元スレ用心棒「派手にいくぜ」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 :
151 = 150 :
町奉行「 御 用 だ - ッ ッ ! !」ズバーンッ
侍甲「御よ……うおっ死体!」
侍乙「なんという……」
侍丙「……ウップ」
侍丁「…………」
町奉行「下手人は?下手人はどこだ?」ウロウロ
町奉行「ここか?」ガラッ
町奉行「ここか?」ガラッ
町奉行「それともここか?」パカッ
侍甲「さすがに櫃の中に隠れる奴はいないと思います町奉行」
町奉行「実に綺麗に食べ切ってある」
町奉行「?……参った、下手人がどこにもいないぞ」
侍乙「向かいの住人は『銃声が鳴った後は注目していたので出入りを見逃すことはない』と言っておりましたが……」
侍丙「『子供だったりしたらわからないが』とは言っていたが……子供がやったとは思えないしなあ」
町奉行「……?????」
侍丁「……」コソコソ
152 = 150 :
ガヤガヤ ガヤガヤ
侍丁「……」キョロキョロ
怪しい男「ここだ」
侍丁「おう、そこにいたか……」
スタスタ……
怪しい男「……で、どうだ」
侍丁「『鎧武者』たちは全滅。用心棒どもの姿はない」
怪しい男「なるほどな……武士様の想定通りになったわけだ」
侍丁「ああ。武士様にその旨お伝えしてくれ」
怪しい男「確かに」スタスタ……
侍丁(……さて、町奉行や他の侍に気づかれないうちに鍛冶屋に戻るか)
153 = 150 :
カツーンッ コツーンッ
カツーンッ コツーンッ
カツーンッ コツーンッ……
相棒「……」
用心棒「……」
少年「……」
相棒「段差だ」ヒョイッ
用心棒「おっと」ヒョイッ
少年「よっと……」ヒョイッ
相棒「……」
用心棒「……」
少年「……」
相棒「長い」
用心棒「長いな」
少年「長い……ですね」
用心棒「このぶんだと港のあたりまで続いていそうだな……くっ」ズキン
用心棒「すまん、少し傷が痛む。休憩しよう」ドカッ
少年「そうですね……僕も、少しくたびれてしまいました……」
相棒「やむなし」
用心棒「……そうだ、相棒。明かりを寄越せ。ついでに少し読みたいものがある」
相棒「ん」スッ
用心棒「さて……」ガサガサ
少年「それは……?」
用心棒「……鍛冶屋からの手紙だ」
154 = 150 :
『ハイケー、用心棒様。お元気やろか。
この手紙が読まれとるゆうことは、うちは油商人の手のモンに殺されてもーたんやろな。
しゃあない。お天道様の下を歩けないうちにはお似合いの最期や。
でもうちもそのまま引っ込んでおられるほど諦めがよくない。用心棒、敵討ち頼むわ。
この手紙と一緒に入ってる武器と、それに、港の近くにあるうちの蔵の中身を丸々くれたる。
隠し通路を抜ければ、蔵はそこから見える場所にあるからすぐわかると思うで。
蔵の中には間違いなく油商人をやりこめられる〈大駒〉もあるで。
ほな、ご武運をお祈りするで』
155 = 150 :
用心棒「……なるほどな」
少年「……あっ、端に走り書きがあります」
『うち、用心棒に売る武器を仕込み箪笥に一時保管するだけなのになんでこんなん書いとるんやろ。あほくさ』
用心棒「……鍛冶屋……」
相棒「……」
用心棒「……そろそろ進むか。今度は俺が先頭を歩く」スック
少年「……はい」
相棒「……ん」
カツーンッ コツーンッ カツーンッ コツーンッ…
156 = 150 :
ギギギギギ…
用心棒「おっ、外だ」
ザザア… ザザア…
少年「本当に港のそばですね……」
相棒「蔵は……」キョロキョロ
用心棒「船着き場の向こうに、一つだけあるな……行くぞ」
用心棒(夜はまだ深く……紺碧の海に引き立てられて、闇は一層深い……まだ何か、一悶着がありそうだ)
用心棒(しかし日が昇らないことはない。女神様が閉じこもった岩戸……こじあけてやるとも)
用心棒(……〈大駒〉でな……)
157 = 150 :
今日はここまで
次回四天王戦です
158 :
楽しみ
159 :
蔵
「……」
(所せましと大小さまざまな木箱が置かれた蔵)
(その中央、人の背丈ほどもある大きな木箱の横に、俺は居る……)
(ーー鍛冶屋の仕込み箪笥の中にあったあの手紙……)
(俺と同じように見つけられたなら、用心棒は必ずここに来る)
<ザザア… ザザア…
「……」
用心棒「そこのお前。動くな」ジャキッ
「!」ピクッ
用心棒「振り向くのも駄目だ。少しでも身じろぎしたら撃つ」
用心棒(まさか先客が居たとはな……しかし、どういうわけか無警戒に突っ立っていたおかげでこの位置を取れたぜ)
「……」
用心棒(……この男。背後から見た限りでは、そこそこ身だしなみの整った侍、といったところか)
用心棒(覆面ヤローではない……不気味に先回りしている人影ーー奴かと思ったのだがな)
侍?「……何か言うことはないのか?」
用心棒(……この余裕)
用心棒(上っ面だけではないな)
160 = 159 :
用心棒(ーー掴みかかられるほど近くはない。不意に横っ飛びされた程度では急所を外さん)
用心棒(撃鉄を戻す隙を与えないために……撃つとなれば必殺、一発で仕留める)
用心棒「……この場所をどこで知った」
侍?「……鍛冶屋さ。仕込み箪笥の中の文……」
用心棒「!……」
用心棒「……貴様が、鍛冶屋を?」
侍?「……ふん。日陰者も少しは賢くなきゃあな」
用心棒「……そうか」ジャキッ
侍?「まあ待てよ用心棒……」
侍?「耳を澄ましてみろ」
侍?「匂いを嗅いでみろ」
侍?「目を凝らしてみろ」
侍?「全てがこの出逢いを引き立てているんだぜ」
用心棒「……?」
侍?「波の音」
侍?「潮の香」
侍?「そして……高窓の月光!」ピカッ
用心棒(うっ!?奴、いつのまに手の中に鏡をーー月光の目くらまし!)
用心棒「このァ!」バアンッ!
侍?「フッ」シュバッ
用心棒(くっ、バカでかい木箱の陰に隠れられた……)
用心棒(ーーまだだ!裏口から入り込んだ相棒が背後から斬る!)
161 = 159 :
侍?「用心棒。正直俺は最初はお前のことを見くびっていたよ」
侍?「だがお前は剣士、槍使い、大男を下した。素晴らしい!俺でも容易にはいくまい」
用心棒「な、何を……」
侍?「そう思ったからわざわざ部下ーーあの鉄砲を振り回す替え玉に待ち伏せさせ、騒ぎを起こして……」
侍?「抜け道、そして邪魔の入らないこの戦場に誘導したんだ!」
相棒(完全に背後をとった……狩る!)シュザッ
侍?「ーーだから」ジャキインッ ズドオンッ!
チュイーンッ
相棒「ぐ!?」バスッ ガクッ
用心棒「!?」
侍?「せいぜい楽しませてくれよ」
相棒「くっ……物陰に……」ズルルッ
相棒(ーー馬鹿な!跳弾が、私の脇腹に……)
相棒(奴は前を向いたままだったのに……まるで狙いすましたかのように……!)
用心棒(ーーこの特殊技能ッ……それに『武士』と名乗っていた奴を『替え玉』と……)
用心棒(そうか、こいつは……!)
武士「ーーこの武士様をよォ!」
162 = 159 :
鍛冶屋の抜け道 出口
ギギギ……
?「……」スタスタ
?「……」キョロキョロ
?(チッ……用心棒たちの行方を見失ってしまった……)
?(鍛冶屋の店に入るまでは把握していた)
?(しかし鍛冶屋が死んでいる以上、そこに有益なものは無いはず)
?(すぐに移動すると思い、周辺に網を張っていたんだが……こんな抜け道があったとはな)
?(奉行所の連中が居なくなった後探し回ってようやく見つけたはいいが……)
?(今からではどこを探したらいいかもわからん……)
?「……」
?(用心棒の行方を把握するのは不可欠なことではないとはいえ……)
?(奴らが、俺の予想を超えてきた)
?(俺の計画が、崩れたーー?)
?(ーーまさかな)
スタスタ……
163 = 159 :
武士「そら踊れっ!踊れっ!踊れーーっ!」ズドオンッ! ズドオンッ! ズドオンッ!
カキーンッ! バキーンッ! ガシューンッ!
用心棒「うおおっ!?」サッ
キューンッ プシューンッ
バキャッ!
用心棒(ヒャッ!耳のすぐ横に着弾しやがった!)
相棒「喰らえ……!」ビュンッ
武士「おっと。投剣か、いい腕だ!」サッ ズドオンッ!
相棒「チッ」サッ
カキーンッ
相棒「!」サッ ヨロッ
相棒(うっ、脇腹の傷が……!)ドタッ
武士「少し早いが終わりだな!」ジャキッ
用心棒(相棒の投剣から逃れようとして俺の射線上に出てきた!ーーそれにお前はもう六発撃ち切ったじゃないか!馬鹿め!)
用心棒「くたばれ!」バッ ジャキッ
武士「おおどうした!お前が先かァ!」ガシャーンッ! ジャキンッ!
用心棒「!?」
用心棒(奴の袖から弾丸が沢山ついた鉄の棒が出てきて……短銃に弾を込めるカラクリか!)
用心棒(しかし撃つのは俺のほうが早い!奴の眉間に一発ーーぐっ!?)ズキッ
用心棒(あちこちの傷が、今に、なって……!)
用心棒「う、おあああああ!」バアンッ!
武士「そらよっ!」ズドオンッ!
164 = 159 :
キューンッ
武士「ぐっ……!」バスッ
武士(おのれ、左腕を……!)
カキーンッ
キュイーンッ
キーンッ
用心棒「ぐふっ!」バスッ
用心棒(い、いかん……右脚に……!)
武士「……フフフフフ」サッ
武士「フフフフフッ!いいぞ!久々に血が沸き立つようだ……!」
武士「さあ、まだまだ夜は長いぞ……!」ジャキッ
相棒「……!」
用心棒「……上等、じゃあ、ねえかッ!」
165 = 159 :
今日はここまで
格ゲーになったら槍使いが強キャラだと思います
166 :
格ゲーになったら大男が最弱だろうなぁ
リアルではとんでもなく強いと思うけど
167 :
蔵の外
<バアンッ!バアンッ!
<ドキューンッ!カキーンッ! ドキューンッ!
<ドカッ! ドキューンッ!
少年(銃声が……すごい戦いみたいだ)
少年(相手はそんなに強いのだろうか?第一用心棒さんたちは傷だらけだ……!)ハラハラ
……ザッ ザッ ザッ
少年「!」ササッ
侍丁「……もう始まっているようだな。大分激しいようだ」
怪しい男「なに、俺たちは武士様に言われたとおり周りを固めるだけさ」
少年(武士……?中にいるのは四天王の一人、武士なのか!)
少年(こうしちゃいられない、僕も何かお二人の手助けを……)
侍丁(……ん?蔵の角の向こうのほうへ、足跡が続いている。それも新しい……)
怪しい男「!……おい」
侍丁「ああ」ゴソゴソ ジジジ……
少年(……ん?何の音だ?)
侍丁「……」コロロ…
少年(顔が出せないからわからないが……奴等、何かこちらへ転がした?)
少年(ーー導火線の音?--)
少年(ハッ!爆弾!)ダッ
168 = 167 :
蔵
用心棒(あちこちに積まれた木箱……)
用心棒(その山の陰一つ一つが、夜の森の茂み……死の潜む闇……)
用心棒(どこから来る……右か……左か……)
チカッ
用心棒(む、あの木箱の上に置いてあるのはさっきの鏡?ーー見ている!奴が!)
用心棒(銃弾の軌道は――!?)
ビューンッ
用心棒「うおっ!?」バッ
ズドッ!
用心棒(これは、槍?奴め、鏡越しに槍を投げてきやがったのか!)
用心棒(そうか、周りの木箱に武器が――ハッ!)
武士「飛び出してきたな――今度は鏡無しで見える」ジャキッ
用心棒(まず――)
169 = 167 :
ズドオンッ!
武士「うおっ!?」フラッ
用心棒「おおっ!?」フラッ
用心棒(煙が――爆弾か!?)
武士「くそっ、逃さん!」ジャキッ
相棒「撃たせない……!」バッ ビュンッ
武士「ぐっ!」ズバッ
武士「痛ぇなあ!」ドキューンッ
相棒(木箱から見つけた盾で……!)ガシャッ
カキーンッ
キュイーンッ
相棒「がっ……!」バスッ
武士「盾など通用せんなあ!とどめ喰らえッ」ジャキッ
用心棒「バカめ!後ろだ!」ジャキッ
<タタタタタ
<ダダダッ マテ!クソガキ!
<ニカイニニゲタゾ!オエ!
用心棒(――爆発の粉塵の中から、坊主が!それに追手が――)
170 = 167 :
武士「……へっ」ニヤリ
武士「俺の背後は死角じゃあねえぜッ!」ドキューンッドキューンッドキューンッ
用心棒「はっ!?」サッ
カキーンッ
キュイーンッ
バキーンッ
用心棒「ぐ」バスッ
武士(――?避けても二発は当たる計算だったんだが……ッ!)
相棒「……」ガシャッ
武士(こ、こいつ、弾丸に盾を当てて軌道を……!)
相棒「ふんっ」ブンッ ビューンッ
武士「チッ!」ゲシッ
ガランッ
相棒「隙あり」シュバッ
武士「うっ!?」
ザシュッ!
武士「ぐふっ……退け!退けッ!」ドキューンッ ドキューンッ
相棒「……」サッ
武士「……くく、く……」サッ
武士(最高だ……これほど死を……生を間近に感じたことはない……!)ガシャーンッ ジャキッ!
用心棒「はあ……はあ……」
用心棒(よし……物陰に隠れた。また……振り出し……)
用心棒(――いや、坊主が……!)
171 = 167 :
蔵 二階
少年「うわわわわ……!」タタタ
侍丁「待ておらァ!クソガキ!何してやがったッ!」タタタ
怪しい男「クソッ、木箱が邪魔だ……おい!挟み撃ちだ、お前はそっちから回り込め!」タタタ
侍丁「わかった!」クルッ タタタ…
少年(ううっ……このままじゃ捕まってしまう……!)タタタ…
少年(そうだっ!洋式短銃!)ゴソゴソ
少年(仕方ない、仕方ないんだ、これで……)ジャキッ
少年(……ん?)ガチャガチャ
少年(火薬が湿気てる――!)ガーンッ
少年(ど、ど、ど、どうしよう……いや、撃てなくて気づくよりはよかったと考えよう!)
少年(周りに何か……)キョロキョロ
少年(!……この木箱は……?)
172 = 167 :
一階
用心棒「……」
用心棒(相棒は……どこだ……)
用心棒(奴は……どこだ……?)
ガタッ!
用心棒「!」ジャキッ
鼠「チューチュー!チチチ」
用心棒「ふう……」
<ドキューンッ
カキーンッ
キュイーンッ
鼠「ギッ」バシュッ
鼠「」コロッ
用心棒「!?」
用心棒(音だけを頼りにここまで精密に……!?)
用心棒(……動けば死ぬってか……!)
用心棒(ッ)クラッ
用心棒(……クソッ。しかしいい加減止血をしなくちゃあ冗談抜きに死にかねないぜ……!)
173 = 167 :
二階
侍丁「……」シャキンッ
侍丁「……」スタ… スタ…
侍丁「……」スタ… スタ…
ググッ
侍丁(!足元に、縄が――!?)
バララッ
侍丁「はっ!」バッ
ガタタタンッ! カランッ…
侍丁(槍の束が倒れてくる仕掛けか……あのクソガキ、よくも……!)
<ギシッ…
侍丁「!そこか!」バッ
少年「!」
侍丁「浅知恵は今ので終わりか……?」
侍丁(追い詰めたぞ……クソガキの後ろは吹き抜け。奴に飛び降りる度胸なんてあるまい……)
怪しい男「さ、侍丁……」ヨロヨロ
侍丁「おお、挟み撃ちは成功……ゲッ!何だお前……ゲホッ!ゲホッ!何でそんな粉まみれなんだ!?」
怪しい男「張ってあった縄に引っかかって……」
侍丁「……」
174 = 167 :
侍丁「……」
少年「……」
侍丁「……ク・ソ・ガ・キィーッ!」シャキンッ ダッ
少年「今だ!」ゴソッ グッ
侍丁(む?クソガキが床に何かを押し付けて――あれは短銃か?)
侍丁「何かわからんが喰ら……?」カチッ
侍丁「うおっ!?足が!?」ガグンッ
少年(最後の足止め……狩猟用の罠!)
少年「今だ!」ガチンッ
侍丁(クソガキが短銃の火打石の部分を押し付けて、床に火を――)
シュボッ
怪しい男「こ、これはッ!?」
侍丁(うっ!?暗くて気づかなかったが、床に火薬の粉が一直線に敷いてある!)
ボボボボボボボボボ……
侍丁(その先には――その先の木箱は――!)
『火薬』
侍丁「ぬおあああ――ッ!こんのクソガキィ――ッ!」ビュンッ
少年(!?か、刀を投げ――)
175 = 167 :
一階
<クソガキーッ!
用心棒(……?)
ガランッ
用心棒(刀が落ちてきた?)
少年「わーっ!南無三宝!」ドターッ
用心棒「げっ!?」
少年「あっ用心棒さん……刀!刀刺さってませんか!?」
用心棒「な、何を言ってん……」
<ドキューンッ
用心棒「!しまっ――」
カキーンッ
キュイーンッ
用心棒「ごふっ!」バスッ
少年「ああっ!?」
武士「勝った!直接ド玉をぶち抜いて終わりだあああっ!」バッ ジャキッ
ド ゴ ォ ン ッ
武士「うおおおっ!?またかッ!」フラッ
謎の男「うぎゃあ――っ!死んだ――っ!」ドターッ
武士「うおっ!?射線を塞ぐなバカが!」
武士(落ちてきたバカと粉塵でよく見えんが、用心棒の場所はわかっている!壁に反射させて撃ち込む!)
武士「最後の一発!喰らえ!」ドキューンッ!
カキーンッ
バスッ
「ぐうっ」
武士(当たった!)
176 = 167 :
侍丁「あ、悪魔め……」ガクッ
用心棒「……」
武士(――バカな!落ちてきた侍丁を盾に!?)
武士(まだだ、部下が射線を塞いでいる……この隙に狙いを付け直して――)ジャキッ
用心棒「悪魔で結構……!」ジャキッ バアンッ
カキーンッ
武士「ぐおおっ!?」バスッ
武士(お、俺の軌道を利用しやがっ――)
ドスッ!
武士「がっ……!?」
相棒「……」
武士(こ、この、女……!)
武士(だが……後ろから刺された衝撃で、さっきの軌道からは脱した!)
武士(探せ、新しい軌道……俺の、勝利への軌道――)
バアンッ
怪しい男「こ、今度こそ死ん……だ……」ドタッ
武士(――!射線がッ!)
用心棒「死んで仏になるよりも」ジャキッ
用心棒「生きて悪魔になってやる!」バアンッ
武士「――」バスッ
武士(死に近づこうとした俺に、生を渇望するあいつを殺せるわけもなし、か……)
武士(構わんさーーああ、楽しかった)
177 = 167 :
相棒「……死んだ……」ブンッ
武士「」ドシャッ
用心棒「……そう、か……」ガクッ
相棒「……」ガクッ
少年「よ、用心棒さん!相棒さん!怪我が……大変な……!」
用心棒「……ああ、鉛玉は……好みじゃないんだが……もう、腹いっぱいだ」
用心棒「……相棒、お前は……」
相棒「……」
用心棒「……」
相棒「……」
用心棒「……何か喋れ」
相棒「……腹が減った」
用心棒「今か?」
少年「あ、あの……鍛冶屋の家から持ってきた握り飯なら、いくつか」
相棒「食べよう」
用心棒「今か?」
相棒「嫌か?」
用心棒「……」
用心棒「とりあえず……申し訳程度にでも、傷の手当てをしてからにしよう」
178 = 167 :
ゴソゴソ ガサガサ…
用心棒「モグモグ……さて、これからどうしたものか……」
相棒「モグモグここは危険……か……ハグハグ」
用心棒「ああ……そろそろさっきの爆音を聞きつけた野次馬が集まってくるだろう……」
用心棒「それに混じって油商人の手の者も……な。モグモグハグハグ……ゴクンッ」
相棒「モグモグ……この体で……どこまで行けるか。モグモグゴクン」
用心棒「……厳しい、だろうな……」
用心棒「どこかに……隠れなければならないんだが――くっ」ズキッ
用心棒「人心地ついたら……いよいよ痛み出してきやがった……」ズキズキ
相棒「……」
相棒「……?坊主は……」
用心棒「ああ……?さっき、蔵の中を見てくるといって……」
<ガタンッ!
相棒「ッ!?」チャキッ
用心棒「何の音だ!?」ジャキッ
用心棒「――あれは!?」
179 = 167 :
日の出後
蔵の外
ガヤガヤ ザワザワ
魚屋(朝一で仕入れをしようと海沿いを歩いてきたら……なんだこの人混みは?)
反物屋「うーん、ここからじゃ何も見えんなあ……」キョロキョロ
魚屋「あっ反物屋!」
反物屋「あっ魚屋!」
魚屋「また何かあったみたいですなあ、今度は何だっていうんです?」
反物屋「どうもそこの蔵で爆発があったらしい。それも続けて二度……」
魚屋「爆発?ここは花火でも収めてるんですかねえ?」
反物屋「いや、そういうわけじゃないようだが……おっ見なよ、町奉行のお出ましだ」
町奉行「全員整列ッ!」
侍甲「はっ!」
侍乙「はっ!」
侍丙「はっ!」
町奉行「……ん?全員整列!」
侍甲「はっ!」
侍乙「はっ!」
侍丙「はっ!……あれ?町奉行、侍丁のやつが居ません!」
町奉行「何?……ふむ、まあいい。これから状況を説明する!」
町奉行「今日の未明、この蔵で二度の爆発があったとの情報が入った!昨晩の鍛冶屋での事件との関連も疑われる!」
町奉行「これより蔵に突入、関係者及び証拠物件の確保を行うーーさすまたァ!」
侍甲「準備よし!」ガチャッ
町奉行「十手ェ!」
侍乙「準備よし!」カチャッ
町奉行「提灯ッ!」
侍丙「準備よし!」スチャッ
180 = 167 :
蔵 一階
町奉行「御用だ――ッ!」ズバーンッ
侍甲「うおっ!凄い火薬の臭いだ……」
侍乙「……木箱だらけだな」
侍丙「……どうも、南蛮渡来の品も混じっているようだ……」
町奉行「――うおっ!?これは!」
侍甲「一体何です――ああっ!?」
侍丁「」
町奉行「さ、侍丁!――駄目だ、死んでいる!」
侍乙「何だって!?侍丁がなぜここに!?」
侍丙「あっ、見てください!他にも死体がっ!」
侍甲「生きている者はいないのか?」
侍乙「いや、死体だけです……」
町奉行(攘夷を叫ぶ連中の影も無いのに、ここ最近の物騒さは何だ!?)
町奉行(その上奉行所の役人までが――!)
侍甲「町奉行、如何しましょう!?」
町奉行「……」
町奉行「これより箝口令を発する!鍛冶屋の事件、そしてこの蔵の事件に関する情報を絶対に漏らさぬよう心せよ!」
町奉行「こちらの動きを掴ませず、電撃!下手人をひっ捕らえるのだ!」
181 = 167 :
今日はここまで
182 :
乙。
夢中で読んでしまった…次の更新を待ってます
183 :
少年いらない
184 :
蔵
地下
用心棒「……上が騒がしい。どうやら奉行所の連中が到着したようだな……」
相棒「……」キョロキョロ
用心棒「気にするな相棒。奴ら、この秘密の地下室に気づきやしないさ」
用心棒「坊主が入口を見つけなきゃ、俺たちも気づかなかっただろう……」
少年「僕も驚きました……まさかとは思いましたが、ここにも隠し部屋があったなんて」
用心棒「ああ……しかし手紙にこのことが書いていなかったことからして、鍛冶屋もこの部屋のことは知らなかったんだろう」
用心棒「おそらくこの隠し部屋は闇社会には関係ない、この蔵を建てたやつの趣味なんだ」
用心棒「それにしては実に丁寧な作りのようだが……」
少年「え?……あ、そういえば、息苦しくないような……」
相棒「潮の匂い……」クンクン
用心棒「どこかに空気穴が開いてるようだな。僅かに風が通っているおかげでホコリも積もっていない……」
用心棒「ちょっとばかし気は滅入るが上等な隠れ家だ。これで布団があれば言うことはないんだが……」
少年「布団ですか……あっ!見てください、あっちに寝台があります!」
用心棒「寝台?――おおっ、本当だ!」
用心棒「坊主、一日だけここで休むことにしようじゃねえか。相棒も――」
相棒「スー… スー… ムニャムニャ…」
用心棒「早いな!?」
用心棒「くそっ、俺ももう寝るぜ……痛みもあるが、それ以上に、くたくた、だ……」ドサッ
用心棒「グゴゴゴゴゴゴゴゴ…」
少年(早いなあ……)
少年(ああ、でも僕もすっかり疲れてしまった……)ドサッ
少年(すえた臭いのする布団だけど……なんとか……人心地……つい……て……)
少年「グウ…グウ…」
185 = 184 :
昼
油商人の屋敷
油商人「闇商人!どうするんだッ!」
油商人「武士が行方知れずだ……きっと奴も用心棒に敗れたんだ!」
油商人「用心棒たちは今にも私たちを殺しに来るかもしれんぞ!」
闇商人「油商人様……どうか落ち着いてください」
闇商人(やれやれ……えらい慌てようだ、みっともない)
闇商人(この部屋まで来る途中もこれでもかというほど警備が配置されていたし……)
闇商人(それはそうと、四天王をことごとく破るとは……用心棒の奴めそうとう発奮しているな)
闇商人(しかし奴も相当の傷を負っているはず。無敵などでは決してない……)
油商人「落ち着けだと!?どうやって落ち着けというんだ奴を倒す手段すら無いというのに!」
闇商人「そんなことはありません、油商人様。実はこういうときのために、江戸でも一、二を争う腕の殺し屋の二人組を雇っておいたのです……」
油商人「何だと!?」
闇商人「その二人組ーー『赤袖』と『青袖』といいますがーーここに連れてきておりますが、お目にかけましょうか?」
油商人「無論だ!入れ!」
赤袖「失礼致ぁーすぅぅう!」ガラーッ ダダンッ!
油商人「うわっ!?なんだこいつは!?」
油商人(鮮やかな赤の狩衣を着た男?太刀まで履いている……一体いつの時代の服装だ!?)
赤袖「拙者が闇商人殿のご依頼に応じっ……不貞の輩を除くためぇぇ~」
赤袖「巷の闇より参上した陰の士ーー赤袖でございまするぅぅぅッ!」ババンッ!
186 = 184 :
油商人「……闇商人」
闇商人「う、腕前は折り紙つきでございます!おい!青袖もご挨拶するんだ!」
青袖「どうも、連れがご無礼を……」スタスタ
油商人(紺の着物の女……女、か)
油商人(頭のおかしい時代錯誤野郎と、特別大柄なわけでもない女の二人組……)
赤袖「むぅ?油商人殿、拙者共の力をお疑いになりますかぁぁぁ!?」
赤袖「さすればこの場で鎌倉の昔より伝わりし剣の舞をご覧に入れーー」
青袖「フンッ」ドッ
赤袖「」ガクッ
青袖「申し訳ありません。今日は相方の調子が悪いようなのでここで失礼します」
闇商人「……では、私もこの辺で」
ガラッ スタスタ
ピシャリ
油商人「……」
?「……」コソッ
187 = 184 :
?(何だあいつらは……あんなふざけた奴らが江戸で一、二を争う殺し屋だっていうのか?)
?(知恵遅れの大男よりあてになるまい。計画には変更なしだ)
<聞いたか?武士たちが行方不明だとよ
<それは本当か?鍛冶屋を始末した後帰ってきたのは見たが……
?(おっと、巡視か)サッ
警備一「その後部下を連れて出かけて、それっきりさ。用心棒にやられちまったのかね?」スタスタ
警備二「うーん、そうとも限らんぜ。何せ武士とその直属の部下たちは無断で動くことが多かったからなあ」スタスタ
警備一「それもそうだな。秘密行動というのも不思議じゃあない……武士の部下の中には奉行所に潜り込んだ密偵も居たらしいし」スタスタ
警備二「ふうん、じゃあ奉行所の方向から武士たちの情報を仕入れられるんじゃないかね?」スタスタ
警備一「いや、それが……奉行所の連中、どうもピリピリしていてな。とても調べられる状況じゃあないらしい」スタスタ
警備一「それだけじゃあない、どこで何があったからそんな状況なのかも徹底的に隠していやがる……」スタスタ
<なるほどな……
<何かあるぜこれは……
?「……」
188 = 184 :
昼過ぎ
闇商人の屋敷・門前
闇商人「ケッ、お前らよくもまああんな印象最悪の登場ができたものだ」スタスタ
赤袖「ふうん。人の欲を喰らい生きる下衆が……」スタスタ
闇商人「何だと?きさま雇われの分際で……もう一度言ってみろ」
赤袖「人の欲をモゴモゴ」
青袖「失礼。相方は見ての通り戦い以外はからきしなもので」グイグイ
闇商人「チッ……まったくそうみたいだな」
闇商人「これから行く私の蔵で、契約通り予備の武器と弾薬はくれてやる」スタスタ
闇商人「それが終われば油商人の屋敷へ戻って警備につくんだ。いいな」スタスタ
青袖「承知しました」スタスタ
赤袖「承服しよう……渋々」スタスタ
闇商人「いちいち一言多いやつだな……む?」スタスタ ピタッ
少年「ええと……あっちかな」キョロキョロ
少年「……ふぁあ……」スタスタ
闇商人(……あのガキ、どこかで見たような?)
闇商人(そうだ!この前、物騒な臭いのするところを見て回ってるときに見かけたんだ)
闇商人(あれはたしか、油商人に目を付けられていた武士の家のせがれだったか……)
闇商人(……む?そういえば、あの家は一人残らず殺されたと聞いたような……?)
闇商人(死んだはずの人間……それも、油商人に恨みを持つ……)
闇商人(――臭い!臭いぞ!)
闇商人「赤袖、青袖……あのガキの後をつける」ヒソヒソ
赤袖「む?小童の後を追うとはモゴモゴ」
青袖「もうあんたは何も喋らないでよ」グイグイ
闇商人「とにかく!ついてくるんだ……」
闇商人(もしかしたら用心棒と相棒の居場所を突き止め、息の根を止めてやれるかもしれん……!)ジャキッ
189 = 184 :
武家屋敷
少年「……」スタスタ
闇商人「武家屋敷に入っていくぞ……」コソッ
赤袖「あのような小童が、なにゆえ……?」コソッ
青袖「小遣いでももらいにいくのかしら」コソッ
少年「ええと……一、二、三軒目……ここか」スタスタ
少年「……」キョロキョロ
闇商人「!」サッ
青袖「!」サッ
赤袖「いよっ!」サッ
少年「……」キョロキョロ
少年「……」スタスタ
闇商人(尾行を警戒したな……)
少年「ごめん!」
ガチャガチャ ギイ…
下男「はいはい、どなたさま……ん?なんだおまえは?」
下男「ふるくはノブナガコーのチスジの『発明家』さまのオヤシキに、おまえのようなこぞうがなんのようだ?」
少年「とある重要な要件です……用心棒からの遣いだ、とお伝えしてください」
下男「ヨウジンボーカラノツカイ……?しばらくまて」
下男「ヨウジンボーカラノツカイ…ヨウジンボーカラノツカイ…」ブツブツ
バタンッ ガチャッ
闇商人「もはや間違いない…奴は用心棒の手先!」
青袖「始末しようか?」チャキッ
闇商人「バカやめろ!用心棒たちの目的と居場所を探り出してからだ……!」
赤袖「ふん、さかしい……」
闇商人「言ってろ。先回りしてこの屋敷に忍び込むぞ、ついてこい!」
190 = 184 :
発明家の屋敷
発明家「……」ペラ… ペラ…
発明家(ふっふふふ……読める、読めるぞ……)ペラ… ペラ…
発明家(物理、化学、生物……南蛮渡来の本には見たことも聞いたこともない事実が盛りだくさんだ)ペラ… ペラ…
発明家(まったく、蘭語を習ってよかった……)ペラ… ペラ…
下男「シツレイします発明家さま」ガラッ
発明家「ん?なんだ?」パタン
下男「……ええと……」
下男「あれ?なんだったかな?」
発明家「おいおい、またか……よく思い出してみてくれ」
下男「うーんと……あ、そうだ」
下男「ヨウジンボーのツッカイボーというものがたずねてきたんでした、どうしましょう」
発明家「『用心棒』の『つっかい棒』だと?」
発明家(はて、そんな扉を必死に抑えてそうな名前の知り合いはいないはずだが……?)
発明家「まあいい、通してやってくれ」
下男「ショーチしました」スタスタ ガラッ
191 = 184 :
門前
ガチャガチャ バタンッ
下男「はいれ」
少年「よかった、失礼します」
スタスタ…
少年「……見事な庭ですね……」
下男「ブシのヤシキだぞ。トウゼンだ」フンス
少年(なんでこの人が威張っているんだろう……)
鹿?「……」キョロキョロ
少年「あっ!鹿!?」
下男「よくみろ。カラクリだ」
少年「え?……あっ、本当だ」
少年(よく見ると水車が接続されている。その動きを首に伝えているんだ……)
下男「発明家さまがおつくりになったのだ。発明家さまはカラクリをたしなみなさる」
少年(教養のある方なんだな……用心棒さんが『あの件』を頼むために僕をやったのも頷ける)
192 = 184 :
屋敷内
下男「発明家さまがいるのはこのおくだ」スタスタ
少年(屋敷自体も、派手ではないがなかなか立派だ……この廊下一つとってもかなり広いし)スタスタ
下男「おっと。ここはみぎのカベギワをあるけ」ヒョイッ スタスタ
少年「ええ?なぜ?」ヒョイッ スタスタ
下男「発明家さまはナンバントライのめずらしいものをたくさんもっている。それをまもるためのしかけがあるのだ」スタスタ
少年(仕掛け……?)スタスタ
闇商人「いったか……」コソッ
赤袖「早速後をつけるとしようぞ」コソッ
青袖「……それにしても、仕掛け、か……」コソッ
青袖「庭のからくりといい、この館の主は相当な変人のようだ」
闇商人「そんな奴に用心棒の遣いが何の用なのか……おい、聞いたな。右の壁際を歩くんだぞ」
青袖「承知――おい赤袖!」
赤袖「む?何だと?」ズカズカ
カチッ パカッ
ヒュウウウウウウ…
<ウアアアアアアアアア…
闇商人「あっ!?」
青袖「落とし穴だ!」
next
193 = 184 :
庭
パカッ
赤袖「うおおおおお!?」ゴロゴロゴロッ
ドボーンッ
赤袖「ぐあっはっ!」ザバア
赤袖(ここは池か!なんの、泳いで抜け出すのにわけはない――む!?)
赤袖(なんだこの水は!?『重い』ぞ!?)
赤袖「ぬおおおおおお――!」バシャバシャ
194 = 184 :
屋敷内
下男「つぎはひだりをとおれ」ヒョイッ スタスタ
少年「左側ですね……とすると、右側には?」ヒョイッ スタスタ
下男「しかけがある。発明家さまがナンバンからてにいれた『おもいみず』のいけのなかにドボンだ」スタスタ
闇商人「……返す返す憎い、あの脳足りんめが……」コソッ
青袖「……ん?」コソッ
青袖「外からその脳足りんの声がするような……」ガラッ
<ヌオオオオオー!
青袖「……」
闇商人「……どうやら床下の坑道を転がって池に落ちたようだな」
闇商人「お前の相棒だろうが、迎えに行っている時間はない。もう少し水遊びさせていても構わないか?」
青袖「ええ。しばらく頭を冷やさせておきましょう」ピシャッ
闇商人「……あっ、しまった――この俺としたことが!」
闇商人「また仕掛けの種明かしをしていたかもしれんのに、あの二人から目を離してしまった……!」
青袖「右に同じ、不覚ッ」
青袖「……とすると、右か、左か……もしかしたら仕掛けはあれ一つかも?」
闇商人「よし、二人で同時に行こう。俺は左、お前は右だ」
闇商人「せーの!」
青袖「せーの!」
カチッ
195 = 184 :
庭
パカッ
青袖「ぎゃあああああ!」ドボーンッ
青袖「ここは池?――うわっ、なんだこの水は!?」バシャバシャ
赤袖「やあやあ我が相棒、地獄へようこそブクブクブク」
青袖「じょ、じょ、じょ、冗談じゃあないっ!」バシャバシャ
196 = 184 :
屋敷内
闇商人「ふう、やはり罠があったか……」
闇商人(帰りに殺し屋二人組を拾ってやらなくちゃあ、くそ)
闇商人(しかしガキと下男は屋敷の主の部屋に到着したようだ。仕掛けはもうないだろう)
闇商人(俺はせいぜい近づいて耳を澄ますとしよう……)
197 = 184 :
発明家の部屋
発明家「おや、『用心棒のつっかい棒』氏とは子供だったのか?」
少年「『用心棒のつっかい棒』?私は『用心棒の遣い』と名乗ったはずですが……」
発明家「ははあ、あの下男が間違ったな。まったく困ったもんだ……」
少年「はは……」
発明家「それで、『用心棒の遣い』というのは……」
発明家「おや!用心棒ってあの用心棒かい?いや、久しぶりにその名前を聞いたな」
少年「お知り合いなんですか?」
発明家「聞いていないのかい?うーん、まあ、昔ちょっとあったのさ……」
発明家「それよりどういうご用件だね?」
少年「はい、詳しく話すと長くなるのですが、今私や用心棒さんたちは危ない状況に居まして……」
198 = 184 :
少年「……ということなのです」
発明家「なるほどな。またあいつは危ないことに足を突っ込んでいるのか……」
発明家「しかし君も災難だね……母上と父上の冥福をお祈りするよ」
少年「……はい」
発明家「あいにく僕は彼のように強くはないし、疎遠とはいえ親族もいる……」
発明家「あまり表だって動くことはできないが、それでもよければ喜んで協力するよ」
少年「そうですか、ありがとうございます!」
少年「では本題に入らせていただきますが、用心棒さんはこれについて詳しく知りたがっているのです」ガサッ
発明家「なんだいこれは?」
少年「鍛冶屋が持っていた切り札……と思われるものに付属していた説明書です」
少年「しかしどうも南蛮渡来の品らしく、説明書きも全部、漢字とも仮名ともちがう外国の言葉なのでさっぱり……」
少年「そこで用心棒さんがあなたなら読めるだろう、と……本人たちは怪我がひどいので、僕を寄越したんです」
発明家「どれどれ……」
199 = 184 :
部屋の外
闇商人(なるほど、事態の推移は丸ごと理解できたぞ……まさかあのタンスの中に隠れていたとはな……)
闇商人(しかし、鍛冶屋の切り札とは一体……?)
<スタスタ
闇商人(!)サッ
下男「……」スタスタ カチャカチャ
闇商人(チッ、一番聞きたいところで茶を持ってきた下男が……早く行っちまえ、くそ!)
鼠「チューッ!」チョロチョロッ
下男「あ……これはこのあたりにおいておいて、と……」カチャッ
下男「まて、このチクショウ!」バタバタ
鼠「チュー、ヒー、ヒー!」チョロチョロ
闇商人(ぐあああああ畜生は手前だ!鼠なんてどうでもいいだろうがっ!とっとと失せやがれ!)
下男「どこだ?どこにいった?」キョロキョロ
発明家「いったい何の騒ぎだ?」ガラッ
下男「発明家さま、ネズミがでたんです」
下男「あんチクショウ、このまえころしたやつでサイゴだとおもってたんですが」
発明家「鼠か……今度南蛮渡来のネズミ捕りを試してみるかな」
下男「あ、そういえばおちゃをおもちしたんでした。どうぞ」
発明家「おお、気が利くな。あとは僕がやる、戻っていいぞ」
下男「ショーチしました」スック スタスタ
ガラッ ピシャリ
闇商人(いったか……池で溺れてる殺し屋を見つけないといいんだが)
闇商人(どうも一番肝心なところを聞き逃したような気がするが、とにかく盗み聞きに戻ろう)コソッ
200 = 184 :
発明家の部屋
発明家「粗茶だが、よければ」スッ
少年「あっ、ありがとうございます」
発明家「さて、説明書の翻訳に戻ろう……」カキカキ
発明家「……」カキカキ
少年「……」
発明家「……」カキカキ
少年「……」ズズズ
発明家「……」カキカキ
少年「……」
発明家「よしっできた!これでこの秘密兵器の使い方はすっかりわかる」
発明家「これが翻訳した文章だ、間違いなく用心棒に渡してくれ……おっと、原本も返すよ」スッ
少年「はい、たしかに受け取りました……」
みんなの評価 :
類似してるかもしれないスレッド
- 京太郎「早漏がひどい」 (325) - [51%] - 2016/2/14 13:45 ★★★×4
- 千早「わたしたち」 (258) - [46%] - 2016/5/20 2:00 ☆
- 京太郎「扉のこちら側」 (115) - [42%] - 2014/12/21 9:45 ☆
- 八幡「死ねばいいのに」 (1001) - [42%] - 2016/10/11 16:00 ★★★×4
- レッド「一人に飽きた」 (988) - [42%] - 2017/10/13 0:30 ☆
- モバP「例えば俺が」 (226) - [40%] - 2015/1/28 1:00 ☆
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について