私的良スレ書庫
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元スレ八幡「心の声が聞こえる様になった」
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雪乃「貴方が先に来ているなんて、何の冗談?」
雪乃「(顔色は……問題なさそうね)」
雪乃「(だからって早く来なくても良かったのに……)」
八幡「いや、あれだ。小町に早くいくべきってやられたんだよ」
八幡「じゃなかったらもっと遅かったな」
(いつもを装って、目をそらす)
(お洒落した雪ノ下は凄く魅力的で)
(言葉とは裏腹に、内面は優しくて)
雪乃「そういうのは言わないべきよ。シスコン君」
八幡「一文字もあってないんだが」
雪乃「事実でしょう? 今日だって小町さんのための買い物なのだから」
八幡「否定はしない」
雪乃「それで比企谷君。ある程度は決めてあるのよね?」
八幡「(小町のためと言うよりは俺達のため……)」
八幡「(いや、もちろん気持ちを知られたくない云々じゃなくて)」
八幡「(人の心を覗き続けるなんて許されないからだ)」
八幡「目星はつけてある。けど女子目線が欲しい」
雪乃「それなら由比ヶ浜さんを呼ぶべきだったわね」
雪乃「私は一般的な女子目線ではない自信があるもの」
雪乃「(そう、本当に)」
雪乃「(私は普通の女の子らしさがない)」
雪乃「(比企谷君が私を選んでくれたことは嬉しい)」
雪乃「(でも、だからこそ申し訳なくて)」
雪乃「(その期待に答えられないことが心苦しい)」
八幡「………………」
八幡「(雪ノ下さんの時と同じだ)」
八幡「(普段やらないことを、やる)」
八幡「(自衛を捨てろ。自棄になれ)」
八幡「(普段の選択が逃走なら、今は立ち向かえ)」
八幡「(雪ノ下雪乃の、心に)」
八幡「由比ヶ浜じゃだめだ」
雪乃「え?」
八幡「由比ヶ浜の選ぶものは確かに女子らしい」
八幡「だが……」
(由比ヶ浜を呼ぼうとしていた雪ノ下は)
(俺の言葉に驚き、携帯を見ていた視線を向けてきた)
(由比ヶ浜を勧めてくることは予想していたことだ)
(心の中で自虐することも分かっていた)
(だから考えたはずだ)
(由比ヶ浜を貶めずに否定し)
(雪ノ下のその過小評価の否定の言葉を)
八幡「由比ヶ浜は子供な女子の可愛さだ」
八幡「それは悪くないが、大人ぶる小町が俺はみたい」
八幡「だから雪ノ下の、大人な女子の可愛さを教えてくれ」
八幡「……駄目か?」
八幡「(俺がシスコンであると思わせている)」
八幡「(そのアドバンテージを使わない手はない)」
八幡「(俺のシスコン疑惑がより濃くなるが)」
八幡「(シスコンだと断定されても痛くも痒くもない)」
雪乃「……小町さんを貴方の傍に置いておく」
雪乃「兄妹なのに不安しかないわ」
雪乃「けれど、その方が良いと言うなら」
雪乃「保障はしないけれど、手を貸すわ」
(雪ノ下は携帯をしまうと、頷く)
雪乃「(……比企谷君にこんなこと言われて)」
雪乃「(嬉しいと感じてしまう)」
雪乃「(……少女ではないけれど、乙女)」
雪乃「(小町さんが言っていたことが何となく解ってしまった気がする)」
八幡「…………行こうぜ」
雪乃「ええ」
雪乃「流石に休日は人が多いわね」
八幡「そうだな」
(俺達は小町へのサプライズプレゼントを買うために)
(いつものデパートに来たのだが)
(人が多く、中々動けずにいた)
雪乃「どうしたものかしらね」
雪乃「(こういうとき、デートならはぐれないようにと)」
雪乃「(手を繋いだりするのでしょうね……)」
八幡「(マジか)」
八幡「(……っ、仕方がない)」
八幡「雪ノ下」
雪乃「っ!」
(雪ノ下の手を握って、引く)
(きっと俺の顔は赤くなっているだろう)
(だが)
(やらなければ雪ノ下に疑惑を抱かせられない)
(だから、我慢して)
八幡「はぐれたら面倒だからな……」
八幡「嫌なら振り払ってくれ」
(雪ノ下の心のままに、動く)
雪乃「……面倒なのは、同意するわ」
雪乃「けれど誰かに見られたら困るから」
雪乃「(…………っ)」
(雪ノ下はそう言って、手を振り払う)
(しかし、その表情はどこか悲しそうで)
(離れていった手は寂しそうで)
雪乃「(比企谷君……貴方は狡い)」
(けれども、心の距離は近付く)
八幡「そうか。ならせめて離れすぎんなよ」
八幡「雪ノ下は人混みに流されやすそうだからな」
雪乃「……どういう意味かしら」
八幡「雪ノ下は体強くないだろ? だから言ったんだ。他意はねぇよ」
雪乃「吹けば折れそうな人に言われたくはないわね」
(雪ノ下は基本的に、挑発するような言葉を返してくる)
(そんな言い方をしたいわけではないのに)
(正直になった心が傷付くことが恐いから)
(そんな言い方しかできない)
八幡「(だが、だからこそやり易い)」
八幡「(挑発に乗ってやれば……雪ノ下の本心に影響があるはずだからだ)」
八幡「心外だな」
雪乃「っ、比企谷君……?」
八幡「俺は男だからな。軟弱者だと言うのは良いが」
八幡「言われるのは良くない」
(だからと雪ノ下の手をもう一度握って、引く)
(今度は振り払わせない)
(俺の強引さで)
(隠しているはずの本心に踏み込んで行く)
(そうしていけばいずれ雪ノ下は知られたくないと逃げ出し)
(力が消えるはずだ)
「こちらにお並びくださーい!」
八幡「ん?」
雪乃「なにかイベントでもあるのかしら」
(俺が予め考えた小町的にポイント高いだろうリストの店を見て回っていると)
(そんな声が響いて)
(主に子連れや女性客がぞろぞろとイベントホールに向かっていく)
「パンさんのコラボ企画ーー」
雪乃「!」
八幡「(ビクッてしたな……)」
雪乃「………………」
雪乃「(そういえば、そんなような話を聞いた覚えがあるわ)」
雪乃「(今日……だったのね)」
雪乃「(用事があると抜け出して……)」
雪乃「(いえ、そんな嘘は……っ)」
(雪ノ下は葛藤していた)
(昨日の約束を守り、自分のしたいことを犠牲にするか)
(約束を途中で投げ出して、自分のしたいことをするか)
八幡「(極端すぎるだろ、そんなの)」
八幡「(行っても良いか聞いて行くとかあるだろうに……)」
八幡「何してるんだ、雪ノ下」
雪乃「え?」
八幡「イベント、行きたいんだろ?」
雪乃「っ、私は別に良いのだけれど」
雪乃「そうね。小町さんが喜びそうなものがあるかもしれないし」
雪乃「(今日の比企谷君は本当に……狡いわ)」
雪乃「(まるで私の心を覗き見ているように……)」
雪乃「(まさか、ね)」
八幡「そうだな。前のディスティニーランドのプレゼント」
八幡「小町は凄く喜んでたからな」
八幡「俺はそう思って行きたがってるんだと思ってたんだが」
雪乃「……そうね」
(普段しないことをしていて)
(しかもそれが雪ノ下が心の内側にしまっていることであることが)
(雪ノ下に疑わせ始めている)
八幡「(目が厳しくなったな)」
八幡「(……すまん。雪ノ下)」
八幡「じゃ、じゃんけん大会……だと?」
「はい、そうですよ。優勝した方にだけ世界に一つだけのパンさんをプレゼントです!」
(係員らしき人は満面の笑みでそういった)
(もちろん、通常のコラボ賞品は普通に販売されているが)
(このイベントの目玉であり)
雪乃「特別……」
雪乃「(運任せ……なのね)」
(雪ノ下が欲しがっているのも、あれだった)
そんな!
相手の心を読みでもしない限りよほど運が良くないと優勝できるわけないじゃない!
相手の心を読みでもしない限りよほど運が良くないと優勝できるわけないじゃない!
八幡「雪ノ下」
雪乃「何かしら」
八幡「やるか」
雪乃「……貴方はこういうイベントに積極的な人だったかしら?」
八幡「柄じゃないな」
八幡「(けど、雪ノ下が俺もやってくれれば確率があがる)」
八幡「(そう思ったから……俺はやる)」
雪乃「小町さんのために……流石世界一のシスコンね」
雪乃「(そう。小町さんのために)」
なんてこった!そんな相手の心を読める人なんていないはずなのに!!
八幡「(……言え。恥ずかしいだなんて思わずに)」
八幡「(雪ノ下が強く疑うよう仕向けるために)」
八幡「小町の為じゃない」
雪乃「まさか、貴方自分……」
八幡「違う。今日付き合ってくれた礼だ。雪ノ下」
八幡「だからこれはお前の為だ」
(俺は言い放って)
(驚きに目を見開いた雪ノ下を見つめて)
雪乃「(っ……本当に、心が知られているというの?)」
雪乃「(あり得ないわ。私が小町さんの為と言ったから否定しただけ)」
雪乃「(私の心のなかを見て、残念そうに思っていると知った)」
雪乃「(なんて、あり得ない)」
「ではいきますよー!」
八幡「始まるな」
雪乃「ええ」
雪乃「(けれどもし)」
雪乃「(比企谷君がここで勝つことができたら)」
雪乃「(出来たなら……きっと)」
(雪ノ下の目が俺に向く)
(勝って欲しいではなく)
(負けてほしいと望んでいるような目だ)
(互いを思い合う関係ではない他人の心は聞こえない)
(だから)
(もしもここで雪ノ下が勝って欲しいと願っていたら)
(主人公補正の無い俺は負けていたに違いない)
(けれど)
「おめでとうございます!」
八幡「……どうも」
(雪ノ下が敗けを望んだから、俺は優勝した)
八幡「……雪ノ下」
雪乃「ありがとう」
雪乃「(嬉しいのに、嬉しくない)」
雪乃「(複雑で、目眩がして、吐き気を催しそうな不安定な感覚)」
雪乃「……ねぇ、比企谷君」
八幡「どうした?」
(雪ノ下は疑う)
(比企谷八幡が心を覗き見ているのではないか。と)
(それはあまりにも非科学的で)
(そうかもしれないと思うには)
(証拠の力は弱い。けれど、雪ノ下雪乃は疑う)
(比企谷八幡を)
雪乃「貴方、心や考えを覗いているの?」
(雪ノ下が受け取った景品入りの袋が、クシャッと音をたてた)
雪乃「……なんて」
雪乃「(私は何言ってるのかしら)」
雪乃「(そんなことあり得ないのに)」
(雪ノ下は冗談で終わらせようとしていた)
(じゃんけんは勝てる可能性がある)
(妹がいるから、人混みでは手を繋ぐ癖がある)
(パンさん好きはばれている)
(だから偶然や必然であり、読心なんてあり得ない。と)
(雪ノ下は終わらせようとした)
(だから)
八幡「有り得るぞ。雪ノ下」
雪乃「!」
八幡「現にこうして、俺は雪ノ下の心に答えたんだからな」
雪乃「(そんな非科学的なこと……っ)」
八幡「確かに非科学的だが、現実だ」
雪乃「!?」
(偶然なんかではなく)
(心を覗き見ていなければ出来ない返答)
雪乃「っ……比企谷君」
(雪ノ下は俯き、体を震わせる)
(それは怒りか、悲しみか)
雪乃「私の道化みたいな違いは楽しかった?」
雪乃「貴方にどう言えば良いのか。どうしたら良いのか悩む私」
雪乃「一つ一つに喜び、つい口から出る言葉に罪悪感を抱く私」
雪乃「平静を装いながら」
雪乃「例え小町さんのためであろうと」
雪乃「貴方と二人きりの買い物を楽しんでいた私」
雪乃「全部知って……勝手に、知ってっ」
雪乃「私は……さぞ、滑稽だったことでしょうね」
八幡「!」
(雪ノ下は……怒っているような口振りで)
(けれど、とても悲しそうだった)
(怒りよりも悲しさが先行している)
(だからこそ、雪ノ下は泣……っ)
八幡「雪ノ下、俺は」
陽乃「ひゃっはろー雪乃ちゃん。比企谷君」
陽乃「偶然だね」
雪乃「!」
八幡「なっ」
陽乃「(そのやり方じゃ、奉仕部から比企谷君が居なくなる事になる)」
八幡「っ」
陽乃「まぁ、雪乃ちゃんの心を覗く実験してたから必然なんだけどねー」
陽乃「(駄目だよ。それは)」
(割り込んできた雪ノ下さんは、困った笑みを浮かべていた)
雪乃「……どういうこと?」
陽乃「比企谷君に雪乃ちゃんの心が分かるようにしたの」
陽乃「雪乃ちゃん、全然正直にならなくて、つまらないから」
八幡「っ」
(雪ノ下さんがもつ仮面)
(その裏側に潜む弱さも、その仮面の意味も)
(俺は知っている。知ってしまっている)
(だから……止めてくれと思った)
(しかし……)
陽乃「(止めないよ)」
八幡「(雪ノ下さん……ッ!)」
陽乃「雪乃ちゃんが正直になるか。知られたくないと思うか」
陽乃「魔法を消すにはどっちかだよ」
陽乃「(比企谷君が今までしてきた事だから)」
陽乃「(客観的な立場で感じてみて)」
陽乃「(比企谷君の周りが)」
陽乃「(君を大切に思う人達が)」
陽乃「(どんな思いをしてきたか)」
陽乃「(私が比企谷君に教えてあげる)」
陽乃「(先輩として、昨日の優しさのお礼に)」
(雪ノ下さんは、自分だけを敵に)
(自分だけを悪者にして、罪を被ろうとしていた)
陽乃「(止めないよ)」
八幡「(雪ノ下さん……ッ!)」
陽乃「雪乃ちゃんが正直になるか。知られたくないと思うか」
陽乃「魔法を消すにはどっちかだよ」
陽乃「(比企谷君が今までしてきた事だから)」
陽乃「(客観的な立場で感じてみて)」
陽乃「(比企谷君の周りが)」
陽乃「(君を大切に思う人達が)」
陽乃「(どんな思いをしてきたか)」
陽乃「(私が比企谷君に教えてあげる)」
陽乃「(先輩として、昨日の優しさのお礼に)」
(雪ノ下さんは、自分だけを敵に)
(自分だけを悪者にして、罪を被ろうとしていた)
雪乃「姉さんは、最低ね」
陽乃「ひっどーい。私は雪乃ちゃんのた」
雪乃「自分の娯楽の間違いでしょう?」
陽乃「あははっ、そうとも言うかなー」
雪乃「……比企谷君。悪いけれど今日は帰らせて貰うわ」
雪乃「いえ、一緒に帰りましょう」
(雪ノ下の悲しみは怒りとなって)
(雪ノ下さんへと向かっていた)
(俺は守られた)
(雪ノ下陽乃の愉悦のために利用された被害者に、されたからだ)
陽乃「またねー」
八幡「……………………」
(笑いながら、手を振る雪ノ下さん)
(その心はもう、聞こえなくなっていた)
雪乃「………………」
八幡「………………」
(帰り道、雪ノ下は終止無言で)
(静かに、賞品のパンさんを押し付けてきた)
(きっと、受け取れない。という事だろう)
八幡「雪ノ下……すまない」
八幡「なるとは思ってないが」
八幡「謝罪のひとつとして、受け取ってくれ」
(雪ノ下は暫く俺に押し付けていたが)
(俺が受け取らないと判断したのか袋を下ろし、首を振った)
雪乃「お願いがあるわ」
八幡「……言わなくて良い」
雪乃「今まで通りでいましょう」
八幡「………………」
(心が聞こえなくても、雪ノ下がそう言うだろうとわかっていた)
(雪ノ下はきっと、由比ヶ浜に不公平だと思っているのだろう)
八幡「そのつもりだ」
雪乃「ありがとう」
(雪ノ下はそう言って、私はここで。と、去っていく)
(これで)
(奉仕部の誰も消えず、何事もなかったようにいつも通りになれるかもしれない)
(俺はみんなの心を平等に覗き見た)
(雪ノ下はきっと、由比ヶ浜のために何もなかったと改める)
(だから俺さえ下手な行動をしなければ)
(それで終わる)
八幡「(だが……)」
(携帯を取り出して、雪ノ下さんの番号を選ぶ)
(あとボタンひとつで繋げることができる)
(なのに、俺はボタンを押せなかった)
八幡「最低だと言えば良いのか?」
八幡「認められないと言えば良いのか?」
八幡「それともありがとうと、言えば良いのか?」
八幡「……俺がしてきた事」
(される側になって、そこに生まれる嫌悪感を知り)
(その過ちが自分の想像以上だったことを知る)
八幡「……思った通り、自己満足だったな」
(雪ノ下は雪ノ下さんを好きではない)
(だから雪ノ下さんが雪ノ下に嫌われたところで)
(雪ノ下さんと雪ノ下の関係にそんな大きな影響は無いだろう)
八幡「……だが、雪ノ下さんの……陽乃さんの心は」
八幡「きっと傷ついた」
(だから俺は、ボタンを押した)
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