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元スレ京太郎「その片思いは八方塞がり」
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東京から長野に向かう電車の中、須賀京太郎は窓の外に視線を向けて考え事をしていた。
想うのは東京で偶然出会い、一時を共に過ごした一人の少女のこと。
一緒に過ごした時間はごく僅かなものだったが、確かに京太郎はその少女に恋慕していた。
瞼を閉じれば鮮明に脳裏に浮かぶワインレッドの髪をお団子にした年上の少女。
「塞さん……」
一人ポツリと呟く。もう会うことは叶わないかもしれない、その少女の名を。
想いを伝えておけば良かった、連絡先くらい交換しておけば良かった。
そんな後悔の気持ちで胸を一杯にした京太郎は長野に帰るまでただただ彼女の事だけを考えていた。
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清澄高校麻雀部がインターハイで華々しく優勝を飾ってからしばらくしたある日、麻雀部の部室では四人の一年生が卓を囲み、一人の二年生がその様子を見守っていた。
「それロンだじぇ!」
「……」
「おい犬、早く点棒を出すじぇ」
「京ちゃん?」
「あ、悪い。ちょっとぼーっとしてた」
「なんか、最近の京ちゃん元気ないね」
「そうですね、全く集中出来ていません」
「そ、そうか?」
「そうじゃのぉ、東京から帰ってからはずっとこんな調子じゃな」
「すみません……」
他の部員達に麻雀に意識が向っていないことを指摘されて申し訳無さそうな顔で謝る京太郎。そんな彼にに咲が尋ねる。
「東京で何かあったの?」
「……別に大したことじゃねえよ」
「むっ、こっちは京ちゃんのこと心配してるんだよ?」
「いやでも本当に皆に言うようなことじゃないっていうか」
「須賀くん、何か悩みがあるのなら話してください。私達は同じ部活の仲間なんですから」
「和……」
「ほら、さっさと話すじぇ犬」
「ほうじゃ、誰も笑ったりせんけえ言うてみんさい」
「そう、ですね……それじゃあ」
そう言って顔を上げて四人の少女の顔を順番に見回すとゆっくりと語り始めた。
個人戦が終わった次の日、出発まで一日あるということで俺は一人東京見物をしていた。
疲れているであろう咲達を連れて行くのは少し気が引けたし何より東京を見て回るにしても女子だけで行った方が楽しいし自分も気を使わずに済む。
そんなことを考えながら一人電車に揺られているとある少女と目が合った。その少女は俺を見ると少し脅えるように顔を背けた。
大方不良だと思われたのだろう、金色の地毛のおかげでそんな反応には慣れていたしその時は特に気にかけることもなかった。
しばらくして慣れない満員電車で人に押されながら立っていると丁度先ほどの少女の隣に来た。どこかで見たような顔だと思い横目で顔を覗き込むと何やら様子がおかしい。顔を赤らめて何かに必死に耐えているようだった。
まさかと思い少女の後ろを見ると一本の腕が人混みに紛れて彼女の下半身を撫で回していた。
周りの人達がその事態に気づく様子はない。初めて痴漢の現場に遭遇した俺は咄嗟に声をかけていた。
「大丈夫ですか」
俺の問いかけに少女はこちらを見て潤んだ目を丸くした。
「次の駅で一旦降りましょう」
小声でそう呟くと少女は目に涙を浮かべながらコクコクと頷く。
しばらくして電車が駅に到着すると俺は少女の手をしっかりと握り電車から降りていく人の流れに乗って彼女を連れ出す。
ひとまず落ち着かせる為ホームのベンチに彼女を座らせる。
少女は少し休むと落ち着いたようで隣に立つ俺の顔を見上げて口を開いた。
「ありがとう、ええと名前は……」
「須賀京太郎。京太郎で良いですよ」
「京太郎君ね、ありがとう。痴漢なんて初めてだったから……その、助かった」
少女は頬を染めてはにかみながらそう言った。
「おっと、名前言ってなかったね。私は臼沢塞。塞って呼んで」
それが、俺と塞さんの出会いだった。
とりあえず今日はここまで
時間がある時に少しずつ書き溜めて週一くらいで投下する予定
時間がある時に少しずつ書き溜めて週一くらいで投下する予定
元から腰回りがエロかったのに単行本だと胸も増量されちゃったしな。
半端ないエロさがあるよね。
半端ないエロさがあるよね。
「臼沢……塞……?」
「うん?」
聞き覚えのある名前に思わず首を傾げる。塞さんも塞さんで俺の様子を見て小首を傾げていた。
そして俺の頭のなかで欠けていた記憶のピースがカチリとはまる。
「ああっ!!」
「うわっ……な、何?どうしたの?」
「臼沢塞さん!」
「う、うん」
「和と打った!宮守の!!」
「そうだけど……って和?」
「えーっと、俺清澄の部員なんですよ」
「へぇー……って、ええっ!?」
「まさか清澄の部員だったとはね……」
「ホント、偶然ってあるもんですね」
「ところで、これからどうしますか?」
そんな偶然の出会いに二人顔を見合わせてひとしきり笑った後、塞さんにそう問いかける。
「んー、私はこれから浅草に行く予定だったけど」
「あ、俺もです」
「え、本当?」
「はい」
「そっかー……よし、それじゃあ一緒に行こう!」
そうして俺は何故か突然テンションが上がった塞さんと一緒に浅草へ向かうことになった。
年上の女性、それもなかなかの美人と二人きりで観光というのはこれまでデートの一つもして来なかった俺にとってはかなり刺激的な体験だった。移動中も塞さんの見せるふとした仕草の一つ一つにドキリとさせられる。
今思えば俺は既にこの時には自分に楽しげに笑いかける年上の少女の笑顔の虜になっていたのかもしれない。
「そういえば京太郎くんもうお昼ごはん食べた?」
「食べましたよ、まあ浅草でお菓子も食べるつもりだったんで軽くですけど」
「それなら大丈夫だね、私もお昼は軽く済ませたから」
うんうんと頷く塞さんにふと思いついた疑問をそう言えばと問いかける。
「他の皆さんはどうしたんですか?」
「……スカイツリーに居ると思うよ」
「別行動なんですか?」
「だってさぁ、私が浅草行きたいって言ったら何て言ったと思う?『おばーちゃんみたい』だよ?酷くない!?」
「あー、それで一人で……」
だから俺が浅草に行くつもりだったと言った時あんなに嬉しそうだったのかと得心する。そんな俺に塞さんは少しむっとした表情で俺を見つめてくる。
「何、その納得気な表情は」
「いえ、俺も今朝部長に浅草に行くって言ったら『渋いわね』って返されので」
「あぁ……」
「なんででしょうね」
「ね、良いと思うんだけどなぁ。浅草」
そして俺達は二人してどうにも納得が行かないという面持ちで浅草へと向ったのだった。
「あ、雷門!」
隣を歩いていた塞さんはそう言って赤い提灯を指さすとこちらを見て嬉しそうに笑った。その無邪気な笑顔についつい頬を緩ませながら「そうですね」と相槌を打つ。
雷門をくぐり、店を見る度に目を輝かせる塞さんと共に仲見世通りを歩いて行く。
途中、お土産に揚げおかきと手焼きせんべいを買った俺は先に次の店を見に行った塞さんを探すため辺りを見渡し、すぐ隣りの扇子の店に塞さんの後ろ姿を見つけた。
「塞さーん、お土産買えましたー」
そう声をかけて塞さんに近寄ると、俺に気付いた塞さんは俺の名を呼びながら手招きする。何だろうかと思いながら隣に立つと、塞さんは並べられた扇子のうちの一つを手に取るとそれを顔の前に運び口元を隠してこちらに顔を向けた。
「どう?」
そう尋ねる塞さんの姿は様になっておりどことなく艶やかな雰囲気にドキリとさせられる。
「す、すごく似合ってます」
「そうかな?ふふ、お世辞でも嬉しいよ。ありがと」
塞さんは緊張でぎこちなくなった俺の返事を聞いてニコリと笑うと手に取った扇子を元の場所に戻す。
「買わないんですか?」
「んー、まだ考え中かなぁ」
「そうですか……」
似合ってたのに残念だなという俺の考えは表情に出ていたらしく塞さんは俺の顔をまじまじと見つめると再び尋ねた。
「そんなに似合ってた?」
その問いかけに対しコクコクと頷くと塞さんは少し恥ずかしそうに「そっか」と呟く。それに続けて照れを隠すようにおどけた。
「それじゃあ私も扇子持って麻雀打ってみようかな!三尋木プロみたいに」
そんな塞さんの冗談に二人で笑いあっているとふと頭にある考えがよぎる。
「三尋木プロと言えば、塞さんも着物とか似合いそうですよね」
「へっ?」
「着物の塞さんが扇子を片手に佇む姿とか、凄く絵になりそうだし……」
「なっ……」
気づくと塞さんが顔を真っ赤にして俺の顔を見つめていた。つい思ったことをそのまま口に出していたらしい。
気不味い沈黙が訪れる中どうしたものかと考えていると塞さんが徐ろに扇子を手に取った。
「そ、そんなに言うなら……買って……みようかな」
頬を染めたまま扇子を見つめる塞さんがそう小声で呟く。ややあって塞さんはこちらを見ると今度は耳まで真っ赤にしながらまくし立てた。
「べ、別に京太郎くんに似合うって言われたのが嬉しかったとかそんなんじゃっ……と、とにかく買ってくるね!」
「ま、待ってください!ちゃんと値段確認しましたか!?」
「値段?」
どうやらすっかり忘れていたらしく、塞さんは値段と聞いて動きを止めるとゆっくりと値札に目を向ける。そしてしばらく値札を穴が空くほど見つめた後、肩を落として扇子を元の場所に戻した。
「これ、こんな高かったんだね……」
「あっちに安いのもありますけど」
「……やっぱり扇子はやめとくよ」
「そう、ですか」
「あ、私ちょっとお手洗い行ってくるからここで少し待ってて」
塞さんはそう言い残すとどこか寂しそうに店を出て行った。
そして一人取り残された俺は先程まで塞さんが手にしていた扇子を手に取った。
「……よし」
塞さんが戻るまでの時間を潰そうとスマホを取り出して麻雀のアプリを開く。なかなかうまい具合に手が進み早い段階で聴牌、すかさずリーチをかけるとあとはオートで対局が進んでいく。そんな様子を眺めていると塞さんの声が聞こえてきた。
「ごめんごめん、おまたせ!」
どうやら元気を取り戻したらしく明るい表情でこちらに歩いてくる塞さんに目を向けていると手元のスマホから『ロン!』という音声が鳴る。
「げっ……」
スマホの画面に視線を戻すとそこには自分が親に振り込んだというリザルトが表示されていた。がっくりとうなだれていると横から塞さんが覗きこんでくる。
「ん?麻雀?」
「一応麻雀部員なんで」
格好のつかないリザルト画面を見られて苦笑いしながら答える。
「初心者なんだっけ?」
「はい、まだ始めたばっかりで。地区予選では初戦敗退でしたし」
「そっかぁ」
そんな会話をしていると次の局が始まる。
「あ、そろそろ行きましょうか」
そう言って一時中断しようとすると塞さんに「待って」と止められる。
「折角だからお姉さんがちょっとだけ教えてあげる」
そして塞さんはその対局が終わるまで俺に麻雀の指導をしてくれた。
「やった、一位だ!」
教えてもらいながら打ったとはいえ普段なかなかなることの無い一位になりついはしゃいでしまう。そんな俺を見守る塞さんの視線はとても優しく、暖かかった。
しばらく店を見て歩いていると塞さんがある店を指さして俺の肩を叩く。
「ねえ京太郎くん、あの店のアイス買って食べない?」
「ちょうちんもなか……?」
「うん、私食べてみたいな」
「わかりました、それじゃ一緒に食べましょうか」
アイスは様々な種類があり、どれにしようか悩む。それは塞さんも同じなようで俺の隣で難しい顔をしてメニューとにらめっこしていた。
「ねえ京太郎くん」
「なんでしょう?」
「二人で違うの買って半分こにしない?」
「いいですよ」
「本当?それじゃあ私はあずきにするね」
「なら俺は抹茶で」
それぞれ抹茶とあずきのアイスもなかを買うと歩きながら食べる。
「んー!美味しい!」
「この抹茶もなかなか……」
「よし、それじゃ京太郎くん」
そう言って食べかけのあずきのアイスもなかを俺に差し出す塞さん。
「ありがとうございます」
俺も半分まで食べ進めた抹茶のアイスもなかを塞さんに手渡そうとする。と、その時になって俺たちは気づいた。
「これって……」
「あー……」
そう、食べかけのアイスもなかを交換すれば自然と間接キスをすることになってしまう。交換する時になってそのことに気付いた塞さんは顔を赤くし、俺はその様子を見て初めてそのことに気付いた。
「あの、嫌だったら別に交換しなくても……」
「だ、大丈夫!私は気にしないからっ!だからはいっ!」
「そういうことなら……」
塞さんの勢いに押されて食べかけのアイスもなかを交換する。それから俺達はお互いアイスもなかを持ったまま次の行動に移せず暫くの間押し黙っていた。
「き、京太郎くん、早く食べないと溶けちゃうよ?」
「塞さんこそ食べないんですか?」
無意味なやり取りを続けながら時間だけが過ぎていく。既にアイスは溶けかけていた。ここは俺が先に食べよう。意を決してアイスもなかを口に運ぶ。それを見た塞さんも目を瞑ってゆっくりと口を付けた。
「……美味しかったですね」
「うん……そうだね」
頬を染めて俯いて俺の隣を歩く塞さんは一言そう返すと黙りこんでしまった。お互い意識してしまい二人の間に沈黙が訪れる。どうにかして空気を変えようと考えていると浅草寺に到着する。
「塞さん、おみくじ引きましょう!」
そう声をかけて塞さんの腕を掴むとおみくじの方へと歩いて行く。驚いて俺の顔を見上げる塞さんにニッコリと笑顔を見せて俺はおみくじを引いた。その結果は……
「凶!?」
まさかの結果に思わず叫んでしまう。凶が出るなんてそんなん考慮しとらんよ……。
肩を落として悪態をついていると後ろから笑い声が聞こえる。振り向いて見れば笑っていたのは塞さんだった。
「私も引いてみようかな」
塞さんが笑いながらそう言っておみくじを引く。だがその結果を見て塞さんの顔から笑いが消えた。
「どうでしたか?」
塞さんのおみくじを覗きこむとそこには『凶』という文字が書かれていた。二人で顔を見合わせ、やや間があってから同時に吹き出した。
「まさか二人とも凶を引くなんてねー」
「ホントですよ、凶がよく出るとは聞いてましたけど」
「だね。っていうか私達逆にツイてるかもよ?」
そんな会話をしながらおみくじを結ぶ。さっきまでの気不味さは既に無くなっていた。『凶』のおかげかもしれない、なんてことを思いながら塞さんと談笑する。
駅までの夕暮れの道には二つの影が長く伸びていた。
>>43
チョロくて腰がエロいとか最高じゃん?
チョロくて腰がエロいとか最高じゃん?
おつー
…これ部員に話してるんだよな、咲さんのハイライト消えませんよね?(震え声)
…これ部員に話してるんだよな、咲さんのハイライト消えませんよね?(震え声)
帰りの電車に揺られながら塞さんは自分の部活の友人達の話をしてくれた。嬉しそうに語るその笑顔は眩しくて、塞さんがその仲間達を大切に思っているのがよくわかる。
楽しい時間というのは早く過ぎてしまうもので、気付けば俺達は目的の駅に着いていた。ホテルまでの帰りの道は別々になるので塞さんとはここでお別れしなければならない。
「塞さんっ」
駅を出て別れる直前。俺は勇気を振り絞って塞さんを呼び止めた。
「どうか、した?」
こちらを振り向き小首をかしげて笑いかける塞さんに、俺は鞄の中からあるものを取り出した。
「これ、あの時の……」
「受け取ってください」
そう、俺が取り出したのはあの時の扇子。塞さんが居なくなった後に購入しておいたのだ。
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