元スレ用心棒「派手にいくぜ」
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201 = 184 :
部屋の外
闇商人(結局秘密兵器の正体は聞き逃してしまったか……まあいい)
<ドタドタ
闇商人「!」サッ
下男「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」ドタドタ
闇商人(なんだこいつ、こんなに慌てて……まさか!)
ガラッ
下男「タイヘンです発明家さま!」
発明家「なんだ、どうした!」
下男「イケにおかしなレンチュウがいます、それもふたり!」
発明家「池!?池に落ちてるってことは――罠にはまった侵入者だ!」
少年「侵入者!?まさか油商人の――」
闇商人「まあそんなところだ」バッ グイッ
下男「うぐっ!」
少年「!?」
発明家「!?」
闇商人「おっと動くなよ、こいつの頭に風穴を開けたくなきゃあな……」ジャキッ
下男「ぐぐぐ……」
発明家「し、従ったほうがいいかもしれん、少年!この男の目は本気だ!」
少年「くっ……!」
発明家「……しかし、人質の選び方は下手なようだが……」ボソッ
少年「……?」
202 = 184 :
少年(そういえばこの男、たしか隠れ家へ行く途中の茶屋で――!)
少年「闇商人か!よくも用心棒さんたちを裏切って――」
闇商人「はん、何が裏切りだ。こっちの世界をちょっと覗いたくらいで一人前に口をきくんじゃない……」
闇商人「商人の才覚も特別ないうえに、油商人の手下どもより弱い俺を前にして手も足も出ないようじゃあ発言権なんて無いんだ、こっちの世界ではな!」
闇商人「よし、まずはその翻訳書を……」
下男「えっ」
闇商人「ん?何だ?遺言か?」
下男「おまえ、そんなによわいのか」
闇商人「何だと?貴様、この状況でよくもそんな……」
下男「……えいっ」グイッ
闇商人「うおっ!?」ドタッ
闇商人「き、貴様、なんだその力は――!?」ジャキッ
下男「……」ガシッ
ギギギギギギギ
闇商人(あああっ!?俺は夢でも見ているのかっ……!?)
闇商人(こいつ、鉄砲を飴のように捻じ曲げやがった――!)
下男「ほんとうだ、すごくよわい」ポイッ
闇商人「うおおおお、くそっ!」ゴロゴロッ シュタッ
203 = 184 :
下男「発明家さまをおどしたツミはおもいぞ……!」ズカズカ
闇商人「き、き、き、き、き、貴様は一体――!?」
?「退け!闇商人!」
闇商人「!?」サッ
ズダンッ!ズダンッ!
下男「!」シュバッ
赤袖「おのれ……鬼神の如き剛力、その動きは電光石火……さては妖怪変化の類か?」ジャキッ
青袖「その冗談笑えない」チャキッ
闇商人「おお、赤袖!青袖!」タタッ
闇商人「早く、早くその化け物を挽肉にしてしまえ!」
赤袖「応!妖怪変化は成敗されるものと相場が決まっている、神妙にせい!」ビシッ
青袖「……まあ、正直あの忌々しい池のせいでだいぶくたびれてるんだけど……」チャキッ
下男「ふふん、イヌども。ひねりつぶしてやる」
204 = 184 :
発明家「今だ少年、下男が食い止めているうちに逃げよう!」
少年「しかし、下男さんは……」
発明家「大丈夫だ、あいつは死なない。自信作なんだ」
少年「……?」
発明家「早く!」
少年「は、はい……」タタッ
発明家「あれと、これと、それと……」ゴソゴソ
発明家「よし、僕も逃げよう」タタッ
205 = 184 :
下男「くらえ!」ビュンッ
赤袖「ぬおっ!」サッ
ガシャーンッ!
青袖「青袖様のクナイを受けてみなさい……!」ビュビュビュンッ
下男「オモチャであそぶとしじゃないだろう」パシパシパシッ
青袖「ああもうやんなっちゃう」
<タタタタタ…
闇商人「ハッ!いかん!ガキどもが逃げるぞ!」
赤袖「追う余裕があると思うてか!?」ズダンッ!ズダンッ!
下男「ふんっ!」サッ ビュンッ
赤袖「おおおおお!」サッ
バキャーンッ!
闇商人「チッ!じゃあお前らはそいつを始末したあと、直接油商人の屋敷に戻れ!」
闇商人「あのガキに用心棒たちの居場所を吐かせれば予備の弾薬など必要無い……!」ダッ
赤袖「承知!」
青袖「了解!……あ、いや、始末は無理――」
下男「からだのほねぜんぶおれろ!」サッ ビュンッ
青袖「折れかねない!」サッ
赤袖「南無三!?」
ドガーンッ!
<ギャアアアア!
<アカソデーッ!
206 = 184 :
発明家の屋敷の門前
発明家「はあはあはあ、よし、ここで二手に分かれよう。追いかけてくるかもわからない!」
少年「わかりました、では私はこっちに!」
発明家「――おっと、その前にこれをあげよう。『三枚のお札』だ」スッ
少年(差し出されたのは、硯ほどの大きさの三つの木箱……)
少年「――『お札』、ですか?」
発明家「そうだ。追いかけてくる山姥から君を助けてくれる……と、思う」
発明家「印のない札を使うには、札を掲げて、『身代わり、出でよ』と叫べばいい」
発明家「青い印のついた札を使うには、札を掲げて、『大きな川、出でよ』と叫べばいい」
発明家「赤い印のついた札を使うには、札を掲げて、『火の海、出でよ』と叫べばいい」
発明家「だけど気を付けるんだ。実際に身代わりや川や火の海が出るわけじゃないし、札はそれぞれ一回しか使えない」
少年「わかりました!重ね重ねありがとうございます、ではお達者で!」
発明家「ああ――おっと、待ってくれ!」
少年「なんでしょう?」
発明家「君の叔父がどんな人か聞いてもいいかい?」
少年「え?叔父上ですか?――ええと、体つきは並で……鼻が高くて、顎のところにホクロがあるのです」
少年「叔父上がどうかしたのですか?」
発明家「いや……わかった、ありがとう。引き留めてすまなかった」
少年「……?はい、ではこれで!」タタタタ…
発明家「僕も逃げなくては……!」クルッ タタタタタ…
発明家(話を聞いた時点でもしや、と思っていたが……間違いない!)
207 = 184 :
裏路地
少年「はあ、はあ、はあ……ここまで来れば……」
「ここまで来れば……なんだって?」
少年「!?」クルッ
闇商人「ゼエ…ハア…追いついたぜ……ゼエ…ハア…」
少年(し、しまった……!逃げるのに必死で、わかりやすい道を使いすぎたんだ!)
少年(きっと途中で先回りされて差を詰められてしまったにちがいない!)
少年(そのうえ、どこから調達してきたのか――闇商人は刀を一振り、持っている!)
闇商人「ゼエ…ハア…逃がしはしないぜ、二度と……!」シャキンッ ジリジリ
少年(逃げなければ……どうにかして……!)ジリジリ
少年(しかし、闇商人……息を切らしてはいるが、隙が無い)
少年(考えなしに逃げ出して、無防備な背中を見せるわけには……!)
少年(――!そうだ!)
少年「『身代わり、出でよ』!」サッ
闇商人「!?」
カチッ!
バシュッ!
少年「うわっ!?」
闇商人「ぐおっ!?光弾かッ!?」クラクラ
少年(ぼ、僕も目がくらんでしまっているけど……こっちはやたらめったら逃げればいいんだ!)
少年(でもあいつは逃げる僕を見なければ、追いかけることはできない!)ダダッ
闇商人「おのれガキがぁーッ!畜生、畜生、畜生ッ!」クラクラ
208 = 184 :
今日はここまで
「?」の正体を見抜ければ賞金が出ます(大嘘)
209 :
おつおつよ
210 :
分かったぜ!!
奴の正体はインテロゲーションマークだ!!
211 :
多忙につき生存報告だけさせていただきます
落ち着き次第続きを投下します
212 :
夕方
油商人の館
油商人「何ィ!?鍛冶屋!?それに下男だと!?まだ敵がいたのか!」
青袖「はい……私たちもほうほうのていで逃げてきて、ようやく人心地ついたところです」
赤袖「あの物の怪めが……あの力は一体……」ブツブツ
油商人「くそっ、くそっ、くそっ!私は油商人だぞ!?」
油商人「天下の夜の太陽はすべて私が握っているのに、それがなぜこれほど怯えねばならんのだ!」
<油商人様!闇商人でございます!
油商人「!?入れ!」
スパーンッ!
闇商人「!?赤袖、青袖!あの化け物はどうした!?」
青袖「打ち捨てて逃げてきました」
赤袖「やんぬるかな……」
闇商人「チッ!何たる怠慢!」
油商人「そんなことはどうでもいい、一体何事だ闇商人!?」
闇商人「用心棒の協力者が判明しました!貴方が以前手討ちになさった一家のせがれです!奴は生きていたんです!」
油商人「以前手討ちに……まさか、あの一家か!?生き残ったのは叔父ではなかったのか!?」
闇商人「わかりません……しかし、せがれといってもほんのガキです。用心棒たちを雇う金を持っているはずはありません」
闇商人「おそらくそいつと貴方の因縁の中で、何かの手違いで用心棒たちを狙うこととなってしまったのかと!」
油商人「では剣士の報告は一体……?」
闇商人「……?そんな些細なことは後です、油商人様!奴らは金ではなく自分の報復のためにこの館に殴りこんできます!」
闇商人「もはや戦あるのみです!もっと手勢を集めねばなりません……」
213 = 212 :
門前
<ガヤガヤ…
<ザワザワ…
門番甲「西日が眩しいな……」
門番甲「……?おい、なんだか中が騒がしくないか?」
門番乙「そうだな……さっき闇商人が泡を食って駆け込んでいったじゃないか、あいつが何か持っていたに違いない」
門番甲「何かって?」
門番乙「用心棒の首とかか?」
門番甲「そりゃあ嬉しくないな。臨時に雇われただけの俺たちはまた浪人に逆戻りだ……ん?」
酔漢「ういー、ひっく……おお、お侍さん方!よろしくやっておられますかあ!」フラフラ
門番乙「うへえ、こいつこんな時間から一杯やっていやがる!」
門番甲「オイコラ、この薄汚いフーテン野郎!あっちへ行け!」
酔漢「そう邪険にしなくたっていいじゃありませんかぁ~ささ、一杯、いかがですぅ?」フラフラ
門番甲「うるせえ、とっとと消えねえとぶち転がすぞ!」
門番乙「うわっ酒臭ぇな!」
酔漢「えぇ?私、そんなに臭いですかぁ?」フラフラ
門番乙「ああ、鼻がねじ切れそうだ!」
酔漢「じゃあいっそねじ切ってやろう」ガシッ
門番乙「うおっ――」
ボギッ!
門番乙「ぐわあああああ――っ!」ドターッ
門番乙「鼻が!俺の、鼻が……」ゴロゴロ
門番甲「!?――貴様ッ!?」シャキンッ
酔漢「俺か?俺は一杯やりにきた酔漢さ……」バサッ
用心棒「手前らの主人の首をつまみになぁ!」ジャキッ
バアンッ!バアンッ!
214 = 212 :
廊下
警備甲「銃声!門のほうだ!」ドタドタ
警備乙「用心棒の野郎、いよいよ来やがった!」ドタドタ
警備丙「警報の鐘を鳴らさなければ……」ドタドタ
用心棒「ふんっ!」ゲシッ
玄関番「ぐわーっ!ま、待て、話せばわかる!」ドタッ
用心棒「問答無用!」ジャキッ!
バアンッ!
警備甲「!用心棒ッ!」シャキンッ
警備乙「死にぞこないめが、こんなところにまで……!」シャキンッ
警備丙「今本当に殺してくれるわ!」ガシャッ
用心棒「新手か!さっきの奴の後を追わせてやろう!」
警備丙「ぬかせ!」ジャキッ
用心棒「そら、一丁!」ジャキッバアンッ!
警備丙「ゴボッ……!?」ドタッ
警備甲「クソッ!喰らえ!」ダダダッ ビュンッ!
用心棒「おっと!」サッ クルッ
警備甲「おのれ……!?」クルッ
用心棒「後ろだ!」ドカッ!
警備甲「ごふっ!?」ガクンッ
警備乙「この下郎めが!」ビュンッ!
用心棒「ふんっ!」サッ ジャキッ
バアンッ!バアンッ!バアンッ!
警備乙「」ドシャッ
用心棒「ハエが止まるぜ」
警備甲(な、何て奴だ……しかし奴の短銃はもう弾切れ!)
警備甲「死ね!用心棒!死ね――ッ!」ビュンッ!ビュンッ!
用心棒「おっと!そう慌てるなよ……」ガシャーンッ!ジャキンッ!
警備甲(弾を込めるカラクリ!あれはたしか武士殿の……!?)
警備甲「ウオオ――ッ!」ビュンッ
バアンッ!
警備甲「」ドシャアッ
用心棒「結果は同じだ」
用心棒「……」
215 = 212 :
時は巻き戻り……
昼過ぎ
蔵
ガチャッ バタンッッッ!
少年『はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……』
少年(完全に撒いた!)
少年(しかし闇商人に見つかったということは、すぐに油商人のところにも情報がいくはずだ……!)
用心棒『どうした坊主、泡を食って!』ドカドカ
相棒『おちおち眠れない……』ドカドカ
少年『ああ、用心棒さん!例の図面の訳書はここに!』
用心棒『よし、よくやった!』
少年『し、しかし途中で闇商人と、その手下二人に見つかってしまいまして……』
用心棒『なんだと?手下というのはどんなやつだ?』
少年『赤い狩衣の短銃使いと、青い小袖の剣士です!』
相棒『赤袖と青袖!』
用心棒『ああ。奴め、江戸一の殺し屋を引っ張り出してきやがった』
用心棒『つけられてはいないだろうな?』ガチャッ キョロキョロ
少年『それは大丈夫です、発明家さんが役立つものをくれたので!』
用心棒『ヘン、相変わらず変な気の利く奴だ……』バタンッ
用心棒『だがこれで油商人もすべてに気が付いただろう』
用心棒『近衛四天王は既に亡い。奴がいよいよ守りを固める前に館に踏み込み、叩く!』
216 = 212 :
<バアンッ!バアンッ!
増援甲「ええい、好き勝手させおって!浪人どもは一体何をやっているんだ!」ドタドタ
増援乙「やはり雇われはあてにならん、我々、油商人様の警護隊がなんとかしなくては……」ドタドタ
用心棒「フン、次から次へと!」サッ
増援甲「あっ貴様!」ジャキッ ズドンッ!
増援乙「死ね!」ジャキッ ズドンッ!
チュイーンッ チュイーンッ
用心棒「危ねぇな……お返しだ!」ポイッ
ゴロリ
増援甲「むっ!?これは!?」
増援乙「まずい、下がれ――」
ドゴオンッ!
217 = 212 :
<ドゴオンッ!
油商人「ひいっ!」
闇商人「いよいよ来たな、あのバカどもめ……!赤袖!奴を迎え撃て!」
赤袖「承知!」シュバッ スパアンッ! タタタタタ…
油商人「お、おい闇商人!玄関からここまでは一本道だぞ!?」
油商人「私は逃げるぞ、こんなこともあろうかと、向こう部屋の床の間に隠し通路を作っておいたのだ!今こそ!」
闇商人「ええ?よくもまあそんな金のかかりそうなものを……」
闇商人「しかし油商人殿、貴方がここを動かれては士気にかかわります。青袖が護衛致します、安全です!」
「――それに、私もおります、油商人殿」
油商人「お、おお!そうであった!」
闇商人「……」
青袖(!私が気配を感じなかった……?)
青袖(全身を……顔まで包帯で覆い、その上から小袖を着た男……)
青袖(……こいつ、手練れか)
包帯男「私は館の搦め手の守りに就きましょう。奴らは別行動です、きっともう一人が搦め手……もしかすると隠し通路から、突入してきます」
青袖「なぜそう言い切れるのです?」
包帯男「……」ニヤリ
青袖「……?」
218 = 212 :
今日はここまで
新キャラは出てません
219 :
バサッ! バサッ! バサッ!
用心棒『こっちがあの覆面野郎が寄越した図面。こっちは江戸の地図。こっちが〈切り札〉の図面と、その訳書だ』
少年『……』ゴクリ
相棒『……』
用心棒『まず、覆面野郎の寄越した図面だ』
用心棒『玄関から最奥、主人の間まで、角が一つあるきりの一本道だ』
用心棒『殴りこむには手ごろな形だ……俺は正面から突入する。奴らの裏の裏もかけるかもしれん』
相棒『囮か』
少年『囮……大丈夫なんですか』
用心棒『心配しなくても死ぬつもりは無いぜ……死んだ武士から拝借したカラクリと、鍛冶屋の蔵にある武器をしこたま持って行くさ』
用心棒『……そして』
用心棒『さっき見ていて気付いたんだが、地下一階のこの部分……妙な空白がある。それも一直線に』
相棒『……確かに』
少年『……隠し通路』
用心棒『ああ。奴らの中でも一部しか知らない、秘密の脱出路ってとこだろう』
用心棒『そして隠し通路がだいたい一直線に伸びているとして、江戸の地図を比較してみると、隠し通路の先は……』
用心棒『〈潮光寺〉!油商人の氏寺だ、ここが脱出路の出入り口で間違いない!』
220 = 219 :
潮光寺
?「……」ザッ
?(用心棒……それに相棒も、いないようだな)
?(しかしいずれ奴はここに来る。しかしたら用心棒と相棒のどちらかが陽動を仕掛けるかもしれんが、本命は間違いなくここに来る)
?(抜け道から突入し、油商人の首をとるために……そのことが俺の思惑とも知らずにな)
?(油商人の屋敷の図面を渡したのは、秘密通路の存在に気づかせ、そこに誘導するため)
?(俺はそれを確認し、後をつけ、そして……)
221 = 219 :
油商人の屋敷
ドキューンッ バアンッ
ズドンッズドンッ バアンッ
傭兵甲「なんてやつだ、あいつは!あれだけ居た兵が今では半分だ!」ドキューンッ
傭兵乙「クソッ、こうなりゃ意地だ!絶対に仕留める!」ズドンッズドンッ
用心棒「いい気概だ!それを遂げることなく死ぬのが残念だな!」バアンッバアンッ
バキャン バキャン
傭兵甲「ほざけ!狙いが逸れてやがるぜ、欄間なんか撃ってどうしようって……」
グラッ ガタタンッ!
傭兵乙「うおっ障子が!?くそっ!」バサッ
用心棒「バカめ……!」ダダッ バアンッ
傭兵乙「おごっ!?」ドターッ
傭兵乙「」ガクリ
傭兵甲「なにい!?こん畜生!」シャキンッ
用心棒「トロいぞ!」ゲシッ
傭兵甲「ぐわっ!」ドタッ
用心棒「ふんっ!」ガシッ
傭兵甲「ぐっ!?ご、ががががが……」ジタバタ
用心棒「はあっ!」グイッ
傭兵甲「が」ゴキャッ
222 = 219 :
傭兵甲「」ドシャッ
用心棒「……とりあえずひと段落、か……」
用心棒(一本道は一本道だが想像以上に敵が多いな……とりあえず装填だ)ガシャン
用心棒(爆弾はあと一つ、銃弾は……)ゴソゴソ
用心棒「ッ!?」サッ
ズダンッ!
赤袖「避けたか。それでこそだ、用心棒とやら」ザッ
用心棒「赤袖……薄汚い殺し屋が商人の奴隷になったのか、笑える話だ」
赤袖「貴様こそ。穢れた人斬りが童の敵討ちなど、ずいぶん気取ったものよの」
用心棒「そうとも。俺は気取り屋なんだよ」
赤袖「では武士(もののふ)にも人斬りにもなれんな。そして何者にもなりきれぬ貴様に某は殺せん」チャキッ
用心棒「じゃあ精々試してみるとするか!」チャキッ バアンッ
赤袖「無駄なことよ!」シュザッ ズダンッ
用心棒「フン、どうだか……」サッ
用心棒「俺の鉛玉を味わってから判断しな!」バアンッバアンッバアンッ
赤袖「そんなことは――」タッ クルクルッ ダッ
赤袖「するまでもないッ!」スタッ ズダンッ!
用心棒「う、うおおっ!?」サッ
用心棒(こ、こいつ、今壁を蹴って、天井を蹴って――三角跳びならぬ『四角跳び』を!?)
用心棒(あんな動きづらそうな狩衣でなんて軽快な動きをしやがる!)
用心棒「こンの……!」バアンッ!
赤袖「これが!」シュバッ ズダンッ!
用心棒「おのれ!猿かッ!」サッ バアンッ!
赤袖「答えだ!」ダッ ガッ スタッ ズダンッ!
用心棒「ちょこまか、と――!」ガシャンッ
赤袖「隙あり!」ゲシッ
用心棒「ぐおっ!?」ドガッ ドターンッ
赤袖「庭に転げ落ちてひっくり返ってカエルの如き無様よの!そのまま死ね!」ズダンッ
用心棒「御免被るぜ!」シュバッ
赤袖(むっ!屋根の上に逃げたか……)カチャカチャ
赤袖(弾込めよし!奴を追う!そして殺す!)シュバッ
223 = 219 :
ドサドサ
ガチャガチャ
相棒『有用な武器はこれで全部』
用心棒『おう、有難う』
少年『あれ?これは……刀ですか?』
相棒『いや……』ガチャガチャ シャキーンッ!
相棒『こうすると鉄砲になる』
少年『変形するんですね!』
用心棒『面白いな。一応持って行くか……』
用心棒『打ち合わせを再開するぞ。まず、例の秘密通路だが……』
用心棒『使わん』
相棒『何故?』
用心棒『怪しいからだ。あの頭巾野郎の意図を感じる』
用心棒『それでも使わなければならない状況もありえただろうが……俺達には鍛冶屋が遺してくれた秘密兵器がある』
用心棒『相棒。お前はそれを使って油商人の屋敷に侵入するんだ』
相棒『……』コクリ
少年『……』
少年『……用心棒さん、僕も行ってはいけませんか』
用心棒『……何故だ?』
少年『油商人は……油商人は、僕の父と母の仇でもあります』
少年『この戦いは僕の戦いでもあるんです。黙って見ているなんて……できません』
用心棒『……』
相棒『……用心棒』
用心棒『……わかった。行くがいい……』
用心棒『相棒がお前を油商人のところまで連れて行くだろう』
少年『……ありがとうございます』
用心棒『礼を言われる筋合いはない。……死ぬなよ』
少年『はい』
用心棒『……で、鍛冶屋の秘密兵器の使い方だが……』
224 = 219 :
油商人の屋根
屋根の上
赤袖「……遁走しなんだか。見直したぞ」
用心棒「言っただろうが……お前を殺せるかどうか試すってな!」ダッ バアンッ!
赤袖「まだわからんとは!浅はか!」サッ ズダンッ!
用心棒「浅はかなのはお前だ!」シュザッ バアンッ!
赤袖「童じみた問答は無用!」サッ ズダンッ!
用心棒「ならよく考えろることだな!今の!自分の状況を!」シュザッ バアンッ!
赤袖(……!?押されている!?)サッ ジリジリ
赤袖(壁や天井が無いが場所に誘き寄せられたために今までのような動きができぬ!)
赤袖「た、たばかりおったなァ!」ズダンッ!
用心棒「そうだ。貴様は――」シュザッ
用心棒「負けたんだ!」バアンッ!バアンッ!バアンッ!
赤袖「ぐおおおあああああッ!」バスッバスッバスッ グラリ
ヒュウウウウ… ドボーンッ
用心棒(池に落ちたか……)
用心棒(こいつには青袖とかいう相棒がいたはず。そいつはどこに……?)
<ヒュンッ
用心棒「ッ!?」サッ
…カツーンッ カラカラカラ…
用心棒(今、何かが……)
「ほう、避けたな」スタスタ
用心棒「!」ガシャンッ
棒使い「私は棒使いだ。貴様を殺しに来た」ザッ
用心棒「……次から次へと」ガシャーンッ
用心棒「ちなみに今のは何だ?」
棒使い「さあな。天狗礫ではないか」チャキッ
…ヒュウウウウウウウウウウ
棒使い「……?この音は……?」チラッ
用心棒(来たか――相棒!坊主!)
用心棒「喰らえ!」シュバッ ゲシッ!
棒使い「ぐわっ!?」ドタッ
225 = 219 :
油商人の屋敷
上空
ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ……
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……
少年「うわっ!うわわあっ!落ちる!落ちるぅ!」グラグラ
相棒「暴れるな、本当に落ちる」
少年「こ、こ、これ……『ぐらいだあ』!南蛮どもはこんなもので、空を飛ぶって……ひいいいい!」
少年「な、なんで相棒さんは平気なんですか!?というより、なんで乗りこなせるんですか!?」
相棒「説明書を読んだ」
少年「そ、それだけですか!?やっぱり駄目です僕は!もう降ります!」
相棒「我慢しろ。あとは屋敷の中に落ちるだけだ」
少年「落ちる!?落ちるんですか!?」
相棒「当たり前だ。いつまでも飛んでいられるものか」
相棒「……おや、用心棒だ」
少年「えっ!?用心棒さんが!?」
相棒「屋根の上」
少年「あっ本当――」
ゴオオオオオオオオ――ッ
グラグラグラグラ
相棒「横風だ。落ちる」
少年「ひ、ひいいいいいいいい――っ!」
ヒュウウウウウウウウ…
ガシャーンッ
226 :
屋根の上
棒使い「い、一体あれは――!?」
用心棒「お前には関係ないものだ!死ね!」チャキッ
伏兵「フッ!」ヒュンッ
用心棒「うぐっ!?」グサッ
棒使い「せいやァ!」ビュンッ
用心棒「ぐはあっ!」ドタッ
用心棒「……っく」スック
用心棒「吹き矢か……ずいぶんせせこましい真似をするんだな」
棒使い「せせこましい真似も、極めれば武器となる」
伏兵「ククク、吹き矢の毒が回るまでせいぜい足掻くがいい……」
用心棒(クソッ、一度見せられていた不意打ちをむざむざと喰らうとは……)
用心棒(相棒たちの到着で冷静さを欠いたのは俺のほうだな。冷静にならねば)
用心棒(これはまだ最後の戦いではないかもしれないのだから……!)
227 = 226 :
用心棒「毒が回るまで……か」チャキッ
用心棒「それまでに貴様らは死ぬことになる……!」バアンッバアンッバアンッ
棒使い「やってみるがいい!」ギュイーンッ
カキンカキンカキンッ!
用心棒(!?棒が目にも止まらない速さで回転して――銃弾を弾き飛ばした!?)
伏兵「フッ!」ヒュンッ
用心棒「はっ!」サッ
用心棒(そうだ!冷静になればあんなもの俺には当たらない)
棒使い「私のことも忘れるなよ!」ビュンッ
用心棒(あとはこいつの棒の分析だ……)サッ バアンッバアンッ
棒使い「無駄なことを!」ギュイーンッ
カキンカキンッ!
用心棒(むっ、よく見ると奴の腕輪と棒が妙な動きを……)
伏兵(再装填完了!もらった!)チャキッ
用心棒「ふんっ!」チャキッ バアンッ
伏兵「がはっ!?」バスッ
伏兵「」ドサッ
棒使い「チッ……!」チャキッ
棒使い「喰らえ!」サッ ギュイーンッ
用心棒「なんの!はあっ!」サッ ゲシッ
棒使い「フンッ!」サッ
用心棒「……やるな」ガシャーンッ チャキッ
棒使い「……そちらこそ。もう少し疲れているのかと思ったが……面倒だ」チャキッ
用心棒(腕輪と棒が、互いに退け合うような奇妙な動きをしている)
用心棒(その力で棒を回転させているようだな……攻撃にも応用できるようだ)
用心棒(しかし、仕組みは皆目見当がつかんな。材質がその秘密だろうか……)
棒使い(……どうも手の内がばれたようだな)
棒使い(吹き矢の毒が回るまで奴の攻撃を捌けるか……?それも、割れた手札で!)
228 = 226 :
江戸市中
とある長屋の玄関先
発明家「頼む!お前がかくまっている『あいつ』の居場所をすぐに教えてくれ、一大事なんだ!」
下男「おしえろ」
学者「わ、わかったわかった!教えるから頭を上げてくれ!」
学者「しかしくれぐれもよそで喋らないでくれよ……あいつは油商人の手の者に狙われているんだ」
発明家「無論だ!」
下男「はやくおしえろ」
学者「『藤屋』のところの角を曲がった先だ、そう遠くはない……」カキカキ
学者「これが地図だ。これも使い終わったらすぐに処分してくれよ」サッ
発明家「かたじけない!」ダッ
下男「かたじけない」ダッ
学者「やれやれ、一体何だって言うんだ……?」
発明家(あの少年……あんな子供が殺し合いに巻き込まれるなんて、あってはならないことだ!)タタタタタ
発明家(僕は用心棒たちに比べれば非力だが、できることはあるはず……!)タタタタタ
下男「発明家さま。きこえます」タタタタタ
発明家「何がだ!?」タタタタタ
下男「ジュウセイ……バクオン……チョウチョウハッシ……アブラショウニンのヤカタのほうから」タタタタタ
発明家「くそっ、始まってしまったか……!」タタタタタ
発明家「この家だな!……地図を処分して、と!」グシャグシャビリビリ
発明家「もしもし!」バンバン
髭面の男「学者か?」ガラッ
髭面の男「むっ!?誰だお前は!?さては油商人の……!?」
発明家「違う!話を聞いてくれ!」
229 = 226 :
今日はここまで
230 :
油商人の館
油商人の部屋
<ヒュウウウウ…
<ガシャーンッ!
油商人「ひいっ!」ビクッ
闇商人「何の音だ今のは!」チャキッ
包帯男「庭からでしたな」
青袖「何か大きなものが落ちたような……?見てきましょうか」
闇商人「よし行け!」
青袖「はっ」
スパンッ タタタタタ…
油商人「くそっ、くそっ、くそっ!」ウロウロ
油商人「いったい何なんだ、次から次へと私に不都合なことが……!」ウロウロ
闇商人「……」
包帯男「そういえば、赤袖はまだ戻らないのでしょうか?」
油商人「そ、それもそうだ!棒使いも増援に差し向けたのにいくらなんでも遅すぎる!」
包帯男「ではそちらは私が見てきましょうか」
油商人「やめろ!私を一人にするつもりか!」
闇商人「一応私もいるのですが……」
油商人「黙れ薄汚いちっぽけなヤクザ商人め!貴様などハナからアテになどしておらんわ!」
闇商人「……」
包帯男「しかし用心棒がここに乗り込んできてからでは手遅れです。私は行きます」
包帯男「油商人様は例の隠し通路で脱出なさっては?」
油商人「な……し、しかし……」
包帯男「警備兵も、減ってはいますがあちこちに残っております……何かあればそちらに」
包帯男「では私はここで」
スパンッ タタタタタ…
包帯男(……フッフッフッフ……用心棒、あの戦いは無効試合だ。今度こそ決着をつけようぞ……!)タタタタタ
231 = 230 :
庭
少年「……い、いてててて……相棒さん、大丈夫ですか……」ヨロヨロ
相棒「大丈夫だ」スック
少年「『ぐらいだあ』は……完全に壊れてしまいましたね」
相棒「帰りは血路を開いていく。問題無い……」
相棒「!」チャキッ
青袖「……相棒、だったかしら。噂は聞いているわ、あなたと用心棒の腕前は裏社会でも有名だもの」
相棒「……」
青袖「そしてそっちは……あのときの子供ね。なぜついてきたの?こんな危ない凧にまで乗って……」
少年「……僕も、この戦いを引き起こした者の一人だからだ」
青袖「そう。まあ何にせよあなたたちを生かしておくわけにはいかないわね。そういう契約なの」チャキッ
相棒「……坊主。先に行け」
少年「はいっ!」ダッ
青袖「通すと思う!?」ダッ
相棒「フンッ!」ビュンッ
青袖「ッ!?」サッ
相棒「……お前の相手は、私」チャキッ
青袖「……それなら精々、一対一の対決を楽しむとしましょうか」チャキッ
232 = 230 :
廊下
少年(油商人はどこだ?……いや、会ったところでどうする?)タタタタタ
少年(決まっている。鍛冶屋の蔵で、用心棒さんに火薬を詰めなおしてもらったこの洋式短銃で……)タタタタタ
少年(……僕に、できるのか?)タタタタタ
少年(いや、やるしかないんだ。もう後戻りできないんだ!)タタタタタ
少年「油商人は……この部屋か!?」スパーンッ
ガラーン
少年「居ない……!」ダッ
233 = 230 :
縁側
敗残兵「ハアーッ!ハアーッ!ハアーッ!ハアーッ!」ダダダダダ
敗残兵(死んだ!みんなみんな、死んでしまった!用心棒に殺された!)ダダダダダ
<ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!
敗残兵「!?何だ、屋根の上から……?」
用心棒「はあっ!だあっ!らあっ!」ブンッブンッブンッ
棒使い「ぐわあっ!があっ!ごほおっ……!」ガシャンガシャンガシャン
敗残兵「ああ!ああ!」ブルルッ
敗残兵「だ、駄目だ、駄目だ、駄目だあああっ!」ダダダダダ…
用心棒「うおおっ!おおっ!おおあああっ!」ブンッブンッブンッ
棒使い「ゴボッ……待っ……ゴボッ」ガシャンガシャンガシャン
用心棒「ハアーッ……ハアーッ……ハアーッ……」スック
棒使い「……ゴボッ……」グッタリ
用心棒「ハアーッ……ハアーッ……」ジャキッ
バアンッ
棒使い「」
用心棒「……ハアッ……ハアーッ!」
用心棒(息……息が……毒!クソッ……!)
234 = 230 :
廊下
少年「油商人は……この部屋か!?」スパーンッ
ガラーン
少年「居ない……!」ダッ
235 = 230 :
庭
相棒「フッ……!」ビュンッ
青袖「ふんっ!はあっ!」カキインッ ビュッ
相棒「ハッ……ハアッ!」キンッ ヒュッ
青袖「せいやァッ!」ブウンッ!
相棒「!」サッ
青袖「ふうーっ……!」サッ
相棒「ハッ!」ビュンッ
青袖「セイッ!」ビュンッ
カチインッ!
相棒(クナイ手裏剣……か)チャキッ
青袖(こいつ投剣もやるのか……!)チャキッ
相棒「……」ジリジリ
青袖「……」ジリジリ
<チャプ…
青袖(……?池に何か……)チラッ
赤袖「」グッタリ
青袖「!?」
相棒「隙あり」シュバッ ヒュッ
青袖「!?くっ!」カキインッ
相棒「甘い」ヒュンッ
青袖「ぐっ」ズパッ
相棒「……」サッ チャキッ
青袖「……」サッ チャキッ
青袖「……どうやら、負け戦みたいね」ジリジリ
相棒「……」
青袖「白星をくれてやるのは惜しいけど……こっちも、命あっての物種なのよね」ジリジリ
相棒「……つまり?」
青袖「こういうことよ!」ゴソッ ブンッ!
ボンッ!モクモクモクモク…
相棒「!」チャキッ
相棒「……」キョロキョロ
相棒(……逃げたか。赤袖を担いで……)
236 = 230 :
廊下
少年「油商人は……この部屋か!?」スパーンッ
包帯男「ん?油商人様ですか?今支度中で……」クルッ
少年「うわっ!?何だお前は!?」ビクッ
包帯男「うおっ!何だ貴様!?」ビクッ
包帯男「こっちのセリフだ!さては貴様例の生き残りの坊主だな?話は聞いているぞ!」シャキンッ
少年「うわわわわ……!あっ、そうだ!」ゴソゴソ
包帯男「……!」ピクッ
包帯男「させん!」ビュンッ!
少年「うわっ!」ガンッ ポロッ
少年(『大きな川』の『お札』が!――でも!)
少年「『火の海、出でよ』!」サッ
ボシュウッ!
包帯男「うおっ!?ゲホッゲホッ!煙幕か!?」
包帯男(一つは察知できたんだが……もう一つあったとは!)
包帯男「ガキめ、小癪な真似を……」スック
包帯男「ぬうっ!?」フラッ
包帯男(こ、この煙は一体……!?)フラフラ
少年(これは光弾じゃなかったのか……!)タタタタタ
少年(でも光弾だと思っていたおかげで使うと同時に顔を覆ったから、煙にまかれずにすぐ逃げ出せたぞ!)タタタタタ
包帯男「ヌウウ……!待て坊主……!」フラフラ
237 = 230 :
油商人の部屋
敗残兵「あ、あ、あ、油商人様……!」ドタドタ
油商人「!な、何だ!今度は!」
闇商人「仕留めたか!?」
敗残兵「と、とんでもない!棒使いさんが、棒使いさんが……!」
闇商人「棒使いがやられたのか!?……となると赤袖も……!?」
敗残兵「早く増援を!殺されてしまいます、早く!」
闇商人(油商人……手勢は、もう……!)チラッ
油商人「ああ、ああああ!逃げる!私は逃げるぞ!」
油商人「今あの隠し通路を使わずにいつ使うんだ……そうだ!そして私は生き残り、またいつもと同じように……!」
敗残兵「!?ふざけるな!」ジャキッ
バアンッ!
油商人「」ドサッ
闇商人「……な」
敗残兵「……こ、こいつが……こいつがいけないんだ……」ブルブル
敗残兵「これだけ味方を殺しておきながら、そんな身勝手な……!」ブルブル
闇商人(……油商人が、死んだ!)
闇商人(俺は、俺は……どうすればいい!?どうすれば奴らの追跡から逃れられ――)
238 = 230 :
ドスドス スパンッ
?「……!?これは!?」
闇商人「!?貴様は!?」ジャキッ
敗残兵「!?」ジャキッ
?「……」
闇商人「……ん?あんた、たしか……」
?「五月蠅い!」ビュビュンッ
シュバアーッ ズバッ
シュバアーッ ドウッ
闇商人「ぐはっ……!?」ドサッ
敗残兵「」ドサッ
?「……何たることだ……何たることだ!」
?「彼奴ら、俺の筋書きを破ったうえ糞までかけていきやがったな!許せん!」
ドスドス ガラッ ドスドス…
闇商人(ば、馬鹿な……あいつは……味方のはず……)
闇商人(いや、そもそも、あいつは……)
239 = 230 :
庭
用心棒「ハアーッ……ハアーッ……」フラフラ
相棒「!用心棒!」タタタ
用心棒「……よお、へへ……少し、ドジを踏んじまった」フラフラ
相棒「……あとは油商人だけ」
用心棒「ああ。終わったら、しばらくは……休めるだろう……」
?「あいにくだが、そんな機会は永遠に来ない。ここで死ぬからだ」ザッ
用心棒「!?」
相棒「!?」
用心棒「その頭巾は……覆面野郎!なぜここに……」
?「貴様らが……貴様らが、筋書きに従ってれば……全ては丸く収まったのに!」シュルッ
パサッ
用心棒「……!?」
相棒「!?」
用心棒「バカな……そんな、バカな!き、貴様は――ッ!」
用心棒「『剣士』!?」
?→剣士「……いらん知恵を蓄えて、何もかも台無しにしてくれたな」
剣士「代償は支払ってもらう……!」チャキッ
240 = 230 :
今日はここまで
消去法で包帯男の正体が推理できるんだけどわかるかな
241 :
用心棒「じょ、浄瑠璃書き気取りか……死ね!」バアンッ
剣士「貴様らが誘導通りに抜け道を使っていれば――」スッ
用心棒「!?」
用心棒(何だあの動きは!?まるで銃弾の動きを予測しているような……!?)
用心棒(武士……いや、槍使いの技か!?)
剣士「油商人の目前で私が貴様らの前に立ちはだかり、貴様らを殺し――」ツカツカ
相棒「ッ……!」ジリジリ
用心棒「クソッ……!」バアンッ
剣士「私は油商人から重用されるようになり、やがては跡継ぎとなれたのに――」スッ
用心棒「当たれッ!」バアンッ
剣士「そのために私がどれほど貴様に手を貸してやったか――」スッ
用心棒「な、何なんだ……」バアンッ
剣士「そもそも私はそのために油商人の配下になったのに――」スッ
用心棒「何なんだ貴様はッ!?」バアンッ
剣士「全てを!全てを無駄にしてくれたな――」スッ
用心棒「うおお――ッ!」バアンッ
剣士「断固!殺す!」キインッ!
用心棒(バカな!?銃弾を刀で――)
相棒「!危ない!」
用心棒「ぐふっ!」バスッ
用心棒「……かはっ……」ドサッ
242 = 241 :
相棒「……!」ダッ
剣士「向かってくるか、バカめ……『飛閃』!」ブンッ シュバアーッ
相棒「!?がっ……」ズバッ
相棒(こ、これは大男の……!?)
相棒「は、はあっ!」ビュンッ
剣士「!これは!」カキインッ
相棒「たあっ……!」ビュンッ
剣士「草薙流、か!」カキインッ
相棒「そうよ……覚悟はいい!?」ビュンッ
剣士「お前も草薙流の使い手だったとはな……しかし!」カキインッ
剣士「ぜいッ!」ビュンッ
相棒「!?」カキインッ
剣士「そうだ!俺も!草薙流!」ビュンッビュンッビュンッ
相棒「そ、そんな……!」カキインッカキインッカキインッ
剣士「そしてお前のその歳では……俺のほうが兄弟子だろう」パッ
相棒「……だから?」チャキッ
剣士「なに、もしかすると道場で会ったことがあるかもしれんと思ったんだ――そしてッ!」シュバッ
相棒(!この踏み込みは以前戦ったときの――いや、キレが数倍!?)
剣士「はあっ!」ビュンッ
相棒「やッ!」ビュンッ
剣士「……」
相棒「……」
相棒「ぐ」ドサッ
剣士「弟弟子……もとい、妹弟子では、兄弟子に敵わないのが道理だ」
243 = 241 :
相棒「……ゴボッ……」ピクピク
剣士「フン、全てが終わってしまった今では慰めにもならんが……トドメだ」チャキッ
用心棒「待て……!」ヨロヨロ
剣士「……おや、もう死んだと思っていたんだが……お前からにするか」クルッ
用心棒「喰らえ!」ポイッ
剣士「ぬうっ!?これは――」
ボガーンッ!
用心棒「ハアーッ……ハアーッ!相棒ッ……!」ヨロヨロ
相棒「……よ……よう、用心棒……ゴボッ」
用心棒「や、やめろ……喋るな、傷が……!」
相棒「……用心棒!まだだ!奴は!」
用心棒「――ッ!?」ガシャーンッ クルッ
剣士「『飛閃』!」シュバアーッ
ガシャーンッ!
用心棒「た、短銃が……!」
剣士「おまけだ!」シュバアーッ
用心棒「ぐはっ!」ズバッ ドターッ
剣士「驚かせやがって。どうだ!どうだ!オラッ!」ゲシッゲシッゲシッ
用心棒「がっ……ぐっ……」ガッガッガッ
剣士「痛いか。痛いだろうな。だが私はその何倍も痛いんだ、貴様の勝手のせいでな!」ゲシッゲシッゲシッ
244 = 241 :
用心棒「……」ピクピク
相棒「……よ、用心棒……ゴボッ」グッタリ
剣士「フウーッ……おや?用心棒、お前ちゃんと刀を持っているじゃないか。短銃使いのくせに……殊勝な心がけだな」
剣士「……フム。そういえば、ただ殺してもつまらないしな……」
相棒「……用心棒……逃げろ……お前だけでも……」
用心棒「……そんなことが……できるか」
用心棒「こんな……クソ野郎に、お前は殺されて、俺だけ、逃げろってのか……」
剣士「なんだお前ら結構元気だな……フウーム、ではこうしようじゃないか、用心棒」
剣士「五歩の距離で見合って、俺が投げたこの石が地面に着いたらお互い抜刀して、最終決着だ」
剣士「形の上だけでも正々堂々の勝負としよう……おい立てるか?できないならこのまま蹴り殺すぞ」
用心棒「……ああ、できるさ……できるとも。ぶっ殺してやるぜ、クソッたれ」フラフラ
剣士「フン……」ザッザッザッザッザッ
245 = 241 :
剣士「この石が合図だ。いくぞ」ポイッ
ヒュウウウウウウウウ…
剣士(用心棒……滅茶苦茶やってくれたお前もこれまでだ。俺は大阪ででもやりなおすとするさ……)
剣士(幸い、四天王から吸収した技の数々がある。これがあれば新設されるという噂のある京都警備隊あたりで成りあがれるだろう)
用心棒(……最後の一手も、奴の目には通じるまい)
用心棒(万事……窮す、か……)
相棒「……用心棒ッ!」
用心棒「相棒ッ……先に行って、待ってるぜ!」
ポトンッ
用心棒「ウオオオオーッ!」シャキンッ
剣士「『飛せ』――!?」シャキンッ
少年「うわあああああああ――っ!」ジャキッ
ズダンッ!ダアンッ!
246 = 241 :
……
剣士「……」
用心棒「……」
少年「……」
相棒「……」
ドシャッ
剣士「」
用心棒「……」
用心棒「……やった。殺した……俺が」
相棒「……ゴボッ……その、刀、は……」
少年「……あのときの?」
用心棒「……ああ。鉄砲に変形する刀……」ポイッ
ガランッ
用心棒「……最後の最後で、こいつは読み間違った」
少年「……僕の、弾丸は?」
用心棒「……バカめ。鉄砲ってのは……一朝一夕で、当たるようになるもんじゃ、ねえんだ……」
相棒「……」
247 = 241 :
少年「……あっ!用心棒さん、相棒さん、その傷は!?大丈夫なんですか!?」
用心棒「大丈夫なわけ……ねえだろッ!クソッ!クソ痛ぇ!」
相棒「まったく……ね……」
相棒「……私、ちょっと……眠っても、いい?」
用心棒「おい」
相棒「バカ……死ぬわけ……な……」
相棒「……」ガクッ
少年「相棒さん!?」
用心棒「相棒!?おいっ!」ユサユサ
相棒「……!死なないから、眠らせろって、言ってるだろッ!」ブンッ
用心棒「ぐわっ!?」ガンッ
相棒「……起こすな……」ガクッ
用心棒「……」
少年「……」
用心棒「……ははっ」
少年「……えへへ」
用心棒「……行くぞ。表には奉行所の連中がいるだろう、裏から出よう」
少年「はい!」
用心棒「よいしょっと」グイッ
相棒「……うーん……」
248 = 241 :
裏門
発明家「用心棒ッ!」
用心棒「うわっ……発明家!?なんでここに……?」
発明家「こんなドンパチやってればツンボでも気づく。その傷は……!」
用心棒「大丈夫だ……ほっとかなければ、死ぬ傷じゃあない」
相棒「……死なないって……」
用心棒「わかったわかった」
発明家「君も……いたのか、この鉄火場に」
少年「はい……お札、ありがとうございました。無かったら僕、おかしな包帯男に殺されていました」
用心棒「包帯男だと?」
少年「あっ、はい。全身包帯でぐるぐる巻きの男です」
少年「途中で出くわして……発明家さんからもらったカラクリで撒いたのですが」
用心棒「……」
用心棒(そういえば……槍使いは死体を確認していないが、剣士と同じようなことは……)
用心棒(……まさか、な)
発明家「……そして、少年。君に会わせたい人が居るんだ」
少年「え?」
発明家「……出てきてくれ」
髭面の男「……」ザッ
少年「……!あなたは!」
髭面の男「うおおーッ!少年ッ!」ガシーッ
少年「叔父上ーッ!」ガシーッ
249 = 241 :
髭面の男「うおお、うおっ、うおおおおーっ!少年、少年……」
髭面の男「ああ、見つけてやれなくてすまない、俺は君が兄上ともども死んだものとばかり……」
少年「僕もです、僕もなんです、叔父上……きっと生きていると自分に信じ込ませようとしてはいたけど……どうせ殺されてしまったんだろうと!」
髭面の男「いいんだ、いいんだ、そんなことは……」
髭面の男「少年、俺と肥前に行こう。俺の死んだ妻の家が肥前にあるんだが、彼らが俺たちを受け入れてくれると言っている……」
少年「はい、もちろんです……もちろんですとも!ご一緒します!」
用心棒「……大団円だな」
相棒「……うるさい……」
発明家「……さあ、そろそろここを出よう。奉行所の連中が来ると面倒だ」
用心棒「……じゃあ、少年。ここでお別れだ」
少年「え……」
用心棒「……俺たちとお前の生きる道は違うんだ。交わっちゃならないんだ、それは」
少年「……もう、会えないんですか」
用心棒「……少年。俺たちは傷を癒したら、闇商人を殺しに行くんだ」
用心棒「そういう世界だ、俺たちが生きているのは。お前もこの何日かでよくわかっただろう」
少年「……」
用心棒「……まあ、覚えとくさ。ちょっとでも俺たちと一緒に戦った奴が、肥前にいるってな」
用心棒「あばよ、少年」ザッ
少年「……!」
少年「用心棒さん!僕も……僕も、忘れませんよ!」
少年「相棒さんも!僕を助けてくれた人たちが、江戸に居るって……僕、絶対忘れませんから!」
少年「本当に、本当に……ありがとうございました!」ペコリ
用心棒「……おう」スタスタ
相棒「……ええ」
発明家「……さあ、行こうか」
髭面の男「……格好いい人たちだな」
少年「……はい。善い人じゃありませんが、格好良い人たちです」
少年「……!あっ!」
少年「用心棒さん、僕のこと、坊主じゃなくて少年って……!」
250 = 241 :
路地
用心棒「闇医者は……向こうだったか……?」スタスタ
相棒「……そこ、右」
用心棒「ああ、そうか……」
用心棒「……あの、バカめ。絶対忘れねえとよ」
用心棒「忘れたほうが……平和だってのによ」グスッ
相棒「……用心棒」
用心棒「うるせえ。泣いてねえよ」グスッ
相棒「……違う。最後の、一発」
用心棒「ん?……」
相棒「……剣士を殺した銃弾、本当にお前が撃ったのか」
用心棒「……」
用心棒「どっちだっていいだろ」
相棒「……そうね」
用心棒「……ああクソ、この道やけにドロドロだな……雪がまだ残ってやがる。足袋が汚れて仕方ねえ」
用心棒「日陰だからかな。ひでえ道だ」
相棒「……下ろして」
用心棒「ん?大丈夫なのか?」
相棒「大丈夫。私も、一緒に歩く」
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