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    元スレ京太郎「この子が許嫁?…かわいくていいじゃんw」

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    1 :


     
     たとえ許されない事でも

     君を見つめてる ずっと

     




    SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1448882842

    2 = 1 :


    ――――――

    ――――

    ――



    「いつまで寝てるんですか、姫様」



     誰

    「うーん、起きないですね」

     起きてますっ
     でもどうしてか瞼が開きません
     声も出せません

     誰でしょうか
     でもとても大切な人
     あたたかい香りがします

    「い……ら……」 

     聞こえません
     何を

    「………な……」

     その声がどんどん遠ざかっている事に気づきました
     待って下さい
     
     暗い 冷たい 寒い
     どうして急に
     苦しいです 

     もがこうとしたら
     地面が崩れて
     私はそのまま 落っこちていきました 

     
    ――――――

    ――――

    ――


    小蒔「いやああああぁぁぁぁぁぁああ!!」がばぁっ

    3 = 1 :



    霞・初美「……」ぽかーん


    小蒔「え、えっと……」

    小蒔(ここは……私の部屋? 霞ちゃんに初美ちゃんもいる)

    小蒔(この状況って、もしかして)


    小蒔「うぅ……」ぷしゅー


    初美「ああっ! また布団に潜り込んじゃいましたですよー!」

    「もう朝よ、小蒔ちゃん」


    小蒔「……」ずるずる

    小蒔「ごめんなさい、お見苦しいところを……」


    「ふふっ、恥ずかしがる事じゃないわ」

    初美「そうそう、叫びながら起き上がる事なんて、普通の事ですよー」

    小蒔「いじわる……」

    「……でも小蒔ちゃん、大丈夫?」

    小蒔「ええ。大丈夫ですよ」

    初美「……魘されてはいませんでしたが、何か悪い夢でも見てたんですか?」

    4 = 1 :


    「初美ちゃん、そういう質問は軽率でしょ?」

    小蒔「そ、そんな心配しなくても大丈夫ですっ!」

    「ほんとう?」

    小蒔「本当です! 恥ずかしいけど、教えますっ」

    小蒔「私が見てた夢が、どんな夢か……って、あれ?」

    「?」

    小蒔「えへへ……どんな夢、でしたっけ」


    小蒔「喋ろうとしたら、忘れちゃいました」


    初美「……なーんだ、残念なのですよー。ちょっと期待してたんですけど」

    「まあ、夢なんてそんなものよね」

    「さて、起きて早々で申し訳ないけど、ちょっと急ぎましょう」

    初美「そうですね。さあさあ姫様、お召し物を替えて下さい。身なりを整えておかないと」

    小蒔「え、っと……ごめんなさい。今日、何かありましたか?」

    初美「えぇー……!? 何を言ってるんですか姫様は! 昨日まで今日の日の事、散々気にしてられたじゃないですかー!」

    小蒔「???」

    「いつもどんな場所でもすぐ眠れる小蒔ちゃんが、昨晩はどうしても緊張して寝付けないっていうから」

    「私たちも少し緊張してたし、どうせならって事で、小蒔ちゃんの部屋で一緒に眠る事にした程だものね」


    小蒔「……あっ」


    小蒔「そ、そうでした。だから二人が私の部屋にいるんでした……」

    小蒔「そうでした……とうとうこの日がきたんですね」

    霞・初美「……」

    小蒔「今日、来られるんですね」

    5 = 1 :






    小蒔「私の、許嫁が」



    ――



    京太郎「君が、許嫁……?」




    6 = 1 :




    「……」

    「え、えっと、ひとちが――」



    京太郎「あ、すいません! 挨拶が遅れました!」

    京太郎「俺は須賀京太郎です! 京都の京に太郎で京太郎です!」

    京太郎「え、えっと……イ、イロイロ、よろしくお願いします!」

    京太郎「神代小蒔さん!!」ぺこり



    「……」

    「こちらこそよろしくね、須賀京太郎くん」

    「初めまして、私、"狩宿巴"っていいます」ぺこ



    京太郎「……あれ?」

    京太郎「名前が……」

    「ご、ごめんね。私、君の許嫁じゃ、ないんだ」

    「私は君の許嫁に仕える立場で、麓まで君を迎えにきたの。お屋敷までの案内人としてね」

    京太郎「……」

    「……須賀くん?」

    京太郎「………………チクショー、恥ずかしすぎるだろ俺……」

    (手で顔をおさえて、しゃがみ込んじゃった……)

    7 = 1 :


    京太郎「って、しゃがんでなんかいちゃダメか」すたっ

    京太郎「狩宿さん……でしたっけ。それならそうと早く言ってくれれば良かったのに」

    「ふふ、ごめんね? タイミング逃しちゃって」

    「それに、勘違いしたまま話を自己紹介を始める須賀くんの様子がなんだか……面白くて」

    京太郎「マジですか。あー、さっそく醜態晒しちゃったかぁ……」

    「お気になさらず。それで……」


    「これからこの山に登る体力、ある?」


    京太郎(狩宿さんの背後にあるのは、遥か空まで続くような石造りの階段)

    京太郎(聞いた話じゃ、この山の奥深くで、俺の許嫁って子が暮らしてるらしい)

    京太郎「俺の心配なら要りませんよ。体力には自信あるんで」

    「それなら安心かな? ごめんね、こんな遠くまで来させてすぐに、山登りを強いちゃって」

    京太郎「それこそ気にしないで下さい。仕方ない事ですよ」

    「頼もしいね。少し安心したかな」

    京太郎「頼もしいなんて、そんな……褒めても何もでませんよ」

    「まあ姫様の許嫁なんだから、それなりに頼もしくないと、困るんだけどね」ちら

    京太郎(姫様ってのは……神代小蒔、俺の許嫁らしい子の事かな)

    京太郎「は、はい! 気を引き締めて頑張ります!」びしっ

    8 = 1 :


    「あ……ふふ、意地悪してゴメンね」

    「そう改まって畏まらなくていいよ。少なくとも私の前では、ね」

    京太郎「は、はぁ」


    「須賀くんがこれから会って、生涯を共にするのは、霧島神鏡の姫」

    「果てしなく次元の違う相手」

    京太郎「……」


    「せめて私や、他の子には、気を抜いて相手しないと疲れちゃうよ」

    「正直、姫様相手ならそんな心配もすぐなくなると思うけど」

    「……身勝手な言い方かな。須賀くんにとっては、"もう疲れてる"よね」

    京太郎「……」

    京太郎「いや。そちらこそ、お気遣いどうも、って感じです」

    京太郎「何かと疲れるのはお互いさま……なんて言ったら、怒られちゃいます?」

    「言ったでしょ。少なくとも私の前で畏まったりする必要ないって」

    「姫様以外とは、出来る限り普通の関係で過ごしたいでしょ、お互い」

    「須賀くんの慣れない生活は、出来る限り私がフォローさせてもらうから」

    「もしこの先困った事があったら言ってね?」

    「きっと割り切った関係が構築できる筈だよ、お互いね」

    京太郎「……そうっすね」

    「改めて、よろしくね、須賀くん」

    京太郎「……はい。よろしくお願いします!」

    9 = 1 :



    ――


    「この度は、遠路遥々ご足労頂きありがとうございます」

    「本日はお日柄も良く、天も二人のあたたかい未来を祝福しておられます」

    「どうぞ、こちらへ」すたすた


    京太郎(やたらと奥深い山中に、その屋敷は構えられていた)

    京太郎(木造建築の、神代家の御屋敷)

    京太郎(外からは森の風景に溶け合って見えたが、こうして中に入ってみると)

    京太郎(手入れが行き届いていて、その華麗さにここが山の中という事を忘れてしまいそうだ)

    「それじゃあ私は用意があるから。またね、須賀くん」すたすた

    京太郎「あ、はい」


    京太郎(許嫁……)


    京太郎(俺は、遥か昔に親同士で取り決められた、婚姻の約束を聞かされて)

    京太郎(長野から追い出されるように、この場所までやってきていた)

    京太郎(許嫁の名は神代小蒔)

    京太郎(聞く限りじゃ遥か位の高い人間のようで、どうして俺なんかが? と思ったが言わない事にした)

    京太郎(何故なら写真で見せられた神代小蒔は、俺の理想の女子そのものだったから)

    京太郎(疑問なんて口にしたら、折角のチャンスをふいにする恐れがあった)

    京太郎(まだ高1で、こんな大事な事を決心するのに、迷いが無かった訳じゃない)

    京太郎(けれど、誰も知らない場所で可愛い子に囲まれながら暮らすなんてのは)

    京太郎(ハンドボールを辞めて宛てもなく、清澄高校で灰色の日々を過ごしていた俺の目には、有り余る程魅力的に映った)

    京太郎(それに、いざ、やっていけない、って思ったら)

    10 = 1 :




    京太郎(逃げ出してしまえばいい)



    ――


    「……着きました」

    京太郎「この部屋が、"そう"なんですか?」

    「はい。私たちの姫様がおわす部屋です」

    「……あの。遠方から婿としてやってこられた貴方に、直前で頼み事をする私の不敬を御許し下さい」

    京太郎「?」

    「呉々も、軽挙は謹んでもらうよう、私からお願い致します」ぺこり

    京太郎「は、はい……モチロンです」びしっ

    京太郎(ちょっと信用されてない……まあ当たり前か。お互い初対面なワケだしな)

    京太郎(こんな格式高いトコで変な事する気も起きねーよ、とか軽口言える雰囲気ですらないし……はは)

    「それでは一先ず、私はここで。何かありましたら、滝見春が部屋の中にいますので、その子に頼って頂ければ」

    京太郎「わ、わかりました。えっと、石戸さん、でしたっけ?」

    「石戸霞です」

    京太郎「その……案内してくれて、ありがとうございました」

    「いえ、当然の事をしたまでですよ。それでは」すたすた


    京太郎(行ったか……)


    京太郎「……」す…

    京太郎(チクショウ。扉開けるのも緊張するな。手に汗がにじんでみっともねえ)

    京太郎(落ち着いて、すまし顔になれ、俺。クールに入室するんだ……!)

     がしっ

    11 = 1 :


    京太郎(うおおお……!)



     がらららっ

     かしゃん!



    京太郎「……」

    京太郎(しまった、勢いよく開け過ぎた……!)

    京太郎「す、すいません!」ぺこ


    京太郎「……?」ちら




    小蒔「……あ、えっと」




    京太郎(……そうか。彼女が)


    京太郎「……神代、小蒔」


    京太郎(色白女神の雰囲気がする)

    京太郎(ここに来て、良かったぁ~)ひくひく

    12 = 1 :



    小蒔「は、はい! そうです!」

    小蒔「私が神代小蒔です……」かぁ

    小蒔「じゃあ、あなたが……?」


    京太郎「須賀、京太郎……です」


    小蒔「須賀京太郎……様」

    京太郎「さ、サマ?」

    小蒔「な、なにか気に障ったでしょうか……」

    京太郎「ああ、いや、様付けは、ちょっと……勘弁っていうか」


    「頭が高い」


    京太郎「……!!」びくっ

    京太郎(誰だ……いや、石戸さんがいってたな。この部屋には俺と神代さん以外には一人しかいない)

    京太郎「滝見、春」

    「……」こく

    京太郎「えっと、頭が高い……って?」

    「……何でもない」

    京太郎「そ、そう……」

    京太郎(……うーん、様付けはやめてって、神代さんに注文付けをしたのが、頭が高いって事かな?)

    13 = 1 :


    小蒔「春、その言い方は失礼にも程がありますよ」

    小蒔「ごめんなさい、須賀様……いえ、須賀くん、でいいのでしょうか」

    京太郎「様付け以外なら何でもいいですよ、神代さんのが学年上だし、敬語も結構なんで」

    小蒔「そ、そんな……恐れ多くてとても……!」

    京太郎(不思議な子だな)

    京太郎(てか、声もめっちゃ可愛い……どストライクでしょコレ)

    小蒔「えっと、あ、挨拶させて頂きますね!」

    小蒔「神代小蒔と申します。本日は、遠くからこんなところまで足を運んで頂いて、ありがとうございます」

    小蒔「何もないところですが……ゆっくりしていってくださいね」

    京太郎(何言ってんスか、神代さんがいるじゃないスか! とか言えない雰囲気だな……)

    京太郎「いえ、こ、こちらこそ! ぉ、僕みたいな者を迎え入れて頂き感謝の言葉もありません」

    小蒔「……」

    京太郎「……」


    京太郎(固まっちゃった)


    京太郎「え、ええと……」

    京太郎「ココ、本当にいい場所ですよねぇ、緑も深くて、お屋敷の周りも威厳のあるカンジっていうか」

    小蒔「は、はい。みんな一生懸命手入れしてるので……」

    京太郎「へ、へぇ~。手入れね……大事な事ですよねー、手入れは」

    14 = 1 :



     がらら…


    「失礼します」す…


    京太郎(狩宿さんだ!)

    「お茶を用意しました。熱いのでお気を付けて」すっ

    ことん ことん

    小蒔「ありがとうございます、巴ちゃん」

    「いえ……それでは、順次料理を運ばせて頂きますので」

    京太郎「え、料理ですか?」

    「お? 喰いついたね、須賀くん。流石男子って感じかな」

    京太郎「ま、まあ……実は腹減ってて」

    「そりゃそうだよね。たくさん歩いたわけだし。すぐ用意するからもう少し待っててね」

    京太郎「は、はい! ありがとうございます」

    「ふふ。それじゃ、ごゆっくり」すたすた


     がらら…


    京太郎(料理か……どんなのが出てくるのか楽しみだぜ)そわそわ

    小蒔「あ、あの……」そわそわ

    京太郎「? どうかしました?」

    15 = 1 :


    小蒔「あ、いえ……巴ちゃんとはもうお知り合いに?」

    京太郎「そうですね、山の麓からこのお屋敷まで、案内してくれたんです」

    小蒔「ああ、そうなんですか。それは良かった……ほんとうは、私が迎えに行きたかったんですけど」

    小蒔「霞ちゃん……石戸霞ちゃんに止められちゃって。ここにいなさいって」

    京太郎「まあ、神代さんがわざわざ足を使う必要ありませんからね」

    小蒔「それでも、迎えに行けば良かったです。これから須賀くんはこの家に住むんですから」

    小蒔「こんな部屋で偉そうに待ってるのが、あまりいい気分じゃなくて……」

    京太郎「お優しい人なんですね、神代さんは」

    小蒔「そうでしょうか? そうなれたらとは、思っていますが……」

    小蒔「あの、ここまで来てこんな事をお訊きするのは、失礼かもしれませんが……」



    小蒔「ここに来て、ほんとうに良かったですか?」

    京太郎「――…」



    小蒔「もしも、本当に嫌なら、言ってください。私が掛け合えば、許嫁の決まりなんて簡単に、取りやめてもらえると思うので……」

    京太郎「……」

    小蒔「……やっぱり、嫌ですか?」

    京太郎「いや」

    16 = 1 :



    京太郎「良かったです」


    小蒔「……!」

    京太郎「そんな言葉を掛けて頂いて、それだけで神代さんの優しさが染みわたってくるようで」

    京太郎「今俺がこの場所にいる幸せを、感じていました」

    京太郎「むしろ、こっちから訊きたい」

    京太郎「神代さんは、コレで良いんですか?」

    小蒔「私は……」

    小蒔「どうなんでしょうね」

    京太郎「……」

    小蒔「ごめんなさい、よくわからないんです。こういう事」



    小蒔「ただ、これが仕来りなので……」



    京太郎「……そうですか」

    小蒔「……あ、あの」

    京太郎「ふう! なんだか安心しました。なんでか解りませんけど」

    小蒔「須賀くん……」

    京太郎「お互い変な立場ですけど、ほどほどに頑張っていきましょう!」

    京太郎「なんて、偉そうでしたかね?」

    17 = 1 :


    「エラそう」

    小蒔「は、春っ!?」

    「……」ずずーっ

    京太郎「ははっ、言ってくれるね、滝見サン。多分俺と馬が合うぜ」

    「別に嬉しくない」

    京太郎「ま、これから共に過ごすってハナシだし……タメなんだって?」

    京太郎「よろしくな、滝見サン」

    「ん……」

    小蒔「……」


     がらら…


    「料理持ってきましたよ」すたすた


    京太郎「おっ! きたきた」

    「あんまり豪勢なものを用意できなくて悪いけどね」

    京太郎「エビフライあるじゃないですか! 俺めっちゃ好きなんスよ」

    「口に合えばいいんだけど」

    京太郎「へへっ……もう食べちゃっていいですか?」

    「まずコレで、手を拭いてね」すっ

    京太郎「あ、はい!」

    「……ごはんきた瞬間、凄く元気になった」

    小蒔「ふふっ、そうですね。私もお腹空いてたので……」

    18 = 1 :


    京太郎「あれ、狩宿さん食べないんですか?」

    「私や霞さんは準備もあるから、別で食べるよ。ここで食べるのは」

    「姫様と須賀くん。あと春ちゃんだけかな」

    京太郎「へえ、そうなんですか……」

    小蒔「それじゃあ、頂いちゃってもいいですか?」

    「どうぞ、姫様」にこっ

    京太郎「よし、それじゃあ……」


    「「いただきます!」」



     ここへ来るまでに感じていた不安は薄れていた

     多分みんなもきっと不安を持ってる

     でもここはいい人ばっかりだ

     きっと俺も馴染めると思う 

     俺はこの場所で上手くやっていける 

     そんな気がした



    19 = 1 :

    1. おわり
    お疲れさまです。
    書きためありませんが年明けまでには終わります。

    20 :


    京太郎が永水に来た時期が気になる。

    23 :

    乙よー

    24 :



    でも、なんで京太郎は写真を確認してるのに、巴さんと間違えたんやろ

    25 :

    この京太郎はおっぱいで女性を見分けるタイプなんじゃね

    26 :

    それならなおのこと間違えないだr

    28 :

    なんか鬱の匂いがする
    期待

    29 :

    時期的に清澄入学後、麻雀部入部前なのか。
    珍しい開始だな。期待。

    30 :

    もはや話し方がオリキャラ
    書くならちゃんと京太郎として書けよ

    31 :

    乙です
    続き楽しみ

    32 :

    この京太郎はゲスなのか……?
    どっちなんだ乙

    33 :

    話の流れ的に鬱なのかな
    とりあえず期待です

    34 :

    マジスレ最近小林立先生のブログで淡ちゃん小学生の学校の名前ださい

    白糸台に行く100年生まで遣る

    結果阿知賀編での株の暴落

    死にたいまた入院

    小林立先生のお体ご自愛下さい

    結局狩宿巴さん大勝利の未来しか見えない

    35 :

    はるるが妙に攻撃的なのが何か裏がありそうで怖い

    36 :


    ――――――

    ――――

    ――



    「結婚……ですか」



    祖母「――おや」

    祖母「あなたのそのような顔は、久しぶりに見ましたね」

    祖母「でも姫様の前では控えるように。不安にさせてしまいますからね」

    「――姫様が、何処の誰かもわからないような男の人と、結婚?」ふるふる

    「差し出がましい事を申し上げる様ですが、祖母上。考え直すべきかと」

    祖母「不服ですか?」

    「姫様もきっとそう思われますよ」

    祖母「……そうかもしれませんね」

    「それなら――…」

    祖母「その為の、『3年間の寄宿』です」

    祖母「須賀の息子を家族として迎え入れ、共に暮らしている内に」

    祖母「通じ合うものが生まれるでしょう」

    祖母「二人の間に育まれたそれを、未来のあなたはきっと愛と呼んでいますよ」

    「詭弁です」

    祖母「何とでも」

    37 = 1 :


    祖母「――実際、仕来りを頭の隅に追いやれば、私も、神代の当主様も」

    祖母「姫様を、あるべき年頃の少女のように自由にさせてあげたい気持ちを、当然持っています」

    「……」

    祖母「でもあなただって、本当は解っている筈ですよ」

    祖母「姫様の血は、易々と流していいものではないという事を」


    「……」


    祖母「安心しなさい、というのは無理があるでしょう」

    祖母「それでも、受け入れなさい」

    祖母「私たちの婚姻は、生まれた時から天より定められているのです」

    祖母「須賀の息子は悪い人間ではありません。天は、姫様にふさわしくない人間を決して選びません」

    「……」

    祖母「あら。より険しい顔になりましたね。感心しませんよ。あまり女の子がしていい顔ではありません」

    祖母「……でもあなたの気持ちも理解しています。共同生活を送った上で、それでも尚、あなたが本当に彼を認められなければ」

    祖母「その時初めて進言なさい。須賀の息子は姫様にはふさわしくない人間だった・と」

    「……きっと、そうなりますよ」

    祖母「私はそうならない事を祈りましょう」

    「……祖母上」


    「――どうして笑ってられるのですか? 祖母上」


    祖母「……ふふ」

    祖母「あなたはこれまでずっと、私や家の仕来りにはよく従ってくれました。反対した事など記憶にもない」

    祖母「それなのに今こうしてあなたは、かつてない反対の意を示している」

    祖母「どうしてかね、それが私はとても――…」

    38 = 1 :


    ――――――

    ――――

    ――



    (祖母上)



    (今日、とうとう彼がやってきました)

    (金色の髪をたなびかせ、霧島の土を踏みつけながら)


    (……初めて見た時の彼の顔が、心底嫌そうなものであれば良かった)

    (機械のように挨拶する私の声なんか、無視してくれれば良かった)

    (この勝手な婚姻に、彼も怒り狂っていれば良かった)

    (私は彼に、姫様に失礼な態度を取らないようにお願いしたけれど、むしろ取って欲しかった)

    (姫様に対して、ふて腐れた様子で、容赦なく棘と毒を投げつけて欲しかった)

    (そうすれば私は今にでも、婚姻の取り止めを進言する事ができたのに)

    (こんなことじゃあ、許してしまう)

    (彼が私たちの生活に割り入る事を許してしまう)

    (それとも、これが本来のあるべき形なのかしら)

    (私やみんなが、生まれた時から姫様と繋がっていたように)

    (今日まで一時的に離れていただけで、彼もまた、生まれた時から姫様と繋がっていたのかしら)

    (――そう考える事ができれば、どれだけ私の心は楽になったのかしらね)


    「……物思いに耽ってばかりじゃダメね」

    「今後の予定を、彼に伝えに行かないと……」

    39 = 1 :



    ――夜


    京太郎「ふうっ、いい湯だった。違う土地で入る風呂程別格なものはないよな」

    京太郎「そして……」むくり


    京太郎「これが俺の部屋ですか」


    「うん。これからこの一室が須賀くんの部屋として与えられます」ぴっ

    「押入れに布団があるから、寝るときはそれを畳の上に敷いてね」

    「……不満だった?」ちら

    京太郎「まさか! 実家より広くて恐れ多いです、本当に」

    京太郎「こんな部屋を一人で使えるなんて……」

    「でも広くたってなんにもないでしょ? 退屈しない?」

    京太郎「ネット繋がりますからそれほどでも。俺の身分じゃ贅沢は言えませんし。それに」

    京太郎「退屈したら、狩宿さんが話し相手になってくれるんですよね?」ちらり

    「……そんな事言ったかな?」はて

    京太郎「『俺の慣れない生活は、出来る限り狩宿さんがフォローしてくれる』」

    「……言うね、須賀くん。もちろんそのつもりだけど」

    「残念ながら私、男の子が喜ぶようなハナシ、できないよ?」

    京太郎「どんなハナシが喜ぶと思われてるんですか?」

    「えっと……車とか?」

    京太郎「へぇ」にやり

    「!?」

    「ど、どうして笑うの? 何かおかしな事言ったかな……?」

    京太郎「な、なにも? でも、車って。俺未成年だし全然わかんないですって」

    「そうなの?」

    京太郎「そうですよ。狩宿さんの男のイメージは知りませんけど、俺はキョーミないですね、今のところ」

    「そうなんだ……」

    40 = 1 :


    京太郎「そんな事言ったら俺だって、女の子の喜ぶようなハナシなんにもできないですよ」

    「……たとえば?」

    京太郎「人形とか」ぼそり

    「あははっ」

    京太郎「……狩宿さんも笑ったじゃないですか」じと

    「ご、ごめんね? でも人形って。ふふ、それはだって、逆に対象年齢低すぎじゃない?」

    京太郎「そうかなあ……」

    「そうだと思うよ? 少なくとも私はあんまり興味ないかな」

    京太郎「じゃあお互い様ですね。でも狩宿さんって、ずっとこの山の中で暮らしてきたんですよね?」

    「その言い方だと語弊があるかも。学校行くときは山を下るしね」

    京太郎「あ、そっか、確かに。けど、狩宿さんは神事? とかそういうの勉強してきたんですよね」

    京太郎「俺はそういうの全くの無知だし、狩宿さんの事をもっと知れたら、それだけで新鮮で面白いと思うんですけど」

    「わ、私の事……?」

    京太郎「はい。だって神代さん家は、許嫁をとって、しかも高校卒業まで寄宿させる・ってだけで特殊なカンジなのに」

    京太郎「神代さんに聞いたんですけど、この広いお屋敷だって親の手を借りずに、狩宿さんやみんなと協力して管理してるっていうじゃないですか」

    京太郎「お互いかなり違う生き方してるなって。神代さんだけじゃなく。だから俺にとってはココも、ココにいる人も、何もかもが新鮮で不思議なんで、もっと知っていきたいんですよね」

    京太郎「それを狩宿さん自身の口から色々聞かせてくれたら、って思うんですけど」ちらり

    「……な、なるほどね。姫様にカッコつけて近づきたくて、私に諸々の作法と歴史を教えてほしい訳か」

    京太郎「べ、別にそういう意図はないですって! コワいコト言わないで下さいよ」

    「じゃあどういう意図なの?」

    京太郎「最初に言った通り――…」

    41 = 1 :




    京太郎「ただの退屈凌ぎですよ」



     こんこん


    京太郎・巴「「!」」


    「――入っても?」


    「どうぞ、霞さん」


     がらら…


    「失礼します」

    京太郎「石戸さん、えっと、どうしたんですか?」

    「……」ちら

    京太郎「え、えっと……俺の顔に何か?」

    「失礼しました。何もありませんよ。端正な顔立ちで何よりだと思っていただけです」

    京太郎「た、端正な……!? お、俺がですか!?」ぎょっ

    京太郎「い、いや~。そんな事言われたの生まれて初めてっスよ! お世辞にも程がありますって~、石戸さん!」ぽりぽり

    「……」

    京太郎「ははは……」

    「そ、それで、霞さんはどうしてこちらに?」

    42 = 1 :


    「今後の予定を伝えにきたの。まあ、彼には今日、もう眠ってもらうだけなんだけど」

    京太郎「今後の予定……? は、はい。聞かせて下さい」

    「……貴方には明日、午前中から神宮に参詣をしてもらいます」

    京太郎「参詣?」

    「はい。姫様と貴方の、二人の親睦を深めて頂くために、勝手ながらこちらで予定を組ませてもらいました」

    「……私たちの守ってきた伝統に触れる事で、お互いを身近に感じて頂けるかと」

    京太郎「二人で……って、神代さんと二人きりってコトですか!?」

    「はい」

    京太郎「ほぇ~。何だか緊張するなあ。あんまり下手な事できないですね」


    「……」


    京太郎「あ、でも、神社にお参り行くだけだったら、すぐ済みますよね?」

    京太郎「その後はなんかしたりするんですか? まだコッチの学校の編入手続きが済んでなくてそれまで暇なんですよね」

    「明日の詳しい予定は、その時の姫様の口から聞いて下さい」

    「他に何か質問はありますか?」

    京太郎「あ、いえ、特に……」

    「それではおさらいします。明日、朝食後に軽く休憩を取ってから、二人で神宮へ」

    「その後の予定は、姫様の口から……もしくは私から、追って説明します」

    「それでは私はこれで失礼します。良い眠りを」

    京太郎「は、はい。おやすみなさい、石戸さん」

    「……」

    「それと巴ちゃん、ちょっと」ひょいひょい

    「あ、はい」ざりっ

    「それじゃあね、須賀くん。また明日。おやすみなさい」ふりふり

    京太郎「はい! 狩宿さん、おやすみなさい」ふりふり

    43 = 1 :


    京太郎「うーむ……」

    京太郎「最初見た時は疑ってたけど、見間違いじゃなかったか……」

    京太郎「やっぱりあの人、で、でかいよな……胸部のあたりが」

    京太郎「フフッ」

    京太郎「……」

    京太郎(……それになんだか、態度が少し、余所余所しいような……?)


    京太郎「――…いや……そんなもんか」


    ――



    「どういうつもり?」



    「……え?」

    「どういうつもりか、と訊いたのよ」

    「何の事です?」きょとん

    「あらあら。"彼"とは随分、親しげに話してたじゃない」

    「ああ。私たち、男の子とお話をする事って全然ないですから、私が須賀くんと話す時に無理をしてないか・って、心配してるんですね?」

    「確かに男の子って慣れてないし難しいかな、アガっちゃうかなあ、って思ってたんですけど、実際須賀くんと話してみると結構大丈夫でしたよ」

    「まあ、息継ぎのタイミングを計り損ねた事と、いまいち目を合わせられなかった事以外は平気でした」えへへ

    「……ハッちゃんには内緒ですよ? 私からかわれるの嫌ですからね」

    「うーん……」

    44 = 1 :



    「そういう事を訊いたんじゃないんだけどねえ……」ぼそっ


    「……?」

    (……あれ? 霞さん、怒ってる?)

    (いや、そんな訳がないか。なんで一瞬そう感じたんだろう。霞さんが怒る理由なんてないのに)

    「ところで、本当に明日、姫様と須賀くんを二人きりにさせちゃうんですか? 霞さん」

    「……」ぴく

    「いきなりは、ちょっと心配じゃありませんか? あっ、ああいや、もちろん変な意味じゃなく!」

    「だって姫様だけじゃなく須賀くんも何だか抜けてるようなトコあるかもだし、二人の会話想像すると、ぎこちなさもあるかも――」


    「――させる訳がないでしょう」


    「っ」びくっ

    「……勿論、こっそり後を付けるわ。気付かれないように」

    「ふふ、小蒔ちゃんがいきなり眠っちゃったりでもしたら、大変だものね」

    「そ、そうですね。その場を想像するだけで――」

    「眠った小蒔ちゃんに何をされるかと思ったら、たまったものじゃないもの」

    「え?」

    「……」

    「さあ、明日の支度をして、私たちも眠りましょうか」

    「は、はい」

    (……もしかして、霞さん、あまり須賀くんの事快く思ってないのかな?)

    (それも当然か。私たちだって許嫁――須賀くんの事を聞かされたの、つい最近の事だし)

    (と言っても、霞さんもちゃんと役割をこなしてるし、仕方ない事だと割り切ってるか。すぐに馴染むよね)

    45 = 1 :



    ――


     かぁー かぁー


    京太郎「――…ん。朝か」ふぁぁ


    京太郎「周りは森なのに、結構陽が差すんだな。まあ屋敷の周りは開けてるし当然か」

    京太郎「肌寒いな。羽織るものが欲しいけど、贅沢は言えないよな」

    京太郎「――さて」

    京太郎「今日は、神代さんとお参りデート、なんだよな。ふふ、滾るぜ」にやにや

    京太郎「……って、実際どう振る舞えばいいんだろうな。デートとか俺、初めてなんだけど」ばたばた

    京太郎「ま、まあ、なるようになるか! 神代さんいい人だし、なんとかなるよな……」


     がららっ…


    京太郎「えーと、食事をする部屋は、向こうだったよな……」すたすた

    京太郎「――…あれ。何だこの部屋。中途半端に襖が開いてるぞ」

     ちらり

    京太郎「あれは、何だ?」

    京太郎「変な机だなあ」


    「全自動麻雀卓です」


    京太郎「!?」ぐるんっ


    46 = 1 :



    「 おはようございます 」


    京太郎「……っ」

    京太郎「……び、びっくりしました。石戸さんでしたか……」

    京太郎「足音も何も聞こえなかったのに、いきなり背後から声がして、マジでびっくりしました。やっぱりココの人は歩き方も静かで品があるんですね」

    「麻雀、嗜まれないんですか?」

    京太郎「え? はは……恥ずかしいんですけど、全く。面白そうだとは思ってるんですけどね」

    「そうですか」

    「朝食はもう用意できてますよ。さあ、こちらへ」ざりっ

    京太郎「あ、はい」たたっ


    「……」すたすた

    京太郎「……」すたすた


    京太郎「あの」すたすた

    「なにか?」すたすた

    京太郎「ああ、いや、朝食が出来てるって事は、もしかして俺を起こしにきてくれたのかなって……」

    京太郎「もっとはやく起きれば良かったですね、すいません」

    「……いえ。謝る事ではありません」

    「昨日の今日で疲れてるでしょう。好きなだけ寝ていても良かったんですよ」

    京太郎「いえいえ、今日は神代さんとのお参りデー……ごほん、神社への参詣の予定があるんですから、寝坊なんて出来ませんよ、はは」

    「……そうですか」すたすた

    京太郎「きっと今日はいい日になるなあ……」すたすた


    「……そうですね。楽しんで頂ければ、私も嬉しいです」

    (そんな顔をさせてしまって、ごめんなさいね)

    47 = 1 :


    (燥いでいられるのは、今のうちだけなのに)

    48 = 1 :

    2. おわり

    49 :

    乙です
    次回がどうなるのか凄いどきどきする

    50 :

    姫様シリアスは良作しかない法則
    期待してます
    完結だけはしてください…


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