私的良スレ書庫
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元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「きっと、これからも」
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それからの風景
「誕生日、おめでとう~!!」
扉を開けた瞬間、パーンという軽快な音と共に告げられる。
少しだけ身を竦ませ、言葉の意味を理解するのに数秒かかったが、なんとか状況を把握する。
由比ヶ浜「もう、ゆきのんも一緒に言ってよ~!」
雪ノ下「おめでとう、比企谷くん。これも一応渡しておくわ」
由比ヶ浜「スルー!? あ、あたしたちからのプレゼントだからねそれ!」
二人から差し出される小さな包み。感触的にマグカップか?
いくら俺でも、ここまで直球に行動されては皮肉の一つも返せない。何より、さすがにそれは失礼だしな。まぁ……
八幡「……おう。その、なんだ………………あんがと」
恥ずかしいものは、恥ずかしい。やべぇよこれめっちゃ気恥ずかしい! 顔あっつい!
家族から祝われる事はあっても、クラスメイトや同級生からは殆ど無かったからな。なんとも慣れないというかむず痒い。昨日のアレのがまだマシだったな……
由比ヶ浜「えへへ。それとね、ケーキも用意したんだ。三人で食べよ?」
由比ヶ浜の目線を追ってみれば、いつものテーブルの上には小さなチョコホールケーキ。その上に飾ってあるプレートには『ヒッキー誕生日おめでとう!』と書いてあった。お? これはもしや……?
八幡「……なぁ、念のために一つ訊いていいか?」
由比ヶ浜「?」
八幡「…………“用意した”ってのは、お前が“作った”って意味か?」
恐る恐るの確認。だが、これだけは確認しておかねばなるまい。どうせ食う事にはなるが、覚悟して挑むかどうかでもかなり変わってくるものだからな。俺は何と戦ってるんだ。
そしてそんな俺の気持ちを知ってから知らずか、由比ヶ浜はとても良い笑顔で即答する。
由比ヶ浜「うん! 頑張った!」
八幡「まさか誕生した日に死線をくぐる羽目になるとはな……」
由比ヶ浜「どういう意味!?」
雪ノ下「安心して。私も一緒に作ったから、少なくとも命の保証はするわ」
八幡「なら良いか」
由比ヶ浜「フォローも辛辣だ!?」
相も変わらず涼しい顔で毒を吐く雪ノ下に、由比ヶ浜が「もー!」とぷんぷんしている。まぁ君の場合前科があるからね。前科が。
雪ノ下「……けれど」
八幡「あ?」
雪ノ下「比企谷くんも、食べないという選択肢が無い辺り素直じゃないわね」
意地悪そうに、微笑を浮かべながら言う雪ノ下。
八幡「まぁな。どんな出来でも、ちゃんと気持ちを考えて食べてやらないとな」
由比ヶ浜「ひ、ヒッキー……!」
八幡「使われた食材が可哀想だ」
由比ヶ浜「あたしの気持ちは!?」
もちろんそれも考えてやってはいるが、そんな事は口が裂けても言えはしまい。
だから、俺は今日も俺らしく、捻くれ度たっぷりで返してやる。
雪ノ下は呆れたようにして、由比ヶ浜は少し怒り気味で。
けれど、それでも笑って聞いてくれる。
……こんな奴らに誕生日を祝って貰える俺は、きっと幸せ者なんだろうな。
まぁ、こんな気持ちも、絶対に口には出来ないんだけどな。恥ずかしいにも程がある。
その後はケーキを頂き、紅茶も淹れて貰う。なんだか部室にいるというのに、喫茶店にでも来ている気分だ。
紅茶はもちろんの事、ケーキも美味かった。
由比ヶ浜「そういえばヒッキー、昨日メール返してくれるの珍しく早かったよね。ちょっと驚いちゃった」
八幡「ああ……まぁ、ちょっとな」
思い出すように言う由比ヶ浜。その言葉で、自然と昨夜の事を思い出す。
八幡「……つーかよ、なんでわざわざ日付変わった瞬間にメール寄越すんだ? 今日言うなら別に良かっただろ」
由比ヶ浜「え? 普通そうしない? やっぱ誕生日になってすぐにおめでとうーって言いたいじゃん」
キョトンと、本当に何がおかしいのか分からないといった風に首を傾げる由比ヶ浜。マジかよ。リア充ってそんな大変なのかよ。あけおめメールみてぇだなおい。
雪ノ下「そういえば私の時もすぐに来たわね」
八幡「マジで理解できん。それも由比ヶ浜だけじゃなくアイツらもだからな…」
由比ヶ浜「アイツら?」
あ、やべ。思わず口走ってしまった。
雪ノ下も由比ヶ浜も、誰の事なのかと目でジッと俺に問いかけてくる。いや別に隠す事ではないんだが、なんか、わざわざ言うのも憚られるな……
八幡「……面識のあったアイドルの連中な。何人かからお祝いの連絡があって、その中でも更に何人かは由比ヶ浜みたく日付変わってすぐに送られて来たんだよ」
俺の言葉を聞き、納得の表情になる二人。
雪ノ下「そういう事。……けど、比企谷くんの交遊関係をよく考えてみればすぐに分かる事だったわね」
八幡「悪かったな交友関係が狭くて」
雪ノ下「……ある意味ではとても広いとも言えるけれどね」
まぁ、アイドルと交遊があるなんて珍しいっちゃ珍しいからな。
プロデューサーを辞めて以来、局とかスタジオ関係の所との繋がりは消えたが、それでも未だに残ってるものもある。狭いのに広いとは、これもう分かんねぇな。
由比ヶ浜「でもアイドルからお祝いして貰えるなんて凄いよねー。やっぱり、しぶりんからもすぐ来たの?」
八幡「っ!」
由比ヶ浜の、何の気無しに言ったその質問。
だが俺はすぐには答えられず、言葉に詰まってしまう。それ訊いちゃうのか。
由比ヶ浜「? ヒッキー?」
八幡「……来て、ない」
由比ヶ浜「じゃあ朝とか? アイドル活動忙しそうだもんねー」
八幡「…………そうじゃない」
由比ヶ浜「え?」
八幡「連絡自体来てないんだよ。まだな」
メールも、LINEも、電話も無い。
直接会うなんてもってのほか。
凛からのお祝いは、何も来ていなかった。
由比ヶ浜「あー……」
雪ノ下「…………」
引きつった顔で何も言えずにいる由比ヶ浜。雪ノ下はばつが悪そうに目を逸らしている。いや、こういう空気になるからあまり話したくなかったんだよ。どうすんだよこれ。
由比ヶ浜「だ、大丈夫! まだ何時間かあるし、きっと来るよ!」
雪ノ下「そうね。最悪12時を回っても25時とか26時とか、言いようはあるわ」
うんうんと頷く由比ヶ浜に付け加える雪ノ下。いやそれ完全に忘れちゃってたパターンですよね。
八幡「別にそんな気を遣わんでいい……つーか、たぶんアイツは…」
チラッと、目線を下に下げる。
目に入るのはネクタイを留めている一本のネクタイピン。
『そうだ。プロデューサー、来年はーー』
思い出される、去年のある日。
別に期待してるってわけじゃない。けど、もしかしたら。
俺の中で、そんな思いが小さく揺れ動いていた。
*
雪ノ下と由比ヶ浜とケーキを食べ、帰宅後も家族からお祝いされ、やっぱり妹はサイコーだなと再認識した更に数時間後。
俺は自室で机に向かい、頭を悩ませていた。
八幡「うーむ……」
開かれている何冊かの本に視線を行ったり来たりさせ、パラパラと捲ってはまた別の本を手に取る。
ダメだ、集中できん。やっぱ学校の勉強とはわけが違うな。改めて学ぼうとすると何をどうしていいか全然分からん。ネットなんかも当てに出来んし、どうしたものか。
八幡「ちひろさんに相談を……いや、さすがそこまでしたら迷惑か」
あの人だったら気にしないと言いそうなもんだが、俺が気にするしな。話を訊いてみるにしても、もう少し自分なりにやってからにしよう。
なんとか、俺の力で。
八幡「…………」
ふと、時計に視線を向ける。
今は午後11時12分。あともう少しで俺の誕生日が終わる。
凛からの連絡は、来ていない。
八幡「…………っ~~~」
あーーー!! なんでこんな悶々してんだ俺はーーーーー!!!!
気にしたらダメだ! 勉強だ、勉強して忘れろ! ファイトだよ!!
新しく棚にあった本を手に取り、順に目を通していく。気になる所は即メモ。分からない単語はググるなりして、更にメモ。
そうしていると、部屋の隅に置いてあるギターが視界の端に一瞬映った。……頑張んねぇとな。
やる事は山積みだ!
八幡「はっ!?」
がばっと、机から上体を起こす。
いきなりの振動で若干パニックになったが、どうやら寝ていたようだ。いや俺の集中力持たな過ぎでしょ。
それにしても、今の振動はなんぞや。どうやら地震ってわけではなさそうだが……
八幡「っ!」
見ると、机の上に裏返しで置いてあったケータイが震動している。
一瞬アラームかとも思ったが、そんな設定はしていなかったと思い直す。そして、俺はゆっくりと時計を見た。
八幡「……12時」
俺の誕生日である8月8日は終わり、今日は8月9日。
俺はケータイを手に取り、画面を見る事なく電話に出た。
八幡「…………もしもし」
『もしもし? 八幡?』
予想通りのその声。
すっと聞きたかった、聞けないんじゃないかと不安になった、その声。
八幡「……ったく。よく覚えてんな、ホント」
『その口ぶりじゃあ、そっちも覚えてたんだね。……良かった』
良かったじゃねぇっつの。マジで忘れられてんじゃねぇかって気が気じゃなかったぞこっちは。
『……本当は、すぐにでも送りたかったんだ。でも、やめた』
今年は色んな人からお祝いされて、でも、それでもどこか物足りなかった。
『今日の約束は、私たち二人しか知らないでしょ? だから、ちゃんと果たしたかったんだ』
前まではぼっちで、祝われること自体が希有だったこの俺が、誰かからの言葉を欲しがる。……本当に、責任でも取ってもらわないと割にあわないぞ。
八幡「……そんなら、俺もちゃんと言っとかねぇとな」
『……うんっ』
昨日でも、明日でもなく、今日。
前みたいに一緒ではないし、隣同士でもない。
それでも、残っている繋がりが、変わらないものが確かにあるから。
八幡・凛「「誕生日おめでとう」」
今日という日を、お祝いしよう。
おわり
というわけで、ヒッキー、凛ちゃん、誕生日おめでとー!
短くて申し訳ないけど、お祝いの番外編でした。でもたぶん後日談の短編は続きます。
やっぱこの二人は最高。
短くて申し訳ないけど、お祝いの番外編でした。でもたぶん後日談の短編は続きます。
やっぱこの二人は最高。
乙乙
好きなアイドルはいるけどこの作品に出てきて嬉しいのはやっぱりメインヒロインだと思う
次の更新を待ってます
好きなアイドルはいるけどこの作品に出てきて嬉しいのはやっぱりメインヒロインだと思う
次の更新を待ってます
>>94が一体何をするんだ・・・
そろそろ生存報告ぐらいは欲しいな
落ちるまであと半月ちょっとぐらいだし
落ちるまであと半月ちょっとぐらいだし
>>1 慌てず、自分のペースで頑張って下さい
生存報告と、近々投下予定の報告。そろそろ本気出す。いや、本当にすいません……
最終話、最高だったね。やっぱりアイマス大好きだ!
最終話、最高だったね。やっぱりアイマス大好きだ!
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