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元スレ扶桑「私たちに、沈めとおっしゃるのですか?」 提督「そうだ」

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52 :

今日できれば少しだけ投稿します


また、明日からしばらく投稿できないので……

53 :

扶桑姉妹は最初から主力を担ってくれている良い娘たちだよ…

54 :

お久しぶりです
仕事が一段落したので夜から投稿開始します

55 :

待ってたぞ

56 = 1 :

「……不幸、だわ」

 今まで、幾度となく零した口癖を静かな海に向かって投げかける。
 だが、今回の不幸は今までの不幸とは比べものにもならない。
単純に不幸と言っていいのかも分からないが、こんな事になろうとは思いもよらなかった。

この出撃もない退屈な日々にうんざりはしていた。
 今回の泊地攻撃も、できることならば出撃したかった。
 だが、鎮守府を空にすることはできない、という理由で残された。
 もっともらしい理由だ。だが知っている。

 自分が出撃できなかったのは、単純な実力不足だからだ。
 それを再確認させられて、歯ぎしりをして吐き捨てる。

「しょせん私は……欠陥戦艦……」

 火力では大和や長門に、速度では金剛たちに劣る。
 伊勢、日向の下位互換だとも囁かれる。
 何もかもが、劣っている。何をとっても勝てない。
 誇れるものなんて、何もない。

「ここに……いたのね」
「……姉さま」
 
 
 

57 = 1 :


 後ろから掛けられた声に山城は振り返らずに返事をする。
  
「あなた、何かあるとすぐここにきて海を見てるのだもの。すぐわかったわ」
「海を見ていると……色々なことを思うんです」
 
 不安な心も、何もかもが海を見ていると洗い流してくれた。
 海の中には母がいる、とはよく言ったものだ。
 艦娘である山城たちには母という存在はいない。 
 だが、母とは、このようにすべてを受け入れてくれる存在なのだろう、と山城は思う。
 何か嫌なことがあったり、思うところがあるとき、山城はこの海を眺める。
 この海で自分の弱さを全部垂れ流して、扶桑たちと美味しいご飯でも食べて。
 そうすれば次の日にはケロッと忘れることができる。
 今日も、また頑張れる。そう思えた。

 ――今日だけは、無理だ。

 どんなに気勢を張っても、弱さを曝け出しても。
 この後の食事が美味しいわけがない、次の日などこない。
 「明日」という未来は訪れない。
 
「姉さま、私は……」
「山城」

 山城の言葉を遮って、力強く妹の名を呼ぶ。
 その眼は、決意で固まっていた。

「私は、出撃するわ」
「え……?」

 その声は、優しいいつもの扶桑のもの。
 しかし、その声は、覚悟を決めた強い声だった。

58 = 1 :

「姉さまっ?」

耳を疑った。嘘だと言ってほしかった。 
 私と一緒に、逃げてほしかった。

「姉さまっダメです! そんな……そんなっ」 

 死にに行くような真似だけは。
そんな真似だけは、絶対だめだ。

「出撃したところでっ。勝ち目なんかない! ただの無駄死にです!」
「……確かに、勝てないかもしれないわね」

 でも、と優しげなほほえみに、強い意志を宿した目で、言う。

「守り切れれば、沈んだとしても、無駄な死ではないわ」
「なっ!?」
 
 扶桑の言うことは、その通りだ。
 この作戦の目的は、応援が駆け付けるまでの間耐え抜くこと。
 応援さえ間に合えば、扶桑たちの死と引き換えだとしても、作戦は成功。
 自分たちの勝利である。
 
 それでも、持ちこたえられるかは分からない。
 失敗の可能性のほうが高いかもしれない。
 そうだとても。

「それが、どうしたと言うのよ?」
「姉……さま?」

 たとえ、死にに行くようなものだとしても。
 たとえ、絶望しかない道だとしても。  
 誓ったのだ、皆を守ると。この国を守ると。
 
 艦娘として、戦艦として、戦ってくるのだと。

「そのためなら、私は、沈んでもいいわ」

59 :

その言葉が、山城の身体を突き刺した。
 自分の姉が、その胸に秘めた覚悟の告白。
 逃げたい一心だった自分とは違い、皆のためなら死をも厭わない強い意思。
 自分の運命を、静かに受け入れることのできる、穏やかな心。
 それを見せつけられ、山城は言葉が継げない。
 言葉が見つからない。

「それと、山城」

 何も言えず、ただ立って扶桑を眺めることしかできない山城に投げかける。
 
「あなたは残りなさい。今のあなたじゃ、居ても居なくても同じだから」

 冷や水のように冷たく、身を斬られるように鋭利な言葉が山城を襲った。

60 = 1 :

短くて申し訳ないけど、今日はもう寝ないといけないので……

62 :

かなしいなぁ…

63 :



「クソ提督! いる!?」

 一人書類の束を見ていた提督は、静穏な部屋に突然襲った怒鳴り声に一瞬だけ目を上げる。
 が、訪問者を確認するとまた興味がないとでも言うように目線を落とした。
 そして、書類に目を落としたまま訪問者の名前を呼ぶ。

「その呼び方、曙かと思ったぞ、満潮」
「そんな減らず口は後にしてっ」

 鬼の表情でヅカヅカと詰め寄ると、バンッと大きな音を立てて机をたたく。
 それでも、提督は満潮を見ようともしない。それが一層、満潮の怒りを引き上げる。

「なんのようだ、と聞くまでもないかな。君たちの顔を見ると」

 満潮の後ろには時雨と最上が立っていた。
 時雨はどうしていいのか分からないかのように困った顔を。
 最上は満潮を諌めながらも、提督を見つめる目はどこか厳しいものを見つけることができる。

「朝雲と山雲はどうした? 2人がいれば勢揃いじゃないか」
「2人は扶桑たちを探しに行ったよ」

 答えたのは最上。この3人の中では1番外見が大人びており、興奮状態の満潮とは反対に冷静でいる。
 いや、冷静でいようとしている、といったほうが正しいか。握りしめた拳は力強く握りしめら、フルフルと震えていた。
 その言葉に、「そうか」とだけ呟き、やはり視線を向けようとしない。

64 :


「そんなことどうだっていいわ! なんなのよあの作戦は!?」
「そのままの通りだ」
「あんたねぇ!!」

 グシャッと、提督の持っていた書類を押しのけさらに詰め寄る。
 そのまま、殴りかかりそうな勢いだったが、実際に時雨に止められなかったら殴っていたことだろう。
 
「あんたっ! あの2人に沈めっての!?」
「……そうだ」
「こっ、のっ!?」
「満潮っ。落ち着ていてっ」

 拳を振り上げた満潮を必死で時雨が羽交い絞めをして止める。
 満潮の気持ちは痛いほどわかる。
 時雨 も、最上も、だからこそこうやって提督に説明を求めに訪れたのだ。

 西村艦隊。 
 在りし日の記憶、扶桑山城と満潮たちはその艦隊に所属していた。
 その記憶は艦娘となった現在も引き継がれている。もちろん、各々の最後も。
 艦娘となってからは、もちろん気まずさもお互い持っていたが、今は今、として信仰を深めていた。
 今は、人類のために深海棲艦と戦おう。
 そして今度こそ、みんな笑って、笑顔で戦いを終えよう。

 そう、誓い合ったのだ。
「……なさい」
「満潮?」

 キッ、と提督を睨み付けた満潮は叫んだ。
 
「私も! 出撃させなさい!」

 それは、誓いのための言葉。
 みんなで笑って、一緒に。
 その「みんな」には扶桑も山城も含まれるのだ。
 2人だけ先に、など許さない。許してはいけない。
  
 それを、

「ダメだ」

 提督は、やはり満潮を見ようともせず、即答した。



65 = 1 :

毎回スローペースで申し訳ない
今日も、明日早いので寝ます

66 :


責任をとるという意味では目を見てその上で却下した方がよかったと思うけど後ろめたさの方が勝ってしまったか提督

67 = 1 :

23時までには再開します

68 = 1 :



「お前の練度では行ったところで対して戦力にはならん」
「なによそれ! そんなのやってみないと分からないじゃない!」


 潰された書類を手で伸ばしながら、冷たく突き放す。
 満潮はその言葉に怒りをぶつけるしかなかった。
 確かに、満潮は練度不足で、今までも実力を上げることに注力してきた。
 力がないことは自分でよくわかっている。それでも、譲る気などなかった。
 もはやこれは意地だ。ただ気に入らないことに対して、吠えているだけだ。


「お前たちが扶桑と一緒に出撃しようが、成功する確率はほとんど変わらない」
「確率確率って……そんなの、そんなのが絶対なわけない!」
「何の根拠もない安楽的思考に沿うことなんて、この立場じゃ許してくれないんだよ」


69 = 1 :


 この鎮守府を任されているものとして。艦娘全員の、そして市民の命を預かる者としての責務。

 可能性は0じゃない、皆の気持ちがあればなんでもできる。
 そのような言葉に、すがれるものならすがりついていたい。
 嫌なことから目を背け、誰をも守ろうと。
 それが出来るのであれば、何に変えても実行するだろう。

 だが、そういうわけにもいかないのだ。
 嫌なことに目を向けなければならない。
 誰かが傷つくのを恐れてはいけない。
 非情な命令を下さなければならない。
 少しの可能性? そんなものありえないことだ。

「満潮だけじゃない。時雨も、最上も。お前たちが行っても徒に犠牲が増えるだけだ」
「それは、扶桑たちには伝えたの?」

 時雨が言う。
 無力さと悔しさで、込み上げるものがあった。
 それを、唇を噛みしめて必死で耐える。

 提督は、ああ、と静かに答えるにとどまった


70 = 1 :


「扶桑は、分かってくれたよ」
「……そう、なんだ」

 扶桑の性格ならそう言うだろうね、と時雨は声には出さずに呟いた。
 優しく微笑み、語り掛けてくる扶桑を思い浮かべる。

 
扶桑は、その表情に違わぬ優しい女性だ。
滅多なことでは怒らない、皆に笑顔を振りまく優しい顔。
 しっかり者で、みんなの周りの世話も焼いてくれる、嫌な顔一つしない、お姉さん。

 
 しかし、その実、心は誰よりも熱く燃え、責任感も強い女性。
 姉という立場から、皆を守るためならば自分の身を危険にさらすことも厭わない女性。


 そんな彼女ならば、今回の出撃を受け、何を思うのか。
 時雨には痛いほどよく分かっていた。 


 それが、扶桑という存在だ。
 誰よりも優しく、誰よりも美しく、そして誰よりも熱く。
そんな扶桑の姿を知っているからこそ。


時雨は、悲しさを覚えるのだ。

71 :

「なんでよ……っ」

 ぽつりと満潮が力なく零す。
 もう堪えることができないのか、大粒の涙が両目から流れていく。
 
気勢を張って、態度を大きくして、言葉をきつくして。
 誰にも、舐められないように。見下されないように、必死だった。
 力のない自分が、皆に必死で追いつこうとした。
 他人の活躍の報を聞くたび、焦り、心も荒んだ。
 
 どうして自分だけ。どうして私は弱いままなの?
 焦燥のあまり過剰なトレーニングをした。手柄が欲しいからと、無茶な突撃も図り轟沈しかけたこともあった。
 早く武勲を、その一心で他を顧みず、個人プレーに走った満潮は当然のように艦隊で浮いていた。
 注意を受けようが叱られようが、それに噛みついてきた。好意に思って近づいてきた者にも砂を浴びせた。
 
私の気持ちなんて、誰にも分からない。分かってくれなくてもいい。

 そんな満潮に、傍に居続けてくれたのが扶桑だった。
 どれだけ満潮が罵声を浴びせようとも、笑顔を崩さず、ただ其処にいてくれた。
 叱りつけるのでもなく、窘めるのでもなく。また、意図して温かい言葉をかけてくれるのでもない。


 ただ、其処にいてくれた。
 クソガキだった自分を受け入れてくれた。
 くだらない愚痴を、嫌な顔一つせず聞いてくれた。
 そして、何気ない一言だったのだろうけれど、その言葉が胸に響いている。


――満潮は、頑張っているのね。えらいわ


72 = 1 :

 それだけで、その言葉だけで、満潮は救われたのだ。
 自分の全てを受け入れて、認めてくれる人。
 そして、自分を褒めてくれる人。
 
 他を顧みず行動してきた満潮にとって、その一言が強く胸を打った。
 私は、何のためにこんなに頑張ってきたのか。

 武勲を上げたいから。確かにそれもあるだろう。
 だが、求めていたものはもっと簡単だった。

 誰かに、褒めてほしかったのだ。

 よくやったな、と。偉いぞ、と。その一言が欲しかっただけなのだ。
 その時初めて満潮は、人前で涙を流し、咽び泣いた。
 
 扶桑にとって、満潮を救いたい、などという高尚な思いなど無かったのだろう。
 だからこそ、満潮は嬉しかったのだ。見返りも何も求めず、ただ、自然に接してくれたことに。

 救われたのだ。だからこそ、いつか扶桑が困っているときには自分が……。
 そう思っていたのに。

「私は……結局何もできないのっ……?」
「満潮……」

 膝から崩れ落ちた満潮の肩に、最上が手を添える。
 歯痒さも、悔しさも。皆が同じ思いを共有している。
 みんなが大好きな扶桑と山城を、助けることもできないことを。
 何かしたい、何か力になりたい。その思いだけが強くなっていってしまう。
 そして理想だけが大きくなり、何も出来ない現実を見てしまうと絶望しか浮かんでこない。

73 = 1 :



「まだ何も出来ていないのにっ。何一つ返せていないのにっ!」

 感謝の言葉も、恩返しも、誓い合った夢も。
 何一つ、出来ていない。叶えることもできていない。
 語り合った夢も、それを叶えようと皆で笑い合ったことも。
 何もかもが突然の終焉を告げられた。それを、どうして受け入れることができるだろうか。


「お願い、です、提督。扶桑たちを、行かせないで……」
「……」


 見る人によっては、哀れな姿かもしれない。 
 号泣しながら、懇願するさまは、駄々をこねる子供そのものだ。


「わた、しっ。もっと、素直になるからっ。いい子、にぃっ、する、からぁっ」


 到底聞き入れてくれるものではないことなど重々承知している。
 しかし、言葉が止まらない。胸に詰まった思いが全部、直接音になって飛び出ている。

 
「だからっ、だか、らぁっ!」


 それを止めることなどできない。そんな方法、誰も知らない。
 時雨も、最上も。そして、提督も。その悲痛の叫びに、皆、痛々しく表情を歪めることしかできなかった。



「……ありがとう、満潮」
「っ!?」



 いつも聞いていた優しい声音が、皆の耳に届いた。



74 = 1 :

今日はここまでということで。

満潮の下り、正直物語上、さほど必要じゃなかったかもしれません。
ただ、どうしても書きたかったものでもあるので、蛇足になること覚悟で書いてしまいました

77 :

いいじゃないか
おつ

78 :

蛇足な訳ないじゃんずっと待ってたよ乙です

79 = 1 :



「ふ、そう……?」

 入口にいつの間にか立っていた扶桑の名前を呼ぶ。
 扶桑だけではない、山城もその後ろに控えていた。
 
「満潮」

 泣き崩れた、満潮の傍に近寄り声をかける。
 普段通りの、優しい声で。毎日の挨拶でもするかのような、そんな声だった。
 扶桑はかがんで満潮と視線を合わせると、そっと手を満潮の頭にのせる。

「扶桑?」
「満潮、あなたは本当に優しい子ね」

 愛しそうに、我が子を愛でるように、優しく頭を撫でてあげる。
 いつもの満潮ならば、子供扱いするな、と怒ったのだろうが今に限ってはそんなこと出来るわけもなかった。
 

「憎まれ口をたたいて、何かと火種を作るのがうまいあなただけれど根は誰よりも優しいって、私は知っているのよ」
「そんな……やめてよ」
「だから、その優しさをいつまでも、ね?」
「だから、やめてってばっ」

 そんなこと言わないでほしい、と満潮は思った。
 そんな、まるで別れの言葉みたいに、言わないでほしかった。
 もう会えなくなるかのような、そんな言葉なんて、欲しくなかった。

80 :



「もう……。こんなに泣いちゃって。可愛い顔が台無しよ?」
「だっ、誰のせいだと……思ってんのよ……」

 こんなにも涙が出るのは、扶桑たちのことを愛しているからだ。
 扶桑には、その優しさに何度も救われた。
 山城は、ジメジメした空気にイラッとすることもあったが、それでも自分たちをちゃんと導いてくれた。
 
 2人とも、大切な家族だ。
 満潮だけではない。時雨も、最上も、みんなそう思っている。
 みんなで過ごした時ほど心安らぐものは無い、そう思えるほど楽しかった。
 
価値観がぶつかって喧嘩したこともあった。
 それでもみんながそうやって自分を出せることが、どれほど素晴らしいことか。
 一つの塊で、それぞれの色を出し合うことがいかに難しいことか、成長するにつれ自然と理解していく。 
 だからこそ、周囲の顔色を伺うことしかできなくなる。空気を読んでいる、とそれらしい言葉を掲げて。
 その実、行っているのはただ自己を殺しているだけ。
 
 そうなってしまわぬ様、どれだけ落ちこぼれても、周囲の目を気にしようとも。
 自分で自分を陥れるような真似だけはしない。
 それは、自分の存在の否定だ。それだけは、絶対にしてはいけない。
 
それが扶桑の考えだった。
 自分が自分を殺してしまったら、誰が認めてくれようか。
 
自分という存在を否定しないこと、常に存在する意味を見出すこと。
 みんながみんな、違うのだということを受け入れること。
 それが、自分を受け入れることに繋がるのだ、と。

 言葉にせずとも、その姿勢で、在り方で、皆に示してきた。
 それもこれも、全て彼女たちのため。

「これからの鎮守府を支えていくのは、あなた達なのだから」

 清く、正しく、真っ直ぐに。
 成長してくれたからこそ、扶桑には心残りなど微塵もなかった。


81 = 1 :

満潮は優しい子

おやすみなさい

82 :

あの大戦力+αになるかもしれない敵勢力に戦力外通告された戦艦たった二隻で一体どうやって味方の支援艦隊到着まで持ちこたえるつもりなのか

楽しみに待ってるよ

83 :

今日は更新出来そうにないです……

すみません

84 :

構わん、カレーでも食って休むんだな

85 :

どんまい

86 :

 ゆっくりと更新していきます

87 = 1 :


 
 いつも眺めていた海が、こんなにも黒く、怖いと思ったことはなかった。
 自分たちを受け入れ、包み込んでくれた海が初めて拒絶をしてくるかのように、荒々しく波を立てる。
 明るさなど全く存在しない海路が、一握の希望すら抱かせてくれないように思えた。

 文字通り、行く末は暗く。
 一分の隙もあってはならぬほど険しく。


 ――もう帰ることはないあの場所は、振り返っても見ることができない 

88 = 1 :

 
 
 聞こえてくるのは、荒々しい波音と航行する音だけで、それ以外は何も聞こえてこない。
 陽が落ちた海は、何もかもを飲み込んでしまうように感じられ、微かな月明かりを頼りに海を進む。
 

 そこにいる誰もが言葉を発することはなかった。
 周囲を警戒中、ということももちろんあるが、そのようなことでここまで静まることはない。
 その最たる原因である扶桑と山城を中心に、航行する数隻の艦娘たちの表情はどこか歪んでいた。
 時雨に満潮、最上、朝雲に山雲。せめて、少しでも一緒に、という彼女たちの願いを提督は受け入れてくれた。
 だと言うのにお互い、顔を見合わせることも話しかけることもできない。
 

 これから死地へと向かう二人に、どんな顔を向ければ、どんな言葉をかけるのが正解なのか。
 無理やり作った笑顔で接するのも、明るい声で話しかけるのも、間違いでは無いだろう。
 それでも、それをできるような空気でもないこともまた事実で。
 結局、誰も話しかける勇気がないまま、進んでいく。


 共にいられる時間ばかりが減っていく。
 

89 = 1 :



「……ここまで、だね」

 先頭を進んでいた最上が立ち止り、小さな声で呟く。
 あらかじめ定められたポイントに到着したことを告げると、ゆっくりと皆が集まってくる。
 ここから先は、扶桑、山城のみが進むことになる。
 2人しか進むことが許されていない、破滅への道。
 皆思っている。提督の命に背いて、このまま扶桑たちとともに、戦おうと。
 扶桑と山城だけに、重荷を背負わせるわけにはいかない。辛い思いだけはさせるわけにはいかない。

 けれどそれはきっと、扶桑たちは許してくれない。
 そんなことを言い出したら、彼女たちの覚悟を踏みにじることになる。
 悲痛な思いを噛み殺して、絶対的な死の恐怖を飲み込んで。
 
 それでも、そんな恐怖を殺してまでも戦うと決意した。
 その心を蔑ろにするわけにはいかない。
 
 愛しているからこそ、自分たちの感情を出すわけには行けない。
 愛しているからこそ、理解したくないものも分ろうとしなければならないのだ。

「皆、ありがとう」

 護衛についてくれたそのお礼を扶桑は告げる。
 しかし、その言葉にはそれだけではない意味も持つように思われた。
 
「2人とも……気を付けて」

 もはや気休めの言葉にもなっていない言葉を時雨は言う。
 気を付けて、などはほとんど無意味な言葉かもしれない。
 それでも、何かを言いたかった。これが最後の会話になるのかもしれないのだから。


90 = 1 :

先ほど、ラストシーンが書き終わりました。
そこまではまだ全然できてませんが……

なんとかそこまで続けられたらいいなぁ……

91 :

泊地水鬼「乙デス、不幸姉妹ノタメニ心込メテ歌イマス」

92 :

>>91 がデスメタルを絶叫するようだ

93 = 91 :

デスメタルってより沈メタルだな

94 :



>>93
何がなんでも撃沈してやろうと言う心意気は感じ取れた

95 :

扶桑と山城には掛け軸作る仕事が残ってるから大丈夫だ

96 :

次は山城、四百万のお祝いよ!って書いてもらわないとな

97 :

扶桑姉さまの2周年ボイスと梅雨限定ボイスがかわいすぎて辛かった(唐突

ぼちぼち始めます

98 = 1 :


 皆、口々に言葉をかける。
 頑張って。待っているよ。無事に帰ってきてね。
 いつも通り平静を保って言葉をかけるよう努めた。
 しかし、それが出来ている者はいなかった。
 身体も声も震え、泣きそうな顔を皆懸命に押し殺して。
 それでも漏れてしまう悲しみ。痛みを、隠し通すことなどできなかった。
 
 それでも、一縷の希望にすがって、皆別れの言葉だけは言わない。
 夢物語であろうとも、非現実的な超展開であろうとも、笑えるくらい都合のいい結末であろうとも。
 最高の結末だけを思い浮かべ、望んでいた。
 皆、扶桑と山城の笑顔だけを望んでいた。

 だが、強くそれを望んでも、現実が嘲笑ってくる。
 起こるわけ無いよ、そんな奇跡。と馬鹿にするかのように。
 奇跡は起きないから奇跡なのだと、誰かが言った。
 希望は月明かりのように細く、闇に掻き消されそうなほど淡い光だ。

 だけれども。そうだとしても。
 それさえないとするならば、人はどうして生きていられようか。
 誰もが、もがき苦しんでいる。絶望の海に投げ込まれたとしても、皆その光だけを頼りにするのだ。
 その光だけを頼りに、その光だけを目指して足掻く。
 
 悲しみと絶望の闇で、彼女たちは笑えるくらい幸福な結末を思い浮かべる。
 そうすることでしか、笑うことができないから。
 そうすることでしか、安心させることができないから。
 そうすることでしか、心残りなく送り出せそうにないから……。


99 = 1 :



「作戦が終わったら、盛大なパーティーしないとね」

 だから、こんなことも言える。
 馬鹿みたいな未来を、馬鹿みたいに。
 名案でしょ、とでも言うように時雨が笑顔で言った。
 
「あらあら。提督が了承するかしら?」
「させるわよ。それくらい要求しても罰なんて当たらないわ」
「……提督も困ったものね」

 満潮の言葉に、おかしそうに、ふふふ、と山城が笑う。
 楽しみね、と扶桑も続く。
 立案者の時雨が誇らしげに人差し指を天に向け、言う。

「そうだよ、鎮守府全体で行う、大祝勝会さ。だから、さ……」

 だから、と消えそうな声でもう一度。
 そのあとの言葉が、なかなか出てこない。
 下手に言葉を発しようものならば、堰を切ったように思いが溢れ出てくる。
 口がいくつかの言葉を言おうと開いては、声に出せずに閉じる。
 思わず、扶桑の服の袖をつかんでしまう。
 行かないで、はもう言えない。扶桑たちの覚悟を知ってしまったから。
 戻ってきて、も言えない。それは無責任で、浅慮な言葉だから。
 だから、そのどれとも違う言葉を、2人に贈る。

「勝って、ね」

 作戦の成功を、2人の勝利を願うこと。
 そうすることが、軍人として、親しい友人として、そして家族としても。
 正しいことなのだと、そう信じるしかなかった。

100 :

時間を稼ぐのはいいが、別にあれを倒してしまっても構わんのだろう?


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