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    元スレ叔母「今日からココに住んで」男「ラブホテルで?」

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    301 : 以下、名無しにか - 2017/02/05(日) 16:51:48.38 ID:Snb+A6f2O (+24,+29,-31)
    >「ラブホテルに住まわせてる人のセリフじゃ無いなあ!?」
    確かにww

    アメリカにこいってことはパスポートやら色々手続きしたあとか?
    302 : 以下、名無しにか - 2017/02/09(木) 03:17:37.20 ID:Xa+/2vcUo (+22,+29,-37)
    よくいる自己主張のみ無能主人公なら保護者に逆らってんじゃねぇと思うが
    自活出来る高校生(+養育実績がある親類が居る)なんだから
    糞親なんかガン無視でおk
    303 : 以下、名無しにか - 2017/02/13(月) 03:43:10.21 ID:Nb1J8qxwO (+24,+29,-56)
    それができるなら主人公もここまでショック受けんだろ
    法律に載っとりやってきたらラブホテルに住ませてる以上勝ち目ねーべ
    304 : 以下、名無しにか - 2017/03/14(火) 11:00:52.75 ID:NbtXjO2IO (-23,-11,-4)
    保守
    305 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:20:38.14 ID:qigM/ANOO (+33,+30,+0)
    『――してやられた』

    『私が有利だと高をくくってた。まさか、ババアの遺言を引っ張ってくるとは』

    叔母「遺言?」

    『そう。私の母親のやつ』

    『目敏いったらありゃしない、ふつうそんなの把握してるか? …するか、アイツなら』

    叔母「義姉さん。要約すると、つまり…」

    『ああ、アメリカで愛人と住んでる馬鹿に親権取られた。『婿養子が育て親に」ってチンケな遺言程度で』

    叔母「親からの信頼度なさ過ぎませんか…」

    『親の会社を独断で奪った時点で見限られてるよ。んで期限はどれくらいよ、妹ちゃん』

    叔母「……、四日です」

    『は~あ、うん。なるほど、手早く引っ張り込みてーようで』

    叔母「せっかちな兄貴らしい魂胆ですね」

    『そいでアイツは受け止め切れてんの?』

    叔母「私が見る限りでは。彼は問題なく準備を進めてるようです」

    『カカッ! そうかい、最近ふぬけたとばっかり思ったけどよ。なら安心だ』

    叔母「………」

    『じゃあさ、こっちの国で最後のアイツを見届けてやってよ、妹ちゃん』

    叔母「見送りには来ないんですか?」

    『雰囲気しらけちゃう気がするし、仕事でもやって慰謝料頑張って稼いどく』
    306 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:22:23.38 ID:qigM/ANOO (+35,+30,-221)
    叔母「…そうですか」

    叔母「……」

    叔母「その、ちなみになんですか。差し支えなければお聞きしたいのですが」

    『あん?』

    叔母「今まで知り得なかったので興味本位程度なんですが、今回の離婚の直接的な原因とは?」

    『私の浮気だけど?』

    叔母「ぇぇ…」

    『んだよ、テメーかまととぶりやがって。浮気ぐらいするわ、数年前から夫婦観乾ききってたわ、若い男囲いたかったんだわ』

    叔母「…敢えて聞きますけど、何故、兄貴と結婚されたんです?」

    『金』

    叔母「身もふたもない理由ですね」

    『ハン。妹ちゃん、アンタも意外とミーハー思考なんだなぁ。他人のゴシップ気にするタイプとはお姉ちゃん思わなかったよ』

    『――理由なんて、なんだって良いんだ。離婚する、ただそれだけが現実であって、理由や原因なんて他人が求めるちっこい正当性だろ?』

    叔母「つまり?」

    『藪を突くな。蛇どころか鬼以上の厄介ごとが飛び出すってぇこと』

    叔母「……肝に銘じます」
    307 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:23:26.78 ID:qigM/ANOO (+35,+30,-259)
    ~数十分後~


    『じゃ、あと頼んだぜ。書類等は四日後の朝には済ませるって、息子に伝えといて』

    叔母「わかりました。では」

    『ほいよ』ピッ

    叔母(相変わらずサバサバしてるな、義姉さんは。実に普段通りだった)

    叔母「…こういった所は彼に似てる、とも取れるのかな」

    叔母(…実際のことろ。彼を引き取って、彼に何かしてあげられたとは思えない)

    叔母(でも、やれることはやろう。最後の最後まで、叔母としてやりとおそうと思う)

    チッチッチッチッ…

    叔母「…試しに手料理とかやってみようかな」グッ


    学校 放課後の教室


    「………」ボー

    「であるからしてねぇ~! 私の班では汚水を如何なる過程で川に放出するかまとめたワケなの!」

    「はぁ~…」

    「つ・ま・り! …ちょっと、なによため息なんて」

    「え?」

    「つ、つまらなかったのかしら…? 私の話、っていうか今度発表する社会見学のレポート……」

    「ち、違う違うってば。俺の方がきちんと聞いてなかっただけ」
    308 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:24:21.05 ID:qigM/ANOO (+35,+30,+0)
    「へーめずらし、もしかして寝不足?」

    「いや、睡眠はちゃんと取ってる。色々と考え事をしてただけ、別に手を抜いてるわけじゃ無いよ」

    「そりゃそーよ! 私の班と、貴方の班! どっちが優秀かどうかちゃーーんと優劣決める為やることやってもらわないと!」

    「うん。頑張ってるから安心して、負ける気なんてこれっぽっちも無いから」

    「フン! 分かってるなら良いわ。これでもしふ抜けた発表でもされたら、今後の私の士気に影響出るんだから本気でやること!」

    「最初からそう言ってるから安心してください」セイセイ

    「なによ大人ぶっちゃって。もっとがっつきなさいよ、食らいつきなさいよ、本番は三日後なのにそれで大丈夫なワケ!?」

    「相変わらず勝手にヒートアップする癖治らないなあ! 声が大きいから、もっと小さくして、じゃないとまた誰かに怒られ…」

    ガラリ

    「…………」ジィー

    「ヒィッ!? おっ、お姉ちゃ!?」ビクーン

    「あ。どうも先生」ペコ

    「精が出るわね、社会科見学発表の予行練習?」チラ

    「校内で必要以上に大声出す生徒さえいなければ、私も、他の職務を全うするのだけれども」ヂラ

    「スミマセンデシタ…」
    309 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:25:01.60 ID:qigM/ANOO (+35,+30,+0)
    「はぁ、もういいわよ。貴女のそういった所はもう諦めましたから」

    「諦めましたから!?」

    「……だから貴女が自覚を持ち自制を効かせるよう見守ろうということなのよ……」ジロー

    「ウッス…」

    「そ、それで先生? もしかして、その本ってあれですか?」

    「ん? ああ、ちょうど良いわ。はい、コレが約束してたモノよ」スッ

    「わ~…! わざわざありがとうございます!」ペコ

    「ヤクソク?」

    「英会話の本。オススメがあるから幾つか貸してあげると約束してたの」

    「ふーん…」

    「お。これなんて良さそうだ」ヒョイ

    「お目が高いじゃない。お決まりな会話から砕けたフランクな会話まで書かれてるの」

    「なるほど。…詠み込み度合いが凄い窺える、大量の蛍光ペンの後が」

    「ふふ。余白にイントネーションの違い、あったりしない?」スッ

    「本当だ! これ凄いですね! 一般の教材なんて目じゃないぐらいだ…!」

    「気に入った? なら持って行っても良いから。本場じゃ付け焼き刃じゃ厳しいでしょうし」
    310 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:26:12.62 ID:qigM/ANOO (+35,+30,+0)
    「クローゼットにしまっておくよりはマシよ。ちゃんと大切にしてくれれば、私も嬉しい限り」ニコ


    「ちょっとまったぁー!!!」バァンッ


    「わぁッッ!?」ビクーーーン

    「…貴女ねぇ…」ピクピク…

    「お、怒るのはあとにしてお姉ちゃん! その前に、聞き逃せない単語が幾つかあったんだけど! どういうこと!?」


    「ナンノコトカナ?」

    「お姉ちゃんはやめなさいと言ったわよね?」


    「嘘ヘタクソ! ごめんなさい先生! …じゃなくて! あっちとか本場とか英会話の本とか!」

    「はあ? 彼があっちじゃ大変だろうと用意して――え? 言ってないの?」

    「え、えっとぉー…」

    「呆れた。君って他人には隠し事するなと言う癖に、自分だけは飄々と嘘をつくのね」ジィー

    「おぐッ!」

    「お姉ちゃんに隠し事するなって言ったのアンタ!? す、凄いわね…!」ワナワナ

    「そ、その話はややこしくなるから今は無しで!」

    「教師にとって、生徒の家庭的情報漏洩は御法度。私から女さんに事実を伝えることは無理なの」

    (ぐ…俺の淡い期待がバレてる…!)

    「甘い展開を私に抱かないこと。自分の口できちんと伝えなさい、良いわね?」
    311 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:27:10.31 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,-261)
    「…はい、先生」

    「よろしい。あと女さん」

    「は、はい?」

    「何があっても騒がないこと。…これは教師では無く姉としてのアドバイスよ」


    スタスタ ガラリ パタン


    「…。今のお姉ちゃんが一番恐かったんだけど、貴方なに隠してんのよ?」

    「………」

    「言えないの? だったらまあ、無理しなくても良いけどね」

    「…怒らないのか?」

    「誰にだって秘密はあるじゃない。無理して語られてもこっちが困るだけだわ、そんなの」

    「でも…」


    「秘密にしたせいで、後でもっと困るのなら。ちゃんと伝えて欲しい」


    「あとに残る嘘は嫌い。今だけ何とかしたいって気分でつく嘘が一番イヤよ」

    「……」

    「うん、そうだろうな。俺も、そう思う」

    「フン。で? 言ってくれるの?」

    「うん。言うよ、ちゃんと女さんに事実を言うよ」

    「そ。…じゃあさ、それってやっぱりさ、おっ、お姉ちゃんと隠れて付き合ってるとかー!?」ドキドキ


    「どーして何時も何時もそうなるのよ貴女はッ!!」バァーーン!!

    312 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:27:54.23 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,+0)
    「わぁーー!?」

    「先生!?」

    「今回ばっかりは我慢の限界です! すぐ勘違いを押し通すから相手も言い出し辛くなるんでしょうが!」

    「先生! 大変有り難いですが声が大きすぎます!」

    「思ってたとおりだわ…! お姉ちゃん、すぐ男のことになるとムキになるもの! まさか本当に貴方とお姉ちゃんって…」

    「ち、ちがッ! 茶化す空気じゃ無いと大人としての助言しようとしただけ!」

    「茶化す…? 待って、私は何時だって本気なのよお姉ちゃん!? 本気で生徒と付き合ってないか心配してるの!」

    「それが余計な世話だって言ってるんでしょーが!!」ムキーッ

    「余計なお世話!?」

    「ふっ、ふーんだ! だったらキャッキャウフフと教材眺めてた二人をどう周りは思うかしら!?」

    「え…? キャッキャウフフ…?」

    「してたよ! あんな好き好きオーラダダ漏れじゃ余計お世話なんて言われる筋はこれっぽっちもありませーーん!!」

    「なっ!? い、いっぱしに恋愛したことない子供がよくもまあ…姉に言えたモノね…ッ」

    「うるさいうるさい! 否定できるものなら否定してみればぁ!?」

    「最後までちゃんと聞いててあげるわ! どれだけ男のこと好きなのか見破って…あれ…?」ポロ

    パタタ… ポロポロ…


    「……どうして泣いてるんだろう、私……?」

    「わーーーー!!!??」
    313 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:28:42.61 ID:ZJk9iEXnO (+33,+30,-212)
    「ぐすっ」ゴシゴシ

    「本当に落ち着いて!? ちょ、泣かないで…! ハンカチで拭いて、ほら! ねっ?」

    「ちょっとは落ち着きなさい! ほら、珈琲かってきてあげるから! もうもう嫌な勘違いしないでよバカね…!」

    「うう…じゃあ違うの…? 本当に、付き合ってない…?」

    「教師と生徒! い、色々と過去にあって知りすぎてるのもあるけど…!」

    「女さんが勘違いしてることは絶対に無いから…!」

    「うん…うん…」コクコク

    「ちょ、ちょっと、私今から自販機で飲み物買ってくるわ。しばらく相手してて」スッ

    「は、はい!」

    「…次は一緒に居て話聞いてあげる。その方が妹も貴方も、落ち着いて会話できるでしょうから」

    「あり、がとうございます」

    「ぐす…」

    「……。まったく、今ここで本当に泣きたいのは、一体誰なのかしらね」パタン

    「………」
    314 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:29:20.37 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,+0)
    ~~~

    ジュゥウウ

    叔母「おかしい…おかしいな…フライパンで卵を焼いてるだけなのに…」

    叔母「どうしてフライパンから卵が戻ってこないんだ?」クル ブンブン!

    ガリガリボソボソ

    叔母「不思議だ…フライパンを買い直した方が良いのかも知れない…」

    ぴんぽーん

    叔母「ん? …男君の書類でも来たかな」ガタン


    がちゃり


    受付「ウィッス~! オーナ~! 送別会の準備的な話しをしに――クッッサ!!??!」

    叔母「唐突に失礼な奴だな」

    受付「えッ!!? ちょ、なんスかこの匂い!? 焦げてる? これ火事的な臭さッスよ絶対!!」

    叔母「そんなに臭う?」

    受付「そりゃもうドアの隙間からモックモックと!」

    叔母「ああ。なら多分、私が作ってる卵焼きのせいだ。別に気にしなくて良い」フリフリ

    受付「いや気にしますけど…卵焼きでプラスチック燃えてる匂いが産まれる理由が…」

    叔母「私も知りたいんだ。理由としてはフライパンが悪いんじゃ無いかと思う」

    受付「……。大丈夫なんスか?」

    叔母「買い換えるから大丈夫」

    受付「違う違う。アンタ、鼻敏感なのに気づかないとかおかしいデショ」
    315 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:30:04.30 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,+0)
    叔母「……。言われてみれば確かに」クンクン

    受付「体調でも悪いんスか? だったら無理せず出前でも取りましょーよ」パタン

    叔母「いや、別に腹が減ってるわけじゃ…」

    受付「ん? あぁ~! なるなるー?」キラリン

    受付「もしや彼の為に手料理作ってた、ってな若々しい魂胆抱えて頑張った感じッスかぁ?」ニマニマ

    叔母「む」

    受付「クケケ! オーナーにも可愛らしい部分残ってたんスね、って…わぁお…なんだこの物体X…」

    叔母「卵焼き」

    受付「…これを卵焼きと認めるには、例え料理上手くないウチでも躊躇うわ…」

    叔母「食べてみるか?」

    受付「食べれるんスかコレ」

    叔母「私は喰わないけど」

    受付「じゃ、この話おしまいッスね。本題に移る前に窓開けますよ」ガララー

    ヒュウウ~~

    受付「……。最近ラブホの仕事無いから会えてないですけど、彼は元気なんスか」

    叔母「普段通りすぎてなにも」
    316 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:30:38.36 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,+0)
    受付「あっはは。いやあ素晴らしい、もはやそこまで分別効くなら菩薩級だわ」ケタケタ

    叔母「どうだろうな。我々が察せられてないだけで、彼だけは思い悩んでるかも知れない」

    受付「まるで他人事みたいッスね、今のセリフ」

    叔母「じゃあ私に何か出来るとでも?」

    受付「そうっすねー出来れば話は早いっすよねー」

    叔母「だな」シュボッ

    受付「まあ、そりゃ血が繋がってても他人は他人。よそはよそ。家族じゃ無いからなあ」

    受付「かわいそうに。これからずっと、彼の自由はあの両親に弄ばれ続けるわけだ」

    叔母「そうかもな。なら、お前が男君と一緒に駆け落ちでもするか?」

    受付「イイっすね~それ! 原付で全国津々浦々、月替わりには絵はがき送りますよ?」

    叔母「くっく。そりゃ楽しみだ」

    受付「ふむ。それよかケルケル君の実家に住むってのはどうデショ」

    叔母「ほぉう」

    受付「同じ外国住みなのに、この安心度の違い! 結局はソコなんスよねー」

    叔母「……」フゥー…

    受付「…どうにか出来ないんですか、ほら、今からぶん殴りに行くとかは?」

    叔母「殴って解決できるのなら」

    受付「じゃあウチらはせいぜい、華々しく彼を送り届けるだけッスか」
    317 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:31:28.74 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,+0)
    叔母「……。さて、送別会とやらの話だったか」グリグリ

    受付「ケルケル君がノリノリで準備してるんで便乗するカタチでー」

    受付「あとでここにきてパーティの内容を話してくれるッス」

    叔母「楽でいい」

    受付「いや、ここは楽すべき所じゃないデショ…」

    叔母「? どうして、別れる準備まで苦労しなきゃならないんだ?」

    受付「カ~ッ! 妙にかっこいいセリフ頂きましたー!」

    受付「…という冗談は今回は無しで、ここはひとまず頑張りましょうよオーナー」


    受付「――我々が彼にできることなんて、今はこれだけなんですから」


    ~~~


    「遊ぶわよ」

    「は?」

    「良いから準備しなさい。早く荷物を持って、財布にお金は? 無ければ貸すけど、転校する前に帰しなさいよね」

    「ちょ、ちょっと待って!」

    「なによ。家の門限でもあるの? ら、ラブホに住んでるクセに?」

    「違う、そうじゃなくて……あの、転校に対する感想は…?」

    「無い」
    318 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:32:26.32 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,-300)
    「…………」

    「えぇッ!? 無いの!?」

    「無いわよ。転校するんでしょ、遠い外国に行っちゃうんでしょ、それで何?」

    「――別に会えなくなるわけじゃないでしょ? あほらしいったらありゃしないわ」

    「…女さん…」

    「ケッ! この私に心配でも為て欲しかった? 行かないでって引き留めて欲しかったワケ?」

    「あっりえないわよバーーカ!! 二度と意味不明な勘ぐり為ないでよね!」

    「正直に言いますと、私との勝負から逃げるのか! と怒られると思ってました…」

    (私も同意見だった……)

    「それも有り得ないわ。貴方と私の優劣を決める勝負、たかが国境程度で終わりなんてわ・た・し、が認めない!」

    「私は諦めないの。外国でも宇宙でも地底でも深海でも、貴方が何処に行ったって諦めない!」

    「私が貴方から受けた屈辱はどの広さも深さも遠さでさえも、計り知れない程にでっかいんだから!!」

    「…………」ドキ

    「わかった? わかったなら頷きなさい、そして認めなさい! 私との勝負の続行を!」

    「…うん」ギュッ

    「わかり、ました。もう君との勝負を俺は二度と、諦めた風に言ったりしない」


    「上等よ、受けて立つわ」ニッ

    「うん」ニッ

    319 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:33:55.28 ID:ZJk9iEXnO (+33,+30,-256)
    (……驚いたわ、素直に)

    (そっか。もう私の妹は既に成長してるんだ。私が知っている以上に、彼女は立派に大人となってきてるんだ)

    (でも、勝負って貴女ね。これじゃあ大人とは少し言い辛いかしら)クス

    (……けれど)


    ただしい大人の対応なんて、私には理解できているのだろうか。


    (あーあ、先輩と飲んで話したい。今度、誘ったら来てくれるかなぁ)

    「? どこいこうっての先生?」

    「え?」

    「先生も来るのよ、遊びに行くの。教師の仕事って何時に終わるの? 早めに切り上げられないモノなの?」

    「はっ? いや、待ちなさい。どうして私まで一緒にっ?」

    「むしろ何故行かないと思ってるの……?」

    (こ、このバカ妹は! まさか本気で単に遊び感覚で誘ってるの…!?)

    「…ぇ、ぇと…」キョロキョロ

    (ホラ! まさかの展開に当の本人が気まずがってるじゃない!)

    「別に先生が居たって構わないわよね? ねえ?」クル

    「エッ! あ、ハイ…俺は断れるような立場じゃ無いというか…」チ、チラ
    320 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:35:52.30 ID:ZJk9iEXnO (+33,+30,-212)
    (断りなさいよ! このいくじなし! 二人で行きたいって言いなさいよ!)

    (睨まれてる…すっごい睨まれてるよ…)ドッドッドッ…

    「もーう、素直じゃないんだから。こんな参考書じゃなくて、ちゃーんと一緒に送別会って奴をやりましょ!」

    ぐいっ

    「…貴女ねえ…!」

    「来て。お姉ちゃん」ボソ

    「…え?」


    ブルル…ブルッ…


    (この子、震えてる?)

    「――お願い、来て…ください…」

    「……。バカね、本当に」ギュッ

    「? あのー…?」

    「良いわ。じゃあ行ってあげるけれど、必ず九時前には帰宅させる。姉では無く教師として付き添ってあげるわ」

    「来てくれるの?」パァァ

    「もちろん。そして貴方も、今回だけ私が急遽時間を作ってあげたのですから――」

    「――一人の男子生徒として、立派に最後まで突き通しなさい」

    「わ、わかってますとも! ええ、心からやり遂げるつもりです!」

    「……いくじなし」ボソッ

    「うッ」
    321 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:36:37.04 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,-228)
    「? じゃあ早速行こうじゃない! どうする? カラオケでも行く?」ワクワク

    「そうだなぁ。そういや、前に点数負けしたままだったっけ」

    「ほほう。……上等ッ! 勝負ってワケね受けて立つわッ!」

    (…しょうがない子ね、まったく)

    (こうなれば仕方ない。ここは大人として、姉として、一人の女として)

    (影ながらフォローしてあげましょう。ふふん、任せなさい…)


    ~ラブホテル・スタッフルーム~


    『明日の天気は晴れ、のちに雨が降るでしょう』

    叔母「…おっと」ピク

    叔母(もう九時か。今日は客がやけに少なくて暇だった)シュボッ

    叔母(ん? そういえばまだ帰ってきてないような…)

    フゥー…

    叔母「………」チラ

    叔母「まあチンすれば食べれる、と思う。多分」


    『取りあえず卵焼きぐらいフツーに作ろうッス』
    『きっとオトコもよろこぶですよ! キットキット!』


    叔母「ハッ」

    叔母(私も随分とほだされた。義姉さんにもそう言われても仕方ない)
    322 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:37:34.17 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,-266)
    叔母「……藪を突くな、か…」

    prrrrrrrr

    叔母「はい。もしもし?」ガチャ

    『あ! 良かった叔母さんでしたか、男です! すみません!』

    叔母「? 唐突に謝ってどうしたの?」

    『こんな時間まで連絡無しだったので…』

    叔母「いや構わないよ。高校生らしくて素晴らしいじゃないか」グリグリ

    『そう、ですかね。えっと! それでですね、実は――』


    『うぇぇぇ! せんぱぃー! わたひっ、わたしぃいいいい~~~…っ!』


    叔母「この声って…」

    『お、落ち着いて下さい先せエムホォン! お姉さん! こんなところで騒いだらダメです!』

    叔母「状況がよくわからないんだが…」

    『じ、実はですね! 今はファミレスなんですが、店員の間違いでワインを飲んでしまって…!』

    叔母「なにやってんだアイツは…」ガタリ

    『あ! だ、大丈夫ですよ! 偶然にも受付さんが近くに居て、こっちでなんとかできますから!』

    叔母「そ、そうなの?」

    『ええ、なのでまだ少し帰るのが遅れるかも知れません。だからその後報告をしようと思って』

    叔母「そっか。…気をつけるんだよ」
    323 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:38:34.48 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,-106)
    『…はい、その、ありがとうございます』

    叔母「ん? 感謝することあった?」

    『いえ、個人的に。…心配されるの、あんまり慣れてないんで』

    叔母「……」

    叔母「ちなみに気をつけてとは、酔っ払うと後輩はキス魔になるから気をつけて、という意味」


    『お姉ちゃん大丈――ふむぐゅううううううううう!??!!』

    『うわぁあああ!!?? と、止めてきます! じゃあまた後で! また!』ピッ


    叔母「…まあ受付がいるらしいし、大丈夫か」

    カタン

    叔母「……」カパリ

    叔母「もぐ、もぐもぐ…」



    「……しょっぱ」
    324 : 全知全能の神未来 - 2017/03/22(水) 22:41:41.99 ID:U7QQlHW30 (+27,+29,-40)
    ようこそ恋ヶ崎女子DMM課金ランキング三位の主任ナナ様開発された夫に真嫁にNTRて離婚した説
    325 : 全知全能の神未来 - 2017/03/22(水) 22:48:47.30 ID:U7QQlHW30 (+28,+30,-52)
    ようこそ恋ヶ崎女子DMM課金ランキング三位体育祭の娘達バスケ選手の餌に成る不人気を押す運営は頭行かれてるDMMでカナリ儲けてるんだろ数億は儲けてるのにケチル人間嫌い
    326 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:49:36.82 ID:ZJk9iEXnO (+35,+30,+0)
    【オマケ・ファミレス帰り】

    受付「セイセイ。何をそこまで荒れる必要あるってんだい、先生や」

    「うぅうーっ…だってだって…妹ばっかりたのしそーな青春おくっててぇ~…」エグエグ

    受付「そっかー爆発しちゃったかー、うん。男くんはソッコー彼女の耳ふさいで」

    「えっ? あ、はい!」ササッ

    「?」

    受付「ねえ先生? 貴女は超立派よ、多くの生徒を正しく教育していく職業に努めてる、心から尊敬しちゃうワ」

    「うん…」

    受付「でも人間はずっと完璧で居続けるのはムリ。何処かでボロは出るし、たまにの息抜きは必ず必要なの」

    「つまり…?」グス

    受付「飲み行こう! 貴女のグチ、その最後の最後の一滴残らず絞り聞き取ってあげる!」グッ

    「お、おおっ、受付さぁああ~~~ん!!」ガバァッ

    受付「ガハハ! まかせなさい! ドンときなさい!」


    (奢らせるんだろうなあ…)

    「ね、ねえ、ちょっと、もうっ、コラ! 離しなさいよ!」バシッ

    「ご、ごめん。えっと、何も聞こえてなかったよね?」

    「何も聞こえなかったわよ! ったく、お姉ちゃんどっかいっちゃったじゃない!」

    「そ、そうだね。じゃあもう良い時間だし、そろそろ俺らも…」

    「え? 帰るの?」

    「え?」

    「……。まだ、私は帰りたくない、ケド…」モジッ

    「………。え?」
    327 : 以下、名無しにか - 2017/03/22(水) 22:51:43.72 ID:ZJk9iEXnO (+28,+28,+0)
    第九話 終

    残り三話よろしくお願いします ノシ
    328 : 以下、名無しにか - 2017/03/23(木) 04:25:33.32 ID:GRcLFK1NO (+24,+29,-9)
    これは男は誰のルートにもいかないbadendか?
    329 : 以下、名無しにか - 2017/03/23(木) 09:09:19.61 ID:dpBFrvq70 (+1,+16,-2)
    おつ
    330 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:08:34.50 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-178)
    「………」

    「…ちょっと、黙ってないで何か喋りなさいよ」

    「いや、だって、あのさ本当に、来るつもり? 俺の部屋に、というかアソコに」スッ

    「……」ウッ

    「べ、別に今から帰りたいっていうのなら送るけど…」

    「…いくわよ」

    「えぇ~…」

    「いくったら行くのよ!」

    「や、やけっぱちになってない?」

    「違う! てか、こんな時間に出歩いてたら補導されるし、都合がいい場所ったら貴方の家ぐらいしかないし!」

    (カラオケとかあるじゃん…漫喫でもいいし…でも流石にここは…)


    【ラブホテル・スィートランド】


    (凄い、嫌な予感しかしない)

    「さっさと行くわよホラ!! 躊躇ってる方がなんだか恥ずかしいでしょうが!!」


    ラブホテル・勝手口


    「こっちだよ。正面からはお客さんの邪魔になるから」

    「そうなの? な、なんだか普通っぽくなくてドキドキする…」ドキドキ
    331 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:09:57.71 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-241)
    (クラスメイトと一緒にラブホテル来てる時点で全然普通じゃないけど…)ガチャ

    キィ…

    「暗いわね…」

    「普段は掃除道具入れに使ってる区間だしな」パタン

    「ふーん…」キョロキョロ

    「そういえば清掃さん? だっけ? あの人は今日は居ないの?」

    「ケル君は居ない。今日の担当は臨時の清掃員さんと、受付もバイトさんがやってる」


    スタスタ


    「……ふーん、そなんだ」

    「うん」ガチャ

    「じゃ、誰も居ないのね。あたしが知ってる人、この建物内に」

    「うん? まあそうなるね、多分だけど」


    「だったら、二人っきりってワケだ。あたしたち」クル


    「えっ、あ、うん? そういったことになる、かな」

    「………」じぃー

    「な、なに? 急にどうしたっていうのさ?」

    「べつに」フィ
    332 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:10:26.72 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-256)
    スタスタ


    (なんだ、じゃあ来た意味ないかも)フゥ

    (それとなく周りに人たちに、貴方の詳しい転校理由とか訊きたかったのに)


    44号室


    「……」チョコン


    (この前、乗り込んだ時ちゃんと見れてなかったけど)チ、チラ

    (……うん、フツーにら、ラララ! ラブホテルじゃない…)

    「どうぞお茶です…」コトリ

    「あ、ありがとう」

    「で、一体なにをするつもりなんだ。俺の部屋でさ」

    「……………」

    「あ~~、うん。何も考えてないワケね…」

    「う、うるさいわね」キッ

    「せいせい。なら定番に卒業アルバムでも見る? この前の荷物整理で出てきたんだけど」

    「え! みるみる! 見たい見たい!」キラキラ

    (釣れた…受付さんのアドバイス通りだな…)


    受付『もしクラスメイトを部屋に連れてきたら?』

    受付『ハァン、んなの卒アル見せて、さっさとしっぽりいけば良し!』グッ
    333 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:11:15.60 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-312)
    (ようは捉えようなのだろう。間違ってはない、捉え方次第だ)

    「貴方はどこに写ってるの?」パラパラ

    「俺? あぁ、それならココかな」

    「ほぅ、……まったく変わってないわね、今と」

    「一年ぐらいで変わるほうがおかしいじゃないか」

    「そう? 学生なんて二週間あれば性格も変わるモンだけどね」

    「…そうなの?」

    「そうなの! んー、あたしが中学の頃に仲良かった娘が居たんだけど…」

    「夏休みは親戚のところで過ごすって聞いてて、まったく会えなかったのね」

    「う、うん」

    「それで二学期明け、その娘を教室で探したら───」

    「───親戚の人と駆け落ち同然で飛び出したって噂を聞いたの…」

    「えぇっ!?」

    「うん。当時はびっくりした、すぐに見つかってこっぴどく叱られて学校戻ってきたけどね」

    「信じて欲しい…俺はきっと外国に行っても、そんな無茶はしないと思う…」

    「もしなったら意地でも探し出しに向かうわよ、貴方の元へ」

    「よ、よろしく頼む。俺はノリで飛び出したものの、きっと近場の駅で蹲ってると思うから」

    「ヘタレ」

    「そこで文句言う? …まあ、言われ慣れてるよ。ヘタレなんて」
    334 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:11:48.42 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-233)
    「へぇ~~、誰に?」

    「母親。そんな人なんだ、はっきり物を息子にも言う人」スッ


    コポコポ…


    「…突然の転校も、親のせい?」

    「うん? 母親じゃないよ、父親の方。外国に住んでて、こっちにこいってさ」

    「……。どっちにしろ親のせいなのね」

    「あー、まあ。そうなるね、うん」

    「文句いわないの?」

    「まさか。言ってどうするんだ、なにも変わらない。……きっと変わらない」

    「ヘタレ」

    「うーーーん、ヘタレって思う? だって親だよ? 育てられてる俺が言えるわけがないじゃんか」

    「言えるわよ。文句言わないほうが、もっと不自然」

    「……特に貴方みたいな人が言わないほうが、あたしには不思議でたまらない」

    「えっと、どういう意味?」

    「……あたしみたいなのと、フツーに接してられるじゃない」

    「根拠が不十分です」

    「ぐっ!! そっ、そーーいうところよ! あ、あたしが怒るってわかる癖にどうどうと言ってくるトコロ!!」ビシッビシッ

    「痛い痛い! 座布団で殴らないで!」
    335 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:12:34.25 ID:vMxy84eyO (+35,+30,+0)
    「なによ! そんな貴方は素じゃないって言いたいワケ!?」ブンブン

    「い、いや全然普通にしてるつもりだけど…」サッサッ

    「じゃああ文句いいなさいよ!? 親にだって誰にだって面倒背負わせるなやめろ! って!」ガーッ

    「横暴過ぎる……」

    「横暴なのはどっちよ!? 急に転校させられて、それも外国で、まったく会話が成り立たない場所で!」

    「───そんなのあたしが、経験した以上につらいことじゃない……」スッ

    「……、」

    「やりたくないことなら、きっと子供だって言っていいのよ…絶対に…っ」

    「女さん…」

    「そうなると、俺も女さんと会話しなくていいことになる?」

    「あたしの立場そんな感じだったの!?」

    「いや、要点を捉えるとそうなるのかなと」

    「ここは要点じゃないでしょがぁああああ! 気持ちを! あたしの! 想いを察しなさいよおおお!!」

    「ひぃいいい!!」


    ドッタンバッタン


    「だ、だって! 別にかまわないって言ったじゃないか! 転校しても構わないって!」

    「つ、強がりに決まってるじゃにゃい!! あたしが本当にそお言ってると思ってたの!?」

    「思ってたよ!!」

    「思うなアホぉーーーー!!!!」
    336 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:13:24.30 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-258)
    「……! 人ってのは正直に言われないと駄目なときもあるんだよ!」

    「にゃにおー!?」キッ

    「察し、察せ、こう思えなんて! …俺には高等技術過ぎる、出来ることなんてちっぽけだ!」バッ

    「俺はもう数日後には転校するんだよ! なのにっ、君の何を察せと言うんだ…!」

    「っ~~~!!? 心配してるんじゃない!!」

    「……え?」

    「貴方が全然知らない場所に行って、誰も知り合いが居ない学校で、ちゃんと生きてられるのか…」

    「───貴方が! 全然気にしてないから、あたしは心配してんのよ! こっちは!!」

    「……俺が、気にしてないなら心配しなくていいじゃないか!!」

    「テ、テメー……乙女心なんもわかっちゃいないなんっとによォ…!?」

    「うるさいうるさい! 俺は君のペットかなにかか!? まったく余計なお世話だ!!」

    「………」しーん

    「……女さん?」


    「だァーーーー!!」ギシャー!

    「うわぁあああああ!?」


    「余計なお世話だとぉおお!? よく言ったその口よこせ! 真横に引き裂いてくれる!」ダダダダ

    「ひぃいいい!? な、なんだよ本当に!? 今日の女さんすっごく変なんだけど!?」ダダダダダ


    ───ドンドンドンドン!!!
    337 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:14:44.39 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-193)
    「っっっ!?」


    「…今の、なに…?」ドキドキ

    「と、隣の部屋からだ…騒ぎすぎてうるさかったのかもしれない…」


    しーん


    「……ごめん、騒ぎすぎた。謝るわ、本当に」ストン

    「あ、うん…別にいいけど…」ストン

    「……」

    「……心配、してくれたの?」

    「す、するわよ。…一応、あたしでも心配してる…想像したら怖いじゃない…そんなの…」

    「…例え片親が居たとしても、見知らぬ土地に行くなんて、あたしだったら耐えられない…」

    「でも、俺は平気だよ?」

    「それ、それ【が】一番こわい」

    (それが一番…?)

    「貴方は今、そう思えてるかもしれない。今、だけはきっと大丈夫かもしれない」

    「でも、あっちじゃダメかもしれない。今まではよくても、これからはダメかもしれない」

    「……それを怖がってない貴方が、一番、怖い」ギュッ

    「…ごめん」

    「わかってないクセに謝るなっ!」
    338 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:15:25.96 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-268)
    「クス。君も随分と俺のこと、知ってるね。本当に」

    「あっ、あったりまえよ! ライバルよライバル! 腹立つコトぐらい分かってて当然よ!」

    「…うん、確かに。俺はなんとも楽観的だと思う」

    「そうよ……こ、こんな所に平然と住めてる時点で頭イッてるわよ……」

    「だね。実にそう思う」スッ

    「───文句か、考えたこともなかったな」

    「……」チラ

    「俺としては、親の言うことに従うのは普通のことだったからなぁ。凄く新鮮だ、うん」

    「…だから友達できないのよ」ぼそり

    「………………待ってくれ、なんだって?」

    「んでもない」ぷいっ


    「いや、なんでもなくない。なんだって?」ずいっ


    「ひゃい!? なっ、なによ急に顔を近づけて!?」

    「君は凄く聞き逃せないことをさらりと言ってのけた。なんだって? もう一度、頼む」

    「だっ、だから、えっ!? 今のもっかい、言うの…? その、友達が出来ないというか…」

    「………」

    「前から普通に喋ってるの、クラスであたしだけって思う、から…」

    「───………」ガク …ストン

    (膝から崩れ落ちた………)
    339 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:16:34.92 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-227)
    「なんたる…」

    「え、え、えっ? なに、あたし変なこといった…!?」

    「わかったよ。ああ、随分と深い衝撃を持ってして理解したよ…」スッ

    「俺は友達がいない!!!」カッ

    「し、知ってるけど」

    「…………」ヒョロロロ…

    「ちょっと! 気をしっかりもって!」ガシ

    「なんたる…」

    「もうそれいいから! なによ、一体急にどうしちゃったのよ…!?」

    「…不安になった、外国に行くことに」

    「今更!?」

    「今更だよ、凄く今更だ…! なにせ女さんが余計なこと言ってくれたお陰でね…!」クッ

    「わっ、悪かったわよ! でもわざとだと思ってたの! こっちは!」

    「わざと…!? どうして意識的に友達を作らないなどと思うんだ…!?」

    「……だってラブホテル住んでるし……」プイ

    「じゃあ外国だったら友達作れるかな!?」パァアア

    「え? いや、それは……」

    「え……なにその顔……」

    「ごめん! あたし咄嗟に嘘つけなくてごめん!」
    340 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:17:15.41 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-301)
    「なんて酷い事実を突きつけるんだ女さんは……」シクシク

    「とっくの昔から突きつけてるつもりだったけど!?」

    「友達…友達できるかな…俺…」

    「な、なによ…そんなことで自信なくしちゃうわけ…?」

    「失くすよ…知ってる通り、俺は友達が居ないんだ…一人も居ない…これから先も一人も居ない…」

    「…あたしは?」

    「ライバルだろ…?」

    「ぐっっ…! た、確かに! あたしが言ってたわ…!」

    「ライバルか…そうか、ライバル…あっちで沢山のライバルを作ることは可能性として…」ハッ

    「待って。あっちじゃ、ライバルのランク桁違いだとあたしは思う。命、危ないと思う」

    「命かけて出来るならやってみせようじゃないか…!」

    「トモダチでしょ!? 貴方が作りたいのはッ!」

    「……女さん、文通しよ?」

    「逃げるな逃げるな、こっちに」

    「話題作り大変なら…電話でもいいし…」

    「えぇいっ! なよなよすなっ!」ブゥーン!

    「うぐっ」ドタリ

    「みっともない! みみっちい! ダチの一人ぐらい己一人努力でつくれ!」

    「……無理だよッッ!!」
    341 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:17:56.18 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-241)
    「な、情けないことを堂々と…!」

    「俺には無理だ…きっと…無理なんだ…」

    (急にどうしちゃったってのよ…?)

    プルルルルル

    「で、電話? ほら、貴方の携帯鳴ってるわよ…?」

    「……………」

    「今の時間帯にでないと、心配されるんじゃ…」

    「……出てくれ、すぐに出られる状態に戻すから」

    「あたしが!? あんたほんっとに突然にウザったくなったわね!?」

    ピッ

    「もしもしっ?」

    『──Why!? なにゆえボスがオトコの電話でる?』

    「この声……け、ケルケルさん?」

    『イエスマム! ケルケルだよ~! …あ! しっぽり中?』

    「違うわよアホ!!」

    『ケラケラ! うんうん、ジョーダンだヨ! 近くオトコいる?』

    「い、居るけど…その…」

    『ウン?』

    「…………」ズーン
    342 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:18:36.23 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-282)
    「出られる状態じゃない、っていうか…」

    『ジョータイ? 変なの、でも残念、お別れ会の予定言おう思ったのに』

    「お別れ会? 男のやつの?」

    『イエス! 今度にownerとfoxeyとケルケルで、パーティするから!』

    「……それ、あたしも行っていい?」

    『ボスも? 全然オッケー! きてきて! カモーンだよ!』ケラケラ

    「ありがと」

    『いいのいいの。オトコは三人で良いって言うけど、沢山いたほうが楽しいよね!』

    「…うん」

    (誘ってくれてもいいのに、本当に冷たい奴。…じゃないのかな、それが普通だって思わなかっただけ?)チラ

    (変な奴。堂々とあたし話しかけるくせに、こんなトコロ住んでくる癖に、まるで…)

    (人から優しくされるのに慣れてない、みたいな……)

    『ボスー? どしたのー?』

    「あ…なんでも…!」

    「…変わって、調子戻ったから」

    「あっ! うん、はい…!」バッ

    「もしもし? ケル君? はぁ…ぐすっ…はぁ…はぁ…」

    『オトコ?』

    「うっ…うん、大丈夫、さっきまで調子が良くなくて…うん…ふぅ…」ズビビ
    343 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:19:30.04 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-281)
    『ウ、ウン、オトコ無理しなくても別に…』

    「無理? 無理なんてしてないよ、全然!」

    「あっ! ちょっと(鼻水)垂れてきてるわよ…!」

    『垂れて?』

    「い、いや別に!? 大丈夫大丈夫! なんにもないから」ゴシゴシ

    「ぎゃー! えんがちょね! ちゃんとテイッシュ使いなさいよもう!」シュッシュッ

    『ソ、ソウネ…そういうのはちゃんと…』

    「平気だって! …なにやってるんだ、あっちに聞こえちゃうだろ…!」

    「貴方がばっちいことするからでしょ! 電話してて、やってあげるから…!」スッ

    『…アノー…?』

    「や、やめっ…! ぐぁーーー!?」ズボァッ

    「あ! ご、ごめ…! (鼻に指)入っちゃった…! しかも(ティッシュ)無しで…!」

    『えっ!!?』

    「うぐっ、ちょっと、早く抜いてくれ…! 痛い! キツイ!!」

    「ばっ、だったら動かないでよ! こっちだってそんな、んっ! あぁあっ…!?」

    『…オ、オトコ……ボス……?』

    「どうしてガサツなのに無茶をするんだ…!? 無理に抜こうとすると、うっ!? あっ!?」

    「ガサツ!? よく言ったわねこの泣き虫! さっき情けなく崩れ落ちたの忘れてないんだから!」

    『……technician…』
    344 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:20:12.54 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-219)
    「はががっ!? ぐぅううう!」

    「こうなったら(鼻の)形が変わるまでグリグリしちゃる! ……きゃっ!」

    『………ちょ、ちょとボク、用事思い出したノデ、ソロソロ……』

    「あぐっ! おわぁっ!? へっ、へぁ…くっしょん!」

    「……よ、よくも顔にぶっかけてくれたわね……!」

    『…bukkake…』

    「ずびび、いやいやいや! だって、ぐりぐりするほうが悪いだろう!?」

    「うるさいうるさい! ほら、責任持って拭きなさいよ! ほらほら!」

    「うぅ…なんでこんな目に…」

    「こっちのセリフよ…!」



    『あ、アハハ、うん、ケルケル知ってるよ! これもきっとカンチガイってやつで…』

    ───ドンドンドンドン!!

    『……ウン?』



    「…あ、また叩かれてしまった…」

    「うひっ! なんでここ壁が薄いのよ…! ラブホなんでしょう…!?」

    「いや、改装工事したらしいんだけど、44号室だけはやってないらしくて…」


    『…アワワワ…』
    345 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:20:58.10 ID:vMxy84eyO (+35,+30,+0)
    「そ、そうなの? じゃあはじめに言ってよ…」

    『ふ、フツーなら怒られないケド…一体どんなプレイしてたの…?』

    「普段、俺は大きな声なんて出さないしね……さっきの女さんみたいに」

    『そこ見栄はっちゃうオトコ!?』

    「あぁん!? 貴方の声も相当大きかったわよあんぽんたん!?」

    『そ、そういうピロー……トーク、は後々に…』

    「そりゃそうだろう! 女さん、なんだか普段とは全然違う感じだったし!」

    『どっちも良かったんだね! 盛り上がったんだね!』

    「それは!! だ、だって…心配だったし…」

    『え、ボスはハジメテ…だったの? だったらオトコちゃんとリードしてあげた…?』

    「……俺はそんなの気にしない」

    『キチク! オニ! オトコ見損なった!』

    「でも本当は、ちゃんと出来るか心配してたじゃない!!」

    『……だよねッ!! オトコほんと紳士だもん! 知ってるケルケル知ってる! 素直じゃないだけ!』

    「だって…初めて、なんだよ…」

    『…え…?』

    「俺は今まで誰一人とも、出来たことがないんだ…」

    『オトコ……そっか、初めてで浮かれてた…わかるよ、ケルケルそのキモチ…』

    「──友達をどう作れるかって!!」

    『セッ……セフ、セッ…クス…フレンド!?』
    346 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:21:59.52 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-191)
    「なによ…それ…」

    『アワワワ…! お、怒るよゼッタイ! なんてこと言うの…!?』

    「──だったらあたしがなってやるわよ、友達に!」

    『エェェエエエ!!?!!?』

    「えっ!? なんで、だって女さんは友達だなんて…」

    『チョ、マッテ、リカイ、ケルケル追いついて…ッ』

    「き、キスもしてくれなかったのに…」

    『ンンーーーーー!?』

    「そりゃもう忘れろ! いつまで引きずってんのよ!」

    『オッホホホォーーーウ!?!!?』

    「う、うん…」

    「いい? 友達なんてぱっぱと作れる、心配するだけ意味がなし!」

    「…そうなの?」

    「そうなの! 万国共通よ!」


    『』サラサラサラ…


    「………」コクリ

    「良いわ。そんなに心配なら、文通だって電話だってしてあげる」

    「──その代わり、ぜっっったいにあっちで友達つくりなさい。死ぬ気で、頑張りなさい」

    「友達の、このあたしが! 応援してあげるから!」
    347 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:28:20.52 ID:vMxy84eyO (+33,+30,-208)
    後日 朝方 女家


    「……」ズゥウウーン

    「朝からなんなの? その顔は」

    「余計なこと……言っちゃったなって、あたし……」ハハ…

    「余計なこと?」コトリ

    「…………、引き止めるつもりが応援しちゃった……」

    「…」ぽかーん

    「引き、止めたの? 貴女が?」

    「…うん…頑張ってあっちで友達作れ馬鹿って、言っちゃった…」

    「ま、まあ、今更止められても、彼の方も困るだろうし、良いと思うけれど」

    「…………」

    「…まだなにかあるの?」ズズッ

    「その場の勢い、っていうか。ノリで言っちゃった、というか」

    「うんうん」コクコク

    「………あたしが、一番最初の友だちになっちゃる、いっちゃった」

    「ぶふっ! ……あっ、ごめっ、今の笑ったわけじゃなく、」

    「………」ズーン

    「ちょっと聞いてる!? ねえ!?」
    348 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:39:19.62 ID:vMxy84eyO (+35,+30,-233)
    ラブホテル 今朝 スタッフルーム前


    (友達……応援までされたんだ、ちゃんと、頑張ろうじゃないか)

    清掃「…ぁ…」ビクッ

    「あ。おはよう、ケル君。……昨日はごめんね、勝手に電話切れちゃって」

    清掃「ウン…ベツ…イイケド…」フィ

    「それで昨日の電話ってなんだったの?」

    清掃「………」じぃー

    「?」

    清掃「…フォクシィーに訊いて、ケルケル、わかんないから」スタスタ

    「あ、うん……」

    (調子悪いのかな? …待てよ、そうだ、まずはケル君と…)

    「ケル君」

    清掃「…ナニ?」じとー

    「その、あのさ…」テレテレ

    清掃「………」

    「…俺たち、友達だよね?」

    清掃「………………」ズキン

    「……………?」

    清掃「トモダチなれば…オトコと今まで通り喋れるかな…?」ボロボロボロ

    「えぇっ!? なんで泣いちゃうの!? えっ!?」


    【すごい追い詰めてたことを、改めて知って、心底謝りました】
    349 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 00:39:51.99 ID:vMxy84eyO (+24,+29,-4)
    第十話 終

    今日中に現れますノシ
    350 : 以下、名無しにか - 2017/05/13(土) 22:48:08.55 ID:DNFeLLI1O (+28,+30,-289)
    44号室

    受付「ねーねー男くーん」パラリ

    「なんですかー?」ジュージュー

    受付「前から気になってたんだけどさーこの際だから訊いちゃうけど~」ペラリ

    「なんです?」チラ

    受付「オーナーのこと、性的な目で見過ぎじゃない?」

    「…………」ガチン


    ジュゥウウウ


    「…何故、そう思うのか根拠を述べて欲しいのですが…」

    受付「ん? だってホラ、あの人って年がら年中タンクトップでしょ」

    受付「だからココがね、ぼんって、服越しにどぉぼおんっ! って見えるじゃない?」

    「ま、まあ…確かにそうですけど…」

    受付「見てるよね、それ。めちゃエロい目で」

    「見てません」

    受付「見てるよ?」

    「断言しない! その根拠を言って!」

    受付「オーナーから相談されたから」

    「…ぉぉぉぅ…!」
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