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元スレ日向「神蝕……?」
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辺古山 「牛乳はかけないんですか?」
西園寺 「最初に聞くのがそれ!?」
学園長 「いや、牛乳はこうして」グビグビ
小泉 「別々に飲むんなら、かけても同じじゃ……」
学園長 「ぷっはー!あー、この一杯のために生き返ったって感じするなあ」
日向 「生き返った……じゃあやっぱり、学園長も」
学園長 「ああ。私の"肉体"と呼べるものはすでに消失しているよ。まあ、その話は追々するとして……
あの映像は偽物じゃないし、過去の録画でもない。外の世界ではこうしている間も
人々が普通に働いて、営みを送っている。もちろん、テレビ局も生きているよ」
小泉 「じゃあ、世界は滅んでないって事ですか!?」
学園長 「そういうことになるね」
日向 「信じられるか!人類史上最大最悪の絶望的事件……あれは日本政府すら陥落させたはずだ!!
こんな短い時間で復興するなんてありえない、俺たちは徹底的にやったはずだぞ!!」
辺古山 「日向、声量には気をつけろ」
日向 「あ、悪い……学園長、それは一体どういう――えっ?」
一瞬だった。
本当に一瞬目を伏せたうちに、学園長の姿は煙のようにかき消えていた。
そこには、空っぽになったシリアルの空き箱と牛乳パックだけがあるだけだ。
小泉 「き、消えた……!?」
澪田 「ま、まさか今の学園長先生は……あばばばばばばば」ブクブク
九頭龍 「肉体は死んだ、つってたろ。人間やめちまったんだろーな」
日向 「くそ……結局全然情報は聞き出せなかった……!」
辺古山 「ところで日向、私達の部屋のドアにこんなものがはさまっていたんだが……偽物ではないな?」ペラッ
西園寺 「日向おにぃの上から目線な書き方はムカつくけど……」
日向 「悪い。シンプルに書こうと思ったら、ああなった」
西園寺 「やってあげるよ。江ノ島の言いなりになるのもムカつくし、78期の奴らに疑われるのも
めんどくさいし……」
小泉 「江ノ島盾子、か……正直私にはまだ、色々信じられないことばかりだけど、
あの人のことは思い出したよ。生き返っているとしたら、ほっとけない。
学園にいるみんなのためにも、私達のためにも」
九頭龍 「とりあえず、江ノ島をシメて連れてくりゃいいのか?あの女、普通に聞いても答えねーだろ」
日向 「なるべく傷つけないで頼めるか?」
九頭龍 「んじゃ、ペコ……」
辺古山 「はい、坊ちゃん」
辺古山はさすがというべきか。
目配せ一つで、九頭龍の後ろにぴったりついて行く。二人が行ってしまった後、
西園寺は「わたし、おねぇと一緒に江ノ島のこと聞いてくるね」と珍しく自発的に動いてくれた。
日向 「やらなきゃいけないんだ……生き残るために」
西園寺 「最初に聞くのがそれ!?」
学園長 「いや、牛乳はこうして」グビグビ
小泉 「別々に飲むんなら、かけても同じじゃ……」
学園長 「ぷっはー!あー、この一杯のために生き返ったって感じするなあ」
日向 「生き返った……じゃあやっぱり、学園長も」
学園長 「ああ。私の"肉体"と呼べるものはすでに消失しているよ。まあ、その話は追々するとして……
あの映像は偽物じゃないし、過去の録画でもない。外の世界ではこうしている間も
人々が普通に働いて、営みを送っている。もちろん、テレビ局も生きているよ」
小泉 「じゃあ、世界は滅んでないって事ですか!?」
学園長 「そういうことになるね」
日向 「信じられるか!人類史上最大最悪の絶望的事件……あれは日本政府すら陥落させたはずだ!!
こんな短い時間で復興するなんてありえない、俺たちは徹底的にやったはずだぞ!!」
辺古山 「日向、声量には気をつけろ」
日向 「あ、悪い……学園長、それは一体どういう――えっ?」
一瞬だった。
本当に一瞬目を伏せたうちに、学園長の姿は煙のようにかき消えていた。
そこには、空っぽになったシリアルの空き箱と牛乳パックだけがあるだけだ。
小泉 「き、消えた……!?」
澪田 「ま、まさか今の学園長先生は……あばばばばばばば」ブクブク
九頭龍 「肉体は死んだ、つってたろ。人間やめちまったんだろーな」
日向 「くそ……結局全然情報は聞き出せなかった……!」
辺古山 「ところで日向、私達の部屋のドアにこんなものがはさまっていたんだが……偽物ではないな?」ペラッ
西園寺 「日向おにぃの上から目線な書き方はムカつくけど……」
日向 「悪い。シンプルに書こうと思ったら、ああなった」
西園寺 「やってあげるよ。江ノ島の言いなりになるのもムカつくし、78期の奴らに疑われるのも
めんどくさいし……」
小泉 「江ノ島盾子、か……正直私にはまだ、色々信じられないことばかりだけど、
あの人のことは思い出したよ。生き返っているとしたら、ほっとけない。
学園にいるみんなのためにも、私達のためにも」
九頭龍 「とりあえず、江ノ島をシメて連れてくりゃいいのか?あの女、普通に聞いても答えねーだろ」
日向 「なるべく傷つけないで頼めるか?」
九頭龍 「んじゃ、ペコ……」
辺古山 「はい、坊ちゃん」
辺古山はさすがというべきか。
目配せ一つで、九頭龍の後ろにぴったりついて行く。二人が行ってしまった後、
西園寺は「わたし、おねぇと一緒に江ノ島のこと聞いてくるね」と珍しく自発的に動いてくれた。
日向 「やらなきゃいけないんだ……生き残るために」
そのころ、食堂を飛び出した左右田はというと。
左右田 「ふーっ。まさか西園寺に見られてたとはなあ……今度から部屋の鍵は閉めとかねーと」アセアセ
左右田 「変態疑惑がついたけど、まあいっか。これをみんなに見せてビックリさせる計画に比べりゃ、
どーってことねーもんな!!日向大喜びだろーなー。楽しみだなー」
部屋に戻った左右田は、愛用の工具箱を取り出してなにやら準備を始めた。
シャワーカーテンで覆って隠しておいた『何か』を床に座らせると、丁寧にボルト部分を調節して行く。
それが終わると、内蔵してある人工脳に電気信号を通してテスト。問題なし。
フタを閉じると、人工毛のウィッグをかぶせて固定。
左右田 「あとは眼球を入れてっ……と、完成!!いやー、徹夜した甲斐があったぜホント!!
あいつら、びっくりすんだろなあ。日向は喜んでくれっかなあ」
一人でパチパチと拍手した左右田は、鍵がしっかり閉まっていることを確認してから
床にぺたんと座りこんだ裸の球体関節人形の所へ戻る。見れば見るほど似ている。そっくりに作ったから
当たり前だが、髪だけが長く床に垂れているので(後で切ろう)と左右田は思った。
左右田 「よし……んじゃ、行くぞ」パンッ
両手を合わせて、集中。
"機(き)"
文字を発動させた左右田は、ゆっくりと合わせた手のひらを開く。
そこには、ぼんやりとした光の玉が浮かんでいた。
左右田 「それっ!起きろー!!」
ふわっと飛んだ光の玉は、人形の口からすぽんっと体内に入って消えた。
閉じられていた人形のまぶたが、滑らかな動きで持ち上がる。二、三回瞬きして、
ガラスの視界に左右田を映すと、人形は口を開いて「あ……」と発声した。
左右田 「オレは左右田。左右田和一。オメーを作った男だ!創造主様だぞ!左右田。言ってみ?」
人形 「そ、うだ」
左右田 「そう、ソウダ。すっげーなオレ。マジで人工生命作っちゃったよ!さすが"超高校級のメカニック"!」
喜ぶ左右田をじーっと見つめて、人形はひたすら繰り返す。
人形 「そう、だ……そうだ、そうだ、さま、そう、だ、さま、そう、ださ、ごしゅじ、んさま」
左右田 「ストーップ!それ覚えさせたらマジで俺は日向に殺される!"左右田くん"だ。左右田くん」
人形 「そうだ、くん」
左右田 「よし。オッケー。んじゃ次、オメーの名前な。オメーは……」
左右田 「ナナミR-type:0001ってのが型番なんだけど……まあ、ナナミでいっか」
人形 「なな、み。わた、し、ななみ」
左右田 「そ。七海だ」ワシャワシャ
左右田 「……しかし、全裸ってのはなあ……いくら人形でもちょっと目に毒だよなあ」ピーン!
左右田 「そーだっ、女子の誰かに服もらおう!!……でも、77期の奴らにはすっかり変態として
知れ渡っちまったしなあ……」
朝日奈 「……で、私に?」
左右田 「おう。これは極秘のミッションだ。誰にも言うなよ。
無事に達成したら俺の最高傑作"ナナミ-R"を見せてやる。下着はいらねーから上だけでいい」
朝日奈 「よく分かんないけど、いいよ。女の子の服貰ってくるんだよね。待ってて!」ダッ
二つ返事で引き受けた彼女に、いかがわしい用途を疑わないのか?と左右田は聞きたくなった。
……しかし。78期の女子を回って集まったのは。
朝日奈 「えーっと、何これ。タコヤキ柄のTシャツ?舞園ちゃんもこういうの着るんだ……
あとは、不二咲がくれたどっピンクの靴下だけか……これじゃ足りないよね、多分。
残ったのはセレスちゃんだけど……くれるかなあ」コンコン
安広 「はい…あら、朝日奈さんではありませんか」ガチャッ
朝日奈 「あ、セレスちゃん。着ない服とかあったらくれないかな?」
安広 「……どなたが着るのです?」
朝日奈 「あ、私ちょっとその…ゴスロリ?とかいうのに興味が……」
安広 「はあ……」
安広 「いいですか?まずゴシックアンドロリータの精神というのは"優雅"の一点に尽きます。
常に淑女の精神を持ち、美しいお洋服に負けないよう背筋を伸ばすのがまず第一条件。
髪の毛がボサボサであったり、ノーメイクなどもってのほかですわよ。ですから……」
一時間にわたってたっぷりとゴスロリについての知識を叩き込まれた。
朝日奈がくらくらしている横で、安広はワンピースのフリルを整え、ヘッドドレスと合わせたりしている。
安広 「ところで、誰がこのお洋服を所望していますの?…あなたではなさそうですが」
朝日奈 「あ、77期の左右田和一ってやつなんだけど」
安広 「……男の方ですよね?」
朝日奈 (あ、やばい。つい正直に言っちゃった)
安広 「ふふ……その左右田くんにお伝えなさりませ。"ワンピースにだけはぶちまけんじゃねえぞ
マゾブタ野郎!!!んな事してみろ、お前のソレをちょん切るぞ!!"」
朝日奈 「ひい!!」
安広 「……とね」
【左右田の部屋】
左右田 「おーっ!!ちょっと七海のイメージとはちげーけど、こんなに服を……ありがとな朝日奈!」キラキラ
左右田 「あ、見せるって約束だったな。んじゃ、入れよ」ガチャッ
朝日奈 「うわー、ごちゃごちゃ……あ、あのさ。左右田……」
左右田 「ん?あっ!!そっか、女子を部屋に上げるってアレか!!安心しろ、変なことはねーぞ、
ただお礼に発明品を見せるd「あ、そういう心配じゃないから」
朝日奈 (ごめん左右田、せめてちょん切られそうになったら私が助けてあげるからね!!)
>>47
『賭』はちょっと文字の広がりがない感じだったので、
本編でも男二人を罠にはめたセレスさんは『罠』を選択。石丸の文字は後々。
>>48
江ノ島は本編のぶっ飛んでるのがいいと思います。
…が、このSSでは面白みのないフツーの女の子。そのネタ晴らしも後々。
そのころ、俺たちはとうとう江ノ島盾子を捕まえていた。
購買部のモノモノマシーンで遊んでいるところを、辺古山と九頭龍の二人がかりで
縛り上げたらしい。さすが極道というべきか……鮮やかな手並みだ。
しかし、やけにあっさり捕まったな。絶望でも背後をとられるなんてあるのか?
江ノ島 「ちょっとー!!あんた達誰!!?アタシをこんなとこに連れて来て何する気!?」
椅子に縛りつけられた江ノ島が暴れている。九頭龍は「これ使うか?」とガムテープを取り出す。
小泉 「確か、個室って防音なんだよね。鍵はかけてるし、大丈夫だと思う……
じゃあ、日向。お願い」
俺はベッドから立ち上がって、一歩ずつ江ノ島に近づく。
そのたびに江ノ島は分かりやすく体をびくつかせて、俺が足を止めると「ごくんっ」と
唾液を飲みこんだ。おびえた瞳で見上げられて、なんだか俺の方が悪役みたいだ。
日向 「お前は、"超高校級の絶望"――江ノ島盾子。だよな?」
江ノ島 「は?」
とぼけた声を出した江ノ島は「てゆーか、あんた誰よ?」と返した。
『賭』はちょっと文字の広がりがない感じだったので、
本編でも男二人を罠にはめたセレスさんは『罠』を選択。石丸の文字は後々。
>>48
江ノ島は本編のぶっ飛んでるのがいいと思います。
…が、このSSでは面白みのないフツーの女の子。そのネタ晴らしも後々。
そのころ、俺たちはとうとう江ノ島盾子を捕まえていた。
購買部のモノモノマシーンで遊んでいるところを、辺古山と九頭龍の二人がかりで
縛り上げたらしい。さすが極道というべきか……鮮やかな手並みだ。
しかし、やけにあっさり捕まったな。絶望でも背後をとられるなんてあるのか?
江ノ島 「ちょっとー!!あんた達誰!!?アタシをこんなとこに連れて来て何する気!?」
椅子に縛りつけられた江ノ島が暴れている。九頭龍は「これ使うか?」とガムテープを取り出す。
小泉 「確か、個室って防音なんだよね。鍵はかけてるし、大丈夫だと思う……
じゃあ、日向。お願い」
俺はベッドから立ち上がって、一歩ずつ江ノ島に近づく。
そのたびに江ノ島は分かりやすく体をびくつかせて、俺が足を止めると「ごくんっ」と
唾液を飲みこんだ。おびえた瞳で見上げられて、なんだか俺の方が悪役みたいだ。
日向 「お前は、"超高校級の絶望"――江ノ島盾子。だよな?」
江ノ島 「は?」
とぼけた声を出した江ノ島は「てゆーか、あんた誰よ?」と返した。
※ここから一旦江ノ島視点になります。
江ノ島 (アタシの名前は江ノ島盾子(エノシマ ジュンコ)。
今、日本で一番イケてる女子高生。16歳のスーパーモデルなのだ。
"超高校級のギャル"として、この希望ヶ峰学園に入学した……はず、だったのに)
学園長 『さあ、希望を背負った生徒達よ、闘うんだ!!!』
江ノ島 (頭の中身がカルトってる残念なイケメン学園長のせいで、とんでもないサバイバルに
巻きこまれてしまったのでした。ちゃんちゃん)
江ノ島 (『始』と『龍』をどーにかこーにか生き残ったアタシは、モノモノマシーンでストレス
発散……もとい使える武器が出てこないか試してた。そこを、いつの間にか後ろにいた
ちびっ子ギャングとお付きの美少女にとっ捕まって……)
日向 「お前は、"超高校級の絶望"――江ノ島盾子。だよな?」
江ノ島 「てゆーか、あんた誰よ?」
アタシの返事に、アンテナ頭――日向って呼ばれてた――は、「ふざけるな!!」となぜかキレた。
いや、ふざけてないんですけど。なんか意味分かんない肩書きで呼んどいて、
自己紹介はナシとか、ふざけてんのはそっちじゃん。
江ノ島 「あとさ、これ話する態度じゃないよね。なんなの?用があるんだったら
フツーに言えば?個室に連れ込むとかアンタ変態なの?」
日向 「なっ……なんでそんな、まともな人間みたいな返しをしてるんだ!?」
江ノ島 「あんた、アタシをどんな人間だって思ってんの?」
日向 「とにかく絶望が大好きで、人の命は虫ケラ以下だと思っていて、飽きっぽくて、
薄情で、嘘つきで、カリスマ性と頭の回転と分析力は人一倍高い奴だ」
江ノ島 「えーっと……何そのサイコパス。ちょっとドン引きなんですけど……」
日向 「お前のことだろ?」
江ノ島 「同姓同名の江ノ島さんってことはないわけ?」
九頭龍 「おいテメー!!さっきからとぼけやがって、オレらを"絶望"に引きこんだのは
誰だと思ってんだ!!!ふざけんな!!!」
江ノ島 「あのさあ……」
なんなのこいつら。いい加減腹たってきた。と、思う間もなく。感情はアタシの口からほとばしる。
江ノ島 「ふざけんなってのはこっちの台詞だっつーの!!フツーのギャルモだってのに、
いきなり死ぬか生きるかのサバイバルに巻き込まれてさあ、こんなん喜ぶのは残姉だけだよ!!?
ガチャガチャでストレス解消してたトコいきなり拉致られて、わけわかんない理由で怒鳴られて、
いーかげんにしろっての!!!」ハァハァ
今までのイライラもあって一気に叫ぶ。着物ロリとそばかす女は耳をふさいで、ちびっ子ギャングと
お付きはポカーンとしてて、アンテナ頭はなぜか目を閉じて何か考えていた。
日向 「お前……もしかして、ただの"超高校級のギャル"なのか?」
江ノ島 「だから、さっきからそう言ってんじゃん!!!そんなにアタシを頭おかしい奴にしたいわけ!!?」
日向 「そうか……悪かったな」
ぺこっと頭を下げて、アンテナ頭はアタシの縄を解いてくれた。
ちびっ子ギャングが「おい、いいのかよ!!」って聞いてたけど、アタシは一刻も早く
部屋を脱出しようと走り出した。
江ノ島 「あーもうっ、なんなのホント!学園長が頭おかしいと、生徒も変なの!!?」タタタッ
だけど、こいつらとアタシの縁はこれで終わりじゃなかった。
……その話はちょっと後にして、日向の話に戻そっか。
天気予報は大当たりだった。
午前中の間、しとしとと降り続いた雨が止むころ、俺たちは食堂に集まって話し合いをしていた。
左右田 「オレがいねえ間にそんな事があったんか!!?」
豚神 「江ノ島盾子……あれが絶望でないとすれば、当面の敵は蝕だけ。
俺達にとってはむしろ好都合なはずだが?」
日向 「苗木たちの話を盗み聞きしたりしてそれとなく探ってみたんだけどな、どうやら
江ノ島は、ただの"超高校級のギャル"らしい。絶望としての記憶は一切ない。
生まれてから今まで、ファッションに命かけてきた普通の女子高生ってわけだ」
澪田 「んー、じゃあ双子のお姉さんはどうなんすか?"超高校級の軍人"って人!!」
辺古山 「感づかれると困るから、遠目で探ってみたが……妹の言動に困惑しているようだ。
姉の方は、絶望としての性質と記憶を有していると見ていいだろう」
花村 「普通なら江ノ島さんの豊満な谷間に埋もれたいって答える所だけど、僕はあえての
戦刃さんで、硬いふくらはぎに挟まれたいな!!」
左右田 「オメーはぶれねーな!!」
狛枝 「で……これからどうするの?無害なら放っておいてもいいと思うけど……戦刃むくろが
余計な事をして、江ノ島の中の絶望を呼び起こすような事態になったら、それこそ困るよね」
終里 「今のうちにどっちもブッ[ピーーー]ってのはどーだ?」
日向 「生徒同士の殺傷は、校則で禁じられてるぞ」
弐大 「ワシらで代わる代わる監視すればいいだけじゃぁぁぁ!!!」
日向 「そんな事してみろ、戦刃に蝕を利用して殺されるぞ」
田中 「では……あえて"死地(デストロイ・フィールド)"に飛び込むというのはどうだ?」
ずっと黙って聞いていた田中の意見に、全員が固まった。
田中 「闇の意思と絆を育むということだ。仮に"絶望"としての性質が蘇ったとしても、
安らぎの記憶がその枷となってくれるかもしれない。……あくまで希望論だがな」
西園寺 「あの絶望ビッチと仲良くするってこと!!?」
小泉 「今はただのギャルなんでしょ?じゃあ、なんとか行けそうだけど……」
ソニア 「あ、あの…わたくしは、田中さんの意見に賛成です!」
日向 「ソニア、これは大きすぎる賭けだぞ」
ソニア 「だって、あの方は78期生の皆さんからも遠巻きにされているんですよね?
独りぼっちで、双子のお姉さんとも通じ合えずに……江ノ島さんも今、とても
恐ろしい想いをしていると思うんです。絶望の性質を持たないなら、なおさら……」
田中 「この恐怖を楽しめないと?」
ソニア 「はい……きっと今の江ノ島さんは、私たちと同じか、それ以上に心細いと思うんです。
いきなり怖がらせてしまいましたが、なんとか分かり合うことはできないでしょうか?」
俺は思い出していた。縄を解いた後、脱兎のごとく逃げ出した江ノ島の目じりに、
小さな涙が浮かんでいたこと。九頭龍によると「あいつの言葉に嘘はなかった」らしい。
考えるのは後でいい。今はただ……やれることを、やるだけだ。
日向 「分かった。じゃあ、江ノ島盾子と仲良くする。それを目標にして行こう」
左右田 「簡単に言うけどよお、江ノ島の中でオレらの株大暴落だろ?」
日向 「ソニア。お前の人当たりのよさに賭けるぞ。
あとは澪田と……罪木だな。あの場にいなくて、なおかつ江ノ島が好きそうなタイプか……
左右田、お前に男子代表を頼めるか?」
左右田 「はぁ!!?」
日向 「男子が混ざっている方が向こうも警戒しないと思うんだけどな……」
左右田 「うぐっ…わ、分かったよ!!お前の頼みなら聞かねえわけにいかねーしな!!」
半分ヤケクソだが、とりあえず左右田も了承してくれた。
日向 「みんな……悪いな、一貫性もない上に頼りにならなくて」
西園寺 「はぁー?いつからおにぃがリーダー面してんのー?」
日向 「……ごめん」
西園寺 「まあ……カムクラおにぃと違って、日向おにぃとは付き合い短いけど、
遊び半分なら乗ってあげてもいいよー?」
日向 「例えるんなら、監禁事件の犯人も助けに来た警察も俺だったって感じだぞ?」
終里 「オメーはいい奴だって分かってっからいーんだよ!!」
ソニア 「はいっ。島でも希望ヶ峰でも、日向さんと私でラン[ピザ]ーです!」
豚神 「あんな大見得を切っておいて早々に脱落した俺の代わりに、よく真実まで辿り着いてくれた……
俺は、そんなお前を"信じて"いるんだぞ。ありがたく思え」
澪田 「生きるのはもろともっす!!みんなで生き残って今度こそちゃんと卒業するっす!!」
日向 「みんな……!」
77期生たちの絆が少し強まった。
そして、窓の外に濃い霧が立ちこめた事で、外の世界が生きているのは真実だと分かった。
日向 (ここは"人類史上最大最悪の絶望的事件"が起きていない?
パラレルワールドか、それともこの学園自体が……また分からなくなった)
日向 (でも、とりあえず脱出した後の世界が生きていると分かったのは嬉しいな。
俺の好きだったラーメン屋、家、ゲーセン……全部、ちゃんとあるのか……
ここを出たら、また……)
その夜の俺は少し前向きな気持ちで、眠りについた。
突然ですが本音でイエスのアンケート。
このssは日向主人公のザッピングシステムなんだ。
「龍」終了まで別キャラ視点で行こうか?
1.江ノ島
2.大和田
3.山セレ
4.桑田
5.まだ日向で
ちなみに主人公というか視点が↑のキャラというだけで
他にもメインキャラは出るよー。
このssは日向主人公のザッピングシステムなんだ。
「龍」終了まで別キャラ視点で行こうか?
1.江ノ島
2.大和田
3.山セレ
4.桑田
5.まだ日向で
ちなみに主人公というか視点が↑のキャラというだけで
他にもメインキャラは出るよー。
龍の別キャラ視点てこと?それとも、これから先の部分?
1か4かな
1か4かな
龍までを多数決で決まったキャラの視点で行くよ。
日向が得票数多かった場合は物語が進むよ。
日向が得票数多かった場合は物語が進むよ。
「ねえ、桑田クンって選択は物理だったよね?……僕、教科書忘れちゃってさ。
もし二年生のやつ持ってたら、貸してくれないかな?」
「ありがとう。……えッ、僕の事覚えてくれてたの!?嬉しいなあ」
「じゃあ、改めまして……"超高校級の幸運"の、苗木誠だよ。これからよろしくね、桑田クン」
【桑田怜恩:Chapter0『始』】
気がつくと、冷たいパイプ椅子に座っていた。
あちこちから聞こえる息遣いに、やけに重く感じるまぶたを開く。
視界はぼやけて、よく見えない。おかしーな、オレ視力いいのに。
――オレ、今まで何してたんだっけ?
何か、すっげー怖くて、嫌な夢を見てた気がする。
でも今は、それよりオレ自身の状況を調べねーと。
桑田 (アタマ重い……つーか、体中がだりぃし、動きたくねぇ……)
それでも何とか体を起こして、あたりを見回す。
――体育館だ。
ステージの赤い幕に、希望ヶ峰学園の校章が入っているのが見えた。
最初はぼんやりしていたそれが、まばたきをするごとにハッキリした形になる。
桑田 「ここ、希望ヶ峰の体育館か……?」
そう、声に出した瞬間。
桑田 「――ッ、痛っ!!」
わき腹のあたりに、衝撃が走る。例えるんなら速球投手からデッドボールを受けたみたいな、痛み。
思わず手でおさえたそこを、めくってみる。……何もなかった。
桑田 「だよな。試合でもねーのに、こんなトコでボールがぶち当たるわけねーよな」
……
………
はは、と笑った、その時。
□ □ □ □ □
クワタくんが クロにきまりました
これより おしおきを開始します
□ □ □ □ □
桑田 「うっ、……あ、あっ…あ゛、ああああああああっっっ!!!」
それを『思い出した』瞬間、オレは叫んでいた。
次々に流れこんでくる映像に、耳を塞いでうずくまる。それでも、声は止まない。
□ □ □ □ □
『テメエ……どうしてそんなコトしやがった!!』
『あら、あなたのどこが正当防衛ですの?舞園さんの包丁を叩き落した時から、シャワールームで
刺すまでの間、あなたはわざわざ工具セットを持ち出したのですよ?その間、何度も思い止まる
機会はあったはずですわよ』
『はりきっていきましょう、おしおきターイム!!!』
□ □ □ □ □
桑田 (そうだ、オレは死んだんだ、処刑されたんだ!!
体中にボールを浴びて、全身の骨を砕かれて、内臓を潰されて……)
桑田 「ぐうっ……つ、ぅぅっ……!」
冷たい汗をかきながら、しっかりと体を抱える。まだ、全身がきしむ感覚。
ふと、視界に入った右手。指の骨まで全部折れたはずなのに、キレーなままだ。
ボールで潰れた左目の奥が、まだズキズキ痛んだ。それでもなんとか体を起こす。
桑田 「…ッ、はあ、はあっ……はあ……」
必死に呼吸を整えるオレの隣で、「あのさ」と声がした。
??? 「さっきからうるさいんだけど。本科の奴らはストレスも超高校級ってわけ?」
桑田 「あ、わりぃ……えーと」
誰だ、こいつ。ハデな金髪だけど、こんな奴同じクラスにいたっけか?
そいつはオレの思考を読んだみたいで、体をこちらに向けてくれた。
菜摘 「ま、落ち着いたんならいーけどさ。あたしは九頭龍。九頭龍菜摘(クズリュウ ナツミ)。
予備学科の二年生だよ」
桑田 「オレは……」
菜摘 「桑田怜恩でしょ、知ってる。あたしは苗字で呼ぶけど、あんたは"菜摘"って呼んでよ。
九頭龍だとお兄ちゃんと間違われて気分悪いんだよね。
それより、あんた本科なら分かんない?あたし達予備学科は東地区に来れないはずなんだけど、
なんで一緒にいんだろ?」
桑田 「オレが聞きてーぐらいだよ……何してんだ」
菜摘は立ち上がって、「お兄ちゃん探してんの」とあたりを見回していた。
つーか、予備学科って何だよ?口ぶりから言って、あんましいいもんじゃないっぽいけど。
桑田 「お前って、兄妹そろって希望ヶ峰なのか?」
菜摘 「うん。本科の77期にお兄ちゃんがいてね。あんたのいっこ先輩だよ。
いつか学校で会うのが夢だったんだ……予備学科の妹がいるなんて、
恥ずかしいって思ってっかもしんないけど」
そう言ってまた座った菜摘は、なんつーか……寂しそうな顔をしていた。
こういう時はなんて言ってやればいいんだ?
オレが考えあぐねているうちに、周りの奴らも次々に目を覚まして行く。
石丸 「僕はっ、いつの間に体育館に!?」ガタッ
イインチョだ。他にも何人か、知ってる奴がいた。石丸ならアタマいーし、なんか知ってっかな。
そう思った瞬間、遠くで聞きたくなかった声が上がる。
舞園 「わ、私死んだはずじゃ……どうして体育館なんかにいるんですか!?」
不安そうにあたりを見回す、そいつは。
桑田 「まい、ぞの……?」
――フラッシュバック。
冷たい汗をかきながら、しっかりと体を抱える。まだ、全身がきしむ感覚。
ふと、視界に入った右手。指の骨まで全部折れたはずなのに、キレーなままだ。
ボールで潰れた左目の奥が、まだズキズキ痛んだ。それでもなんとか体を起こす。
桑田 「…ッ、はあ、はあっ……はあ……」
必死に呼吸を整えるオレの隣で、「あのさ」と声がした。
??? 「さっきからうるさいんだけど。本科の奴らはストレスも超高校級ってわけ?」
桑田 「あ、わりぃ……えーと」
誰だ、こいつ。ハデな金髪だけど、こんな奴同じクラスにいたっけか?
そいつはオレの思考を読んだみたいで、体をこちらに向けてくれた。
菜摘 「ま、落ち着いたんならいーけどさ。あたしは九頭龍。九頭龍菜摘(クズリュウ ナツミ)。
予備学科の二年生だよ」
桑田 「オレは……」
菜摘 「桑田怜恩でしょ、知ってる。あたしは苗字で呼ぶけど、あんたは"菜摘"って呼んでよ。
九頭龍だとお兄ちゃんと間違われて気分悪いんだよね。
それより、あんた本科なら分かんない?あたし達予備学科は東地区に来れないはずなんだけど、
なんで一緒にいんだろ?」
桑田 「オレが聞きてーぐらいだよ……何してんだ」
菜摘は立ち上がって、「お兄ちゃん探してんの」とあたりを見回していた。
つーか、予備学科って何だよ?口ぶりから言って、あんましいいもんじゃないっぽいけど。
桑田 「お前って、兄妹そろって希望ヶ峰なのか?」
菜摘 「うん。本科の77期にお兄ちゃんがいてね。あんたのいっこ先輩だよ。
いつか学校で会うのが夢だったんだ……予備学科の妹がいるなんて、
恥ずかしいって思ってっかもしんないけど」
そう言ってまた座った菜摘は、なんつーか……寂しそうな顔をしていた。
こういう時はなんて言ってやればいいんだ?
オレが考えあぐねているうちに、周りの奴らも次々に目を覚まして行く。
石丸 「僕はっ、いつの間に体育館に!?」ガタッ
イインチョだ。他にも何人か、知ってる奴がいた。石丸ならアタマいーし、なんか知ってっかな。
そう思った瞬間、遠くで聞きたくなかった声が上がる。
舞園 「わ、私死んだはずじゃ……どうして体育館なんかにいるんですか!?」
不安そうにあたりを見回す、そいつは。
桑田 「まい、ぞの……?」
――フラッシュバック。
□ □ □ □ □
シャワールームの壁にもたれた舞園の背中が、ずるずる…と下がっていく。
腹から血をまき散らして、苦しげな息を吐いて、声を出さずに何かを呟こうとして、止めた。
『はあっ、はあっ……はあ……』
オレの手から力が抜けて、包丁が床に落ちた。舞園の首ががっくりと落ちて、動かなくなる。
同時に、オレもその場にへたりこんだ。――終わった。どういう意味の『終わった』かは
分かんねーけど、とりあえずそう思った。
□ □ □ □ □
桑田 「な、何であいつが……まさか、あいつも生き返って」
はは、だっせーな……手がガタガタ震えて、足は縫いつけられたみてーに動かねえ。
これは多分、舞園に殺されかけた時に感じた恐怖の名残ってやつか?
舞園 「あ……」
そこで、舞園もオレに気づいた。
オレを視界に映した舞園は、あの時と同じように何かを言いかけて、止めた。
てっきり、憎々しげに睨まれると思っていたのに、悲しんでいるみたいな顔。
オレは、その反応に拍子抜けした。
桑田 (なんで……なんで、そんな顔してんだよ。まともに話もしてねーオレを狙って、
苗木利用するぐらいには腹黒い女のはずだろ?)
菜摘 「あの子に話があるんなら行ったら?クラスメートなんでしょ」
桑田 「……そう、だな。舞園とはちゃんと話さねーと」
菜摘 「うん。なんか気まずいみたいだけど、あたしが見ててあげるよ」
がんば!と背中を押されて、オレは一歩踏み出す。
オレと、舞園。どっちが悪いかって聞かれたら、半分は確実にオレが悪いと思う。
桑田 (お前と違って、オレはあんだけ苦しみ抜いて死んだんだ。許せとは言わねーけど、
それでおあいこってことにはなんねーかよ?)
そうだ、あいこなんだ。だから、お互いに頭下げて、そんで終わりでいいはずなんだ。
よし、と決意を固めて。オレは舞園の方に歩き出す。あの夜の歪んだ表情が重なって見えて、
どうしても顔を直視できない。
桑田 「あ、あのさ……その……」
いざ向き合ってみると、言葉が出ない。
オレがぐるぐる考えているうちに、舞園が「桑田くん」と呼んだ。
当たり前なんだけど、敵意とかは感じない。
舞園 「私、あの……」
桑田 「や、やめろよ!まずはオレに言わせろ!……その、あの時は……
本当に、ごめんなさ「危ない!」
オレの言葉は、突然入ってきた苗木によって遮られた。
どうやら、苗木自身もとっさに出た言葉だったらしい。口をおさえて「あ……」とオレを見ている。
苗木 「ち、違うんだ……」
桑田 「……苗木、"危ない"ってなんだよ?オレがまた、舞園に何かするって思ったのかよ」
苗木 「違うんだ、桑田クン…そうじゃないんだ……ぼ、僕は…ただ……」
桑田 「……もういい」
オレは二人に背を向けて、さっさと自分の椅子に戻った。
ちら、と横目で様子を見ると、舞園は苗木と隣同士で座っていた。
あんな事起きる前だったら、苗木うらやましーなチクショーってなったんだろうけど、
今はびっくりするぐらい何も感じない。
いや、いまだに舞園かわいーってやってたら、ただのバカだろーけどさ。
キーン・コーン・カーン・コーン……
??? 『みなさん、おはようございます』
??? 『これより、第××回、希望ヶ峰学園入学式を執り行います』
菜摘 「ハァ?なんで今さら入学式?」
そんなアナウンスの後――
学園長 『私の名前は霧切仁。希望ヶ峰の……君達の、学園長だ』
あれ、学園長ってモノクマじゃ……んじゃ、あのおっさんがモノクマの中の人か?
想像してたよりかっこいいっつーか、若い。非現実的なことが続いていたせいか、
オレはぼんやりした頭で、学園長の話を聞いていた。だから、突然入ってきた言葉に耳を疑った。
学園長 『これより君達2500人の生徒には、命を賭して闘ってもらう!!』
桑田 「……は?」
菜摘 「はあ?笑えないんだけど……何で学校で命(タマ)賭けなきゃなんないの?」
少しずつ、切羽つまった空気が充満して行く。
そんなオレたちの手の中に、ひらっと小さな紙が落ちてきた。
学園長 『その円の中に、各々が"闘う"ための漢字を書いてくれ。一文字しか書けないから、
慎重に選ぶんだ』
桑田 (……もしかして、なんかのテスト?)
希望ヶ峰ってフツーの学校じゃないし、これで何かの適性を見たりとか?
……いや、ありえねー。あのコロシアイ学園生活は絶対夢じゃねーし、オレは確かに死んだんだ。
だったら、なんで……
菜摘 「ねえ、考えるのは後にしない?たかが一文字じゃん」
菜摘の声に、ハッと気づいていつの間にか持ってた鉛筆を持ち直す。
闘う、か。……まあ、オレは一応野球選手なわけだし。『打』とか、『球』とか……球?
――千 本 ノ ッ ク。
桑田 「ハーッ、はあッ、はあっ、はあ……!」
菜摘 「ちょっ…桑田、あんたマジで大丈夫!?」
足元に、血がべっとりついたボールが転がってくる。
鉛筆を握る指は折れ曲がって、白い骨が飛び出していた。
桑田 「はあっ、はあっ!…はあ、はっ…ハアッ…はあっ…」ゼー、ゼー
呼吸ができない。胸が苦しい。酸素を吸っているはずなのに、どんどん苦しくなって行く。
背中をさすられて、何回も名前を呼ばれる。そうしている内に、少しずつ楽になった。
折れていたはずの手が、元に戻っている。足元のボールも消えている。
……さっきのは、幻覚か?
桑田 (ダメだ、怖い……怖い、怖い、怖い、怖い!!!ボールもバットも、全部が怖いっ……!)ガタガタ
菜摘 「すっごい顔色悪いけど……あとで絶対保健室行きなよ?」
桑田 (嫌だ、もう嫌だ!!こんなトコ、もういたくねーよ!……出たい、早く出たい……!!)
オレは叩きつけるように、その一文字を書いた。
この狂った学園から出たい。ただ、その一心で。
学園長 「そうしたら次は、その漢字を口に出して読むんだ」
隣の菜摘がぼそ、と呟く。周りの奴らも同じように読んでた。
……送り仮名ってつけていーのか?んー、でる、しゅつ……あと一コ、なんかあったな……
桑田 「"出(いずる)"?……いって!」
口に出した瞬間、紙はバチンッと弾けて消えた。
痛みが走った右の手首をひっくり返して見る。
桑田 「何だよ、これ……さっきの字だよな?」
その時、ぞくっと嫌な気配がした。ラバーソールの下に、黒い円が浮かぶ。
反射的に立ち上がって、後ろに下がった。円の中から出てきた『何か』は、オレ達を見てよだれを垂らしている。
恐竜だ。昔図鑑で見た肉食恐竜みたいな、三つ目のバケモノがそこにいた。
『全員、起立っ!!さあ、希望を背負った生徒たちよ、闘うんだ!!』
誰かが、「きゃあああ!!」と悲鳴をあげた。パニックになった奴らは一斉に出口を目指して走り出す。
学園長 『私の名前は霧切仁。希望ヶ峰の……君達の、学園長だ』
あれ、学園長ってモノクマじゃ……んじゃ、あのおっさんがモノクマの中の人か?
想像してたよりかっこいいっつーか、若い。非現実的なことが続いていたせいか、
オレはぼんやりした頭で、学園長の話を聞いていた。だから、突然入ってきた言葉に耳を疑った。
学園長 『これより君達2500人の生徒には、命を賭して闘ってもらう!!』
桑田 「……は?」
菜摘 「はあ?笑えないんだけど……何で学校で命(タマ)賭けなきゃなんないの?」
少しずつ、切羽つまった空気が充満して行く。
そんなオレたちの手の中に、ひらっと小さな紙が落ちてきた。
学園長 『その円の中に、各々が"闘う"ための漢字を書いてくれ。一文字しか書けないから、
慎重に選ぶんだ』
桑田 (……もしかして、なんかのテスト?)
希望ヶ峰ってフツーの学校じゃないし、これで何かの適性を見たりとか?
……いや、ありえねー。あのコロシアイ学園生活は絶対夢じゃねーし、オレは確かに死んだんだ。
だったら、なんで……
菜摘 「ねえ、考えるのは後にしない?たかが一文字じゃん」
菜摘の声に、ハッと気づいていつの間にか持ってた鉛筆を持ち直す。
闘う、か。……まあ、オレは一応野球選手なわけだし。『打』とか、『球』とか……球?
――千 本 ノ ッ ク。
桑田 「ハーッ、はあッ、はあっ、はあ……!」
菜摘 「ちょっ…桑田、あんたマジで大丈夫!?」
足元に、血がべっとりついたボールが転がってくる。
鉛筆を握る指は折れ曲がって、白い骨が飛び出していた。
桑田 「はあっ、はあっ!…はあ、はっ…ハアッ…はあっ…」ゼー、ゼー
呼吸ができない。胸が苦しい。酸素を吸っているはずなのに、どんどん苦しくなって行く。
背中をさすられて、何回も名前を呼ばれる。そうしている内に、少しずつ楽になった。
折れていたはずの手が、元に戻っている。足元のボールも消えている。
……さっきのは、幻覚か?
桑田 (ダメだ、怖い……怖い、怖い、怖い、怖い!!!ボールもバットも、全部が怖いっ……!)ガタガタ
菜摘 「すっごい顔色悪いけど……あとで絶対保健室行きなよ?」
桑田 (嫌だ、もう嫌だ!!こんなトコ、もういたくねーよ!……出たい、早く出たい……!!)
オレは叩きつけるように、その一文字を書いた。
この狂った学園から出たい。ただ、その一心で。
学園長 「そうしたら次は、その漢字を口に出して読むんだ」
隣の菜摘がぼそ、と呟く。周りの奴らも同じように読んでた。
……送り仮名ってつけていーのか?んー、でる、しゅつ……あと一コ、なんかあったな……
桑田 「"出(いずる)"?……いって!」
口に出した瞬間、紙はバチンッと弾けて消えた。
痛みが走った右の手首をひっくり返して見る。
桑田 「何だよ、これ……さっきの字だよな?」
その時、ぞくっと嫌な気配がした。ラバーソールの下に、黒い円が浮かぶ。
反射的に立ち上がって、後ろに下がった。円の中から出てきた『何か』は、オレ達を見てよだれを垂らしている。
恐竜だ。昔図鑑で見た肉食恐竜みたいな、三つ目のバケモノがそこにいた。
『全員、起立っ!!さあ、希望を背負った生徒たちよ、闘うんだ!!』
誰かが、「きゃあああ!!」と悲鳴をあげた。パニックになった奴らは一斉に出口を目指して走り出す。
桑田 「いって!」ドサッ
逃げようと走り出した生徒が勢いよくぶつかってきた。
尻餅をついたオレの手を、菜摘がぐいっと引っぱる。
菜摘 「まったく……あんたそれでも"超高校級"なわけ?」ハァ…
菜摘 「ごめん。あたし、一人で行くね。お兄ちゃん、どっか行っちゃったみたいだし……
あんたを巻き込むのもアレだからさ。……じゃ、がんばってね」
それだけ云うと、菜摘はさっさと走ってった。
ガタガタ震えている舞園を、苗木が背中にかばっている。大和田も石丸も、あっという間に見えなくなった。
『グルルル……』ボタボタ
オレのすぐ近くに、化け物がビチャッとよだれを垂らした。赤い三つ目に映っている情けねー顔と目が合う。
そこでやっと、頭のどっかにスイッチが入った。
桑田 「くそっ……んな所で、死んでたまっかよ!!」ダンッ
オレはパイプ椅子に飛び乗って、その上を走った。化け物の死角に回り込んで、素早く抜ける。
桑田 「うらぁッ!!」バターンッ
校庭に出るドアを蹴破ると、化け物が四匹、なんかに群がっていた。
ビチャビチャ…グチュッ、グチャァッ…
桑田 (ひ、人……か?)
嫌な予感がして、さっと目をそらす。あちこちで、化け物に生徒が喰われてた。
たいていは一発で噛み殺されて、鋭い牙で食い破られている。
生徒A 「なあ、あの塀から出られんじゃねーのかな」
生徒B 「よし、行ってみようぜ……あ、お前も来るか?」
声をかけられて、一瞬反応が遅れる。
そいつらは、菜摘と同じブレザーを着てた。あいつと同じ予備学科なんだろーか?
生徒C 「つーかお前、本科の桑田だろ。……ま、いっか。一人増えても大したことねーし」
一人が、塀に手をかけて登ろうとする。オレもこの状況に慣れてきたのか、周りを観察する余裕が出てきた。
遠くで、ネクタイを握りしめてる奴がいた。一瞬だけ光ったかと思うと、それは日本刀に変わってる。
「らあああッ!!」ブンッ
化け物の首を落としたそいつは、その勢いのままもう一体に斬りかかった。
そういや、学園長が言ってたな。『闘うための漢字』だっけ?
桑田 「……なあ、お前らにも、その……"漢字"ってあんのか?」
生徒A 「あるぜ。俺は"達成"の"達"って書いたんだ」
そいつは前髪をかき上げて、デコのとこにある『達』を見せてくれた。
じゃあ、さっきのあいつもその字で、ネクタイを刀に変えてたってことか……?
桑田 「じゃあ、多分なんだけど、オレの字……出口作れっかもしんねー」
しまった。
思いつきで言ったのに、予備学科の奴らは目を輝かせて「マジ?」と喜んだ。
生徒B 「じゃ、出らんなそーだったら頼むわ」
生徒C 「おうっ、オメーにかかってるぜ!!」グッ
逃げようと走り出した生徒が勢いよくぶつかってきた。
尻餅をついたオレの手を、菜摘がぐいっと引っぱる。
菜摘 「まったく……あんたそれでも"超高校級"なわけ?」ハァ…
菜摘 「ごめん。あたし、一人で行くね。お兄ちゃん、どっか行っちゃったみたいだし……
あんたを巻き込むのもアレだからさ。……じゃ、がんばってね」
それだけ云うと、菜摘はさっさと走ってった。
ガタガタ震えている舞園を、苗木が背中にかばっている。大和田も石丸も、あっという間に見えなくなった。
『グルルル……』ボタボタ
オレのすぐ近くに、化け物がビチャッとよだれを垂らした。赤い三つ目に映っている情けねー顔と目が合う。
そこでやっと、頭のどっかにスイッチが入った。
桑田 「くそっ……んな所で、死んでたまっかよ!!」ダンッ
オレはパイプ椅子に飛び乗って、その上を走った。化け物の死角に回り込んで、素早く抜ける。
桑田 「うらぁッ!!」バターンッ
校庭に出るドアを蹴破ると、化け物が四匹、なんかに群がっていた。
ビチャビチャ…グチュッ、グチャァッ…
桑田 (ひ、人……か?)
嫌な予感がして、さっと目をそらす。あちこちで、化け物に生徒が喰われてた。
たいていは一発で噛み殺されて、鋭い牙で食い破られている。
生徒A 「なあ、あの塀から出られんじゃねーのかな」
生徒B 「よし、行ってみようぜ……あ、お前も来るか?」
声をかけられて、一瞬反応が遅れる。
そいつらは、菜摘と同じブレザーを着てた。あいつと同じ予備学科なんだろーか?
生徒C 「つーかお前、本科の桑田だろ。……ま、いっか。一人増えても大したことねーし」
一人が、塀に手をかけて登ろうとする。オレもこの状況に慣れてきたのか、周りを観察する余裕が出てきた。
遠くで、ネクタイを握りしめてる奴がいた。一瞬だけ光ったかと思うと、それは日本刀に変わってる。
「らあああッ!!」ブンッ
化け物の首を落としたそいつは、その勢いのままもう一体に斬りかかった。
そういや、学園長が言ってたな。『闘うための漢字』だっけ?
桑田 「……なあ、お前らにも、その……"漢字"ってあんのか?」
生徒A 「あるぜ。俺は"達成"の"達"って書いたんだ」
そいつは前髪をかき上げて、デコのとこにある『達』を見せてくれた。
じゃあ、さっきのあいつもその字で、ネクタイを刀に変えてたってことか……?
桑田 「じゃあ、多分なんだけど、オレの字……出口作れっかもしんねー」
しまった。
思いつきで言ったのに、予備学科の奴らは目を輝かせて「マジ?」と喜んだ。
生徒B 「じゃ、出らんなそーだったら頼むわ」
生徒C 「おうっ、オメーにかかってるぜ!!」グッ
生徒A 「よっ……っと、登れないことは、ないけど……キツいな」ズルズル
生徒B 「おい桑田、無理そうだしさっさと"出口"作ってくれよ」
塀に向かって立つオレは、あの鉄の扉で塞がれた玄関ホールと、舞園の言葉を思い出していた。
『わたし、はっ…出なきゃ、いけないんです!!早く、ここから出なきゃ!!!
あなたなんかと違って、わたしには!!待ってる人がいるんです!!』
桑田 「たりめーだろ……こんなとこ、一秒だっていられっかよ」
オレは塀に手を当てて、「すうっ」と深呼吸する。
出口……出口……扉……
"出(いずる)"
オレの手の下で、パアッと青い光が生まれた。次の瞬間、真っ白だった塀に教室の扉ができている。
桑田 「ま、マジで……オレが出したのか?これ……」
正直、アタマがついてかない。そんなオレをよそに、塀の上にいた奴が「やりぃっ!」と飛び下りた。
生徒A 「俺いっちばーん♪……って、あれっ?」
何が起こってるのか分からなかった。扉を開けて出たはずのそいつが、また扉の中から出てきた。
生徒B 「おい桑田、お前ちゃんと出口作ったのかよ!」
生徒C 「出らんねーじゃねーか!もっかいちゃんと……」
桑田 「お、おい!前……」
生徒C 「あ?」
一瞬。
本当に一瞬だった。オレが作った扉から……いや、そこに出た黒い円から、にゅうっと化け物が出てきて、
そのデカい口をあんぐりと開けて……扉の前に立ってたそいつらを呑みこんだ。
足から力が抜けて、その場にへたりこむ。化け物の腹が、ちょうど人の形に浮かび上がっている。
桑田 「あ、あっ……!」ガタガタ
桑田 「あ゛っ、あああああああっ!!」
オレは滅茶苦茶に叫びながら、走り出した。足がもつれて転びそうになるのを、必死で逃げる。
頭ん中は真っ白で、ただ本能だけで化け物の動きを読んで逃げる。
桑田 (怖えっ……こえーよ!!誰か、誰か助けっ……)
桑田 「嫌だ……もうこんな学園いたくねえっ!!」
何分……そんなに長い時間じゃなかったんだろーけど、オレにとっては何時間にも感じた。
空を覆っていた雲が晴れて、校庭が明るくなる。同時に、化け物はすうっと消えていった。
桑田 「あ……終わっ、た……?」ヘナッ
桑田 「は、はははっ……生きてる……オレ、生きてんだ……」
【初日:始
死亡者数:876名
生存者数:1624名
総生徒数:2500名→1624名】
へたりこんでいるオレの横で、青い帽子をかぶった作業員みてーなモノクマが出てきた。
死体をテキパキと袋に入れて、運んでいく。
生徒B 「おい桑田、無理そうだしさっさと"出口"作ってくれよ」
塀に向かって立つオレは、あの鉄の扉で塞がれた玄関ホールと、舞園の言葉を思い出していた。
『わたし、はっ…出なきゃ、いけないんです!!早く、ここから出なきゃ!!!
あなたなんかと違って、わたしには!!待ってる人がいるんです!!』
桑田 「たりめーだろ……こんなとこ、一秒だっていられっかよ」
オレは塀に手を当てて、「すうっ」と深呼吸する。
出口……出口……扉……
"出(いずる)"
オレの手の下で、パアッと青い光が生まれた。次の瞬間、真っ白だった塀に教室の扉ができている。
桑田 「ま、マジで……オレが出したのか?これ……」
正直、アタマがついてかない。そんなオレをよそに、塀の上にいた奴が「やりぃっ!」と飛び下りた。
生徒A 「俺いっちばーん♪……って、あれっ?」
何が起こってるのか分からなかった。扉を開けて出たはずのそいつが、また扉の中から出てきた。
生徒B 「おい桑田、お前ちゃんと出口作ったのかよ!」
生徒C 「出らんねーじゃねーか!もっかいちゃんと……」
桑田 「お、おい!前……」
生徒C 「あ?」
一瞬。
本当に一瞬だった。オレが作った扉から……いや、そこに出た黒い円から、にゅうっと化け物が出てきて、
そのデカい口をあんぐりと開けて……扉の前に立ってたそいつらを呑みこんだ。
足から力が抜けて、その場にへたりこむ。化け物の腹が、ちょうど人の形に浮かび上がっている。
桑田 「あ、あっ……!」ガタガタ
桑田 「あ゛っ、あああああああっ!!」
オレは滅茶苦茶に叫びながら、走り出した。足がもつれて転びそうになるのを、必死で逃げる。
頭ん中は真っ白で、ただ本能だけで化け物の動きを読んで逃げる。
桑田 (怖えっ……こえーよ!!誰か、誰か助けっ……)
桑田 「嫌だ……もうこんな学園いたくねえっ!!」
何分……そんなに長い時間じゃなかったんだろーけど、オレにとっては何時間にも感じた。
空を覆っていた雲が晴れて、校庭が明るくなる。同時に、化け物はすうっと消えていった。
桑田 「あ……終わっ、た……?」ヘナッ
桑田 「は、はははっ……生きてる……オレ、生きてんだ……」
【初日:始
死亡者数:876名
生存者数:1624名
総生徒数:2500名→1624名】
へたりこんでいるオレの横で、青い帽子をかぶった作業員みてーなモノクマが出てきた。
死体をテキパキと袋に入れて、運んでいく。
菜摘 「桑田!よかった……無事で」
桑田 「菜摘、お前の兄貴は……」
菜摘 「生きてたよ。でも向こうの人と話あるみたいでさ、無視られちゃった。
……あの、さ……あんたは、平気なの?」
桑田 「平気だよ……」グッタリ
菜摘 「……その顔で?……ごめん。やっぱあんたを一人にしない方がよかったね」
辛いことがあったんだね、と聞かれて。オレは何も答えなかった。
菜摘 「あたしはこういうのそこそこ慣れてっけど……あんたはカタギじゃん。無理しないでいーんだよ」
桑田 「カタギ?」
菜摘 「あたしの親、極道の組長だからさ。九頭龍組って名前くらいは聞いたことあるっしょ?」
九頭龍組……!!?日本最大の暴力団じゃねーかよ!!!
サラッと衝撃の事実を明かした菜摘は、「安心してよ。カタギに手は出さないから」と笑っている。
……暴走族の総長でも入学できんだから、極道の娘がいてもおかしくねーか。
菜摘 「あ、あたしの文字まだ見せてなかったよね。お腹にあるんだけどさ」
桑田 「やめろ!!お前の親父にコンクリート詰めにされちまう!!!」
霧切 「……桑田くん、ちょっといいかしら」
背中ごしにかけられた声。ぴた、と菜摘の動きが止まる。霧切は制服をまくりあげた菜摘をちらっと見て、
隣に座るオレに向き直った。なんだよ、オレがやらせてるわけじゃねーぞ。
霧切 「苗木くんが、皆を集めているわ。あなたはどうするの?」
桑田 「……クロだぜ、オレは……どの面下げて会えってんだよ」
霧切 「そう……分かったわ。でも、私たちの持つ情報は伝えておきたいの。コロシアイ学園生活の
顛末も、黒幕も、外の世界のことも……あなたは何も知らなかったでしょう?あとで個室に
手紙を届けるから、読んでおいて」
桑田 「そうかよ……」
霧切は目を伏せて「私は、あなた達をこれ以上苦しめたくないの」とつけ加えた。
菜摘 「なーんか、訳ありな感じ?78期生もギスギスしてんだね……」
霧切 「じゃあね……あなたの新しいお友達にもよろしく」
桑田 「行っちまった……あいかわらずブアイソな奴」
霧切が行ってしまうと、校庭の木に設置されたモニターに『ザーッ』と砂嵐が走った。
そこに映った学園長は、心にもなさそうなお悔やみの言葉を述べて、
『空に、島が浮かんでいることに気づいた生徒はいるかい?』と言う。
桑田 「空の島……あれか?」
菜摘 「よく見えないんだけど……桑田、その島ってどこらへんにあんの?」
桑田 「お前目悪いのか?あれだよ。オレが指さしてるあたり」
菜摘 「うーん……見えないなあ」
学園長によると、あの空島に太陽が重なって影ができる時に『蝕』が起こるらしい。
……あと一年も、オレはここから逃げらんねーのかよ……!!
桑田 「菜摘、お前の兄貴は……」
菜摘 「生きてたよ。でも向こうの人と話あるみたいでさ、無視られちゃった。
……あの、さ……あんたは、平気なの?」
桑田 「平気だよ……」グッタリ
菜摘 「……その顔で?……ごめん。やっぱあんたを一人にしない方がよかったね」
辛いことがあったんだね、と聞かれて。オレは何も答えなかった。
菜摘 「あたしはこういうのそこそこ慣れてっけど……あんたはカタギじゃん。無理しないでいーんだよ」
桑田 「カタギ?」
菜摘 「あたしの親、極道の組長だからさ。九頭龍組って名前くらいは聞いたことあるっしょ?」
九頭龍組……!!?日本最大の暴力団じゃねーかよ!!!
サラッと衝撃の事実を明かした菜摘は、「安心してよ。カタギに手は出さないから」と笑っている。
……暴走族の総長でも入学できんだから、極道の娘がいてもおかしくねーか。
菜摘 「あ、あたしの文字まだ見せてなかったよね。お腹にあるんだけどさ」
桑田 「やめろ!!お前の親父にコンクリート詰めにされちまう!!!」
霧切 「……桑田くん、ちょっといいかしら」
背中ごしにかけられた声。ぴた、と菜摘の動きが止まる。霧切は制服をまくりあげた菜摘をちらっと見て、
隣に座るオレに向き直った。なんだよ、オレがやらせてるわけじゃねーぞ。
霧切 「苗木くんが、皆を集めているわ。あなたはどうするの?」
桑田 「……クロだぜ、オレは……どの面下げて会えってんだよ」
霧切 「そう……分かったわ。でも、私たちの持つ情報は伝えておきたいの。コロシアイ学園生活の
顛末も、黒幕も、外の世界のことも……あなたは何も知らなかったでしょう?あとで個室に
手紙を届けるから、読んでおいて」
桑田 「そうかよ……」
霧切は目を伏せて「私は、あなた達をこれ以上苦しめたくないの」とつけ加えた。
菜摘 「なーんか、訳ありな感じ?78期生もギスギスしてんだね……」
霧切 「じゃあね……あなたの新しいお友達にもよろしく」
桑田 「行っちまった……あいかわらずブアイソな奴」
霧切が行ってしまうと、校庭の木に設置されたモニターに『ザーッ』と砂嵐が走った。
そこに映った学園長は、心にもなさそうなお悔やみの言葉を述べて、
『空に、島が浮かんでいることに気づいた生徒はいるかい?』と言う。
桑田 「空の島……あれか?」
菜摘 「よく見えないんだけど……桑田、その島ってどこらへんにあんの?」
桑田 「お前目悪いのか?あれだよ。オレが指さしてるあたり」
菜摘 「うーん……見えないなあ」
学園長によると、あの空島に太陽が重なって影ができる時に『蝕』が起こるらしい。
……あと一年も、オレはここから逃げらんねーのかよ……!!
桑田 「――お?」
その時、空から何かが落ちてきた。
青い欠片を、両手で受け止める。小さくて、内側からはキレーな光が出ていた。
学園長 『この中には、君たちが忘れてしまった"記憶"が入っている。中にはとても思い出したくない
過去があるかもしれないが……これも試練と思って、受け止めたまえ』
試練、か……オレにとっては罰にしか思えない。
でも、石丸とか大和田とか、ぜってークロにならなそうな奴らも同じ試練を受けてんだよな。
あいつらは何の罪で、こんなとこにいるんだろうか。
菜摘 「思い出したくない過去……ね。そういうの、誰にでもあると思うけど」
桑田 「これが"ご褒美"とか、スパルタだな。あの学園長……」
欠片をぎゅっと握りしめた瞬間、視界が真っ白に染まる。
__________
少しずつ……視界が明るくなって、最初に見えたのは、学校の机。視界が完全に晴れたところで、
そこが希望ヶ峰の教室だと気づく。鉄板もねーし、壁紙もフツーだけど。
オレはその景色を『知っている』。
オレは茶色のブレザーを着てた。ゆるんでいるネクタイを締めなおして、机からノートを出す。
体が自動で動いてる……夢の中みてーだな。ノートの表紙には『才能研究Ⅰ』と書いてあった。
「ねえ」
振り返ると、ノートを持った苗木が両手を合わせて立っていた。
苗木 「桑田クンって選択は物理だったよね。……僕、教科書忘れちゃってさ。
もし二年生のやつ持ってたら、貸してくれないかな」
桑田 「いいぜ。オレは今日才能研究だしな。あと、物理は二年も三年もあんま範囲変わんねーだろ。
教科書だけでいーのか?演算表とかいるんじゃねーの?」
苗木 「あ、そ……それも……ごめん……」
オレは「いちいち謝んじゃねーよ、ムカつくな」と返して、机の中を探った。
夢の中のオレは、なんかイライラしてるみてーだ。苗木の態度のせいか?
桑田 「ったく、しょうがねーなあ……つーか物理のセンコーって、忘れ物にきびしーだろ。
そんで教科書忘れっとか、お前マジで"超高校級の幸運"なわけ?」
苗木 「あ、あはは……」
桑田 「はいこれ、オレの演算表。落書きとかすんなよな」
苗木 「ありがとう」
桑田 「どーいたしまして。そんじゃ苗木、後でオレの机に返しとけよ」
苗木 「えッ、僕の事覚えてくれてたの!?嬉しいなあ」
桑田 「たりめーだろ!!このクラス15人しかいねーんだぞ、いくらオメーがただの抽選だっつっても
覚えてるっつーの!!バカにすんなよ!!」
苗木 「べ、別にバカにしてるわけじゃ……」
桑田 「あとな、お前に前から言いたかったんだけど、その卑屈な態度やめろ。"僕はみんなと違うから"とか
そーやって線引きされっとイラッとくんだよ。こっちだって好きで天才やってるわけじゃねーっつの」
苗木 「……」
桑田 「わり、言いすぎた。でもよ、せっかく"超高校級"の奴らとお近づきになれてんだから、
もーちょい頑張れよお前。"超高校級の幸運"って、卒業した後は上級官僚になれるらしいじゃん。
偉い人になるんだったら、人脈作っとけよ」
苗木は教科書を抱えて、こっくりとうなずいた。
苗木 「でも……人脈って、どうやって作ればいいのかなあ」
桑田 「しゃーねーな……じゃあ、オレが第一号になってやるか?」
苗木 「……え、いいの?」
そこで初めて、苗木は嬉しそうに笑った。
桑田 「へへ、まずはオレからな。えー、オレは"超高校級の野球選手"桑田怜恩だ。よろしくな」
苗木 「じゃあ、改めまして……"超高校級の幸運"苗木誠だよ。これからよろしくね、桑田クン」
___________
視界が晴れると、そこは元の地獄だった。
モノクマが片づけた死体の血痕が、点々と落ちているのが目に入る。
菜摘 「うーん、学園長があんなもったいぶって言うからビビってたけど……
思ってたよりフツーだったね」
桑田 「今の……なんだよ?」
菜摘 「ん?」
桑田 「なんでオレが、教室にいんだよ?なんで、苗木と……えっ?」
頭がぐちゃぐちゃになって、混乱していく。学園長は「失われた記憶」つってたよな。
もしかして、オレは、
――記憶喪失?
桑田 「はっ……えっ、あ…え……?」
菜摘 「落ち着いて。まだ色々分かってないんだから、混乱するのは後にしな!!」
これが極道娘の迫力か。
びしっと言われて、ぐるぐる回っていたアタマが止まる。
菜摘 「あたしだって、覚えのない記憶が出てきてびっくりしてるよ?でも
バタバタしたって始まんないじゃん。どうせこっからは出らんないんだし、
腹ァくくるしかないよ」
桑田 「だけどよ……」
菜摘 「霧切って人が言ってたじゃん。あとで手紙で教えてくれるって」
そうだった。霧切が色々教えてやるっつってたな……
たかが数分前のこと忘れてパニクるとか、恥ずすぎんだろオレ……
菜摘 「なんか……すごい恐いことに巻き込まれちゃったみたいだね。わけわかんない事ばっかだし」
空に向かってんー、と目をこらす菜摘は「でもさ」と振り返った。
菜摘 「絶対生き残って、卒業して……偉い人になろうね」
桑田 「そんな、あんなのが明日からずっと「とにかく、死なないこと!大事なのはそんだけ!!」
菜摘 「……あたしたち、もう友達じゃん。助け合って、あの蝕とかいう奴を生き延びよう?
あんたにも、九頭龍組のご加護があるよ!!」
桑田 「……ぷっ、ははっ…やめろよ、野球選手と極道って……できすぎだろ!!」
一人より二人だよ、と差し出された手を、オレは迷わず握りしめていた。
友達……人殺しのオレに、そんなものを持つ権利があんのかは知らねーけど。
菜摘の手は、すごく温かかった。
_________
切ります。菜摘のキャラは3のアニメ放送前にイメージしてたやつ。
キャラの書き分けがむずい。超高校級の希望の就職先については
アホリズムの楢鹿卒業生が「無試験で公務員になれる」という設定をもらってます。
菜摘いいヤツ過ぎだろと思ったら3前のイメージか
桑田はなんだかんだ可哀想なヤツだよな
桑田はなんだかんだ可哀想なヤツだよな
乙
アニメの菜摘は小泉と予備学科生に対して卑屈だったけど、その他に対してはどうなんだろうね
アニメの菜摘は小泉と予備学科生に対して卑屈だったけど、その他に対してはどうなんだろうね
罪木って江ノ島に依存してたからいなくなった今日向への執着心が凄そう
菜摘は卑屈というかブラコン過ぎ。言っちゃなんだが、九頭龍のスキル七光りなのに
正直超高校級にならなきゃ並べない!ってコンプレックスを持つ程では…
正直超高校級にならなきゃ並べない!ってコンプレックスを持つ程では…
>>77
一応、最後までの流れはできてるよ。
よっぽどのことがない限りは完結できるかな。
>>78
11037はさすがに草
菜摘も根は悪い子じゃないと思うけど、3見てると組にビビって友達やってくれてる子が多そうなイメージ。
>>79
ありゃすごかった。本科への憧れって劣等感の裏返しなんかな。
>>80
罪木と西園寺編も書きたい……けどそうすると日向のが進まない。
桑田編が一区切りついたらまた日向かな。
>>81
九頭龍組のお嬢ってだけで人生勝ち組なのにね。
日向とは似てないようで似ていて似てない子。
『才能』の受け止め方が本科でも予備学科でも様々なのがロンパは面白い。
桑田視点だけど、正しくは桑田+舞園+(菜摘)編。
一応、最後までの流れはできてるよ。
よっぽどのことがない限りは完結できるかな。
>>78
11037はさすがに草
菜摘も根は悪い子じゃないと思うけど、3見てると組にビビって友達やってくれてる子が多そうなイメージ。
>>79
ありゃすごかった。本科への憧れって劣等感の裏返しなんかな。
>>80
罪木と西園寺編も書きたい……けどそうすると日向のが進まない。
桑田編が一区切りついたらまた日向かな。
>>81
九頭龍組のお嬢ってだけで人生勝ち組なのにね。
日向とは似てないようで似ていて似てない子。
『才能』の受け止め方が本科でも予備学科でも様々なのがロンパは面白い。
桑田視点だけど、正しくは桑田+舞園+(菜摘)編。
菜摘 「あのさあ……予備学科生は東地区に入れなかったんだよ?今は全部の地区が電子生徒手帳で
行き来できるようになってるけど」
ちょっと考えれば分かるじゃん、と菜摘は呆れてる。
桑田 「じゃあ、オレも西地区には行けねーのか……ホラーハウス見てえなあー」
菜摘 「西地区のテーマパークなんて、そんな面白くないよ?"あたしも含めて"
予備学科生は劣等感すごいし、本科生は行かない方が身のためかもよ。
さっきだって、寄宿舎が人少ないからよかっただけだし。
じゃ、あたしは予備学科の食堂行くから。またね!!」
桑田 「あ、ああ……」
菜摘はフェンスについたコンソールに、電子生徒手帳をかざした。
『ピーッ』と音がして、西地区と東地区を分けるフェンスが開く。
菜摘が通ると、警備員モノクマがビシッと敬礼した。
桑田 「またね、か……何か嬉しいな、オレにも喋ってくれる奴がいんだな」
【食堂】
桑田 (あんな恐い目に遭った後で、よく食欲があるよな)
オレの向かいに座った褐色巨乳の女子が、口いっぱいに料理を詰めこんでる。
ちょっとハミ出してるし。オメーはハムスターか。
隣で食ってるガタイのいい男子も「腹が減っては戦ができんぞぉぉぉ!!!」とか
叫びながら、山盛りのチャーハンをがっついてる。なんかもう、すげーとしか言えない。
桑田 (つーか、こんな機能あったっけ。楽しいけど)
ポケットに入ったままの電子生徒手帳を起動させると、『ウサミ』とかいうのが出てきた。
万歩計とたまごっちを合わせたみてーな感じだ。△ボタンをカチカチ押してトイレの世話をしてやる。
霧切 「ここ、いいかしら?」
葉隠 「お邪魔するべ!!」
ウサミの世話をしながらメロンパンをかじるオレの左に霧切、右に葉隠が立った。
遠くで、苗木が気まずそうな顔でこっちを見てる。話あんなら自分で来いっつーの。
桑田 「話はいーけどよ、出ようぜ」
とりあえず、二人を連れて食堂を出た。
男子トイレの前まで来ると、霧切は「誰もいないわね」と周りを確認した。
霧切 「……あなたの個室のドアに手紙を入れておいたけれど、読んでくれた?」
桑田 「読んだよ。……一緒にいた予備学科の女子も見たがってたから読ましたけど、
別にいいよな?」
霧切 「いいわよ。予備学科の方にも広めておきたいから……信じられないでしょうけど、
あの中に書かれていたのは全て真実よ」
桑田 「正直、信じらんねーな。あの記憶も、外の世界のことも。手紙の最初にわざわざ
"身長を測りなおせ"って書いてたよな」
霧切 「私は探偵だから、観察眼が鋭いの。あなたは入学時より2cm伸びていたはずよ」
結局、オレと舞園が殺しあったのは何の意味もなかった。
それだけが確かな事なのかもしれない。
霧切 「……私たちが立ち向かわなければならない敵。それはあの"神蝕"よ。そして、生徒に命がけの
試練を与える学園長も。そのためには、私たち生徒で団結しなければならないわ」
葉隠 「なあ、桑田っち。今すぐ許せとは言わねーけど、舞園っちとのことはしょうがないべ。
ひとまずそのことは置いといて、ってわけにゃいかねーか?」
霧切 「もしかして、77期生たちが怖いの?彼らは更正プログラムを終えているから、もう安全よ。
舞園さんも、あなたには謝っても謝りきれないと泣いているの。彼女のためにもあなたの
方から歩みよるのがいいと思うわ」
葉隠 「ぶっちゃけ、あれは桑田っちも悪いべ。ここはお互い謝って、チャラにすべきだと思うべ」
だから、謝ろうとしたら苗木が割りこんだんだろーが。お前らは中立って言葉知らねーのか。
霧切 「まだ思い出していないかもしれないけど……あなたと苗木君は、かつては親友同士だったのよ。
やり直す理由としては十分だと思うわ」
葉隠 「未来機関のおかげで、苗木っちは全部思い出してるべ。今からでも、昔みたいな仲良しに戻りたいって
思ってる。その気持ちはずっと変わってねーべ。桑田っちと舞園っちを忘れないために、
遺跡のパスワードだって」
行き来できるようになってるけど」
ちょっと考えれば分かるじゃん、と菜摘は呆れてる。
桑田 「じゃあ、オレも西地区には行けねーのか……ホラーハウス見てえなあー」
菜摘 「西地区のテーマパークなんて、そんな面白くないよ?"あたしも含めて"
予備学科生は劣等感すごいし、本科生は行かない方が身のためかもよ。
さっきだって、寄宿舎が人少ないからよかっただけだし。
じゃ、あたしは予備学科の食堂行くから。またね!!」
桑田 「あ、ああ……」
菜摘はフェンスについたコンソールに、電子生徒手帳をかざした。
『ピーッ』と音がして、西地区と東地区を分けるフェンスが開く。
菜摘が通ると、警備員モノクマがビシッと敬礼した。
桑田 「またね、か……何か嬉しいな、オレにも喋ってくれる奴がいんだな」
【食堂】
桑田 (あんな恐い目に遭った後で、よく食欲があるよな)
オレの向かいに座った褐色巨乳の女子が、口いっぱいに料理を詰めこんでる。
ちょっとハミ出してるし。オメーはハムスターか。
隣で食ってるガタイのいい男子も「腹が減っては戦ができんぞぉぉぉ!!!」とか
叫びながら、山盛りのチャーハンをがっついてる。なんかもう、すげーとしか言えない。
桑田 (つーか、こんな機能あったっけ。楽しいけど)
ポケットに入ったままの電子生徒手帳を起動させると、『ウサミ』とかいうのが出てきた。
万歩計とたまごっちを合わせたみてーな感じだ。△ボタンをカチカチ押してトイレの世話をしてやる。
霧切 「ここ、いいかしら?」
葉隠 「お邪魔するべ!!」
ウサミの世話をしながらメロンパンをかじるオレの左に霧切、右に葉隠が立った。
遠くで、苗木が気まずそうな顔でこっちを見てる。話あんなら自分で来いっつーの。
桑田 「話はいーけどよ、出ようぜ」
とりあえず、二人を連れて食堂を出た。
男子トイレの前まで来ると、霧切は「誰もいないわね」と周りを確認した。
霧切 「……あなたの個室のドアに手紙を入れておいたけれど、読んでくれた?」
桑田 「読んだよ。……一緒にいた予備学科の女子も見たがってたから読ましたけど、
別にいいよな?」
霧切 「いいわよ。予備学科の方にも広めておきたいから……信じられないでしょうけど、
あの中に書かれていたのは全て真実よ」
桑田 「正直、信じらんねーな。あの記憶も、外の世界のことも。手紙の最初にわざわざ
"身長を測りなおせ"って書いてたよな」
霧切 「私は探偵だから、観察眼が鋭いの。あなたは入学時より2cm伸びていたはずよ」
結局、オレと舞園が殺しあったのは何の意味もなかった。
それだけが確かな事なのかもしれない。
霧切 「……私たちが立ち向かわなければならない敵。それはあの"神蝕"よ。そして、生徒に命がけの
試練を与える学園長も。そのためには、私たち生徒で団結しなければならないわ」
葉隠 「なあ、桑田っち。今すぐ許せとは言わねーけど、舞園っちとのことはしょうがないべ。
ひとまずそのことは置いといて、ってわけにゃいかねーか?」
霧切 「もしかして、77期生たちが怖いの?彼らは更正プログラムを終えているから、もう安全よ。
舞園さんも、あなたには謝っても謝りきれないと泣いているの。彼女のためにもあなたの
方から歩みよるのがいいと思うわ」
葉隠 「ぶっちゃけ、あれは桑田っちも悪いべ。ここはお互い謝って、チャラにすべきだと思うべ」
だから、謝ろうとしたら苗木が割りこんだんだろーが。お前らは中立って言葉知らねーのか。
霧切 「まだ思い出していないかもしれないけど……あなたと苗木君は、かつては親友同士だったのよ。
やり直す理由としては十分だと思うわ」
葉隠 「未来機関のおかげで、苗木っちは全部思い出してるべ。今からでも、昔みたいな仲良しに戻りたいって
思ってる。その気持ちはずっと変わってねーべ。桑田っちと舞園っちを忘れないために、
遺跡のパスワードだって」
桑田 「パスワード?」
葉隠 「"僕を救う為に、舞園さんが残してくれた希望のメッセージだ"って、
11037をパスワードにしたんだべ」
それを聞いた瞬間、オレの頭の中で何かが弾けた。胸のあたりがすうっと冷えていく。
葉隠は「絶望の残党を救うために」だの「桑田っちを覚えているからあの数字を」だの抜かしている。
そりゃねーだろ、苗木。
桑田 「……ざけんなよ」
葉隠 「えっ?」
桑田 「あの数字が、希望のメッセージ?……はっ。苗木のヤツ、頭ん中にケシ畑でも広がってんのか?」
桑田 「あんな一生懸命殺人計画練ってた舞園が!部屋まで交換して、罪をなすりつける気満々のあいつが!!
苗木を助ける?んなコト考えてるわけねーだろ!!自分に気があるの分かってっから利用した!!
そんだけの話を、よくもまあそこまで都合よく考えられんな苗木は!!」
霧切 「桑田くん、落ち着いて。話はまだ終わってないわ」
桑田 「11037なんて、オレにとっちゃ"絶望のメッセージ"なんだよアホ!!そこだけ都合よく忘れて
"仲良しに戻りたい"とか、どの口で言ってんだって話だろ!!!」
葉隠 「いやあ……ぶっちゃけ、俺らはみんな反対したんだわ。だけど苗木っちがどうしてもって」オタオタ
桑田 「人殺しと薄情者なら釣り合ってっけどな……苗木に伝えとけ、
"オレらは関わんねーのが一番いい"ってよ!!」
中指を立てて怒鳴ると、葉隠は気まずそうに目を泳がせた。霧切も黙っている。
オレはそんな二人を置いて、さっさと寄宿舎に戻った。
□ □ □ □ □ □
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
アタマん中、その二文字がぐるぐる回ってる。
なんで首輪を引き剥がそうとしたんだ。おかげで両腕が心臓をガードしちまってて、
死ぬに[ピーーー]ない。心臓が破裂してくれりゃ一発なのに、意識すら飛んでくれない。
(左目、0.03秒。右太もも、その0.06秒後。右肩が砕けるまで、あと4秒)
ぐちゃっと音がした。左目の奥が熱い。利き目やられちまったな。肩もイカれた。
そこでやっと、最後の一発がアタマの横んとこ直撃した。
サイレンが響いて、処刑が終わる。拘束していたベルトが解けて、
体がだらんと下がった。同時に、オレの口から「ゴボッ」と血があふれる。
あいつらはオレが死んだって思ってるみたいだ。生きてっぜ。短けー命だけど。
(あー、早く死にてえなあ……)
体がどんどん冷たくなって行く。残った右目を動かしてみると、視界に黒い点がちらついた。
脳味噌のどっかがやべーのか、折れた右足がぶれて見える。
暗転。
□ □ □ □ □ □
桑田 「――っ、ぶ、はっ!!」
桑田 「ゆ、夢……?」ハァーッ、ハアーッ
一瞬、自分がどこにいるのか分かんなかった。背中が汗だくで気持ち悪い。
電子生徒手帳を見ると、夜の3時だった。
桑田 (……大和田とセレスも今ごろ、うなされてんのかな。あいつらはメンタル強そうだし、
オレが心配することじゃねーか)
個室には野球用具がなかった。つーか、あったのは制服と下着、教科書類だけだった。
シャワールームには歯ブラシセットとタオルが一枚しかない。なめてんのか。
西地区の方も同じらしく、菜摘は「明日の放課後に南地区で買いものすっから、
荷物持ちにしてやってもいいよ」とメールしてきた。
桑田 (まだ小指なくしたくねーしな……行くか)
葉隠 「"僕を救う為に、舞園さんが残してくれた希望のメッセージだ"って、
11037をパスワードにしたんだべ」
それを聞いた瞬間、オレの頭の中で何かが弾けた。胸のあたりがすうっと冷えていく。
葉隠は「絶望の残党を救うために」だの「桑田っちを覚えているからあの数字を」だの抜かしている。
そりゃねーだろ、苗木。
桑田 「……ざけんなよ」
葉隠 「えっ?」
桑田 「あの数字が、希望のメッセージ?……はっ。苗木のヤツ、頭ん中にケシ畑でも広がってんのか?」
桑田 「あんな一生懸命殺人計画練ってた舞園が!部屋まで交換して、罪をなすりつける気満々のあいつが!!
苗木を助ける?んなコト考えてるわけねーだろ!!自分に気があるの分かってっから利用した!!
そんだけの話を、よくもまあそこまで都合よく考えられんな苗木は!!」
霧切 「桑田くん、落ち着いて。話はまだ終わってないわ」
桑田 「11037なんて、オレにとっちゃ"絶望のメッセージ"なんだよアホ!!そこだけ都合よく忘れて
"仲良しに戻りたい"とか、どの口で言ってんだって話だろ!!!」
葉隠 「いやあ……ぶっちゃけ、俺らはみんな反対したんだわ。だけど苗木っちがどうしてもって」オタオタ
桑田 「人殺しと薄情者なら釣り合ってっけどな……苗木に伝えとけ、
"オレらは関わんねーのが一番いい"ってよ!!」
中指を立てて怒鳴ると、葉隠は気まずそうに目を泳がせた。霧切も黙っている。
オレはそんな二人を置いて、さっさと寄宿舎に戻った。
□ □ □ □ □ □
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
アタマん中、その二文字がぐるぐる回ってる。
なんで首輪を引き剥がそうとしたんだ。おかげで両腕が心臓をガードしちまってて、
死ぬに[ピーーー]ない。心臓が破裂してくれりゃ一発なのに、意識すら飛んでくれない。
(左目、0.03秒。右太もも、その0.06秒後。右肩が砕けるまで、あと4秒)
ぐちゃっと音がした。左目の奥が熱い。利き目やられちまったな。肩もイカれた。
そこでやっと、最後の一発がアタマの横んとこ直撃した。
サイレンが響いて、処刑が終わる。拘束していたベルトが解けて、
体がだらんと下がった。同時に、オレの口から「ゴボッ」と血があふれる。
あいつらはオレが死んだって思ってるみたいだ。生きてっぜ。短けー命だけど。
(あー、早く死にてえなあ……)
体がどんどん冷たくなって行く。残った右目を動かしてみると、視界に黒い点がちらついた。
脳味噌のどっかがやべーのか、折れた右足がぶれて見える。
暗転。
□ □ □ □ □ □
桑田 「――っ、ぶ、はっ!!」
桑田 「ゆ、夢……?」ハァーッ、ハアーッ
一瞬、自分がどこにいるのか分かんなかった。背中が汗だくで気持ち悪い。
電子生徒手帳を見ると、夜の3時だった。
桑田 (……大和田とセレスも今ごろ、うなされてんのかな。あいつらはメンタル強そうだし、
オレが心配することじゃねーか)
個室には野球用具がなかった。つーか、あったのは制服と下着、教科書類だけだった。
シャワールームには歯ブラシセットとタオルが一枚しかない。なめてんのか。
西地区の方も同じらしく、菜摘は「明日の放課後に南地区で買いものすっから、
荷物持ちにしてやってもいいよ」とメールしてきた。
桑田 (まだ小指なくしたくねーしな……行くか)
【翌日 一時間目】
教師 『おはようございます、英語の時間です。今日は文法の総復習をしていきましょう。
では教科書を開いて……13ページから』
教室のモニターで英語の先生が喋ってる。それに合わせて、メガネをかけた先生モノクマが
黒板に要点と例文を書いていく。雨で蝕がない日は、フツーに授業があるらしい。
桑田 (ぶっちゃけ勉強とか嫌いだったけど、今はありがたみを噛み締めてるわ。
……こいつらが一緒じゃなきゃ、もっといいんだけどな)
教科書と英語辞書を交互に見て、例文を読む。
そうしてると、余計な事を考えるヒマがないからいい。
十神 「ふん、下らん……こんな低レベルの単元をもう一度やり直せと?」
石丸 「十神君、記憶を定着させるにはこまめな復習が大切だ!僕も思っていたより単語が抜け落ちていて、
驚いているところだぞ!君も単語帳を見返したまえ!」
腐川 「か、完璧を体現なさっている白夜様に、そんな遠回りな勉強法が必要なわけないじゃない……」グフフ
桑田 (こいつらうるせえ……つーか、なんで全員同じ教室なんだよ。気まずいっつーの)
大和田は端っこの机に伏せてるし、セレスと山田はそもそもいない。
あの石丸ですら空気を読んで話しかけて来ないというのが、逆に居心地を悪くしている。
ポイッ
桑田 「ん……なんだこれ、手紙?」ガサッ
『やっほー、江ノ島盾子ちゃんだよ!!放課後に南地区のパン屋行くんだけど、あんたも来ない?』
大和田と舞園も同じ手紙を受けとったらしい。
舞園は「ごめんなさい」と指でバツを作って、大和田は「チッ」とまた顔を伏せた。
なんであの二人を選んだんだよ、特に大和田。
桑田 (つーか、江ノ島って黒幕だったんだろ?あんな気さくでいーのかよ)カリカリ
ポイッ
『わりーけど用事あっからむり』
江ノ島 「あーあ、なんでみんなアタシには冷たいんだろ」しょんぼり
江ノ島 「こうなったら残姉ちゃんでいいや。一緒に「行かない」……しょぼーん……」
【放課後】
桑田 「やっと教室から解放される」グッタリ
桑田 「……あ、南地区行かねーと。まだ指なくしたくねーし」ガタンッ
舞園 「あ、あの……桑田君、話が……」
何か言いたそうにしている舞園の隣に、苗木がくっついてた。お前はこいつのSPか?
桑田 「……苗木がいねーとこだったら話す」
舞園 「!今から食堂で「無理。南地区で約束あっから」……そうですか」
苗木 「約束……っていうことは、誰かと会うの?」
お前に報告する義務でもあんのか、と言いかけたのをこらえて、
「ああ」とだけ答えといた。さっさと教室を出て、電子生徒手帳でマップを見ながら歩く。
中央広場に出た所で『ピピッ』と音がして、ウサミが『サナギ』になった。
桑田 「……かわいくねー」ピッ
電子生徒手帳をかざして、南地区に出るゲートをくぐったそこで、
仁王立ちしている菜摘が目に入った。
教師 『おはようございます、英語の時間です。今日は文法の総復習をしていきましょう。
では教科書を開いて……13ページから』
教室のモニターで英語の先生が喋ってる。それに合わせて、メガネをかけた先生モノクマが
黒板に要点と例文を書いていく。雨で蝕がない日は、フツーに授業があるらしい。
桑田 (ぶっちゃけ勉強とか嫌いだったけど、今はありがたみを噛み締めてるわ。
……こいつらが一緒じゃなきゃ、もっといいんだけどな)
教科書と英語辞書を交互に見て、例文を読む。
そうしてると、余計な事を考えるヒマがないからいい。
十神 「ふん、下らん……こんな低レベルの単元をもう一度やり直せと?」
石丸 「十神君、記憶を定着させるにはこまめな復習が大切だ!僕も思っていたより単語が抜け落ちていて、
驚いているところだぞ!君も単語帳を見返したまえ!」
腐川 「か、完璧を体現なさっている白夜様に、そんな遠回りな勉強法が必要なわけないじゃない……」グフフ
桑田 (こいつらうるせえ……つーか、なんで全員同じ教室なんだよ。気まずいっつーの)
大和田は端っこの机に伏せてるし、セレスと山田はそもそもいない。
あの石丸ですら空気を読んで話しかけて来ないというのが、逆に居心地を悪くしている。
ポイッ
桑田 「ん……なんだこれ、手紙?」ガサッ
『やっほー、江ノ島盾子ちゃんだよ!!放課後に南地区のパン屋行くんだけど、あんたも来ない?』
大和田と舞園も同じ手紙を受けとったらしい。
舞園は「ごめんなさい」と指でバツを作って、大和田は「チッ」とまた顔を伏せた。
なんであの二人を選んだんだよ、特に大和田。
桑田 (つーか、江ノ島って黒幕だったんだろ?あんな気さくでいーのかよ)カリカリ
ポイッ
『わりーけど用事あっからむり』
江ノ島 「あーあ、なんでみんなアタシには冷たいんだろ」しょんぼり
江ノ島 「こうなったら残姉ちゃんでいいや。一緒に「行かない」……しょぼーん……」
【放課後】
桑田 「やっと教室から解放される」グッタリ
桑田 「……あ、南地区行かねーと。まだ指なくしたくねーし」ガタンッ
舞園 「あ、あの……桑田君、話が……」
何か言いたそうにしている舞園の隣に、苗木がくっついてた。お前はこいつのSPか?
桑田 「……苗木がいねーとこだったら話す」
舞園 「!今から食堂で「無理。南地区で約束あっから」……そうですか」
苗木 「約束……っていうことは、誰かと会うの?」
お前に報告する義務でもあんのか、と言いかけたのをこらえて、
「ああ」とだけ答えといた。さっさと教室を出て、電子生徒手帳でマップを見ながら歩く。
中央広場に出た所で『ピピッ』と音がして、ウサミが『サナギ』になった。
桑田 「……かわいくねー」ピッ
電子生徒手帳をかざして、南地区に出るゲートをくぐったそこで、
仁王立ちしている菜摘が目に入った。
菜摘 「遅い!!」
桑田 「はぁ?授業終わってすぐだっつーの」
菜摘 「罰として荷物持ちの刑ね!!」
桑田 「最初っからその予定だろーが!!……つーか今さらだけど、殺人犯とショッピングとか正気かよ」
そう聞くと、菜摘は一瞬だけ無表情になった。
菜摘 「世の中、"殺されても仕方ない奴"だって……いるんじゃない?」
菜摘 「あんたが望むんだったら、"予備学科の底辺にはクズみたいな本科生がお似合いだからだよ"って
言って"あげて"もいいけど……それじゃ、あたしはいよいよ救われないじゃない。
ちょっとでもあたしの事を思いやってくれるんだったら、そういう事言わないでよ」
明るい奴かと思ったら、暗い顔になったり。さっぱりしてんのかと思ったら、劣等感チラ見せしてきたり。
人間ってそんなもんか。清純派アイドルなんて幻想か。
桑田 「分かった、二度と言わねーよ」
菜摘 「うん、それでいいよ。……で、今日はどうしよっか。荷物重くなる予定だし、もう一人ぐらい
助っ人呼ぶ?あたしの字で」ムムム…
"侠(きょう)"
ボンッ…モクモク…
ヤクザA 「お嬢、お呼びですかい?」
ヤクザB 「荷物持ちでしたら、お任せくだせえ!!」
煙の後に出てきたのは、パンチパーマに刺青が入ったイカツい男たちだった。
ヒョウ柄のシャツにジャケットを羽織って、サングラスをかけてる。
893だ。高〇健あたりの映画に出てきそうなオールドファッションのチンピラだ。
オレたちの周りから、少しずつ人が離れていくのが分かる。
菜摘 「じゃあ、行こっか。まずは本屋ね」
ヤクザ 「「御意!!!」」
桑田 「……」
その後は、どこに行っても半額で買えた。
【パン屋:ヘンゼル&グレーテル】
江ノ島 「あれっ、あそこにいんのって桑田じゃん。……あっ、アクセの店入ってった。……出てきた。
なになに?あたしデートにニアミスしちゃってる感じ?」
花村 「んー……金髪の女の子、どっかで見たような見なかったような……」ガシッ
江ノ島 「あーっ!!フレンチトースト取られた!!」ガーン
花村 (!!??えっ、江ノ島盾子さん!?なっ、ななな何でこんな所で!?ぼ、僕何させられるの!?
もう毒入りパイなんて作りたくないよぉぉぉ!!)てるてるてる
江ノ島 「あれ?あんたどっかで……花村センパイ?花村センパイっしょ!"超高校級の料理人"の!!
うっわー、あの花村センパイと喋ってるとかマジ幸運なんだけどー!!」
花村 「えっ、えっ?」
桑田 「はぁ?授業終わってすぐだっつーの」
菜摘 「罰として荷物持ちの刑ね!!」
桑田 「最初っからその予定だろーが!!……つーか今さらだけど、殺人犯とショッピングとか正気かよ」
そう聞くと、菜摘は一瞬だけ無表情になった。
菜摘 「世の中、"殺されても仕方ない奴"だって……いるんじゃない?」
菜摘 「あんたが望むんだったら、"予備学科の底辺にはクズみたいな本科生がお似合いだからだよ"って
言って"あげて"もいいけど……それじゃ、あたしはいよいよ救われないじゃない。
ちょっとでもあたしの事を思いやってくれるんだったら、そういう事言わないでよ」
明るい奴かと思ったら、暗い顔になったり。さっぱりしてんのかと思ったら、劣等感チラ見せしてきたり。
人間ってそんなもんか。清純派アイドルなんて幻想か。
桑田 「分かった、二度と言わねーよ」
菜摘 「うん、それでいいよ。……で、今日はどうしよっか。荷物重くなる予定だし、もう一人ぐらい
助っ人呼ぶ?あたしの字で」ムムム…
"侠(きょう)"
ボンッ…モクモク…
ヤクザA 「お嬢、お呼びですかい?」
ヤクザB 「荷物持ちでしたら、お任せくだせえ!!」
煙の後に出てきたのは、パンチパーマに刺青が入ったイカツい男たちだった。
ヒョウ柄のシャツにジャケットを羽織って、サングラスをかけてる。
893だ。高〇健あたりの映画に出てきそうなオールドファッションのチンピラだ。
オレたちの周りから、少しずつ人が離れていくのが分かる。
菜摘 「じゃあ、行こっか。まずは本屋ね」
ヤクザ 「「御意!!!」」
桑田 「……」
その後は、どこに行っても半額で買えた。
【パン屋:ヘンゼル&グレーテル】
江ノ島 「あれっ、あそこにいんのって桑田じゃん。……あっ、アクセの店入ってった。……出てきた。
なになに?あたしデートにニアミスしちゃってる感じ?」
花村 「んー……金髪の女の子、どっかで見たような見なかったような……」ガシッ
江ノ島 「あーっ!!フレンチトースト取られた!!」ガーン
花村 (!!??えっ、江ノ島盾子さん!?なっ、ななな何でこんな所で!?ぼ、僕何させられるの!?
もう毒入りパイなんて作りたくないよぉぉぉ!!)てるてるてる
江ノ島 「あれ?あんたどっかで……花村センパイ?花村センパイっしょ!"超高校級の料理人"の!!
うっわー、あの花村センパイと喋ってるとかマジ幸運なんだけどー!!」
花村 「えっ、えっ?」
江ノ島 「第三食堂で食べるの楽しみだったんだー!つーか、リクしたらなんでも作ってくれるってマジ?」
花村 「ま、マジだけど……「やりぃ!!んじゃ、今度第三食堂行っから!」……う、うん……」
江ノ島 「あ、そのフレンチトーストはセンパイにあげるよ。どーせあたしはまた来るし。
んじゃ、まったねー」
カランコロンッ
花村 「……行っちゃった。何考えてるんだろ。江ノ島さんって飽きっぽいし、なんかの遊びなのかなあ」
弐大 「むぅぅ……十神か日向あたりに報告しておいた方がよいか」モグモグ
花村 「弐大くん!さっきは男子トイレにこもってたんじゃ……一応聞くけど大きい方?」
弐大 「おう!!クソに決まっとる!!今日はいつになく快便でのう、出したらその分入れねばと思ってな!!」
花村 「飲食店でクソとか大声で言わないでよ。あと"出したらその分入れる"ってとこもう一回お願いしても
いいかな?あと一回で日本語の新たな可能性が開かれそうなんだ!」タラー
カランコロンッ
菜摘 「うっわー、すごい小麦の匂いするね!!んじゃ、はい。あんたは取る係ね」
花村 「あ、さっきの女の子だ……さすがにあの荷物は置いてきたか。店内は狭いからね、賢明な判断だね」
弐大 「無ッ!?もう一人は……本科の桑田だな、予備学科とつるむような奴には見えんが……」
花村 「すごいね、二人とも似たような制服着てるけど、分かるんだ?
もしかしてマニアだったりし「本科の方が生地の質が上だからのう。予備学科のブレザーは
硬くてテカるんじゃあ」……地味に嫌な差別だね……日向くんに聞いたの?」
弐大 「応ッ!たまに忘れるが、あいつも予備学科だからのう!!」ガッハッハッハ
菜摘 「なんかうるさいのいるけど、さっさと買って出ちゃおうか。まずねー、クロックムッシュを二つでしょ。
あとはシナモンロールとあんドーナツとライ麦の」
桑田 「待てっつーの!もっかい最初っから」トングカチカチ
菜摘 「あれっ、そこにいるのって、花村先輩と弐大先輩じゃない?」
花村 「え?君みたいなわがままボディ、一度見たら忘れるはずがないんだけどなあ……」
菜摘 「いやいや、冗談きついって。花村先輩、私と会ってるでしょ?ほら、お正月にお兄ちゃんを
初詣行こうーって誘いにきた時……」
弐大 「ワシも覚えがないのう。どっかで見たような……お兄ちゃんということは、
誰か知り合いの妹だろうが……ううむ」
菜摘 「弐大先輩まで!?ええっ、どうなってんの!?私イメチェンとかしてないし!!
……あーもう、記憶力悪すぎ!私、九頭龍菜摘です!九頭龍冬彦の、妹の!」
次の瞬間、二人は信じられないことを言い出した。
花村 「……え、九頭龍くんって、一人っ子だよ?」
弐大 「九頭龍の家には行ったが……お前と会ったことはないのう」
菜摘 「……え?」
花村 「ま、マジだけど……「やりぃ!!んじゃ、今度第三食堂行っから!」……う、うん……」
江ノ島 「あ、そのフレンチトーストはセンパイにあげるよ。どーせあたしはまた来るし。
んじゃ、まったねー」
カランコロンッ
花村 「……行っちゃった。何考えてるんだろ。江ノ島さんって飽きっぽいし、なんかの遊びなのかなあ」
弐大 「むぅぅ……十神か日向あたりに報告しておいた方がよいか」モグモグ
花村 「弐大くん!さっきは男子トイレにこもってたんじゃ……一応聞くけど大きい方?」
弐大 「おう!!クソに決まっとる!!今日はいつになく快便でのう、出したらその分入れねばと思ってな!!」
花村 「飲食店でクソとか大声で言わないでよ。あと"出したらその分入れる"ってとこもう一回お願いしても
いいかな?あと一回で日本語の新たな可能性が開かれそうなんだ!」タラー
カランコロンッ
菜摘 「うっわー、すごい小麦の匂いするね!!んじゃ、はい。あんたは取る係ね」
花村 「あ、さっきの女の子だ……さすがにあの荷物は置いてきたか。店内は狭いからね、賢明な判断だね」
弐大 「無ッ!?もう一人は……本科の桑田だな、予備学科とつるむような奴には見えんが……」
花村 「すごいね、二人とも似たような制服着てるけど、分かるんだ?
もしかしてマニアだったりし「本科の方が生地の質が上だからのう。予備学科のブレザーは
硬くてテカるんじゃあ」……地味に嫌な差別だね……日向くんに聞いたの?」
弐大 「応ッ!たまに忘れるが、あいつも予備学科だからのう!!」ガッハッハッハ
菜摘 「なんかうるさいのいるけど、さっさと買って出ちゃおうか。まずねー、クロックムッシュを二つでしょ。
あとはシナモンロールとあんドーナツとライ麦の」
桑田 「待てっつーの!もっかい最初っから」トングカチカチ
菜摘 「あれっ、そこにいるのって、花村先輩と弐大先輩じゃない?」
花村 「え?君みたいなわがままボディ、一度見たら忘れるはずがないんだけどなあ……」
菜摘 「いやいや、冗談きついって。花村先輩、私と会ってるでしょ?ほら、お正月にお兄ちゃんを
初詣行こうーって誘いにきた時……」
弐大 「ワシも覚えがないのう。どっかで見たような……お兄ちゃんということは、
誰か知り合いの妹だろうが……ううむ」
菜摘 「弐大先輩まで!?ええっ、どうなってんの!?私イメチェンとかしてないし!!
……あーもう、記憶力悪すぎ!私、九頭龍菜摘です!九頭龍冬彦の、妹の!」
次の瞬間、二人は信じられないことを言い出した。
花村 「……え、九頭龍くんって、一人っ子だよ?」
弐大 「九頭龍の家には行ったが……お前と会ったことはないのう」
菜摘 「……え?」
【夜時間・寄宿舎】
菜摘はパン屋を飛び出して、そのまま戻ってこなかった。
追いかけたほうがいいのかどうか悩んでいると、花村とかいう先輩が「君の彼女?だったら
フォロー頼むよ。僕たちが忘れてるだけかもしれないけど」と困った顔で言ってきた。
桑田 (菜摘が嘘をついてる可能性ってのはない気がする。歩きながら組の話とかしてくれたし、
極道の娘じゃなかったら、あんな字選ばねーだろ)
桑田 (つーと、花村と弐大ってセンパイが嘘ついてるか……でもマジで知らなかったっぽいんだよな。
じゃあ単純に覚えてねーとか?とりあえず今の問題は、菜摘が置いてった荷物どうすっかだな。
西地区には行けねーし、予備学科に知り合いいねーし)
電子生徒手帳を起動させる。新着メールが一件。菜摘から『今日はごめん、荷物は明日ちょうだい』と来てた。
とりあえず昼間のことには触れないほうがいい気がする。
桑田 「んー、"分かった、明日取りに来い"……っと」
桑田 「つーか、九頭龍さんって人に聞けば早いんじゃね?同じ寄宿舎っぽいし」
_____
九頭龍 『ああん?テメー妹の何なんだよ?舐めた事抜かしてっと、東京湾に沈めんぞゴラァ!!!』
九頭龍 『とりあえずどこで知り合ったのか答えろ。指なくす前になあ!!』ギランッ
_____
……やめとこう、死ぬ未来しか見えねー。
菜摘はパン屋を飛び出して、そのまま戻ってこなかった。
追いかけたほうがいいのかどうか悩んでいると、花村とかいう先輩が「君の彼女?だったら
フォロー頼むよ。僕たちが忘れてるだけかもしれないけど」と困った顔で言ってきた。
桑田 (菜摘が嘘をついてる可能性ってのはない気がする。歩きながら組の話とかしてくれたし、
極道の娘じゃなかったら、あんな字選ばねーだろ)
桑田 (つーと、花村と弐大ってセンパイが嘘ついてるか……でもマジで知らなかったっぽいんだよな。
じゃあ単純に覚えてねーとか?とりあえず今の問題は、菜摘が置いてった荷物どうすっかだな。
西地区には行けねーし、予備学科に知り合いいねーし)
電子生徒手帳を起動させる。新着メールが一件。菜摘から『今日はごめん、荷物は明日ちょうだい』と来てた。
とりあえず昼間のことには触れないほうがいい気がする。
桑田 「んー、"分かった、明日取りに来い"……っと」
桑田 「つーか、九頭龍さんって人に聞けば早いんじゃね?同じ寄宿舎っぽいし」
_____
九頭龍 『ああん?テメー妹の何なんだよ?舐めた事抜かしてっと、東京湾に沈めんぞゴラァ!!!』
九頭龍 『とりあえずどこで知り合ったのか答えろ。指なくす前になあ!!』ギランッ
_____
……やめとこう、死ぬ未来しか見えねー。
切ります。
次回は龍に行って、また日向に戻るか、
もしくは二番目だった江ノ島、山セレの話をちょっと書くか。
超高校級の才能が性癖というネタを受信したけど
大和田のバイクしか思いつかなくて詰んでいる。
次回は龍に行って、また日向に戻るか、
もしくは二番目だった江ノ島、山セレの話をちょっと書くか。
超高校級の才能が性癖というネタを受信したけど
大和田のバイクしか思いつかなくて詰んでいる。
乙
江ノ島もだが予備学科関連の記憶がないのか?
一人一人丁寧にやると話進まないから江ノ島とかセレスは部分的にチラッとだけ見たい
江ノ島もだが予備学科関連の記憶がないのか?
一人一人丁寧にやると話進まないから江ノ島とかセレスは部分的にチラッとだけ見たい
江ノ島は後半でちょっと重要な感じなので、小出しにするよー。
次からはまた日向に戻るよ。本編に関わってくるキャラはザッピングしてくかな。
ならかようちえんのパロも、レスが許す限りやってみたい。
_________
神蝕まであと1分。
葉隠 「むむむ……」キュピーン
"予(よ)"
葉隠 「見えた!!今日の蝕はかなり変わったのが来るべ!!」
十神 「ほう、貴様が言うなら間違いあるまい。なにせ的中率十割だ」
オレの隣で、的中率のテストに使っていたトランプを片づけている十神が満足そうにしていた。
葉隠の文字は未来予知ができるらしい。「もっと早くこの文字があったらダブんなかったべ」とか
くだんねー事を抜かしてる。競馬とか株とかやった方が借金返せていいんじゃねーの。
十神 「……で、どんな映像が見えた」
葉隠 「まず、森だな。学園の中にゃねー森が見えた。あと、白い扉があったべ。最後に、空を龍が飛んでるのが
見えたな。あ、オレと十神っち、あと予備学科っぽい男子が一緒にいたべ」
十神 「ふん……今日の蝕は一筋縄ではいかなそうだな」
霧切 「神蝕についてのデータが増えるのはありがたいわ。覚悟して行きましょう」
不二咲 「やるしかないんだ……頑張らなくちゃ……だって僕は男の子なんだから……」ガチガチ
大和田 「今度こそ……今度こそ、ちゃんと[ピーーー]……ちゃんと……」ブツブツ
山田 「それでも多恵子殿なら……多恵子殿ならきっとなんとかしてくれる……」ブルブル
安広 「……できうる限りの力で、守ってさしあげますわよ。あなたがいなければ、
誰がわたくしのティータイムをしつらえてくれますの?」
山田 「た、多恵子殿ぉぉ!!それはツンデレという奴ですか!?」
安広 「そっちで呼ぶなつってんだろーが腐れラードがぁぁ!!よそよそしく安広って呼べってんだよ!!」
桑田 (こいつら、マジで生き残る気あんのか?)
時計の針が『カチッ』と12の所を指した瞬間、視界が真っ白になった。
【桑田怜恩:Chapter2『龍』】
『……い、ちゃん……お兄ちゃん……』
『起きて……怜恩お兄ちゃん……』
『もう始まってるんだよ、早く!』
桑田 「……花音?」
目が覚めると、背中に固い樹の感触があった。
桑田 「んなトコにいるわけねーか……つーかここ森だよな。東地区に森なんかあったっけ」
立ち上がって制服の土を払うと、電子生徒手帳で地図を見る。空から『カチッ』と音がした。
見上げると、五ケタの数字が入ったスロットが浮かんでる。何だ、あれ?
次からはまた日向に戻るよ。本編に関わってくるキャラはザッピングしてくかな。
ならかようちえんのパロも、レスが許す限りやってみたい。
_________
神蝕まであと1分。
葉隠 「むむむ……」キュピーン
"予(よ)"
葉隠 「見えた!!今日の蝕はかなり変わったのが来るべ!!」
十神 「ほう、貴様が言うなら間違いあるまい。なにせ的中率十割だ」
オレの隣で、的中率のテストに使っていたトランプを片づけている十神が満足そうにしていた。
葉隠の文字は未来予知ができるらしい。「もっと早くこの文字があったらダブんなかったべ」とか
くだんねー事を抜かしてる。競馬とか株とかやった方が借金返せていいんじゃねーの。
十神 「……で、どんな映像が見えた」
葉隠 「まず、森だな。学園の中にゃねー森が見えた。あと、白い扉があったべ。最後に、空を龍が飛んでるのが
見えたな。あ、オレと十神っち、あと予備学科っぽい男子が一緒にいたべ」
十神 「ふん……今日の蝕は一筋縄ではいかなそうだな」
霧切 「神蝕についてのデータが増えるのはありがたいわ。覚悟して行きましょう」
不二咲 「やるしかないんだ……頑張らなくちゃ……だって僕は男の子なんだから……」ガチガチ
大和田 「今度こそ……今度こそ、ちゃんと[ピーーー]……ちゃんと……」ブツブツ
山田 「それでも多恵子殿なら……多恵子殿ならきっとなんとかしてくれる……」ブルブル
安広 「……できうる限りの力で、守ってさしあげますわよ。あなたがいなければ、
誰がわたくしのティータイムをしつらえてくれますの?」
山田 「た、多恵子殿ぉぉ!!それはツンデレという奴ですか!?」
安広 「そっちで呼ぶなつってんだろーが腐れラードがぁぁ!!よそよそしく安広って呼べってんだよ!!」
桑田 (こいつら、マジで生き残る気あんのか?)
時計の針が『カチッ』と12の所を指した瞬間、視界が真っ白になった。
【桑田怜恩:Chapter2『龍』】
『……い、ちゃん……お兄ちゃん……』
『起きて……怜恩お兄ちゃん……』
『もう始まってるんだよ、早く!』
桑田 「……花音?」
目が覚めると、背中に固い樹の感触があった。
桑田 「んなトコにいるわけねーか……つーかここ森だよな。東地区に森なんかあったっけ」
立ち上がって制服の土を払うと、電子生徒手帳で地図を見る。空から『カチッ』と音がした。
見上げると、五ケタの数字が入ったスロットが浮かんでる。何だ、あれ?
苗木 「舞園さん、足元気をつけて……あれ、桑田クン?」ガサッ
舞園 「えっ……どうしてここに?」
茂みから出てきたのは、今一番会いたくねー二人だった。
「さっき目覚めたんだよ」とだけ答えて電子生徒手帳をしまうと、苗木が気まずそうに視線を泳がせる。
しばらく無言でお互いの顔を見ていると、舞園が「歩いてみませんか?」と道を指さした。
苗木 「あの……葉隠クンに聞いたんだけど、今日の蝕は、三人一組でクリアしなきゃいけないらしいんだ。
だから……とりあえず今だけは、僕達と協力してくれないかな。話すのはその後で……」
桑田 「……分かった」
苗木 「よかった……あ、僕の文字まだ見せてないよね」
歩きながら、苗木は制服をまくって腰にある『望』を見せた。
舞園 「私の文字は……ちょっと、恥ずかしい所にあって……"歌"という字です。
声を弾丸のように放つことができるんですよ」
胸のあたりをおさえた舞園は「敵は、まかせてください」と付け加えて、思いつめたみたいな表情をした。
てくてく歩いている間、何も出てこない。ひょっとしてこのまま出口まで行けるんじゃね?ってぐらい。
道が終わると、その先に白い扉があった。
桑田 「あ、あれ……葉隠が言ってたやつか?」
苗木 「うん。だったら次は……『我は龍』……喋った!!?」
白龍 『この試練を生き延びたくば、我を倒し、この中にある鍵を手に入れよ。そなたらの持つ
"力"か、"知恵"か。それにて道を示したまえ』
桑田 「……オレの文字で開けられっかな」カッ
"出(いずる)"
オレの手から出た文字は、扉に吸いこまれると同時に消えていった。
桑田 「んだよ、肝心な時に役たたねー字だな……ん」
『この扉は、偽物だ……本物は元きた道の向こうにある』
苗木 「何か聞こえた?」
桑田 「なんでもねーよ……多分幻聴だろ」
舞園 「力か、知恵……力は文字のことだと思うんですけど、知恵は何でしょう?」
苗木 「多分、鍵の位置を見つけ出せってことじゃないかな。霧切さんみたいに、弱点を
見つけ出せる文字を持ってる人もいるだろうし……」
桑田 「お前の文字はどうなんだよ」
苗木 「うん。僕の字は、相手の願望を読みとる能力なんだ。
龍はきっと、僕達に鍵を奪われたくないはずだから……そうか!」カッ
"望(ぼう)"
苗木の文字が発動した瞬間、龍の腹のあたりが透けて小さい鍵が見えた。
舞園 「えっ……どうしてここに?」
茂みから出てきたのは、今一番会いたくねー二人だった。
「さっき目覚めたんだよ」とだけ答えて電子生徒手帳をしまうと、苗木が気まずそうに視線を泳がせる。
しばらく無言でお互いの顔を見ていると、舞園が「歩いてみませんか?」と道を指さした。
苗木 「あの……葉隠クンに聞いたんだけど、今日の蝕は、三人一組でクリアしなきゃいけないらしいんだ。
だから……とりあえず今だけは、僕達と協力してくれないかな。話すのはその後で……」
桑田 「……分かった」
苗木 「よかった……あ、僕の文字まだ見せてないよね」
歩きながら、苗木は制服をまくって腰にある『望』を見せた。
舞園 「私の文字は……ちょっと、恥ずかしい所にあって……"歌"という字です。
声を弾丸のように放つことができるんですよ」
胸のあたりをおさえた舞園は「敵は、まかせてください」と付け加えて、思いつめたみたいな表情をした。
てくてく歩いている間、何も出てこない。ひょっとしてこのまま出口まで行けるんじゃね?ってぐらい。
道が終わると、その先に白い扉があった。
桑田 「あ、あれ……葉隠が言ってたやつか?」
苗木 「うん。だったら次は……『我は龍』……喋った!!?」
白龍 『この試練を生き延びたくば、我を倒し、この中にある鍵を手に入れよ。そなたらの持つ
"力"か、"知恵"か。それにて道を示したまえ』
桑田 「……オレの文字で開けられっかな」カッ
"出(いずる)"
オレの手から出た文字は、扉に吸いこまれると同時に消えていった。
桑田 「んだよ、肝心な時に役たたねー字だな……ん」
『この扉は、偽物だ……本物は元きた道の向こうにある』
苗木 「何か聞こえた?」
桑田 「なんでもねーよ……多分幻聴だろ」
舞園 「力か、知恵……力は文字のことだと思うんですけど、知恵は何でしょう?」
苗木 「多分、鍵の位置を見つけ出せってことじゃないかな。霧切さんみたいに、弱点を
見つけ出せる文字を持ってる人もいるだろうし……」
桑田 「お前の文字はどうなんだよ」
苗木 「うん。僕の字は、相手の願望を読みとる能力なんだ。
龍はきっと、僕達に鍵を奪われたくないはずだから……そうか!」カッ
"望(ぼう)"
苗木の文字が発動した瞬間、龍の腹のあたりが透けて小さい鍵が見えた。
苗木 「……やっぱり。"鍵を隠したい"という龍の望みが読めたんだ」
桑田 「で、どうすんだよ。見つかったら後は出すだけだろ」
舞園 「私が歌います。お腹のあたりですよね。そこを狙って撃てば……二人とも、念のために
耳は塞いでおいてください。私、まだ文字の使い方がよく分からないんです」
言われたとおりに耳を塞ぐ。舞園は龍に少し近づいて、口を大きく開けた。
"歌(うた)"
空気が、震えた。
音にすると「あ」でしかないのに、舞園が伸びやかな声で歌い上げると、それに合わせて光の弾丸が撃ち出される。
一分も経たないうちに、龍は穴だらけになって煙を出してた。
鍵を取った苗木は「やったよ!」と嬉しそうにしてる。
桑田 「あーあ、オレだけ何の役にもたってねーな。マジだっせえ……」ガシャガシャ
舞園 「そんなこと……三人で無事に出られるだけで、私は」
苗木 「じゃあ、開けるよ」ガチャッ
扉が開いた先は、希望ヶ峰学園の校庭に繋がっていた。見覚えのない校舎だな、と思って。
あー、予備学科かと納得する。菜摘が言ってたけど、マジで予備学科はフツーの学校なんだな。
桑田 (せっかく西地区来れたし、やっぱホラーハウス行くかな)
そんな事を考えてるオレに、舞園が近づいてきて「お願いです」と頭を下げた。
舞園 「桑田くん、私に……罪を償う権利をください」
桑田 「始ん時からずっと考えてたんだけどよ……やっぱ、オレが悪い。お前に殺される理由を
作ったのも、逆上して刺したのも、全部オレ次第だったって事だろ。だからもういいんだよ」
舞園 「でもっ…それは、私だって同じです!いいえ、むしろ私の方が……下らない理由であなたに
目をつけて、包丁を持ち出して部屋を交換するまで、あんなに時間があったのに!殺されかけて
動揺しているあなたより、ずっと……!そこで思い止まらなかった、私の方が……」
桑田 「やめろよ、もうオレが全部悪いってことでいいだろ。学級裁判でそういう事になったんだからよ。
……だから、もう話しかけてk「それはダメだよ!!」
ああ、やっぱり。
こいつは。
苗木 「……もう、許してあげてよ……二人とも十分に苦しんだんだから……これ以上
自分を傷つけるような真似はしないでよ。舞園さんは悪くないし、もちろん桑田クンだけが
悪いわけじゃないんだよ。悪いのは全部黒幕なんだ。僕達にコロシアイをさせた奴なんだよ!!」
オレを、自分でも気づかない所で憎んでいるのか。
桑田 「じゃあ、あの"希望のメッセージ"はどうなんだよ?」
苗木 「えっ?」
桑田 「オメーが遺跡のパスワードにした数字だよ。……オメーのアタマん中からは、舞園にハメられた事実が
スッポ抜けてる、その時点でオレと舞園の価値を天秤にかけてんじゃねーか!!
舞園さん、舞園さん、舞園さん!!本当に親友だったって言うんなら、なんでオメーは舞園しか
見てねーんだよ!!」
やべーな、言葉が止まんねー。
桑田 「で、どうすんだよ。見つかったら後は出すだけだろ」
舞園 「私が歌います。お腹のあたりですよね。そこを狙って撃てば……二人とも、念のために
耳は塞いでおいてください。私、まだ文字の使い方がよく分からないんです」
言われたとおりに耳を塞ぐ。舞園は龍に少し近づいて、口を大きく開けた。
"歌(うた)"
空気が、震えた。
音にすると「あ」でしかないのに、舞園が伸びやかな声で歌い上げると、それに合わせて光の弾丸が撃ち出される。
一分も経たないうちに、龍は穴だらけになって煙を出してた。
鍵を取った苗木は「やったよ!」と嬉しそうにしてる。
桑田 「あーあ、オレだけ何の役にもたってねーな。マジだっせえ……」ガシャガシャ
舞園 「そんなこと……三人で無事に出られるだけで、私は」
苗木 「じゃあ、開けるよ」ガチャッ
扉が開いた先は、希望ヶ峰学園の校庭に繋がっていた。見覚えのない校舎だな、と思って。
あー、予備学科かと納得する。菜摘が言ってたけど、マジで予備学科はフツーの学校なんだな。
桑田 (せっかく西地区来れたし、やっぱホラーハウス行くかな)
そんな事を考えてるオレに、舞園が近づいてきて「お願いです」と頭を下げた。
舞園 「桑田くん、私に……罪を償う権利をください」
桑田 「始ん時からずっと考えてたんだけどよ……やっぱ、オレが悪い。お前に殺される理由を
作ったのも、逆上して刺したのも、全部オレ次第だったって事だろ。だからもういいんだよ」
舞園 「でもっ…それは、私だって同じです!いいえ、むしろ私の方が……下らない理由であなたに
目をつけて、包丁を持ち出して部屋を交換するまで、あんなに時間があったのに!殺されかけて
動揺しているあなたより、ずっと……!そこで思い止まらなかった、私の方が……」
桑田 「やめろよ、もうオレが全部悪いってことでいいだろ。学級裁判でそういう事になったんだからよ。
……だから、もう話しかけてk「それはダメだよ!!」
ああ、やっぱり。
こいつは。
苗木 「……もう、許してあげてよ……二人とも十分に苦しんだんだから……これ以上
自分を傷つけるような真似はしないでよ。舞園さんは悪くないし、もちろん桑田クンだけが
悪いわけじゃないんだよ。悪いのは全部黒幕なんだ。僕達にコロシアイをさせた奴なんだよ!!」
オレを、自分でも気づかない所で憎んでいるのか。
桑田 「じゃあ、あの"希望のメッセージ"はどうなんだよ?」
苗木 「えっ?」
桑田 「オメーが遺跡のパスワードにした数字だよ。……オメーのアタマん中からは、舞園にハメられた事実が
スッポ抜けてる、その時点でオレと舞園の価値を天秤にかけてんじゃねーか!!
舞園さん、舞園さん、舞園さん!!本当に親友だったって言うんなら、なんでオメーは舞園しか
見てねーんだよ!!」
やべーな、言葉が止まんねー。
苗木 「ち、違う……僕は、そんなつもりじゃない!!」
桑田 「じゃあ、どんなつもりなんだよ?オメーは偉そうな事言っても結局、好きな女一人しか
引きずってねーんだよ!!悪いのは全部黒幕だっつったけどよ、舞園がオメーを救うために
遺したメッセージだってんなら、オレが全部の罪を被ることになんだろーが!!オレの中にある
色んな気持ちはどこに持ってきゃいーんだよ!?」
苗木 「そんな……僕はただ、前みたいに……友達に戻りたかった、だけで」
舞園 「あ、待って……桑田くん!」
腕をつかまれたのを、反射的に振り払う。
舞園は泣きそうな顔で手を引っこめて、そのまま地面にしゃがみこんだ。
朝礼台の近くまで来たところで、菜摘がじっと見てくるのに気づく。
菜摘 「……」
桑田 「菜摘?お前、いつから見て……」ぐいっ
菜摘は無言でオレの腕を引っぱって、そのままずんずん歩いて行く。
取り残された二人はいきなりの乱入にぽかんとしてた。
菜摘 「あの舞園って女を"許す"のが怖いんでしょ。……自分が悪くないって正当化するみたいで。
だったらいっそ、許さなきゃいい。あの女のことも……自分のことも」
オレを引っぱる菜摘の右手に、青い欠片が握られている。
菜摘 「あたし……ううん、私もそうだから。あんたが思ってるような女の子じゃないんだよ、私は。
何で今なんだろ……何でこんな、取り返しのつかなくなった後に"分かる"んだろうって思うの。
自分で、自分が嫌になる……あんたも同じだから、苗木に怒鳴ったんでしょ?」
桑田 「半分八つ当たりだよ……苗木なんか本当はどうでもいい」
菜摘 「だったらもう逃げよう。逃げて、楽になろうよ。私もあんたも、多分本当には
許してもらえないんだから。うわべだけ受け入れられたって、辛いだけじゃない」
桑田 「そう……だな」
ちら、と後ろを振り返る。
霧切が小泉先輩に迫られて、首を横に振っていた。小泉先輩は両手で顔を覆って、しくしく泣き出す。
菜摘 「独りぼっち同士で傷を舐め合うくらい、許してくれるよね。お兄ちゃん……」
桑田 「じゃあ、どんなつもりなんだよ?オメーは偉そうな事言っても結局、好きな女一人しか
引きずってねーんだよ!!悪いのは全部黒幕だっつったけどよ、舞園がオメーを救うために
遺したメッセージだってんなら、オレが全部の罪を被ることになんだろーが!!オレの中にある
色んな気持ちはどこに持ってきゃいーんだよ!?」
苗木 「そんな……僕はただ、前みたいに……友達に戻りたかった、だけで」
舞園 「あ、待って……桑田くん!」
腕をつかまれたのを、反射的に振り払う。
舞園は泣きそうな顔で手を引っこめて、そのまま地面にしゃがみこんだ。
朝礼台の近くまで来たところで、菜摘がじっと見てくるのに気づく。
菜摘 「……」
桑田 「菜摘?お前、いつから見て……」ぐいっ
菜摘は無言でオレの腕を引っぱって、そのままずんずん歩いて行く。
取り残された二人はいきなりの乱入にぽかんとしてた。
菜摘 「あの舞園って女を"許す"のが怖いんでしょ。……自分が悪くないって正当化するみたいで。
だったらいっそ、許さなきゃいい。あの女のことも……自分のことも」
オレを引っぱる菜摘の右手に、青い欠片が握られている。
菜摘 「あたし……ううん、私もそうだから。あんたが思ってるような女の子じゃないんだよ、私は。
何で今なんだろ……何でこんな、取り返しのつかなくなった後に"分かる"んだろうって思うの。
自分で、自分が嫌になる……あんたも同じだから、苗木に怒鳴ったんでしょ?」
桑田 「半分八つ当たりだよ……苗木なんか本当はどうでもいい」
菜摘 「だったらもう逃げよう。逃げて、楽になろうよ。私もあんたも、多分本当には
許してもらえないんだから。うわべだけ受け入れられたって、辛いだけじゃない」
桑田 「そう……だな」
ちら、と後ろを振り返る。
霧切が小泉先輩に迫られて、首を横に振っていた。小泉先輩は両手で顔を覆って、しくしく泣き出す。
菜摘 「独りぼっち同士で傷を舐め合うくらい、許してくれるよね。お兄ちゃん……」
□ □ □ □ □ □
ゴミ袋を持ってランドリーに行くと、テーブルの上に水晶玉があった。まあ、また葉隠なんだろうな。
桑田 「因縁のアイテム再び……ってか」
オレは水晶玉を拾って、忘れ物ボックスに投げこんだ。
持ってきたゴミ袋の口をしっかり結び直して、『リサイクル』と書かれた箱に突っこむ。
桑田 「……全部オレが悪い」
学級裁判でも着ていた白いジャケットと、血しぶき柄のシャツ。
ズボンもリングも全部外して、ゴミ袋に突っこんだ。最後に、ポケットに入れていた
南京錠のネックレスをリサイクル箱へ投げこむ。
桑田 「じゃあな、舞園……これで終わりだ」
終わった。
何が『終わった』のかは分からないけど、とりあえずそう思った。
いくらお前らがオレを許したって、受け入れようとしたって。それはオレを苛むだけだ。
だからただ、独りでいればいい。
【To be continue】
___________
桑田編、一旦終了。ヒナタ ヘ モドル→
ゴミ袋を持ってランドリーに行くと、テーブルの上に水晶玉があった。まあ、また葉隠なんだろうな。
桑田 「因縁のアイテム再び……ってか」
オレは水晶玉を拾って、忘れ物ボックスに投げこんだ。
持ってきたゴミ袋の口をしっかり結び直して、『リサイクル』と書かれた箱に突っこむ。
桑田 「……全部オレが悪い」
学級裁判でも着ていた白いジャケットと、血しぶき柄のシャツ。
ズボンもリングも全部外して、ゴミ袋に突っこんだ。最後に、ポケットに入れていた
南京錠のネックレスをリサイクル箱へ投げこむ。
桑田 「じゃあな、舞園……これで終わりだ」
終わった。
何が『終わった』のかは分からないけど、とりあえずそう思った。
いくらお前らがオレを許したって、受け入れようとしたって。それはオレを苛むだけだ。
だからただ、独りでいればいい。
【To be continue】
___________
桑田編、一旦終了。ヒナタ ヘ モドル→
日向 「なんか、夢みたいだな……お前らと一緒に授業を受けてるっていうのが」
左右田 「この状況でよくそんな呑気な感想が出るなオメーは」
前の席の左右田は、「いつ蝕が来るかと思うと、おちおち授業も聞いてらんねーよ」と
教科書に落書きしながらぼやいている。お前も十分余裕だと思うのは気のせいか?
左右田 「つーかよお。オメーは勉強しなくていいんじゃね?ほら、カムクラさんにチェンジして
ちょいちょいっと……」
日向 「言っただろ。あいつは消えたって。心のどっかに穴が空いたみたいな、変な気分だけどな」
『龍』が終わって三日。
俺たち77期生(俺を加えていいのかどうかは微妙な所だが)の日常は変わった。
まず一つ目。
江ノ島 「やっほー、センパイ方!!」ガラッ
ソニア 「あら、いらっしゃいまし江ノ島さん。その手に持ってらっしゃるダンボールは……」
江ノ島 「体育のジャージだよ!明日は78期生と合同で体力測定だから、届けに来たってわけ!」ピースッ
罪木 「じ、じゃあ私が配っておきますねぇ……っとと、重いぃ…!」グラッ
澪田 「和一ちゃん、ヘルプっす!」
左右田 「なんでオレ名指し!?」
江ノ島 「ほらほら!早くしないと、罪木センパイがまた思春期男子に優しくないポーズになっちゃうよー?」
左右田 「だーっ、くそ!なんでいつも力仕事オレなんだよ!!」ガシッ
罪木 「ふゆぅ…ごめんなさいぃ!もっと鍛えますから、牛乳雑巾だけは勘弁してくださいぃ!!」
ソニアたちの努力によって、江ノ島盾子がちょくちょく遊びに来るようになった。
絶望時代にやっていた、ダーツの刺さった地点の住人を血祭りにあげる遊び……じゃなく、
トランプをしたり、ファッション雑誌を一緒に眺めたり。そんな健全な遊びをしている。
左右田 「この状況でよくそんな呑気な感想が出るなオメーは」
前の席の左右田は、「いつ蝕が来るかと思うと、おちおち授業も聞いてらんねーよ」と
教科書に落書きしながらぼやいている。お前も十分余裕だと思うのは気のせいか?
左右田 「つーかよお。オメーは勉強しなくていいんじゃね?ほら、カムクラさんにチェンジして
ちょいちょいっと……」
日向 「言っただろ。あいつは消えたって。心のどっかに穴が空いたみたいな、変な気分だけどな」
『龍』が終わって三日。
俺たち77期生(俺を加えていいのかどうかは微妙な所だが)の日常は変わった。
まず一つ目。
江ノ島 「やっほー、センパイ方!!」ガラッ
ソニア 「あら、いらっしゃいまし江ノ島さん。その手に持ってらっしゃるダンボールは……」
江ノ島 「体育のジャージだよ!明日は78期生と合同で体力測定だから、届けに来たってわけ!」ピースッ
罪木 「じ、じゃあ私が配っておきますねぇ……っとと、重いぃ…!」グラッ
澪田 「和一ちゃん、ヘルプっす!」
左右田 「なんでオレ名指し!?」
江ノ島 「ほらほら!早くしないと、罪木センパイがまた思春期男子に優しくないポーズになっちゃうよー?」
左右田 「だーっ、くそ!なんでいつも力仕事オレなんだよ!!」ガシッ
罪木 「ふゆぅ…ごめんなさいぃ!もっと鍛えますから、牛乳雑巾だけは勘弁してくださいぃ!!」
ソニアたちの努力によって、江ノ島盾子がちょくちょく遊びに来るようになった。
絶望時代にやっていた、ダーツの刺さった地点の住人を血祭りにあげる遊び……じゃなく、
トランプをしたり、ファッション雑誌を一緒に眺めたり。そんな健全な遊びをしている。
西園寺 「……」
小泉 「日寄子ちゃん?」
西園寺 「……へっ?な、なに?」
小泉 「ううん、最近元気がないから、どうしたのかなって」
西園寺 「別に元気だけど?ただちょっと、考え事してるだけ」
小泉 「そっか……私にできることなら、いつでもしてあげるから。一人で抱えこむのだけはやめてね」
西園寺 「うん……」
二つ目。
西園寺はよく物思いに耽るようになった。『龍』の後は罪木からも距離を置いて、一人でじっと
何か考えこんでいる。なんか物足りないと思っていたら、あいつの暴言がないんだな。
日向 「なあ、西園寺……」
西園寺 「何。日向おにぃに喋る許可あげた覚えないんだけど?わたしの時間を消費するんだから、
それなりの用事なんでしょうね」
日向 「お前は、よくも悪くも裏表がないんだ。そこが美点でもあるんだから、俺たちにもっと
見せて欲しいんだけどな」
西園寺 「……それが、わたしを苦しめても?」
日向 「孤立も覚悟しての事だと、絶望していた頃のお前はのたまってたぞ」
西園寺 「……あんな、人間の汚い所寄せ集めたみたいな人たちでも、やっぱりわたしの家族だったんだよね。
わたしのいい所も、悪い所も、あいつらの雛形から出来たんだって、分かってたのに。
もうこの世にいないって思うと、せいせいするけど……ちょっと寂しいよ」
学園長の話が本当だったら、生きてるんだけど。もう一回殺してやろうかな。
西園寺はそう言って、また窓の外を眺めた。これ以上話はできそうにないな……。
小泉 「ねえ日向、大丈夫かな。日寄子ちゃん……強いように見えて、本当は誰よりも脆い子だから、
すごく心配なんだけど……」
日向 「あいつの意思を尊重して、成長を信じてやるのも友達の務めじゃないのか?」
小泉 「……そう、だよね。うん……そうでなきゃ」ニコッ
俺たちは、さらに深い闇の中にいた。
_______
今日はここまで。
小泉 「日寄子ちゃん?」
西園寺 「……へっ?な、なに?」
小泉 「ううん、最近元気がないから、どうしたのかなって」
西園寺 「別に元気だけど?ただちょっと、考え事してるだけ」
小泉 「そっか……私にできることなら、いつでもしてあげるから。一人で抱えこむのだけはやめてね」
西園寺 「うん……」
二つ目。
西園寺はよく物思いに耽るようになった。『龍』の後は罪木からも距離を置いて、一人でじっと
何か考えこんでいる。なんか物足りないと思っていたら、あいつの暴言がないんだな。
日向 「なあ、西園寺……」
西園寺 「何。日向おにぃに喋る許可あげた覚えないんだけど?わたしの時間を消費するんだから、
それなりの用事なんでしょうね」
日向 「お前は、よくも悪くも裏表がないんだ。そこが美点でもあるんだから、俺たちにもっと
見せて欲しいんだけどな」
西園寺 「……それが、わたしを苦しめても?」
日向 「孤立も覚悟しての事だと、絶望していた頃のお前はのたまってたぞ」
西園寺 「……あんな、人間の汚い所寄せ集めたみたいな人たちでも、やっぱりわたしの家族だったんだよね。
わたしのいい所も、悪い所も、あいつらの雛形から出来たんだって、分かってたのに。
もうこの世にいないって思うと、せいせいするけど……ちょっと寂しいよ」
学園長の話が本当だったら、生きてるんだけど。もう一回殺してやろうかな。
西園寺はそう言って、また窓の外を眺めた。これ以上話はできそうにないな……。
小泉 「ねえ日向、大丈夫かな。日寄子ちゃん……強いように見えて、本当は誰よりも脆い子だから、
すごく心配なんだけど……」
日向 「あいつの意思を尊重して、成長を信じてやるのも友達の務めじゃないのか?」
小泉 「……そう、だよね。うん……そうでなきゃ」ニコッ
俺たちは、さらに深い闇の中にいた。
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今日はここまで。
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