度もデインで焼き殺して」

    勇者「魔王の再生能力が半端なかったからだろう」

    魔王「そんなわけで、私は勇者さんが戦った
     魔王ではないんですよ。娘とでもいいますか」
    勇者「……」

    魔王「人間の遺伝子継承とは仕組みが違いますから
     記憶や能力は受け継ぐ、いわばバックアップ的な
     関係なんですけれどね」

    勇者「!」

    357 = 353 :

    魔王「怖い顔です」
    勇者「貴様、また世界をどうこうするつもりなのかっ」
    魔王「……」

    勇者「お前がどういうつもりか知らないけれど、
     俺は今の世界も生活も気に入ってるんだよっ」
    魔王「ふむぅ」

    勇者「お前、どういう理屈で誕生したかはよく判らないけれど、
     戦闘力はずいぶん下がってるぜ。前の魔王の百分の一以下だ。
     四天王にすら及ばないんじゃないのか?
     現役引退のロートルの俺だけど、今のお前ならやれるんだぜ」

    魔王「本当にこんな世界を気に入ってるんですか?」
    勇者「え?」

    魔王「勇者のあなたに僅かな報酬を餌に魔王討伐を押し付けて
     安逸と堕落をむさぼっているような
     この世界がそんなに好きなんですか?
     世界を救った英雄のあなたがこのような小さな街で
     定食屋の親父ですか?」

    勇者「……」

    358 = 353 :

    魔王「女魔法使いはどうです」
    勇者「え?」

    魔王「あなたが魔王を倒しに出たのは国の要請です。
     いわば断りきれない義務だった。なのに彼女は
     あなたを待たなかった。裏切った」
    勇者「そんなことはない。あれは仕方なかったんだ」

    魔王「あなたがこの世界で守りたいものなど、
     彼女くらいしか残ってないんじゃないですか?」

    勇者「お前、何が言いたいんだ。まさか女魔法使いを」

    魔王「いえ。それはないです。
     私の戦力は先ほどあなたの感じたとおりです。
     女魔法使いを害してもあなたの報復で死ぬだけです。
     私はむしろ女魔法使いを守っています。
     現に先週の魔物の襲撃から」
    勇者「あ」

    魔王「そうです。女魔法使いの町を襲ったハグレ魔族から
     あの街を結界で守ったのは私ですよ」

    359 = 353 :

    勇者「おまえ、何のつもりがあるんだ?
     何か話があるんだろう」
    魔王「はい」
    勇者「云ってみろ」

    魔王「いくつかの外交的な交渉があるのです。
     目的としてはあなたに仲間になって欲しいのです。
     私はひ弱だし、例え以前の力を取り戻しても『勇者』には
     勝てないということを学習しました」
    勇者「断る」

    魔王「即決ですね」
    勇者「おれは腐っても『勇者』だ。世界を守る」

    魔王「困りましたね。私は魔王ですから世界を
     手に入れるために生まれついています。
     とりあえず、条件の提示をします」
    勇者「そんな話はいい。帰れ」

    魔王「まだ豆腐が一切れ残っています。わたしはいまだに客です」
    勇者「っ!」

    360 = 353 :

    魔王「あなたに仲間になってもらうのが最上ですが、
     それが出来ないのであれば、中立でも仕方ないとは思っています。
     つまり、人間には味方をしないということです」
    勇者「……」

    魔王「そのための条件はいくつかあります。
     女魔法使いはどうです?」
    勇者「え?」
    魔王「魔王ですから、記憶消去や改変は出来ます」
    勇者「話にならないな。そんなものがあいつかよ。
     舐めすぎだろう。俺は俺の納得したものしかいらねぇんだよ」

    魔王「ええ、まぁ。これは前座です。
     ……では時間遡行はどうです?
     旅に出かけたあの日まであなたを送り届けましょう。
     あなたは旅に出ず、女魔法使いと暮らすことが出来る。
     でなければ二人で魔王を倒してもいい」
    勇者「自分のことじゃねぇのか」

    魔王「記憶は残っているのですが、基本的には別人です。
     前魔王のことは他人の書いた昔話のようにしか感じられません」

    361 = 353 :

    勇者「却下だな。お前にその能力があるかどうか疑問だ。
     時間遡行に見せかけて巨大魔法で俺を葬り去らない保証は無い」
    魔王「その心配は不要なのですが」
    勇者「答えは同じだ」

    魔王「では女魔法使いを複製しませんか? 完全に本物と同じ
     二十存在です。片方は今の家庭で暮らし、
     片方はあなたと生活を共にする」

    勇者「……お前な」
    魔王「はい」
    勇者「何を誤解しているがしらないが、今の俺とあいつは、
     もうそういう関係じゃないんだよ。
     誰よりもあいつは大事な幼馴染で、親友で、腐れ縁で
     酒飲み友達で……。大事な……大事だけど、あいつは。
     あいつは、その世界の雰囲気とか歴史とか、
     あいつの……家庭とか。そういうのを含めて『あいつ』なんだよ」
    魔王「……」

    勇者「そういうのを無茶に壊したら、俺は俺の大事なものを
     自分で壊すことになるんだよ。
     お前らは、そういうのが判らないから
     いつまでたっても世界の敵なんだっての」
    魔王「……」

    362 = 353 :

    魔王「判りました。では、ここで一度、
     世界の敵の基本に立ち代って脅迫します」
    勇者「戦るのかよ」

    魔王「やりません。むしろ守ります。
     あなたと、あなたの好きなものを」
    勇者「え?」

    魔王「あなたや女魔法使いを守ります。魔族もできるかぎり
     制御して人間界に迷惑をかけないように努めます」
    勇者「なんだよ……。脅迫になってないじゃねぇか」

    魔王「そして時期を待ちます」
    勇者「え?」

    魔王「わたし、魔王は長命です。人間より遥かに長生きします」
    勇者「そんなことか」
    魔王「はい。そうです。あなたの死を待ちます」
    勇者「今ここでお前を殺せば解決だっ!」

    魔王「女魔法使いを守り、まだ人間を一人も
     殺したことの無い私をあなたは殺すのですか」

    363 = 353 :

    勇者「っ。ならいいさ」
    魔王「……」

    勇者「俺が親父を継いだように、
     俺の子供が勇者となりお前の野望を阻む」
    魔王「あなたは子供が居るのですか?」

    勇者「いないけど、べつにこれからでもいいだろう」
    魔王「あなたは彼女以外の女性と結婚して子をなすのですか?」
    勇者「え」

    魔王「女魔法使い以外でも良いのですか?」
    勇者「あ、あ……」

    魔王「それは、貴方を待ちきれなくて妥協で結婚した
     女魔法使いと同じ罪なのではないですか?」
    勇者「……」

    魔王「脅迫が理解していただけましたか?」
    勇者「――」

    364 = 353 :

    魔王「それらを含めて提案があります」
    勇者「なんだよ」
    魔王「結婚してください」

    勇者「はぁあ!?」

    魔王「女魔法使いでなくても良いなら誰でもいいでしょう?
     私でもかまわないはずです」
    勇者「お前は魔王だろっ」
    魔王「人体の組織的には差し支えありません」
    勇者「そういうことじゃなくっ」
    魔王「あと数年で性交も可能な年齢に達します」
    勇者「あのなっ」

    魔王「だめですか?」
    勇者「あったりまえだ!」
    魔王「私を監視できますよ」
    勇者「それなら結婚しなくても出来るだろっ」

    365 :

    けしからん魔王だ もっとやれ

    366 = 353 :

    魔王「それなら勇者は子供を授かれる」
    勇者「魔王の子供でもある。災厄を増やすわけにはいかない」

    魔王「さっきもいったように魔王は複製体で子孫を残しますから
     増えるとか減るとか云う問題はありません」
    勇者「話がかみ合わないな」

    魔王「それに結婚すれば良いこともあります」
    勇者「なんだよ」
    魔王「勇者と魔王の世界を掛けた戦いを、
     誰にも迷惑をかけない小規模な形で継続できます」

    勇者「続ける必要を感じないな」
    魔王「……」
    勇者「そんな必要は無いっ」
    魔王「……」

    勇者「……」
    魔王「……」

    勇者「わかった。認める。嘘だ」
    魔王「そうですよね。私たちはそれ目的の存在ですし」

    367 = 353 :

    ――そんな訳で魔王と暮らすようになって半年。
    ちんちくりんな少女の魔王というのも変な話だが
    今のところそんなに悪さをする様子は無い。

    家に魔族が訪ねてきて月次報告やら統治会議をやってくが
    まぁ行儀良くしているようだ。

    魔王はそこそこ真面目に人間生活をしている。
    最近は図書館に通い勉強をする日々だ。人間社会を学ぶらしい。
    俺に言わせれば実生活のほうで少し学べばいいと思う。
    家事や料理はする気がさっぱり無いし、表情が動かないので
    何を考えているか判らない。近所では人気があるのが不思議だ。

    理屈っぽいところは変わらない。
    結婚、結婚などといったが実体はただの同居だ。
    先のことはわからないがこれも仕方ない試練なのだと
    から揚げを作りながら思う。マンドラゴラの浅漬け美味い。

    368 = 353 :

    魔法使い「美味い。じゃないでしょっ!!」
    勇者「ああ、久しぶり。まぁあがれよ」
    魔法使い「なんなのよっ。あんたは。
     いきなりこんな娘と同居初めてっ」
    勇者「知られたくなかったなぁ」

    魔王「娘ではありません。妻です」

    魔法使い「え」

    魔王「妻です」

    魔法使い「え」

    魔王「良人です。妻です。配偶者です」

    魔法使い「えぇ!?」

    魔王「勇者の幼妻です。いまはまだ膨らみかけですが
     日々の調教で驚くほど柔軟に受け止めることが可能な
     カスタマイズされた肉として日々を成長中です」

    魔法使い「えぇええぇええぇぇ!?」

    勇者「お。ドップラー効果」

    369 = 353 :

    よし、ほどよく切りが良いところまで進んだし
    腹が減ったので休憩だぜーコンビニいってくるっくー

    370 :

    おいお前ふざけるなYO

    371 :

    生殺しかよwこの魔王めwwwwwww

    372 = 329 :

    勇者訂正しないのかwww

    373 = 353 :

    ――30分後

    勇者「てなわけで魔王なんだよ」
    魔王「魔王兼幼妻です」

    魔法使い「納得いかないわね」
    魔王「このさいミルク絞りペットでも我慢しましょう」

    魔法使い「うがっ!!」
    勇者「話が混乱するからお前は喋るな」

    魔法使い「なんかの陰謀だとしか思えないんだけど」
    勇者「あー。まーなー」
    魔王「妻は夫に対して常に陰謀を仕掛けているものです」
    魔法使い「認めたっ」
    勇者「こいつはいつもこうなんだ」

    魔王「しかし実際、魔物による被害は減少しています」
    魔法使い「まぁ、それは」
    勇者「確かにな」

    魔王「ここに前年度比の状況報告書があります。
     この票によると被害全体で前年度同月比-67%、
     特に人間に対する致傷被害は-86%となっています」

    魔法使い「うーん」

    374 = 353 :

    そんなこというたかて、おいらだって腹減るししかたないやんー。
    一人でずっと書き込んでくると、これでいいのかどうなのか
    だんだんブルーはいってくるんだってばよ。

    375 :

    ちゃんと見てるよ!

    376 = 365 :

    >>374
    面白いよ

    377 = 353 :

    勇者「魔王が魔界との境界を厳重にパトロールしているのと
     魔界の領土拡張を行っているせいなんだよ」
    魔王「はい」
    魔法使い「領土拡張?」
    魔王「機密事項です」

    勇者「まぁ、簡単に言うと、魔界の辺境開発らしい。
     魔物主力をそっちへ配置して、軍部の暴発を防いでるらしい」

    魔法使い「へー。魔界ってそんな風なんだ」
    勇者「知らなかっただろ。俺もだけど」

    魔王「女魔法使いさん」
    魔法使い「はい?」
    魔王「ぶぶ漬けをどうぞ」
    魔法使い「……」

    勇者「お。茶漬けか? 俺好きなんだよ。食う食う」
    魔王「……」
    魔法使い「……」

    勇者「あむ、あむっ。もぐもぐ」
    魔王「勇者は空気読めませんね」
    魔法使い「昔からね」

    378 = 353 :

    勇者「は? どうしたのおまえら?」
    魔王「何でもありません」
    魔法使い「なんでもないわよ」

    魔王「……」
    魔法使い「ちょっと魔王」(小声
    魔王「はい?」(小声
    魔法使い「あんた私に云いたいことでもあるの?」
    魔王「いえ特には」
    魔法使い「そう……」

    魔王「愛する勇者であるわが背の君の元カノが
     今でも勇者と親しく付き合っていて
     毎月のように酔いつぶれるような逢瀬を繰り返していたり、
     二人が幼馴染で自分には割り込めないような
     深いレベルで信頼しあい理解しあっていたり、
     わが夫が女魔法使いさんの話をするときだけ
     ちょっと遠くを見つめるような優しい視線を持っていたり、
     その邪魔者がなんと家までやってきて
     私の配偶者に気安く話しかけてこともあろうに勇者のほうも
     それがさも当然というようにどこかほっとした表情を
     浮かべていたりしても魔王であるわたしは何も思いません」

    魔法使い「あー。うー」

    379 = 353 :

    勇者「もぐもぐ。お前らこそこそしてなんなんだー?」

    魔法使い「なんでもないっ。
     あんたはマンドラ漬けでも食べてて」
    勇者「おー。今年のも美味いなぁ~」

    魔王 ごそごそ
    魔法使い「何やってるの?」
    魔王「いえ、ほうきを……。濡れ雑巾はどこですか」
    魔法使い「あー。うー」

    魔王「掃除道具なんてどこにあるかわかりません。
     そんな仕事をやるほど魔王は落ちぶれていません」
    魔法使い「……」

    魔王「っ。これは吸引破砕機です。
     こっちは小型ブラックホール発生術式。
     なぜ普通の掃除機がみつかりませんか」

    魔法使い(この娘本気で云ってるのかなー)

    勇者「おーい。お前らも座って茶のめば?」
    魔法使い「はいはい。まったくあんたは適当なのよ」
    魔王「適当なのはかなり同意しますね」

    380 = 353 :

    魔法使い「まぁ、いいけどね。同居でも何でも。
     ――私はもうあんたを止める権利なんて無いわけだし」
    勇者「へ?」
    魔法使い「ううん、なんでもないっ」

    魔王「……女魔法使いさん」
    魔法使い「なにー? チビ魔王ちゃん」
    魔王「年増魔法使いさん。そろそろ切り出しては?」

    魔法使い「あー」
    勇者「何だよなんだよ。俺が居ないところで二人とも。
     週末のバーベキューパーティーの相談かよ」

    魔王「違いますよ」
    魔法使い「違うっての」
    勇者「なんだよ」

    魔法使い「まぁ、あれでさ。
     じつは王様が私に勇者の捜索を頼んできてね」
    勇者「なんでまた」

    魔法使い「幼馴染で魔法使いだし。探知や遠隔視で
     どうにかならないかって」
    勇者「いや、方法じゃなくてさ。目的はなんだよ」

    381 = 353 :

    魔法使い「王様は勇者が生きてるの知ってるみたいじゃない」
    勇者「そりゃ、あの戦いのとき、王の推薦した戦士や神官も
     いたからなぁ、大半は途中でいちまったけれど、
     数人は帰れたはずだし」

    魔法使い「で、勇者が生きている事を知った王がね。
     また頼みたいことやら、褒賞やらがあるんだって」
    勇者「あれから何年たったと思ってるんだよ」

    魔法使い「まぁ、王もさ。いろいろあるんじゃない。
     関係ないんだけどさ。いちおう、その……。
     知ったからには伝言をね」
    勇者「ふーん。頼みたいことね」

    魔法使い「たぶんだけど。
     西の砂漠に居る蟲竜退治じゃないかなぁ。そんな話だったよ」

    勇者「ああ。あいつか。
     たしかに並みの騎士団とかじゃ厳しいわなぁ」
    魔法使い「うん……」

    勇者「そういうことなら仕方ない。
     近々王のところに顔出すよ」

    383 = 353 :

    魔法使い「あのさ。無理しなくていいんだよ。
     並みの騎士団じゃ厳しいったって、聖騎士団や
     魔法師団だっているんだし」

    勇者「それじゃかなりの犠牲者でるだろ」

    魔法使い「うん……。でも、ほら。これは云ってみれば
     国のもんだしさ。勇者が犠牲になることは無いって云うか」
    勇者「お前は昔から個人主義だもんなー」

    魔法使い「まーね。うん」
    勇者「とはいえ、ほっとくわけにもいかねーだろ」
    魔王「放置でも良いです」
    魔法使い「う、うん」

    勇者「魔王」ごちん
    魔王「屈辱です」

    勇者「そういう自分勝手な事を見せると魔王の教育にも悪いしな」
    魔王「私は勝手に学んでいるのです」
    勇者「そんなわけで、まぁ近々出かけるよ」

    魔法使い「そっか。……わかった。うん」
    勇者「国王には云わなくていいぜ。
     風の噂を聞きつけて参じたとか適当に話作っておくからよ」
    魔法使い「うん」
    勇者「心配するな。蟲竜程度でやられっかよ」
    魔法使い「わかった。……今日はそんだけ、帰るね」

    384 :

    続けたまえ。期待しておるぞ。

    385 = 353 :

    勇者「なんだかなー。あいつ今日はやけに歯切れが悪かったな」
    魔王「行かないほうが良いと思います」
    勇者「は?」

    魔王「王の元へは行かないほうが良いと考えます」
    勇者「なんだよ」

    魔王「魔族の勘です」
    勇者「訳のわからん事を言うなよ。
     理由があるなら説明してくれよ」

    魔王「私は合理主義者なんです。勘です、なんていう台詞は
     本来恥ずかしくてとても言い出せません。
     その言葉の本当の意味を汲んで下さい」
    勇者「わからねぇよ」

    魔王「説明できない理由があるので私を信じてください、です」
    勇者「――」

    魔王「私には人間の持つ好悪や恋愛の情はわかりませんが
     あなたと交わした約束の通り、生涯あなたの傍にはべります。
     今回の進言は裏表の無い私の真意です」

    386 = 353 :

    勇者「やっぱ、いくよ」
    魔王「……」

    勇者「そんな顔するなよ。
     魔王のこと信じてないわけじゃないって。
     でも俺はこれでも一応勇者だからさ。
     なんつの? こう。落ち着かないわけよ。
     どっかで俺の名前を呟きながら死んでいくやつがいると思うとさ。
     寝つきが悪いんだよなー。そういうのー」

    魔王「……」
    勇者「それにさ。あいつもちょっと様子変だったしな。
     王都にいきゃーもうちょっと事情もわかるだろうさ」

    魔王「……」
    勇者「蟲竜ってのは、おまえじゃ制御効かない種族なんだろう?」
    魔王「ええ。あれは魔物というよりは、古代生物ですから」

    勇者「じゃぁ、しかたないさ。あれだよ
     同居人の面倒を見るのは、勇者じゃなくて、あれだよ。
     男としての甲斐性だよ」
    魔王「勇者……」

    勇者「ちゃっちゃとかたして帰ってくるからさ。
     おまえはのんべんだらりとこの家で羽を伸ばして置けよ」

    387 = 353 :

    ――そして勇者は旅に出た。
    私は馬鹿だ。馬鹿だ。大馬鹿だ。
    出かける勇者の背中に後悔が止まらない。

    蟲竜なんて簡単に倒して帰ってくるよ?
    魔王討伐のときもそう云っていたではないか。
    何が起きるかなんて判らないのだ。
    ましてや今の王には灰色の噂が付きまとう……。

    だがしかし今の私に勇者を止める権利なんか無いのだ。
    私にとっては子孫を残すための義務だった。
    躊躇なんか無かった。交配用の胚を採取する程度の出来事だった。
    愛なんか無くても結婚は出来る。そう思っていた。

    でもあの日、
    幻覚で顔を変えた勇者の瞳に浮かんだ苦痛を見たとき判った。
    私がしたのは「裏切り」だったのだと。
    それは許されないほどの罪だったと。
    凍てついた大槍が背筋をゆっくりと貫くような悲しみと共に
    私はその事を理解した。


    388 = 353 :

    魔王「理解した、だけじゃ困ります」
    魔法使い「魔王っ!? どうしてっ」

    魔王「どうしてもこうしてもありません。
     もう三ヶ月ですよ。待機フェイズを破棄する頃合いです」
    魔法使い「……」

    魔王「酷い顔ですね」
    魔法使い「……」

    魔王「ちゃんと食べてるんですか?」
    女魔法使い ふるふる
    魔王「後悔ですか」
    魔法使い「……」

    魔王「そんな脆弱な精神でよく勇者の幼馴染を
     やっていられたわけですね。まったく似合いません」
    魔法使い「っ! あなたに何が判るのっ」

    魔王「あなたの現在の配偶者が宮廷で地位を得たことが。
     勇者探索の方法の進言ですか? 行商上がりの商人が」

    魔法使い「……ッ」
    魔王「私は魔王ですが約定は違えません。
     前回も前々回も約束を破ったせいで負けていますからね。
     ましてや今回勇者は私の良人です。頬を染めずには語れない
     あんな痴態やこんな体位はまだとはいえ、
     はべる、と云った手前というものがあります」

    389 = 353 :

    よし、切りが良いところまで来たし休憩するぜ。
    女魔法使いかわいいよかわいいよ女魔法使い。
    女魔法使いの旦那は呪うぞ。エロエロヤッキイモ

    391 :

    魔王かわいいよおぉぉぉ支援

    392 = 384 :

    魔王ENDを頼む!!

    395 = 353 :

    魔法使い「……」
    魔王「将軍率いる辺境兵団が動いたようです」

    魔法使い「え?」
    魔王「魔王の脅威が無い今、世界は人間の国同士が
     互いの利権を絡ませあい衝突するようになる
     ということなのでしょうか」
    魔法使い「そんなっ」

    魔王「あなたの発明したマナライトは偉大な発明だと思います。
     それはこの国に巨大な利益をもたらしました」
    魔法使い「……」
    魔王「そう。世界支配すら夢想できるほどの巨大な資金です」

    魔法使い「違うっ! 魔法の明かりは、魔法の明かりは
     夜の闇を照らす、みんなの安全を照らし出す光なんだからっ。
     魔物に襲われて、怖くて、凍えそうな夜から身を守る
     小さな明かりなんだから」
    魔王「それも事実ですが、戦争も事実でしょう」

    魔法使い「~っ」

    魔王「そのためには、勇者が邪魔、という人も居るのでしょうね。
     侵略戦争など許さない、その上軍にも匹敵する戦闘能力を持つ
     個人など、魔王の居ない世界では許されるはずも無い」

    396 = 353 :

    魔王が人気あるのか。やっぱり女魔法使いはダメなのか。
    一度他の人のつばがついたものはダメということか?
    かわいそすだ。だらだら書くとする。

    397 :

    魔王が幼女だからに決まってるだろ

    398 = 332 :

    いや、女魔法使いかわいいぞ
    支援

    399 = 353 :

    魔王「しかし、そんなことはどうでも良いのです」

    魔王「問題はたった一つ。この世界がまたしても
     『わたしのもの』を奪おうとしたということです。
     重要なのはその一点です」

    魔法使い「……たし……は」

    魔王「勇者が危ないんです。勇者は適当だしずぼらだけど
     人間の味方ですから人間とは戦えません」

    魔法使い「そんなこと、そんなことっありえない!」

    魔王「ありえなくないんです。戦争ですから。
     人類なんて皆殺しにしようとしてきた
     一族の末裔が言うんだから間違いありません」

    魔法使い「人間は魔族じゃないっ」
    魔王「魔族より良いかどうか疑問です」

    魔法使い「そんなことはしないっ。私たちは絶対にっ」

    魔王「あなたは王の態度に何も感じなかったのですか?
     幼馴染のあなたを使って勇者を誘い出したあの人のやり方に?
     魔王退治から二年もたった後に思いついたように
     莫大な褒賞を与えようとしたあの人の
     気持ちの悪い笑顔に何も感じなかったのですか?」

    400 = 353 :

    魔法使い「それは……」
    魔王「あなたはどちらにつくんです?」
    魔法使い「え?」

    魔王「私と勇者につくのか、国王につくのか」
    魔法使い「あの人につく」

    魔王「驚きましたね」
    魔法使い「なぜ?」
    魔王「即答するとは思いませんでした」

    魔法使い「わたしは……。
     私は自分の研究を優先するために勇者との旅を断った。
     国に奉仕するためなんかじゃない。
     本当は家名のためでもお金のためでもない……。
     ただ、自分で居たかった。勇者の隣に居るには
     一番すごい自分じゃないとイヤだった。それだけだった。
     でも、勇者がもし魔王の云うような酷い目にあってるのだとすれば
     そこへいく私は、
     格好よくなくても、
     すごくなくても、
     誇らしくなくても
     いい
     飛んでいければ、それだけで、いい」

    魔王「……」


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