元スレこりずに新?ジャンル「勇者と女魔法使い」
新ジャンル覧 / PC版 /みんなの評価 : ○
351 :
乙~。楽しめた
352 :
乙華麗
353 :
保守、そして乗っ取り準備
354 = 353 :
勇者「ありあとやしたーっ」
街の男「おう、ごっそーさんっ」
街の女「またくるねー」
勇者「ごひいきにーっ」
勇者「や。客も引けたな。ひの、ふのみの……。
今日はそろそろ切り上げるか。暖簾下ろして、と」
魔王「入っても平気ですか?」
勇者「あいあい! お客さんで最後だ。どうぞー」
魔王「焼き豆腐定食でお願いします」
勇者「がってんだ」
355 = 353 :
魔王「もぐもぐもぐ」
勇者「……」
魔王「もぐもぐ」
勇者「あの」
魔王「はい?」
勇者「もしかして、魔王とか?」
魔王「はい」
勇者「……」
魔王「もぐもぐ」
356 = 353 :
魔王「ご馳走様でした」
勇者「お前、死んでなかったのか?」
魔王「死にました。綺麗さっぱり。勇者さんは
かなり容赦が無かったですからね。倒れてるのに
何度もデインで焼き殺して」
勇者「魔王の再生能力が半端なかったからだろう」
魔王「そんなわけで、私は勇者さんが戦った
魔王ではないんですよ。娘とでもいいますか」
勇者「……」
魔王「人間の遺伝子継承とは仕組みが違いますから
記憶や能力は受け継ぐ、いわばバックアップ的な
関係なんですけれどね」
勇者「!」
357 = 353 :
魔王「怖い顔です」
勇者「貴様、また世界をどうこうするつもりなのかっ」
魔王「……」
勇者「お前がどういうつもりか知らないけれど、
俺は今の世界も生活も気に入ってるんだよっ」
魔王「ふむぅ」
勇者「お前、どういう理屈で誕生したかはよく判らないけれど、
戦闘力はずいぶん下がってるぜ。前の魔王の百分の一以下だ。
四天王にすら及ばないんじゃないのか?
現役引退のロートルの俺だけど、今のお前ならやれるんだぜ」
魔王「本当にこんな世界を気に入ってるんですか?」
勇者「え?」
魔王「勇者のあなたに僅かな報酬を餌に魔王討伐を押し付けて
安逸と堕落をむさぼっているような
この世界がそんなに好きなんですか?
世界を救った英雄のあなたがこのような小さな街で
定食屋の親父ですか?」
勇者「……」
358 = 353 :
魔王「女魔法使いはどうです」
勇者「え?」
魔王「あなたが魔王を倒しに出たのは国の要請です。
いわば断りきれない義務だった。なのに彼女は
あなたを待たなかった。裏切った」
勇者「そんなことはない。あれは仕方なかったんだ」
魔王「あなたがこの世界で守りたいものなど、
彼女くらいしか残ってないんじゃないですか?」
勇者「お前、何が言いたいんだ。まさか女魔法使いを」
魔王「いえ。それはないです。
私の戦力は先ほどあなたの感じたとおりです。
女魔法使いを害してもあなたの報復で死ぬだけです。
私はむしろ女魔法使いを守っています。
現に先週の魔物の襲撃から」
勇者「あ」
魔王「そうです。女魔法使いの町を襲ったハグレ魔族から
あの街を結界で守ったのは私ですよ」
359 = 353 :
勇者「おまえ、何のつもりがあるんだ?
何か話があるんだろう」
魔王「はい」
勇者「云ってみろ」
魔王「いくつかの外交的な交渉があるのです。
目的としてはあなたに仲間になって欲しいのです。
私はひ弱だし、例え以前の力を取り戻しても『勇者』には
勝てないということを学習しました」
勇者「断る」
魔王「即決ですね」
勇者「おれは腐っても『勇者』だ。世界を守る」
魔王「困りましたね。私は魔王ですから世界を
手に入れるために生まれついています。
とりあえず、条件の提示をします」
勇者「そんな話はいい。帰れ」
魔王「まだ豆腐が一切れ残っています。わたしはいまだに客です」
勇者「っ!」
360 = 353 :
魔王「あなたに仲間になってもらうのが最上ですが、
それが出来ないのであれば、中立でも仕方ないとは思っています。
つまり、人間には味方をしないということです」
勇者「……」
魔王「そのための条件はいくつかあります。
女魔法使いはどうです?」
勇者「え?」
魔王「魔王ですから、記憶消去や改変は出来ます」
勇者「話にならないな。そんなものがあいつかよ。
舐めすぎだろう。俺は俺の納得したものしかいらねぇんだよ」
魔王「ええ、まぁ。これは前座です。
……では時間遡行はどうです?
旅に出かけたあの日まであなたを送り届けましょう。
あなたは旅に出ず、女魔法使いと暮らすことが出来る。
でなければ二人で魔王を倒してもいい」
勇者「自分のことじゃねぇのか」
魔王「記憶は残っているのですが、基本的には別人です。
前魔王のことは他人の書いた昔話のようにしか感じられません」
361 = 353 :
勇者「却下だな。お前にその能力があるかどうか疑問だ。
時間遡行に見せかけて巨大魔法で俺を葬り去らない保証は無い」
魔王「その心配は不要なのですが」
勇者「答えは同じだ」
魔王「では女魔法使いを複製しませんか? 完全に本物と同じ
二十存在です。片方は今の家庭で暮らし、
片方はあなたと生活を共にする」
勇者「……お前な」
魔王「はい」
勇者「何を誤解しているがしらないが、今の俺とあいつは、
もうそういう関係じゃないんだよ。
誰よりもあいつは大事な幼馴染で、親友で、腐れ縁で
酒飲み友達で……。大事な……大事だけど、あいつは。
あいつは、その世界の雰囲気とか歴史とか、
あいつの……家庭とか。そういうのを含めて『あいつ』なんだよ」
魔王「……」
勇者「そういうのを無茶に壊したら、俺は俺の大事なものを
自分で壊すことになるんだよ。
お前らは、そういうのが判らないから
いつまでたっても世界の敵なんだっての」
魔王「……」
362 = 353 :
魔王「判りました。では、ここで一度、
世界の敵の基本に立ち代って脅迫します」
勇者「戦るのかよ」
魔王「やりません。むしろ守ります。
あなたと、あなたの好きなものを」
勇者「え?」
魔王「あなたや女魔法使いを守ります。魔族もできるかぎり
制御して人間界に迷惑をかけないように努めます」
勇者「なんだよ……。脅迫になってないじゃねぇか」
魔王「そして時期を待ちます」
勇者「え?」
魔王「わたし、魔王は長命です。人間より遥かに長生きします」
勇者「そんなことか」
魔王「はい。そうです。あなたの死を待ちます」
勇者「今ここでお前を殺せば解決だっ!」
魔王「女魔法使いを守り、まだ人間を一人も
殺したことの無い私をあなたは殺すのですか」
363 = 353 :
勇者「っ。ならいいさ」
魔王「……」
勇者「俺が親父を継いだように、
俺の子供が勇者となりお前の野望を阻む」
魔王「あなたは子供が居るのですか?」
勇者「いないけど、べつにこれからでもいいだろう」
魔王「あなたは彼女以外の女性と結婚して子をなすのですか?」
勇者「え」
魔王「女魔法使い以外でも良いのですか?」
勇者「あ、あ……」
魔王「それは、貴方を待ちきれなくて妥協で結婚した
女魔法使いと同じ罪なのではないですか?」
勇者「……」
魔王「脅迫が理解していただけましたか?」
勇者「――」
364 = 353 :
魔王「それらを含めて提案があります」
勇者「なんだよ」
魔王「結婚してください」
勇者「はぁあ!?」
魔王「女魔法使いでなくても良いなら誰でもいいでしょう?
私でもかまわないはずです」
勇者「お前は魔王だろっ」
魔王「人体の組織的には差し支えありません」
勇者「そういうことじゃなくっ」
魔王「あと数年で性交も可能な年齢に達します」
勇者「あのなっ」
魔王「だめですか?」
勇者「あったりまえだ!」
魔王「私を監視できますよ」
勇者「それなら結婚しなくても出来るだろっ」
365 :
けしからん魔王だ もっとやれ
366 = 353 :
魔王「それなら勇者は子供を授かれる」
勇者「魔王の子供でもある。災厄を増やすわけにはいかない」
魔王「さっきもいったように魔王は複製体で子孫を残しますから
増えるとか減るとか云う問題はありません」
勇者「話がかみ合わないな」
魔王「それに結婚すれば良いこともあります」
勇者「なんだよ」
魔王「勇者と魔王の世界を掛けた戦いを、
誰にも迷惑をかけない小規模な形で継続できます」
勇者「続ける必要を感じないな」
魔王「……」
勇者「そんな必要は無いっ」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「……」
勇者「わかった。認める。嘘だ」
魔王「そうですよね。私たちはそれ目的の存在ですし」
367 = 353 :
――そんな訳で魔王と暮らすようになって半年。
ちんちくりんな少女の魔王というのも変な話だが
今のところそんなに悪さをする様子は無い。
家に魔族が訪ねてきて月次報告やら統治会議をやってくが
まぁ行儀良くしているようだ。
魔王はそこそこ真面目に人間生活をしている。
最近は図書館に通い勉強をする日々だ。人間社会を学ぶらしい。
俺に言わせれば実生活のほうで少し学べばいいと思う。
家事や料理はする気がさっぱり無いし、表情が動かないので
何を考えているか判らない。近所では人気があるのが不思議だ。
理屈っぽいところは変わらない。
結婚、結婚などといったが実体はただの同居だ。
先のことはわからないがこれも仕方ない試練なのだと
から揚げを作りながら思う。マンドラゴラの浅漬け美味い。
368 = 353 :
女魔法使い「美味い。じゃないでしょっ!!」
勇者「ああ、久しぶり。まぁあがれよ」
女魔法使い「なんなのよっ。あんたは。
いきなりこんな娘と同居初めてっ」
勇者「知られたくなかったなぁ」
魔王「娘ではありません。妻です」
女魔法使い「え」
魔王「妻です」
女魔法使い「え」
魔王「良人です。妻です。配偶者です」
女魔法使い「えぇ!?」
魔王「勇者の幼妻です。いまはまだ膨らみかけですが
日々の調教で驚くほど柔軟に受け止めることが可能な
カスタマイズされた肉として日々を成長中です」
女魔法使い「えぇええぇええぇぇ!?」
勇者「お。ドップラー効果」
369 = 353 :
よし、ほどよく切りが良いところまで進んだし
腹が減ったので休憩だぜーコンビニいってくるっくー
370 :
おいお前ふざけるなYO
371 :
生殺しかよwこの魔王めwwwwwww
372 = 329 :
勇者訂正しないのかwww
373 = 353 :
――30分後
勇者「てなわけで魔王なんだよ」
魔王「魔王兼幼妻です」
女魔法使い「納得いかないわね」
魔王「このさいミルク絞りペットでも我慢しましょう」
女魔法使い「うがっ!!」
勇者「話が混乱するからお前は喋るな」
女魔法使い「なんかの陰謀だとしか思えないんだけど」
勇者「あー。まーなー」
魔王「妻は夫に対して常に陰謀を仕掛けているものです」
女魔法使い「認めたっ」
勇者「こいつはいつもこうなんだ」
魔王「しかし実際、魔物による被害は減少しています」
女魔法使い「まぁ、それは」
勇者「確かにな」
魔王「ここに前年度比の状況報告書があります。
この票によると被害全体で前年度同月比-67%、
特に人間に対する致傷被害は-86%となっています」
女魔法使い「うーん」
374 = 353 :
そんなこというたかて、おいらだって腹減るししかたないやんー。
一人でずっと書き込んでくると、これでいいのかどうなのか
だんだんブルーはいってくるんだってばよ。
375 :
ちゃんと見てるよ!
376 = 365 :
>>374
面白いよ
377 = 353 :
勇者「魔王が魔界との境界を厳重にパトロールしているのと
魔界の領土拡張を行っているせいなんだよ」
魔王「はい」
女魔法使い「領土拡張?」
魔王「機密事項です」
勇者「まぁ、簡単に言うと、魔界の辺境開発らしい。
魔物主力をそっちへ配置して、軍部の暴発を防いでるらしい」
女魔法使い「へー。魔界ってそんな風なんだ」
勇者「知らなかっただろ。俺もだけど」
魔王「女魔法使いさん」
女魔法使い「はい?」
魔王「ぶぶ漬けをどうぞ」
女魔法使い「……」
勇者「お。茶漬けか? 俺好きなんだよ。食う食う」
魔王「……」
女魔法使い「……」
勇者「あむ、あむっ。もぐもぐ」
魔王「勇者は空気読めませんね」
女魔法使い「昔からね」
378 = 353 :
勇者「は? どうしたのおまえら?」
魔王「何でもありません」
女魔法使い「なんでもないわよ」
魔王「……」
女魔法使い「ちょっと魔王」(小声
魔王「はい?」(小声
女魔法使い「あんた私に云いたいことでもあるの?」
魔王「いえ特には」
女魔法使い「そう……」
魔王「愛する勇者であるわが背の君の元カノが
今でも勇者と親しく付き合っていて
毎月のように酔いつぶれるような逢瀬を繰り返していたり、
二人が幼馴染で自分には割り込めないような
深いレベルで信頼しあい理解しあっていたり、
わが夫が女魔法使いさんの話をするときだけ
ちょっと遠くを見つめるような優しい視線を持っていたり、
その邪魔者がなんと家までやってきて
私の配偶者に気安く話しかけてこともあろうに勇者のほうも
それがさも当然というようにどこかほっとした表情を
浮かべていたりしても魔王であるわたしは何も思いません」
女魔法使い「あー。うー」
379 = 353 :
勇者「もぐもぐ。お前らこそこそしてなんなんだー?」
女魔法使い「なんでもないっ。
あんたはマンドラ漬けでも食べてて」
勇者「おー。今年のも美味いなぁ~」
魔王 ごそごそ
女魔法使い「何やってるの?」
魔王「いえ、ほうきを……。濡れ雑巾はどこですか」
女魔法使い「あー。うー」
魔王「掃除道具なんてどこにあるかわかりません。
そんな仕事をやるほど魔王は落ちぶれていません」
女魔法使い「……」
魔王「っ。これは吸引破砕機です。
こっちは小型ブラックホール発生術式。
なぜ普通の掃除機がみつかりませんか」
女魔法使い(この娘本気で云ってるのかなー)
勇者「おーい。お前らも座って茶のめば?」
女魔法使い「はいはい。まったくあんたは適当なのよ」
魔王「適当なのはかなり同意しますね」
380 = 353 :
女魔法使い「まぁ、いいけどね。同居でも何でも。
――私はもうあんたを止める権利なんて無いわけだし」
勇者「へ?」
女魔法使い「ううん、なんでもないっ」
魔王「……女魔法使いさん」
女魔法使い「なにー? チビ魔王ちゃん」
魔王「年増魔法使いさん。そろそろ切り出しては?」
女魔法使い「あー」
勇者「何だよなんだよ。俺が居ないところで二人とも。
週末のバーベキューパーティーの相談かよ」
魔王「違いますよ」
女魔法使い「違うっての」
勇者「なんだよ」
女魔法使い「まぁ、あれでさ。
じつは王様が私に勇者の捜索を頼んできてね」
勇者「なんでまた」
女魔法使い「幼馴染で魔法使いだし。探知や遠隔視で
どうにかならないかって」
勇者「いや、方法じゃなくてさ。目的はなんだよ」
381 = 353 :
女魔法使い「王様は勇者が生きてるの知ってるみたいじゃない」
勇者「そりゃ、あの戦いのとき、王の推薦した戦士や神官も
いたからなぁ、大半は途中でいちまったけれど、
数人は帰れたはずだし」
女魔法使い「で、勇者が生きている事を知った王がね。
また頼みたいことやら、褒賞やらがあるんだって」
勇者「あれから何年たったと思ってるんだよ」
女魔法使い「まぁ、王もさ。いろいろあるんじゃない。
関係ないんだけどさ。いちおう、その……。
知ったからには伝言をね」
勇者「ふーん。頼みたいことね」
女魔法使い「たぶんだけど。
西の砂漠に居る蟲竜退治じゃないかなぁ。そんな話だったよ」
勇者「ああ。あいつか。
たしかに並みの騎士団とかじゃ厳しいわなぁ」
女魔法使い「うん……」
勇者「そういうことなら仕方ない。
近々王のところに顔出すよ」
383 = 353 :
女魔法使い「あのさ。無理しなくていいんだよ。
並みの騎士団じゃ厳しいったって、聖騎士団や
魔法師団だっているんだし」
勇者「それじゃかなりの犠牲者でるだろ」
女魔法使い「うん……。でも、ほら。これは云ってみれば
国のもんだしさ。勇者が犠牲になることは無いって云うか」
勇者「お前は昔から個人主義だもんなー」
女魔法使い「まーね。うん」
勇者「とはいえ、ほっとくわけにもいかねーだろ」
魔王「放置でも良いです」
女魔法使い「う、うん」
勇者「魔王」ごちん
魔王「屈辱です」
勇者「そういう自分勝手な事を見せると魔王の教育にも悪いしな」
魔王「私は勝手に学んでいるのです」
勇者「そんなわけで、まぁ近々出かけるよ」
女魔法使い「そっか。……わかった。うん」
勇者「国王には云わなくていいぜ。
風の噂を聞きつけて参じたとか適当に話作っておくからよ」
女魔法使い「うん」
勇者「心配するな。蟲竜程度でやられっかよ」
女魔法使い「わかった。……今日はそんだけ、帰るね」
384 :
続けたまえ。期待しておるぞ。
385 = 353 :
勇者「なんだかなー。あいつ今日はやけに歯切れが悪かったな」
魔王「行かないほうが良いと思います」
勇者「は?」
魔王「王の元へは行かないほうが良いと考えます」
勇者「なんだよ」
魔王「魔族の勘です」
勇者「訳のわからん事を言うなよ。
理由があるなら説明してくれよ」
魔王「私は合理主義者なんです。勘です、なんていう台詞は
本来恥ずかしくてとても言い出せません。
その言葉の本当の意味を汲んで下さい」
勇者「わからねぇよ」
魔王「説明できない理由があるので私を信じてください、です」
勇者「――」
魔王「私には人間の持つ好悪や恋愛の情はわかりませんが
あなたと交わした約束の通り、生涯あなたの傍にはべります。
今回の進言は裏表の無い私の真意です」
386 = 353 :
勇者「やっぱ、いくよ」
魔王「……」
勇者「そんな顔するなよ。
魔王のこと信じてないわけじゃないって。
でも俺はこれでも一応勇者だからさ。
なんつの? こう。落ち着かないわけよ。
どっかで俺の名前を呟きながら死んでいくやつがいると思うとさ。
寝つきが悪いんだよなー。そういうのー」
魔王「……」
勇者「それにさ。あいつもちょっと様子変だったしな。
王都にいきゃーもうちょっと事情もわかるだろうさ」
魔王「……」
勇者「蟲竜ってのは、おまえじゃ制御効かない種族なんだろう?」
魔王「ええ。あれは魔物というよりは、古代生物ですから」
勇者「じゃぁ、しかたないさ。あれだよ
同居人の面倒を見るのは、勇者じゃなくて、あれだよ。
男としての甲斐性だよ」
魔王「勇者……」
勇者「ちゃっちゃとかたして帰ってくるからさ。
おまえはのんべんだらりとこの家で羽を伸ばして置けよ」
387 = 353 :
――そして勇者は旅に出た。
私は馬鹿だ。馬鹿だ。大馬鹿だ。
出かける勇者の背中に後悔が止まらない。
蟲竜なんて簡単に倒して帰ってくるよ?
魔王討伐のときもそう云っていたではないか。
何が起きるかなんて判らないのだ。
ましてや今の王には灰色の噂が付きまとう……。
だがしかし今の私に勇者を止める権利なんか無いのだ。
私にとっては子孫を残すための義務だった。
躊躇なんか無かった。交配用の胚を採取する程度の出来事だった。
愛なんか無くても結婚は出来る。そう思っていた。
でもあの日、
幻覚で顔を変えた勇者の瞳に浮かんだ苦痛を見たとき判った。
私がしたのは「裏切り」だったのだと。
それは許されないほどの罪だったと。
凍てついた大槍が背筋をゆっくりと貫くような悲しみと共に
私はその事を理解した。
388 = 353 :
魔王「理解した、だけじゃ困ります」
女魔法使い「魔王っ!? どうしてっ」
魔王「どうしてもこうしてもありません。
もう三ヶ月ですよ。待機フェイズを破棄する頃合いです」
女魔法使い「……」
魔王「酷い顔ですね」
女魔法使い「……」
魔王「ちゃんと食べてるんですか?」
女魔法使い ふるふる
魔王「後悔ですか」
女魔法使い「……」
魔王「そんな脆弱な精神でよく勇者の幼馴染を
やっていられたわけですね。まったく似合いません」
女魔法使い「っ! あなたに何が判るのっ」
魔王「あなたの現在の配偶者が宮廷で地位を得たことが。
勇者探索の方法の進言ですか? 行商上がりの商人が」
女魔法使い「……ッ」
魔王「私は魔王ですが約定は違えません。
前回も前々回も約束を破ったせいで負けていますからね。
ましてや今回勇者は私の良人です。頬を染めずには語れない
あんな痴態やこんな体位はまだとはいえ、
はべる、と云った手前というものがあります」
389 = 353 :
よし、切りが良いところまで来たし休憩するぜ。
女魔法使いかわいいよかわいいよ女魔法使い。
女魔法使いの旦那は呪うぞ。エロエロヤッキイモ
391 :
魔王かわいいよおぉぉぉ支援
392 = 384 :
魔王ENDを頼む!!
395 = 353 :
女魔法使い「……」
魔王「将軍率いる辺境兵団が動いたようです」
女魔法使い「え?」
魔王「魔王の脅威が無い今、世界は人間の国同士が
互いの利権を絡ませあい衝突するようになる
ということなのでしょうか」
女魔法使い「そんなっ」
魔王「あなたの発明したマナライトは偉大な発明だと思います。
それはこの国に巨大な利益をもたらしました」
女魔法使い「……」
魔王「そう。世界支配すら夢想できるほどの巨大な資金です」
女魔法使い「違うっ! 魔法の明かりは、魔法の明かりは
夜の闇を照らす、みんなの安全を照らし出す光なんだからっ。
魔物に襲われて、怖くて、凍えそうな夜から身を守る
小さな明かりなんだから」
魔王「それも事実ですが、戦争も事実でしょう」
女魔法使い「~っ」
魔王「そのためには、勇者が邪魔、という人も居るのでしょうね。
侵略戦争など許さない、その上軍にも匹敵する戦闘能力を持つ
個人など、魔王の居ない世界では許されるはずも無い」
396 = 353 :
魔王が人気あるのか。やっぱり女魔法使いはダメなのか。
一度他の人のつばがついたものはダメということか?
かわいそすだ。だらだら書くとする。
397 :
魔王が幼女だからに決まってるだろ
398 = 332 :
いや、女魔法使いかわいいぞ
支援
399 = 353 :
魔王「しかし、そんなことはどうでも良いのです」
魔王「問題はたった一つ。この世界がまたしても
『わたしのもの』を奪おうとしたということです。
重要なのはその一点です」
女魔法使い「……たし……は」
魔王「勇者が危ないんです。勇者は適当だしずぼらだけど
人間の味方ですから人間とは戦えません」
女魔法使い「そんなこと、そんなことっありえない!」
魔王「ありえなくないんです。戦争ですから。
人類なんて皆殺しにしようとしてきた
一族の末裔が言うんだから間違いありません」
女魔法使い「人間は魔族じゃないっ」
魔王「魔族より良いかどうか疑問です」
女魔法使い「そんなことはしないっ。私たちは絶対にっ」
魔王「あなたは王の態度に何も感じなかったのですか?
幼馴染のあなたを使って勇者を誘い出したあの人のやり方に?
魔王退治から二年もたった後に思いついたように
莫大な褒賞を与えようとしたあの人の
気持ちの悪い笑顔に何も感じなかったのですか?」
400 = 353 :
女魔法使い「それは……」
魔王「あなたはどちらにつくんです?」
女魔法使い「え?」
魔王「私と勇者につくのか、国王につくのか」
女魔法使い「あの人につく」
魔王「驚きましたね」
女魔法使い「なぜ?」
魔王「即答するとは思いませんでした」
女魔法使い「わたしは……。
私は自分の研究を優先するために勇者との旅を断った。
国に奉仕するためなんかじゃない。
本当は家名のためでもお金のためでもない……。
ただ、自分で居たかった。勇者の隣に居るには
一番すごい自分じゃないとイヤだった。それだけだった。
でも、勇者がもし魔王の云うような酷い目にあってるのだとすれば
そこへいく私は、
格好よくなくても、
すごくなくても、
誇らしくなくても
いい
飛んでいければ、それだけで、いい」
魔王「……」
みんなの評価 : ○
類似してるかもしれないスレッド
- 懲りずに新ジャンル「女らしい男と男らしい女」 (80) - [49%] - 2008/12/31 6:00 △
- たしかあったジャンル「ベトナム帰還兵」 (772) - [43%] - 2009/12/26 1:45 ○
- 新ジャンル「本当は魔法少女」 (769) - [39%] - 2008/11/22 2:30 ☆
- 新?ジャンル「女の国に男1人」 (357) - [39%] - 2008/8/26 17:30 ☆
- ベタジャンル「病弱な幼馴染み」 (76) - [39%] - 2008/10/7 2:00 △
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について